説明

コロナ放電装置、コロナ放電装置を備える画像形成装置、コロナ放電装置の交換用電極、およびコロナ放電装置の放電電極交換方法

【課題】 任意の放電電極を、位置精度良く交換できるコロナ放電装置、コロナ放電装置を備える画像形成装置、コロナ放電装置の交換用電極、およびコロナ放電装置の放電電極交換方法を提供する。
【解決手段】 基板108と、基板108上に形成されるコモン電極107と、基板108上にコモン電極107から一定間隔を空けて形成される複数の個別電極106と、基板108上方に設けられる放電電極101と、放電電極101と個別電極106との間に設けられる導電性密着材103と、基板108上方に設けられる一体抵抗体105と、個別電極106と一体抵抗体105との間、およびコモン電極107と一体抵抗体105との間に設けられるACF104と、を備えるコロナ放電装置の基板108に、特定開口部102を有する交換用電極112を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けるために利用する位置決め用構造を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナ放電現象を応用して被帯電物を帯電させるコロナ放電装置、コロナ放電装置を備える画像形成装置、コロナ放電装置の交換用電極、およびコロナ放電装置の放電電極交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機およびプリンタ等の電子写真プロセスに用いられるコロナ放電装置としては、たとえば特許文献1に、複数の鋸歯を有する放電電極が絶縁性基板上に付設されたコロナ放電装置が記載されている。また、特許文献2の図7には、絶縁体上に、プリント配線基板の作製手法によって複数の放電電極を付設したコロナ放電装置が示されている。しかしながら、このようなコロナ放電装置では、放電電極に少しでも、歯先形状のばらつき、破損、および汚染等がある場合には、各放電電極先端間での放電が不均一となってしまい、形成される画像が劣化するという問題があった。また、均一な帯電を得るために必要以上の放電電流を流すと、人体に悪影響を及ぼすオゾンの発生量が多くなるという問題もあった。
【0003】
そこで、より安定な放電を得る一手段として、電極部材の各々を別個の安定化抵抗体を介して電源に接続することが提案された。そのような技術を応用したコロナ放電装置の一例が特許文献2の図9に示されている。特許文献2の図9には、コモン電極、およびこのコモン電極と一定の距離間隔を空ける複数の放電電極が、プリント配線基板の作製手法によって絶縁性基板上に形成されている。コモン電極と複数の放電電極の各々とは、複数の安定化抵抗体で電気的に接続されており、このような複数の安定化抵抗体によってコモン電極に印加された電圧を一定電圧降下させることで、各放電電極に流れる放電電流を制御し、安定化させることができる。また、より安価にコロナ放電装置を製造する手段として、特許文献2の図1に示すように安定化抵抗体を一体型の形状とする方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−15272号公報
【特許文献2】特開平7−64375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような安定化抵抗体を用いたコロナ放電装置でも、製作する過程での、歯先形状のばらつき、破損、および汚染等が大きい場合には、放電電流が不均一になる。また、使用を続けていくと、歯先形状のばらつき、破損、および汚染等が生じる可能性もある。そのような不具合は全ての放電電極に生じるとは限らず、大抵の場合は、複数の放電電極のうち数本のみである。
【0006】
しかしながら前記の放電装置は、放電電極がプリント配線基板の作製手法によって形成されているので、容易に交換することができず、不良でない放電電極、接着テープ、および絶縁基板の全てを廃棄して新しく作製する必要があり、ユーザの経済的負担が増大するという問題がある。また、放電電極が、複数の鋸歯を有する単一の放電電極を備える前記の放電装置の場合には、一部の放電電極を交換するということはできず、1つの大きな放電電極を交換する必要があるので、ユーザの経済的負担が増大し、さらに、交換の際には新たな放電電極を位置精度良く取付ける必要があるので、精密な取付けのための時間を要し、ユーザの時間的負担が増加するという問題もある。
【0007】
本発明は、上述した従来の課題を解消するためになされたものであって、任意の放電電極を、位置精度良く交換できるコロナ放電装置、コロナ放電装置を備える画像形成装置、コロナ放電装置の交換用電極、およびコロナ放電装置の放電電極交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、絶縁性を有し、位置決め用構造を有する基板と、
前記基板上に形成され、かつ電圧源に接続されるコモン電極と、
前記基板上に、前記コモン電極から一定間隔を空けて形成される複数の個別電極と、
前記基板上方に設けられ、先端部が前記基板から外気側に突出した複数の放電電極と、
前記放電電極と前記個別電極との間に設けられ、前記放電電極と前記個別電極とを電気的に接続する放電電極用密着材と、
前記基板上方に設けられ、前記複数の個別電極と前記コモン電極とを電気的に接続するための抵抗体と、
前記個別電極と前記抵抗体との間に設けられ、前記個別電極と前記抵抗体とを電気的に接続する個別電極用密着材と、
前記コモン電極と前記抵抗体との間に設けられ、前記コモン電極と前記抵抗体とを電気的に接続するコモン電極用密着材と、を備えるコロナ放電装置であって、
前記位置決め用構造は、前記放電電極を交換するための交換用電極の有する特定構造に対応する構造であって、該交換電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けるための構造であり、
前記複数の放電電極のうち、任意の放電電極のみを前記交換用電極に交換可能であることを特徴とするコロナ放電装置である。
【0009】
また本発明は、前記位置決め用構造は、開口形状が真円形状以外の形状である位置決め用開口部であり、
前記特定構造は、開口形状が真円形状以外の形状である特定開口部であり、
前記位置決め用開口部と前記特定開口部とが1対1に対応し、対応する開口部同士の開口形状は全て一致し、
前記位置決め用開口部と前記特定開口部との位置合わせが可能であり、該位置合わせによって、前記交換電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けることが可能であることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記位置決め用構造は、1つ以上の、開口形状が真円形状である位置決め用開口部と、1つ以上の位置決め用開口部とであり、
前記特定構造は、1つ以上の、開口形状が真円形状である特定開口部と、1つ以上の特定開口部とであり、
前記位置決め用開口部と前記特定開口部とが1対1に対応し、対応する開口部同士の開口形状は全て一致し、
前記位置決め用開口部と前記特定開口部との位置合わせが可能であり、該位置合わせによって、前記交換電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けることが可能であることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記位置決め用構造は、2つ以上の位置決め用開口部であり、
前記特定構造は、前記交換用電極の先端部を通り突出方向に平行な直線を挟む2カ所に、それぞれ少なくとも1つ以上設けられる切欠き部であり、
前記位置決め用開口部と前記切欠き部とが1対1に対応し、対応する切欠き部の切欠き形状の輪郭形状は、対応する位置決め用開口部の開口形状の輪郭形状に含まれ、
前記位置決め用開口部と前記切欠き部との位置合わせが可能であり、該位置合わせによって、前記交換電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けることが可能であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記放電電極と前記個別電極との間に設けられ、前記放電電極と前記個別電極とを電気的に接続する放電電極用密着材は櫛状構造密着材であって、
前記櫛状構造密着材の凸部は、前記放電電極と前記個別電極との間に位置し、
前記櫛状構造密着材の凹部は、隣接する前記凸部同士の間に位置することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記櫛状構造密着材は、異方導電性接着膜であることを特徴とする。
また本発明は、前記の放電装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0014】
また本発明は、特定構造を有する交換用電極であって、
