説明

コンクリート、モルタル、木材等の水分測定装置

【課題】本発明は、測定対象物に対する電極の押し当て角度に関する許容度が有り、且つ、測定深度を変更しての測定も可能な水分測定装置を提供する。
【解決手段】本発明の水分測定装置は、測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極3と、この+電極3を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極3と対向配置した−電極4とを有する深部測定用の検出部42Aと、+電極3、−電極4間の間隔を深部測定用の検出部42Aよりも小とした浅部測定用の検出部42Bとを把持体41の両端に備え、深部測定回路、浅部測定回路により深部、浅部に対応する容量を求め、測定対象物の深部、浅部の水分値を演算回路で求め、表示部により表示するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分測定装置に関し、詳しくは、コンクリート、モルタル、木材等の測定対象物の含有水分を測定する水分測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば測定対象物の一種であるコンクリート、モルタル、木材等の建築材料は、その含有水分の多少により品質が左右される。木材は水分が多い場合は強度が弱くなったり、施工後の水分減少により寸法変化を生じ建築物に歪を起こす。また、木材は必要以上に乾燥させようとするとコスト高になってしまう。
【0003】
一方、コンクリートは、打設後水分の高い状態では仕上げを適切に行うことができない。このためコンクリートの施工現場や研究施設等でその含有水分を測定する水分計が必要となる。
【0004】
測定対象物の表面から押し当てるタイプの水分計は、測定対象物の内部に埋め込んだり、測定対象物を両側から挟み込むタイプに比べると、測定面さえ露出していれば測定可能であるため、施工現場や加工現場等ではより実用的である。しかし、表面近くの影響を強く受けるため、雨に当たって表面だけ濡れている場合や、乾燥途中で表面近くだけ水分が低く内部が高いときは、平均的な水分を検出することはできない。
【0005】
また、このようなケースでは全体の水分だけではなく、部分毎に水分を知らなければならないこともある。従って、測定対象物の深さ方向の水分分布をおおよそ判断することも必要となる。
【0006】
測定対象物の水分の測定には、従来から高周波式水分計が使われてきた。これは水分の増減にしたがって変化する電気容量を、これに流れる高周波電流の多少を測定することによって測定し水分を算出するものである。
【0007】
図18、図19に示すように、従来からある水分計100は、絶縁体101により間隔aをもって平行配置に支持した2本の長さbの棒状の電極102、103を、測定対象物の測定面110に押し当て、両電極102、103間の電気容量を測定して測定対象物の含有水分を算出するように構成したものである。
【0008】
ところが、このような従来の電極構造では、測定面110が平坦でない場合には電極102、103の一部が測定面110から浮いて(非接触となって)しまう。この結果、電極102、103から測定面110への高周波電流の流れを阻害し、測定誤差を生じることになる。
【0009】
従来の電極構造において、電極102、103間の間隔aを小さくすれば、浮きにくくなるが、間隔aが小さいことから水分変化に対する容量変化が小さくなるため測定回路の不安定性の影響を受け、安定した測定ができない。
【0010】
次に、測定対象物である例えば木材について考察すると、図20に示すように、電極102、103を測定対象物である木材の木目に対して平行に押し当てて測定した場合と、図21に示すように、木材の木目に対して直角に押し当てて測定した場合とでは、同じ領域を測定したときでも、これらの電気容量は異なる。従って、図18に示すような水分計100の電極構造では押し当て角度によって、測定結果が異なってしまうという不都合が生じる。
【0011】
更に、図18に示すような水分計100の場合、絶縁体101の一面に電極102、103を平行配置に取り付けた構造であるため、測定範囲が画一的であり、測定対象物の深さ方向に関して測定深度を変更して測定するということは不可能である。
【0012】
特許文献1には、伸縮ロッドの先端に測定対象物である家屋壁面等に押し当てる電極を有するセンサ部を配置し、ジャイロ機構、プッシュプルワイヤを用いて電極を一定角度となるように遠隔操作可能とした工作物調査用水分測定装置が提案されている。
【0013】
しかし、この特許文献1の水分測定装置の場合、測定対象物に押し当てる電極の配置を遠隔操作可能であるものの、測定対象物の深さ方向に関して測定深度を変更して測定するという要請には対応していない。
