説明

コレステロールを低下および同化する能力を有する酸および胆汁酸塩耐性のLactobacillus分離株

【課題】コレステロールを低下させる能力を有する酸および胆汁酸塩耐性Lactobacillus分離株の提供。
【解決手段】Lactobacillus分離株またはそれらの継代培養した子孫またはそれに由来する突然変異体であり、種々の食品の調製において、そして胃腸管疾患の処置および予防における使用のための、そして血清コレステロールを低下させる際の使用のための医薬品の製造において、使用され得る。この新規なLactobacillus分離株は、公知のL.acidophilus ATCC 43121、ATCC 4356およびDDS−1と比較して高いコレステロール低下能力を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
1)発明の分野
本発明は、血清コレステロールを低下および同化させる能力を有する新規な胃酸および胆汁酸塩耐性のLactobicillus分離株ならびにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2)関連分野の説明
「乳酸菌」は、糖を発酵し、主要産物として乳酸を生産し得る細菌の群である。乳酸菌の一般的に受け入れられた形態学的および生理学的特徴は、これらが、(1)グラム陽性であり;(2)桿状またはディスク形(disk−shaped)であり;(3)カタラーゼ陰性であり;(4)代謝されたグルコースを50%を超える乳酸に変換し得;(5)非胞子形成性であり;(6)不動性であり(nonmotile);そして(7)微好気性(microaerobic)である点に存在する。
【0003】
1980年までに、乳酸菌は一般に4つの属(すなわち、Lactobacillus、Streptococcus、LeuconostocおよびPediococcus)(W.C.FrazierおよびD.C.Westhoff,1978,Food Microbiology,第3版、McGraw−Hill,Inc.,New York,USA)を含むことが知られていた。より広い意味では、乳酸菌は、BifidobacteriumおよびSporolactobacillusの2つの属を更に含む。近年においては、微生物は、DNA相同性およびrDNA配列比較および分類系における分析に従って分類群として明確に分類され、そして分類学において一定の位置を与えられている。出願人の知識によると、乳酸菌のファミリーは、1999年12月までに16属および223種を含むまでに拡大した。
【0004】
いわゆる「プロバイオティックス(probiotics)」は、単一の型の生きている細菌または異なる型の細菌の混合物であり、これらは、ヒトまたは動物宿主によって摂取された後に、ヒトまたは動物の腸管において胃腸管の微生物バランスを改善し得る(O’sullivanら(1992)、Trends in Food Sci.Technol.,3:309−314;Fuller,R.,P.J.Heidt,V.RushおよびD.van der Waaij.(編)(1995)、Probiotics:prospects of use in opportunistic infections. Old Herborn University Seminar Monograph No.8,pp.1)。LactobacillusおよびBifidobacteriumは最も広範に知られており、プロバイオティックスとして使用される。
【0005】
1908年、Dr.Eli Metchnikoffは、Lactobacillussp.株を含む大量のヨーグルトの消費によって、腸管に通常存在する毒素生産細菌を置き換え、これにより、加齢のない長寿を生じることを提案した(Eli Metchnikoff,1908,The Prolongation Of Life,Ed.P.Chalmers Mitchell,G.P. Putnam’s Sons,The Knickerbocker Press,New York&London)。近年の研究および臨床試験によって、Lactobacillusは健康に重大に関連することがまた示された。従って、Lactobacillusは、近年において幅広い注目を受けている。
【0006】
乳酸菌は、腸管の複雑なバイオシステムにおいて重要な役割を果たすだけでなく、これらはまた宿主に対してプロバイオティック効果を有する。乳酸菌の認識された効果としては、以下が挙げられる:宿主のえさの栄養値を改善すること;ビタミンの合成および酵素の生産を促進すること(J.DenterおよびB.Bisping,1994、Int.J.Food Microbiol.,22:23−31)、腸内病原菌の増殖を阻害することおよび正常な腸管マイクロフローラ(microflora)のバランスを維持すること(Hose,H.およびSozzi,T.(1991)、J.Chem.Technol.And Biotech.51:540−544)、宿主の免疫を強化するために抗体を産生すること(H.Majamaaら(1995)、Journal of Pediatric Gastro−enterology and Nutrition,20:333−338)、結腸癌の危険を減少させること、ならびに腫瘍形成を抑制すること(E.J.Schiffrinら、1997,Am.J.Clin.Nutr.,66:515S−520S)。研究により、Lactobacillusで発酵したミルクの消費が血清コレステロールレベルを低下させ得ることがまた示されている。
【0007】
心血管疾患は、工業国における主要な原因として示されている。米国において、より多くの人が、癌および他の疾患よりも冠動脈性心疾患(coronary heart disease)で死亡し、そしてその死亡の約4分の3が、動脈硬化およびその合併症によって引き起こされる。高血清コレステロールレベルは、心血管疾患および動脈硬化の原因の1つである(Kannelら(1979)、Ann.Intern.Med.,90:85−91;Pekkanenら(1990)、New England J.Med.,322:1700−1707)。台湾において、脳血管疾患および心血管疾患は、死亡のトップ10の主要な原因のリスト上に存在し、そして老年の人々における病気および死の主要な原因である。従って、高コレステロール血症は、無視できない病気の原因である。
【0008】
1974年、MannおよびSpoerryは、Lactobacillus株で発酵したヨーグルトの消費後に、ヒトにおける血清コレステロールレベルが減少したが、新鮮なミルクを消費した者においては有意な変化が観察されなかったことを見出した(Am.J.Clin.Nutr.,27:464−469,1974)。このことは、乳酸菌の適用およびコレステロールを低下させる際のそれらの効果に関する研究に拍車をかけた。
【0009】
K.K.Grunewaldは、J.of Food Science:47:2078−2079(1982)において、Lactobacillus acidophilusによって4週間発酵された10%ミルクを含むえさがラットに与えられた場合に、ラットにおける血清コレステロールレベルが有意に減少し得ることを報告した。Danielsonらによってもまた、J.Anim.Sci.:67:966−974(1989)において、Lactobacillus acidophilus LA16分離株で56日間発酵したヨーグルトと組み合わせた高コレステロールの食餌を与えられたイノシシにおいて、acidophilusヨーグルトが、血清コレステロールおよび低密度リポタンパク質(LDL)を低下させるが、血清トリグリセリドおよび高密度リポタンパク質(HDL)に影響を与えなかったことがまた報告された。
【0010】
上述の報告(これは、Lactobacillus acidophilusの分離株(LA16)に関連する)は、Lactobacillus acidophilusの特徴および生物活性に関するDr.Khem M.Shahaniが率いる研究グループによる多数の研究の1つである。詳細には、Dr.Shahaniのグループは、血清コレステロールレベルを減少させる際のその効果に関する研究を含む、ヒト起源のLactobacillus acidophilus DDS−1の特に分離株および培養株の特徴および生物活性に関するかなり広範な研究を行ってきた。DDS−1分離株は、後に特許化された(DDS−1TMに関する情報は、Nebraska Cultures,Inc.のウェブサイト、 HYPERLINK "http://www.nebraskacultures.com.benefits.html"
http://www.nebraskacultures.com.benefits.html上で入手可能である)。
【0011】
1997年、Akalinらは、マウスにおける血清コレステロールレベルに対する通常のヨーグルト(Streptococcus thermophilusおよびLactobacillus delbruekii ssp.bulgaricusによって発酵された)およびacidophilusヨーグルト(Streptococcus thermophilusおよびLactobacillus acidophilusによって発酵された)の効果を比較し、そしてAacidophilusヨーグルトの血清コレステロール濃度を減少させる能力が通常のヨーグルトのそれよりも有意に高いことを見出した(A.S.Akalinら(1997)、J.Dairy Sci.,80:2721−2725)。
【0012】
De Smetらは、British J.of Nutrition、79:185−194(1998)において、Lactobacillus acidophilusで4週間(3〜7週間)飼育したブタにおいて、胆汁酸塩の排泄物(fecal output)が有意に増加し、そしてブタにおける総血清コレステロール濃度がまた有意に減少したことを報告した。従って、Lactobacillus中の胆汁酸塩ヒドラーゼ(BSH,E.C.3.5.1.24)の酵素学的活性が処置されたブタにおける血清コレステロールを低下させることを担う機構であり得ると結論づけられた。
【0013】
ヒトにおけるコレステロールは肝臓によって合成され得、そしてまた肉から摂取され得る。コレステロールの2つの排出経路が存在する:(1)肝臓代謝の結果としてコール酸を形成し、これは次いで、糞便中における排泄のためにグリシンまたはタウリンと抱合されて水溶性となり、次いでカリウムまたはナトリウムイオンと共にグリココール酸塩およびタウロコール酸塩のような胆汁酸塩を形成する;および(2)ホルモン代謝の結果として、尿中に排泄されるステロイドホルモンを形成する;しかし、コレステロールのごく一部のみがこの様式で排泄される。
【0014】
胆汁酸塩は、コレステロール代謝における水溶性の最終産物である。これらの塩は腸肝循環に入り得、腸内細菌(Lactobacillus、Enterococcus、Peptostreptococcus、Bifidobacterium、ClostridiumおよびBacteroidなどを含む)の胆汁酸塩ヒドラーゼ(BSH)の酵素学的活性に起因して、コール酸をグリシンまたはタウリンから分離して脱抱合胆汁酸塩を生じ得る。脱抱合胆汁酸塩は、水中で溶解せず、そして体からの排出のために血清コレステロールと共に同時沈殿する(co−precipitate)ようである。
【0015】
上述に加えて、コレステロールの代謝機構は同化および同時沈殿の両方を含むことが報告されている。
【0016】
1985年、Lactobacillus acidophilusはコレステロールに接着しそして同化すること、そして0.3%雄牛の胆汁を含む培地において、Lactobacillus acidophilusはより高いコレステロールの減少を達成し得ることが指摘された(S.E.Gillilandら(1985)、Appl.Environ.Microbiol,49:377−381)。同様に、Nohらによって、J.Dairy Sci.(1997)、82:3107−3113において、Lactobacillus acidophilusは、細胞膜にコレステロールを取り込むことができ、そして取り込まれたコレステロールは、さらに同化および代謝され、細胞によって必要とされる物質を形成し得ることが報告された。
【0017】
一方、F.A.M.KalverおよびR.van der Meerによって、Appl.Environ.Microbiol.(1993)、59:1120−1124において、LactobacillusおよびBifidobacteriumはコレステロールを同化し得なかったが、pH値が6.0より低い場合に細菌の胆汁酸塩の抱合活性を増加させることによって培地中のコレステロール含量を減少し、胆汁酸塩とコレステロールとの同時沈殿を生じ得る(この現象は細菌のBSH活性に関連し得る)ことが報告された。
【0018】
1997年、M.M.BarashearsおよびS.E.Gilillandは、LactobacillusがpH制御なしで(すなわち、4.5〜5.5の正常のpHにおいて)増殖の間に良好なコレステロール同時沈殿を示すことを示した。しかし、pH値は約6.0に維持されれば、前記細菌のコレステロールを除去する能力は有意に減少した(M.M.BrashearsおよびS.E.Gililland(1997)、Influences of pH during growth on removal of cholesterol from MRS broth by Lactobacillus casei and Lactobacillus acidophilus, Animal Science Research Report, pp.32-37; http://www.ansi.okstate.edu/research/1997rr/006.htm)。
【0019】
1998年、Zhang Jia−chengらは、「同化」が高脂質ミルクおよび食用油で実験することによって乳酸菌によるコレステロールの減少における主要な機構であることを証明しようと試みた(Zhang Jia−chengら(1998)、「The research of cholesterol elimination in food by lactic acid bacteria − the screening of lactic acid bacteria species (strains)」Food Science (P.R.O.C),19:20-22)。
【0020】
1999年、UsmanおよびHosonoは、J.Dairy Sci.,82:243−248において、新たに見出されたLactobacillus種であるLactobacillus gasseriは、胆汁酸塩なしの培養条件下でコレステロールを取り込み得ることを示した。
【0021】
ヒトにおける血清コレステロールレベルを減少させる生物学的方法を使用することは、より経済的かつ効果的である。上述の参考文献から、乳酸菌は、インビボおよびインビトロの両方において、コレステロールを減少させる効果を示し得ることが明らかであり、そしてあり得る機構としては、胆汁酸塩ヒドラーゼ(BSH)による脱抱合、酸性条件下での脱抱合した胆汁酸塩とのコレステロールの同時沈殿、および乳酸菌細胞によるコレステロールの同化が挙げられる。
【0022】
しかし、ヒト身体に摂取された後、乳酸菌は、胃腸管環境からの圧力および小腸の吸収作用の特異性に遭遇する。従って、乳酸菌は、腸管において増殖しそしてそれらの反応を発揮するために、まず、好ましくない消化系の環境を克服し、そして腸管にコロニー形成しなければならない。さらに、Lactobacillus acidophilus株は、複雑な栄養要求(nutritional requirements)を有する細菌群である。この細菌は、発酵ミルクにおいて比較的安定である。しかし、(乾燥粉末、顆粒(grains)、錠剤の形態の)市販の製品中の細菌は、室温または冷蔵庫の温度での長期貯蔵後にほとんど生存可能ではなく、細菌のレベルは最初の貯蔵レベルで容易に維持され得ない。従って、非発酵乳製品中の実際の細菌数は、製品ラベルに示されるものよりもしばしば少ない。従って、市販および貯蔵の間の乳酸菌製品中の乳酸菌のレベルの維持の仕方は、製造業者にとって最高に重要である。さらに、酸および胆汁酸塩に対する良好な耐性を有し、かつ血清コレステロールを低下させ得る細菌株を得るために細菌をスクリーニングすることは、優れたLactobacillus製品の開発において非常に重要な課題である。
【0023】
上述したように、酸および胆汁酸塩に対する耐性および貯蔵安定性は、細菌をスクリーニングする際に考慮され、コスト削減が引き続く製造プロセスにおいて達成され得、そしてスクリーニングされた細菌株は、より広範な適用を有し得る。さらに、有効な細菌株についてスクリーニングすることはまた、起源および局在性に関連している。従って、近年、研究者らの努力は、ヒト起源の細菌株のスクリーニングに焦点が当てられている。
【0024】
日本では、全部で171のFOSHU(特定保健用食品(Foods for Specified Health Use))承認製品において、36がプロバイオティック細菌を含んでいる。これらは、製品総数の約21%を構成するが、82%までの生産価値(production value)を有する。欧州では、食品市場におけるプロバイオティック細菌の生産価値は、10億USドルに相当する。米国では、2000年のヨーグルト販売は、18.6億USドルであった。台湾では、プロバイオティック細菌市場は、2000年に42億NTドルまで成長した。プロバイオティック細菌の応用は毎年増加し、そしてもはや、発酵ミルク、アイスクリーム、キャンディーおよびダイエタリーサプリメントに制限されない。これらの製品は、大人、幼児、家禽、および家畜によって消費される。プロバイオティック市場の成長については巨大な余地があると期待されている。
【0025】
乳酸菌に関する多数の研究が世界中に存在する。Lactobacillus sp.の酸耐性およびコレステロール低下能力に関する多数の特許および刊行物がLactobacillus acidophilusに関するものであり、そしてほとんどが胆汁および酸耐性細菌株に関しているか、またはコレステロールおよび胆汁酸耐性を減少させる能力について主に焦点を当てている。現在のところ、Lactobacillus sp.の胆汁酸耐性に関して実施された研究によって、この細菌株は0.3%グリココール酸を含む環境中で増殖し得、そして酸耐性はpH2(初期段階の胃液分泌において胃腸管において生じる酸性条件)の培地を使用して試験される。
【0026】
Lactobacillus sp.の血清コレステロールを減少させる能力は、公開された特許によると約20%であり、そして刊行物によると、使用される方法に依存して約10%〜約80%の範囲に存在する。
【0027】
米国特許第4,839,281号および米国特許第5,032,399号はL.acidophilus GG(ATCC53103)株を開示し、これはヒトの糞便から分離された。この株は、0.15%胆汁酸塩を含む環境中で増殖し得、そしてpH1〜2で2時間培養した後の残りの細菌量は、103CFUである。S.E.GillilandおよびD.K.Walkerによって、J.Dairy Sci.:73:905−911(1990)において、ブタ起源のL.acidophilus ATCC 43121(CCRC17064に対応)およびヒト起源のL.acidophilus ATCC4356(CCRC10695に対応)は共に、0.3%胆汁酸塩で補充したMRSブロス中で増殖し得、そして血清コレステロールレベルを減少させる能力を有する。
【0028】
さらに、L.acidophilus LA16(Danielsonらによって、J.Anim.Sci.(1989)、67:966−974において報告されるようにブタから分離された株)およびLactobacillus acidophilus DDS−1(ヒト起源の分離株(内因性ヒト株))(これは、Dr.Khem M.Shahaniによって率いられた科学者らによって開発され、現在Nebraska Cultures,Inc.,の特許製品である)は、血清コレステロールを減少させる能力を示した(http://www/nebraskacultures.com./benefits.html)。
【0029】
