説明

コレステリック液晶層を含む積層体の切断方法

【課題】コレステリック液晶層を含む積層体を切断する際にクラックが入りにくい切断方法を提供する。
【解決手段】刃先角1、2、3が15°〜60°の鋭角である刃物で切断する。切断時のテンションを0.5Kgf〜2.0Kgf/35mm巾とする。刃の切り込み深さ9を0.3mm〜1.0mmとする。刃先の面取り量を1μm〜5μmとする。コレステリック液晶層を含む積層体6は、透明可塑性フィルム上にコレステリック液晶層を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレステリック液晶層を含む積層体を切断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽光による熱の遮蔽において、赤外光部分を遮光することが望ましいとされている。そのため、遮熱フィルムは、金属膜や誘電体膜の多層膜などが一般的に用いられている(特許文献1)。その他、遮熱機能を有する薄膜としてコレステリック液晶層を含むものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−161406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、コレステリック液晶層を含む積層体は、もろく、また、遮熱フィルムのコレステリック液晶層として用いる場合のコレステリック液晶層は薄いため、ハンドリング性に欠けるという問題がある。特に、このようなコレステリック液晶層を含む積層体について、所望のサイズを得るために切断する際には、コレステリック液晶層にクラックが入り、そこから容易に裂け目が広がってくる等の問題がある。
本発明はかかる上記問題点を解決することを目的としたものであって、所望のサイズに切断する際に、クラックが入りにくいコレステリック液晶層を含む積層体を提供することを目的とする。
ここで、良好な切断に求められる要件としては、コレステリック液晶層にダメージを与えずに切断すること、生産性に優れていること、低コストで生産できること、切断後の積層体のハンドリング性に優れていること、所望のサイズに合わせて精度よく切断できること、ポリビニルブチラール樹脂フィルム等の他の構成層にシワを発生させないこと、コレステリック液晶層とポリビニルブチラール樹脂フィルム等の他の構成層の間の接着性を向上すること、得られる積層体の性能が優れていること等が挙げられる。このような要件は、本発明の方法を採用することによって、達成される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本願発明者が鋭意検討を行った結果、コレステリック液晶層を含む積層体を切断する刃物の刃先角を鋭角にすることにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
具体的には以下の手段により、上記課題は達成された。
(1)コレステリック液晶層を含む積層体を、刃先角は鋭角である刃物で切断することを含む、コレステリック液晶層を含む積層体の切断方法。
(2)前記刃先角は、15°〜60°の範囲である、(1)に記載の切断方法。
(3)前記コレステリック液晶層を含む積層体を切断する際の、切断時のテンションが0.5Kgf/35mm巾〜2.0Kgf/35mm巾である、(1)または(2)に記載の切断方法。
(4)刃の切り込み深さは、0.3mm〜1.0mmである、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の切断方法。
(5)刃先の面取り量は、1μm〜5μmである、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の切断方法。
(6)コレステリック液晶層を含む積層体が、透明可塑性フィルム上にコレステリック液晶層を有するものである、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の切断方法。
(7)コレステリック液晶層を含む積層体が、ポリビニルブチラールフィルムまたはエチレンビニルアセテートフィルムの間にコレステリック液晶層を含む構造を有する、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の切断方法。
(8)コレステリック液晶層を含む積層体が、ポリビニルブチラールフィルムまたはエチレンビニルアセテートフィルム、コレステリック液晶層、透明可塑性フィルムおよびポリビニルブチラールフィルムまたはエチレンビニルアセテートフィルムを該順に有する、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の切断方法。
(9)水平配向剤と重合性液晶化合物を含む赤外線反射層と、少なくとも一層のポリビニルブチラール樹脂フィルムとを有し、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の切断方法で切断されてなる積層体。
(10)透明可塑性樹脂フィルムと、水平配向剤と重合性液晶化合物を含む赤外線反射層と、少なくとも一層のポリビニルブチラール樹脂フィルムとを有し、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の切断方法で切断されてなる積層体。
(11)(9)または(10)に記載の積層体であって、前記赤外線反射層の両側にポリビニルブチラール樹脂フィルムを有する積層体を、一対のガラスで、狭持してなる合わせガラス体。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、品質良く、安定的に、コレステリック液晶層を含む積層体を切断できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】刃先角の断面の形状の概略図である。
【図2】耳切りする場合のイメージ図を示す。
【図3】耳切りする場合の、積層体の幅方向断面の概略図である。
【図4】コレステリック液晶層を含む積層体がロール状であり、切断を、前記ロール状積層体の搬送方向と平行な方向に切断する場合の概略図である。
【図5】コレステリック液晶層を含む積層体がロール状であり、切断を、前記ロール状積層体の搬送方向と垂直な方向に切断する場合の概略図である。
【図6】切断を、台座上に、所望のサイズに適合するように配置した刃を用いて打ち抜き切断を行う場合の概略図である。
【図7】図6に示す型を用いて打ち抜きする場合を示す概略図である。
【図8】図6に示す型を用いて打ち抜きする場合のバリエーションを示す概略図である。
【図9】本発明で切断する積層体の好ましい第一の例を示す概略図である。
【図10】本発明で切断する積層体の好ましい第二の例を示す概略図である。
【図11】本発明で切断する積層体の好ましい第三の例を示す概略図である。
【図12】本発明で切断する積層体の好ましい第四の例を示す概略図である。
【図13】本発明で切断する積層体の製造方法の実施形態の一例を示す概略図である。
【図14】図13の熱圧着ローラを積層体が搬送される際の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本発明の切断方法は、コレステリック液晶層を含む積層体を、刃先角は鋭角である刃物で切断することを特徴とする。ここで、刃先角とは、被切断物に刃物が押し込まれて切断されるが、このときの刃物の先端の角度を意味する。また、本発明における鋭角とは、図1の(1)や(2)に示すような、刃物の先端部が鋭角になっているもののみを意味するのではなく、例えば、図1(3)に示すような、刃先に面取りが設けられているものの、全体として、刃先角が鋭角となっているものも含む趣旨である。ここで、図1の1、2、3は、それぞれ刃先角を、6は被切断物を、7は面取り量を、8は刃を、9は切り込み深さを示している。
ここで、5の角度は適宜選択できるが、前記積層体に対しては70度から90度が好ましい。
好ましくは、刃先角は、15°〜60°の範囲であり、より好ましくは15°〜45°の範囲であり、さらに好ましくは、25°〜35°の範囲である。このような範囲とすることにより、より良好に切断ができる傾向にある。
ここで、刃先角とは、図1(1)および(2)に示すような先端が最も鋭い場合は、刃の断面の角度、すなわち、図(1)の1や(2)の2の部分の角度を意味する。一方、図1(3)のような面取りを含んでいる場合、面取り部分が無かったと仮定したときの、刃先角を意味する。例えば、図1(3)の3の角度を意味する。
【0011】
本発明における切断時のテンションは、後述する、透明可塑性樹脂フィルム等の支持体を有する場合、0.5Kgf/35mm巾〜2.0kgf/35mm巾であることが好ましく、0.5kgf/35mm巾〜1.5kgf/35mm巾であることがより好ましく、0.8〜1.2Kgf/35mm巾であることがさらに好ましい。一方、透明可塑性樹脂フィルム等の支持体を有さない場合、50〜200g/cm/35mm巾であることが好ましい。このような範囲とすることにより、より良好に切断できる傾向にある。
