説明

コンクリート成型製品の製造方法及びその方法に使用する製造装置

【課題】最小限のスペースで且つ効率のよい作業によってコンクリート成型製品を製造する方法と、その方法に使用する製造装置を提供すること。
【解決手段】コンクリート成型製品100の製造方法は、底板2及び周囲の枠板で形成する型枠空間内に中子3が配設されるコンクリート成型製品用の型枠において、底板2には、コンクリート成型製品100の開口部を形成する突起部21が上面に形成されており、周囲の枠板と隙間を形成した後、中子3及びコンクリート成型製品100の垂直方向の位置を維持したまま、底板2の突起部21がコンクリート成型製品100と干渉しない位置まで底板2を下降させ、コンクリート成形製品100を水平方向へ中子5から抜き取るようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば側溝用コンクリート成形製品を成型するのに用いる型枠のように、中子を有するコンクリート型枠におけるコンクリート成型製品の製造方法と、その方法に使用する製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長手方向に中空部を形成するコンクリート成形製品では、この中空部を形成する中子(枠体を構成している。)と底板、小口板及び側板より成る本体とを組み合わせて型枠を構成している。
【0003】
そして、側板及び小口板は枠台へ起倒可能に構成し、側板及び小口板を起立して型組みを成し、脱型の際は、側方へ倒してコンクリート成形製品との接触を絶ち、取り出し間隙を形成する。
【0004】
一方、中子は複数枚の枠板で周囲へ拡縮可能に構成され、脱型の際は中心へ縮んでコンクリート成形製品との接触を絶ち、抜き取り間隙を形成するものとしている。
【0005】
そこで、コンクリート成形製品と中子との分離は、コンクリート成形製品との間隙を形成した中子を水平長手方向へ引き抜いて行い、その後コンクリート成形製品を吊り上げ機(クレーン等)で底枠から持ち上げて所定場所へ移動する方法がある。
【0006】
また他の方法として、中子が挿通している状態でコンクリート成形製品を型枠本体から取り出し、別の場所へ置いて中子を引き抜いてコンクリート成形製品を得る方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−119023号公報
【特許文献2】特開2003−225904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような型枠において、型枠からコンクリート成形製品自体を直接水平横方向へ引き抜いて脱型できれば効率がよいのである。
【0009】
しかし、コンクリート成形製品の上面に開口部を形成するため、その成型用の突起部が底板と一体に起設されているのであり、当該突起部を回避するためコンクリート成形製品を上昇させて取り出す必要があるので、上記の様な方法を採用せざるを得ないのである。
【0010】
けれども、上記の各方法では、型枠設置面とは別に、中子やコンクリート成形製品を一時的に置いておける余裕のあるスペースが近くに必要であり、整理整頓の行き届いた場内環境や、更には複数の昇降機械器具が必要となり、作業効率にも問題があるのである。
【0011】
そこで、本発明は最小限のスペースで且つ効率のよい作業によってコンクリート成型製品を製造する方法と、その方法に使用する製造装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため請求項1のコンクリート成型製品の製造方法は、底板及び周囲の枠板で形成する型枠空間内に中子が配設されるコンクリート成型製品用の型枠において、底板には、コンクリート成型製品の開口部を形成する突起部が上面に形成されており、コンクリート成型製品と周囲の枠板との間に隙間を形成した後、中子及びコンクリート成型製品の垂直方向の位置を維持したまま、底板の突起部がコンクリート成型製品と干渉しない位置まで底板を下降させ、コンクリート成形製品を水平方向へ中子から抜き取ることを特徴とするものである。
【0013】
請求項1のコンクリート成型製品の製造方法によれば、底板の突起部がコンクリート成型製品と干渉しない位置まで底板を下降させることによって、型枠上において中子とコンクリート成形製品を垂直方向に静止させた状態で、コンクリート成形製品を水平方向へ中子から抜き取ることができる。
【0014】