【特許文献1】特開平08−271459号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
解決しようとする問題点は、測定対象物に対する電極の押し当て角度に関する許容度が有り、且つ、測定深度を変更しての測定も可能な斬新な構成の水分計が存在しない点である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の水分測定装置は、測定対象物への押し当て面を曲面とした一方の電極と、この一方の電極を一方の端面中心部に配置した絶縁体の他方の端面に前記一方の電極と対向配置した他方の電極とを有する検出部を備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
請求項1、2記載の発明によれば、測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した−電極とを有する検出部を備え、この検出部の検出信号から前記+電極、−電極間の容量を求め、更に測定対象物の水分値を求めて表示するように構成したものであるから、測定対象物に対する+電極の押し当て角度に関する許容度を有しつつ測定対象物の水分値を精度よく測定できる。
【0017】
請求項3、4記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様な構成からなり、且つ、電極間隔を異にする深部測定用及び浅部測定用の両検出部を把持体の両端に備えた構成で、この両検出部の検出信号から測定対象物の深部、浅部の各水分値を測定対象物に対する+電極の押し当て角度に関する許容度を有しつつ各々精度よく測定できる。
【0018】
請求項5、6記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様な構成からなり、且つ、電極間隔を異にする深部測定用及び浅部測定用の両検出部を把持体に二股分岐で備えた構成で、この両検出部の検出信号から測定対象物の深部、浅部の各水分値を測定対象物に対する+電極の押し当て角度に関する許容度を有しつつ各々精度よく測定できる。
【0019】
請求項7、8記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様な構成からなり、且つ、一個の+電極と、+電極との間隔を大小異にする二個の−電極とを備えた検出部を備えた構成で、測定対象物の深部、浅部の各水分値を測定対象物に対する+電極の押し当て角度に関する許容度を有しつつ各々精度よく測定できる。
【0020】
請求項9、10記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様の浅部測定用の検出部を備えた把持体に対して深部測定用の検出部を装脱可能に配置した構成で、測定対象物の深部、浅部の各水分値を測定対象物に対する+電極の押し当て角度に関する許容度を有しつつ各々精度よく測定できる。
【0021】
請求項11、12記載の発明によれば、+電極に対して押し当て方向の間隔調整可能に配置した−電極を有する検出部を備える構成で、測定対象物の深部、浅部の各水分値を測定対象物に対する+電極の押し当て角度に関する許容度を有しつつ各々精度よく測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、測定対象物に対する電極の押し当て角度に関する許容度が有り、且つ、測定深度を変更しての測定も可能な水分測定装置を提供するという目的を、測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、該+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した−電極とを有する深部測定用の検出部と、測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した−電極とを有し、前記+電極、−電極間の間隔を深部測定用の検出部よりも小とした浅部測定用の検出部とを把持体の両端に備えるとともに、前記深部測定用の検出部の検出信号から前記+電極、−電極間の容量を求める深部測定回路と、浅部測定用の検出部の検出信号から前記+電極、−電極間の容量を求める浅部測定回路と、前記深部測定回路、浅部測定回路の各測定信号を切り替え方式で演算し、前記測定対象物の深部、浅部の水分値を求める演算回路と、演算回路の演算結果を表示する表示部とを有する構成により実現した。
【実施例】
【0023】
以下に、本発明の実施例を詳細に説明する。
(実施例1)
図1乃至図7を参照して本発明の実施例1の水分測定装置について説明する。
