コンクリート打設用スペーサと、そのスペーサを用いたコンクリート構造物
【課題】 型枠内の鉄筋を固定し、鉄筋と型枠間のコンクリートのかぶり厚を一定にするスペーサを提供せんとする。
【解決手段】 型枠内面と鉄筋間のコンクリートのかぶり厚を一定にするために、縦横双方の鉄筋をそれぞれ嵌合して固定する固定部と、該固定部と一体形成して前記型枠内面と間を一定にする間隔保持部とを一体に形成したスペーサと、そのスペーサを用いて型枠内にコンクリートを打設したコンクリート構造物。
【解決手段】 型枠内面と鉄筋間のコンクリートのかぶり厚を一定にするために、縦横双方の鉄筋をそれぞれ嵌合して固定する固定部と、該固定部と一体形成して前記型枠内面と間を一定にする間隔保持部とを一体に形成したスペーサと、そのスペーサを用いて型枠内にコンクリートを打設したコンクリート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリートを製造するために用いるスペーサと、そのスペーサを用いたコンクリート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
壁、柱又は梁などのRCコンクリートを作る場合に、型枠内に配筋してからコンクリートを打つ際に、そのコンクリートの表面から鉄筋までのかぶり厚を一定にするために、特許文献1のコンクリート打設用スペーサがある。
【0003】
この特許文献の発明は、鉄筋10aにスペーサ1の着脱固定部2を固定し、その着脱固定部2から軸体8を伸ばし、その先端にある脚部9を型枠11の内面に当接するスペーサ1である。また、これと同様に、添付の図15に示すスペーサの中心A−1に図17の左のように壁の横筋Hとクロスした位置にある縦筋Bのみを挟んで、その周縁を型枠Dに当接するものが用いられたものが知られている。さらに、図15のスペーサを図18に示す梁に使用する場合、縦筋Eの周囲にあるスターラップ筋FのみにスペーサAを挟持して型枠Gに当接して施工するものも知られている。さらに、やはり図15のスペーサを、図16に示す柱の主筋Iの内側にクロスするフープ筋Jに嵌入して型枠Kに当接して使用する場合も同様に知られている。
【0004】
その他に、特許文献2は、スペーサの上下のコーナ横筋1にキャップ6を有する連結縦筋2,3からなるものを引っ掛けて、柱型枠内の主筋にクロスしたフープ筋a,・・・anに番線等で結縛するものもある。
【0005】
しかしながら、特許文献1のスペーサの一方は着脱固定部2を固定しているが、他方の脚部9が型枠11に当接しているだけであるために、それを補うために図1に示すように相対する型枠11間にセパレータ12を設置している。そのために、数多くの材料を用いて、スペーサ1の他にセパレータも設置しなければならないという工程が必要となり、また脚部9がいわゆる鴨足腹状に広い面で型枠11に接しているために打設表面が美しくなく、なによりも縦筋10aと横筋10bが縦横筋を各別に結束筋により結束しているためにコンクリート打設終了後までに結束筋が切れて縦筋10aが型枠11に近づいてかぶり厚を小さくするという欠点がある。
【0006】
また、図15のセパレータを用いた壁(図17)や梁(図18)の場合、配筋B,Fとクロスした関係のスペーサAに対してコンクリートを型枠D,G内に打設するが、図17と図18の左(打設前)から右(打設後)に示すように、スペーサA上に骨材C−1、C−2が引っ掛かりコンクリートの打設不良(ジャンカ)になる虞れがある。
【0007】
さらに、図15のセパレータを用いた柱(図16)の場合では、スペーサAがコンクリート打設方向と並行しているために、前記したようなコンクリートの充填不足は生じないが、主筋Iにクロスしたフープ筋Jとの結束筋が切れることで、図16の左図(打設前)から右図(打設後)のようになり、同図の左側の主筋Iに見られるように当初の主筋Iの位置よりも左側の型枠Kに近づくことで、かぶり厚が小さくなってしまうという不都合が生じる。
【0008】
