説明

コンクリート強度試験用供試体製造装置

【課題】突き棒を用いる場合に適用可能なコンクリート強度試験用供試体製造装置を提供し、ひいては、作業者の疲労の軽減とコンクリート強度試験用供試体の均質化を図る。
【解決手段】型枠内のフレッシュコンクリートを振動させるべく型枠の外側面に打撃を加えるハンマー部材と、ハンマー部材を支持する基台と、ハンマー部材の動作機構とをさらに有しており、ハンマー部材は、棒状のアーム部とアーム部の一端部に設けられた打撃部とを有し、打撃部を吊り下げた状態での振り子動作によって打撃を実施し得るようにアーム部に設けられた回動中心軸を介して基台に支持されており、動作機構には、型枠の上方側において上下への往復動作、又は、垂直軸周りの回動動作のいずれかを行う可動部材が備えられており、可動部材による往復動作、又は、回動動作が振り子動作に転換されることによって打撃が実施されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート強度試験用供試体製造装置に関し、より詳しくは、例えば、JIS A1132に規定されている「コンクリート強度試験用供試体の作り方」に則した方法でコンクリート強度試験用供試体を製造可能なコンクリート強度試験用供試体製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、JIS A1132に規定されている「コンクリート強度試験用供試体の作り方」では、フレッシュコンクリートを型枠に充填した後に、該フレッシュコンクリートを締め固めたり前記フレッシュコンクリートから空気抜きを行ったりすることなどを目的として前記型枠内のフレッシュコンクリートに振動を与えることが規定されている。
この振動を与える方法としては、このJIS規格には、内部振動機を用いる方法が規定されており、例えば、下記特許文献1においては、振動機を用いて曲げ強度試験用供試体を作製することが記載されている。
【0003】
また、JIS規格には、型枠内のフレッシュコンクリートを上面側から突き棒で所定回数突く「突き棒を用いる場合」が規定されており、JIS規格の附属書1(参考)の「突き棒を用いる場合」には、突き終わった後、型枠側面を木槌で軽く叩いて、突き棒によってできた穴がなくなるようにすると規定されている。
コンクリート強度試験用供試体は、例えば、圧縮強度試験用供試体であれば、直径が、通常、100〜150mmφで、高さがその2倍とされており、比較的小さなものであるため、当該突き棒を用いる方法は、手軽で簡便な方法であるといえる。
しかし、木槌による打撃を行う際には、通常、手首または肘、肩を支点に木槌を水平に動かすため、作業者の手首および肘、肩に大きな負担がかかり、作業者の疲労を招きやすいという問題を有している。
しかも、数多くのコンクリート強度試験用供試体を作製する場合には、前記疲労によって安定した打撃を継続させることが困難となって、均質なコンクリート強度試験用供試体を作製することが困難になるおそれも有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−212348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、この突き棒を用いる場合に適用可能なコンクリート強度試験用供試体製造装置を提供し、ひいては、作業者の疲労の軽減とコンクリート強度試験用供試体の均質化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明は、コンクリート強度試験用供試体を形成させるべくフレッシュコンクリートが収容されて硬化される型枠を有し、該型枠に収容された前記フレッシュコンクリートを振動させるべく前記型枠の外側面に打撃を加えるハンマー部材と、該ハンマー部材を支持する基台と、前記ハンマー部材に前記打撃を実施させるための動作機構とをさらに有しており、前記ハンマー部材は、棒状のアーム部と該アーム部の一端部に設けられた打撃部とを有し、該打撃部を吊り下げた状態での振り子動作によって前記打撃を実施し得るように前記アーム部に設けられた回動中心軸を介して前記基台に支持されており、前記動作機構には、前記型枠の上方側において上下への往復動作、又は、垂直軸周りの回動動作のいずれかを行う可動部材が備えられており、前記可動部材による前記往復動作、又は、前記回動動作が前記振り子動作に転換されることによって前記打撃が実施されることを特徴とするコンクリート強度試験用供試体製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコンクリート強度試験用供試体製造装置には、型枠よりも上方側において上下への往復動作、又は、水平方向への回動動作を行う可動部材を有し、前記往復動作、又は、前記回動動作をハンマー部材の振り子動作に転換させて型枠の打撃を実施させる動作機構が備えられている。