該交換用電極は、絶縁性を有し位置決め用構造を有する基板と、前記基板上に形成されかつ電圧源に接続されるコモン電極と、前記基板上に前記コモン電極から一定間隔を空けて形成される複数の個別電極と、前記基板上方に設けられ先端部が前記基板から外気側に突出した複数の放電電極と、前記放電電極と前記個別電極との間に設けられ前記放電電極と前記個別電極とを電気的に接続する放電電極用密着材と、前記基板上方に設けられ前記複数の個別電極と前記コモン電極とを電気的に接続するための抵抗体と、前記個別電極と前記抵抗体との間に設けられ前記個別電極と前記抵抗体とを電気的に接続する個別電極用密着材と、前記コモン電極と前記抵抗体との間に設けられ前記コモン電極と前記抵抗体とを電気的に接続するコモン電極用密着材と、を備えるコロナ放電装置の前記放電電極と交換するための電極であり、
前記特定構造は、前記位置決め用構造に対応する構造であって、該交換電極が正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けられるための構造であり、
前記複数の放電電極のうち、任意の放電電極のみと交換可能であることを特徴とする交換用電極である。
【0015】
また本発明は、コロナ放電装置の任意の放電電極を交換用電極と交換する方法であって、
コロナ放電装置の基板上の、放電電極が剥離した部分における位置決め用構造、および交換用電極の特定構造を利用して、該交換用電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けることを特徴とするコロナ放電装置の放電電極交換方法である。
【0016】
また本発明は、前記位置決め用構造は、位置決め用開口部であり、
前記特定構造は、特定開口部であり、
前記位置決め用開口部および前記特定開口部の開口に位置決め治具を通すことによって位置合わせを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、絶縁性を有し、位置決め用構造を有する基板と、前記基板上に形成され、かつ電圧源に接続されるコモン電極と、前記基板上に、前記コモン電極から一定間隔を空けて形成される複数の個別電極と、前記基板上方に設けられ、先端部が前記基板から外気側に突出した複数の放電電極と、前記放電電極と前記個別電極との間に設けられ、前記放電電極と前記個別電極とを電気的に接続する放電電極用密着材と、前記基板上方に設けられ、前記複数の個別電極と前記コモン電極とを電気的に接続するための抵抗体と、前記個別電極と前記抵抗体との間に設けられ、前記個別電極と前記抵抗体とを電気的に接続する個別電極用密着材と、前記コモン電極と前記抵抗体との間に設けられ、前記コモン電極と前記抵抗体とを電気的に接続するコモン電極用密着材と、を備えるコロナ放電装置であって、前記位置決め用構造は、前記放電電極を交換するための交換用電極の有する特定構造に対応する構造であって、該交換電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けるための構造であり、前記複数の放電電極のうち、任意の放電電極のみを前記交換用電極に交換可能であるコロナ放電装置が提供される。
【0018】
該放電装置によれば、前記放電電極の全てを交換せずとも、前記放電電極のうち不具合の生じた放電電極のみを、前記交換用電極に交換することが可能になる。また、該交換の際に前記位置決め用構造および前記特定構造を利用でき、前記放電装置が正常な放電を行うことが可能になる公差範囲の位置に精度良く前記交換用電極を取付けることができるので、放電ムラおよび異常放電を回避できる。さらに、前記位置決め用構造を利用することで、容易に前記交換を行うことができるので、前記交換に掛かる時間を短縮できる。したがって、ユーザの経済的および時間的負担を軽減できる。
【0019】
また本発明によれば、前記位置決め用構造は、開口形状が真円形状以外の形状である位置決め用開口部であり、前記特定構造は、開口形状が真円形状以外の形状である特定開口部であり、前記位置決め用開口部と前記特定開口部とが1対1に対応し、対応する開口部同士の開口形状は全て一致し、前記位置決め用開口部と前記特定開口部との位置合わせが可能であり、該位置合わせによって、前記交換電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けることが可能である。
【0020】
前記放電装置によれば、前記交換用電極を前記放電装置に取付ける際に、前記位置決め用開口部に1対1に対応する特定開口部との位置合わせを行うことで、前記公差範囲から外れることが少なくし、精度良く取付けることができる。
【0021】
また本発明によれば、前記位置決め用構造は、1つ以上の、開口形状が真円形状である位置決め用開口部と、1つ以上の位置決め用開口部とであり、前記特定構造は、1つ以上の、開口形状が真円形状である特定開口部と、1つ以上の特定開口部とであり、前記位置決め用開口部と前記特定開口部とが1対1に対応し、対応する開口部同士の開口形状は全て一致し、前記位置決め用開口部と前記特定開口部との位置合わせが可能であり、該位置合わせによって、前記交換電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けることが可能である。
【0022】
前記放電装置によれば、前記交換用電極を前記放電装置に取付ける際に、前記位置決め用開口部に1対1に対応する特定開口部との位置合わせを行うことで、前記公差範囲から外れることが少なくし、精度良く取付けることができる。また、開口部が真円形状の位置決め用開口部は、前記基板に精度良く設けることができる。
【0023】
また本発明によれば、前記位置決め用構造は、2つ以上の位置決め用開口部であり、前記特定構造は、前記交換用電極の先端部を通り突出方向に平行な直線を挟む2カ所に、それぞれ少なくとも1つ以上設けられる切欠き部であり、前記位置決め用開口部と前記切欠き部とが1対1に対応し、対応する切欠き部の切欠き形状の輪郭形状は、対応する位置決め用開口部の開口形状の輪郭形状に含まれ、前記位置決め用開口部と前記切欠き部との位置合わせが可能であり、該位置合わせによって、前記交換電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けることが可能である。
【0024】
前記放電装置によれば、前記交換用電極を前記放電装置に取付ける際に、前記位置決め用開口部に1対1に対応する切欠き部との位置合わせを行うことで、前記公差範囲から外れることが少なくし、精度良く取付けることができる。また、前記切欠き部を有する前記交換用電極は、前記基板に容易に取付けることができる。
【0025】
また本発明によれば、前記放電電極と前記個別電極との間に設けられ、前記放電電極と前記個別電極とを電気的に接続する放電電極用密着材は櫛状構造密着材であって、前記櫛状構造密着材の凸部は、前記放電電極と前記個別電極との間に位置し、前記櫛状構造密着材の凹部は、隣接する前記凸部同士の間に位置する。
【0026】
前記放電装置によれば、前記放電電極のうち不具合の生じた放電電極が剥離した状態で、前記交換用電極を取付ける際に、前記櫛状構造密着材の凸部を確認することで、取付け位置を容易に確認することができる。また、前記櫛状構造密着材の凸部のみを引き剥がし、引き剥がした部分に新たな放電電極用密着材を設けて、前記交換を行うことが可能であるので、前記放電装置が正常な放電を行うことが可能になる公差範囲の位置に容易に精度良く前記交換用電極を取付けることができ、放電ムラおよび異常放電を回避できる。また、前記交換を容易に行うことができるので、前記交換に掛かる時間を短縮できる。したがって、ユーザの経済的および時間的負担を軽減できる。
【0027】
また本発明によれば、前記櫛状構造密着材は、異方導電性接着膜である。前記異方導電性接着膜は接着後剥離し難いが、前記櫛状構造を有することで容易に剥離させることができる。
【0028】
また本発明によれば、前記コロナ放電装置を備える画像形成装置が提供される。該画像形成装置によれば、前記放電電極の全てを交換せずとも、前記放電電極のうち不具合の生じた放電電極のみを、前記交換用電極に交換することが可能になる。また、該交換の際に前記位置決め用構造および前記特定構造を利用できるので、前記放電装置が正常な放電を行うことが可能になる公差範囲の位置に精度良く前記交換用電極を取付けることができ、良好な画像を形成することができる。
【0029】
また本発明によれば、特定構造を有する交換用電極であって、該交換用電極は、絶縁性を有し位置決め用構造を有する基板と、前記基板上に形成されかつ電圧源に接続されるコモン電極と、前記基板上に前記コモン電極から一定間隔を空けて形成される複数の個別電極と、前記基板上方に設けられ先端部が前記基板から外気側に突出した複数の放電電極と、前記放電電極と前記個別電極との間に設けられ前記放電電極と前記個別電極とを電気的に接続する放電電極用密着材と、前記基板上方に設けられ前記複数の個別電極と前記コモン電極とを電気的に接続するための抵抗体と、前記個別電極と前記抵抗体との間に設けられ前記個別電極と前記抵抗体とを電気的に接続する個別電極用密着材と、前記コモン電極と前記抵抗体との間に設けられ前記コモン電極と前記抵抗体とを電気的に接続するコモン電極用密着材と、を備えるコロナ放電装置の前記放電電極と交換するための電極であり、前記特定構造は、前記位置決め用構造に対応する構造であって、該交換電極が正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けられるための構造であり、前記複数の放電電極のうち、任意の放電電極のみと交換可能である交換用電極が提供される。
