説明

コロイド状シリカを含むスラリーのろ過方法

【課題】湿式銅製錬法で得られるコロイド状シリカを含むスラリーの固液分離に関して、有機高分子凝集剤を用いることなく、効率よく固液分離できるコロイド状シリカを含むスラリーのろ過方法を提供することを課題とする。
【解決手段】コロイド状シリカを含むスラリーにコロイド状シリカを含むスラリー1lに対して10g以上の活性白土を添加して0.5〜1.5時間攪拌混合し、スラリー内に活性白土を均一に分散させ、その後にろ過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイド状シリカを含むスラリーのろ過方法に関し、より詳しくは、湿式銅製錬法で得られるコロイド状シリカを含むスラリーの固液分離に際して、有機高分子凝集剤を用いることなく、効率よく固液分離できるコロイド状シリカを含むスラリーのろ過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属硫化物より金属を得る技術としては、一般に乾式製錬法が採用されている。例えば、乾式銅製錬法では、硫化銅鉱石を粉砕し、選鉱して銅精鉱を得、この銅精鉱と溶剤とを混合して熔錬炉に装入し、1300〜1400℃で熔解し、銅をCuSとFeSとからなるマットとし、珪酸や鉄等の不純物を熔錬炉スラグとし、硫黄分を二酸化硫黄とする。マットは転炉にて酸化されてマット中の銅は粗銅にされ、鉄等の不純物は転炉スラグとされ、硫黄分は二酸化硫黄とされる。そして、粗銅は精製炉にて更に精製され、アノードに鋳造され、電解精製にかけられる。こうして銅は電気銅として回収される。
一方、転炉スラグ中には多くの銅が懸垂しているため、熔錬炉に繰り返し装入されるか、選鉱して有価物を回収し、回収した有価物を前記熔錬炉に装入する。そして、熔錬炉スラグは、電気炉にてスラグ中に懸垂しているマット分を分離された後、水砕され、建材や埋め立て材として系外に払い出される。分離されたマット分は転炉に装入され、銅が回収される。
また、熔錬炉や転炉から排出される二酸化硫黄を含む廃ガスは、洗浄され、乾燥された後、触媒を用いて三酸化硫黄に転換され、硫酸として回収される。三酸化硫黄を回収した後の廃ガスは、無害化処理されて大気中に放出される。
したがって、乾式銅製錬法では、高温の熔体を取り扱うこと、二酸化硫黄を回収する設備を設置することは不可欠となり、作業環境や公害防止等環境面への高度な配慮が不可欠となる。
【0003】
こうした問題を解消すべく、近年では銅精鉱に酸を接触させて銅を浸出し、得た浸出液中の銅を回収する湿式銅製錬法の研究が行なわれてきている。
例えば、銅精鉱を用いて湿式銅製錬する際に、塩素ガス又は塩化物などのハロゲン化物水溶液や硫酸塩を含む酸性水溶液を浸出液として用いて、銅精鉱を、要すれば加圧して浸出し、銅を含む浸出液を得、得られた浸出液から銅を溶媒抽出法により抽出し、逆抽出して逆抽出液を得、これを電解液として用いて銅を電解採取し、電気銅を得る技術がある。
ちなみに、こうした浸出法で得られた浸出残渣中には元素硫黄と硫化物が存在するため、浸出液と分離された後、浮遊選鉱や比重選鉱等により硫黄精鉱と鉄残渣とに分別する。そして硫黄精鉱は、加熱蒸留して留出分として硫黄を得、蒸溜残渣として銅残渣を得る。銅残渣は、含まれる硫化物を浸出されやすい硫化物形態に転換するために非酸化性雰囲気中で550℃程度に加熱処理し、その後硫酸溶解して銅分を硫酸銅として液中に回収する。この際発生する未溶解分には貴金属が含まれるため、未溶解分は貴金属回収工程に送られる。なお、前記鉄残渣は洗浄後廃棄される。
以上に示したように、銅精鉱等の銅硫化物より金属銅を湿式銅製錬法で得る場合、銅硫化物中の一部の硫黄は浸出時に酸化されて硫酸となるが、大部分の硫黄分は元素硫黄として回収されるので、二酸化硫黄を含む廃ガスは発生せず、かつ高温度の熔体を取り扱わないでもよい等の利点がある。
【0004】
ところで、塩素ガス又は塩化物などのハロゲン化物水溶液や硫酸塩を含む酸性水溶液を浸出液として用いて銅精鉱を浸出すると、得られる浸出スラリーはコロイド状シリカを含むことが多い。こうした場合には、浸出スラリーのろ過性が悪くなり、生産性を悪化させることになる。そのため、ろ過工程を二段階に分け、一段目として遠心分離法を用いて浸出残渣とコロイド状シリカを含むスラリー(以下、この「コロイド状シリカを含むスラリー」を単に「スラリー」と記す場合もある。)とに分けて、その後、スラリーを真空ろ過機や加圧ろ過機にて固液分離して浸出液を得ている。