請求項2のコンクリート成型製品の製造装置は、底板及び周囲の枠板で形成する型枠空間内に中子が配設されるコンクリート成型製品用の型枠において、底板には、コンクリート成型製品の開口部を形成する突起部が上面に形成されており、この底板が垂直方向に昇降可能となっている。
【0015】
請求項2のコンクリート成型製品の製造装置によれば、底板の突起部がコンクリート成型製品と干渉しない位置まで底板を下降させることによって、製造装置上において中子とコンクリート成形製品を垂直方向に静止させた状態で、コンクリート成形製品を、水平方向へ中子から抜き取ることができる。
【0016】
請求項3のコンクリート成型製品の製造装置は、請求項2のコンクリート成型製品の製造装置において、底板の昇降は底板の下方の基台に設けられているリンク機構で行われ、このリンク機構は、底板の底面を当接支承するローラを有し基台に回動可能に軸支されているリンク板を備え、リンク板が回動することによってローラの垂直方向の位置が変わり、ローラが当接支承している底板が垂直方向に昇降するようになっている。
【0017】
この請求項3のコンクリート成型製品の製造装置によれば、請求項2のコンクリート成型製品の製造装置と同様に作用する上、リンク機構によって底板の昇降をスムーズに行うことができる。
【0018】
請求項4のコンクリート成型製品の製造装置では、請求項3のコンクリート成型製品の製造装置において、リンク機構がリンク板の回動範囲を制限する回動制限手段を有する。
【0019】
この請求項4のコンクリート成型製品の製造装置によれば、請求項3のコンクリート成型製品の製造装置と同様に作用する上、回動制限手段を有することによって底板の昇降する範囲を制限することができ、作業の安全性を向上させることができる。
【0020】
請求項5のコンクリート成型製品の製造装置では、請求項3又は請求項4のコンクリート成型製品の製造装置において、リンク機構は、シャフトと、このシャフトにスリーブが摺動自在に嵌挿されておりリンク板と連結されている少なくとも1個のスライダ部と、シャフトにスリーブが固定されており、リンク板と連結されている少なくとも1個のスライダ部と、スリーブとシャフトとの間に介在する進退機構とをさらに有し、スリーブとシャフトの進退によってリンク板が回動し、ローラに当接支承されている底板が垂直方向に昇降するようになっている。
【0021】
この請求項5のコンクリート成型製品の製造装置によれば、請求項3又は請求項4のコンクリート成型製品の製造装置と同様に作用する上、スリーブとシャフトとの間に進退機構によって、底板の昇降をよりスムーズに行うことができる。
【0022】
請求項6のコンクリート成型製品の製造装置では、請求項5のコンクリート成型製品の製造装置において、シャフトには左・右ネジを螺刻したネジ軸部を有し、少なくとも1対を構成するスライダ部には、一方又は他方のネジ軸部に螺合してシャフトの軸線周りの回動に従って接近離反するナット部材をそれぞれ有する。
【0023】
この請求項6のコンクリート成型製品の製造装置によれば、請求項5のコンクリート成型製品の製造装置と同様に作用する上、シャフトの軸線周りの回動によっても、底板の昇降をよりスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1から6のいずれかの発明によれば、従来の様に中子、又は中子とコンクリート成形製品を製造装置から別の場所に取り出して一時的に設置するスペースを必要とせず、製造装置の設置スペース内でコンクリート成形製品の型抜きを行なうことができる。また、底板の昇降をよりスムーズに行うことができるので、効率のよい作業を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態のコンクリート成型製品の製造装置の側面図であって、一部を断面表示したものである。
【図2】図1の断面線A−Aの断面図である。
【図3】本発明の一実施形態のコンクリート成型製品の製造装置の側面図であって、一部を断面表示したものである。
【図4】図3の断面線B−Bの断面図である。
【図5】本発明の一実施形態のコンクリート成型製品の製造装置の側面図である。
【図6】スリーブ、シャフト及び進退機構の動作を示す側面図であり、進退機構の一部を断面表示したものである
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について図1から図6に基づいて説明する。