そしてまた、特許文献2の主筋用スペーサは、図3,4に示すように、コーナ用スペーサを上下2段のフープ筋a,・・・anに取り付けるために上下のフープ筋の間隙を一定にしなければ、取り付けに段差が生じて取り付けが困難になるだけでなく、型枠Bとのかぶり厚を一定にできないという不都合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−196153号公報
【特許文献2】特開平08−120832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点を解決せんとするものであり、型枠内の鉄筋の交差部において、縦横に交差したそれぞれの鉄筋を結束線でなく、弾性を有する固定部で縦横筋の双方に嵌合できるようにし、かつ型枠に対して点状に当接して鉄筋までのかぶり厚を一定に保持するスペーサと、そのスペーサを取り付けたコンクリート構造物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は、型枠の内面から縦横に交差する鉄筋までのコンクリートのかぶり厚の距離を一定にするスペーサであって、該スペーサが、前記縦横双方の鉄筋にそれぞれ嵌合する固定部と、該固定部と一体成形して前記型枠内面に点接状態で当接してコンクリート表面から前記鉄筋までのかぶり厚を一定にする間隔保持部とからなることを特徴とするコンクリート打設用スペーサにある。
【0012】
前記スペーサの固定部を、直角にクロスした縦横の鉄筋に、嵌合可能に弾性を有する鋼製のものとし、間隔保持部を前記線状体の端部を埋設した合成樹脂の一体成形品として仕上げることができる。
【0013】
前記スペーサの固定部を、直角にクロスした縦横の鉄筋に、嵌合可能に弾性を有するもののうち型枠より遠方の鉄筋を嵌合可能に形成した鋼製とし、前記直角にクロスした縦横の鉄筋のうち型枠側の鉄筋に嵌合可能に形成した合成樹脂製として、前記型枠に当接する間隔保持部の合成樹脂製と一体成形したものとすることもできる。
【0014】
本発明の前記間隔保持部の外面にかぶり厚を確認する直線状に配置した複数の突起を設けることができる。
【0015】
本発明の次の要旨は、型枠内で縦横の鉄筋に固定する固定部と、型枠の内面に当接してコンクリートのかぶり厚を一定にする間隔保持部とを一体成形したものからなるスペーサを、前記固定部で縦横双方の鉄筋に固定するとともに、前記間隔保持部の先端を前記型枠内面に点接状態で当接し、前記型枠内にコンクリートを打設したコンクリート構造物にある。
【0016】
ここで、前記コンクリート構造物を壁とし、そのために縦の鉄筋を縦筋とし、横の鉄筋を横筋としたものである。
【0017】
また、前記コンクリート構造物を柱とし、そのために縦の鉄筋を主筋とし、横の鉄筋をフープ筋としたものである。
【0018】
さらに、コンクリート構造物を梁とし、そのために横の鉄筋を主筋とし、縦の鉄筋をスターラップ筋としたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、型枠から鉄筋までのかぶり厚を一定にするスペーサであって、そのスペーサが縦または横の交差する双方の鉄筋に嵌合する固定部と、コンクリート表面に点状態で当接してから鉄筋までのかぶり厚を一定にする間隔保持部とを一体成形することにより、前記固定部で鉄筋に嵌合することで、予め型枠までの距離を合わせた間隔保持部を型枠に当接することにより、生産が容易で、しかも組み立て作業の効率を良くしたコンクリート打設用スペーサと、そのスペーサを用いたコンクリートの構造物である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のスペーサの斜視図である。
【図2】図1とは別のスペーサの斜視図である。
【図3】壁に、図1のスペーサを用いた断面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】壁に、図2のスペーサを用いた断面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】柱に、図1のスペーサを用いた断面図である。
【図8】図7の平面図である。
【図9】柱に、図2のスペーサを用いた断面図である。
【図10】図9の平面図である。
【図11】梁に、図1のスペーサを用いた断面図である。