【0024】
まず、図1乃至図3を参照して本発明の原理的説明を行う。
図1、図2に示すように、水分測定装置1の検出部2を、円筒状の絶縁体(寸法d)5の一端に端面を曲面状とした+電極3を、他端に−電極4を配置した構造とするとき、+電極3、−電極4間の電界は、測定対象物10を介して分布するため、その誘電率は+電極3、−電極4間の電気容量に大きく影響を与える。そして、コンクリート、モルタル、木材等の測定対象物10の誘電率は水分に依存するため、+電極3、−電極4間の電気容量を測定することによって測定対象物10の水分検出が可能となる。
【0025】
前記検出部2において、+電極3の絶縁体5の一端からの突出寸法cに比べて、測定対象物10の表面の凹凸が小さければ、+電極3は測定対象物10から浮くことが無く測定面への接触が確実に保たれ、これにより安定した水分測定が可能となる。
【0026】
また、検出部2の鉛直方向の偏差eについて考察すると、検出部2が鉛直方向から傾いたとき、+電極3の水平面からの傾き角e’(図5参照)が、比較的小さな角度(1度、2度等)であれば、傾き角e’の水分の測定値への影響は図3に示すとおり0度乃至2度の範囲でほぼ無視できる程度である。従って前記偏差eは測定面に対して略垂直(略90度)として測定者が大雑把に判断してもこの程度の角度範囲に収まるものである。更に、絶縁体5の周縁部5aが測定対象物10に当たると、測定者の感覚でそのことが判定でき、傾きすぎたことが分かる。
なお、本実施例では、+電極3の水平面からの傾き角e’(図5参照)の一例を、比較的小さな角度(1度、2度等)を図示して説明しているが、本発明においては、当該+電極3の水平面からの傾き角e’を図示するものに限定するものではなく、当該傾き角e’を実施例以外の自在な傾き角e’に設定できる。
【0027】
これらのことから、測定対象物10の水分測定の際に、+電極3の押し当て角度が測定値の許容誤差を超えるほど大きく傾くことは、通常の測定者の注意力があれば避けられる。但し、許容される測定誤差によって許容できる押し当て角度が変わる。許容誤差が大きければこれにしたがって押し当て角度を大きくしてもよいことに留意する必要が有る。
【0028】
次に、図4、図5を参照して、本実施例1の検出部2の具体的構成例及び傾き角e’について説明する。
図4に示す水分測定装置1の検出部2は、円柱状で段付きの絶縁体5の一端に、中心部の厚さ2mm程度、端面を直径R=25mmの曲面状とした小径円板状の+電極3を配置し、絶縁体5の他端に円板状の−電極4を配置した構造としている。
【0029】
前記+電極3と−電極4とは、絶縁体5の中心部に貫通状態で設けた貫通孔6内に配置した連結部材11により絶縁状態で、且つ、一体的に連結している。すなわち、前記連結部材11は、+電極3に固着した下部連結受部12と、−電極4の中心部を嵌装するためのネジ部15を突設した上部連結受部13とを、貫通孔6内に配置した連結棒14により連結し、更にネジ部15に−電極4の中心部を嵌装し、平形ワッシャ16、スプリングワッシャ17をネジ部15の回りに嵌装し、ナット18により締め付けることで、前記+電極3と−電極4とを絶縁体5を挟んで対向するように固定配置している。
【0030】
なお、本実施例に示す+電極は、当該+電極3の部分の部材、連結部材11、下部連結受部12、上部連結受部13、連結棒14、ネジ部15が一体的となって構成されている。図4において、5bは絶縁体5に設けた−電極4受用の突部である。
【0031】
図4に示す水分測定装置1の検出部2において、+電極3の絶縁体5の一端からの突出寸法cを例えば1mm、+電極3の側面における曲面が始まる部分から測定対象物10の表面までの寸法を0.505mmに設定し、これにより図5に示すように、この検出部2をその周縁部5aが測定対象物10に接するように傾けた場合、傾き角e’=2.438°、検出部2と測定対象物10の表面との最大離隔寸法は2.085mmとなるように設定している。
【0032】
次に、図6、図7を参照して、本実施例1の水分測定装置1の具体的構成例について説明する。
本実施例1に係る水分測定装置1は、絶縁材料により形成した把持用の小径筒部21と、図4に示す検出部2を取り付けるための大径筒部22とを連設した段付き筒形状の把持体20を具備し、大径筒部22の開口側から、前記検出部2の絶縁体5の外周との間にOリング23を介在しつつ絶縁体5の−電極側の部分を嵌着し、前記開口内部に−電極4を内装するように構成している。
【0033】
また、前記開口内部の−電極4に対して、スペーサ部25を介して、測定回路(例えば高周波ブリッジ回路等)27、演算回路28等を搭載した配線基板26を取り付けている。更に、前記小径筒部21の内部には、例えば単1型又は単2型等からなる2個の乾電池29を直列接続した電池部30を収納している。
