説明

コンクリート基礎の土台構造及び土台受け部材

【課題】 極めて簡単かつ容易に、土台天面の水平度を精度よく確実に確保できるばかりでなく、経済的であり、さらには床下換気が完全になされる新規なコンクリート基礎の土台構造及び土台受け部材を提供する。
【解決手段】コンクリート基礎10の上面10aから突出するねじ棒20,21に対して木製土台11を貫通保持する構造であって、前記木製土台11の下面側11bにおいて受け座面30aを有する土台受け部材30が前記ねじ棒20,21に螺着され、前記木製土台11が上面側11aの締付ナット40との間で保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物の土台構造に関し、特にはコンクリート基礎の上面から突出するねじ棒に対して木製土台を貫通保持する構造と、該構造に使用される土台受け部材に関する。
【背景技術】
【0002】
木造住宅等の建築物の土台構造では、当該建築物の荷重を安定して支えるために地盤上に布基礎と呼ばれるコンクリート基礎が敷設される。そして、このコンクリート基礎の上面に建築物の木製土台が設置される。この木製土台の設置は、コンクリート基礎内に埋設され基礎上面から突出するアンカーボルト等のねじ棒を木製土台に貫設し、木製土台上面で締付ナットを螺着してなされる。
【0003】
伝統的に行われているこの種の土台構造にあっては、図8に示すように、木製土台11の下面11bがコンクリート基礎10の上面10aに密接して固定される。この構造では、床下の換気の必要性から、コンクリート基礎の側面に通気口13が形成される。図において、符号20はアンカーボルト、40は締付ナット、41は座金、12は柱である。
【0004】
この土台構造では、木製土台11がコンクリート基礎10の上面(天端)10aに接することから、土台11の水平性を出すためには、コンクリート基礎上面10aを平滑にすることが必要で、通常レベラーと呼ばれる流動性の高いモルタルを流し込む作業が行われている(天端モルタル掛け工法)。しかしながら、基礎全周のすべての天端をモルタルの流し込みのみによって、要求される高さに水平を出すことは、手間や時間や費用をかけても物理的に困難で、スペーサ等による手直しをしているのが現状である。また、この構造では、木製土台11がコンクリート基礎10に接することにより腐朽しやすくなりシロアリ等の問題を発生するおそれがある。さらに、建物の荷重などによって通気口13の角部に経時的に亀裂Cを生ずることがしばしばあり、強度上の問題のみならず外観性も低下し補修などの必要がある。
【0005】
これに対して、図9に示すように、コンクリート基礎10の上面10aにパッキン材70を介装して木製土台11を設置する土台構造が知られている(基礎パッキン工法。例えば、特許文献1参照)。この土台構造では、コンクリート基礎10の上面10aと木製土台11の下面11bとの間にプラスチック等のパッキン材70が介在されるので、床下の通気性が確保され、前記の通気口を設ける必要がなくなり、木製土台の腐朽や通気口の亀裂等の問題は解消される。なお、図9において図8と同一符号は同一部材を表す。
【0006】
しかしながら、このパッキン材70を介装する土台構造では、多数のパッキン材を敷設する必要があるばかりでなく、コンクリート基礎10aの上面に接する形でパッキン材70が配置されるため、土台11の水平性を出すためには、前記と同様に、コンクリート基礎上面10aの凹凸により、厚みの異なる複数種類のパッキン材を用いたり、あるいはパッキン材の厚みを調整したりする必要があり、煩雑であるばかりか、精度の高い水平度を出すことは困難であった。
【特許文献1】特開2002−276042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は前記の点に鑑みなされたものであり、極めて簡単かつ容易に、土台天面の水平度を精度よく確実に確保できるばかりでなく、経済的であり、さらには床下換気も完全になされる新規なコンクリート基礎の土台構造及び土台受け部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、コンクリート基礎の上面から突出するねじ棒に対して木製土台を貫通保持する構造であって、前記木製土台の下面側において受け座面を有する土台受け部材が前記ねじ棒に螺着され、前記木製土台が上面側の締付ナットとの間で保持されていることを特徴とするコンクリート基礎の土台構造に係る。
【0009】
請求項2の発明は、前記ねじ棒がアンカーボルト又はホールダウン金物用のねじ棒である請求項1に記載のコンクリート基礎の土台構造に係る。
【0010】
