説明

コロイド結晶の形成方法、及びこれに基づくコロイド結晶素子の形成方法

【課題】 大きなドメインを有するコロイド結晶の簡易な形成方法を提供すること。
【解決手段】 単分散粒が無秩序に分散した分散液にせん断流動を与えた後、これを静置させることで、大きなドメインを有するコロイド結晶を形成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイド結晶の形成方法およびこれに基づくコロイド結晶素子の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単分散コロイド粒子が分散媒中で分散状態を保ったまま周期的に配列したものをコロイド結晶といい、フォトニック結晶をはじめとする様々な光学素子としての応用が期待されている。例えば、特定の波長の光をカットする光フィルターとして、透明なセル中にコロイド結晶が封入された構造の素子がある(例えば、特許文献1参照)。さらに、これと同様の構成において、コロイド結晶状態が高分子ゲル中に固定化された素子もある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
前記コロイド結晶素子は、その部材であるコロイド結晶の形成プロセスに、イオン交換樹脂により脱塩処理したコロイド分散液を透明セル中に導入した後、温度変化や振動などの外乱が無い状態で長時間保持し、徐々に結晶化させる操作を含む(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、この形成プロセスは、脱塩処理に長時間要するばかりか、脱塩前のイオン交換樹脂の洗浄が必要であり、さらに得られたコロイド結晶は、ドメインが小さく不均一な状態の無配向多結晶体となりやすいという問題がある。
【特許文献1】米国特許第4,627,689号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0482394号明細書
【特許文献3】特開2002−28471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の問題を鑑みてなされたものであり、大きなドメインを有するコロイド結晶の簡易な形成方法を提供することを目的とする。
【0005】
また、本発明は、大きなドメインを有するコロイド結晶を容易に形成し得るコロイド結晶素子の形成方法を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコロイド結晶の形成方法は、単分散粒子溶液にせん断流動を与えた後、これを静置させることによりコロイド結晶を形成させることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のコロイド結晶素子の形成方法は、単分散粒子溶液にせん断流動を与えた後、これを静置させることによりコロイド結晶を形成させることを特徴とする。
【0008】
本発明のコロイド結晶の形成方法は、好ましくは、単分散粒子溶液が増粘剤をさらに含む。
【0009】
本発明のコロイド結晶素子の形成方法は、好ましくは、単分散粒子溶液が増粘剤をさらに含む。
【0010】
本発明のコロイド結晶素子の形成方法は、好ましくは、その単分散粒子溶液が、ゲル化可能なバインダ成分をさらに含み、コロイド結晶を形成させた後、該バインダをゲル化させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明を用いると、大きなドメインを有するコロイド結晶及びこれを用いたコロイド結晶素子を簡単に形成することが可能となる。
【0012】
さらに、本発明により得られる大きなドメインを有するコロイド結晶構造を高分子ゲル中へ固定化することが可能であり、これにより振動や温度変化などに対する安定性を向上させ、機能性に優れたコロイド結晶素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明によれば、単分散粒子溶液にせん断流動を与えた後、これを静置させることによりコロイド結晶を形成させるコロイド結晶の形成方法が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、単分散粒子溶液にせん断流動を与えた後、これを静置させることによりコロイド結晶を形成させるコロイド結晶素子の形成方法が提供される。
【0015】
