説明

コンクリートの乾燥収縮予測方法

【課題】 コンクリートを長期間乾燥させる前に、長期間乾燥後のコンクリートの乾燥収縮を精度よく予測できるコンクリートの乾燥収縮予測方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、セメント、細骨材、粗骨材及び水を混合して混練物を得る混合工程と、混練物を硬化させてコンクリートを得る硬化工程と、硬化工程において、コンクリートの乾燥期間6〜57日経過後の乾燥収縮及び質量減少率の測定値から、乾燥期間150〜360日経過後の乾燥収縮を予測する予測工程と、を有するコンクリートの乾燥収縮予測方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの長期の乾燥収縮予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの乾燥収縮は、構造物の耐久性、長寿命化、高品質化などの観点から小さいほうが望ましい。しかし、コンクリートの乾燥収縮の測定には、通常6ヶ月もの期間を要するため、所定の配合のコンクリートの乾燥収縮を容易に把握することができないのが現状である。
【0003】
そこで、コンクリートの乾燥収縮を短期間で推定する方法が提案されている。例えば非特許文献1には、コンクリートの乾燥収縮試験において、任意の短期材齢における測定収縮ひずみから長期的な収縮ひずみを予測する方法が示されている。なお、この方法では、乾燥期間21日以上の測定値を用いれば、高い精度が得られるとしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】日本建築学会、鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説、57〜58頁、2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンクリートの乾燥収縮の測定は、通常、コンクリート成形後、材齢7日まで標準養生を施した後を基長として、温度20℃、相対湿度60%環境下で、182日間乾燥させたときの長さ変化率として測定される。しかしながら、乾燥収縮試験には6ヶ月もの時間を要することや、コンクリート工事において6ヶ月前に所定のコンクリートの品質を確認することは難しいことから、乾燥期間の短かい段階で、長期間経過した後のコンクリートの乾燥収縮を精度よく予測することが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、コンクリートを長期間乾燥させる前に、長期間乾燥後のコンクリートの乾燥収縮を精度よく予測できるコンクリートの乾燥収縮予測方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため、種々の検討を行った。その結果、特定の乾燥期間経過後のコンクリートの乾燥収縮及び質量減少率を測定することで、更なる乾燥期間経過後のコンクリートの乾燥収縮を予測できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、セメント、細骨材、粗骨材及び水を混合して混練物を得る混合工程と、混練物を硬化させてコンクリートを得る硬化工程と、硬化工程において、コンクリートの乾燥期間6〜57日経過後の乾燥収縮及び質量減少率の測定値から、乾燥期間150〜360日経過後の乾燥収縮を予測する予測工程と、を有するコンクリートの乾燥収縮予測方法を提供する。
【0009】
また、本発明者らは、上記目的を達成するため、所定期間経過後のコンクリートの乾燥収縮及び質量減少率の実測値の関係についてデータ解析を行った。その結果、コンクリートの乾燥収縮を高い精度で予測できる下記予測式を見出した。
【0010】
すなわち、本発明のコンクリートの乾燥収縮予測方法によれば、下記式(1)に基づいて、コンクリートの乾燥期間x日経過後の乾燥収縮Sx及び質量減少率Wxと、コンクリートの乾燥期間y日経過後の乾燥収縮Sy及び質量減少率Wyとから、乾燥期間z日経過後のコンクリートの乾燥収縮Szを予測することができる。
Sz=[a×Sx+b×Sy+c×(Wy−Wx)+d]×Sy・・・(1)
[式(1)中、Szはz日経過後の乾燥収縮(×10−6)、Sxはx日経過後の乾燥収縮(×10−6)、Syはy日経過後の乾燥収縮(×10−6)、Wxはx日経過後の質量減少率(%)、Wyはy日経過後の質量減少率(%)であり、zは150〜360、xは6〜21、yは20〜57であり、x<yを満足し、係数aは−3.500×10−3〜1.000×10−3、係数bは−1.000×10−3〜2.000×10−3、係数cは−1.000〜1.000、係数dは1.000〜2.500である。]