【0034】
図7は本実施例1の水分測定装置1の回路系を示すものであり、前記+電極3、−電極4を測定回路27に接続して+電極3、−電極4間の容量を測定し、測定回路27の測定値を演算回路28により演算して測定対象物10の水分値を求め、液晶ディスプレイ等で構成した表示部31により前記水分値を表示するように構成している。
なお、前記演算回路28には、電気容量値と関係のある測定回路27からの出力値と水分値との関係をプラグラムしておくものである。また、図6において31は表示部を示すものである。
【0035】
本実施例1の水分測定装置1によれば、絶縁体5の一端に端面を曲面状とした+電極3を、他端に−電極4を配置した構成の検出部2を用い、この検出部2を+電極3を測定対象物10に押し当てることによって、水分測定装置1が鉛直方向から傾いた場合でもその傾き角e’が小さい状態で測定対象物10の水分値を精度よく測定することができる。
【0036】
(実施例2)
次に、図8乃至図10を参照して本発明の実施例2について説明する。
本実施例2の水分測定装置1Aは、図8、図9に示すように、単一の筒形状の把持体41の両端に、測定対象物10の深部測定用の検出部42Aと、浅部測定用の検出部42Bとを取り付けたことが特徴である。前記検出部42A、検出部42Bは、図4に示す検出部2と同様な構成とし、+電極3、−電極4(図8において点線で示す)間の間隔及び絶縁体5の厚さを検出部42Aでは大きく、検出部42Bでは小さくしている。
【0037】
また、本実施例2の水分測定装置1Aにおいては、図9に示すように、前記検出部42Aの+電極3、−電極4を深部測定回路43に接続して+電極3、−電極4間の容量を測定し、深部測定回路43の測定値を切替部45aを備えた演算回路45により演算して測定対象物10の深部の水分値を求め、液晶ディスプレイ等で構成した表示部46により前記水分値を表示するように構成している。
【0038】
また、前記検出部42Bの+電極3、−電極4を浅部測定回路44に接続して+電極3、−電極4間の容量を測定し、浅部測定回路44の測定値を切替部45aを切り替えて演算回路45に入力し、演算回路45により演算して測定対象物10の浅部の水分値を求め、液晶ディスプレイ等で構成した表示部46により前記水分値を表示するように構成している。
【0039】
本実施例2の水分測定装置1Aによれば、単一の筒形状の把持体41の両端に、測定対象物10の深部測定用の検出部42Aと、深部測定用の検出部42Bとを備えているため、深部測定用の検出部42Aの+電極3を測定対象物10に押し当てた状態の深部の水分測定と、把持体41を持ち替え浅部測定用の検出部42Bの+電極3を測定対象物10に押し当てた状態の浅部の水分測定とを一台の水分測定装置1Aにより選択的に行うことができる。
【0040】
この場合、深部測定用の検出部42Aを使用した場合の測定値をA、浅部測定用の検出部42Bの測定値をBとすると、A−Bが深い部分、Bが浅い部分の水分値に対応する。但し、これは1例であり、他の演算を採用したほうがより高精度となることがあり、測定対象物10の測定水分領域、材質等により異なるものである。
【0041】
図10は本発明に係る実施例2の変形例を示すものであり、この変形例の水分測定装置1Bにおいては、把持部51から二股分岐した検出部保持部53A、53Bに、各々測定対象物10の深部測定用の検出部42Aと、浅部測定用の検出部42Bとを取り付けたことが特徴である。
【0042】
前記検出部42A、検出部42Bは、前記図4に示す検出部2と同様な構成とし、+電極3、−電極4(図10において点線で示す)間の間隔及び絶縁体5の厚さを検出部42Aでは大きく、検出部42Bでは小さくしている。
【0043】
この変形例の水分測定装置1Bにおいては、図9に示す場合と同様な回路系を採用するとともに、深部測定用の検出部42Aの+電極3を測定対象物10に押し当てた状態の深部の水分測定時と、浅部測定用の検出部42Bの+電極3を測定対象物10に押し立てた状態の浅部の水分測定時とで演算回路45を切り替え動作させるように構成している。
【0044】
この変形例の水分測定装置1Bによれば、二股分岐の構成からなる一台の水分測定装置1Bで、深部測定用の検出部42Aの+電極3を測定対象物10に押し当てた状態の深部の水分測定と、浅部測定用の検出部42Bの+電極3を測定対象物10に押し立てた状態の浅部の水分測定とを切り替えて行うことができる。
【0045】
(実施例3)
次に、図11、図12を参照して本発明の実施例3の検出部55について説明する。