本発明に使用される単分散コロイド粒子の分散系は、粒子間の静電気的相互作用が十分に大きくない場合は、粒子が無秩序に分散した状態をとる。本発明では、まず、この無秩序分散状態の溶液に、適当な条件下でせん断流動を与える。せん断流動により、分散系中で微粒子が規則配列し、コロイド結晶化が生じる。このせん断流動によるコロイド結晶化は、粒子間の静電気的相互作用によるコロイド結晶化とは本質的に異なる現象である。ここで、せん断流動を止めると、せん断流動により生じたコロイド結晶は、一旦、無秩序分散状態に戻るが、さらに、この無秩序分散状態のコロイド粒子を十分に静置することにより、無秩序分散状態のコロイド粒子を再びコロイド結晶化させ、大きなドメインを有するコロイド結晶を得ることができる。
【0016】
本発明に使用されるコロイド単分散粒子の大きさは、好ましくは100〜500nmである。この大きさは、コロイド結晶を光学素子として用いる場合に有用である。
【0017】
単分散粒子の種類は、分散媒中で安定に分散するものであれば特に限定されず、例えばポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリメチルメタアクリレート、ブタジエン/スチレン共重合体、ジビニルベンゼン/スチレン共重合体等の有機高分子粒子、あるいは、シリカ、チタニア、ジルコニア等の金属酸化物粒子、さらには、金、銀などの金属粒子を用いることができる。さらに、各種ブロック共重合体が形成するミセル粒子を用いることも可能である。
【0018】
本発明に使用される単分散粒子溶液の分散媒は、単分散粒子が安定に分散するものであれば特に限定されず、水や各種有機溶媒が用いられる。
【0019】
分散媒中の粒子濃度は、単分散粒子溶液全量の5容量%〜70容量%が好ましい。この範囲であると、分散液が適度な流動性を有し、かつせん断流動による結晶化が生じ得る。5容量%未満であると、せん断流動による結晶系が余り高くならない傾向があり、70容量%を超えると、粘度が高くなり過ぎ、流動が難しくなる傾向がある。
【0020】
本発明に使用される単分散粒子溶液は、この溶液を増粘させる成分を含むことが好ましい。分散液に増粘成分を添加すると、せん断流動を止めた後に生じる結晶化が促進される傾向がある。増粘成分としては、分散安定性を損なわないものが選択され、例えば各種重合度のポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの高分子を用いることができる。
【0021】
単分散粒子溶液にせん断流動を与える方法は、例えば回転型粘度計の各種測定セルを用いる方法がある。
【0022】
具体的には、通常の粘度測定と同様に各種測定セルに単分散粒子溶液を導入し、せん断速度や付与時間などを設定し、粘度計を動作させることでせん断流動を付与することがきる。せん断流動は、流れと垂直方向に流速の値が変化する。このため、セル形状は、セル空間内においてせん断速度が一様となるコーンプレートセルやクエットセルが好ましい。
【0023】
図1に、本発明に使用可能な回転式粘度計の一例の構成を表す概略図を示す。
【0024】
図示するように、回転式粘度計の一例となる石英ガラス製コーンプレートセル10は、外部容器1とこの外部容器1に挿入されたコーン部2とを有する。この外部容器1内に単分散粒子溶液3を導入し、このコーン部2あるいは外部容器1を回転させることにより、単分散粒子溶液にせん断流動を与えることができる。
【0025】
単分散粒子溶液にせん断流動を与える他の方法として、いくつかの既存の塗布方法を用いることができる。塗布方法に単分散粒子溶液に適当なせん断流動が発生するものが選択され、例えば、マイクログラビアコータ、スロットダイコータ、及びナイフコータなどの塗布方法を用いることができる。
【0026】
せん断流動停止後の再結晶化は、付与したせん断流動の履歴に依存する。通常、再結晶化はせん断流動停止後、数秒〜数分で生じる。本発明では、十分大きなドメインを有するコロイド結晶を得るために、好ましくは、10分ないし1時間静置し得る。
【0027】
単分散粒子溶液の結晶状態の変化は、透明なセルを用い試料の反射特性などを調べることで評価可能である。
【0028】
例えば、微粒子分散液に光を照射すると、粒子が規則配列している場合、通常の結晶と同様にブラッグ反射を起こす。
【0029】
微粒子分散液のブラッグ反射のモデル図を図2に示す。
【0030】
図中、5はセル、4はセル5内に導入された微粒子分散液、矢印6,7は、各々、角度θ0における入射光及び反射光を示す。
【0031】
ブラッグ反射におけるピーク波長λpは、結晶系が立方晶である場合、下記式(1)及び式(2)で表される。
【0032】
λp=2dhklnDsinθ…(1)
1/d2hkl=(h2+k2+l2)/a2…(2)