【0011】
本発明のコンクリートの乾燥収縮予測方法において、以下に示す乾燥期間x日及びy日経過後の乾燥収縮及び質量減少率をそれぞれ測定することで、乾燥期間180〜184日経過後のコンクリートの乾燥収縮をより精度よく予測することができる。
【0012】
乾燥期間z日が180〜184日、乾燥期間x日が6〜8日、乾燥期間y日が20〜22日であり、係数aが−2.100×10−3〜−1.900×10−3、係数bが−0.580×10−3〜−0.500×10−3、係数cが0.450〜0.500、係数dが2.250〜2.300であることが好ましい。すなわち、乾燥期間6〜8日後及び乾燥期間20〜22日後のコンクリートの乾燥収縮及び質量減少率をそれぞれ測定することで、180〜184日経過後のコンクリートの乾燥収縮をより精度よく予測することができる。
【0013】
乾燥期間z日が180〜184日、乾燥期間x日が6〜8日、乾燥期間y日が27〜29日であり、係数aが−1.060×10−3〜−0.970×10−3、係数bが−0.720×10−3〜−0.620×10−3、係数cが0.300〜0.330、係数dが1.970〜1.990であることが好ましい。すなわち、乾燥期間6〜8日後及び乾燥期間27〜29日後のコンクリートの乾燥収縮及び質量減少率をそれぞれ測定することで、180〜184日経過後のコンクリートの乾燥収縮をより精度よく予測することができる。
【0014】
乾燥期間z日が180〜184日、乾燥期間x日が6〜8日、乾燥期間y日が55〜57日であり、係数aが−0.040×10−3〜−0.020×10−3、係数bが−0.300×10−3〜−0.250×10−3、係数cが0.040〜0.060、係数dが1.390〜1.400であることが好ましい。すなわち、乾燥期間6〜8日後及び乾燥期間55〜57日後のコンクリートの乾燥収縮及び質量減少率をそれぞれ測定することで、180〜184日経過後のコンクリートの乾燥収縮をより精度よく予測することができる。
【0015】
乾燥期間z日が180〜184日、乾燥期間x日が20〜21日、乾燥期間y日が27〜29日であり、係数aが−3.100×10−3〜−2.850×10−3、係数bが1.370×10−3〜1.570×10−3、係数cが0.580〜0.670、係数dが2.110〜2.160であることが好ましい。すなわち、乾燥期間20〜21日後及び乾燥期間27〜29日後のコンクリートの乾燥収縮及び質量減少率をそれぞれ測定することで、180〜184日経過後のコンクリートの乾燥収縮をより精度よく予測することができる。
【0016】
乾燥期間z日が180〜184日、乾燥期間x日が20〜21日、乾燥期間y日が55〜57日であり、係数aが−1.150×10−3〜−0.990×10−3、係数bが0.440×10−3〜0.490×10−3、係数cが−0.030〜−0.020、係数dが1.400〜1.450であることが好ましい。すなわち、乾燥期間20〜21日後及び乾燥期間55〜57日後のコンクリートの乾燥収縮及び質量減少率をそれぞれ測定することで、180〜184日経過後のコンクリートの乾燥収縮をより精度よく予測することができる。
【0017】
本発明のコンクリートの乾燥収縮予測方法では、硬化工程において、コンクリートを1m得るにあたり、混練物は、水セメント比が40〜65質量%、細骨材率が30〜55容積%であり、セメントを200〜450kg、粗骨材を800〜1200kg含有することが好ましい。
【0018】
水セメント比、細骨材率、セメントの含有量及び粗骨材の含有量を上記の範囲にすることによって、コンクリートの乾燥収縮を低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コンクリートを長期間乾燥させる前に、長期間乾燥後のコンクリートの乾燥収縮を精度よく予測するコンクリートの乾燥収縮予測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る予測式(2)を用いた乾燥収縮の推定値と実測値との関係を表すグラフである。
【図2】本発明に係る予測式(3)を用いた乾燥収縮の推定値と実測値との関係を表すグラフである。
【図3】本発明に係る予測式(4)を用いた乾燥収縮の推定値と実測値との関係を表すグラフである。