【0005】
しかし、よく知られているように、コロイド状シリカを含むスラリーは極めて難ろ過性であり、ろ過効率が極めて悪い。この問題を解決するため、コロイド状シリカを含むスラリーにベントナイトを、スラリー1lに対して0.3〜1.0g添加し、凝集剤濃度を5〜20ppmとしてコロイド状シリカを凝集させて、ろ過性を向上させる技術が提案されている(特許文献1 第2頁参照)。
この技術は排水処理に係るものであり、凝集させられたコロイド状シリカはシックナーで沈降させられ、濃縮され、ろ過される。得られた濾液はシックナーのオーバーフローと共に排水として放流される。
この技術によれば、「シリカ残渣スラリーに加水し、スラリー濃度を20g/l程度に希釈した後、ベントナイト粉末で0.5g/lの添加量濃度になるように添加し、分散させ、次に、0.1%濃度のノニオン系凝集剤を添加量濃度10ppmになるように添加し、10分間攪拌した後、1時間静置して沈殿物と上澄み液とを分離し、沈殿物をろ過したところ、3.1l/min・mのろ過速度が得られた」としている(特許文献1 第3頁参照)。
通常、シリカコロイドはマイナスに帯電していることを考慮すると、この技術でベントナイトを添加するのは、添加したベントナイトを構成するケイ酸塩を種晶としてシリカゲルの析出を促進するいわゆるシリカシード法として称せられる方法として用いるためとできるが、ベントナイトの添加のみでろ過速度をどの程度向上させることが可能かどうかについては何も記載されていない。
【0006】
ところで、前記した湿式銅製錬法の例では、銅精鉱を酸浸出して得られた浸出液は溶媒抽出法により浸出液中の銅を抽出分離する。そのため、コロイド状シリカを含むスラリーを固液分離する際には、有機高分子凝集剤の使用は好ましくない。というのは、有機高分子凝集剤が浸出液中に存在した場合、有機高分子凝集剤が溶媒に蓄積し、相分離性を妨げるなどの弊害が知られている。
したがって、有機高分子凝集剤を用いる前記特許文献1に記載されたろ過技術を本発明の処理対象であるコロイド状シリカを含むスラリーに適用する場合には、銅の抽出に先立ち、浸出液を活性炭処理することが必要となり、コストの上昇をもたらすことになる。
【0007】
また、スラリーのpHを調整してコロイド状シリカの電位を等電位点にしてシリカを凝集させろ過性を改善させることも考えられないわけではない。しかし、スラリーのpHを調整してコロイド状シリカを凝集させることができたとしても、その際にスラリー中に溶解しているなにがしかの有価金属を水酸化物として沈殿させる虞があり、現実的に採用できる技術とはなりがたい。
したがって、湿式銅製錬法で得られるコロイド状シリカを含むスラリーの固液分離に際して有機高分子凝集剤を用いることなく、効率よく固液分離できるコロイド状シリカを含むスラリーのろ過方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−126510号公報 (第2、3頁参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、湿式銅製錬法で得られるコロイド状シリカを含むスラリーの固液分離に関して、有機高分子凝集剤を用いることなく、効率よく固液分離できるコロイド状シリカを含むスラリーのろ過方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、コロイド状シリカを含むスラリーに活性白土を添加すれば、前記課題を解決できることを見いだして本発明に至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、
銅硫化物の酸浸出により得られたコロイド状シリカを含むスラリーのろ過方法において、コロイド状シリカを含むスラリーに活性白土を添加して攪拌混合し、スラリー内に活性白土を均一に分散させ、その後にろ過することを特徴とするコロイド状シリカを含むスラリーのろ過方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第2の発明によれば、前記第1の発明において、添加する活性白土の量を、コロイド状シリカを含むスラリー1lに対して10g以上とすることを特徴とするコロイド状シリカを含むスラリーのろ過方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第3の発明によれば、前記第1または第2の発明において、活性白土を添加した後の攪拌混合時間を0.5〜1.5時間とすることを特徴とするコロイド状シリカを含むスラリーのろ過方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、銅精鉱を酸浸出して得られたコロイド状シリカを含むスラリーに活性白土を添加し、攪拌混合してスラリー内に活性白土を均一に分散させ、その後にろ過する。