【図12】図11の平面図である。
【図13】梁に、図2のスペーサを用いた断面図である。
【図14】図13の平面図である。
【図15】従来のスペーサの平面図である。
【図16】図15のスペーサを柱に用いた場合のコンクリートの打設前後における概略断面図である。
【図17】図15のスペーサを壁に用いた場合のコンクリートの打設前後における概略断面図である。
【図18】図15のスペーサを梁に用いた場合のコンクリートの打設前後における概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
請求項1は、型枠内面と鉄筋までのかぶり厚を一定にするスペーサについて、鉄筋側に縦筋と横筋の双方に嵌合する固定部を有し、その固定部から前記かぶり厚を一定にする長さの間隔保持部を一体成形するものである。
【0022】
請求項2と3は、前者が縦筋と横筋の双方への固定部を鋼製のものとし、これと間隔保持部を合成樹脂製で一体成形した形態とし、後者を前記縦筋と横筋のうち型枠から遠い方の鉄筋に嵌合する固定部を鋼製とし、残りの型枠から近い方の鉄筋に嵌合する固定部と、前記間隔保持部を合成樹脂等で一体成形したものとしたものに分けられる。
【0023】
請求項4は、前記かぶり厚を一定にする合成樹脂製の外面に複数の突起を設けることで、かぶり厚の長さを確認できるようにした。
【0024】
請求項5は、前記間隔保持部の先端を壁、柱、又は梁の内壁に当接し、他端の固定部を縦・横鉄筋の双方に嵌合して用いるスペーサを、コンクリートを型枠内に打設して使用したコンクリート構造物である。
【0025】
そして、請求項6は、縦と横の鉄筋を型枠内に建込んだ壁のコンクリート構造物に、スペーサを設置したものである。
【0026】
また、請求項7は、縦の鉄筋を主筋とし、横の鉄筋をフープ筋と称する柱のコンクリート構造物に、スペーサを用いたものである。
【0027】
さらに、請求項8は、縦の鉄筋を主筋とし、その外周に巻回したスターラップ筋を梁に用いたコンクリート構造物である。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明のスペーサ20−1の一実施例の斜視図であり、そのスペーサ20−1の固定部21が、縦横にクロスする鉄筋のうち型枠側の鉄筋に弾性のC形筒状鋼材21−1を嵌合可能にし、かつ同筒状鋼材21−1をやはり弾性の略コブラ状の棒状鋼材21の上部21−2と溶接したもので、そのコブラ状棒状鋼材の下部曲折部21−3を前記クロスする鉄筋のうち型枠から遠い側の鉄筋を嵌入固定できるようにする。
また、前記略コブラ状の棒状鋼材21の上端部を略人参形の合成樹脂で埋設して、間隔保持部22を成形して、前記固定部21とともに、スペーサ20−1としている。
【0029】
図2は、図1と別のスペーサ20−2の実施例であり、互いの違う点は図1がC形筒状鋼材21−1であるのに対し、図2の実施例ではC形筒体樹脂21−1として、前記合成樹脂の間隔保持部22と同じ枠で一体にしたことにある。
なお、図1と図2のスペーサのC形筒状鋼材(樹脂材)の型枠側から型枠内面までとなる間隔保持材22の長さは、設計基準上の違いにより40m/m〜95m/mのものがある。
【0030】
つぎに、前記2種のスペーサ20−1,20−2を、壁、柱、及び梁に、それぞれ応用した例を示す。
この第1の実施例では、壁の異形縦筋30と異形横筋40が型枠50の中に直角にクロスして組み込まれている。縦筋30には、図4(平面図)の鎖線で示すように、C形筒状鋼材21−1を縦筋30に拡開して押し込んでから、そのスペーサ20−1を矢印の時計方向に廻し、下部曲折部21−3を横筋40に押し込んで嵌合することにより、スペーサ20−1の間隔保持部22を型枠(ベニヤ板)50の内型に当接して取り付ける(図3=断面図、図4)。
なお、横にした棒状鋼材21の下部曲折部21−3は、棒状鋼材21の下部を折り曲げて横筋40に嵌め込んだもので、そこから横筋40上に沿って中間部が伸び、その先部は間隔保持部22の基部に埋設して一体に形成している。また、棒状鋼材21の上部は縦筋30に嵌合するC形筒状の鋼材21−1を溶接している。
【0031】