【図4】本発明に係る予測式(5)を用いた乾燥収縮の推定値と実測値との関係を表すグラフである。
【図5】本発明に係る予測式(6)を用いた乾燥収縮の推定値と実測値との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好適な実施形態について説明する。本発明のコンクリートの乾燥収縮予測方法は、セメント、細骨材、粗骨材及び水を混合して混練物を得る混合工程、混練物を硬化させてコンクリートを得る硬化工程及び硬化工程において、コンクリートの乾燥期間6〜57日経過後の乾燥収縮及び質量減少率の測定値から、乾燥期間150〜360日経過後の乾燥収縮を予測する予測工程を有する。
【0022】
混合工程では、セメント、細骨材、粗骨材及び水を混合して混練物を得る。
【0023】
セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどの混合セメント、アルミナセメントなどの特殊セメントを用いることができる。これらのうち、ポルトランドセメントを用いることが好ましい。セメントのブレーン比表面積は、好ましくは2500〜4000cm/gであり、より好ましくは3100〜3400cm/gである。ブレーン比表面積とは、セメント1g当たりの表面積であり、JIS R 5201に準拠して測定される値である。
【0024】
細骨材及び粗骨材としては、コンクリートに使用される一般的なものを用いることができる。より具体的には、JIS A 5308附属書A及びJIS A 5005に規定の細骨材及び粗骨材などを用いることができる。
【0025】
水としては、上水道水や地下水などが好適に使用できる。水には化学混和剤を添加してもよい。化学混和剤としては、AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、急結剤、硬化促進剤、遅延剤、防錆剤、起泡剤、発泡剤、空気量調整剤などが使用できる。
【0026】
コンクリートを1m得るに当り、水セメント比が40〜65質量%、細骨材率が38〜55容積%であり、セメントを200〜450kg、粗骨材を800〜1200kg含有する混練物を用いることが好ましい。水セメント比、細骨材率、セメントの含有量及び粗骨材の含有量を上記特定の範囲にすることによって、コンクリートの乾燥収縮を低減することができる。
【0027】
水セメント比とは、コンクリート中の水とセメントの質量比を意味する。水セメント比は、好ましくは40〜65質量%であり、より好ましくは42〜65質量%であり、さらに好ましくは43〜65質量%であり、特に好ましくは44〜64質量%である。水セメント比が、40質量%未満、もしくは65質量%を超える場合は、コンクリートの乾燥収縮を低減し難い傾向がある。
【0028】
コンクリートの単位水量は、好ましくは130〜195kg/mであり、より好ましくは132〜195kg/mであり、さらに好ましくは134〜190kg/mであり、特に好ましくは136〜190kg/mである。単位水量が195kg/mを超える場合や130kg/m未満の場合には、コンクリートの乾燥収縮低減効果が十分に得られない場合や、所要のスランプを得ることができずコンクリートの成形が困難となる場合がある。ここで、スランプとは、スランプ試験による変位量(スランプ値)を意味する。スランプ試験とは、フレッシュコンクリート(まだ固まらない状態のコンクリート)を、上端の内径が10cm、下端の内径が20cm、高さが30cmの鋼製中空のコーンにつめ、コーンを引き抜いた後に、頂面中央部が最初の高さからどのくらい下がるかの変位を測定する試験である(JIS A 1101を参照)。
【0029】
コンクリートの単位セメント量は200〜450kg/mであり、好ましくは220〜440kg/mであり、さらに好ましくは230〜420kg/mであり、特に好ましくは235〜415kg/mである。単位セメント量が450kg/mを超える場合や200kg/m未満の場合には、コンクリートの乾燥収縮低減効果が十分に得られない場合や、所要のスランプを得ることができずコンクリートの成形が困難となる場合がある。
【0030】
細骨材率とは、全細骨材及び全粗骨材を合計した全骨材の絶対容積に対する全細骨材の絶対容積比率を意味する。ここで、絶対容積とは、骨材中の空隙を含み、骨材粒間の空隙を含まない容積を意味する。混練物の細骨材率は、好ましくは38〜55容積%であり、より好ましくは39〜54容積%であり、さらに好ましくは40〜53容積%であり、特に好ましくは41〜52容積%である。粗骨材率が38容積%未満又は55容積%を超える場合は、コンクリートの乾燥収縮を小さくすることができない場合がある。