請求項3の発明は、前記土台受け部材とコンクリート基礎との間にモルタルが充填されている請求項1又は2に記載のコンクリート基礎の土台構造に係る。
【0011】
また、請求項4の発明は、受け座面と、前記受け座面の中央部に形成されたねじ穴部と、前記受け座面の側面部に形成された回動用治具の係止部と係合するための係合部とを有することを特徴とする土台受け部材に係る。
【0012】
請求項5の発明は、材質が金属又はプラスチックよりなる請求項4に記載の土台受け部材に係る。
【0013】
請求項6の発明は、前記受け座面に貫通部が形成されている請求項4又は5に記載の土台受け部材に係る。
【0014】
請求項7の発明は、前記受け座面の平面形状が円形であり、受け座面の側面円周部に回動用治具の突起部と係合するための複数の係合部を有する請求項4ないし6のいずれか1項に記載の土台受け部材に係る。
【0015】
請求項8の発明は、前記受け座面の平面形状が正多角形であり、その各側面部が回動用治具と係合するための係合面として形成された請求項4ないし6のいずれか1項に記載の土台受け部材に係る。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明は、コンクリート基礎の上面から突出するねじ棒に対して木製土台を貫通保持する構造であって、前記木製土台の下面側において受け座面を有する土台受け部材が前記ねじ棒に螺着され、前記木製土台が上面側の締付ナットとの間で保持されているものであるから、土台受け部材の螺着位置を調整することによって、極めて簡単かつ容易に短時間に、土台天面の水平度を精度よく確実に確保することができる。のみならず、コンクリート基礎上面の平滑性を出すための作業を要せず、ねじ棒に土台受け部材を螺着するだけであるから、材料的にも工法的にも極めて経済的であり、さらにはコンクリート基礎の上面と木製土台とが接しないので、床下換気が完全になされる。加えて、木製土台の貫通保に際しては、木製土台が一定間隔で下面側で土台受け部材に上面側で締付ナットによって緊締されるので、木材の歪みがなくなり(木材のムラ取りが自動的になされる)真っ直ぐになるという利点がある。なお、土台受け部材を埋設しない場合には、建物が完成した後であっても、いつでも必要により土台の高さ調整が可能である。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ねじ棒がアンカーボルト又はホールダウン金物用のねじ棒であるから、従来の基礎工事や工法に使用されている部材をそのまま用いることができ、簡単かつ容易で、しかも経済的である。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記土台受け部材とコンクリート基礎との間にモルタルが充填されているものであるから、強度上又は外観等の必要性に対して、簡単かつ容易にしかも経済的に対応することができる。
【0019】
また、請求項4の発明は、受け座面と、前記受け座面の中央部に形成されたねじ穴部と、前記受け座面の側面部に形成された回動用治具の係止部と係合するための係合部とを有することを特徴とする土台受け部材に係るものであるから、簡略な構造で製作上及び経済上の有利性がある。土台受け部材の高さ調節はねじによってなされるので、無段階で微妙な調整を精度良く簡単かつ容易に行える。
【0020】
請求項5の発明は、請求項4において、材質が金属又はプラスチックよりなるものであるから、製造が簡単で製作上及び経済上の有利性がある。
【0021】
請求項6の発明は、請求項4又は5において、前記受け座面に貫通部が形成されているものであるから、軽量化が可能であるばかりでなく、モルタル充填時には土台受け部材とモルタルとの結合力が向上する。
【0022】
請求項7の発明は、請求項4ないし6のいずれか1項において、前記受け座面の平面形状が円形であり、受け座面の側面円周部に回動用治具の突起部と係合するための複数の係合部を有するものであるから、製作が容易かつ経済的で、使い勝手がよく、実用的である。
【0023】
請求項8の発明は、請求項4ないし6のいずれか1項において、前記受け座面の平面形状が正多角形であり、その各側面部が回動用治具と係合するための係合面として形成されたものであるから、製作が容易かつ経済的で、使い勝手がよく、実用的である。スパナ等の汎用工具の使用も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下添付の図面に従って、この発明の実施例を説明する。図1はこの発明のコンクリート基礎の土台構造の実施例を示す要部の断面図、図2はその一部の拡大断面図、図3は土台の高さ調整を行う状態を表す断面図、図4は土台構造の別の実施例を示す要部の断面図、図5は土台受け部材とその回動用治具の実施例を表す斜視図、図6は土台受け部材の他の実施例を表す斜視図、図7はさらに土台受け部材の別の実施例を表す斜視図である。
【0025】
図1及びその要部拡大図である図2に示したように、この発明は、コンクリート基礎10内に埋設されてその上面10aから突出するねじ棒20,21に対して、木製土台11を貫通保持する構造に関する。この発明のコンクリート基礎の土台構造は、木製土台11の下面側11bにおいて、受け座面30aを有する土台受け部材30が前記ねじ棒20,21に螺着され、前記木製土台11が上面側11aの締付ナット40との間で保持されていることを特徴とする。図の符号14は木製土台の貫通孔である。
【0026】
図のように、土台受け部材30はねじ棒20,21に回動自在に螺着されるので、回動用治具による回動による高さ調整が可能である。図3は、土台11の高さ調整を行う状態を示し、同図における(b)が標準高さであるとすると、(a)は低いのでその土台受け部材30(30A)をねじ棒20(20A)に対して反時計回りt1に回して上昇させ、また(c)は高いのでその土台受け部材30(30C)をねじ棒20(20C)に対して時計回りt2に回して下降させて、土台11の天面11aの不陸を調整して水平保持を行う。調整完了後に、木製土台11の上面側11aの締付ナット40の緊締を行うことはいうまでもない。符号41は締付ナット40の座金である。
【0027】
ねじ棒は、図示し請求項2の発明として規定したように、従来一般に用いられているアンカーボルト20又はホールダウン金物42用のねじ棒21を用いることができる。コンクリート基礎用のアンカーボルト20は、例えば、直径16mm、ねじピッチ2mmを有し、通常910mm間隔で立設されており、これを用いることが有利である。また、ホールダウン金物42用のねじ棒21はコンクリート基礎10と柱12脚部との緊締等に用いられもので、同じく直径16mm、ねじピッチ2mmである。図1に図示したホールダウン金物42に関して、43は柱12の側面12cへの取付板、44は取付ビス、45は取付板43と一体に形成されたねじ棒貫通部、46は締付ナット、47は座金である。
【0028】
なお図1の符号22で示すねじ棒は、土台11の端部用のねじ棒で、図のように隅柱12の下に位置する場合などには土台11を貫通せずに、土台受け部材30の受け座面30aのみで保持する場合もある。
【0029】
図4は、請求項3の発明として規定したように、土台受け部材30(35)とコンクリート基礎10との間にモルタルMが充填された例である。土台受け部材30は、後述するように、その土台受け面30aにおいて木製土台11の荷重を十分に保持するように設計されるが、使用環境が過酷な場合や特に高い耐久性が求められる場合、あるいは材質等による強度上の要請、さらには外観等の必要性などに応じて、コンクリート基礎10との間にモルタルMを充填してもよい。モルタルMはこのような要請に対して、簡単かつ容易にしかも経済的に対応することができる。なお、モルタルMの充填は、土台11の不陸調整後に行うことはいうまでもない。図4の土台受け部材30(35)は、請求項6の発明として規定したもので、受け座面30aに貫通部39が形成されていて、モルタル充填時には土台受け部材35とモルタルMとの結合力が向上する。
【0030】
次に、土台受け部材30について説明する。既に述べたように、この発明の土台受け部材30は、受け座面30aと、前記受け座面の中央部に形成されたねじ穴部31と、前記受け座面30aの側面部に形成された回動用治具50の係止部51と係合するための係合部32とを有する。
【0031】
受け座面30aは、前記したように、木製土台11の下面に接して当該木製土台の荷重を保持する部分であって、必要な耐荷重性能を有する。前記したように、従来一般的なコンクリート基礎用のアンカーボルトは直径16mm、ねじピッチ2mmを有し、通常910mm間隔で立設されており、これを用いることが有利であるから、これを基準として、受け座面30aの大きさや強度計算がなされる。図5に示した例の土台受け部材30は鉄材よりなり、受け座面30aの大きさは板厚が16mm、直径80mmの円形に形成されている。受け座面30aの中央部に形成されたねじ穴部31のねじ径は一般的なアンカーボルト20に螺着するために16mm、ねじピッチ2mmとしてある。なお、ねじ棒20とねじ穴部31との関係は、この例のほかに、直径が12〜16mm、ねじピッチ1.5mmなどがある。
【0032】
土台受け部材30は、請求項5として規定したように、その材質を金属又はプラスチックとすることが有利である。金属としては、前記した鉄材のほかアルミ材などを使用できる。プラスチックは量産化や軽量化が容易で、経済性がある。
【0033】
前記し図7に示し請求項6の発明として規定したように、土台受け部材30(35)の受け座面30aには適宜の貫通部39を形成することができる。軽量化を図ることができるほか、前記したモルタル充填時には土台受け部材とモルタルとの結合力が向上する。図7の貫通部は円形状で3ケ所形成したが、形状や個数は適宜とすることができる。符号37は回動用治具のための切欠係合部である。
【0034】
受け座面30aの側面部には、回動用治具50の係止部51と係合するための係合部32が形成される。図5の実施例の土台受け部材30にあっては、請求項7の発明として規定したように、受け座面30aの平面形状が円形であり、受け座面の側面円周部30bには回動用治具50の突起部51と係合するための複数の係合部32が形成されている。この例の係合部32は孔部で受け座面の側面円周部30bの90度間隔で4ケ所形成されている。
【0035】
図6に図示の土台受け部材60は、請求項8の発明として規定したように、受け座面60aの平面形状が正多角形、ここでは正六角形状であり、その各側面部62が回動用治具と係合するための係合面として形成されたものである。このような正多角形状の土台受け部材60は、回動用治具としてスパナ等の汎用工具の使用が可能で、かつ製作が容易かつ経済的で、使い勝手がよく、実用的であるという利点を有する。
【0036】
この発明の土台受け部材30は、木製土台11をコンクリート基礎10上に設置する前に、各ねじ棒20に螺着される。土台受け部材30は適当な高さ治具などにより初期設定位置に螺着される。その後、木製土台11をその貫通孔14を介してねじ棒20及び土台受け部材30に設置する。そして、木製土台11の上面(天面)11aを水準器等によって計測し、回動用治具を用いて必要な土台受け部材60を回動して土台天面の水平度を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明のコンクリート基礎の土台構造の実施例を示す要部の断面図である。
【図2】図1の一部の拡大断面図である。
【図3】土台の高さ調整を行う状態を表す断面図である。
【図4】土台構造の別の実施例を示す要部の断面図である。
【図5】土台受け部材とその回動用治具の実施例を表す斜視図である。
【図6】土台受け部材の他の実施例を表す斜視図である。
【図7】さらに土台受け部材の別の実施例を表す斜視図である。
【図8】従来の土台構造の一例を示す断面図である。
【図9】従来の土台構造の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 コンクリート基礎
10a 基礎上面
11 木製土台
11b 木製土台下面
20,21 ねじ棒
30 土台受け部材
30a 受け座面
31 ねじ穴部
32 係合部
40 締付ナット
50 回動用治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート基礎(10)の上面(10a)から突出するねじ棒(20,21)に対して木製土台(11)を貫通保持する構造であって、前記木製土台(11)の下面側(11b)において受け座面(30a)を有する土台受け部材(30)が前記ねじ棒に螺着され、前記木製土台(11)が上面側(11a)の締付ナット(40)との間で保持されていることを特徴とするコンクリート基礎の土台構造。
【請求項2】
前記ねじ棒がアンカーボルト又はホールダウン金物用のねじ棒である請求項1に記載のコンクリート基礎の土台構造。
【請求項3】
前記土台受け部材とコンクリート基礎との間にモルタル(M)が充填されている請求項1又は2に記載のコンクリート基礎の土台構造。
【請求項4】
受け座面(30a)と、前記受け座面の中央部に形成されたねじ穴部(31)と、前記受け座面(30a)の側面部に形成された回動用治具(50)の係止部(51)と係合するための係合部(32)とを有することを特徴とする土台受け部材。
【請求項5】
材質が金属又はプラスチックよりなる請求項4に記載の土台受け部材。
【請求項6】
前記受け座面に貫通部が形成されている請求項4又は5に記載の土台受け部材。
【請求項7】
前記受け座面の平面形状が円形であり、受け座面の側面円周部に回動用治具(50)の突起部(51)と係合するための複数の係合部を有する請求項4ないし6のいずれか1項に記載の土台受け部材。
【請求項8】
前記受け座面の平面形状が正多角形であり、その各側面部が回動用治具と係合するための係合面(61)として形成された請求項4ないし6のいずれか1項に記載の土台受け部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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