式中、nDは分散液の平均反射率、θは入射角、dhklは(hkl)面における面間隔、a,b,cは粒子の体積濃度により決定される立方晶系セルの格子定数を示す。
【0033】
このことから、再結晶されたコロイド結晶試料の反射スペクトルを測定することにより、配列規則構造の評価が可能である。それらの相対強度は、結晶の配向性により変化し、配向性が良好な場合すなわちドメインが大きい場合は、いくつかのピークが消失する場合がある。消失するピークにより配向についての情報を知ることができる。なお、反射ピーク波長が可視領域に生じる場合には、コロイド結晶試料の発色の鮮明度の差異として目視で確認することができる。
【0034】
この再結晶化により生じたコロイド結晶を、透明かつ適当な形状を有するせん断セル内に収容することにより、コロイド結晶素子が得られる。
【0035】
本発明に使用される単分散粒子溶液には、ゲル化可能なバインダ成分を添加することができる。バインダ成分を添加することにより、単分散粒子溶液を再結晶化させた後、バインダ成分をゲル化させ得る。これにより、コロイド粒子は、コロイド結晶状態を保ったままゲル中に固定されるため、振動や温度変化などの外乱に対する安定性が向上する。また、セルからコロイド結晶を取出すことが可能となり、取出されたコロイド結晶はコロイド結晶素子あるいはコロイド結晶素子の部材として用いることができる。
【0036】
ゲル化の方法としては、熱の影響が小さく所要時間も短い光重合が好ましい。光重合を行うには、せん断流動を付与するセルとして少なくとも一部が透明なセルを用いることが好ましい。ゲル化成分としては、分散安定性を損なわないものが選択され、分散媒が水である場合は、例えばアクリルアミド、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミドなど、およびこれらの混合物等を使用することができる。粒子分散液に前記ゲル化成分と適当な光重合開始剤例えば2,2’−3アゾビス[2−メチル−N−{2−(1−ヒドロキシブチル)}プロピオンアミド]等を添加し、透明セル中で再結晶化させた後、UV照射することにより、ゲル化させることができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を示し、本発明をより詳細に説明する。
【0038】
実施例1
ポリスチレン粒子単分散水溶液(JSR製IMMUTEX G0104、粒径200nm、粒子濃度:10重量%)を濃縮し、粒子濃度45重量%(44容量%)のコロイド粒子の単分散粒子溶液を得た(粘度;約20mPas)。使用した粒子の種類、単分散粒子溶液中の粒子濃度の重量%及び容量%、及び溶液の粘度を下記表1−1に示す。
【0039】
濃縮された単分散粒子溶液は白濁状態であった。これは、ポリスチレン粒子が無秩序に分散した状態であることを示す。この粒子分散溶液を、図1に示す回転式粘度計と同様の構成を有するレオロジカ社製 VAR−100の石英ガラス製コーンプレートセル内に導入した。続いて、導入された単分散粒子溶液に、10000秒-1のせん断流動を継続的に付与したところ、単分散粒子溶液は数秒以内に鮮やかな青色を呈し、コロイド結晶化が生じたことが確認された。また、青色はセル全体に亘って一様であり、コロイド結晶はセル全体で単一ドメインであることが確認された。
【0040】
青色は外部光のブラッグ反射によるもので、その鮮明度は結晶性を反映しており、鮮明度が大きいほど結晶性の大きさが高いことを意味する。
【0041】
せん断流動を10秒間付与したあと停止させたところ、青色は消失し白濁状態に戻り、単分散粒子溶液は無秩序分散状態に戻った。この状態を放置すると、白濁状態は徐々に青色に変化し、コロイド粒子の単分散粒子溶液の再結晶化が進行していることが確認された。この単分散粒子溶液の色の変化は、せん断流動を停止したあと、1分間放置したが、1分経過後以降ではほとんど認められなかったことから、再結晶化がほぼ終了したと見なした。この状態のコロイド粒子の単分散粒子溶液は、せん断流動下の単分散粒子溶液より青色鮮明度が小さく、結晶性はせん断流動下より小さいと考えられる。
【0042】
コロイド結晶状態の単分散粒子溶液について、下記のようにコロイド結晶の構造を調べた。
【0043】
構造評価
まず、上記手順において、コーンプレート内に単分散粒子溶液を導入した直後の反射スペクトルを、標準スペクトルとして測定した。
【0044】
次に、せん断流動付与中の単分散粒子溶液、及びせん断流動付与後放置されたコロイド結晶状態の単分散粒子溶液について、各々反射スペクトルを測定した。
【0045】
各反射スペクトルを標準スペクトルで割り、各々相対反射スペクトルを求め、その最大ピーク強度を調べた。得られた結果を下記表1−2に示す。
【0046】
結晶性及び配向性が高いと、この最大ピーク強度が大きくなり、結晶性及び配向性が小さいと、最大ピーク強度が小さくなる。
【0047】
実施例2
実施例1と同様の単分散粒子溶液に、下記表1−2に示すせん断速度を付与し、及び下記表1−2に示す放置時間で放置する以外は実施例1と同様にして、コロイド結晶化を行った。使用した粒子の種類、単分散粒子溶液中の粒子濃度の重量%及び容量%、及び溶液の粘度を下記表1−1に示す。
【0048】
また、実施例1と同様にして、その構造評価を行った。得られた結果を下記表1−2に示す。
【0049】
実施例3及び4
実施例1と同様のポリスチレン粒子単分散水溶液に、ポリエチレングリコール(和光純薬工業製、平均分子量:500,000)の水溶液を添加したあと濃縮し、粒子濃度45重量%(44容量%)、ポリエチレングリコール濃度2重量%の粒子分散溶液(粘度:約40mPas)を得た。使用した粒子の種類、単分散粒子溶液中の粒子濃度の重量%及び容量%、及び溶液の粘度を下記表1−1に示す。
【0050】
この粒子分散溶液に、下記表1−2に示すせん断速度を付与し、及び下記表1−2に示す放置時間で放置する以外は実施例1と同様にして、コロイド結晶化を行った。
【0051】
粒子分散溶液のせん断流動下での結晶性は実施例1と同程度であった。続いて、せん断流動を停止し、放置したところ、実施例1と同様に無秩序分散化および再結晶化が認められた。再結晶化終了時(せん断流動停止後一分経過時)の青色鮮明度は、せん断流動下のものと同程度であったことから、再結晶化終了時における結晶性は、実施例1及び2よりも高いことがわかった。
【0052】
また、実施例1と同様にして、その構造評価を行った。得られた結果を下記表1−2に示す。
【0053】
実施例5及び6
濃縮後の粒子濃度を49重量%(48容量%)とすること以外は、実施例1と同様にして粒子分散溶液を得た。使用した粒子の種類、単分散粒子溶液中の粒子濃度の重量%及び容量%、及び溶液の粘度を下記表1−1に示す。
【0054】
この粒子分散溶液に、下記表1−1に示すせん断速度及び放置時間にする以外は実施例1と同様にして、コロイド結晶化を行った。
【0055】
また、実施例1と同様にして、その構造評価を行った。得られた結果を下記表1−2に示す。
【0056】
比較例1及び2
ポリスチレン粒子単分散水溶液(JSR製IMMUTEX G0104、粒径200nm、粒子濃度:10重量%)を濃縮し、粒子濃度を35ないし50重量%に変化させた場合について、せん断流動を与えることなく、下記表1−2に示す放置時間で放置し、実施例1と同様にしてコロイド粒子の単分散粒子溶液を得た。使用した粒子の種類、単分散粒子溶液中の粒子濃度の重量%及び容量%、及び溶液の粘度を下記表1−1に示す。
【0057】
また、この単分散粒子溶液について実施例1と同様にして構造評価を行った。得られた結果を下記表1−2に示す。
【0058】
実施例7ないし9,参考例1ないし3
スチレンブタジエンコポリマー粒子単分散水溶液(日本エイアンドエル社製 E2309 粒径305nm、粒子濃度50重量%)を塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液で下記表1−1に示すようにpHと濃度を調整することにより、単分散粒子溶液を得た。下記表1−2に示すせん断速度を付与し、及び下記表1−2に示す放置時間で放置する以外は実施例1と同様にして、コロイド結晶化を行った。使用した粒子の種類、単分散粒子溶液中の粒子濃度の重量%及び容量%、及び溶液の粘度を下記表1−1に示す。
【0059】
また、この単分散粒子溶液について実施例1と同様にして構造評価を行った。得られた結果を下記表1−2に示す。
【0060】
実施例10及び11
スチレンブタジエンコポリマー粒子単分散水溶液の粒子濃度を、純水で希釈することにより48重量%に変更する以外は、実施例7と同様にして単分散粒子溶液を得た。下記表1−2に示すせん断速度を付与し、及び下記表1−2に示す放置時間で放置する以外は実施例1と同様にして、コロイド結晶化を行った。使用した粒子の種類、単分散粒子溶液中の粒子濃度の重量%及び容量%、及び溶液の粘度を下記表1−1に示す。
【0061】
また、この単分散粒子溶液について実施例1と同様にして構造評価を行った。得られた結果を下記表1−2に示す。
【0062】
実施例12−18,参考例4
スチレンブタジエンコポリマー粒子単分散水溶液を原液のまま用いる以外は、実施例7と同様にして単分散粒子溶液を得た。下記表1−2に示すせん断速度を付与し、及び下記表1−2に示す放置時間で放置する以外は実施例1と同様にして、コロイド結晶化を行った。使用した粒子の種類、単分散粒子溶液中の粒子濃度の重量%及び容量%、及び溶液の粘度を下記表1−1に示す。
【0063】
また、この単分散粒子溶液について実施例1と同様にして構造評価を行った。得られた結果を下記表1−2に示す。
【0064】
比較例3及び4
スチレンブタジエンコポリマー粒子単分散水溶液のpH及び粒子濃度を、実施例10と同様にして下記表1−1に示すように変化させ、単分散粒子溶液を得た。これにせん断流動を与えることなく、下記表1−2に示す放置時間で放置した。使用した粒子の種類、単分散粒子溶液中の粒子濃度の重量%及び容量%、及び溶液の粘度を下記表1−1に示す。
【0065】
また、この単分散粒子溶液について放置後の構造評価を実施例1と同様にして行った。得られた結果を下記表1−2に示す。
【表1】

【0066】
上記表中、PSはポリスチレン粒子を、SBはスチレンブタジエンコポリマー粒子を、各々示す。
【表2】

【0067】
実施例1及び2に示すように、せん断流下で生じた結晶性はせん断流の停止後も残存することがわかった。
【0068】
また、実施例3及び4に示すように、同じ粒子濃度であっても、同じせん断速度であっても、増粘成分を添加して粘度を高くすると、実施例1及び2と比較してせん断流付与後の結晶性が向上する傾向があることがわかった。
【0069】
実施例5及び6に示すように、粒子濃度を高くすると、せん断流付与後の結晶性が高くなる傾向があることがわかった。
【0070】
比較例1及び2に示すように、せん断流動を与えないと、静置してもコロイド結晶化が生じないことがわかった。
【0071】
実施例7及び8から、同じ粒子濃度、同じせん断速度であっても、pH値を高くすると、結晶性が向上する傾向があることがわかった。また、実施例10ないし13に示すように、実施例7よりも粒子濃度を上げると、結晶性が向上する傾向があることがわかった。これは、粒子濃度及びpHを上げることにより粒子間斥力が大きくなるためと考えられる。
【0072】
さらに、実施例14ないし18に示すように、粒子濃度が高いと、せん断速度が多少低くても、その結晶性が良好となり、また、せん断速度が高くなるほどその結晶性がより良好となる傾向があることがわかった。
【0073】
比較例3及び4に示すように、異なる粒子を使用した場合でも、比較例1及び2と同様に、せん断流動を与えないと、静置してもコロイド結晶化が生じないことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のコロイド結晶は、フォトニック結晶をはじめとする様々な光学素子として利用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に使用可能な回転式粘度計の一例の構成を表す概略図
【図2】微粒子分散液のブラッグ反射のモデル図
【符号の説明】
【0076】
1…外部容器、2…コーン部、3…単分散粒子溶液、4…粒子分散液、5…セル、6…入射光、7…反射光、10…コーンプレートセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単分散粒子溶液にせん断流動を与えた後、これを静置させることによりコロイド結晶を形成させることを特徴とするコロイド結晶の形成方法。
【請求項2】
前記溶液は増粘剤をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のコロイド結晶の形成方法。
【請求項3】
単分散粒子溶液にせん断流動を与えた後、これを静置させることによりコロイド結晶を形成させることを特徴とするコロイド結晶素子の形成方法。
【請求項4】
前記溶液は増粘剤をさらに含むことを特徴とする請求項3記載のコロイド結晶素子の形成方法。
【請求項5】
前記溶液はゲル化可能なバインダ成分をさらに含み、コロイド結晶を形成させた後、該バインダをゲル化させることを特徴とする請求項3または4に記載のコロイド結晶素子の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−710(P2006−710A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177390(P2004−177390)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成14年度新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】