【0030】
該交換用電極によれば、前記放電装置の前記放電電極の全てを交換せずとも、前記放電電極のうち不具合の生じた放電電極のみを、該交換用電極に交換することが可能になる。また、該交換の際に前記位置決め用構造および前記特定構造を利用できるので、前記放電装置が正常な放電を行うことが可能になる公差範囲の位置に精度良く前記交換用電極を取付けることができ、放電ムラおよび異常放電を回避できる。さらに、前記特定構造を利用することで、容易に前記交換を行うことができるので、前記交換に掛かる時間を短縮できる。したがって、ユーザの経済的および時間的負担を軽減できる。
【0031】
また本発明によれば、コロナ放電装置の任意の放電電極を交換用電極と交換する方法であって、コロナ放電装置の基板上の、放電電極が剥離した部分における位置決め用構造、および交換用電極の特定構造を利用して、該交換用電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けるコロナ放電装置の放電電極交換方法が提供される。
【0032】
該交換方法によれば、前記放電電極の全てを交換せずとも、前記放電電極のうち不具合の生じた放電電極のみを、前記交換用電極に交換できる。また、該交換の際に前記位置決め用構造および前記特定構造を利用するので、前記放電装置が正常な放電を行うことが可能になる公差範囲の位置に精度良く前記交換用電極を取付けることができ、放電ムラおよび異常放電を回避できる。さらに、前記位置決め用構造および前記特定構造を利用することで、容易に前記交換を行うことができるので、前記交換に掛かる時間を短縮できる。したがって、ユーザの経済的および時間的負担を軽減できる。
【0033】
また本発明によれば、前記位置決め用構造は、位置決め用開口部であり、前記特定構造は、特定開口部であり、前記位置決め用開口部および前記特定開口部の開口に位置決め治具を通すことによって位置合わせを行う。
【0034】
前記交換方法によれば、前記位置決め用開口部と前記特定開口部との位置合わせは、目視のみによって行われるのではなく、両開口部の開口に位置決め治具を通すことによって行われるので、前記放電装置が正常な放電を行うことが可能になる公差範囲の位置に精度良く前記交換用電極を取付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1は、本発明の実施の第1形態であるコロナ放電装置100を備える画像形成装置1の構成を模式的に示す概略図である。また、この画像形成装置1は本発明の他の実施形態でもある。画像形成装置1は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体上にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置1においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記憶媒体、およびメモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部により、印刷モードが選択される。画像形成装置1は、トナー像形成部2と、転写部3と、定着部4と、記録媒体供給部5と、排出部6と、画像読取り部7とを含む。
【0036】
トナー像形成部2を構成する各部材および転写部3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
【0037】
画像読取り部7は、原稿の画像情報を、図示しない光源ユニットからの光照射により原稿からの反射光として取込み、この反射光を図示しないCCD読取りユニットで読取って電気信号の画像情報に変換する。この情報は、予め設定される条件で画像処理が行われ、トナー像形成部3の露光ユニット13へ送信され、画像形成が実施される。
【0038】
トナー像形成部2は、感光体ドラム11と、帯電部12と、露光ユニット13と、現像部14と、クリーニングユニット15と、トナーボトル16とを含む。帯電部12、現像部14およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11まわりに、この順序で配置される。帯電部12は、クリーニングユニット15および現像部14よりも鉛直方向下方の位置に配置される。
【0039】
感光体ドラム11は、図示しない駆動部により、軸線回りに回転駆動可能に支持され、図示しない、導電性基体と、導電性基体の表面に形成される感光層とを含む。導電性基体は種々の形状を採ることができ、たとえば、円筒状、円柱状、薄膜シート状などが挙げられる。これらの中でも円筒状が好ましい。導電性基体は導電性材料によって形成される。導電性材料としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼、クロム、モリブデン、バナジウム、インジウム、チタン、金、白金などの金属、これらの2種以上の合金、合成樹脂フィルム、金属フィルム、紙などのフィルム状基体にアルミニウム、アルミニウム合金、酸化錫、金、酸化インジウムなどの1種または2種以上からなる導電性層を形成してなる導電性フィルム、導電性粒子および導電性ポリマーの少なくとも一方を含有する樹脂組成物などが挙げられる。なお、導電性フィルムに用いられるフィルム状基体としては、合成樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、導電性フィルムにおける導電性層の形成方法としては、蒸着、塗布などが好ましい。
【0040】
感光層は、たとえば、電荷発生物質を含む電荷発生層と、電荷輸送物質を含む電荷輸送層とを積層することにより形成される。その際、導電性基体と電荷発生層または電荷輸送層との間には、下引き層を設けるのが好ましい。下引き層を設けることによって、導電性基体の表面に存在する傷および凹凸を被覆して、感光層表面を平滑化し、繰り返し使用時における感光層の帯電性の劣化を防止し、低温および低湿の少なくとも一方の環境下における感光層の帯電特性を向上させるといった利点が得られる。また最上層に感光体表面保護層を設けた耐久性の大きい三層構造の積層感光体であっても良い。
【0041】
電荷発生層は、光照射により電荷を発生する電荷発生物質を主成分とし、必要に応じて公知の結着樹脂、可塑剤、増感剤などを含有する。電荷発生物質としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ペリレンイミド、ペリレン酸無水物などのペリレン系顔料、キナクリドン、アントラキノンなどの多環キノン系顔料、金属および無金属フタロシアニン、ハロゲン化無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、スクエアリウム色素、アズレニウム色素、チアピリリウム色素、カルバゾール骨格、スチリルスチルベン骨格、トリフェニルアミン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、オキサジアゾール骨格、フルオレノン骨格、ビススチルベン骨格、ジスチリルオキサジアゾール骨格またはジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料などが挙げられる。これらの中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキソチタニルフタロシアニン顔料、フローレン環およびフルオレノン環の少なくとも一方を含有するビスアゾ顔料、芳香族アミンからなるビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料などは高い電荷発生能を有し、高感度の感光層を得るのに適する。電荷発生物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷発生物質の含有量は特に制限はないが、電荷発生層中の結着樹脂100重量部に対して好ましくは5〜500重量部、さらに好ましくは10〜200重量部である。
【0042】
電荷発生層用の結着樹脂もこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは必要に応じて2種以上を併用できる。
【0043】
電荷発生層は、電荷発生物質および結着樹脂ならびに必要に応じて可塑剤、増感剤などのそれぞれ適量を、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷発生層塗液を調製し、この電荷発生層塗液を導電性基体表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜2.5μmである。
【0044】