第2の実施例は、図2のスペーサ20−2を、壁の縦筋30と横筋40へ、実施例1と同様に取り付けたものであるが、図5(断面図)と図6(平面図)で示すように、前記実施例であるスペーサのC形筒状鋼材21−1に代えて、C形筒状樹脂21−1’としている点が相違している。スペーサ20−2の縦横筋30,40への取付方法は、前記実施例と同様である。
【0032】
第3の実施例は、柱の主筋60とフープ筋70が型枠(ベニヤ)80の中に組み込まれたものである。
主筋60とフープ筋70の直径は柱の大きさによって違いがあるが、スペーサ20−1の構造及び取付方法は壁の縦横筋の場合と同じである(図7、図8)。
また、第4の実施例としての図9(断面図)と図10(平面図)は(C形筒状樹脂として)スペーサ20−2と一体成形したものであり、柱への取付方法は前述のものと同様である。
【0033】
第5の実施例は、梁の主筋110とスターラップ筋90が型枠(ベニヤ)100の中に組み込まれたものである。
主筋110とスターラップ筋90の径は梁の大きさによって違うが、スペーサ20−1,20−2の構造及び取付方法は前記した壁や柱と同じである(図11=断面図、図12=平面図)。
【0034】
第6の実施例である図13(断面図)、図14(平面図)は、梁の主筋110とスターラップ筋90へスペーサ20−2を用いて前記同様の取付方法で取り付けたものである。
なお、22−1は、かぶり厚を外から確認する目印としての突起であり、普通直線状を一定間隔で突起している。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のスペーサとそのスペーサを用いた壁、柱、及び梁の鉄筋コンクリートの構造物の製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
20−1,20−2 スペーサ
21’ 棒状鋼材
21−1 C形筒状鋼材(C形筒状樹脂)
21−2 棒状鋼材の上部
21−3 下部曲折部
22 間隔保持部
22−1 突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリートを製造するために用いるスペーサと、そのスペーサを用いたコンクリート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
壁、柱又は梁などのRCコンクリートを作る場合に、型枠内に配筋してからコンクリートを打つ際に、そのコンクリートの表面から鉄筋までのかぶり厚を一定にするために、特許文献1のコンクリート打設用スペーサがある。
【0003】
この特許文献の発明は、鉄筋10aにスペーサ1の着脱固定部2を固定し、その着脱固定部2から軸体8を伸ばし、その先端にある脚部9を型枠11の内面に当接するスペーサ1である。また、これと同様に、添付の図15に示すスペーサの中心A−1に図17の左のように壁の横筋Hとクロスした位置にある縦筋Bのみを挟んで、その周縁を型枠Dに当接するものが用いられたものが知られている。さらに、図15のスペーサを図18に示す梁に使用する場合、縦筋Eの周囲にあるスターラップ筋FのみにスペーサAを挟持して型枠Gに当接して施工するものも知られている。さらに、やはり図15のスペーサを、図16に示す柱の主筋Iの内側にクロスするフープ筋Jに嵌入して型枠Kに当接して使用する場合も同様に知られている。
【0004】
その他に、特許文献2は、スペーサの上下のコーナ横筋1にキャップ6を有する連結縦筋2,3からなるものを引っ掛けて、柱型枠内の主筋にクロスしたフープ筋a,・・・anに番線等で結縛するものもある。
【0005】
しかしながら、特許文献1のスペーサの一方は着脱固定部2を固定しているが、他方の脚部9が型枠11に当接しているだけであるために、それを補うために図1に示すように相対する型枠11間にセパレータ12を設置している。そのために、数多くの材料を用いて、スペーサ1の他にセパレータも設置しなければならないという工程が必要となり、また脚部9がいわゆる鴨足腹状に広い面で型枠11に接しているために打設表面が美しくなく、なによりも縦筋10aと横筋10bが縦横筋を各別に結束筋により結束しているためにコンクリート打設終了後までに結束筋が切れて縦筋10aが型枠11に近づいてかぶり厚を小さくするという欠点がある。