【0027】
本実施形態のコンクリート成型製品の製造装置は、例えば、側溝のように長手方向に中空体を形成し、上面の一部に別体の蓋を嵌合するための開口部101を有するコンクリート成形製品100の製造装置である。
【0028】
コンクリート成型製品の製造装置は、基台1とその基台1に設けられているコンクリート成形製品用の型枠とを備える。コンクリート成型製品用の型枠は、底板2と、周囲の枠板である一対の長手方向の側板と、一対の前後端面の小口板と、底板2及び周囲の枠板で形成する型枠空間内に配設される中子3とを有する。尚、図1〜図5では、本発明の特徴となる部材が見えるように、周囲の枠板を構成する一対の側板を省略するとともに、一対の小口板のうちの一方の小口板11のみを表示してある。
【0029】
基台1には支柱12が立設固定されている。支柱12の上端に水平バー13が連設してあり、この水平バー13が中子3内に挿通された状態で係止される。中子3は支柱12を介して基台1に固定されている。
【0030】
底板2は、コンクリート成型製品100の開口部101を形成する突起部21が上面に形成されており、底面から垂下板22,22が延出している。垂下板22,22には後述するローラ61が当接し、底板2を支承するようになっている。底板2は、垂直方向に昇降可能となっており、図1及び図2に示すように底板2の突起部21が中子3と接触する位置まで上昇させたり、図3から図5に示すように底板2の突起部21がコンクリート成形製品100と干渉しない位置まで底板2を下降させたりすることができる。
【0031】
底板2の昇降は底板2の下方の基台1に設けられているリンク機構で行われる。このリンク機構は、底板2の垂下板22を当接支承するローラ61を有し、基台1に回動可能に軸支されているリンク板6を備える。
【0032】
リンク板6は、基台1に設けられている回動軸62を中心に回動するようになっている。リンク板6の一端にはローラ61が取り付けられており、他端は後述するスライダ部の一部であるスリーブ72,73と連結されている。
【0033】
リンク機構は、リンク板6の回動範囲を制限する回動制限手段を有する。具体的には、リンク板の一端と他端との間に2つの段差部63,64が形成されている。基台1に設けられている係止具65は、2つの段差部63,64の間に位置している。
【0034】
リンク板6の回動によって、2つの段差部63,64のうちの片方が係止具65と衝突するようになっている。これにより、リンク板6の回動範囲を制限することができる。
【0035】
リンク機構は、シャフト71と、このシャフト71にスリーブ72が摺動自在に嵌挿されており、リンク板6と連結されている少なくとも1個のスライダ部と、シャフト71にスリーブ73が固定されており、リンク板6と連結されている少なくとも1個のスライダ部と、スリーブ72,73とシャフト71との間に介在する進退機構とをさらに有する。
【0036】
以下、スリーブ72,73とシャフト71との間に介在する進退機構であるクランク機構8について、図6を用いて説明する。このクランク機構8は揺動リンク81、回動リンク82、ハンドル83(図1、図3及び図5参照)及び連結板84より構成されている。
揺動リンク81はシャフト71の基端に揺動可能に連結し、揺動リンク81と回動リンク82とは回動可能にピン85で軸着してある。
【0037】
連結板84はスリーブ72に延設して一体に形成される。連結板84には、回動リンク82が枢着86されている。図6の(a)〜(d)に示すように、ハンドル83によって回動リンク82を回動させると、シャフト71及びシャフトに固定されているスリーブ73とスリーブ72とが相対的に進退するようになっている。
【0038】
シャフト71及びシャフトに固定されているスリーブ73とスリーブ72とが相対的に進退することによって、リンク板6が回動軸62を中心に回動し、ローラ61に当接支承されている底板2が垂直方向に昇降するようになっている。
【0039】
コンクリート成型製品100の製造工程について以下に説明する。まず、底板2が上昇した位置で型枠内にコンクリートが投入される。図1及び図2に示すようにコンクリートが固まったら、コンクリート成型製品100と周囲の枠板である側板及び小口板11と間に隙間を形成する。次いで、図3及び図4に示すように、中子3及びコンクリート成型製品100の垂直方向の位置を維持したまま、底板2の突起部21がコンクリート成型製品10と干渉しない位置まで底板2を下降させる。次いで、図5に示すように、コンクリート成型製品100を水平方向へ中子から抜き取る。