電荷発生層の上に積層される電荷輸送層は、電荷発生物質から発生する電荷を受け入れて輸送する能力を有する電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂を必須成分とし、必要に応じて公知の酸化防止剤、可塑剤、増感剤、潤滑剤などを含有する。電荷輸送物質としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒ縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、ピラゾリン誘導体、フェニルヒドラゾン類、ヒドラゾン誘導体、トリフェニルアミン系化合物、テトラフェニルジアミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン環を有するアジン化合物などの電子供与性物質、フルオレノン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、インデノチオフェン誘導体、フェナンスレンキノン誘導体、インデノピリジン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンゾ[c]シンノリン誘導体、フェナジンオキサイド誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、プロマニル、クロラニル、ベンゾキノンなどの電子受容性物質などが挙げられる。電荷輸送物質は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。電荷輸送物質の含有量は特に制限されないが、好ましくは電荷輸送物質中の結着樹脂100重量部に対して10〜300重量部、さらに好ましくは30〜150重量部である。
【0045】
電荷輸送層用の結着樹脂としては、この分野で常用されかつ電荷輸送物質を均一に分散できるものを使用でき、たとえば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリケトン、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、これらの共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成膜性、得られる電荷輸送層の耐摩耗性、電気特性などを考慮すると、ビスフェノールZをモノマー成分として含有するポリカーボネート(以後「ビスフェノールZ型ポリカーボネート」と称す)、ビスフェノールZ型ポリカーボネートと他のポリカーボネートとの混合物などが好ましい。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0046】
電荷輸送層には、電荷輸送物質および電荷輸送層用の結着樹脂と共に、酸化防止剤が含まれるのが好ましい。酸化防止剤としてもこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、ビタミンE、ハイドロキノン、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、パラフェニレンジアミン、アリールアルカンおよびそれらの誘導体、有機硫黄化合物、有機燐化合物などが挙げられる。酸化防止剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。酸化防止剤の含有量は特に制限されないが、電荷輸送層を構成する成分の合計量の0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0047】
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂ならびに必要に応じて酸化防止剤、可塑剤および増感剤などをそれぞれ適量、これらの成分を溶解または分散し得る適切な有機溶媒に溶解または分散して電荷輸送層用塗液を調製し、この電荷輸送層用塗液を電荷発生層表面に塗布し、乾燥することにより形成できる。このようにして得られる電荷発生層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは10〜50μm、さらに好ましくは15〜40μmである。なお、1つの層に、電荷発生物質と電荷輸送物質とが存在する感光層を形成することもできる。その場合、電荷発生物質および電荷輸送物質の種類、含有量、結着樹脂の種類、その他の添加剤などは、電荷発生層および電荷輸送層を別々に形成する場合と同様でよい。
【0048】
本実施の形態では、前述のような、電荷発生物質および電荷輸送物質を用いる有機感光層を形成してなる感光体ドラムを用いるが、それに代えて、シリコーンなどを用いる無機感光層を形成してなる感光体ドラムを使用できる。
【0049】
帯電部12は、図2および図3に示す帯電部12である。図2は、本発明の第1実施形態であるコロナ放電装置100を含む帯電部12の構成を模式的に示す斜視図である。図3は、図2に示す帯電部12の断面を模式的に示す概略図である。帯電部12は、トナー像形成部2において、感光体ドラム11を臨み、感光体ドラム11の長手方向に沿って配置される、コロナ放電装置100と、グリッド電極109と、シールドケース110とを含む。なお、帯電部12は、現像部14、およびクリーニングユニット15などとともに、感光体ドラム11の周囲に配置されるが、画像形成装置1においては、主に感光体ドラム11の帯電不良の発生を確実に防止するために、帯電部12が現像部14およびクリーニングユニット15の少なくとも一方よりも鉛直方向下方に位置するように配置されるのが好ましい。本実施の形態では、帯電部12は、クリーニングユニット15および現像部14よりも鉛直方向下方の位置に配置される。
【0050】
コロナ放電装置100は、感光体ドラム11の長手方向に沿って配置される、複数の放電電極101と、導電性密着材103と、異方導電性接着膜(ACF、anisotropic
conductive film)104と、一体抵抗体105と、複数の個別電極106と、コモン電極107と、基板108とを含む。また、各放電電極101は、それぞれ特定構造として特定開口部102を有しており、この特定構造に対応する位置決め用構造として、開口形状が特定開口部102の開口形状と一致する図示しない位置決め用開口部が、各個別電極106および基板108に設けられる。特定開口部102および図示しない位置決め用開口部が設けられる理由は、後に詳述する。
【0051】
基板108は、長手方向に直交する断面がT字状の部材であり、ガラスエポキシ樹脂などの絶縁性の合成樹脂から形成される。基板108上には、プリント配線基板の作製手法によって、個別電極106およびコモン電極107が形成される。各個別電極106およびコモン電極107は、各個別電極106、および個別電極106とコモン電極107とが基板108上で接することがないように、一定距離間隔を空けて形成される。個別電極106およびコモン電極107には、銅、SUS、および金などの導電性および耐腐食性を有するものが用いられる。
【0052】
放電電極101は、放電電極用密着材である導電性密着材103を介して個別電極106と接続されている。導電性密着材103には、後述するACF103bと同じ材料を用いることができる。また、導電性両面接着テープ材を用いることもできるが、その場合には図2のように一体型の密着材ではなく、1つの放電電極101と1つの個別電極106とを導通するものである。放電電極101は、個別電極106と1対1に対応して等間隔に配設され、本実施形態では、放電電極101の数は162個で各歯の間のピッチTPは2mmである。
【0053】
放電電極101は、平板部と、先鋭状突起部とからなる鋸歯状部材である。平板部は導電性密着材103によって、1つの個別電極106と導通しており、先鋭状突起部は、基板108の短手方向で、コモン電極107とは反対方向である外気側へ突出するように配置される。放電電極101は、たとえば、SUSによって形成される。本実施形態では、先鋭状突起部の突出前後方向の長さL1は2mm、平板部の、同方向における長さL2は5mm、先鋭状突起部の先端の角度θは15°である。また、放電電極101の厚さは0.1mmであり、基板108から放電電極101までの総厚は約2〜3mmである。
【0054】
また、放電電極101には、必要に応じてニッケルめっき、PTFE含有ニッケルめっき、および金めっきなどを施してもよい。
【0055】
個別電極106およびコモン電極107上には、ACF104および一体抵抗体105が配置される。ACF104は、個別電極用密着材とコモン電極用密着材とを兼ねており、面方向には絶縁性を有し、面に垂直な厚み方向には導電性を有する密着材である。ACF104としては、一般に液晶パネル等の高精細回路の接続に用いられる、厚み30μm、厚み方向の電気抵抗値0.5Ω、面方向の電気抵抗値1010Ωの薄膜を好ましく用いることができる。ACF104上に一体抵抗体105が配置されることで、個別電極106およびコモン電極107は導通する。
【0056】
一体抵抗体105は、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、およびポリカーボネート等の有機材料からなる基材に、カーボンブラックまたは金属粉からなり廉価な抵抗体を形成する無機材料、あるいは酸化亜鉛、および酸化ルテニウム等の温湿度変化において安定した性能を示す高抵抗体を形成する金属酸化物、あるいは、ハロゲン酸素酸塩、過ハロゲン酸素酸塩、および過塩素酸リチウム等の局部的な電気抵抗値変化の少ない均一な抵抗体を形成するイオン伝導を示すアルカリ金属塩等の添加物が混練された材料からなり、各個別電極106とコモン電極107との間の電気抵抗値が約500MΩとなるように電気抵抗が付与されている。また一体抵抗体105は、必ずしも全ての個別電極106およびコモン電極107と導通する必要はなく、各個別電極106とコモン電極107との間の電気抵抗値が約500MΩとなるならば、複数の抵抗体を用いてもよい。