本実施例3の検出部55は、絶縁体5の一端に+電極3を、他端に−電極4を配置するとともに、絶縁体5の内部に−電極4と平行配置に−電極4aを配置した2個の−電極4、4aを有する構成としたことが特徴である。すなわち、+電極3と−電極4とを使用して測定対象物10の深部の水分測定を、+電極3と−電極4aとを使用して測定対象物10の浅部の水分測定を切り替え式で行うように構成している。
【0046】
本実施例3の検出部55を含む水分測定装置1Cの回路系を図12に示す。
この回路系は、前記検出部55の+電極3、−電極4を深部測定回路43に接続して+電極3、−電極4間の容量を測定し、深部測定回路43の測定値を切り替え式の演算回路45Aにより演算して測定対象物10の深部の水分値を求めて、液晶ディスプレイ等で構成した表示部46により前記水分値を表示するように構成している。また、前記検出部55の+電極3、−電極4を浅部測定回路44に接続して+電極3、−電極4a間の容量を測定し、切り替え式の演算回路45Aにより演算して測定対象物10の浅部の水分値を求め、液晶ディスプレイ等で構成した表示部46により前記水分値を表示するように構成している。
【0047】
本実施例3の水分測定装置1Cによれば、1個の+電極3と、2個の−電極4、4aとを有する検出部55を備えているので、簡略な構成からなる一台の水分測定装置1Cにより測定対象物10の深部の水分測定と、浅部の水分測定とを切り替えて行うことができる。
【0048】
(実施例4)
次に、図13乃至図15を参照して本発明の実施例4の水分測定装置1Dについて説明する。
本実施例4の水分測定装置1Dは、図6に示す実施例1の水分測定装置1と基本的構成は同様であるが、筒形状の把持体61の一端に、浅部測定用の+電極3aを端面に有し内部に−電極4を内蔵した浅部測定部62を設けるとともに、この浅部測定部62に対して深部測定用の+電極3を端面に有する深部測定部63をアタッチメント式で脱着可能に備えたことが特徴である。
【0049】
このような構成により、前記−電極4は、+電極3、+電極3aに対して共通な−電極として作用し、深部測定部63を装着した状態では、図14に示すように、電極間隔が大きい前記+電極3と−電極4との間の容量を測定して測定対象物10の深部の水分を求め、深部測定部63を外した状態では、図15に示すように、電極間隔が小さい前記+電極3aと−電極4との間の容量を測定して測定対象物10の浅部の水分を求めるようになっている。また、本実施例4の水分測定装置1Dは、図12に示す場合と同様な切り替え式の回路系を採用している。
【0050】
本実施例4の水分測定装置1Dによれば、水分測定装置1Dの本体に対して、深部測定部63をアタッチメント式で脱着可能に備えているので、簡略な構成からなる一台の水分測定装置1Dにより測定対象物10の浅部の水分測定と、深部の水分測定とを簡略に切り替えて行うことができる。
【0051】
(実施例5)
次に、図16、図17を参照して本発明の実施例5の水分測定装置の電極構造について説明する。
本実施例5においては、検出部72の+電極3、−電極4間の間隔を変動式にしたことが特徴である。すなわち、本実施例5の検出部72は、絶縁材からなる筒状カバー体73の端面中心部に+電極3を配置するとともに、筒状カバー体73の中心部に+電極3の一構成部材であるガイド体74を鉛直方向に立設し、当該ガイド体74により、−電極4を取り付けた絶縁体5を鉛直方向にスライド可能に支持したものである。
【0052】
本実施例5の検出部72を採用した水分測定装置によれば、一台の水分測定装置によって図16に示すように、−電極4を上方にスライドして前記+電極3と−電極4との間の電極間隔を大きくして測定対象物10の深部の水分を求めたり、図17に示すように、−電極4を下方にスライドして前記+電極3aと−電極4との間の電極間隔を小さくして測定対象物10の浅部の水分を求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、上述したコンクリート、モルタル、木材等の水分測定に適用する他、各種土木工事現場の地盤、壁面の水分測定、穀粉等の水分測定に幅広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例1の水分測定装置の測定部の構成を示す説明図である。
【図2】本実施例1の水分測定装置の測定部の+電極側から見た平面図である。
【図3】本実施例1の水分測定装置の傾き角と水分との相関を示す表である。
【図4】本実施例の水分測定装置における測定部の具体的構成例を示す概略断面図である。
【図5】本実施例1の水分測定装置における測定部を傾けた状態を示す概略図である。
【図6】本実施例1の水分測定装置の具体的構成例を示す概略断面図である。
【図7】本実施例1の水分測定装置の回路系を示すブロック図である。
【図8】本発明の実施例2の水分測定装置の正面図である。