UsmanおよびHosonoは、J.Dairy Sci.,82:243−248(1999)において、分離されたLactobacillus株Lactobacillus gasseriは酸および胆汁酸塩に対する耐性およびコレステロールを減少させる能力を示すことを報告した。
【0030】
米国特許第5,516,684号および米国特許第5,707,854号において、Yoshio SaitoおよびJun Mizutaniは、2つのL.acidophilus株(すなわち、L.acidophilus FERM−P−14204およびL.acidophilus FERM−P−14205)を開示する。これらの株は、胆汁酸塩の脱抱合を示さず、そして栄養分吸収作用を阻害しないが、これらは血液および肝臓においてコレステロールの低下を示す。
【0031】
しかし、上述のLactobacillus株は外来起源である。台湾における細菌株をスクリーニングすることによって、酸および胆汁酸耐性でありかつ血清コレステロールを低下し得るLactobicillus分離株を得ることが望ましく、こうして得られた分離株は、スターターとして使用される場合または処理された製品に添加される場合に、台湾の人々の胃腸管環境に適応し得、腸に達しそして摂取後に腸にコロニー形成し得、これにより製品の機能性を強化する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0032】
(発明の要旨)
従って、第1の局面において、本発明は、台湾におけるヒト被験体からサンプルをスクリーニングすることによって、酸および胆汁酸耐性ならびに血清コレステロールを減少させる優れた能力を含む特徴を有するLactobacillus分離株を提供する。
【0033】
本発明において、健康な幼児由来の糞便試料を、細菌株の起源として使用した。試料をスクリーニングして、胃腸管環境において酸および胆汁酸塩に耐え、コレステロールを低下させ得る細菌株を分離する。結果として、上述の特徴を有する6つの新規なLactobacillus分離株(すなわち、Lactobacillus gasseri B21T1、B21T6、C21T1、X21B7およびB38T38ならびにL.acidophilus B6T7)を得た。これらの分離株は、それぞれアクセッション番号CCRC910195、CCRC 910196、CCRC 910198、CCRC 910199、CCRC 910197およびCCRC 910194で、食品工業発展研究所(FIRDI,331 Shih−Pin Road,Hsinchu City 300,Taiwan,R.O.C.)に2002年6月18日に寄託した。これらの分離株はまた、2002年6月21にブタペスト条約下で、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC,P.O. Box 1549、Manassas,VA 20108、 USA)において寄託し、それぞれATCCアクセッション番号PTA−4483、PTA−4484、PTA−4479、PTA−4480、PTA−4481およびPTA−4482が付与された。
【0034】
本発明に従う新規なLactobacillus分離株は、以前に公知のL.acidophilus ATCC 43121、ATCC 4356およびDDS−1と比較して高いコレステロール低下能力を示した。
【0035】
第2の局面において、本発明は、本発明に従う新規なLactobacillus分離株、またはその継代培養した子孫またはそれから由来する突然変異体の少なくとも1つを含む組成物、および食品(例えば、飲料、ケーキ、幼児食品、発酵ミルク、ダイエタリーサプリメント、および動物のえさなど)の製造に適した賦形剤を提供する。
【0036】
第3の局面に従って、本発明は、胃腸管疾患を処置および予防するためならびに血清コレステロールを低下させるための、本発明に従う新規なLactobacillus分離株またはその継代培養した子孫またはそれに由来する突然変異体の少なくとも1つのプロバイオティック有効量を含む薬学的組成物を提供する。
【0037】
(発明の詳細な説明)
台湾に固有でありかつ台湾の人々の胃腸管環境における増殖に適したLactobacillus株を得るために、本出願人は、所望な細菌株をスクリーニングするための起源として、Hsinchu City,Taiwanに暮らしている1〜6歳の健康な幼児の糞便を使用し、そしてLactobacillusと疑われる菌株をスクリーニングするために一連のRogosa寒天ベースの選択培地を利用した。43の試料から得た828分離株中400の疑わしい菌株を見出した。これらの疑わしい菌株を、上記本発明の要旨において言及した特徴についてさらに試験した。これらは以下の通りに要約され得る:1.酸に対する安定性;
2.胆汁酸塩に対する安定性;および
3.コレステロールを減少させる能力。
【0038】
これらの疑わしい菌株を、上述した特徴の点において、公知の菌株と比較し、スクリーニングして所望の能力を有する6つのLactobacillus分離株を得た。
【0039】
得られた6つの分離株を、API同定システム、Micro−ISシステムおよび16S rDNA配列分析を使用してさらに同定した。同定結果に従って、これらの6つの分離株をそれぞれ分類し、そしてLactobacillus gasseri B21T1、B21T6、C21T1、X21B7およびB38T38、ならびにL.acidophilus B6T7と命名した。これらの分離株を、それぞれアクセッション番号CCRC 910195、CCRC 910196、CCRC 910198、CCRC 910199、CCRC 910197およびCCRC 910194で、2002年6月18日に食品工業発展研究所(FIRDI,331 Shih−Pin Road,Hsinchu City 300,Taiwan,R.O.C.)に寄託した。これらの分離株はまた、2002年6月21にブタペスト条約下で、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(ATCC,P.O. Box 1549、Manassas,VA 20108、 USA)において寄託し、それぞれアクセッション番号PTA−4483、PTA−4484、PTA−4479、PTA−4480、PTA−4481およびPTA−4482が付与された。
【0040】
上述の有利な特徴を考慮して、本発明に従うLactobacillus分離株は、プロバイオティックスとしての使用に適している。例えば、これらの分離株は、流動性ミルク(ミルク、濃縮ミルク)、発酵ミルク(ヨーグルト、サワーミルク(sour milk)、フローズンヨーグルト(frozen yogurt)、乳酸菌発酵飲料)、粉ミルク、アイスクリーム、クリームチーズ、ドライチーズ、豆乳、発酵豆乳、野菜−フルーツジュース、フルーツジュース、スポーツドリンク、菓子類(confectionery)、キャンディー、幼児食品、栄養食品(nutritional food products)、動物のえさおよびダイエタリーサプリメントを含む、広範な食用材料に処方され得る。これらの製品の各々における細菌のカウントは、1グラムまたは1ミリリットル当たり約106〜109CFU(コロニー形成単位)であり得る。
【0041】
本発明のLactobacillus分離株は、公知の方法論に従って、食品添加成分として使用され得、これらは、ヒトおよび動物による摂取に適した形態に処方するために、原材料の調製の間に添加され得るか、または発酵物中のこれらの参加(participation)が所望でない場合、これらは発酵プロセスに引き続いて添加され得る。好ましくは、本発明のLactobacillus分離株は、食用材料単独に処方されてもよいし、少なくとも1つの他のプロバイオティック生物と組み合わせて処方されてもよい。これらのプロバイオティック生物としては、Lactobacillus sp.(例えば、L.acidophilus、L.lactis、L.brevis、L.casei、L.plantarum、L.salivarius、L.bifidus、L.bulgaricus、L.causasicusおよびL.rhamnosus);Streptococcus sp.(例えば、Streptococcus thermophilusおよびStreptococcus lactis);酵母(例えば、Candida KefyrおよびSaccharomyces florentinus);あるいはこれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0042】
別の応用において、本発明のLactobacillus分離株は、それ自体またはこれらの分離株を組み込む上述の製品は、凍結乾燥粉末または噴霧乾燥粉末として調製され、その結果、各製品は、約108〜約109CFUを超える活性Lactobacillus細胞を含む。さらに、このような製品は、酵母粉末、糖または他の充填剤(例えば、Lactobacillusを含む消化改善薬物またはインスタント食品)および直接消費のための細菌粉末をそこに添加することによって、錠剤またはカプセル形態で調製され得る。
【0043】
さらに、本発明はまた、これらの望ましくない腸内微生物によって引き起こされる胃腸管問題を軽減するために、哺乳動物の消化管における望ましくない腸内微生物のコロニー形成を制御する際に医薬品として単独でかまたは他の活性成分と組み合わせて、上述のLactobacillus分離株の使用を意図する。医薬品の組成物は、液剤、乳濁剤、散剤、錠剤、カプセル剤または経口投与に適切な他の形態に処方され得る。
【0044】
さらに、本発明のLactobacillus分離株のコレステロールを減少させる能力を考慮して、本発明のLactobacillus分離株は、血清コレステロールを減少させるための健康食品および非処方箋薬物の調製において使用され得る。
【0045】
上記のように、本発明のLactobacillus分離株、これらの継代培養した子孫またはこれらの由来する突然変異体のものと同一の細菌学的特徴を有する細菌株は、本発明の範囲および技術概念内であることが意図される。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「突然変異体」は、例えば、ヌクレオチド置換、挿入または欠失に起因する少なくとも1つのヌクレオチドによって、遺伝子組成が参考株または親株のものと異なる細菌株をいう。本発明の突然変異体は、天然変異以外の多数の方法論によって生成され得る。例えば、突然変異体は、例えば、化学的突然変異原、トランスポゾンまたは放射線照射によって、その親株の無作為な突然変異誘発から獲得され得る。さらに、本発明の変異株は、組換え核酸配列を含み得る。例えば、突然変異体は、さらなる核酸配列(例えば、形質転換されたか、形質導入されたか、または他にその親株の細胞中に挿入された配列)を保有する細菌株であり得る。さらなる核酸配列は、一般的にまたは条件的に発現されるポリペプチドをコードし得る。あるいは、さらなる核酸配列は、細胞生理学を変更し得る核酸配列(例えば、アンチセンス、リボザイム、または任意の他の核酸配列)をコードし得る。別の例において、核酸は、内因性遺伝子に挿入され、それによって前記内因性遺伝子の機能を変更(強化または破壊)する。例えば、挿入された核酸は、内因性遺伝子を不活化するノックアウト構築物、または内因性遺伝子の転写を増加する人工エンハンサーまたはプロモーターであり得る。
【0047】
本発明は、以下の実施例を参照してより詳細に説明される。これらの実施例は、例示の目的だけに与えられ、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(実施例1 Lactobacillus分離株の分離およびスクリーニング)
材料および方法:
I.培養培地および希釈物:
1.スクリーニング培養培地:
(A)トマトジュース寒天培地:
カゼイン酵素加水分解物 10g
(Sigma,Louis,Mo,USA)
スキムミルク 10g
トマトジュース 400ml
寒天 12g
蒸留水 1Lに調整
(B)Rogosa寒天培地:
Rogosa寒天(Merck,Darmstadt,Germany) 74.5g
蒸留水 1L
マイクロ波加熱によって寒天を溶解し、得られた混合物を55℃まで冷却し、酢酸でpHを5.5に調整する
(C)Lactobacillus選択培地(LBS):
Rogosa寒天 8.4g
トマトジュース 40ml
蒸留水 60ml
マイクロ波加熱によって寒天を溶解し、得られた混合物を55℃まで冷却し、酢酸でpHを5.5に調整する
(D)Rogosa+X−glu寒天培地:
80mgの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルコピラノシド(X−glu,Sigma,Louis,MO,USA)を100mlの0.2M Tris緩衝液(pH8.5)中に添加し、そして超音波処理を使用して溶解した。10mlの得られた溶液を190mlのRogosa寒天に55℃で添加し、40μg/mLの最終濃度
でX−gluを含むRogosa+X−glu寒天を形成した。
【0049】
2.細菌活性化培地:
(A)Bacto Lactobacilli MRSブロス(Difco Laboratories,Deteroit、MI,USA);および
(B)MRS寒天:Agar bacteriological(Scharlau Chemie S.A.,Barcelona,Spain)(15g/L)で補充したBacto Lactobacilli MRSブロス。
【0050】
3.リボース利用培地:
基礎培地の組成:
Bacto proteose peptone no.3 10g
(Difco Laboratories,Detroit,MI,USA)
Bacto yeast extract 5g
(Difco Laboratories,Detroit,MI,USA)
Tween 80 1g
アンモニウムハイドロジェンシトレート(ammonium hydrogen citrate) 2g
酢酸ナトリウム 5g
硫酸マグネシウム 0.1g
硫酸マンガン 0.05g
リン酸(水素)二カリウム 2g
クロロフェノールレッド 0.05%
蒸留水 1L
HClでpHを6.3に調整する。
【0051】
上で調製したような基礎培地を1チューブ当たり4.5mlの基礎培地の量で試験管にパッケージングした。121℃で15分間オートクレーブして滅菌した後、各試験管に、濾過によって滅菌した0.5mlの10%リボース溶液を添加した。
【0052】
4.希釈液:0.1%ペプトン水(BACTOTM ペプトン,Difco Laboratories,Detroit,MI,USA)
II.Lactobacillus株を分離およびスクリーニングするための手順
1. およそ指先の大きさの糞便(これらは、スティックを使用して1〜6歳の幼児の糞便試料の中間部分からサンプリングした)を、9mlの上述の希釈液(0.1%ペプトン水)を含む試験管に添加し、10倍希釈の試験溶液を得た。希釈した試験溶液を十分かつ均一に撹拌し、次いで数分間静置させ、試料中の微生物を希釈液中に遊離させた。
2. 1mlの上述の希釈試験溶液を、9mlの同一の希釈液を含む別の試験管に導入した。連続希釈を、104倍希釈液が作製されるまで、この様式で行った。
3. 102、103、および104倍希釈試験溶液(各々0.2mlの量で存在し、工程2で記載される連続希釈によって調製される)を、種々のスクリーニング培地(Rogosa寒天、トマトジュース寒天、Lactobacillus選択培地およびRogosa+X−glu寒天)にそれぞれ適用し、L型ガラスロッドを使用して均等に広げた。次いでこれらのスクリーニング培地を、37℃の温度に設定した混合気体(5%H2,10%CO2および85%N2)を含む嫌気性インキュベーター中に配置し、2〜4日間培養した。
4. 桿形の細菌コロニー(これはRogosa+X−glu寒天上で青色を示し、顕微鏡試験下で不動性であることが示されたか、または他のスクリーニング培地上で増殖する場合に半透明であるように見え、顕微鏡試験下で不動性でもある)を選択した。スティックによって取り上げた細菌を、MRSブロスを含む試験管および内部発酵チューブ(inner fermention tube)中に導入した。37℃で1〜2日培養した後、細菌株(これは、気体を生成することなく増殖し、グラム陽性染色によって陽性結果を有することが示される)を回収した。
5. MRSブロス中で2回活性化した後、工程4で回収した細菌株を、以下の様式で、増殖温度およびリボース利用について試験した:
(i)MRSブロス培地を、1%の細菌接種物で接種し、そして15℃で14日間静置した。培地がそこで細菌増殖を有することを示した場合、このことは、接種された細菌株が15℃で増殖し得ることを示す。一方、細菌増殖が14日目に見出されない場合、このことは、接種された細菌株が15℃で増殖し得ないことを示す。
(ii)MRSブロス培地を、1%の細菌接種物で接種し、そして45℃で2日間静置した。培地がそこで細菌増殖を有することを示した場合、このことは、接種された細菌株が45℃で増殖し得ることを示す。一方、細菌増殖が見出されない場合、このことは、接種された細菌株が45℃で増殖し得ないこと示す。
(iii)リボソーム利用培地を1%の細菌接種物で接種し、37℃で数日間静置した。(iv)培養培地の色が紫色から黄色に変わった場合、このことは、接種された細菌株が、増殖のためにリボースを利用することができそして酸を生成し得ることを示す。培養培地の色が7日後も紫色のままである場合、培地をさらに数日間静置する。培養培地の色がまだ黄色に変わらない場合、このことは、接種された細菌株が増殖のためにリボースを利用することができず酸を生成できないことを示す。
【0053】
III.結果:
本実施例において、Lactobacillusスクリーニング培地は主にRogosa寒天に基づいており、そしてこれらのいくつかは、トマトジュースまたはX−gluでさらに補充した。トマトジュースは、ビタミンB群が豊富であり、Lactobacillusの増殖に対して有益である。Rogosa寒天に関しては、そこに含まれる酢酸が細菌増殖を阻害するようにpH値を低下させることを助け、そして高濃度の酢酸イオンがまた、微生物の増殖を阻害する効果を有する。
【0054】
Lactobacillus acidophilus株がRogosa寒天上で培養される場合、これは白色コロニーを形成し、そしてLactobacillusの他の株から容易に区別可能ではない。X−gluがRogosa寒天に添加される場合、Lactobacillus acidophilusの細菌コロニーは色が青色となる。これは、Lactobacillus acidophilusの細胞が、X−gluのβ−D−グルコシド結合を破壊して青色色原体(これは、Lactobacillus acidophilusの細菌コロニーを青色にする)を生成し得るβ−D−グルコシダーゼの活性を有するためである。しかし、この酵素はまた、多数の他の微生物の細胞中にも存在するので、選択された細菌株は、所望の特性を有すると疑われる菌株が選択され得る前に、顕微鏡試験、グラム染色、ならびにリボース利用および増殖温度についての上述の生理学的および生化学的試験を受けなければならない。
【0055】
本出願人は、Hsinchu City,Taiwanに住んでいる1〜6歳の健康な幼児から43の糞便試料を集めた。各試料の希釈サンプルを、上記の手順に従って選択培地のそれぞれの上にプレートした。選択培地上に細菌コロニーの形成が観察される場合、異なる色および形態を有する細菌コロニーを選択し、顕微鏡試験を受けるために選択した。桿形の細菌細胞によって形成される細菌コロニーをさらにグラム染色に供した。次いで、グラム陽性桿菌を含むことが見出された任意の細菌コロニーを選択し、「分離株」と称する。
【0056】
このようにして選択された分離株を、そこに内部発酵チューブを含むMRSブロスにそれぞれ導入し、培養中に気体を生成しないものを選択して、増殖温度およびリボース利用試験を受けた。15℃ではなく45℃で増殖し得、そして増殖のための炭素供給源としてリボースを利用し得ない、任意の試験株を別にとっておき、そしてこの段階で選択された菌株を「疑わしい菌株(suspected strains)」と称する。
【0057】
表1を参照すると、出願人らは、回収した43の試料から選択された全部で828分離株から400の疑わしい菌株を得た。
【0058】
表1.回収した試料*の番号付けおよび前記試料から得られた細菌分離株の数
【0059】
【表1】