【0057】
コモン電極107には図示しない第1の電源が接続される。コモン電極107と導通する放電電極101は電源からの電圧の印加を受けて、先鋭状突起部が感光体ドラム11表面に向けてコロナ放電を行い、感光体ドラム11表面を帯電させる。コモン電極107と放電電極101とは、一体抵抗体105を介して導通しているので、各放電電極101に形状および質量などの相違があったとしても、感光体ドラム11を均一に帯電させることができる。本実施形態では、コモン電極107には定電流700μA(3〜7kVの電圧)が印加される。
【0058】
シールドケース110は、たとえばステンレス鋼製であり、その外観形状が直方体で内部空間を有するとともに、前述の感光体ドラム11を臨む一方の面に開口部を有する容器状の部材である。シールドケース110は、その内部空間に、少なくとも針状放電電極101と、基板108とを収容する。またシールドケース110は、コロナ放電装置100と同一方向に長く延び、長手方向に直交する方向の断面形状が略U字状を有する。シールドケース110の底面に基板108が装着される。
【0059】
グリッド電極109は、コロナ放電装置100と感光体ドラム11との間に設けられ、図示しない第2の電源から電圧の印加を受けて、感光体ドラム11表面の帯電状態のばらつきを調整し、帯電電位をより一層均一化する薄板状部材である。グリッド電極109は、厚み方向に貫通するように形成される複数の図示しない貫通孔を有する多孔性薄板状部材である。
【0060】
グリッド電極109は、その長手方向が感光体ドラム11の長手方向に平行になるように設けられる。図4は、グリッド電極109の構成を模式的に示す平面図である。グリッド電極109は、開口部109yと、嵌合孔109zとを含む。開口部109yは、所定のピッチで平行になるように形成される複数の貫通孔を含む。嵌合孔109zは、グリッド電極109の長手方向両端部に形成される。グリッド電極109は、2つの嵌合孔109zをシールドケース110の内部空間に設けられる図示しない支持部材に嵌合することより、シールドケース110によって着脱自在に支持される。
【0061】
グリッド電極109は公知の方法に従って製造できる。たとえば、化学研磨工程、水洗工程、酸浸漬工程、水洗工程および純水浸漬工程を含む製造方法にて、グリッド電極用板金を加工することによってグリッド電極109が製造される。グリッド電極用板金は、たとえば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、銅、および鉄などの金属材料からなるものである。また、化学研磨工程においては、グリッド電極用板金に該板金の厚み方向に多数の貫通孔が形成されるように、マスキングおよびエッチングを行う。グリッド電極109には、放電電極101と同様に、必要に応じて、ニッケルめっき、PTFE含有ニッケルめっき、および金めっきなどを施してもよい。
【0062】
グリッド電極109には図示しない第2の電源が接続される。本実施形態では、第2の電源は、グリッド電極109に対して620Vの電圧を印加する。帯電部12によれば、放電電極101に電圧が印加されることによりコロナ放電が起こり、感光体ドラム11の表面が帯電されるとともに、グリッド電極109に所定のグリッド電圧が印加されることにより、感光体ドラム11の表面の帯電状態が均一化されるので、感光体ドラム11の表面を所定の電位および極性に帯電させることができる。
【0063】
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電部12と現像部14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でb、c、m、yの各色情報の光に分岐し、帯電部12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLED(Light emitting diode)アレイ、液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
【0064】
現像部14は感光体ドラム11表面を臨むように配置され、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する部材である。また、現像部14は、図示しないトナー補給路を介して、トナーボトル16からトナーを補給する。
【0065】
クリーニングユニット15は、記録媒体にトナー像を転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。なお、本発明の画像形成装置においては、感光体ドラム11として、主に有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるため、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用によって表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット15よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット15を設けるが、それに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
【0066】
トナー像形成部2によれば、帯電部12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像部14からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト17に転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が繰り返し実行される。
【0067】
転写部3は、感光体ドラム11の上方に配置され、中間転写ベルト17と、駆動ローラ18と、従動ローラ19と、転写ベルトクリーニングユニット20と、転写ローラ21と図示しない中間転写ローラとを含む。中間転写ベルト17は、駆動ローラ18と従動ローラ19とによって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。中間転写ベルト17が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト17を介して感光体ドラム11に対向配置される図示しない中間転写ローラから、感光体ドラム11表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト17上へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム11で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト17上に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。
【0068】
駆動ローラ18は図示しない駆動部によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト17を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ19は駆動ローラ18の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト17が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト17に付与する。図示しない中間転写ローラは、中間転写ベルト17を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動部によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。図示しない中間転写ローラは、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト17に転写する機能を有する。
【0069】
転写ベルトクリーニングユニット20は、中間転写ベルト17を介して従動ローラ19に対向し、中間転写ベルト17の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト17に付着するトナーが転写ローラ21に付着すると、記録媒体の裏面を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット20が中間転写ベルト17表面のトナーを除去し回収する。転写ローラ21は、中間転写ベルト17を介して駆動ローラ18に圧接し、図示しない駆動部によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ21と駆動ローラ18との圧接部(転写ニップ部)において、中間転写ベルト17に担持されて搬送されて来るトナー像が、後述する記録媒体供給部5から送給される記録媒体に転写される。また、予め中間転写ベルト17上のトナー像を、本発明のコロナ放電装置100を用いて帯電させ、転写ローラ21に転写バイアスを印加することで容易に転写を行うことができる。トナー像を担持する記録媒体は、定着部4に送給される。