【0040】
上記実施形態では、リンク機構は、進退機構によってシャフト71及びシャフト71に固定されているスリーブ73とスリーブ72と場合について説明したが、これに限定されることなく、リンク機構は、シャフトには左・右ネジを螺刻したネジ軸部を有し、少なくとも1対を構成するスライダ部には、一方又は他方のネジ軸部に螺合してシャフトの軸線周りの回動に従って接近離反するナット部材をそれぞれ有する他方のネジ軸部に螺合してシャフトの軸線周りの回動に従って接近離反するナット部材を有していてもよい。
【0041】
上記実施形態では、クランク機構8について説明したが、これに限定されることなく、シャフト及びシャフトに固定されているスリーブとスリーブとが相対的に進退する別の機構であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 基台
2 底板
3 中子
6 リンク板
8 クランク機構
11 小口板
12 支柱
13 水平バー
21 突起部
22 垂下板
61 ローラ
62 回転軸
63,64 段差部
65 係止具
71 シャフト
72,73 スリーブ
81 揺動リンク
82 回動リンク
83 ハンドル
84 連結板
85 ピン
86 枢軸
100 コンクリート成形製品
101 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板及び周囲の枠板で形成する型枠空間内に中子が配設されるコンクリート成型製品用の型枠において、底板には、コンクリート成型製品の開口部を形成する突起部が上面に形成されており、コンクリート成型製品と周囲の枠板と間に隙間を形成した後、中子及びコンクリート成型製品の垂直方向の位置を維持したまま、底板の突起部がコンクリート成型製品と干渉しない位置まで底板を下降させ、コンクリート成形製品を水平方向へ中子から抜き取ることを特徴とするコンクリート成型製品の製造方法。
【請求項2】
底板及び周囲の枠板で形成する型枠空間内に中子が配設されるコンクリート成型製品用の型枠において、底板には、コンクリート成型製品の開口部を形成する突起部が上面に形成されており、この底板が垂直方向に昇降可能となっていることを特徴とするコンクリート成型製品の製造装置。
【請求項3】
底板の昇降は底板の下方の基台に設けられているリンク機構で行われ、このリンク機構は、底板の垂下板を当接支承するローラを有し基台に回動可能に軸支されているリンク板を備え、
リンク板が回動することによってローラの垂直方向の位置が変わり、ローラが当接支承している底板が垂直方向に昇降するようになっていることを特徴とする請求項2に記載のコンクリート成型製品の製造装置。
【請求項4】
リンク機構は、リンク板の回動範囲を制限する回動制限手段を有することを特徴とする請求項3に記載のコンクリート成形製品の製造装置。
【請求項5】
リンク機構は、
シャフトと、
このシャフトにスリーブが摺動自在に嵌挿されておりリンク板と連結されている少なくとも1個のスライダ部と、
シャフトにスリーブが固定されており、リンク板と連結されている少なくとも1個のスライダ部と、
スリーブとシャフトとの間に介在する進退機構とをさらに有し、
スリーブとシャフトの進退によってリンク板が回動し、ローラに当接支承されている底板が垂直方向に昇降するようになっていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のコンクリート成型製品の製造装置。
【請求項6】
シャフトには左・右ネジを螺刻したネジ軸部を有し、少なくとも1対を構成するスライダ部には、一方又は他方のネジ軸部に螺合してシャフトの軸線周りの回動に従って接近離反するナット部材をそれぞれ有することを特徴とする請求項5に記載のコンクリート成型製品の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−66500(P2012−66500A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213576(P2010−213576)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(592011516)鶴田製作株式会社 (5)
【Fターム(参考)】