【0060】
*試料の起源:Hsinchu City,Taiwanに住む1〜6歳の幼児由来の糞
便。
**本発明に従うLactobacillus分離株が得られた試料番号。
【0061】
次いで、疑わしい菌株を、以下の実施例において記載される酸耐性試験、胆汁酸塩耐性試験、およびコレステロール低下試験に供した。6つの分離株(すなわち、B21T1、B21T6、C21T1、X21B7、B38T38およびB6T7)は、これらの試験において優れた特性を示し、従って、上記特性の点において、以下の公知の細菌株と比較した。
1.Lactobacillus acidophilus CCRC 17064(ATCC 43121に対応;ブタから分離された):このLactobacillus株は、血清コレステロールを低下させる能力を有する(S.E.Gillilandら(1985)、Appl.Environ.Microbiol.,49:377−381;S.E.GillilandおよびD.K.Walker(1990),J.Dairy Sci.,73:905−911;F.A.M.KalverおよびR.van der Meer(1993)、Appl.Environ.Microbiol,59:1120−1124;D.O.Nohら(1997)、J.Dairy Sci.,82:3107−3113);
2.Lactobacillus acidophilus CCRC 10695T
ATCC 4356に対応;ヒトから分離された):このLactobacillus株は、Lactobacillus acidophilusの標準株であり、そしてヒト起源である(D.K.WalkerおよびS.E.Gilliland(1993)、J.Dairy Sci.,76:956−961);
3.Lactobacillus acidophilus DDS−1(ヒトから分離された):このLactobacillus株は市販製品である(Nebraska Cultures,Inc.);
4.Lactobacillus acidophilus CCRC 14065[CSCO 2401に対応、Commonwealth Scientific Industrial Research Organization(CSIRO)、Canberra,Australiaより市販];および
5.Lactobacillus gasseri CCRC 14619T(ATCC
33323に対応;ヒトから分離された)(Int.J.Syst.Bacteriol.(1980)、30,601;E.LauerおよびO.Kandler,Bakteriol.Parasitenkd.Infektionskr.Hyg.Abt.1
Orig.Reihe C,1980,1,75−78)。
【0062】
(実施例2 酸耐性試験)
I.実験手順:
この実施例で実施された細菌細胞生存試験を、J.E.Holcombeら(1991)、Cult.Dairy Prod.J.,26(3):4−5に記載され、そしてY.S.Yangらに対して発行された米国特許第5,711,977号(ここで、中性環境(pH7)および胃をシミュレートする酸性環境(pH2)を使用した)に記載された方法を参照して行った。
【0063】
MRSブロス中で二回活性化した後、試験した細菌株の各々の培養物を、3,000rpmで10分間遠心分離した。上清の除去後、細胞ペレットを1mlの通常生理食塩溶液(0.85% NaCl、pH7)中で再懸濁し、スティックで撹拌し、次いでボルテックスして均一な細菌懸濁液を得た。得られた細菌細胞懸濁物のアリコート(0.5ml)を、それぞれpH7およびpH2の通常生理食塩溶液と混合し、得られた混合物を37℃のインキュベーターで2時間静置した。その後、生存している細菌細胞をカウントし、そして各試験細菌株の酸耐性を、Δlog(細菌細胞の数)[すなわち、(pH7の通常生理食塩溶液処理後に生存した細菌細胞数−pH2の通常生理食塩溶液処理後に生存した細菌細胞数)の計算したlog値]によって表した。Δlog(細菌細胞数)のより小さい値を有する細菌株が、より高い酸耐性を有すると考えた。
【0064】
II.結果:
ほとんどの微生物は酸性環境において何らの耐性を有さない。乳酸菌自体は酸生成細菌であるが、これらはpH3.2〜4.5の環境でのみ増殖する。従って、胃の極端な酸性環境(pH2.0〜3.2)はまた、乳酸菌の生存率に影響を与える主要な因子である。胃の内容物(content)のエントリー時間およびタイプに依存して、胃酸のpH値は、平均して2時間の間にpH1.5〜4.5の範囲で変化する。従って、この実施例における実験において、pH2を胃のpH値の代表値として使用した。さらに、胃酸は性質において塩酸に類似しているので、塩酸によって2に調整したpHを有する通常生理食塩溶液を使用して、37℃で二時間試験細菌株を処理した。この酸処理において生存した細菌細胞をカウントし、そしてpH7における通常生理食塩溶液で処理したコントロール群のものと比較した。
【0065】
得られた実験結果によると、37℃で2時間の上記の2つの異なるpH値での処理後、Lactobacillus acidophilus CCRC 17064は最も高い酸耐性を示し(図1)、そして酸処理後のその細菌カウントは、log値において単に1.9減少した。一方、Lactobacillus acidophilus CCRC 10695TおよびLactobacillus gasseri CCRC 14619Tは乏しい酸耐性を示し、そしてこれらの細菌カウントはそれぞれlog値において4.3および4.4減少した。
【0066】
本発明の実施例1において得られた新しい分離株B21T1(これは、以下の実施例において記載されるように、その細菌学的特徴に従ってLactobacillus gasseriとして分類される)の酸耐性は、CCRC 14065のそれと類似であり、そしてそれらの細菌カウントは、log値において3.9減少した。本発明の他の5つの新規分離株(B21T6、C21T1、X21B7、B38T38およびB6T7)は、同様のレベルの酸耐性を有し、そして酸耐性のスクリーニング指標(Δlog(細菌数)の値<4)(Y.S.Yangらに対して発行された米国特許第5,711,977号)を満たすことができる。
【0067】
(実施例3.胆汁酸塩耐性試験)
I.実験手順:1%の細菌接種物
MRSブロス中で二回活性化した後、各試験細菌株の1%接種物を、それぞれ10ml
MRSブロスおよび0.3%雄牛胆汁(oxgall)で補充した10mL MRSブロス(MRSO)に接種した。37℃で24時間培養した後、各培養物の細菌密度(OD660)を
分光光度計によって測定し、そして生存細菌細胞の数もまたカウントした。胆汁酸塩耐性をΔlog(細菌数)(すなわち、[MRSブロス中で培養した細菌細胞数−MRSOブロス中で培養した細菌細胞数]の計算したlog値)によって表した。ここで、計算Δlog(細菌細胞数)が小さいほど、試験細菌株の胆汁酸塩耐性が高い。
【0068】
II.結果:
異なる乳酸菌は、胆汁酸塩で処理した後の生存率において大きな差異を示した。従って、胆汁酸塩耐性を有する乳酸菌をスクリーニングすることは、プロバイオティック細菌の選択において重要である(S.E.Gillilandら(1984)、J.Dairy Sci.,67:3045−3051;P.Marteauら(1997)、J.Dairy Sci.,80:1031−1037)。以前の研究において、雄牛胆汁(oxgall)は、ヒト腸内細菌の選択的な培養のための培地において広範に使用されていた。従って、雄牛胆汁(oxgall)の有効性は、ヒト胆汁酸塩のものと非常に類似しているはずであり、そして雄牛胆汁(oxgall)は、0.3%(w/v)の平均濃度で一般に使用された(S.E.GillilandおよびD.K.Walker(1990)、J.Dairy Sci.,73:905−911;D.K.WalkerおよびS.E.Gilliland(1993)、J.Dairy Sci.,76:956−961)。
【0069】
得られた実験結果は、CCRC 10695T、CCRC 14619TおよびCCRC 14065を除き、各試験細菌株の測定したOD660値(細菌密度)は、試験された細菌株が0.3%雄牛胆汁(oxgall)を含むかまたは含まない培地で培養されたかに関わらず、2より大きかった(表2)。このことは、0.3%雄牛胆汁(oxgall)の添加が試験された細菌株の増殖に対してほとんど影響を与えないように見えることを示す。
【0070】
表2. 0.3%雄牛胆汁(oxgall)を含むかまたは含まないMRSブロス中で24時間培養した試験細菌株の増殖比較
【0071】
【表2】