【0006】
また、図15のセパレータを用いた壁(図17)や梁(図18)の場合、配筋B,Fとクロスした関係のスペーサAに対してコンクリートを型枠D,G内に打設するが、図17と図18の左(打設前)から右(打設後)に示すように、スペーサA上に骨材C−1、C−2が引っ掛かりコンクリートの打設不良(ジャンカ)になる虞れがある。
【0007】
さらに、図15のセパレータを用いた柱(図16)の場合では、スペーサAがコンクリート打設方向と並行しているために、前記したようなコンクリートの充填不足は生じないが、主筋Iにクロスしたフープ筋Jとの結束筋が切れることで、図16の左図(打設前)から右図(打設後)のようになり、同図の左側の主筋Iに見られるように当初の主筋Iの位置よりも左側の型枠Kに近づくことで、かぶり厚が小さくなってしまうという不都合が生じる。
【0008】
そしてまた、特許文献2の主筋用スペーサは、図3,4に示すように、コーナ用スペーサを上下2段のフープ筋a,・・・anに取り付けるために上下のフープ筋の間隙を一定にしなければ、取り付けに段差が生じて取り付けが困難になるだけでなく、型枠Bとのかぶり厚を一定にできないという不都合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−196153号公報
【特許文献2】特開平08−120832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点を解決せんとするものであり、型枠内の鉄筋の交差部において、縦横に交差したそれぞれの鉄筋を結束線でなく、弾性を有する固定部で縦横筋の双方に嵌合できるようにし、かつ型枠に対して点状に当接して鉄筋までのかぶり厚を一定に保持するスペーサと、そのスペーサを取り付けたコンクリート構造物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は、型枠の内面から縦横に交差する鉄筋までのコンクリートのかぶり厚の距離を一定にするスペーサであって、該スペーサが、前記縦横双方の鉄筋にそれぞれ嵌合する固定部と、該固定部と一体成形して前記型枠内面に点接状態で当接してコンクリート表面から前記鉄筋までのかぶり厚を一定にする間隔保持部とからなることを特徴とするコンクリート打設用スペーサにある。
【0012】
前記スペーサの固定部を、直角にクロスした縦横の鉄筋に、嵌合可能に弾性を有する鋼製のものとし、間隔保持部を前記線状体の端部を埋設した合成樹脂の一体成形品として仕上げることができる。
【0013】
前記スペーサの固定部を、直角にクロスした縦横の鉄筋に、嵌合可能に弾性を有するもののうち型枠より遠方の鉄筋を嵌合可能に形成した鋼製とし、前記直角にクロスした縦横の鉄筋のうち型枠側の鉄筋に嵌合可能に形成した合成樹脂製として、前記型枠に当接する間隔保持部の合成樹脂製と一体成形したものとすることもできる。
【0014】
本発明の前記間隔保持部の外面にかぶり厚を確認する直線状に配置した複数の突起を設けることができる。
【0015】
本発明の次の要旨は、型枠内で縦横の鉄筋に固定する固定部と、型枠の内面に当接してコンクリートのかぶり厚を一定にする間隔保持部とを一体成形したものからなるスペーサを、前記固定部で縦横双方の鉄筋に固定するとともに、前記間隔保持部の先端を前記型枠内面に点接状態で当接し、前記型枠内にコンクリートを打設したコンクリート構造物にある。
【0016】
ここで、前記コンクリート構造物を壁とし、そのために縦の鉄筋を縦筋とし、横の鉄筋を横筋としたものである。
【0017】
また、前記コンクリート構造物を柱とし、そのために縦の鉄筋を主筋とし、横の鉄筋をフープ筋としたものである。
【0018】