【0031】
コンクリートの単位粗骨材量は、好ましくは800〜1200kg/mであり、より好ましくは820〜1150kg/mであり、さらに好ましくは840〜1140kg/mであり、特に好ましくは860〜1130kg/mである。
【0032】
コンクリートの単位細骨材量は、好ましくは550〜1150kg/mであり、より好ましくは600〜1100kg/mであり、さらに好ましくは650〜1050kg/mであり、特に好ましくは680〜1000kg/mである。
【0033】
混合工程は、例えば水平二軸形強制練りミキサなどのミキサ内で行うことができる。例えば30L程度のコンクリートを製造する場合には、セメントと、細骨材と、粗骨材とをミキサに投入し約30秒間撹拌し、続いて、場合により化学混和剤を含む水をミキサに投入して約90秒間撹拌するとよい。
【0034】
硬化工程では、上記混合工程で得た混練物を硬化させてコンクリートを得る。上記混練物を目的に応じて所定の形にし、水和反応を進行させて硬化させる。この間、必要な強度が得られる期間まで、養生することが好ましい。養生とは、乾燥や凍結などの有害な外的影響から保護することをいう。養生方法としては、コンクリートを水中に浸漬したり、散水したり、濡れたマットなどで覆うなどの方法が有効である。硬化促進のため、蒸気養生や高温高圧で養生するオートクレーブ養生などを行ってもよい。
【0035】
本発明では、コンクリートの乾燥期間6〜57日経過後の乾燥収縮及び質量減少率の測定値から、乾燥期間150〜360日経過後の乾燥収縮を予測することができる。本発明に係るコンクリートの乾燥収縮予測式は、下記式(1)に示すとおりである。予測工程では、下記式(1)に基づいて、コンクリートの乾燥期間x日経過後の乾燥収縮Sx及び質量減少率Wxと、コンクリートの乾燥期間y日経過後の乾燥収縮Sy及び質量減少率Wyとを用いた回帰分析から、乾燥期間z日経過後のコンクリートの乾燥収縮Szを予測する。
Sz=[a×Sx+b×Sy+c×(Wy−Wx)+d]×Sy・・・(1)
【0036】
ここで、Szはz日経過後の乾燥収縮(×10−6)、Sxはx日経過後の乾燥収縮(×10−6)、Syはy日経過後の乾燥収縮(×10−6)、Wxはx日経過後の質量減少率(%)、Wyはy日経過後の質量減少率(%)であり、乾燥期間z日は150〜360日であり、乾燥期間x日は6〜21日であり、乾燥期間y日は20〜57日であり、x<yを満足する。また、係数aは、−3.500×10−3〜1.000×10−3であり、係数bは、−1.000×10−3〜2.000×10−3であり、係数cは、−1.000〜1.000であり、係数dは、1.000〜2.500である。
【0037】
上記式(1)を用いてコンクリートの乾燥収縮を予測する予測工程を有することによって、実際にコンクリートを長期間乾燥しなくても、長期間経過後のコンクリートの乾燥収縮を予測することが可能となる。
【0038】
乾燥収縮予測式(1)に用いられる乾燥期間z日を180〜184日、乾燥期間x日を6〜8日、乾燥期間y日を20〜22日とすると、係数aは−2.100×10−3〜−1.900×10−3であり、係数bは−0.580×10−3〜−0.500×10−3であり、係数cは0.450〜0.500であり、係数dは2.250〜2.300である。係数a〜dを上記範囲とした場合、回帰分析による推定値と実測値との差は±120×10−6程度とすることができる。また、係数aは好ましくは−2.000×10−3〜−1.980×10−3であり、係数bは好ましくは−0.550×10−3〜−0.530×10−3であり、係数cは好ましくは0.470〜0.490であり、係数dは好ましくは2.270〜2.290である。係数a〜dをより好ましい範囲とした場合、推定値と実測値との差は±100×10−6程度とより精度高く、コンクリートの乾燥収縮を予測することができる。
【0039】