こうすることにより、活性白土を用いない場合の8〜13倍のろ過速度を得ることができる。加えて、スラリーに新たに加えるものは活性白土であり、有機高分子凝集剤を加えないため、次工程である銅溶媒抽出工程に先立ち、得られた浸出液を活性炭処理等するための新たな工程が必要とされることもない。
また、本発明は、銅精鉱を酸浸出して得られたコロイド状シリカを含むスラリーばかりでなく、コロイド状シリカを含むスラリー全般に対しても有効であり、本発明の工業的価値は高い。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例の結果をグラフ化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明についてスラリー、活性白土、ろ過方法等の項目ごとに詳細に説明する。
1.コロイド状シリカを含むスラリー
一般に、銅精鉱や微粉砕した銅鉱石を酸で浸出すると、コロイド状シリカを含む浸出スラリーが得られる。この浸出スラリーに含まれる浸出残渣の粒子の大きさは、コロイド状シリカと比較して大きく、平均数十μmである。したがって、浸出残渣とコロイド状シリカを含むスラリーとを遠心分離機、あるいは遠心デカンター等で分別することは可能である。
本発明のろ過対象であるコロイド状シリカを含むスラリーは、こうした銅精鉱や微粉砕した銅鉱石を酸で浸出して得られた浸出スラリーを遠心分離器や遠心デカンターで固液分離して、ろ液として得られるコロイド状シリカを含むスラリーである。
【0016】
2.活性白土
活性白土は、酸性白土とも言われ、天然に吸着性を具えた粘土に活性化処理(酸処理)を行うことによって更にその性質を向上させられたものであり、主としてモンモリロナイト(Montmorillonite)或いはハロイサイト(Halloysite)などの粘土鉱物とコロイドケイ酸とから構成されており、この点でモンモリロナイトを主構成成分とするベントナイトと異なる。そのため、活性白土のSiO/Al値は6〜8とベントナイトのSiO/Al値4〜6より高くなっており、活性白土の塩基交換容量は50m当量とベントナイトの60〜100m当量より小さくなっている。懸濁液とした場合のpHも、活性白土ではpH5〜6であるのに対してベントナイトでは7.5〜8.5である。さらに、1gの粉末に吸着する水分の量も、活性白土では2〜3gであるのに対し、ベントナイトでは3〜20gと大きい。このように、活性白土とベントナイトとは物質として異なるものといえる。
活性白土の表面は、活性化処理によって構造内の可溶性物質が溶出されているため、微細な細孔を有している。そして、表面積は150〜300m/g、細孔の平均直径は50Å程度とされている。
また、活性白土は一定の層構造をなしており、イオン交換樹脂に類似した陽イオン交換性があり、活性化処理によって陽イオンの一部は水素イオンで交換され、置換性水素を有している。この量は一般に10〜30m.e./100gで、他の吸着剤にない化学活性を示すとされている。
さらに、活性白土の表面への物質の吸着は選択的で、数種の物質が共存している状態では極性物質、不飽和物質、芳香族物質に対して選択的な吸着能を示す。
こうした特殊な表面特性により、活性白土は他の吸着剤によって代替することができない、多くの用途に利用されている。例えば、石油及び油脂の脱色、脱水、安定度向上、不純物除去など吸着精製をはじめ、石油化学とその関連化学工業における原料、中間製品、最終製品の精製、さらには活性白土の化学活性を利用した接触反応等である。なお、本発明のようにコロイド状シリカを含むスラリーへの利用は見られていない。
【0017】
3.ろ過方法
スラリーに添加する活性白土の量は、スラリー濃度にもよるが、例えば、スラリー濃度700〜1000mg/lの場合であれば、スラリー1l当たり10g以上の添加が好ましく、10〜40gとすることがより好ましい。10gを下回るとコロイド状シリカの吸着が十分でなく、無添加の場合の8倍以上のろ過速度が得られないからである。なお、40gを上回ると、更なるろ過速度の向上は期待できず、ろ過澱物量のみが増加し、300g/lを越えると粘性が著しく上昇して混合が困難になり操業出来なくなる。