【図9】本実施例2の水分測定装置の回路系を示すブロック図である。
【図10】本実施例2の水分測定装置の変形例を示す正面図である。
【図11】本発明の実施例3の測定部を示す断面図である。
【図12】本実施例3の回路系を示すブロック図である。
【図13】本発明の実施例4の水分測定装置の正面図である。
【図14】本実施例4の測定部を示す正面図である。
【図15】本実施例4の浅部測定用の測定部を示す正面図である。
【図16】本発明の実施例5における測定部(深部測定時)を示す断面図である。
【図17】本実施例5の測定部(浅部測定時)を示す断面図である。
【図18】従来の水分測定装置における測定部を示す正面図である。
【図19】従来の水分測定装置における測定部を示す底面図である。
【図20】従来の水分測定装置における測定部を木材の木目と平行配置した状態を示す説明図である。
【図21】従来の水分測定装置における測定部を木材の木目と直角配置した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 水分測定装置
1A 水分測定装置
1B 水分測定装置
1C 水分測定装置
1D 水分測定装置
2 検出部
3 +電極
3a +電極
4 −電極
4a −電極
5 絶縁体
5a 周縁部
6 貫通孔
10 測定対象物
11 連結部材
12 下部連結受部
13 上部連結受部
14 連結棒
15 ネジ部
16 平形ワッシャ
17 スプリングワッシャ
18 ナット
20 把持体
21 小径筒部
22 大径筒部
23 Oリング
25 スペーサ部
26 配線基板
27 測定回路
28 演算回路
29 乾電池
30 電池部
31 表示部
41 把持体
42A 検出部
42B 検出部
43 深部測定回路
44 浅部測定回路
45 演算回路
45A 演算回路
45a 切替部
46 表示部
51 把持部
53A 検出部保持部
53B 検出部保持部
55 検出部
61 把持体
62 浅部測定部
63 深部測定部
72 検出部
73 筒状カバー体
74 ガイド体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物への押し当て面を曲面とした一方の電極と、この一方の電極を一方の端面中心部に配置した絶縁体の他方の端面に前記一方の電極と対向配置した他方の電極とを有する検出部を備えたことを特徴とする水分測定装置。
【請求項2】
測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した−電極とを有する検出部と、
この検出部の検出信号から前記+電極、−電極間の容量を求める測定回路と、
測定回路の測定信号を基に前記測定対象物の水分値を求める演算回路と、
演算回路の演算結果を表示する表示部と、
を有することを特徴とする水分測定装置。
【請求項3】
測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した−電極とを有する深部測定用の検出部と、
測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した−電極とを有し、前記+電極、−電極間の間隔を深部測定用の検出部よりも小とした浅部測定用の検出部と、
を把持体の両端に備えたことを特徴とする水分測定装置。
【請求項4】
測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した−電極とを有する深部測定用の検出部と、測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した−電極とを有し、前記+電極、−電極間の間隔を深部測定用の検出部よりも小とした浅部測定用の検出部とを把持体の両端に備えるとともに、
前記深部測定用の検出部の検出信号から前記+電極、−電極間の容量を求める深部測定回路と、
浅部測定用の検出部の検出信号から前記+電極、−電極間の容量を求める浅部測定回路と、
前記深部測定回路、浅部測定回路の各測定信号を切り替え方式で演算し、前記測定対象物の深部、浅部の水分値を求める演算回路と、
演算回路の演算結果を表示する表示部と、
を有することを特徴とする水分測定装置。
【請求項5】
測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した−電極とを有する深部測定用の検出部と、
測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した−電極とを有し、前記+電極、−電極間の間隔を深部測定用の検出部よりも小とした深部測定用の検出部と、
を把持体に二股分岐で備えたことを特徴とする水分測定装置。
【請求項6】