【0012】
本発明のおける刃先押し圧力は、0.5〜2Kgfであることが好ましく、0.7 〜1.7Kgfであることがより好ましく、0.9〜1.5Kgfであることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、より良好に切断できる傾向にある。
ここで、刃先押し圧力とは、丸刃を受け刃に向かって回転軸と直行するように移動させ、被切断物を押す力を意味する。
【0013】
本発明では、刃先寄せ量が、0.1〜0.7mmであることが好ましく、0.2〜0.6mmであることがより好ましく、0.3〜0.5mmであることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、より良好に切断できる傾向にある。
ここで、刃先寄せ量とは、丸刃を、受け刃に対し軸と平行に移動させ、受け刃に接した状態からさらに丸刃の軸を受け刃に向かって移動させた距離を意味する。
【0014】
本発明における刃の切込み深さは、どのような切断方法を採用するかにもよるが、好ましくは、0.3mm〜1.0mmであり、より好ましくは、0.5mm〜0.9mmであり、特に好ましくは、0.8〜0.9mmである。このような範囲とすることにより、より良好に切断できる傾向にある。
ここで、刃の切込み深さとは、図1の(4)のように、受け刃8の搬送される被切断物と接する面から、受け刃の中心に向かって丸刃の先端が移動した距離9を意味する。ここで、図1の(5)は、図1(4)の点線丸印部分の拡大図である。
【0015】
本発明における刃の刃先の面取り量は図1の(3)に示すように、仮想の刃先先端から実際の刃先までの距離を示す。どのような切断方法を採用するかにもよるが、好ましくは、1μm〜5μmであり、より好ましくは、2μm〜4.5μmであり、さらに好ましくは、2.5〜4μmである。このような範囲とすることにより、より良好に切断できる傾向にある。
【0016】
次に、本発明の切断方法の実施形態について説明する。第一の実施形態は、いわゆる、耳切りなどの際に好ましく用いられる切断方法である。耳切りは、例えば、支持体上に設けられるコレステリック液晶膜は幅方向の両端部の厚みが薄くなる傾向にあるため、製品には適さず、所望の厚みより薄い両端部近傍を搬送方向に切断する作業である。
図2は、耳切りの一例を示したものであって、ロール状のコレステリック液晶層を含む積層体を、該積層体の搬送方向と平行な方向に切断して耳切りしている。図2中、21はロール状のコレステリック液晶層を含む積層体であり、22は丸刃であり、23は受刃である。本実施形態では、丸刃を回転させて、回転している受け刃側に押し付け、その間を前記積層体が搬送され、受刃と丸刃が一対となって前記積層体を切断し、耳切りを行っている。いわゆるゲーベルタイプの裁断刃によるスリッティングを行っている。両刃を用いることにより、より良好な切断が可能となる。しかしながら、これ以外の刃を用いて耳切りを行っても良いことはいうまでもない。
図3は、図2とは異なる方式、いわゆるハーフカット方式の耳切りをフィルムの幅方向断面から見た図である。図3中、31は透明可塑性樹脂フィルム等の支持体を、32はコレステリック液晶層を、33はポリビニルブチラール樹脂フィルム等をそれぞれ示している。図3に示すように、コレステリック液晶層32の端部の厚さは薄くなっているため、端部を切り落とすことにより、コレステリック液晶層の厚さが均一な積層体を得ることが可能になる。
【0017】
図4は、コレステリック液晶層を含む積層体がロール状であり、切断を、前記ロール状積層体の搬送方向と平行な方向に切断する場合の概略図を示した場合であって、図4中、40はロール状の積層体を、41は積層体の送り出しローラを、42は巻き取りローラを、43および44は、一対の丸刃を、45は切り落とされる耳の巻き取りローラをそれぞれ示している。
本実施形態では、一対の丸刃の間を、積層体を搬送させながら、連続的に切断する。丸刃は積層体との摩擦による回転をするいわゆる連れまわりと積層体の搬送用動力とは違う動力を備えていて、搬送速度とは違う周速を選択することができる。例えば、搬送速度に対し、0.3〜0.5倍の周速とすることができ、さらには、1.0〜2.0 倍の周速とすることができ、特には、1.15〜1.5倍の周速とすることができる。このような範囲とすることにより、より良好な切断が可能となる。
丸刃の外径は、50〜200mmが好ましく、70〜180mmがより好ましい。このような範囲とすることにより、より良好な切断が可能となる。
積層体の搬送速度は、特に定めるものではないが、通常支持体付きで搬送する場合は、5〜150m/分である。
積層体の搬送速度は、特に定めるものではないが、通常積層体に支持体がない状態では、5〜20m/分であり、好ましくは、8〜15m/分である。
【0018】
第二の実施形態は、例えば、図5に示すように、コレステリック液晶層を含む積層体がロール状であり、前記切断は、前記ロール状積層体の搬送方向と垂直な方向に切断する場合が挙げられる。図5中、51はロール状の積層体を、52は切断した積層体を、53は送り出しローラを、それぞれ示している。このような作業は、例えば、積層体をガラス等の対象物に貼るために手動で、または機械で所望の幅に切断するために採用される。例えば、このカットした前記積層体のシートを2枚のガラスで狭持してオーブンに入れ、接着が完了して合わせガラスができた後で、ガラスの端部からはみ出している部分を手動や自動で切断する方法もある。
【0019】
第三の実施形態は、いわゆる打ち抜きである。すなわち、切断を、台座上に、所望のサイズに適合するように配置した刃を用いて打ち抜き切断を行う場合が挙げられる。図6は、かかる打ち抜きのための型を示した概略図であって、台座61の上に、刃62が設置されている。台座は、例えば、木で作成することができる。台座を木で作成した場合、刃は台座に埋め込むことによって形成できる。図6(2)は、図6(1)のA−A断面図である。図6(2)中、64は被切断物を示している。図6(2)では、刃の形状は、片刀となっているが、両刃であってもよい。好ましくは、片刃であり、この場合、型の外側に刃が設けられていることが好ましい。刃は、所望の積層体のサイズに適合するように設置されるが、このとき、熱圧着時の縮み代等を考慮することが好ましい。
図7は、上記型を用いて、打ち抜きする場合を示す概略図であって、前記積層体を間欠搬送しながら、上記型を上下することによって、打ち抜きをする。図7中、71は、送り出しローラを、72は、積層体を、73は、打ち抜きされた積層体をそれぞれ示している。
【0020】
図8は、高価な前記積層体のウェブから、ガラス等の対象物に貼り付ける為に得率よく所望形状のシートを得る為の打ち抜きのバリエーションをしめしたものである。フィルムの用途に応じて、前記得率のみでなく、最適の配向性能を得るなど、前記積層体の性能を発揮させる為に、種々の形状、方向で打ち抜きすることができる。また、例えば、自動車用の合わせガラスなどを生産する際には、予めガラスより大きい所望の大きさに打ち抜き、2枚のガラスを合わせ、オートクレーブに投入するなどして接着し、合わせガラスにした後に、はみ出している部分をカットして合わせガラスを得る方法もある。
【0021】
刃先の形状としては、両刃、片刃のいずれでもよい。例えば、上述の耳切りや打ち抜きの場合は、片刃を用い、鋭角部が、端側または型の外側となるように設けることが好ましい。
図6(2)の63は前記積層体との角度を示し、75度から90度が望ましい。
一方、刃物の耐久性の観点からは、両刃が好ましい。また、刃の種類としては、丸刃、冶具刃、上下刃を組み合わせたダイセット等を採用することができる。
刃物の材質としては、特に定めるものではないが、例えば、SKH、WCなどの超鋼、DLC(Diamond Like Carbon)などで表面をコーティング処理することやその他のダイヤモンド粉末溶射などの表面処理で刃部の硬度アップや摩擦軽減を行う方法が例示される。
【0022】
本発明の切断方法では、積層体を加熱下で切断する方法、または、冷却下で切断する方法を採用してもよい。本発明で切断する積層体は、通常、コレステリック液晶層と、ポリビニルブチラール樹脂フィルム等を含むが、これらの層は、互いに熱収縮率が異なっている。すなわち、加熱下では、ポリビニルブチラール樹脂フィルム等は伸びるがコレステリック液晶層は縮む傾向にある。そのため、加熱下で切断することにより、コレステリック液晶層が破壊するのをより効果的に抑止することができる。一方、冷却下で切断すると、切れが良くなるというメリットがある。
【0023】
次に、本発明の切断方法で切断される積層体について説明する。本発明で切断される積層体は、コレステリック液晶層を含む積層体であれば、特に定めるものではないが、特に、以下の積層体が好ましい。また、本発明の切断方法は、コレステリック液晶層以外の液晶性化合物層を有する積層体にも好ましく用いることができる。
【0024】