【0018】
また、コロイド状シリカを活性白土に確実に吸着させるためには、スラリー内に活性白土を均一に分散させることが必要であり、このため活性白土をスラリーに添加した後、0.5〜1.5時間攪拌することが好ましい。0.5時間を下回ると、コロイド状シリカの活性白土への吸着が不十分となり、1.5時間以上攪拌しても更なる効果の増加は望めないからである。
活性白土が添加され、均一に混合されたスラリーはその後、ドラムフィルターやベルトフィルターといった真空ろ過器、フィルタープレスといった加圧ろ過器に供され、固液分離され、得られたろ液は浸出液として次工程に送られる。
【0019】
活性白土がコロイド状シリカを含むスラリーのろ過に有効な理由として、前述したように、本発明の効果を十分に得るには活性白土を添加した後に所定の時間攪拌混合することが望まれることから以下のように考えている。
活性白土の大きな機能は、活性白土中に含まれる活性なシリカにコロイド状シリカを吸着させることであり、コロイド状シリカを吸着した活性白土をろ過することで、清澄な浸出液を得ることができる。したがって、活性白土がろ過助剤として果たす役割は小さい。
【0020】
なお、本発明のスラリーのろ過方法は、銅硫化物の酸浸出液から得られるスラリーのみならず、コロイド状シリカを含むスラリーに対しても有効である。
【実施例】
【0021】
以下に本発明の実施例によって本発明をさらに詳細に示すが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、水溶液中のSiの分析はICP発光分析法を用いて測定した。また、用いた活性白土は水澤化学工業株式会社製の商品名 ガレオン アース である。
(実施例1)
a)コロイド状シリカを含むスラリー(元液)の作成
銅27%、鉄29%、硫黄30%、珪素6%の組成で平均粒径30μmの銅精鉱に濃度90g/lの硫酸溶液を添加してスラリー濃度が200g/lとなるように混合し、攪拌機付きのチタン製加圧容器に装入して160℃に昇温し、攪拌しつつ160℃に2.5時間保持した。その後、加圧容器からスラリーを取り出し、バスケット半径150mmの遠心分離器を用いて、回転数1000rpmで10分間回転させ、コロイド状シリカを含むスラリーと浸出残渣とに分離した。この操作を繰り返してコロイド状シリカを含むスラリーを2l得た。このスラリーのSi濃度は690mg/lであり、元液のpHは0.35であった。
得られたコロイド状シリカを含むスラリーを元液として以下のろ過処理を行った。
b)ろ過処理
元液を50ml分取して、これに0.5gの活性白土を添加し、濃度10g/lのスラリーを得た。このスラリーをスターラーで1時間攪拌し、その後に直径47mmの5C濾紙を用いてヌッチェで吸引ろ過した。スラリー1l当たりに添加した活性白土の量と、得られたろ過速度と、ろ液中のSi濃度を表1に示した。
【0022】
(実施例2)
元液50mlに添加する活性白土の量を1.0gとした以外は実施例1と同様にしてろ過試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0023】
(実施例3)
元液50mlに添加する活性白土の量を1.5gとした以外は実施例1と同様にしてろ過試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0024】
(実施例4)
元液50mlに添加する活性白土の量を2.0gとした以外は実施例1と同様にしてろ過試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0025】
(実施例5)
元液50mlに添加する活性白土の量を2.5gとした以外は実施例1と同様にしてろ過試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0026】
(比較例1)
元液50mlに何も添加しなかった以外は実施例1と同様にしてろ過試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0027】
(比較例2)
元液50mlに添加する活性白土を0.25gとした以外は実施例1と同様にしてろ過試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0028】