【0072】
しかし、本発明に従う2つの新しい分離株(すなわち、B6T7およびC21T1)の細菌密度は、MRSブロスよりもMRSOブロスにおいてより高いことにまた注意する。このことは、軽度の吸収作用と干渉する他の因子が存在し得ることを示す。従って、これらの2つの培地中で24時間培養した試験細菌株の生存細菌細胞数をさらに調べた。
【0073】
図2を参照すると、試験した細菌株の細胞数の減少から、CCRC 14619Tは非
常に乏しい胆汁酸塩耐性を有し、そしてCCRC 10695Tおよび本発明の新規分離
株B38T38は、それぞれCCRC 14619Tのそれよりも高い胆汁酸塩耐性を有
することが示された。最も高い胆汁酸塩耐性を示す細菌株は、本発明の新規分離株B6T7であり、残りの細菌株の胆汁酸塩耐性は実質的に類似している。すなわち、0.3%雄牛胆汁(oxgall)を含むMRSブロス中での24時間の培養後、その死滅した細菌細胞数は、log値において1〜2の範囲である。
【0074】
さらに、0.3%雄牛胆汁(oxgall)を含むMRSブロス中で培養したいくつかの細菌株の増殖曲線を観察した。試験した菌株の各々の増殖速度は、増殖曲線の勾配によって示される。すなわち、勾配が大きい程、増殖速度は速く、従って、胆汁酸塩に対する耐性がより高い。図3から観察され得るように、CCRC 17064の増殖速度が最も速く、本発明の新規分離株X21B7およびB21T1のものはより遅く、そしてCCRC 14065、CCRC 10695TおよびDDS−1のそれは最も遅い。
【0075】
異なる観察方法から得られた実験結果においてわずかな差異が存在するが、これらの試験から、本発明においてスクリーニングされた6つの新規Lactobacillus分離株は酸および胆汁酸塩に対して同じ耐性を示すことが理解され得る。
【0076】
(実施例4.コレステロールを低下させることにおける試験した細菌株の能力についてのアッセイ)
I.実験手順:
(A)コレステロールの供給源:
コレステロールを低下させる際の細菌株の試験に関して、PPLO(BACT PPLO SERUM FRACTION)は、ほとんどの先行技術文献および特許刊行物におけるコレステロールの供給源として使用された。しかし、この製品の生産はすでに中止されている。従って、この実施例においては、本出願人は、Huang,C.およびT.E.Thomopson(1974)、Methods Enzymol.,32:485−489およびS.Razinら(1980)、Biochimica Biophysica Acta,598:628−640において開示されるホスファチジルコリン−コレステロール調製方法を採用した。ここで、ウマ血清およびフォスファチジルコリン−コレステロールをコレステロールの供給源として使用し、均一に分散したホスファチジルコリン−コレステロール溶液を調製した。この容量は、コレステロール濃度と正の一次関数関係にある(図4)。
【0077】
1.ウマ血清
水中に溶解したウマ血清を、0.45μmメンブランフィルターを通過させて濾過し、そして−20℃の冷凍庫中で貯蔵した。
【0078】
2.ホスファチジルコリン−コレステロール(卵レシチン+コレステロール)
S.Razinら(1980)、Bichimica Biphysica Acta,598:628−640に従って、卵レシチンおよびコレステロールを、ロータリーバキュウムエバポレータ(EYELA)のグラウンドストッパーボトルに配置し、そして十分な量のクロロホルム中で均一に溶解し、続いて窒素パージング(purging)を介して乾燥し、コレステロールおよび卵レシチンを均一に混合し、グラウンドストッパーボトルのガラス壁上に均一なフィルムを形成した。0.4Mスクロース溶液中に該フィルムを再溶解した後、グラウンドストッパーボトルにN2ガスをチャージし、次いでキャップでシールし、続いてアルミニウム箔でラッピングし、脂質酸化の可能性を減少させた。
【0079】
シールしたグラウンドストッパーボトルを、4℃で15分間水浴型超音波処理器中で超音波処理した後、このようにして形成された混合溶液を、圧力下で2回、0.22μmメンブランフィルターを通過させ、次いで、4℃の冷蔵庫中で貯蔵した(溶液はその調製の3日以内に使用されなければならない)。
【0080】
(B)試験グループ分け:
試験(1):MRSブロス中で二回活性化した後、試験細菌株の各々の1%接種物を、8.8ml MRS、上で調製した1.2mlのコレステロール溶液および0.3%雄牛胆汁(oxgall)を含む10ml MRSS中に接種し、37℃嫌気性インキュベーター(10%CO2および90%N2)中で24時間培養した。その後、以下の項目(C)において記載された方法に従って、上清サンプルおよび細胞ペレットサンプルを、コレステロール含有量の測定のために試験細菌株で接種した得られた接種物からそれぞれ回収した。
【0081】
試験(2):MRSブロス中で二回活性化した後、試験細菌株の各々の1%接種物を、10mL MRSO中に接種し、そして37℃で20〜22時間培養した。その後、各試験細菌株の得られた培養物から採取した1%接種物を、10ml MRSS中に接種し、そして37℃嫌気性インキュベーター(10%CO2および90%N2)中で24時間培養した。その後、以下の項目(C)において記載された方法に従って、上清サンプルおよび細胞ペレットサンプルを、コレステロール含有量の測定のために試験細菌株で接種した得られた接種物からそれぞれ回収した。
【0082】
(C)コレステロール含有量の測定
コレステロール含有量の測定を、o−フタルアルデヒド法(L.L.RudelおよびM.D.Morris(1973)、Notes on Methodology,14:364−366;S.E.Gillilandら(1985)、Appl.Environ.Microbiol,49:377−381)に従って行った。
【0083】
上記試験(1)および試験(2)において記載されるような試験細菌株で接種した得られた培養物の各々に関して、1ml量における試験細菌溶液をサンプリングして、12,000rpmで10分間遠心分離した。このようにして形成された0.5mlの上清をチューブに配置し、それぞれの試験細菌株で接種した得られた培養物の上清試料とした。
【0084】
上記試験(1)および試験(2)において記載されるような試験細菌株で接種した得られた培養物の各々に関して、1ml量における試験細菌溶液をサンプリングして、3,000rpmで10分間遠心分離し、得られた上清を除去した。残った細胞ペレットを10ml MRSOブロス中で再溶解し、均一に混合した。0.5ml溶液を得られた混合物から採取し、試験管に配置し、それぞれの試験細菌株で接種した得られた培養物の細胞−ペレット試料とした。
【0085】
各試験試料に3mlの95%エタノールを添加し、均一に振盪することによって十分に混合した。2mlの50% KOHをそこにさらに添加し、そして得られた混合物を再び均一に振盪した。その後、混合物を水浴中で10分間60℃で加熱し、次いで室温で冷却した。冷却した混合物に5mlヘキサンを添加し、均一に撹拌し、続いて3ml H2Oを添加した。均一に振盪した後、そのように形成した混合物を室温で15分間静置した。2.7mlの得られたヘキサン層を別の試験管に取り出し、そしてヘキサンをN2下で60℃で蒸発させた。蒸発後に残った固形残渣に4mlのo−フタルアルデヒド試薬溶液(0.5mg o−フタルアルデヒド/1ml酢酸)を添加した。得られた混合物を均一に振盪し、室温で10分間静置し、続いて2ml濃硫酸を添加した。このようにして形成された混合物を均一に振盪し、そして室温で10分間静置した。その後、混合物を分光光度計を使用してOD550測定に供した。
【0086】
(D)コレステロールを低下させることにおける試験細菌株の能力の評価
コレステロールを低下させることにおける細菌株の能力を以下の式を使用して推定した:
A=100−[(B/C)×100]
A=コレステロールの減少(%)
B=試験細菌株で接種した培養物の上清におけるコレステロール含有量(mg)
C=試験細菌株の接種なしの培養物の上清におけるコレステロール含有量(mg)(コントロール群)
「A」値の値が80%より大きい場合、細菌株はコレステロールを低下させることにおいて著しい能力を有すると考えられる。
【0087】
(E)コレステロールを同化することにおける試験細菌株の能力の評価
A’=100−[(B’+C’)×100]
A’=コレステロールの同化(%)
B’=試験細菌株で接種した培養物の上清中のコレステロール含有量(mg)
C’=試験細菌株で接種した培養物の細胞−ペレット中のコレステロール含有量(mg)
「A’」の値が15%より大きい場合、細菌株はコレステロールを同化することにおいて著しい能力を有すると考えられる。
【0088】
II.結果:
(i)コレステロールを低下させることにおける試験細菌株の能力
試験(1)(すなわち、MRSブロス中で試験細菌株を培養する)および試験(2)(すなわち、MRSOブロス中で試験細菌株を培養する)のそれらを比較する際、試験(2)において、試験細菌株をMRSOブロス中に接種し、20〜22時間培養したという点で、これらの間に差異が存在する。1%接種物をそこから採取し、そしてさらなる培養のために10ml MRSS中に接種した。試験(2)の目的は、試験細菌株を再びスクリーニングして、これらが優れた胆汁酸遠耐性を有するか否かを決定し、そしてまたコレステロールを低下させることにおいて能力を有する細菌株をスクリーニングすることである。
【0089】
ウマ血清をコレステロール供給源として使用する試験の結果(表3)は、先のLactobacillus acidophilus CCRC 17064およびDDS−1がまたこの試験において有意な効果を実証することを示し、そしてコレステロールを低下させることにおけるこれらの能力は、88〜98%に達した。一方、コレステロールを低下させることにおけるCCRC 14065、CCRC 10695TおよびCCRC 14619Tの能力は有意なものではなかった。このことは、これらの細菌株が乏しい胆汁酸耐性を有し、そしてMRSOブロス中で十分に増殖せず、その結果、観察されるようなこれらのコレステロール低下能力は単に30〜43%に達するという事実に起因し得る。
【0090】
これらの2つの試験において、本発明の新規分離株(すなわち、B6T7、C21T1、B21T1、B21T6、B38T38およびX21B7)は、91〜99%までまたはこれを超えるコレステロール低下能力を有し、これはCCRC 17064およびDDS−1のそれよりもわずかに高いことが示された。
【0091】
このことは、本発明に従ってスクリーニングされた細菌株がまた、血清コレステロールを低下させることにおいて優れた能力を有することを示す。
【0092】
表3.コレステロールを減少させることにおける試験細菌株の能力の評価(ウマ血清モデル)a
【0093】
【表3】