第一の積層体は、コレステリック液晶層と、第一のポリビニルブチラール樹脂フィルムまたはエチレンビニルアセテートフィルム(以下、両者を併せて「ポリビニルブチラール樹脂フィルム等」ということがある)とを有する積層体である。以下、図に従って、第一の積層体を説明する。本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
図9は、本発明の積層体の構造の一例を示す概略図であって、91はコレステリック液晶層を、93は第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等をそれぞれ示す。本発明におけるコレステリック液晶層は、コレステリック液晶相を固定してなる層である。コレステリック液晶層91と第一のポリビニルブチラール樹脂93は、隣接していてもよいし、他の構成層を有していても良い。他の構成層としては、易接着層や粘着材層が挙げられる。
【0025】
図10は、本発明の積層体の構造の他の一例を示す概略図であって、図9において、さらに、第二のポリビニルブチラール樹脂93’を有する。図10では、第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等93、コレステリック液晶層91、第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等の93’順に積層するように設けられる。コレステリック液晶層91と第二のポリビニルブチラール樹脂93’は、隣接していてもよいし、他の構成層を有していても良い。他の構成層としては、配向層や下塗り層が挙げられる。
【0026】
第二の積層体は、透明可塑性樹脂フィルムと、コレステリック液晶層と、第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等とを該順に有する場合である。
図11は、本発明の積層体の構造の一例を示す概略図であって、111はコレステリック液晶層を、112は透明可塑性樹脂フィルムを、113は第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等をそれぞれ示す。
透明可塑性樹脂フィルムとコレステリック液晶層は隣接していても良いが、通常、配向層を含み、さらに好ましくは、透明可塑性樹脂フィルム、下塗り層、配向層、コレステリック液晶層を該順に互いに隣接するように含む構成である。
コレステリック液晶層111と第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等113は隣接していてもよいし、粘着材層等の他の機能層を有していても良い。
【0027】
図12は、本発明の積層体の構造の他の一例を示す概略図であって、さらに、第二のポリビニルブチラール樹脂113’を、透明可塑性樹脂フィルム側に有する。図12では、第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等113、コレステリック液晶層111、透明可塑性樹脂フィルム112、第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等の113’順に積層するように設けられる。透明可塑性樹脂フィルムと第二のポリビニルブチラール樹脂3’は、隣接していてもよいし、他の構成層を有していても良い。他の構成層としては、易接着層や粘着材層が挙げられる。
【0028】
(透明可塑性樹脂フィルム)
透明可塑性樹脂フィルムは、自己支持性があり、上記赤外線光反射層を支持するものであれば、なんら限定はない。透明可塑性樹脂フィルムのヘイズは、好ましくは3%以下であり、より好ましくは1%以下である。所定の光学特性を満足するように、生産工程を管理して製造される、λ/2板等の特殊の位相差板であってもよいし、また、面内レターデーションのバラツキが大きく、具体的には、波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)のバラツキで表現すれば、Re(1000)のバラツキが20nm以上、また100nm以上であり、所定の位相差板としては使用不可能なポリマーフィルム等であってもよい。また樹脂基材の面内レターデーションについても特に制限はなく、例えば、波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)が、800〜13000nmである位相差板等を用いることができる。
本発明で用いる透明可塑性樹脂フィルムは、ポリビニルブチラール樹脂フィルム等との圧着や合わせガラス時にポリビリルブチラール樹脂の伸縮に耐えうる剛性を有していることが好ましく、ヤング率はポリビニルブチラール樹脂の100倍〜1000倍程度が好ましい。このような構成とすることにより、反射ムラをより効果的に抑制することができる。
【0029】
可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムとしては、液晶表示装置等の表示装置の部材として用いられる種々の光学フィルム用のポリマーフィルムが挙げられる。前記透明可塑性樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリイミド、トリアセチルセルロース(TAC)、などを主成分とするフィルムが例示される。この中でも、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはトリアセチルセルロースを主成分とするフィルムが好ましい。
【0030】
本発明では、透明可塑性樹脂フィルムの厚さが、30μm〜200μmであることが好ましく、100〜200μmであることがより好ましい。このような厚さとすることにより、反射ムラをより効果的に抑制することができる。
【0031】
(ポリビニルブチラール樹脂フィルムまたはエチレンビニルアセテートフィルム)
本発明で用いるポリビニルブチラール樹脂フィルムまたはエチレンビニルアセテートフィルムは、それぞれ、ポリビニルブチラール樹脂またはエチレンビニルアセテートを主成分とする樹脂フィルムであれば、特に定めるものは無く、広く公知のポリビニルブチラール樹脂フィルム等を採用できる。尚、ポリビニルブチラール樹脂を主成分とする樹脂フィルムとは、該フィルムを構成する樹脂成分の99.9重量%以上が、ポリビニルブチラール樹脂であることをいう。
第一および第二のポリビニルブチラール樹脂フィルムの厚さは、それぞれ、200〜1000μmであることが好ましく、300〜800μmであることがより好ましい。
ポリビニルブチラール樹脂フィルム等には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、他の添加剤を含んでいても良く、例えば、金属微粒子を含んでいても良い。この場合の添加量は、樹脂成分の1〜10質量%である。
本発明では、ポリビニルブチラール樹脂フィルムの方がより好ましい。
【0032】
(コレステリック液晶層)
本発明の積層体は、前記コレステリック液晶相を固定してなる層が、4層以上の積層体であることが好ましい。本発明の積層体は、前記コレステリック液晶相を固定してなる層が、4層以上の積層体であることが好ましい。本発明のコレステリック液晶層は、水平配向剤と重合性液晶化合物を含むことが好ましい。水平配向剤を含むことにより、コレステリック液晶層とポリビニルブチラール樹脂フィルム等の接着性が著しく向上する傾向にある。
【0033】
各コレステリック液晶層は、種々の方法で形成することができる。一例は、後述する塗布により形成する方法であり、より具体的には、コレステリック液晶相を形成し得る硬化性液晶組成物を、支持体、配向層、又はコレステリック液晶層等の表面に塗布し、当該組成物をコレステリック液晶相とした後、硬化反応(例えば、重合反応や架橋反応等)を進行させることで硬化させて、形成することができる。
【0034】
コレステリック液晶層を構成する各の厚さは、それぞれ、1〜10μmであることが好ましく、2〜7μmであることがより好ましい。赤外線反射層の厚さは、全体で10〜50μmであることが好ましく、20〜40μmであることがより好ましい。
このような範囲とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される傾向にある。
【0035】
また、本発明の積層体は、上記構成のほかに有機材料及び/又は無機材料を含む非光反射性の層を有していてもよい。本発明に利用可能な前記非光反射性の層の一例には、他の部材(例えば、ガラス)と密着するのを容易とするための易接着層や粘着材層が含まれる。
また、本発明に利用可能な前記非光反射性の層の他の例には、コレステリック液晶相のコレステリック液晶層を形成する際に設けられても良い下塗り層、及びコレステリック液晶層を形成する際に利用される、液晶化合物の配向方向をより精密に規定する配向層が含まれる。本発明の積層体は、通常、配向層を含む。また、下塗り層を有していても良い。すなわち、本発明の積層体は、第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等、コレステリック液晶層、配向層、第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等が該順に積層している構成が例示される。さらに、配向層と第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等の間に下塗り層が含まれている場合も例示される。