【0070】
転写部3によれば、感光体ドラム11と図示しない中間転写ローラとの圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト17に転写されるトナー像が、中間転写ベルト17の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
【0071】
定着部4は、転写部3よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ22と加圧ローラ23とを含む。定着ローラ22は図示しない駆動部によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱して溶融させ、記録媒体に定着させる。定着ローラ22の内部には図示しない加熱部が設けられる。加熱部は、定着ローラ22表面が所定の温度(加熱温度)になるように定着ローラ22を加熱する。加熱部には、たとえば、ヒータ、およびハロゲンランプなどを使用できる。加熱部は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着条件制御手段による加熱温度の制御については、後に詳述する。
【0072】
定着ローラ22表面近傍には温度検知センサが設けられ、定着ローラ22の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御部の記憶部に書き込まれる。加圧ローラ23は定着ローラ22に圧接するように設けられ、加圧ローラ23の回転駆動に従動回転可能に支持される。加圧ローラ23は、定着ローラ22によってトナーが溶融して記録媒体に定着する際に、トナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ22と加圧ローラ23との圧接部が定着ニップ部である。
【0073】
定着部4によれば、転写部3においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ22と加圧ローラ23とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録媒体に押圧されることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
【0074】
記録媒体供給部5は、自動給紙トレイ24と、図示しない手差給紙トレイを含む。自動給紙トレイ24は画像形成装置の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、および葉書などがある。自動給紙トレイ35に貯留される記録媒体は、1枚ずつ取り出され、図示しない用紙搬送路に送給される。
【0075】
図示しない手差給紙トレイは、手動動作によって記録媒体を画像形成装置内に取り込む装置である。記録媒体供給部5によれば、自動給紙トレイ24または図示しない手差給紙トレイから1枚ずつ供給される記録媒体は、中間転写ベルト17に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給される。
【0076】
排出部6は、図示しない排出トレイを含み、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着部4によって画像が定着された記録媒体を図示しない排出トレイに向けて搬送し、図示しない排出トレイに排出する。図示しない排出トレイは、画像が定着された記録媒体を貯留する。
【0077】
画像形成装置1は、図示しない制御部を含む。制御部は、たとえば、画像形成装置1の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御部の記憶部には、画像形成装置1の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置1内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、およびハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオレコーダ、DVD(Digital Versatile Disc)レコーダ、HDDVD(High Definition Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、および携帯端末装置などが挙げられる。演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段実行のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(CPU、
Central Processing Unit)を備えるマイクロコンピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御部は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御部だけでなく、画像形成装置内部における各装置にも電力を供給する。
【0078】
次に、不具合が生じた放電電極(不良電極)のみを交換するコロナ放電装置の放電電極交換方法を以下に説明する。図5A、図5B、および図5Cの(a1)〜(g1)、ならびに(a2)〜(g2)は放電電極交換方法における各工程を説明するための図であって、放電電極交換工程は(a1)〜(g1)、および(a2)〜(g2)の順に進む。図5A、図5B、および図5Cの(a1)〜(g1)の各図は、不良の生じたコロナ放電装置100の平面図を示し、図5A、図5B、および図5Cの(a2)〜(g2)の各図は、コロナ放電装置100のラインL3での断面図を示している。平面図と断面図との関係は、アルファベットが同じで数字が異なる図同士が1対1に対応するものである。たとえば、図5A(a1)のコロナ放電装置100の平面図は、図5A(a2)のコロナ放電装置100のラインL3での断面図と対応している。
【0079】
図5A(a1)および図5A(a2)に示すように、コロナ放電装置100中に歯先に欠けが生じた不良電極111が存在すると、印加電圧に異常が生じてオゾンが発生しやすくなったり、感光体ドラム11の帯電状態にムラが生じて形成される画像が劣化したりする。よって、この不良電極111を正常な交換用電極112と交換する必要がある。不良電極111は、隣の放電電極101を傷つけないように、ピンセットなどで引き剥がす。放電電極101と個別電極106とは、導電性密着材103で接着されているが、導電性密着材103がACFおよび導電性両面接着テープ材などであれば、ピンセットなどで簡単に引き剥がせる。
【0080】
図5A(b1)および図5A(b2)は、不良電極111を引き剥がした後のコロナ放電装置100を示している。図に示すように不良電極111の引き剥がし後には、導電性密着材103が残るので、この導電性密着材103をブラシおよびナイフなどで擦り取る。擦り取る際には、下部の個別電極106に傷が付かないように、ブラシおよびナイフの材料を選定する。
【0081】
図5A(c1)および図5A(c2)は、導電性密着材103を擦り取った後のコロナ放電装置100を示している。交換用電極112を取り付けるためには、図5B(d1)および図5B(d2)に示すように、新たな導電性密着材103を個別電極106上に貼付ける必要がある。導電性密着材103が導電性両面接着テープ材のように、不良電極111を引き剥がした後も再使用可能であれば、前工程で擦り取らずに再使用できる。
【0082】
次に図5B(e1)および図5B(e2)に示すように、位置決め治具113をセットする。位置決め治具113は、基板108の位置決め用開口部の開口および個別電極106の位置決め用開口部の開口を通って導電性密着材103を貫通し、導電性密着材103からさらに突出するようにセットされる。位置決め治具113は、隣接する複数の位置決め用開口部の開口を同時に通るようなものであっても、不良電極111が存在した部分の位置決め用開口部の開口のみを通るものであってもよいが、どちらの治具でも利用できるように、予め全ての放電電極に特定開口部102が存在することが好ましい。また位置決め用治具113は、導電性密着材103を貫通できる程度の硬さを有するものであれば、樹脂であっても金属であっても使用可能であるが、使用によって変形し難いものがよい。
【0083】