(比較例3)
元液50mlに活性白土を添加せず、高分子凝集剤(アロンフロック株式会社製 商品名C510H)を20mg/lの濃度になるように添加した以外は実施例1と同様にしてろ過試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0029】
(比較例4)
元液50mlに高分子凝集剤(アロンフロック株式会社製 商品名C510H)を50mg/lの濃度になるように添加した以外は比較例3と同じようにしてろ過試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0030】
(比較例5)
元液50mlに高分子凝集剤(アロンフロック株式会社製 商品名C510H)を80mg/lの濃度になるように添加した以外は比較例3と同じようにしてろ過試験を行った。得られた結果を表1に示した。
【0031】
(比較例6)
実施例1、比較例4、そして比較例5とで得られたろ液(浸出液)と、銅の抽出剤としてCognis社製商品名LIX860I−NCを30体積%含み、希釈剤として日鉱共石(株)社製商品名テクリーンN20を用いた抽出有機と50mlとを、それぞれ分液ロートに入れ、それぞれ1分間振とうし、その後静置してそれぞれの分離性を確認したが、比較例3と比較例4のものは、1分以内で分離した実施例1のものと比べて分離性は悪く、10分かかっても分離せず、一部ではクラッドの発生も確認できた。
【0032】
【表1】

以上の結果をまとめると、本発明の方法に従う実施例1〜5では、何も添加しない場合、即ち比較例1のろ過速度の8〜13倍のろ過速度が得られることがわかった。なお、実施例5では実施例4と比較してろ過速度はわずかに低下しており、これ以上添加量を増加しても更なるろ過速度の改善は見られないことがわかった。また、ろ過澱物量が、当然のことながら増加しており、これ以上添加量を増加させるとろ過機への負担を大きくすることもわかった。
また、実施例1〜5で添加するものは活性白土のみであり、有機高分子凝集剤は使用しない。したがって、ろ過して得られる浸出液中に有機物は含まれておらず、次工程で銅を溶媒抽出して回収する際に、予め活性炭処理等の必要は生じない。
比較例2は、活性白土の添加量を本発明の範囲より少なくした例であるが、量が足りないことによりろ過速度の改良は得られていない。また、高分子凝集剤を用いてろ過性を改善するためには、50mg/l以上の濃度としなければならず、量が多いことばかりか、比較例6に見られるように、次工程への影響も無視できないものとなっている。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の方法に従えば、銅精鉱を浸出して得られたコロイド状シリカを含むスラリーに特定量の活性白土を添加することにより、活性白土を添加しない場合の8〜13倍のろ過速度を得ることができる。加えて、活性白土しか添加せず、有機高分子凝集剤を用いないため、次工程である銅溶媒抽出工程に何の負担も与えることはない。
また、本発明は、銅精鉱を浸出して得られたコロイド状シリカを含むスラリーばかりでなく、コロイド状シリカを含むスラリー全般に対しても有効であり、本発明の工業的価値は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅硫化物の酸浸出により得られたコロイド状シリカを含むスラリーのろ過方法において、
前記コロイド状シリカを含むスラリーに活性白土を添加し、攪拌混合してスラリー内に活性白土を均一に分散させた後に、ろ過することを特徴とするコロイド状シリカを含むスラリーのろ過方法。
【請求項2】
前記活性白土の添加量は、コロイド状シリカを含むスラリー1lに対して10g以上であることを特徴とする請求項1記載のコロイド状シリカを含むスラリーのろ過方法。
【請求項3】
前記攪拌混合の時間は、0.5〜1.5時間であることを特徴とする請求項1または2に記載のコロイド状シリカを含むスラリーのろ過方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−36817(P2011−36817A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187785(P2009−187785)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】