また配向層を、それぞれのコレステリック液晶層間にそれぞれ配置してもよい。
【0036】
本発明における赤外光反射層では、各コレステリック液晶層の形成に、重合性液晶化合物と水平配向剤を用いる。その中でも、硬化性の液晶組成物を用いるのが好ましい。前記液晶組成物の一例は、棒状液晶化合物、水平配向剤、光学活性化合物(キラル剤)、及び重合開始剤を含有するものである。各成分を2種以上含んでいてもよい。例えば、重合性の液晶化合物と非重合性の液晶化合物との併用が可能である。また、低分子液晶化合物と高分子液晶化合物との併用も可能である。更に、配向の均一性や塗布適性、膜強度を向上させるために、ムラ防止剤、ハジキ防止剤、及び重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、前記液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、金属酸化物微粒子等を、光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。
【0037】
棒状液晶化合物
本発明に使用可能な棒状液晶化合物の例は、棒状ネマチック液晶化合物である。前記棒状ネマチック液晶化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0038】
本発明に利用する棒状液晶化合物は、重合性である。
重合性棒状液晶化合物は、重合性基を棒状液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、棒状液晶化合物の分子中に導入できる。重合性棒状液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0039】
配向制御剤
本発明では、前記液晶組成物中に、安定的に又は迅速にコレステリック液晶相となるのに寄与する配向制御剤として、水平配向剤を添加することが好ましい。水平配向剤としては、含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、及び下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物が例示され、フッ素系のものがより好ましい。これらから選択される2種以上を含有していてもよい。これらの化合物は、層の空気界面において、液晶化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書で「水平配向」とは、液晶分子長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が20度未満の配向を意味するものとする。液晶化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなり、また赤外領域での反射率が増大する。一方、液晶化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、コレステリック液晶相の螺旋軸が膜面法線からずれるため、反射率が低下したり、フィンガープリントパターンが発生してヘイズの増大や回折性を示したりするため好ましくない。
配向制御剤として利用可能な前記含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマーの例は、特開2007−272185号公報の[0018]〜[0043]等に記載がある。
【0040】
以下、水平配向剤として利用可能な、下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物について、順に説明する。
【0041】
【化1】

【0042】
式中、R1、R2及びR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2及びX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基又はフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2及びX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、―NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−及び−SO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0043】
【化2】

【0044】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、及びR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同様である。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0045】
【化3】

【0046】
式中、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8及びR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(XI)におけるR1、R2及びR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものと同様である。
【0047】
本発明において配向制御剤として使用可能な、前記式(X1)〜(X3)で表される化合物の例には、特開2005−99248号公報に記載の化合物が含まれる。
なお、本発明では、配向制御剤として、前記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明におけるコレステリック液晶層は、前記水平配向剤の添加量が、前記重合性液晶化合物に対して0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜5質量%であることがより好ましく、0.01〜1質量%であることが特に好ましい。
特に、フッ素系水系配向剤を添加する場合、重合性液晶化合物に対し、0.01〜0.09質量%であることが好ましく、0.01〜0.06質量%であることがより好ましい。一方、非フッ素系水系配向剤を添加する場合、重合性液晶化合物に対し、0.1〜1質量%が好ましく、0.2〜0.6質量%がさらに好ましい。
【0049】
また、本発明におけるコレステリック液晶層は、前記水平配向剤の添加量を上記範囲に抑える観点から、前記水平配向剤がフッ素原子を含むことが好ましく、パーフルオロアルキル基を含むことがより好ましく、炭素数3〜10のパーフルオロアルキル基を含むことが特に好ましい。
なお、水平配向剤が非フッ素系である場合には、添加量が0.1質量%以上であれば、配向欠陥の問題が生じないため、好ましい。
【0050】
光学活性化合物(キラル剤)
前記液晶組成物は、コレステリック液晶相を示すものであることが好ましく、そのためには、光学活性化合物を含有しているのが好ましい。但し、上記棒状液晶化合物が不正炭素原子を有する分子である場合には、光学活性化合物を添加しなくても、コレステリック液晶相を安定的に形成可能である場合もある。前記光学活性化合物は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第一42委員会編、1989に記載)から選択することができる。光学活性化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。光学活性化合物(キラル剤)は、重合性基を有していてもよい。光学活性化合物が重合性基を有するとともに、併用する棒状液晶化合物も重合性基を有する場合は、重合性光学活性化合物と重合性棒状液晶合物との重合反応により、棒状液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、光学活性化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性光学活性化合物が有する重合性基は、重合性棒状液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、光学活性化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、光学活性化合物は、液晶化合物であってもよい。
【0051】
前記液晶組成物中の光学活性化合物は、併用される液晶化合物に対して、1〜30モル%であることが好ましい。光学活性化合物の使用量は、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。従って、キラル剤として用いられる光学活性化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。この様な、強い捩れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2003−287623公報に記載のキラル剤が挙げられ、本発明に好ましく用いることができる。