【0094】
a:0.3%雄牛胆汁(oxgall)および12%ウマ血清で補充したMRSブロス
b:試験前に、全ての培養物を、1%接種物を使用してMRSブロス中で継代培養し、37℃で24時間インキュベートした。
c:試験前に、全ての培養物を、1%接種物を使用してMRSOブロス(0.3%雄牛胆汁(oxgall)を含むMRSブロス)中で継代培養し、37℃で24時間インキュベートした。
d:ブロス中の最初のコレステロール含有量は86.06μg/mlであった。
【0095】
表4を参照すると、コレステロールを低下させることにおける試験細菌株の能力の評価に関して、試験におけるコレステロール供給源としてウマ血清の代わりに、ホスファチジルコリン−コレステロールを使用した場合、コレステロール減少(%)の観点における各細菌株の能力は減少する傾向にあることが観察された。このことは、コレステロールレベルを低下させることにおけるLactobacillus株の能力が、使用されるコレステロールの型と共に変化し得ることを示す。ホスファチジルコリン−コレステロールを低下させることにおけるCCRC 17064の能力は11〜29%であるが、ホスファチジルコリン−コレステロールを低下させることにおける本発明の細菌株の能力は23〜48%に達し、これは、DDS−1によって達成されるよりもわずかに低いが(50%)、CCRC 17064によって達成されるものよりも明確に高い。
【0096】
表4.コレステロールを低下させることにおける試験細菌株の能力の評価(ホスファチジルコリン−コレステロールミセルモデル)a
【0097】
【表4】