位置決め用治具113がセットされたら、図5C(f1)および図5C(f2)に示すように、交換用電極112の特定開口部102の開口を、位置決め用治具113が通るようにして、交換用電極112を導電性密着材103上に設置する。このとき交換用電極112に圧力を加えて設置する。導電性密着材103が導電性両面接着テープ材であれば、圧力によって固定は完了である。よって、図5C(g1)および図5C(g2)のように、位置決め治具113を外して交換工程が終了する。導電性密着材103が、ACFである場合には、圧力によって仮固定がされた状態であるので、図5(g1)および図5C(g2)のように、位置決め治具113を外した後に、加圧および加熱することで本固定を行う。
【0084】
この交換方法によれば、位置決め治具113を用いることによって、任意の不良電極111を、位置精度良く交換用電極112に交換することができるので、不良でない放電電極101、密着材103、104、一体抵抗体105、個別電極106、コモン電極107、および基板108を廃棄する必要がなく、コロナ放電装置の修理の際の時間的および経済的負担を軽減できる。
【0085】
基板108および個別電極106の位置決め用開口部の開口形状および特定開口部102の開口形状は、真円形状以外の形状であれば、交換用電極112の特定開口部102が1つであっても、それぞれの開口に位置決め治具113を通すことによって基板108の面上での放電電極112の平行移動および回転移動が抑えられる。本実施形態では、交換用電極112には開口形状が一辺1mmの正方形状である特定開口部102が設けられており、基板108および個別電極106にも対応するように、開口形状が一辺1mmの正方形状である位置決め用開口部が設けられている。
【0086】
また、図6に示す他の交換用電極114aおよび114bを用いて交換を行うこともできる。図6(a)には、開口形状が真円形状である特定開口部115aを2つ有する交換用電極114aが示されている。交換用電極114aの特定開口部115aの開口形状は真円形状であるが開口部が2つ存在することで、それぞれの開口に位置決め治具113を通すことによって基板108の面上での放電電極112の平行移動および回転移動が抑えられる。この開口形状が真円形状である特定開口部115aは、角のある特定開口部に比べて精度良く設けることができる。交換用電極114aの、2つの特定開口部115aの開口形状は両方とも真円形状であるが、いずれか一方の特定開口部の開口形状を真円形状とし、他方の開口形状を突出前後方向に延びる長穴形状とした交換用電極を用いて交換を行うこともできる。たとえば、図6(c)に示す交換用電極114cは、開口形状が真円形状である特定開口部115cを突出前後方向後方に有し、開口形状が長穴形状である特定開口部115cを突出前後方向前方に有している。
【0087】
図6(b)には、切欠き部115bが、交換用電極114bの先端部を通り突出方向に平行な直線を挟む2カ所に1つずつ設けられた交換用電極114bが示されている。すなわち、図6(b)では、交換用電極114bの左右に1つずつ切欠き部115bが設けられている。交換用電極114bの切欠き部115bは開口部ではないが、交換用電極114bの左右に2つ存在することで、それぞれの切欠きに位置決め治具113を通すことによって基板108の面上での放電電極112の平行移動および回転移動が抑えられる。この切欠き部115bを有する交換用電極114bであれば、容易に位置決め治具113を通すことができる。
【0088】
なお、設置される交換用電極112、114a、114bの、先鋭状突起部の突出前後方向の長さL1、平板部の同方向における長さL2、および隣接する放電電極101との間のピッチTPが他の放電電極101と完全に揃うようにするためには、基板108の位置決め用開口部の開口形状と、個別電極106の位置決め用開口部の開口形状と、特定開口部102、115aの開口形状とが、または切欠き部115bの切欠き形状とが完全に同一の形状であり、位置決め治具113がそれらの開口部および切欠き部を隙間なく通ることが必要であるが、放電電極112の、突出前後方向における100μmのずれ、およびピッチ方向における100μmのずれは公差範囲である。
【0089】
また、図7に断面図によって示す本発明の他の実施形態であるコロナ放電装置200のように、基板116に位置決め用開口部を設ける代わりに、その場所に位置決め用突起116aを設けることで位置決め治具113を用いずに交換を行うことも可能である。
【0090】
このような本発明のコロナ放電装置100を備える像形成装置1を用いることにより、長期的に安定して画像を形成することができる。また、放電電極101の一部に不具合が生じた場合でも、不具合が生じた一部の放電電極101だけを精度良く交換することができるので、画像形成装置1を正常な状態に保つことができる。
【0091】
以下では、コロナ放電装置100および本発明の他の実施形態であるコロナ放電装置300の製造方法を説明する。図8(a)〜(e)はコロナ放電装置100の製造方法における各工程を説明するための斜視図であって、各工程は(a)〜(e)の順に進む。
【0092】
最初に、絶縁性を有する基板108として、ガラスエポキシ樹脂からなる基板を用意し、この基板108上に、プリント配線基板の作製手法を用いてコモン電極107および複数の個別電極106を形成する。この基板108および個別電極106には、位置決め用開口部を設ける。さらに、図8(a)に示すように、基板108上のコモン電極107および複数の個別電極106上にACF104を設置し、その上から一体抵抗体105を設置して加熱圧着する。これによって、一体抵抗体105は、個別電極106に導通するとともに、コモン電極107にも導通する。
【0093】
次に、図8(b)に示すように、櫛状構造の導電性密着材103を設置する。図8(b)のように、櫛状構造の導電性密着材103の1つの凸部が1つの個別電極106に設置され、凹部が個別電極106間の基板108に設置されるように設置する。このような形状の密着材103を用いることで、前述の放電電極交換方法における導電性密着材103の張替え工程を容易に行うことができる。また、この櫛状構造の導電性密着材103にはACFを用いることが好ましい。
【0094】
さらに、図8(c)に示すように、櫛状構造の導電性密着材103の上から櫛状構造の放電電極117を設置して加熱圧着する。設置の際には、基板108および個別電極106に設けられた位置決め用開口部と、櫛状構造の放電電極117の特定開口部102とを位置合わせする。
【0095】
次に、図8(d)に示すように、櫛状構造の放電電極117をラインL4で切断し、図8(e)に示すコロナ放電装置100のように、複数の放電電極101とする。このように、櫛状構造の放電電極117を設置してから切断によって複数の放電電極101とするのは、放電電極の設置の際に、歯先にずれが生じないようにするためである。以上の工程を経て図8(e)に示すコロナ放電装置100が製造される。
【0096】
次に、本発明の他の実施形態であるコロナ放電装置300の製造方法を説明する。コロナ放電装置300は、コロナ放電装置100において、ACF104の代わりに、導電性両面接着テープ材119を用いて、複数の個別電極101とコモン電極107とを導通させたものである。
【0097】
この方法では、図9に示すように、シート状の一体抵抗体118上に、導電性両面接着テープ材119を、複数の個別電極106とコモン電極107との間隔に等しい所定の間隔を空けて貼付けておき、このシート状の一体抵抗体118をプレス加工によって、図9中の二点鎖線120で示す箇所を打抜くことで得られる、導電性両面接着テープ材119が貼付けられた一体抵抗体118を用いる。
【0098】
上記の導電性両面接着テープ材119が貼付けられた一体抵抗体118を用いたコロナ放電装置300の製造方法を図10に示す。図10(a)〜(e)はコロナ放電装置300の製造方法における各工程を説明するための斜視図であって、各工程は(a)〜(e)の順に進む。
【0099】
最初に、絶縁性を有する基板108として、ガラスエポキシ樹脂からなる基板を用意し、この基板108上に、プリント配線基板の作製手法を用いてコモン電極107および複数の個別電極106を形成する。この基板108および個別電極106には、位置決め用開口部を設ける。さらに、図10(a)に示すように、基板108上のコモン電極107および複数の個別電極それぞれに導電性両面接着テープ材119が設置されるように、導電性両面接着テープ材119が貼付けられた一体抵抗体118を貼付ける。すなわち、一方の導電性両面接着テープ材119は個別電極用密着材となり、もう一方の導電性両面接着テープ材119はコモン電極用密着材となる。これによって、一体抵抗体105は、個別電極106に導通するとともに、コモン電極107にも導通する。
【0100】
次に、図10(b)に示すように、櫛状構造の導電性密着材103を設置する。図10(b)のように、櫛状構造の導電性密着材103の1つの凸部が1つの個別電極106に設置され、凹部が個別電極106間の基板108に設置されるように設置する。このような形状の密着材103を用いることで、前述の放電電極交換方法における導電性密着材103の張替え工程を容易に行うことができる。また、この櫛状構造の導電性密着材103にはACFを用いることが好ましい。
【0101】