【0052】
重合開始剤
前記コレステリック液晶層の形成に用いる液晶組成物は、重合性液晶組成物であるため、重合開始剤を含有しているのが好ましい。本発明では、紫外線照射により硬化反応を進行させるので、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第二367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第二448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第二722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
【0053】
光重合開始剤の使用量は、液晶組成物(塗布液の場合は固形分)の0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0054】
粘着材層
上述のとおり本発明の積層体は、粘着材層を含んでいてもよい。
前記粘着材は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリビニルアルコール系など一般的な粘着材を用いることができる。本発明では、その中でもポリエステル系やアクリル系を用いることが好ましく、アクリル系を用いることがより好ましい。
前記粘着材は商業的に入手してもよく、本発明に好ましく用いられる粘着材の一例としては、サンリッツ(株)社製のPET−Wやパナック工業(株)社製のPD−S1などを挙げることができる。
粘着材層の厚みは、例えば、0.1〜5.0μmとすることができる。
【0055】
易接着層
易接着層は、例えば、コレステリック液晶層と粘着材層との接着性を改善する機能を有する。易接着層の形成に利用可能な材料としては、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂が挙げられる。ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)とブチルアルデヒドを酸触媒で反応させて生成するポリビニルアセタールの一種であり、下記構造の繰り返し単位を有する樹脂である。
【0056】
【化4】

【0057】
また、前記易接着層は、いわゆるアンダーコート層といわれる、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等からなる層であってもよい。これらの材料からなる易接着層も塗布により形成することができる。なお、市販されているポリマーフィルムの中には、アンダーコート層が付与されているものもあるので、それらの市販品を基板として利用することもできる。さらに、前記易接着層には紫外線吸収剤や帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤などを添加してもよい。
なお、易接着層の厚みは、0.1〜5.0μmが好ましい。
【0058】
下塗り層
本発明の積層体は、コレステリック液晶相のコレステリック液晶層側に下塗り層を有していてもよい。コレステリック液晶層は、通常、支持体上に設けられるが、このとき、支持体によっては、下塗り層を設けた上にコレステリック液晶層を設けることが好ましい場合があるためである。
下塗り層の形成に利用可能な材料の例には、アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性ポリエステル等が含まれる。また、下塗り層の表面を中間膜と接着する態様では、下塗り層と中間膜との接着性が良好であるのが好ましく、その観点では、下塗り層は、ポリビニルブチラール樹脂も、前記材料とともに含有しているのが好ましい。また、下塗り層は、上記したように密着力を適度に調節する必要があるので、グルタルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類またはホウ酸等の硬膜剤を適宜用いて硬膜させることが好ましい。硬膜剤の添加量は、下塗り層の乾燥質量の0.2〜3.0質量%が好ましい。
下塗り層の厚みは、0.05〜0.5μmが好ましい。
【0059】
本発明の積層体は、コレステリック液晶相のコレステリック液晶層と第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等との間に配向層を有していてもよい。配向層は、コレステリック液晶層中の液晶化合物の配向方向をより精密に規定する機能を有する。
配向層は、コレステリック液晶相のコレステリック液晶層と隣接する必要があるので、コレステリック液晶相のコレステリック液晶層と基板又は下塗り層との間に設けるのが好ましい。但し、下塗り層が配向層の機能を有していてもよい。また、コレステリック液晶層の間に配向層を有していてもよい。
【0060】
配向層は、隣接する、コレステリック液晶層、及び下塗り層又は第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等のいずれに対しても、ある程度の密着力を有することが好ましい。ただし、コレステリック液晶相のコレステリック液晶層/配向層/下塗り層/第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等のいずれかの界面にて、剥離が生じない程度の強さが必要である。一方、本発明では、コレステリック液晶層から透明可塑性樹脂フィルム等の支持体を剥離しながら第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等に転写して積層体を製造するので、コレステリック液晶層/配向層/下塗り層/透明可塑性樹脂フィルムのいずれかの界面にて、剥離ができる程度の弱さが必要である。
【0061】
配向層として用いられる材料としては、有機化合物のポリマーが好ましく、それ自体が架橋可能なポリマーか、或いは架橋剤により架橋されるポリマーがよく用いられる。当然、双方の機能を有するポリマーも用いられる。ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレ−ト、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコ−ル及び変性ポリビニルアルコ−ル、ポリ(N−メチロ−ルアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロ−ス、ゼラチン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロ−ルアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロ−ス、ゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、さらにゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。また、配向層の表面を中間膜と接着する態様では、配向層と中間膜との接着性が良好であるのが好ましく、その観点では、配向層は、ポリビニルブチラール樹脂も、前記材料とともに含有しているのが好ましい。
前記配向層の厚みは、0.1〜2.0μmが好ましい。
【0062】
[ガラス付き積層体]
本発明のガラス付き積層体は、本発明の積層体の第一および/または第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム上に配置されたガラスを有することを特徴とする。通常は、粘着材等を用いて貼りあわされる。
【0063】
[積層体の製造方法]
本発明で切断する積層体の製造方法について、ポリビニルブチラール樹脂フィルム等
とコレステリック液晶層とポリビニルブチラール樹脂フィルム等を必須構成要素とする積層体を例にとって説明する。
【0064】
図13は、第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等とコレステリック液晶層と第二のポリブチラール樹脂フィルムを含む積層体の製造方法であって、図13中、11a・11bは、第一の熱圧着ローラをそれぞれ示し、一対となって熱圧着を行うものであり、12は支持体の剥ぎ取り用ローラであり、21は、支持体とコレステリック液晶層の積層体の送り出しローラであり、22はポリビニルブチラール樹脂フィルム等の送り出しローラであり、23は支持体の巻き取りローラであり、24はポリビニルブチラール樹脂フィルム等とコレステリック液晶層の積層体の巻き取りローラであり、13a・13bは第二の圧着ローラを、14は搬送ローラを、22’は第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等の送り出しローラをそれぞれ示している。
【0065】