また、乾燥収縮予測式(1)に用いられる乾燥期間z日を180〜184日、乾燥期間x日を6〜8日、乾燥期間y日を27〜29日とすると、係数aは−1.060×10−3〜−0.970×10−3であり、係数bは−0.720×10−3〜−0.620×10−3であり、係数cは0.300〜0.330であり、係数dは1.970〜1.990である。係数a〜dを上記範囲とした場合、回帰分析による推定値と実測値との差は±110×10−6程度とすることができる。また、係数aは好ましくは−1.020×10−3〜−1.010×10−3であり、係数bは好ましくは−0.670×10−3〜−0.660×10−3であり、係数cは好ましくは0.310〜0.320であり、係数dは好ましくは1.980〜1.985である。係数a〜dをより好ましい範囲とした場合、推定値と実測値との差は±90×10−6程度とより精度高く、コンクリートの乾燥収縮を予測することができる。
【0040】
また、乾燥収縮予測式(1)に用いられる乾燥期間z日を180〜184日、乾燥期間x日を6〜8日、乾燥期間y日を55〜57日とすると、係数aは−0.040×10−3〜−0.020×10−3であり、係数bは−0.300×10−3〜−0.250×10−3であり、係数cは0.040〜0.060であり、係数dは1.390〜1.400である。係数a〜dを上記範囲とした場合、回帰分析による推定値と実測値との差は±80×10−6程度とすることができる。また、係数aは好ましくは−0.030×10−3〜−0.026×10−3であり、係数bは好ましくは−0.275×10−3〜−0.270×10−3であり、係数cは好ましくは0.051〜0.055であり、係数dは好ましくは1.391〜1.395である。係数a〜dを好ましい範囲とした場合、推定値と実測値との差は±60×10−6程度とより精度高く、コンクリートの乾燥収縮を予測することができる。
【0041】
また、乾燥収縮予測式(1)に用いられる乾燥期間z日を180〜184日、乾燥期間x日を20〜21日、乾燥期間y日を27〜29日とすると、係数aは−3.100×10−3〜−2.850×10−3であり、係数bは1.370×10−3〜1.570×10−3であり、係数cは0.580〜0.670であり、係数dは2.110〜2.160である。係数a〜dを上記範囲とした場合、回帰分析による推定値と実測値との差は±120×10−6程度とすることができる。また、係数aは−3.100×10−3〜−2.850×10−3であり、好ましくは−3.020×10−3〜−2.940×10−3である。係数bは1.370×10−3〜1.570×10−3であり、好ましくは1.410×10−3〜1.520×10−3である。係数cは0.580〜0.670であり、好ましくは0.600〜0.650である。係数dは2.110〜2.160であり、好ましくは2.130〜2.150である。係数a〜dを好ましい範囲とした場合、推定値と実測値との差は±100×10−6程度とより精度高く、コンクリートの乾燥収縮を予測することができる。
【0042】
また、乾燥収縮予測式(1)に用いられる乾燥期間z日を180〜184日、乾燥期間x日を20〜21日、乾燥期間y日を55〜57日とすると、係数aは−1.150×10−3〜−0.990×10−3であり、係数bは0.440×10−3〜0.490×10−3であり、係数cは−0.030〜−0.020であり、係数dは1.400〜1.450である。係数a〜dを上記範囲とした場合、回帰式による推定値と実測値との差は±80×10−6程度とすることができる。また、係数aは好ましくは−1.100×10−3〜−1.040×10−3であり、係数bは好ましくは0.480×10−3〜0.450×10−3である。係数cは好ましくは−0.025〜−0.015であり、係数dは好ましくは1.420〜1.430である。係数a〜dを好ましい範囲とした場合、推定値と実測値との差は±60×10−6程度とより精度高く、コンクリートの乾燥収縮を予測することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0044】
[実施例1〜93]
以下の手順で実施例1〜93のコンクリート供試体を作製した。
【0045】
(混合工程)
以下の材料を用いて混合を行った。
(1)セメント:普通ポルトランドセメント(ブレーン比表積 3330cm/g)
(2)骨材
(i)細骨材:一般的な細骨材を使用した。
(ii)粗骨材:一般的な細骨材を使用した。最大粒径は20mmとした。
(3)化学混和剤:一般的なAE減水剤を使用した。
【0046】
混合は、生コンクリート工場のバッチングプラントにて行った。まず、コンクリート供試体の材料を、表1及び2に示す単位量で配合した。
【0047】
各材料の配合を表1及び2に示す。各材料を、水平二軸形強制練りミキサに投入し、混合した。具体的には、粗骨材、細骨材、セメントをミキサに投入後、30秒間攪拌した。続いて予め化学混和剤を溶かした水をミキサに投入後、90秒間混合して混練物を得た。
【0048】
(硬化工程)
上記の混練物を型枠に入れて硬化させてコンクリート供試体を得た。コンクリート供試体の寸法は、10×10×40cmとした。コンクリート供試体を材齢1日で脱型した後、材齢7日まで標準養生した。標準養生とは、コンクリートやモルタルの供試体を約20℃の水中で養生することをいう。
【0049】
(コンクリートの乾燥収縮の測定)
上記の標準養生の後、コンクリート供試体の基長を測定した。続いて、温度20℃、相対湿度60%の環境下にて182日まで乾燥させ、各コンクリート供試体の乾燥収縮を測定した。コンクリートの乾燥収縮は、JIS A 1129−2 「コンタクトゲージ法」に準じて測定した。結果を表3及び4に示す。
【0050】
(コンクリートの乾燥収縮の予測工程)
乾燥期間7日のコンクリートの乾燥収縮、乾燥期間21日のコンクリートの乾燥収縮、乾燥期間7日から21日にかけてのコンクリートの質量減少率の差を用いて、実施例のデータを回帰分析することによって乾燥収縮予測式及びその係数を設定した。係数をより好ましい範囲とした下記式(2)で得られた乾燥収縮推定値を表3及び4に示す。また、図1に、下記式(2)を用いたコンクリートの乾燥収縮の推定値及び実測値の相関関係を示す。
182=[−1.992×10−3×S−0.541×10−3×S21+0.480×(W21−W)+2.282]×S21・・・(2)
【0051】
乾燥期間7日のコンクリートの乾燥収縮、乾燥期間28日のコンクリートの乾燥収縮、乾燥期間7日から28日にかけてのコンクリートの質量減少率の差を用いて、実施例のデータを回帰分析することによって乾燥収縮予測式及びその係数を設定した。係数をより好ましい範囲とした式(3)で得られた乾燥収縮推定値を表3及び4に示す。また、図2に、下記式(3)を用いたコンクリートの乾燥収縮の推定値及び実測値の相関関係を示す。
182=[−1.014×10−3×S−0.668×10−3×S28+0.316×(W28−W)+1.983]×S28・・・(3)
【0052】
乾燥期間7日のコンクリートの乾燥収縮、乾燥期間56日のコンクリートの乾燥収縮、乾燥期間7日から56日にかけてのコンクリートの質量減少率の差を用いて、実施例のデータを回帰分析することによって乾燥収縮予測式及びその係数を設定した。係数をより好ましい範囲とした式(4)で得られた乾燥収縮推定値を表3及び4に示す。また、図3に、下記式(4)を用いたコンクリートの乾燥収縮の推定値及び実測値の相関関係を示す。
182=[−0.028×10−3×S−0.273×10−3×S56+0.053×(W56−W)+1.393]×S56・・・(4)
【0053】
乾燥期間21日のコンクリートの乾燥収縮、乾燥期間28日のコンクリートの乾燥収縮、乾燥期間21日から28日にかけてのコンクリートの質量減少率の差を用いて、実施例のデータを回帰分析することによって乾燥収縮予測式およびその係数を設定した。係数をより好ましい範囲とした式(5)で得られた乾燥収縮推定値を表3及び4に示す。また、図4に、下記式(5)を用いたコンクリートの乾燥収縮の推定値及び実測値の相関関係を示す。
182=[−2.985×10−3×S21+1.465×10−3×S56+0.630×(W28−W21)+2.142]×S28・・・(5)
【0054】
乾燥期間21日のコンクリートの乾燥収縮、乾燥期間56日のコンクリートの乾燥収縮、乾燥期間21日から56日にかけてのコンクリートの質量減少率の差を用いて、実施例のデータを回帰分析することによって乾燥収縮予測式およびその係数を設定した。係数をより好ましい範囲とした式(6)で得られた乾燥収縮推定値を表3及び4に示す。また、図5に、下記式(6)を用いたコンクリートの乾燥収縮の推定値及び実測値の相関関係を示す。
182=[−1.075×10−3×S21+0.467×10−3×S56−0.020×(W56−W21)+1.425]×S56・・・(6)
【0055】
表3及び4並びに図1〜5に示すように、本発明に係るコンクリートの乾燥収縮予測式を用いることで、コンクリートの乾燥収縮を精度よく予測できることが確認された。ここで、図1〜5中、Rは各式の相関係数を示す。なお、図1〜5には、比較のため、日本建築学会が公表している短期データを用いたコンクリートの乾燥収縮の予測結果を併せて示した(「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針(案)・同解説」、57〜58頁、日本建築学会、2006を参照)。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
【表4】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、細骨材、粗骨材及び水を混合して混練物を得る混合工程と、
前記混練物を硬化させてコンクリートを得る硬化工程と、
前記硬化工程において、コンクリートの乾燥期間6〜57日経過後の乾燥収縮及び質量減少率の測定値から、乾燥期間150〜360日経過後の乾燥収縮を予測する予測工程と、
を有するコンクリートの乾燥収縮予測方法。
【請求項2】
下記式(1)に基づいて、前記コンクリートの乾燥期間x日経過後の乾燥収縮Sx及び質量減少率Wxと、前記コンクリートの乾燥期間y日経過後の乾燥収縮Sy及び質量減少率Wyとから、乾燥期間z日経過後のコンクリートの乾燥収縮Szを予測する、請求項1記載の乾燥収縮予測方法。
Sz=[a×Sx+b×Sy+c×(Wy−Wx)+d]×Sy・・・(1)
[式(1)中、Szはz日経過後の乾燥収縮(×10−6)、Sxはx日経過後の乾燥収縮(×10−6)、Syはy日経過後の乾燥収縮(×10−6)、Wxはx日経過後の質量減少率(%)、Wyはy日経過後の質量減少率(%)であり、zは150〜360、xは6〜21、yは20〜57であり、x<yを満足し、係数aは−3.500×10−3〜1.000×10−3、係数bは−1.000×10−3〜2.000×10−3、係数cは−1.000〜1.000、係数dは1.000〜2.500である。]
【請求項3】
前記乾燥期間z日が180〜184日、前記乾燥期間x日が6〜8日、前記乾燥期間y日が20〜22日であり、前記係数aが−2.100×10−3〜−1.900×10−3、前記係数bが−0.580×10−3〜−0.500×10−3、前記係数cが0.450〜0.500、前記係数dが2.250〜2.300である、請求項2記載の乾燥収縮予測方法。
【請求項4】
前記乾燥期間z日が180〜184日、前記乾燥期間x日が6〜8日、前記乾燥期間y日が27〜29日であり、前記係数aが−1.060×10−3〜−0.970×10−3、前記係数bが−0.720×10−3〜−0.620×10−3、前記係数cが0.300〜0.330、前記係数dが1.970〜1.990である、請求項2記載の乾燥収縮予測方法。
【請求項5】
前記乾燥期間z日が180〜184日、前記乾燥期間x日が6〜8日、前記乾燥期間y日が55〜57日であり、前記係数aが−0.040×10−3〜−0.020×10−3、前記係数bが−0.300×10−3〜−0.250×10−3、前記係数cが0.040〜0.060、前記係数dが1.390〜1.400である、請求項2記載の乾燥収縮予測方法。
【請求項6】
前記乾燥期間z日が180〜184日、前記乾燥期間x日が20〜21日、前記乾燥期間y日が27〜29日であり、前記係数aが−3.100×10−3〜−2.850×10−3、前記係数bが1.370×10−3〜1.570×10−3、前記係数cが0.580〜0.670、前記係数dが2.110〜2.160である、請求項2記載の乾燥収縮予測方法。
【請求項7】
前記乾燥期間z日が180〜184日、前記乾燥期間x日が20〜21日、前記乾燥期間y日が55〜57日であり、前記係数aが−1.150×10−3〜−0.990×10−3、前記係数bが0.440×10−3〜0.490×10−3、前記係数cが−0.030〜−0.020、前記係数dが1.400〜1.450である、請求項2記載の乾燥収縮予測方法。
【請求項8】
前記硬化工程において、前記コンクリートを1m得るにあたり、
前記混練物は、水セメント比が40〜65質量%、前記細骨材率が38〜55容積%であり、前記セメントを200〜450kg、前記粗骨材を800〜1200kg含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の乾燥収縮予測方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−32156(P2012−32156A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169168(P2010−169168)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】