本発明は、前記可動部材の動作を、モータ等の原動機又は人力により実施させることを意図するものであるが、いずれにせよ型枠の上面側での操作によって型枠の打撃を実施させることができる。
【0008】
例えば、上方からの打撃によって下方に移動させた後にバネ等の反発力を利用して上方に戻る往復動作が実施される可動部材を採用し、この上方からの打撃を型枠側面へのハンマー部材の打撃に転換させる動作機構を採用する場合には、手首または肘、肩を支点とした水平な打撃を型枠外側面に実施する場合に比べて、腕全体で鉛直方向に打撃を行うことができるため手首および肘、肩にかかる負荷を軽減でき、作業者の疲労の軽減を図り得る。
【0009】
また、本発明においては、前記型枠の周方向の複数箇所において前記打撃を実施し得るように前記ハンマー部材を複数有し、しかも、該複数のハンマー部材が同時に前記打撃を実施し得るように、前記複数のハンマー部材を一度に動作させる前記動作機構を有していることが好ましい。
【0010】
このような態様によれば、複数のハンマー部材が備えられることから、例えば、上記のような往復動作が実施される可動部材を有するような場合においては、該可動部材に対する一度の打撃で型枠の複数箇所に打撃が行われることとなる。
したがって、突き棒の穴がなくなるまでの打撃の回数の減少を図ることができ作業者の労力をさらに削減させ得る。
【0011】
さらに、本発明においては、前記打撃される箇所が前記型枠周りに対称性を有する状態となるように前記複数のハンマー部材が配されていることが好ましい。
このような態様によれば、打撃される箇所が前記型枠の周方向に対称性を有することから、打撃による型枠の位置ズレを抑制することができ、位置あわせの手間などの簡略化を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一実施形態に係るコンクリート強度試験用供試体製造装置を示す三面図。
【図2】同実施形態のコンクリート強度試験用供試体製造装置の機構を示す正面図。
【図3】打撃位置の変更事例を示す上面図。
【図4】異なるコンクリート強度試験用供試体製造装置を組み合わせて用いる態様を示す正面図。
【図5】第二実施形態に係るコンクリート強度試験用供試体製造装置を示す正面図及び部分上面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、JIS A1132に規定の圧縮強度試験用供試体の作製に用いる場合を例に図面を参照しつつ本発明の第一の実施の形態について説明する。
なお、図1は、本実施形態に係るコンクリート強度試験用供試体製造装置(以下、単に「製造装置」ともいう)の三面図((a)正面図、(b)上面図及び(c)側面図)であり、図2は、図1に示した製造装置を用いてコンクリート強度試験用供試体(以下、単に「供試体」ともいう)を作製する様子を示した正面図である。
【0014】
(第一実施形態)
この図1、2にも示されているように、本実施形態に係る製造装置1は、フレッシュコンクリートAを円柱状に硬化させてコンクリート強度試験用供試体を形成させるべく内部に前記円柱状の収容スペースが設けられている型枠10を有し、該型枠10に外側から打撃を加えて前記フレッシュコンクリートに振動を加えるためのハンマー部材20を有している。
より詳しくは、前記型枠10は、円筒形状を有しており、縦置き状態で配置された前記型枠10を対向する2箇所において外側から打撃し得るように前記ハンマー部材20が2個備えられている。
そして、本実施形態の製造装置1には、前記複数のハンマー部材20を振り子状に回動可能な状態で支持する基台30がさらに備えられており、該基台30に支持された前記ハンマー部材20に一度に振り子動作をさせて前記型枠10を打撃させ得るように、動作機構40がさらに備えられている。
【0015】
前記基台30は、上面視略長方形となる平板状の基板部31と、該基板部31を前記型枠10よりも上方位置に支持すべく、前記基板部31の四隅から下方に延びる4本の脚部32とによってテーブル状に形成されている。