最初に、透明可塑性樹脂フィルム等の支持体とコレステリック液晶層の積層体が送り出しローラ21から送り出される。ここで、支持体とコレステリック液晶層の積層体は、支持体とコレステリック液晶層の間に他の構成層を含んでいても良い。例えば、配向層が挙げられる
一方、第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等は、別の送り出しローラ22から送り出され、支持体とコレステリック液晶層の積層体と積層される。第一のポリビニルブチラール樹脂を送り出すローラ22は、支持体2とコレステリック液晶層1の積層体のコレステリック液晶層側に設けられる。コレステリック液晶層1と第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等は隣接していてもよいし、それらの間に他の構成層を含んでいても良い。この場合の他の構成層としては、粘着材層が挙げられる。
これらの積層体は、熱圧着ローラ11a・11bによって熱圧着される。
送り出しローラ22と熱圧着ローラの間の搬送張力は、好ましくは、50〜200g/cmであり、より好ましくは、50〜100g/cmである。このような範囲とすることにより、赤外線反射層の液晶化合物を壊さず、第二のポリビニルブチラール樹脂フィルムにシワを発生させず、赤外線反射層と第二のポリビニルブチラール樹脂フィルムの間の接着性を向上することができる。
また、このときの温度は、通常は、室温である。熱圧着ローラの温度は、例えば、赤外線反射層と第一のポリビニルブチラール樹脂フィルムが隣接する場合、60〜120℃とすることができる。
この例では丸刃と受け刃を第2の熱圧着ローラ13aと13bの後流側に配し、所要のサイズに整える為に、また、端部の品質を保持するために耳切りを行ってもよい。
【0066】
図14は、第一の熱圧着ローラをコレステリック液晶層と第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等を含む積層体が搬送される際の状態を示す概略図であって、141は、コレステリック液晶層を、142は支持体を、143は第一の歩微ビニルブチラール樹脂フィルムをそれぞれ示している。そして、熱圧着により、支持体142と第一のポリビニルブチラールフィルム143の厚みが減少している。具体的には、圧着条件が0.7≦G/T<1であることが好ましく、0.7≦G/T<0.9であることがより好ましい。ここで、Tは前記第一の熱圧着ローラを通過する前の全体の厚みを表し、Gは前記第一の熱圧着ローラを通過した後の全体の厚みを表す。この構成となるように熱圧着することにより、コレステリック液晶層の液晶化合物を壊さず、第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等にシワを発生させず、コレステリック液晶層と第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等の間の接着性を向上することができる。
【0067】
次に、熱圧着された積層体から、支持体巻き取りローラ23によって支持体が剥ぎ取られる。このとき、通常、配向層も一緒に剥ぎ取られるが、積層体に残っていても良い。支持体としての透明可塑性樹脂フィルムが最終的な積層体に残る場合はこの工程は省略される。
支持体は、第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等と反対側の面に設けられているから、支持体巻き取りローラ23の位置も、第一のポリビニルブチラール樹脂フィルム等の送り出しローラ22とは反対の側に設けられる。
熱圧着ローラと巻き取りローラの間の搬送張力は、好ましくは、50〜200g/cmであり、より好ましくは、100〜200g/cmである。このような範囲とすることにより、コレステリック液晶層の液晶化合物を壊さず、第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等にシワを発生させず、コレステリック液晶層と第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等の間の接着性を向上することができる。
また、このときの温度は、通常は、室温である。
【0068】
支持体巻き取りローラ23によって支持体を剥ぎ取ったあと、さらに、搬送ローラ14によって、搬送され、第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等が積層される。第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等を設けない場合は、この後、直接に、巻き取りローラ24に巻き取られる段階(図13の(4))に移行する。
第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等は、支持体が設けられていた側に設けられることから、支持体巻き取りローラ23と搬送ローラ14は同じ側に設けられる。
コレステリック液晶層と第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等は隣接していてもよいし、それらの間に他の構成層を含んでいても良い。この場合の他の構成層としては、配向層や粘着材層が挙げられる。
これらの積層体は、熱圧着ローラ13a・13bによって熱圧着される。
第二の熱圧着ローラから巻き取りローラ23までの搬送張力は、好ましくは、50〜200g/cmであり、より好ましくは、50〜100g/cmである。このような範囲とすることにより、赤外線反射層の液晶化合物を壊さず、第二のポリビニルブチラール樹脂フィルムにシワを発生させず、赤外線反射層と第二のポリビニルブチラール樹脂フィルムの間の接着性を向上することができる。
また、このときの温度は、通常は、室温である。熱圧着ローラの温度は、例えば、コレステリック液晶層1と第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等が隣接する場合、60〜120℃とすることができる。
第二の熱圧着ローラにおいては、熱圧着により、第一および第二のポリビニルブチラールフィルム3・3’の厚みが減少する。具体的には、圧着条件が0.6≦G’/T’<1であることが好ましく、0.7≦G’/T’<0.9であることがより好ましい。ここで、T’は前記第二の熱圧着ローラを通過する前の全体の厚みを表し、G’は前記第二の熱圧着ローラを通過した後の全体の厚みを表す。この構成となるように熱圧着することにより、コレステリック液晶層の液晶化合物を壊さず、第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等にシワを発生させず、コレステリック液晶層と第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等の間の接着性を向上することができる。
【0069】
最後に、巻き取りローラ24によって巻き取られる。このとき、いずれが内側になるように巻き取られても良いが、コレステリック液晶層が内側となる方が好ましい。このような構成とすることにより、コレステリック液晶層の破壊をより効果的に抑制することが可能になる。
巻き取りローラ23と巻き取りローラ24の間の搬送張力は、好ましくは、50〜200g/cmであり、より好ましくは、50〜100g/cmである。このとき、積層体は支持体を含まないため、このときの搬送張力がきわめて重要となる。このような範囲とすることにより、コレステリック液晶層の液晶化合物を壊さず、第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等にシワを発生させず、コレステリック液晶層と第二のポリビニルブチラール樹脂フィルム等の間の接着性を向上することができる。
【0070】
コレステリック液晶層の形成
本発明の支持体上にコレステリック液晶層が設けられた積層体は、公知の方法によって製造できるが、支持体の上に、所定の組成物を塗布して作製されるのが好ましい。製造方法の一例は、
(1)透明可塑性樹脂フィルム等の支持体の表面に、水平配向剤と重合性(硬化性の)液晶化合物を含む組成物を塗布して、コレステリック液晶相の状態にすること、
(2)前記重合性液晶組成物(以下、硬化性液晶組成物とも言う)に紫外線を照射して硬化反応を進行させ、コレステリック液晶相を固定してコレステリック液晶層を形成すること、
(3)前記コレステリック液晶層の最外層上に粘着材層を形成すること、
を少なくとも含む製造方法である。
(1)及び(2)の工程を、基板の一方の表面上で2回繰り返すことで図1に示す構成と同様の構成の赤外光反射層を作製することができる。また、(1)及び(2)の工程を基板の一方の表面上で4回繰り返すことで、図2に示す構成と同様の構成の赤外光反射膜を作製することができる。
【0071】
<下塗り層、配向層の形成>
前記下塗り層は、塗布により透明可塑性樹脂フィルム等の支持体の表面上に形成されることが好ましい。このときの塗布方法については特に限定はなく、公知の方法をもちいることができる。