さらに、コンクリート構造物を梁とし、そのために横の鉄筋を主筋とし、縦の鉄筋をスターラップ筋としたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、型枠から鉄筋までのかぶり厚を一定にするスペーサであって、そのスペーサが縦または横の交差する双方の鉄筋に嵌合する固定部と、コンクリート表面に点状態で当接してから鉄筋までのかぶり厚を一定にする間隔保持部とを一体成形することにより、前記固定部で鉄筋に嵌合することで、予め型枠までの距離を合わせた間隔保持部を型枠に当接することにより、生産が容易で、しかも組み立て作業の効率を良くしたコンクリート打設用スペーサと、そのスペーサを用いたコンクリートの構造物である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のスペーサの斜視図である。
【図2】図1とは別のスペーサの斜視図である。
【図3】壁に、図1のスペーサを用いた断面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】壁に、図2のスペーサを用いた断面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】柱に、図1のスペーサを用いた断面図である。
【図8】図7の平面図である。
【図9】柱に、図2のスペーサを用いた断面図である。
【図10】図9の平面図である。
【図11】梁に、図1のスペーサを用いた断面図である。
【図12】図11の平面図である。
【図13】梁に、図2のスペーサを用いた断面図である。
【図14】図13の平面図である。
【図15】従来のスペーサの平面図である。
【図16】図15のスペーサを柱に用いた場合のコンクリートの打設前後における概略断面図である。
【図17】図15のスペーサを壁に用いた場合のコンクリートの打設前後における概略断面図である。
【図18】図15のスペーサを梁に用いた場合のコンクリートの打設前後における概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
請求項1は、型枠内面と鉄筋までのかぶり厚を一定にするスペーサについて、鉄筋側に縦筋と横筋の双方に嵌合する固定部を有し、その固定部から前記かぶり厚を一定にする長さの間隔保持部を一体成形するものである。
【0022】
請求項2と3は、前者が縦筋と横筋の双方への固定部を鋼製のものとし、これと間隔保持部を合成樹脂製で一体成形した形態とし、後者を前記縦筋と横筋のうち型枠から遠い方の鉄筋に嵌合する固定部を鋼製とし、残りの型枠から近い方の鉄筋に嵌合する固定部と、前記間隔保持部を合成樹脂等で一体成形したものとしたものに分けられる。
【0023】
請求項4は、前記かぶり厚を一定にする合成樹脂製の外面に複数の突起を設けることで、かぶり厚の長さを確認できるようにした。
【0024】
請求項5は、前記間隔保持部の先端を壁、柱、又は梁の内壁に当接し、他端の固定部を縦・横鉄筋の双方に嵌合して用いるスペーサを、コンクリートを型枠内に打設して使用したコンクリート構造物である。
【0025】
そして、請求項6は、縦と横の鉄筋を型枠内に建込んだ壁のコンクリート構造物に、スペーサを設置したものである。
【0026】
また、請求項7は、縦の鉄筋を主筋とし、横の鉄筋をフープ筋と称する柱のコンクリート構造物に、スペーサを用いたものである。
【0027】
さらに、請求項8は、縦の鉄筋を主筋とし、その外周に巻回したスターラップ筋を梁に用いたコンクリート構造物である。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明のスペーサ20−1の一実施例の斜視図であり、そのスペーサ20−1の固定部21が、縦横にクロスする鉄筋のうち型枠側の鉄筋に弾性のC形筒状鋼材21−1を嵌合可能にし、かつ同筒状鋼材21−1をやはり弾性の略コブラ状の棒状鋼材21の上部21−2と溶接したもので、そのコブラ状棒状鋼材の下部曲折部21−3を前記クロスする鉄筋のうち型枠から遠い側の鉄筋を嵌入固定できるようにする。
また、前記略コブラ状の棒状鋼材21の上端部を略人参形の合成樹脂で埋設して、間隔保持部22を成形して、前記固定部21とともに、スペーサ20−1としている。
【0029】
図2は、図1と別のスペーサ20−2の実施例であり、互いの違う点は図1がC形筒状鋼材21−1であるのに対し、図2の実施例ではC形筒体樹脂21−1として、前記合成樹脂の間隔保持部22と同じ枠で一体にしたことにある。
なお、図1と図2のスペーサのC形筒状鋼材(樹脂材)の型枠側から型枠内面までとなる間隔保持材22の長さは、設計基準上の違いにより40m/m〜95m/mのものがある。
【0030】
つぎに、前記2種のスペーサ20−1,20−2を、壁、柱、及び梁に、それぞれ応用した例を示す。
この第1の実施例では、壁の異形縦筋30と異形横筋40が型枠50の中に直角にクロスして組み込まれている。縦筋30には、図4(平面図)の鎖線で示すように、C形筒状鋼材21−1を縦筋30に拡開して押し込んでから、そのスペーサ20−1を矢印の時計方向に廻し、下部曲折部21−3を横筋40に押し込んで嵌合することにより、スペーサ20−1の間隔保持部22を型枠(ベニヤ板)50の内型に当接して取り付ける(図3=断面図、図4)。
なお、横にした棒状鋼材21の下部曲折部21−3は、棒状鋼材21の下部を折り曲げて横筋40に嵌め込んだもので、そこから横筋40上に沿って中間部が伸び、その先部は間隔保持部22の基部に埋設して一体に形成している。また、棒状鋼材21の上部は縦筋30に嵌合するC形筒状の鋼材21−1を溶接している。
【0031】
第2の実施例は、図2のスペーサ20−2を、壁の縦筋30と横筋40へ、実施例1と同様に取り付けたものであるが、図5(断面図)と図6(平面図)で示すように、前記実施例であるスペーサのC形筒状鋼材21−1に代えて、C形筒状樹脂21−1’としている点が相違している。スペーサ20−2の縦横筋30,40への取付方法は、前記実施例と同様である。
【0032】
第3の実施例は、柱の主筋60とフープ筋70が型枠(ベニヤ)80の中に組み込まれたものである。
主筋60とフープ筋70の直径は柱の大きさによって違いがあるが、スペーサ20−1の構造及び取付方法は壁の縦横筋の場合と同じである(図7、図8)。
また、第4の実施例としての図9(断面図)と図10(平面図)は(C形筒状樹脂として)スペーサ20−2と一体成形したものであり、柱への取付方法は前述のものと同様である。
【0033】
第5の実施例は、梁の主筋110とスターラップ筋90が型枠(ベニヤ)100の中に組み込まれたものである。
主筋110とスターラップ筋90の径は梁の大きさによって違うが、スペーサ20−1,20−2の構造及び取付方法は前記した壁や柱と同じである(図11=断面図、図12=平面図)。
【0034】
第6の実施例である図13(断面図)、図14(平面図)は、梁の主筋110とスターラップ筋90へスペーサ20−2を用いて前記同様の取付方法で取り付けたものである。
なお、22−1は、かぶり厚を外から確認する目印としての突起であり、普通直線状を一定間隔で突起している。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のスペーサとそのスペーサを用いた壁、柱、及び梁の鉄筋コンクリートの構造物の製造方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0036】
20−1,20−2 スペーサ
21’ 棒状鋼材
21−1 C形筒状鋼材(C形筒状樹脂)
21−2 棒状鋼材の上部
21−3 下部曲折部
22 間隔保持部
22−1 突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠の内面から縦横に交差する鉄筋までのコンクリートのかぶり厚の距離を一定にするスペーサであって、
該スペーサが、前記縦横双方の鉄筋にそれぞれ嵌合する固定部と、該固定部と一体成形して前記型枠内面に点接状態で当接してコンクリート表面から前記鉄筋までのかぶり厚を一定にする間隔保持部とからなることを特徴とするコンクリート打設用スペーサ。
【請求項2】
前記スペーサの固定部が、前記縦横直角に配筋したそれぞれの鉄筋に嵌合可能に形成した鋼製からなり、前記間隔保持部が前記鋼製と一体に形成した合成樹脂製である請求項1に記載のコンクリート打設用スペーサ。
【請求項3】
前記スペーサの固定部が、直角にクロスした縦横の鉄筋のうち型枠より遠方の鉄筋を嵌合可能に形成した鋼製とし、前記直角にクロスした縦横の鉄筋のうち型枠側の鉄筋に嵌合可能に形成するものを前記型枠に当接する間隔保持部とともに合成樹脂製で一体成形した請求項1に記載のコンクリート打設用スペーサ。