また、前記基台30は、前記長方形の対向する2組の2辺の内の短辺側の中央部に相当する箇所において前記基板部31の上面から上方に立ち上がる突片33を有している。
前記基台30には、前記突片33が、各辺にそれぞれ2個ずつ形成されており、各辺における突片33は、わずかな間隙を設けて立設されており、この間隙部における前記基板部31には、外縁を内側に切り込ませた切り欠き部が形成されている。
【0016】
前記ハンマー部材20は、角棒状のアーム部21と、該アーム部21の一端部に設けられた円柱状または角柱状、球状の打撃部22とを有し、前記アーム部21を前記突片33の間の切り欠き部に挿通させ、自然状態で前記アーム部21を鉛直方向に延在させた状態となるように回動可能な状態で前記基台30に支持されている。
より具体的には、前記打撃部22を下端側に位置させて、2つの前記突片33とその間のアーム部21とを貫通する回動中心軸Cを介して回動自在に前記基台30に支持されて前記振り子動作可能に支持されている。
また、本実施形態における前記ハンマー部材20は、前記回動中心軸Cを超えてその上方に位置する前記アーム部21の上端部から略直角に屈曲して前記基板部31の中心に延びる延設部23が形成されており、2つのハンマー部材20が互いにその延設部23を対抗させた状態で前記基台30に支持されている。
【0017】
本実施形態における製造装置においては、前記延設部23が互いの先端を離間させており、前記動作機構40は、この延設部23の間を上下に往復動作する可動部材41を有している。
この可動部材41は、上方に向けて拡径する逆円錐台形状の拡径部41aと、該拡径部41aの下端から下方に延びる円柱部41bとによって構成されており、前記基台30の中心部に設けられた筒状の受け器42と、該受け器42の内部に収容されたバネ(図示せず)とによって下方から支持されている。
また、前記可動部材41の拡径部41aは、その最も径小となる下端部が上記に示した2つのハンマー部材20の延設部23の間の距離よりも径小に形成されており、その最も径大となる上端部にいたる間に、この2つの延設部23の間の距離と同じ直径となる箇所が形成されている。
【0018】
なお、前記円柱部41bは、前記拡径部41aの下端部と同じ直径を有する円柱状であり、前記受け器42は、その内径を前記円柱部41bよりもわずかに径大な円筒形状に形成されており、前記円柱部41bの進入深さを調整する機構を有している。
すなわち、前記可動部材41は、前記円柱部41bを前記受け器42に上方から突入させて支持されており、該可動部材41を上方から押圧した場合に、内部のバネを収縮させつつ下方に所定の深さまで移動可能とされ、押圧を解除することで前記バネの復元力によって元の位置にまで押し戻されるべく支持されている。
【0019】
そして、上記に示したように、前記拡径部41aは、その下端部が前記延設部23の間の距離よりも径小で、その上端部が前記延設部23の間の距離よりも径大であることからこの可動部材41の上下方向への往復動作において延設部23と干渉することとなる。
【0020】
このことについて、図2を参照しつつ、より詳しく説明すると、前記可動部材41を下方に向けて移動させると、拡径部41aの途中でその側面に両方の延設部23が当接される状態となり、さらに、前記延設部23を外側に押し広げつつ可動部材41を下方に移動させると、前記回動中心軸Cを介して前記ハンマー部材20が回動して、図2(b)に示すように、基台30の中央部に縦置きに配置した型枠10の外側面に前記打撃部22を衝突させることとなる。
したがって、例えば、前記可動部材41の上端部に対して鉛直方向に木槌などで打撃を加えると、この可動部材41の上下の往復動作が前記拡径部41aの側面と延設部23との干渉によってハンマー部材20の振り子動作に転換され、型枠10に対して、図2正面視左右両側から打撃がなされることとなり、該型枠10の内部に収容されたフレッシュコンクリートFCに振動が加えられることとなる。
【0021】
しかも、左右に対抗する状態に配された2つのハンマー部材20が一度に振り子動作して同時に型枠10に打撃を加えることから、可動部材41への一度の打撃が、型枠10への2箇所の打撃に転換されることとなり、フレッシュコンクリートFCに対する振動発生箇所を多点化することで、例えば、突き棒によって形成された穴がより迅速に消滅されることとなり、効率よく供試体を作製することができる。
また、このとき、木槌などでの打撃動作が鉛直方向への打撃動作となることから、手首または肘、肩を支点として型枠を外側から打撃する従来の「突き棒を用いる場合」の方法に比べて作業者の負荷を軽減することができる。
【0022】
さらに、従来の方法においては、木槌によって型枠を外側から打撃していたために打撃の強度によっては型枠が動いてしまうケースを生じていたが、本実施形態においては、左右対称な位置において打撃が加えられることから、打撃によって型枠10に位置ずれが生じるおそれも抑制されており、位置あわせの手間が生じるおそれも抑制されている。
【0023】
なお、このような位置あわせの手間の簡略化については、例えば、図3に示すように全体の打撃箇所が型枠の周方向に対称性を有していれば、図1、図2に例示の製造装置と同様に得られる効果であるといえる。
図3は、型枠10の上面図で、図中の矢印方向に打撃が加えられることを示す図であり図3(a)〜(d)に示す図の内(a)は、図1、図2に例示の製造装置と同様に左右から対向するように型枠に打撃を加える場合を示すものである。
すなわち、この図3(a)と同様に、周方向に2回対称となる回転対称性を有する(b)に示すような場合や、周方向に3回対称の回転対称性を有する(c)のような場合などにおいても型枠の位置ずれを抑制しつつ一度に複数個所の打撃を行い得る点に関しては図1、図2に例示の製造装置1と同じである。
【0024】
なお、上記においては、圧縮強度試験用供試体を作製する場合を例示していることから円筒状の型枠を有する製造装置を例示しているが、例えば、曲げ強度試験用供試体を作製する場合であれば、角筒状の型枠を採用して上記第一の実施形態と同様に供試体の製造装置を構成させることができる。
その場合には、図3(d)に示すような4回対称の回転対称性を有する打撃箇所を設けることも可能である。
【0025】
また、本実施形態においては、上下に往復動作する可動部材41に逆円錐台形状の拡径部41aを有する場合を例示しているが、側面が上方に向けて外側に広がるテーパー形状となっているものであれば逆円錐台形状によらず種々の形状の可動部材によって同種の効果を得ることができる。
すなわち、回動中心軸Cがアーム部21の下端部と上端部との間に位置されており、複数のハンマー部材20が、アーム部21の上端部を型枠10よりも上方に位置させるべく形成されているとともにアーム部21の上端部から型枠10の中心方向に伸びる延設部23を有し、往復動作を行う可動部材41が、前記延設部23の前方配され下方への移動においてその側面を全てのハンマー部材20の延設部23に当接可能な形状を有しているとともに該当接された状態からさらに下方に移動可能となるように形成されており、該下方への移動によって前記延設部23を外側に移動させて、複数のハンマー部材20に一度に振り子動作を実施させ得るように側面が上方に向けて外に広がるテーパー状に形成されているものであれば、上記例示の製造装置1と同様に機能し同種の効果を得ることができる。
【0026】
また、通常、JIS A1132に規定のコンクリート強度試験用供試体の作り方に則って供試体を作製する場合においては、型枠に複数回に分けて打ち込みを行い、都度、突き棒で突く作業及び突き棒の穴がなくなるまで型枠を打撃する作業を実施することになるため、例えば、図4に示すように打撃部の位置が異なる2つの製造装置を用いることも可能である。
すなわち、図4(a)に示すように回動中心軸Cから打撃部22までのアーム部21の長さが長い(打撃部22の位置が低い)下層打ち込み用の装置1’と、図4(b)に示すように回動中心軸Cから打撃部22までのアーム部21の長さが下層打ち込み用の装置1’よりも短い(打撃部22の位置が高い)上層打ち込み用の装置1”とを用意して、それぞれの打ち込みにおいて使い分けるようにしてもよい。
あるいは、アーム部21に対する打撃部22の位置や、回動中心軸Cを介してアーム部21を支持する位置などを変更して型枠に対する打撃箇所を調整可能な一台の装置を下層打ち込み用と上層打ち込み用とに共用させることも可能である。
【0027】
なお、ここでは詳述しないが、この第一の実施形態における供試体の製造装置は、木材や金属材といった一般的な構造材を用いて構成させることができる。
また、供試体を作製するためのフレッシュコンクリートについても、一般に用いられる成分によって構成させることができ、前記成分としては、通常、セメント、粗骨材、細骨材及び水などが挙げられる。