【0098】
a:0.3%雄牛胆汁(oxgall)および12%ホスファチジルコリン−コレステロールミセルで補充したMRSブロス
b:試験前に、全ての培養物を、1%接種物を使用してMRSブロス中で継代培養し、37℃で24時間インキュベートした。
c:試験前に、全ての培養物を、1%接種物を使用してMRSOブロス(0.3%雄牛胆汁(oxgall)を含むMRSブロス)中で継代培養し、37℃で24時間インキュベートした。
d:ブロス中の最初のコレステロール含有量は59.22μg/mlであった。
【0099】
(ii)試験細菌株によるコレステロール同化
コレステロールを低下させることにおける乳酸菌の機構に関して、コレステロールは、コレステロールおよび脱抱合胆汁酸塩の同時沈殿(F.A.M.KalverおよびR.van der Meer(1993)、前出、M.M.BrashearsおよびS.E.Gililland(1997)、前出)および細菌株自体によるコレステロールの同化(Gillilandら(1985)、前出;D.O.Nohら(1997)、前出;およびZhangら(1998)、前出)によって取り除かれる。
【0100】
表5を参照すると、CCRC 17064(本発明に従って得られた6つの分離株)およびDDS−1がコレステロールを同化し得ることが理解され得る。しかし、異なる細菌株は、コレステロールを同化するそれらの能力においてわずかに異なる。観察された同化率は、11〜40%の範囲である。CCRC 14065、CCRC 10695TおよびCCRC 14619Tによるコレステロールの同化は、有意なものではなかった。
【0101】
表5.試験細菌株のコレステロール同化aの評価
【0102】
【表5】