さらに、図10(c)に示すように、櫛状構造の導電性密着材103の上から櫛状構造の放電電極117を設置して加熱圧着する。設置の際には、基板108および個別電極106に設けられた位置決め用開口部と、櫛状構造の放電電極117の特定開口部102とを位置合わせする。
【0102】
次に、図10(d)に示すように、櫛状構造の放電電極117をラインL5で切断し、図10(e)に示すコロナ放電装置300のように、複数の放電電極101とする。このように、櫛状構造の放電電極117を設置してから切断によって複数の放電電極101とするのは、放電電極の設置の際に、歯先にずれが生じないようにするためである。以上の工程を経て図8(e)に示すコロナ放電装置300が製造される。
【0103】
上述したような2つのコロナ放電装置100および300の製造方法を用いれば、基板108上に接着剤塗布用マスクを設置し、このマスクを用いて複数の個別電極106およびコモン電極107に導電性接着剤を塗布して一体抵抗体を接着するという製造方法を用いる必要がないので、製造工程が簡略化できる。また、上記製造方法を用いれば、一体抵抗体がACF104または導電性両面接着テープ材119を介して基板108上に確実に固定されるので、よりコロナ放電装置の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明のコロナ放電装置100を備える画像形成装置1の構成を模式的に示す概略図である。
【図2】本発明のコロナ放電装置100を含む帯電部12の構成を模式的に示す斜視図である。
【図3】図2に示す帯電部12の断面を模式的に示す概略図である。
【図4】グリッド電極109の構成を模式的に示す平面図である。
【図5A】放電電極交換方法における各工程を説明するための図である。
【図5B】放電電極交換方法における各工程を説明するための図である。
【図5C】放電電極交換方法における各工程を説明するための図である。
【図6】他の交換用電極114a、114b、および114cを示す図である。
【図7】本発明のコロナ放電装置200を示す断面図である。
【図8】コロナ放電装置100の製造方法における各工程を説明するための斜視図である。
【図9】導電性両面接着テープ材119が貼付けられた一体抵抗体118を示す図である。
【図10】コロナ放電装置300の製造方法における各工程を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0105】
1 画像形成装置
11 感光体ドラム
12 帯電部
100、200、300 コロナ放電装置
101 放電電極
102 特定開口部
103 導電性密着材
104 異方導電性接着膜
105 一体抵抗体
106 個別電極
107 コモン電極
108 基板
109 グリッド電極
110 シールドケース
111 不良電極
112 交換用電極
113 位置決め治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有し、位置決め用構造を有する基板と、
前記基板上に形成され、かつ電圧源に接続されるコモン電極と、
前記基板上に、前記コモン電極から一定間隔を空けて形成される複数の個別電極と、
前記基板上方に設けられ、先端部が前記基板から外気側に突出した複数の放電電極と、
前記放電電極と前記個別電極との間に設けられ、前記放電電極と前記個別電極とを電気的に接続する放電電極用密着材と、
前記基板上方に設けられ、前記複数の個別電極と前記コモン電極とを電気的に接続するための抵抗体と、
前記個別電極と前記抵抗体との間に設けられ、前記個別電極と前記抵抗体とを電気的に接続する個別電極用密着材と、
前記コモン電極と前記抵抗体との間に設けられ、前記コモン電極と前記抵抗体とを電気的に接続するコモン電極用密着材と、を備えるコロナ放電装置であって、
前記位置決め用構造は、前記放電電極を交換するための交換用電極の有する特定構造に対応する構造であって、該交換電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けるための構造であり、
前記複数の放電電極のうち、任意の放電電極のみを前記交換用電極に交換可能であることを特徴とするコロナ放電装置。
【請求項2】
前記位置決め用構造は、開口形状が真円形状以外の形状である位置決め用開口部であり、
前記特定構造は、開口形状が真円形状以外の形状である特定開口部であり、
前記位置決め用開口部と前記特定開口部とが1対1に対応し、対応する開口部同士の開口形状は全て一致し、
前記位置決め用開口部と前記特定開口部との位置合わせが可能であり、該位置合わせによって、前記交換電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けることが可能であることを特徴とする請求項1に記載のコロナ放電装置。
【請求項3】
前記位置決め用構造は、1つ以上の、開口形状が真円形状である位置決め用開口部と、1つ以上の位置決め用開口部とであり、
前記特定構造は、1つ以上の、開口形状が真円形状である特定開口部と、1つ以上の特定開口部とであり、
前記位置決め用開口部と前記特定開口部とが1対1に対応し、対応する開口部同士の開口形状は全て一致し、
前記位置決め用開口部と前記特定開口部との位置合わせが可能であり、該位置合わせによって、前記交換電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けることが可能であることを特徴とする請求項1に記載のコロナ放電装置。
【請求項4】
前記位置決め用構造は、2つ以上の位置決め用開口部であり、
前記特定構造は、前記交換用電極の先端部を通り突出方向に平行な直線を挟む2カ所に、それぞれ少なくとも1つ以上設けられる切欠き部であり、
前記位置決め用開口部と前記切欠き部とが1対1に対応し、対応する切欠き部の切欠き形状の輪郭形状は、対応する位置決め用開口部の開口形状の輪郭形状に含まれ、
前記位置決め用開口部と前記切欠き部との位置合わせが可能であり、該位置合わせによって、前記交換電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けることが可能であることを特徴とする請求項1に記載のコロナ放電装置。
【請求項5】
前記放電電極と前記個別電極との間に設けられ、前記放電電極と前記個別電極とを電気的に接続する放電電極用密着材は櫛状構造密着材であって、
前記櫛状構造密着材の凸部は、前記放電電極と前記個別電極との間に位置し、
前記櫛状構造密着材の凹部は、隣接する前記凸部同士の間に位置することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のコロナ放電装置。
【請求項6】
前記櫛状構造密着材は、異方導電性接着膜であることを特徴とする請求項5に記載のコロナ放電装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の放電装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
特定構造を有する交換用電極であって、
該交換用電極は、絶縁性を有し位置決め用構造を有する基板と、前記基板上に形成されかつ電圧源に接続されるコモン電極と、前記基板上に前記コモン電極から一定間隔を空けて形成される複数の個別電極と、前記基板上方に設けられ先端部が前記基板から外気側に突出した複数の放電電極と、前記放電電極と前記個別電極との間に設けられ前記放電電極と前記個別電極とを電気的に接続する放電電極用密着材と、前記基板上方に設けられ前記複数の個別電極と前記コモン電極とを電気的に接続するための抵抗体と、前記個別電極と前記抵抗体との間に設けられ前記個別電極と前記抵抗体とを電気的に接続する個別電極用密着材と、前記コモン電極と前記抵抗体との間に設けられ前記コモン電極と前記抵抗体とを電気的に接続するコモン電極用密着材と、を備えるコロナ放電装置の前記放電電極と交換するための電極であり、
前記特定構造は、前記位置決め用構造に対応する構造であって、該交換電極が正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けられるための構造であり、
前記複数の放電電極のうち、任意の放電電極のみと交換可能であることを特徴とする交換用電極。
【請求項9】
コロナ放電装置の任意の放電電極を交換用電極と交換する方法であって、
コロナ放電装置の基板上の、放電電極が剥離した部分における位置決め用構造、および交換用電極の特定構造を利用して、該交換用電極を正常な放電が可能になる公差範囲の位置に取付けることを特徴とするコロナ放電装置の放電電極交換方法。
【請求項10】
前記位置決め用構造は、位置決め用開口部であり、
前記特定構造は、特定開口部であり、
前記位置決め用開口部および前記特定開口部の開口に位置決め治具を通すことによって位置合わせを行うことを特徴とする請求項9に記載のコロナ放電装置の放電電極交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−107783(P2010−107783A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280575(P2008−280575)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】