測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した−電極とを有する深部測定用の検出部と、測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した−電極とを有し、前記+電極、−電極間の間隔を深部測定用の検出部よりも小とした深部測定用の検出部とを把持体に二股分岐で備えるとともに、
前記深部測定用の検出部の検出信号から前記+電極、−電極間の容量を求める深部測定回路と、
浅部測定用の検出部の検出信号から前記+電極、−電極間の容量を求める浅部測定回路と、
前記深部測定回路、浅部測定回路の各測定信号を切り替え方式で演算し、前記測定対象物の深部、浅部の水分値を求める演算回路と、
演算回路の演算結果を表示する表示部と、
を有することを特徴とする水分測定装置。
【請求項7】
測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した深部測定用の−電極と、前記絶縁体の内部に前記−電極より+電極との間隔を小とした状態で配置した浅部測定用の−電極とを有する検出部を備えたことを特徴とする水分測定装置。
【請求項8】
測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した深部測定用の−電極と、前記絶縁体の内部に前記−電極より+電極との間隔を小とした状態で配置した浅部測定用の−電極とを有する検出部と、
前記+電極、深部測定用の−電極間の検出信号からその容量を求める深部測定回路と、
前記+電極、浅部測定用の−電極間の検出信号からその容量を求める浅部測定回路と、
前記深部測定回路、浅部測定回路の各測定信号を切り替え方式で演算し、前記測定対象物の深部、浅部の水分値を求める演算回路と、
演算回路の演算結果を表示する表示部と、
を有することを特徴とする水分測定装置。
【請求項9】
測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した−電極とを有する浅部測定用の検出部を備えた把持体と、
前記浅部測定用の検出部に対して装脱可能に配置した測定対象物への押し当て面を曲面とし、装着状態で前記−電極と対向配置となる+電極を有する深部測定用の検出部と、
を備えたことを特徴とする水分測定装置。
【請求項10】
測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極を一方の端面中心部に配置した円筒状の絶縁体の他方の端面に前記+電極と対向配置した−電極とを有する浅部測定用の検出部を備えた把持体と、前記浅部測定用の検出部に対して装脱可能に配置した測定対象物への押し当て面を曲面とし、装着状態で前記−電極と対向配置となる+電極を有する深部測定用の検出部とを備えるとともに、
前記深部測定用の検出部を装着した状態での前記+電極、前記−電極間の検出信号からその容量を求める深部測定回路と、
前記深部測定用の検出部を外した状態での浅部測定用の検出部の+電極、−電極間の検出信号からその容量を求める浅部測定回路と、
前記深部測定回路、浅部測定回路の各測定信号を切り替え方式で演算し、前記測定対象物の深部、浅部の水分値を求める演算回路と、
演算回路の演算結果を表示する表示部と、
を有することを特徴とする水分測定装置。
【請求項11】
測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極に対して押し当て方向の間隔調整可能に配置した円筒状の絶縁体及び前記+電極と対向する−電極とを有する検出部を備えたことを特徴とする水分測定装置。
【請求項12】
測定対象物への押し当て面を曲面とした+電極と、この+電極に対して押し当て方向の間隔調整可能に配置した円筒状の絶縁体及び前記+電極と対向する−電極とを有する検出部と、
この検出部における前記+電極、−電極間の間隔が大きい場合の検出信号から測定対象物の深部測定に対応する容量を求め、前記+電極、−電極間の間隔が小の場合の検出信号から測定対象物の浅部測定に対応する容量を求める測定回路と、
測定回路の測定信号を基に前記測定対象物の深部、浅部の各水分値を求める演算回路と、
演算回路の演算結果を表示する表示部と、
を有することを特徴とする水分測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2006−153781(P2006−153781A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−347880(P2004−347880)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000129884)株式会社ケット科学研究所 (13)
【Fターム(参考)】