【0028】
前記セメントとしては普通、早強、中庸熱、低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメントや、ホワイトセメント、アルミナセメント、さらには都市ごみ焼却灰・下水汚泥焼却灰等の廃棄物を原料として利用したエコセメントなどが挙げられる。
また、これらのセメントに、高炉スラグ粉末、フライアッシュ、石灰石粉、珪石粉、シリカフュ−ムなどの無機粉末を添加してなるものも用いることができる。
【0029】
前記粗骨材としては、例えば、粒径5〜25mm程度の砂利、砕石又はこれらの混合物や、軽量骨材などが挙げられる。
前記細骨材としては、川砂、海砂、山砂、砕砂、又はこれらの混合物などが挙げられる。
そして、全骨材中の細骨材の含有割合は、通常、30〜60容積%程度である。
なお、水については、水セメント比等に基づいて適宜その量を調整してフレッシュコンクリートに含有させることができる。
【0030】
また、フレッシュコンクリートには、所望により、リグニン系、ナフタレンスルホン酸系、メラミン系、ポリカルボン酸系などの減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤などのコンクリート用化学混和剤、ガラス繊維、岩綿、アスベストなどの無機質繊維、ビニロン、ナイロン、アクリルなどの合成繊維、スチール繊維などの各種繊維等を含有させることができる。
【0031】
このフレッシュコンクリートは、前記の成分を慣用の強制練りミキサー等に投入して混練りすることによって得ることができ、上記製造装置の型枠に収容させて、突き棒で突いた後に、該突き棒による穴がなくなるまで前記ハンマー部材による打撃を行わせ、所定の時間をかけて硬化させることによって供試体の製造に用いることができる。
【0032】
(第二実施形態)
次いで、図5を参照しつつ、本発明の第二の実施形態について説明する。
図5(a)は、第一実施形態の製造装置に関する図1(a)に相当するもので本実施形態にかかる製造装置の正面図であり、図5(b)は、図5(a)における破線Aの箇所を上側から見た部分上面図である。
【0033】
この図5にも示されているように、第一実施形態における製造装置1と本実施形態における製造装置1xとは、可動部材に関する箇所を相違させている。
すなわち、第一実施形態における製造装置1としては、動作機構40が上下方向に往復動作する可動部材41を有するものを例示していたが、本実施形態の動作機構40xには、垂直軸周り(水平方向)に回動する円板状の可動部材41xと、該可動部材41xを回動させるためのモータ42と、前記可動部材41xとハンマー部材20の延設部23とを連結する連結材43とが備えられている。
【0034】
この製造装置1xにおいては、図5(b)に示すように、前記モータ42がその回動軸を垂直方向上向きとなるようにして備えられており、該回動軸に前記可動部材41xが固定されている。
より詳しくは、その平面方向を略水平な状態とした前記可動部材41xの中心部を貫通する状態で前記モータ42の回動軸が前記可動部材41xに固定され、図中の矢印Rの方向に可動部材41xを回動させることにより、連結材43を介して延設部23を型枠10の中心方向に引き寄せるとともに、矢印Rと逆方向に回動させることによって連結材43を介して延設部23を外向きに押し広げるべく動作するものである。
すなわち、この動作機構40xに設けられた可動部材41xの垂直軸周りの回動動作がハンマー部材20の振り子動作に転換されて型枠10の打撃を行うように構成されている。
この図5に示す供試体の製造装置1xは、モータ42を採用することで自動化が図られたものであり、供試体作製作業者の労力削減に有効に利用可能なものである。
【0035】
この動作機構における相違以外においては、この第二実施形態の製造装置1xを前記第一実施形態の製造装置1と同様に構成させることができ、第一実施形態の製造装置1について説明した各種の変更をこの第二実施形態の製造装置1xにも採用が可能であり、その際に第一実施形態において説明した各種の効果が得られる点においても第一実施形態の製造装置1と同じである。
また、この第一実施形態、第二実施形態に係る製造装置は、構造が単純で簡便なる取り扱いが可能であるという優れた点を有することから具体例を挙げて例示するもので、本発明においては、これらの態様に限定されることなく種々の態様の製造装置を採用することができる。
