説明

コンクリートブロック及びコンクリートブロックの印刷方法

【課題】表面に気泡があり、色がグレーなどであるコンクリートブロックの表面にインクジェット印刷しても、陰影のある鮮明な印刷画像を得ることができるコンクリートブロック及びコンクリートブロックの印刷方法を提供する。
【解決手段】コンクリートブロック10のフェイスシェル面10aに印刷画像P3をインクジェット印刷するためのコンクリートブロック10の印刷方法であって、前記印刷画像P3は、同一の被写体Aを撮影した複数の撮影画像P1、P2を合成したものであって、前記複数の撮影画像P1、P2は、明度及び彩度のうちの少なくともいずれかが互いに異なるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンクリートブロック及びコンクリートブロックの印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築材にインクジェット印刷を施すことで、様々な意匠の建築材を提供することが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクジェットプリントにて画像が形成された建築板に係る発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−167334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したようなインクジェット印刷を建築用のコンクリートブロックに適用しようとした場合、石やレンガなどを写真撮影し、その撮影画像を画像処理して印刷に使用することが考えられる。
【0006】
しかし、建築用コンクリートブロックの場合、表面に気泡によるくぼみが多く、また、表面の色についても、コンクリート色のグレーや着色されたカラーコンクリートの色とされているのが一般的である。このため、単純に撮影画像を使用してコンクリートブロックに印刷を行うと、印刷した画像の明暗が判別し難いものとなり、鮮明な画像とならない。
【0007】
例えば、印刷画像として、凹凸のある天然石を複数枚並べ、それぞれの天然石の間に目地を設けたものを撮影して使用する場合、天然石の部分の明暗をはっきりさせるように照明を当てて撮影した場合、目地部分はほとんど黒くなってしまい、明暗が弱い印刷画像となってしまう。このような撮影画像を用いてコンクリートブロックにインクジェット印刷を行うと、さらに目地の明暗はなくなってしまい、立体感の乏しい印刷画像となってしまう。一方、目地の陰影を出すように照明を当てて撮影した場合には、天然石の部分の明暗がはっきりしない印刷画像となってしまう。このような印刷画像を用いてコンクリートブロックにインクジェット印刷を行うと、天然石の部分はさらに明暗がはっきりしない印刷画像になってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、表面に気泡があり、色がグレーなどであるコンクリートブロックの表面にインクジェット印刷しても、陰影のある鮮明な印刷画像を得ることができるコンクリートブロック及びコンクリートブロックの印刷方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0010】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項1に記載のコンクリートブロックの印刷方法は、コンクリートブロックのフェイスシェル面に印刷画像をインクジェット印刷するためのコンクリートブロックの印刷方法であって、前記印刷画像は、同一の被写体を撮影した複数の撮影画像を合成したものであって、前記複数の撮影画像は、明度及び彩度のうちの少なくともいずれかが互いに異なることを特徴とする。
(請求項2)
【0012】
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0013】
すなわち、前記被写体は、表面に溝部を有しており、前記印刷画像は、前記複数の撮影画像のうちの1の撮影画像から前記被写体の溝部に該当する部分を抽出するとともに、前記複数の撮影画像のうちの他の撮影画像から前記被写体の溝部を除く部分に該当する部分を抽出し、これらの抽出した部分を合成して形成されることを特徴とする。
(請求項3)
【0014】
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は2記載のコンクリートブロックの印刷方法を使用して印刷を施したコンクリートブロックである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記の通りであり、コンクリートブロックのフェイスシェル面に印刷される印刷画像は、同一の被写体を撮影した複数の撮影画像を合成して形成され、前記複数の撮影画像は、明度及び彩度のうちの少なくともいずれかが互いに異なる。すなわち、所望の明度及び彩度を持った画像を撮影し、これらを組み合わせて印刷に使用することができるので、表面に気泡があり、色がグレーなどであるコンクリートブロックの表面にインクジェット印刷しても、陰影のある鮮明な印刷画像を得ることができる。
【0016】
例えば、印刷画像として、凹凸のある天然石を複数枚並べ、それぞれの天然石の間に目地を設けたものを撮影して使用する場合でも、天然石の部分の明暗をはっきりさせるように照明を当てて撮影した撮影画像と、目地の部分の明暗をはっきりさせるように照明を当てて撮影した撮影画像とを用意し、この2つの撮影画像を合成して印刷画像を作成することができる。このような印刷画像を使用して印刷を行えば、天然石と目地との両方を鮮明に印刷することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンクリートブロックの(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。
【図2】被写体を示す図である。
【図3】(a)第1の撮影画像を示す図、(b)第2の撮影画像を示す図、(c)印刷画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係るコンクリートブロック10を示す図である。このコンクリートブロック10は、ゼロスランプのコンクリートを型枠に投入して締め固めた後に即時脱形して製造したもの(いわゆる「即脱式」で得たコンクリートブロック)であり、縦190mm、横398mmのサイズとなっている。
【0020】
このコンクリートブロック10は、この図1に示すように、表裏にフェイスシェル面10aを有している。このフェイスシェル面10aには、特に図示しないものの、表面に気泡によるくぼみがあり、また、表面の色は着色されていないコンクリート色のグレーである。