【0103】
a:0.3%雄牛胆汁(oxgall)および12%ウマ血清で補充したMRSブロス
b:試験前に、全ての培養物を、1%接種物を使用してMRSブロス中で継代培養し、37℃で24時間インキュベートした。
c:試験前に、全ての培養物を、1%接種物を使用してMRSOブロス(0.3%雄牛胆汁(oxgall)を含むMRSブロス)中で継代培養し、37℃で24時間インキュベートした。
d:コントロール中のコレステロール濃度を100部として定義した。
【0104】
上記の試験結果を要約すると、6つの新規Lactobacillus分離株(本発明に従って台湾において得られそしてスクリーニングされた)は優れた酸および胆汁酸塩耐性ならびにコレステロールを低下させる能力を示すことは明らかである。これらのLactobacillus分離株のさらなる同定および特徴付け試験を以下の実施例において行った。
【0105】
(実施例5.Lactobacillus分離株の同定および特徴付け)
I.実験手順:
(1)予備同定試験:
新たに培養した細菌株(18〜24時間培養した)を予備同定試験に供し、この試験の実施した項目としては以下が挙げられる:グラム染色、形態観察、カタラーゼ試験、運動性、好気性および嫌気性条件下での増殖(O.KandlerおよびN.Weiss(1986)、Regular,nonsporing Gram−positive rods and Cocci.:Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology.(Sneath,P.H.A.,Mair,N.S.,Sharpe,M.E.,およびHotl,J.G.,編)第II巻、1208−1234頁.The Williams & Wilkins Co.,Baltimore,USA)。
【0106】
(2)API同定システム:
この同定試験は、G.H.Fleetら(1984)、Appl.Environ.Microbiol.,48:1034−1038において記載されるものに基づいている。乳酸菌の同一性は、API 50 CHL Kit(French API BioMerieux Research Laboratory,La Balme Les Grottes,Montalien,Jeraeh,France)で確認した。試験した項目は:以下を含む49炭素供給源由来の酸生成試験であった:グリセリン、エリスリトール、D−アラビノース、L−アラビノース、リボース、D−キシロース、L−キシロース、アドニトール、β−メチル−キシロシド(xyloside)、ガラクトース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、L−ソルボース、ラムノース、ドゥルシトール、イノシトール、マンニトール、ソルビトール、α−メチル−D−マンノシド、α−メチル−D−グルコシド、N−アセチルグルコサミン、アミグダリン、アルブチン(arbutine)、エスクリン、サリシン、セロビオース、マルトース、ラクトース、メリビオース、サッカロース、トレハロース、イヌリン(inuline)、メレジトース、D−ラフィノース、アミドン、グリコーゲン、キシリトール、β−ゲンチオビオース、D−ツラノース、D−リキソース、D−タガトース、D−フコース、L−フコース、D−アラビトール、L−アラビトール、グルコン酸塩、2−ケト−グルコン酸塩、および5−ケト−グルコン酸塩。
【0107】
APIシステムは以下の操作手順に従って機能する:培養プレート上で増殖した細菌コロニーを取り上げるために滅菌綿棒(swab)を使用し、そして取り上げた細菌コロニーを2mlの0.85%通常生理食塩溶液中に均等に懸濁する;滅菌ピペットを使用して細菌細胞−懸濁溶液を吸引し、そして別の5mlの0.85%滅菌通常生理食塩溶液にn滴滴下し、その結果、得られた細菌溶液の濃度は、McFarland No.2標準溶液(9.8mlの1%H2SO4および0.2mlの1%BaCl2から形成される混合溶液)の濃度と等しくなる。その間、さらなる細菌細胞−懸濁溶液を採取し、そして2n滴の溶液をAPI50 CHL培地を含むガラス管中にピペットで入れる。均一に混合した後、このように調製された接種物の適切な容量を試験ストリップの管の各々に添加し、ミネラルオイルで重層し、そしてインキュベーショントレイに配置した(インキュベーション間の蒸発を介する培地の喪失を避けるために予めトレイに水を添加する)。インキュベーションのふたでカバーした後、インキュベーショントレイを37℃で48時間静置し、読み(reading)目的で引き続き採取する。結果を記録し、API LAB Software同定システムのデータベースと比較し、試験下の細菌コロニーについての最も適切な分類法の属および種を決定する。
【0108】
(3)Micro−IS System:
Micro−IS Systemは、M.Rogosaら(1971)、Method for coding data on microbial strains for computers(edition AB),Int.J.Syst.Bacteriol.21:1A−184Aによって提案される方法に基づき、Micro−IS SystemのMatrix 5(Lactobacillus sp.について適している)を利用する。試験項目としては以下が挙げられる:運動性;増殖温度試験(15℃、45℃);好気性条件下での増殖;D−グルコースおよびグルコース由来の気体生成試験;アミグダリン、L−アラビノース、セロビオース、D−フルクトース、D−ガラクトース、D−グルコース、ラクトース、マルトース、D−マンニトール、D−マンノース、メレジトース、メリビオース、ラムノース、L−ラムノース、D−リボース、サリシン、D−ソルビトール、スクロース、トレハロースおよびD−キシロース由来の酸生成試験;ならびにエスクリン加水分解およびL−アルギニン脱アミノ化反応についての増殖試験。各試験の陽性および陰性結果はMicro−ISコンピューター同定プログラムに入力され、同定された細菌の分類学上の属および種を与える。
【0109】
(4)16S rDNA配列分析:
この同定試験は、Rosenblumら(1997)、Nucleic Acid Res.,25:4500−4504において記載される方法に基づいており、そして以下の操作手順に従って機能する:少量の新たに培養した細菌株を引き剥がし、1.5mlエッペンドルフチューブに配置する。細菌サンプルをプロテイナーゼKおよびRNaseで処理し、スピンカラムを使用して、そこから細菌ゲノムDNAを得、PCR増幅を行い、続いて精製する。電気泳動による確認後、PCR増幅産物をMicroSeqTM 16SrDNA Gene Kit(PE Co.,USA)を用いる反応に供し、その後ABI Prism 310 Genetic Analyzerを使用してDNA配列決定する。さらに、このようにして得た12ストリップのDNA配列を分析し、MicroSeqTMソフトウェア(PE Co.,USA)を使用することによって積分し、約1500bpの16S rDNA配列を得る。この配列は、DNAデータベースとの比較に供される(MicroSeqTM Reference Manual,1999,PE CO.,USA)。
【0110】
II.結果:
1.本発明の分離株B21T1
(i)予備同定試験の結果に従って、分離株B21T1は、グラム陽性、カタラーゼ陰性、および非移動性であり、そして好気性および嫌気性条件の両方で増殖する。
(ii)API SystemのAPI 50 CHL同定キットを使用する試験結果を表6に示し、ここで、同一性スコアは91.0(%ID)である。この分離株の同一性は、Lactobacillus acidophilusであると確認された。
(iii)本発明の分離株B21T1は、Micro−IS SystemによってLactobacillus acidophilusとして同定され、ここで、得られた結果を表7に示し、同一性スコアは0.682である(IDスコア);
(iv)本発明の分離株B21T1の16S rDNA配列分析結果を図5に示す。DNAデータベース(MicroSeqTM Reference Manual,1999,PE CO.,USA)との比較後、本発明の分離株B21T1の16S rDNA配列(配列番号1)は、Lactobacillus gasseri(Lactobacillus acidophilus中のB1群)(G.Kleinら(1988)、International Journal of Food Microbiology.41:103−125)の16S rDNA配列と最も相同性であることが見出された;そして
(v)上述の同一性結果に従って、本発明の分離株B21T1は、最もおそらくLactobacillus gasseri(Lactobacillus acidophilusのB1サブグループ)である。
【0111】
【表6】

【0112】
【表7】

【0113】
2.本発明の分離株B21T6
(i)予備同定結果に従って、分離株B21T6は、グラム陽性、カタラーゼ陰性、および非移動性であり、そして好気性および嫌気性条件の両方で増殖する。
(ii)API SystemのAPI 50 CHL同定キットを使用する試験結果を表8に示し、ここで、同一性スコアは93.6(%ID)である。この分離株の同一性は、Lactobacillus acidophilusであると確認される。
(iii)本発明の分離株B21T6は、Micro−IS SystemによってLactobacillus acidophilusとして同定され、ここで、得られた結果を表7に示し、同一性スコアは0.682である(IDスコア);
(iv)本発明の分離株B21T6の16S rDNA配列分析結果を図6に示す。DNAデータベース(MicroSeqTM Reference Manual,1999,PE CO.,USA)との比較後、本発明の分離株B21T6の16S rDNA配列(配列番号2)は、Lactobacillus gasseri(Lactobacillus acidophilus中のB1群)の16S rDNA配列と最も相同性であることが見出された;そして
(v)上述の同一性結果に従って、本発明の分離株B21T6は、最もおそらくLactobacillus gasseri(Lactobacillus acidophilusのB1サブグループ)である。
【0114】
【表8】

【0115】
3.本発明の分離株C21T1
(i)予備同定結果に従って、分離株C21T1は、グラム陽性、カタラーゼ陰性、および非移動性であり、そして好気性および嫌気性条件の両方で増殖する。
(ii)API SystemのAPI 50 CHL同定キットを使用する試験結果を表9に示し、ここで、同一性スコアは95.6(%ID)である。この分離株の同一性は、Lactobacillus acidophilusであると確認された。
(iii)本発明の分離株C21T1は、Micro−IS SystemによってLactobacillus acidophilusとして同定され、ここで、得られた結果を表7に示し、同一性スコアは0.682である(IDスコア);
(iv)本発明の分離株C21T1の16S rDNA配列分析結果を図7に示す。DNAデータベース(MicroSeqTM Reference Manual,1999,PE CO.,USA)との比較後、本発明の分離株C21T1の16S rDNA配列(配列番号3)は、Lactobacillus gasseri(Lactobacillus acidophilus中のB1グループ)の16S rDNA配列と最も相同性であることが見出された;そして
(v)上述の同一性結果に従って、本発明の分離株C21T1は、最もおそらくLactobacillus gasseri(Lactobacillus acidophilusのB1サブグループ)である。
【0116】
【表9】

【0117】
4.本発明の分離株X21B7
(i)予備同定結果に従って、分離株X21B7は、グラム陽性、カタラーゼ陰性、および非移動性であり、そして好気性および嫌気性条件の両方で増殖する。
(ii)API SystemのAPI 50 CHL同定キットを使用する試験結果を表10に示し、ここで、同一性スコアは94.3(%ID)である。この分離株の同一性は、Lactobacillus acidophilusであると確認された。
(iii)本発明の分離株X21B7は、Micro−IS SystemによってLactobacillus acidophilusとして同定され、ここで、得られた結果を表7に示し、同一性スコアは0.682である(IDスコア);
(iv)本発明の分離株X21B7の16S rDNA配列分析結果を図8に示す。DNAデータベース(MicroSeqTM Reference Manual,1999,PE CO.,USA)との比較後、本発明の分離株X21B7の16S rDNA配列(配列番号4)は、Lactobacillus gasseri(Lactobacillus acidophilus中のB1グループ)の16S rDNA配列と最も相同性であることが見出された;そして
(v)上述の同一性結果に従って、本発明の分離株X21B7は、最もおそらくLactobacillus gasseri(Lactobacillus acidophilusのB1サブグループ)である。
【0118】
【表10】

【0119】
5.本発明の分離株B38T38
(i)予備同定結果に従って、分離株B38T38は、グラム陽性、カタラーゼ陰性、および非移動性であり、そして好気性および嫌気性条件の両方で増殖する。
(ii)API SystemのAPI 50 CHL同定キットを使用する試験結果を表11に示し、ここで、同一性スコアは90.8(%ID)である。この分離株の同一性は、Lactobacillus acidophilusであると確認された。
(iii)本発明の分離株B38T38は、Micro−IS SystemによってLactobacillus acidophilusとして同定され、ここで、得られた結果を表12に示し、同一性スコアは0.646である(IDスコア);
(iv)本発明の分離株B38T38の16S rDNA配列分析結果を図9に示す。DNAデータベース(MicroSeqTM Reference Manual,1999,PE CO.,USA)との比較後、本発明の分離株B38T38の16S rDNA配列(配列番号5)は、Lactobacillus gasseri(Lactobacillus acidophilus中のB1グループ)の16S rDNA配列と最も相同性であることが見出された;そして
(v)上述の同一性結果に従って、本発明の分離株B38T38は、最もおそらくLactobacillus gasseri(Lactobacillus acidophilusのB1サブグループ)である。
【0120】
【表11】

【0121】
【表12】

【0122】
6.本発明の分離株B6T7
(i)予備同定結果に従って、分離株B6T7は、グラム陽性、カタラーゼ陰性、および非移動性であり、そして好気性および嫌気性条件の両方で増殖する。
(ii)API SystemのAPI 50 CHL同定キットを使用する試験結果を表13に示し、ここで、同一性スコアは92.4(%ID)である。この分離株の同一性は、Lactobacillus plantarumであると確認された。
(iii)本発明の分離株B6T7は、Micro−IS SystemによってLactobacillus acidophilusとして同定され、ここで、得られた結果を表7に示し、同一性スコアは0.682である(IDスコア);
(iv)本発明の分離株B6T7の16S rDNA配列分析結果を図10に示す。API 50 CHL同定キットで得られた同定結果およびMicro−IS System同定システムで得られた結果は、本発明の分離株B6T7がそれぞれLactobacillusのLactobacillus plantarumおよびLactobacillus acidophilusであると分類し、本発明の分離株B6T7の16S rDNA配列(配列番号6)を、Lactobacillus acidophilusの16S rDNA配列(配列番号7)およびLactobacillus plantarumの16S rDNA配列(配列番号8)と比較した。本発明の分離株B6T7の16S rDNA配列(配列番号6)は、Lactobacillus acidophilusの16S rDNA配列と最も相同性であり、Lactobacillus plantarumの16S rDNA配列と大きく異なることが見出された;そして
(v)上述の同一性結果に従って、本発明の分離株B6T7は、最もおそらくLactobacillus acidophilusである。
【0123】
【表13】

【0124】
同定結果を要約すると、本発明に従ってスクリーニングされた6つの分離株の全てが、Lactobacillus株に属し、ここで、B6T7はLactobacillus
acidophilusであり、そしてB21T1、B21T6、C21T1、X21B7およびB38T38は、Lactobacillus gasseri(Lactobacillus acidophilusのB1サブグループ)である。
【0125】
表14を参照すると、先行特許および技術文献において開示されたLactobacillus株と比較して、本発明に従って得られた6つのLactobacillus分離株は、0.3%胆汁酸塩を含む環境中で増殖し得るだけでなく、pH2の酸性環境中で2時間培養された後により高い生存率および良好なコレステロール低下能力も有する。さらに、本発明の6つのLactobacillus分離株は、コレステロールと同時沈殿しそしてコレステロールを同化する能力を有する。本発明の分離株およびこれらの継代培養した子孫は優れたプロバイオティック細菌であることが明らかであり、食品(例えば、飲料、ケーキ、幼児食品、発酵ミルク、ダイエタリーサプリメント、および動物のえさ)の製造において使用され得る。また、胃腸管疾患の処置および予防ならびに血清コレステロールを低下させるための薬学的組成物の製造において使用され得る。
【0126】
例えば、本発明に従って得られるLactobacillus分離株は、米国特許第5,516,684号において開示される参考実施例1および参考実施例2を参照して、乳酸飲料およびヨーグルトドリンクの製造において使用され得る。
【0127】
【表14】

【0128】
本明細書中に援用される全ての特許及び参考文献は、本明細書中にその全体が参考として援用される。抵触の場合には、定義を含む本発明の説明が優先する。
【0129】
本発明は上記の特定の実施形態を参照して記載されているが、多数の改変およびバリエーションが、本発明の範囲および精神から逸脱することなく行われ得ることが明らかである。従って、本発明は添付の特許請求の範囲によって示される場合にのみ限定されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0130】
本発明の上記および他の目的および特徴は、添付の図面と組み合わせて、好ましい実施形態の上記の説明を参照して明らかとなる。
【図1】図1は、本発明に従うLactobacillus分離株と公知のLactobacillus株との間の酸耐性比較を示す棒グラフである。ここで、酸耐性は、Δlog(a−b)として表され、ここで、「a」はpH7で2時間の塩処理後の生存細胞数を表し、「b」はpH2で2時間の塩処理後の生存細胞数を表す。
【図2】図2は、本発明に従うLactobacillus分離株と公知のLactobacillus株との間の胆汁酸塩耐性比較を示す棒グラフである。ここで、胆汁酸塩耐性は、Δlog(c−d)として表され、ここで、「c」はMRSブロス中での24時間のインキュベーション後の生存細胞数を表し、「d」は0.3%の雄牛の胆汁(oxgall)で補充したMRSブロス中での24時間のインキュベーション後の生存細胞数を表す。
【図3】図3は、本発明に従うLactobacillus分離株と公知のLactobacillus株との間の増殖比較を示す棒グラフである。これらは共に、0.3%雄牛の胆汁(oxgall)を含むMRSブロス中で増殖した。
【図4】図4は、コレステロール濃度とフォスファチジルコリン−コレステロールミセルの量との間の関係を示す。このミセルは、本発明に従う分離された細菌株のコレステロール低下能力を試験するために、S.Razinら(1980)、Biochimica Biophysica Acta,598:628−640を参照して調製した。
【図5】図5は、本発明に従う細菌分離株Lactobacillus gasseri B21T1の16S rDNAのヌクレオチド配列を示す。
【図6】図6は、本発明に従う細菌分離株Lactobacillus gasseri B21T6の16S rDNAのヌクレオチド配列を示す。
【図7】図7は、本発明に従う細菌分離株Lactobacillus gasseri C21T1の16S rDNAのヌクレオチド配列を示す。
【図8】図8は、本発明に従う細菌分離株Lactobacillus gasseri X21B7の16S rDNAのヌクレオチド配列を示す。
【図9】図9は、本発明に従う細菌分離株Lactobacillus gasseri B38T38の16S rDNAのヌクレオチド配列を示す。
【図10】図10は、本発明のLactobacillus acidophilus B6T7分離株、L.acidophilus、およびL.plantarumの間での16S rDNAヌクレオチド配列における差異を示す。ここで、B6T7分離株とL.acidophilusとの間のヌクレオチドの差異の部位は影付きで示し、そしてB6T7分離株とL.plantarumとの間のヌクレオチドの差異の部分は「*」印によって示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス種(Lactobacillus sp.)の分離株であって、ここで、該分離株は、アクセッション番号CCRC 910197で食品工業発展研究所(FIRDI)において、およびアクセッション番号ATCC PTA−4481でアメリカン タイプ カルチャー コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC,P.O.Box 1549,Manassas,VA 20108,USA)において寄託されたラクトバチルス ガセリ(Lactobacillus gasseri)B38T38の分離株と同一の細菌学的特徴を有する。
【請求項2】
食用材料および請求項1に記載のラクトバチルス種(Lactobacillus sp.)の分離株またはその継代培養した子孫(sub−cultured offspring)またはそれに由来する突然変異体を含む食品(food product)
(ここで、該継代培養した子孫または突然変異体は:
0.3%雄牛胆汁を含む環境中、24時間増殖後の、約0.5〜2 log値の集団の減少;
pH2、37℃で2時間処理後、3〜4 log値の集団の減少により示される酸耐性(0.85% NaCl/0.01N HCl系);
0.3%雄牛胆汁および12%ウマ血清を含むブロス中での24時間嫌気性培養後、コレステロール含有量を93%を越えて減少させる能力;
0.3%雄牛胆汁および12%コレステロールミセルを含むブロス中での24時間嫌気性培養後、コレステロール含有量を25〜45%減少させる能力;
コレステロール同化率12〜40%、
の細菌学的特徴を示す)。
【請求項3】
ラクトバチルス種(Lactobacillus sp.)、ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)、酵母、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、少なくとも1つのプロバイオティック(probiotic)微生物を更に含む、請求項2に記載の食品。
【請求項4】
該ラクトバチルス種(Lactobacillus sp.)が:ラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス ラクティス(Lactobacillus lactis)、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス ビフィズス(Lactobacillus bifidus)、ラクトバチルス ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス コーサシクス(Lactobacillus causasicus)、およびラクトバチルス ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3記載の食品。
【請求項5】
該ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)が:ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、およびストレプトコッカス ラクティス(Streptococcus lactis)、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3に記載の食品。
【請求項6】
該酵母が:カンジダ ケフィル(Candida Kefyr)およびサッカロマイセス フロレンティヌス(Saccharomyces florentinus)、ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3に記載の食品。
【請求項7】
ラクトバチルス種(Lactobacillus sp.)(例えば、ラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス ラクティス(Lactobacillus lactis)、ラクトバチルス ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス ビフィズス(Lactobacillus bifidus)、ラクトバチルス ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス コーサシクス(Lactobacillus causasicus)およびラクトバチルス ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus));ストレプトコッカス種(Streptococcus sp.)(例えば、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)およびストレプトコッカス ラクティス(Streptococcus lactis));酵母(例えば、カンジダ ケフィル(Candida Kefyr)およびサッカロマイセス フロレンティヌス(Saccharomyces florentinus));ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択される、少なくとも1つのプロバイオティック(probiotic)微生物を更に含む、請求項2に記載の食品。
【請求項8】
食用材料が:流動性乳製品、発酵ミルク、粉ミルク、アイスクリーム、クリームチーズ、ドライチーズ、豆乳および発酵豆乳、フルーツ−野菜ジュース、フルーツジュース、スポーツドリンク、デザート、キャンディー、幼児処方物、健康食品、動物のえさおよびダイエタリーサプリメント(dietary supplements)からなる群より選択される、請求項2に記載の食品。
【請求項9】
インスタント食品の形態で製造される、請求項2に記載の食品。
【請求項10】
請求項1に記載のラクトバチルス種(Lactobacillus sp.)の分離株のプロバイオティック有効量を含む薬学的組成物。
【請求項11】
前記組成物が、液剤、乳濁剤、散剤、錠剤およびカプセル剤からなる群より選択される経口用量に処方された、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記組成物が消化改善薬物として製造される、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記組成物が血清コレステロールを低下させるための薬物として製造される、請求項10に記載の薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−89589(P2007−89589A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314692(P2006−314692)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【分割の表示】特願2003−338121(P2003−338121)の分割
【原出願日】平成15年9月29日(2003.9.29)
【出願人】(599079975)食品工業発展研究所 (7)
【Fターム(参考)】