【請求項4】
前記合成樹脂製の間隔保持部の外面に前記かぶり厚を確認する複数の突起を所定間隔に設けた請求項2または3に記載のコンクリート打設用スペーサ。
【請求項5】
型枠内で縦横の鉄筋に固定する固定部と、型枠の内面に当接してコンクリートのかぶり厚を一定にする間隔保持部とを一体成形したものからなるスペーサを、前記固定部で縦横双方の鉄筋に固定するとともに、前記間隔保持部の先端を前記型枠内面に点接状態で当接し、前記型枠内にコンクリートを打設したコンクリート構造物。
【請求項6】
前記縦横の鉄筋に固定して型枠に当接するスペーサを、前記縦の鉄筋を縦筋とし、前記横の鉄筋を横筋とする壁に用いたことを特徴とする請求項5に記載のコンクリート構造物。
【請求項7】
前記縦横の鉄筋に固定した型枠に当接するスペーサを、前記縦の鉄筋を主筋とし、前記横の鉄筋をフープ筋とする柱に用いたことを特徴とする請求項5に記載のコンクリート構造物。
【請求項8】
前記縦横の鉄筋に固定した型枠に当接するスペーサを、前記横の鉄筋を主筋とし、前記縦の鉄筋を前記主筋の外周に巻回したスターラップ筋とする梁に用いたことを特徴とする請求項5に記載のコンクリート構造物。
【請求項1】
型枠の内面から縦横に交差する鉄筋までのコンクリートのかぶり厚の距離を一定にするスペーサであって、
該スペーサが、前記縦横双方の鉄筋にそれぞれ嵌合する固定部と、該固定部と一体成形して前記型枠内面に点接状態で当接してコンクリート表面から前記鉄筋までのかぶり厚を一定にする間隔保持部とからなることを特徴とするコンクリート打設用スペーサ。
【請求項2】
前記スペーサの固定部が、前記縦横直角に配筋したそれぞれの鉄筋に嵌合可能に形成した鋼製からなり、前記間隔保持部が前記鋼製と一体に形成した合成樹脂製である請求項1に記載のコンクリート打設用スペーサ。
【請求項3】
前記スペーサの固定部が、直角にクロスした縦横の鉄筋のうち型枠より遠方の鉄筋を嵌合可能に形成した鋼製とし、前記直角にクロスした縦横の鉄筋のうち型枠側の鉄筋に嵌合可能に形成するものを前記型枠に当接する間隔保持部とともに合成樹脂製で一体成形した請求項1に記載のコンクリート打設用スペーサ。
【請求項4】
前記合成樹脂製の間隔保持部の外面に前記かぶり厚を確認する複数の突起を所定間隔に設けた請求項2または3に記載のコンクリート打設用スペーサ。
【請求項5】
型枠内で縦横の鉄筋に固定する固定部と、型枠の内面に当接してコンクリートのかぶり厚を一定にする間隔保持部とを一体成形したものからなるスペーサを、前記固定部で縦横双方の鉄筋に固定するとともに、前記間隔保持部の先端を前記型枠内面に点接状態で当接し、前記型枠内にコンクリートを打設したコンクリート構造物。
【請求項6】
前記縦横の鉄筋に固定して型枠に当接するスペーサを、前記縦の鉄筋を縦筋とし、前記横の鉄筋を横筋とする壁に用いたことを特徴とする請求項5に記載のコンクリート構造物。
【請求項7】
前記縦横の鉄筋に固定した型枠に当接するスペーサを、前記縦の鉄筋を主筋とし、前記横の鉄筋をフープ筋とする柱に用いたことを特徴とする請求項5に記載のコンクリート構造物。
【請求項8】
前記縦横の鉄筋に固定した型枠に当接するスペーサを、前記横の鉄筋を主筋とし、前記縦の鉄筋を前記主筋の外周に巻回したスターラップ筋とする梁に用いたことを特徴とする請求項5に記載のコンクリート構造物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−104205(P2013−104205A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247820(P2011−247820)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(511275083)株式会社災防具 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(511275083)株式会社災防具 (1)
【Fターム(参考)】
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