【0021】
本実施形態においては、このフェイスシェル面10aにインクジェット印刷を行うに際し、図2で示すような被写体Aを撮影した撮影画像を使用する。
【0022】
被写体Aは、表面に凹凸のある天然石11を複数枚並べ、それぞれの天然石11の間に目地12を設けたものである。このため、被写体Aの表面は、天然石11の間に目地12によって溝部が形成されたものとなっている。
【0023】
なお、上記した天然石11の縦幅は約40mmであり、目地12の幅10mmで4段に設けられている。このため、この被写体Aの縦幅は、コンクリートブロック10の縦幅と同じ190mmとなっている。同様に、天然石11の横幅は約71.6mmであり、目地12の幅10mmで5列に設けられている。このため、この被写体Aの横幅は、コンクリートブロック10の横幅と同じ398mmとなっている。
【0024】
本実施形態においては、この被写体Aをデジタルカメラなどで2枚撮影する。すなわち、1枚目の撮影は天然石11の部分の明暗をはっきりさせるように照明を当てて撮影し、2枚目の撮影は目地12の部分の明暗をはっきりさせるように照明を当てて撮影する。このとき、1枚目の撮影よりも2枚目の撮影の方が明度が高くなるように照明を当てれば、暗くなりがちな溝部を明るく撮影できるため、目地12の部分の表情を高く再現できる。一方、1枚目の撮影よりも2枚目の撮影の方が明度が低くなるように照明を当てれば、天然石11の部分が明るく、目地12の部分が暗くなるため、天然石11の部分と目地12の部分とのコントラストを強調することができる。
【0025】
図3(a)は、天然石11の部分の明暗がはっきりとなるように撮影した第1の撮影画像P1であり、図3(b)は、目地12の部分の明暗がはっきりとなるように撮影した第2の撮影画像P2である。コンクリートブロック10のフェイスシェル面10aにインクジェット印刷される印刷画像P3は、この2枚の撮影画像を合成して作成される。具体的には、第1の撮影画像P1及び第2の撮影画像P2をパソコンなどに取り込み、画像編集ソフトなどでトリミングを行うことにより、印刷画像P3を得る。
【0026】
このとき、第1の撮影画像P1においては天然石11の部分(図3(a)における斜線部分)のみが抽出され、第2の撮影画像P2においては目地12の部分(図3(b)における斜線部分)のみが抽出される。そして、この抽出した2つの画像を合成することにより、図3(c)に示すような印刷画像P3が作成される。
【0027】
そして、このように作成された印刷画像P3は、インクジェット印刷機に接続したコンピュータ端末などを介してインクジェット印刷機に画像データとして送信され、コンクリートブロック10のフェイスシェル面10aへのインクジェット印刷に使用される。
【0028】
上記実施形態によれば、コンクリートブロック10のフェイスシェル面10aに印刷される印刷画像P3は、同一の被写体Aを撮影した2枚の撮影画像P1、P2を合成して形成され、この2枚の撮影画像P1、P2は、互いに明度及び彩度のうちの少なくともいずれかが異なる。このため、所望の明度及び彩度を持った撮影画像P1、P2を組み合わせて印刷に使用することができるので、表面に気泡があり、色がグレーなどであるコンクリートブロック10の表面にインクジェット印刷しても、陰影のある鮮明な印刷画像P3を得ることができる。
【0029】
また、このようなコンクリートブロック10を使用すれば、様々なデザインのコンクリートブロック10を低コストで提供することができる。例えば、本実施形態のように天然石11を複数並べたデザインとすれば、実際に天然石11を使用する場合に比べて格段にコストを下げることができる。
【0030】
また、印刷により表面デザインを形成することで、コンクリートブロック10の表面デザインに溝部12を自由に取り入れることができる。すなわち、実際にコンクリートブロック10の表面に溝を設けるとすると、コンクリートブロック10製造時の脱型方向以外に溝を設けることは困難であるが、印刷により表面デザインを形成するようにすれば、このような制約は存在しないので自由にデザインを設定できる。例えば、脱型方向と直交する方向に溝を設けたデザインとすることもできる。
【0031】
なお、上記した実施形態においては、印刷画像P3のリアリティを高めるために、被写体Aのサイズをコンクリートブロック10の印刷面と同じ大きさとしたが、これに限らず、被写体Aのサイズは自由に設定すればよい。すなわち、印刷画像P3はパソコンなどにより加工されるので、撮影画像を拡大縮小して使用することとすれば、被写体Aのサイズは任意とすることができる。
【0032】
また、同じ形状や模様が連続する場合には、撮影画像P1、P2を並べてつなぎ合わせる画像処理を行うことにより、印刷画像P3を得るようにしてもよい。このようにすれば、印刷画像P3の一部を形成する被写体Aを用意するだけでよいので、被写体Aを簡略化することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 コンクリートブロック
10a フェイスシェル面
11 天然石
12 目地(溝部)
A 被写体
P1 第1の撮影画像
P2 第2の撮影画像
P3 印刷画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートブロックのフェイスシェル面に印刷画像をインクジェット印刷するためのコンクリートブロックの印刷方法であって、
前記印刷画像は、同一の被写体を撮影した複数の撮影画像を合成したものであって、
前記複数の撮影画像は、明度及び彩度のうちの少なくともいずれかが互いに異なることを特徴とする、コンクリートブロックの印刷方法。
【請求項2】
前記被写体は、表面に溝部を有しており、
前記印刷画像は、前記複数の撮影画像のうちの1の撮影画像から前記被写体の溝部に該当する部分を抽出するとともに、前記複数の撮影画像のうちの他の撮影画像から前記被写体の溝部を除く部分に該当する部分を抽出し、これらの抽出した部分を合成して形成されることを特徴とする、請求項1記載のコンクリートブロックの印刷方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のコンクリートブロックの印刷方法を使用して印刷を施したコンクリートブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−196606(P2012−196606A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61110(P2011−61110)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(594033260)エスビック株式会社 (9)
【Fターム(参考)】