前記配向層は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成等の手段で設けることができる。さらには、電場の付与、磁場の付与、或いは光照射により配向機能が生じる配向層も知られている。配向層は、ポリマーの膜の表面に、ラビング処理により形成するのが好ましい。
【0072】
支持体
ここで、発明の積層体を製造する際には、透明可塑性樹脂フィルム等の支持体が用いられるが、最終製品には、透明熱可塑性フィルムが残る構成であっても良いし、残らない構成であってもよい。
最終製品に残らない構成の場合、本発明で用いる支持体は、ロール トゥ ロールで製造する場合は、可塑性は必要であるが、透明であることは必ずしも必要ない。
一方、最終製品に残る場合、以下の透明可塑性樹脂フィルムが好ましい。
【0073】
(透明可塑性樹脂フィルム)
透明可塑性樹脂フィルムは、自己支持性があり、上記赤外線光反射層を支持するものであれば、なんら限定はない。透明可塑性樹脂フィルムのヘイズは、好ましくは3%以下であり、より好ましくは1%以下である。所定の光学特性を満足するように、生産工程を管理して製造される、λ/2板等の特殊の位相差板であってもよいし、また、面内レターデーションのバラツキが大きく、具体的には、波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)のバラツキで表現すれば、Re(1000)のバラツキが20nm以上、また100nm以上であり、所定の位相差板としては使用不可能なポリマーフィルム等であってもよい。また樹脂基材の面内レターデーションについても特に制限はなく、例えば、波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)が、800〜13000nmである位相差板等を用いることができる。
本発明で用いる透明可塑性樹脂フィルムは、ポリビニルブチラール樹脂フィルムとの圧着や合わせガラス時にポリビリルブチラール樹脂の伸縮に耐えうる剛性を有していることが好ましく、ヤング率はポリビニルブチラール樹脂の100倍〜1000倍程度が好ましい。このような構成とすることにより、反射ムラをより効果的に抑制することができる。
【0074】
可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムとしては、液晶表示装置等の表示装置の部材として用いられる種々の光学フィルム用のポリマーフィルムが挙げられる。前記透明可塑性樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル;ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリイミド、トリアセチルセルロース(TAC)、などを主成分とするフィルムが例示される。この中でも、ポリエチレンテレフタレートおよび/またはトリアセチルセルロースを主成分とするフィルムが好ましい。
【0075】
本発明では、透明可塑性樹脂フィルムの厚さが、30μm〜200μmであることが好ましく、100〜200μmであることがより好ましい。このような厚さとすることにより、反射ムラをより効果的に抑制することができる。
【0076】
<(1)工程>
前記(1)工程では、まず、支持体又は下層のコレステリック液晶層の表面に、前記硬化性液晶組成物を塗布する。前記硬化性の液晶組成物は、溶媒に材料を溶解及び/又は分散した、塗布液として調製されるのが好ましい。前記塗布液の塗布は、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法等の種々の方法によって行うことができる。また、インクジェット装置を用いて、液晶組成物をノズルから吐出して、塗膜を形成することもできる。
【0077】
次に、表面に塗布され、塗膜となった硬化性液晶組成物を、コレステリック液晶相の状態にすることが好ましい。前記硬化性液晶組成物が、溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗膜を乾燥し、溶媒を除去することで、コレステリック液晶相の状態にすることができる場合がある。また、コレステリック液晶相への転移温度とするために、所望により、前記塗膜を加熱してもよい。例えば、一旦等方性相の温度まで加熱し、その後、コレステリック液晶相転移温度まで冷却する等によって、安定的にコレステリック液晶相の状態にすることができる。前記硬化性液晶組成物の液晶相転移温度は、製造適性等の面から10〜250℃の範囲内であることが好ましく、10〜150℃の範囲内であることがより好ましい。10℃未満であると液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるために冷却工程等が必要となることがある。また200℃を超えると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にするために高温を要し、熱エネルギーの浪費、基板の変形、変質等からも不利になる。
【0078】
<(2)工程>
次に、(2)の工程では、コレステリック液晶相の状態となった塗膜に、紫外線を照射して、硬化反応を進行させる。紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。この工程では、紫外線を照射することによって、前記液晶組成物の硬化反応が進行し、コレステリック液晶相が固定されて、コレステリック液晶層が形成される。
紫外線の照射エネルギー量については特に制限はないが、一般的には、100mJ/cm2〜800mJ/cm2程度が好ましい。また、前記塗膜に紫外線を照射する時間については特に制限はないが、硬化膜の充分な強度及び生産性の双方の観点から決定されるであろう。
【0079】
硬化反応を促進するため、加熱条件下で紫外線照射を実施してもよい。また、紫外線照射時の温度は、コレステリック液晶相が乱れないように、コレステリック液晶相を呈する温度範囲に維持するのが好ましい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達せず、膜強度が不十分の場合には、窒素置換等の方法により、雰囲気中の酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下が最も好ましい。紫外線照射によって進行される硬化反応(例えば重合反応)の反応率は、層の機械的強度の保持等や未反応物が層から流出するのを抑える等の観点から、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがよりさらに好ましい。反応率を向上させるためには照射する紫外線の照射量を増大する方法や窒素雰囲気下あるいは加熱条件下での重合が効果的である。また、一旦重合させた後に、重合温度よりも高温状態で保持して熱重合反応によって反応をさらに推し進める方法や、再度紫外線を照射する(ただし、本発明の条件を満足する条件で照射する)方法を用いることもできる。反応率の測定は反応性基(例えば重合性基)の赤外振動スペクトルの吸収強度を、反応進行の前後で比較することによって行うことができる。
【0080】
上記工程では、コレステリック液晶相が固定されて、コレステリック液晶層が形成される。ここで、液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様である。それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該層に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。本発明では、紫外線照射によって進行する硬化反応により、コレステリック液晶相の配向状態を固定する。
なお、本発明においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的にコレステリック液晶層中の液晶組成物がもはや液晶性を示す必要はない。例えば、液晶組成物が、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【実施例】
【0081】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0082】
[実施例1]
(下塗り層用塗布液の調製)
下記に示す組成の下塗り層用塗布液(S1)を調製した。
下塗り層用塗布液(S1)の組成:
アクリルエステル樹脂ジュリマーET−410
(東亞合成(株)製、固形分濃度30%) 50質量部
メタノール 50質量部
【0083】
(配向層用塗布液の調製)
下記に示す組成の配向層用塗布液(H1)を調製した。
配向層用塗布液(H1)の組成:
変性ポリビニルアルコールPVA203(クラレ社製) 10質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
【0084】
(重合性液晶を含む塗布液(重合性液晶組成物)の調製)
下記表に示す組成の重合性液晶を含む塗布液(R1)及び(L1)をそれぞれ調製した。
【0085】