【0036】
なお、本発明は、JIS A1132に規定のコンクリート強度試験用供試体の作製に用いるコンクリート強度試験用供試体製造装置を主眼としているが、例えば、このJIS規格に限定されることなく、前記JIS規格と同様に型枠を外側から打撃して内部のフレッシュコンクリートに振動を与えることが求められるコンクリート強度試験用供試体の作製において広く用いられ得るものであり、このような場合も本発明が意図する範囲のものである。
【符号の説明】
【0037】
1 コンクリート強度試験用供試体製造装置
1x コンクリート強度試験用供試体製造装置
10 型枠
20 ハンマー部材
21 アーム部
22 打撃部
23 延設部
30 基台
40 動作機構
40x 動作機構
41 可動部材
41x 可動部材
42 モータ
43 連結材
C 回動中心軸
FC フレッシュコンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート強度試験用供試体を形成させるべくフレッシュコンクリートが収容されて硬化される型枠を有し、該型枠に収容された前記フレッシュコンクリートを振動させるべく前記型枠の外側面に打撃を加えるハンマー部材と、該ハンマー部材を支持する基台と、前記ハンマー部材に前記打撃を実施させるための動作機構とをさらに有しており、前記ハンマー部材は、棒状のアーム部と該アーム部の一端部に設けられた打撃部とを有し、該打撃部を吊り下げた状態での振り子動作によって前記打撃を実施し得るように前記アーム部に設けられた回動中心軸を介して前記基台に支持されており、前記動作機構には、前記型枠の上方側において上下への往復動作、又は、垂直軸周りの回動動作のいずれかを行う可動部材が備えられており、前記可動部材による前記往復動作、又は、前記回動動作が前記振り子動作に転換されることによって前記打撃が実施されることを特徴とするコンクリート強度試験用供試体製造装置。
【請求項2】
前記型枠の周方向の複数箇所において前記打撃を実施し得るように前記ハンマー部材を複数有し、しかも、該複数のハンマー部材が同時に前記打撃を実施し得るように、前記複数のハンマー部材を一度に動作させる前記動作機構を有している請求項1記載のコンクリート強度試験用供試体製造装置。
【請求項3】
前記打撃される箇所が前記型枠周りに対称性を有する状態となるように前記複数のハンマー部材が配されている請求項2記載のコンクリート強度試験用供試体製造装置。
【請求項4】
前記回動中心軸が前記アーム部の下端部と上端部との間に位置されており、前記複数のハンマー部材が、前記アーム部の上端部を前記型枠よりも上方に位置させるべく形成されているとともに前記アーム部の上端部から前記型枠の中心方向に伸びる延設部を有し、前記往復動作を行う可動部材は、前記延設部の前方に配され下方への移動においてその側面を全てのハンマー部材の延設部に当接可能な形状を有しているとともに該当接された状態からさらに下方に移動可能となるように形成されており、該下方への移動によって前記延設部を外側に移動させて、前記複数のハンマー部材に一度に前記振り子動作を実施させ得るように前記側面が上方に向けて外に広がるテーパー状に形成されている請求項2又は3記載のコンクリート強度試験用供試体製造装置。
【請求項5】
前記回動中心軸が前記アーム部の下端部と上端部との間に位置されており、前記複数のハンマー部材が、前記アーム部の上端部を前記型枠よりも上方に位置させるべく形成されているとともに前記アーム部の上端部から前記型枠の中心方向に伸びる延設部を有し、前記回動動作を行う可動部材は、前記延設部の前方に配され、一方向への回動において前記アーム部の上端部を前記型枠の中心に近接させ、且つ、前記一方向とは逆方向への回動において前記中心から離間させて前記ハンマー部材に前記振り子動作を実施させ得るように、前記延設部と連結されている請求項2又は3記載のコンクリート強度試験用供試体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−237042(P2010−237042A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85511(P2009−85511)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】