重合性液晶を含む塗布液の組成
【表1】

【0086】
水平配向剤:(特開2005−99248号公報記載の化合物)
【化5】

【0087】
キラル剤:化合物2(特開2002−179668号公報に記載の化合物)
【化6】

【0088】
また、重合性液晶を含む塗布液(R1)のキラル剤LC−756の処方量を0.236質量部に変更しただけで他は同様にして塗布液(R2)を調製した。
【0089】
また、重合性液晶を含む塗布液(L1)のキラル剤化合物2の処方量を0.148質量部に変更しただけで他は同様にして塗布液(L2)を調製した。
【0090】
(塗布および製膜)
PETフィルム(下塗り層無し、富士フイルム(株)製、厚み:188μm、樹脂1)の表面上に、下塗り層用塗布液(S1)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が0.25μmになるように塗布した。その後、150℃で10分間加熱し、乾燥、固化し、下塗り層を形成した。
次いで、形成した下塗り層の上に、配向層用塗布液(H1)を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が1.0μmになるように塗布した。その後、100℃で2分間加熱し、乾燥、固化し、配向層を形成した。配向層に対し、ラビング処理(レーヨン布、圧力:0.1kgf、回転数:1000rpm、搬送速度:10m/min、回数:1往復)を施した。
【0091】
次いで、調製した重合性液晶を含む塗布液(R1)、(R2)、(L1)、(L2)を用い、下記の手順にてコレステリック液晶相を固定し、コレステリック液晶層(以下、CL層とも言う)を製造した。
(1)各塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜の厚みが6μmになるように、前記PETフィルム上に、室温にて塗布した。
(2)室温にて30秒間乾燥させて溶剤を除去した後、125℃の雰囲気で2分間加熱し、その後95℃でコレステリック液晶相とした。次いで、フージョンUVシステムズ(株)製無電極ランプ「Dバルブ」(90mW/cm)にて、出力60%で6〜12秒間UV照射し、コレステリック液晶相を固定して、膜(コレステリック液晶層)を作製した。
(3)室温まで冷却した後、上記工程(1)及び(2)を繰り返し、4層積層されたコレステリック液晶相のコレステリック液晶層を作製した。
なお、塗布液は、(R1)、(R2)、(L1)、(L2)の順番に塗布を行なった。
【0092】
(表面処理)
得られたコレステリック液晶層(CL層)の表面を、下記の手順にて洗浄した。
2−ブタノンの入った容器に、上記で製膜した積層体を浸漬させ、40℃で10分間、洗浄処理をした。
【0093】
(ポリビニルブチラールとの貼り合わせ)
上記で作成したコレステリック液晶層つきのPETを、ポリビニルブチラール(厚み:0.38mm)がコレステリック液晶層側となるように重ね合わせ、ドライラミネーター(大成ラミネーター製)に通して積層体を作成した。このときの搬送張力は、75g/cmとした。このとき、PETが上部ロール側になるようにセットし、面圧および熱圧着ローラを通過する前の全体の厚み(T)/熱圧着ローラを通過した後の全体の厚み(G)は、1.42となるようにした。その後、PETを剥ぎ取った。このときの張力は、100g/cmとした。さらに、PETを剥がした後の積層体を巻き取った。このときの張力は、75g/cmとした。
【0094】
(切断)
得られた積層体について、図4に記載の装置を用いて、フィルムの幅方向の端から70mmの位置を、積層体の搬送する方向にそって切断した。このとき、また、丸刃の周速を100m/分とした。積層体の送り出しローラの搬送速度は10000cm/分とした。丸刃(上刃)と受け刃(下刃で形状は丸い刃)はそれぞれ外径が異なり、上刃はΦ138で下刃はΦ108であった。テンションは1kgf/35mm巾で固定した。
その他の条件は、下記表に示した。切断後、以下の点について評価した。
【0095】
(クラック)
切断後の積層体について、クラックの発生の有無について、視認評価した。
◎:クラックの発生が全く認められなかった。
○:クラックの発生が殆ど認められなかった。
△:切断面から製品側に0.5mm以下のクラックが認められた。
×:切断面から製品側に1mm以上のクラックが認められた。
【0096】
(刃寿命)
刃の寿命について、以下のとおり評価した。
◎:1ケ月以上の稼働可能
○:20日以上の稼働可能
△:10日以上の稼働可能
×:5日以下の稼働可能
【0097】
(総合評価)
クラックの大きさと刃寿命の観点から総合的に評価した。
◎:どちらも◎
○:どちらかが◎と○の組合せ
△:クラック評価が△
×:クラックと刃寿命の少なくとも一方が×である場合
【0098】
結果を下記表に示す。
【表2】

【表3】

【表4】

【符号の説明】
【0099】
1 刃先角
2 刃先角
3 刃先角
6 被切断物
7 面取り量
9 切り込み深さ
21 コレステリック液晶層を含む積層体
22 丸刃
23 受刃
31 支持体
32 コレステリック液晶層
33 ポリビニルブチラール樹脂フィルム等
40 ロール状の積層体
41 送り出しローラ
42 巻き取りローラ
43 丸刃
44 丸刃
45 巻き取りローラ
51 ロール状の積層体
52 切断した積層体
53 送り出しローラ
61 台座
62 刃
64 被切断物
71 送り出しローラ
72 積層体
73 打ち抜きされた積層体
91 コレステリック液晶層
93 ポリビニルブチラール樹脂フィルム等
93’ ポリビニルブチラール樹脂フィルム等
111 コレステリック液晶層
112 透明可塑性樹脂フィルム
113 ポリビニルブチラール樹脂フィルム等
113’ポリビニルブチラール樹脂フィルム等
11a 第一の熱圧着ローラ
11b 第一の熱圧着ローラ
12 支持体の剥ぎ取り用ローラ
13a 第二の熱圧着ローラ
13b 第二の熱圧着ローラ
14 搬送ローラ
21 支持体とコレステリック液晶層の積層体の送り出しローラ
22 ポリビニルブチラール樹脂フィルム等の送り出しローラ
22’ ポリビニルブチラール樹脂フィルム等の送り出しローラ
23 支持体の巻き取りローラ
24 ポリビニルブチラール樹脂フィルム等とコレステリック液晶層の積層体の巻き取りローラ
T 熱圧着ローラ通過前の積層体全体の厚み
G 熱圧着ローラ通過後の積層体全体の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレステリック液晶層を含む積層体を、刃先角は鋭角である刃物で切断することを含む、コレステリック液晶層を含む積層体の切断方法。
【請求項2】
前記刃先角は、15°〜60°の範囲である、請求項1に記載の切断方法。
【請求項3】
前記コレステリック液晶層を含む積層体を切断する際の、切断時のテンションが0.5Kgf/35mm巾〜2.0Kgf/35mm巾である、請求項1または2に記載の切断方法。
【請求項4】
刃の切り込み深さは、0.3mm〜1.0mmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の切断方法。
【請求項5】
刃先の面取り量は、1μm〜5μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の切断方法。
【請求項6】
コレステリック液晶層を含む積層体が、透明可塑性フィルム上にコレステリック液晶層を有するものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の切断方法。
【請求項7】
コレステリック液晶層を含む積層体が、ポリビニルブチラールフィルムまたはエチレンビニルアセテートフィルムの間にコレステリック液晶層を含む構造を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の切断方法。
【請求項8】
コレステリック液晶層を含む積層体が、ポリビニルブチラールフィルムまたはエチレンビニルアセテートフィルム、コレステリック液晶層、透明可塑性フィルムおよびポリビニルブチラールフィルムまたはエチレンビニルアセテートフィルムを該順に有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の切断方法。
【請求項9】
水平配向剤と重合性液晶化合物を含む赤外線反射層と、少なくとも一層のポリビニルブチラール樹脂フィルムとを有し、請求項1〜8のいずれか1項に記載の切断方法で切断されてなる積層体。
【請求項10】
透明可塑性樹脂フィルムと、水平配向剤と重合性液晶化合物を含む赤外線反射層と、少なくとも一層のポリビニルブチラール樹脂フィルムとを有し、請求項1〜8のいずれか1項に記載の切断方法で切断されてなる積層体。
【請求項11】
請求項9または10に記載の積層体であって、前記赤外線反射層の両側にポリビニルブチラール樹脂フィルムを有する積層体を、一対のガラスで、狭持してなる合わせガラス体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate