説明

コンクリート改質処理確認方法

【課題】 施工対象となるコンクリート表面がコンクリート改質剤により処理されているか否かを客観的に確認する方法の提供。
【解決手段】 コンクリート改質剤がコンクリート表面に塗布されたか否かを判定するコンクリート改質処理確認方法において、判定対象コンクリート表面に水を接触させてpHを測定する判定対象コンクリートpH測定工程を含むことを特徴とする、コンクリート改質処理確認方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表面の耐久性を高めるため等に施されるコンクリート改質処理が施工後、第三者によって当該施工がされたか否かを客観的に確認する、コンクリート改質処理確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは本来、非常に耐久性が高く、耐用年数も50年〜100年と云われて来たが、コンクリートの劣化が予想以上に早い事が近年判明した。特に、凍結融解や塩害等によるコンクリートの劣化及び複合劣化が原因となり、想定耐用年数まで持たない構造物の出現や構造物からのコンクリート片剥離による二次災害の発生が懸念される事態となり、劣化要因の原因究明と様々な対策が講じられてきた。具体的には、新設コンクリートを構成するセメントの組成変更や単位水量の低減、骨材の成分指定、既設コンクリートについては、劣化表面をポリマーセメントで被覆する工法、珪酸質系防水剤配合モルタルで被覆する工法、有機系樹脂やセメント系、水ガラス系材料による注入・浸透・被膜塗装工法などが提案されている。
【0003】
また、新設及び既設コンクリート構造物の表面に塗布するだけという比較的簡単な工法で、凍結融解や塩害による劣化やこれらによる複合劣化を防止又は抑止し、且つ表面意匠を変化させないで、(打込み直後のコンクリート表面状況を保持する)コンクリート内部深くまで浸透し、高い耐久性を持つコンクリート改質剤として、リチウムシリケート水溶液に水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等の塩基性成分を配合したコンクリート改質剤が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−44317号公報
【特許文献2】国際公開第2005/082813号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のコンクリート改質剤によれば、表面意匠を変化させないでコンクリート改質処理を行うことができる利点を有しているが、これに伴い施工主から依頼を受けた業者が当該改質処理を行ったか否かが外見上確認出来ないという問題を有していた。そこで、本発明は、施工対象となるコンクリート表面がコンクリート改質剤により処理されているか否かを客観的に確認する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(1)は、コンクリート改質剤がコンクリート表面に塗布されたか否かを判定するコンクリート改質処理確認方法において、
判定対象コンクリート表面に水を接触させてpHを測定する判定対象コンクリートpH測定工程を含むことを特徴とする、コンクリート改質処理確認方法である。
【0007】
本発明(2)は、前記改質剤の塗布されていないコンクリート表面に水を接触させてpHを測定する未処理コンクリートpH測定工程を更に有し、
前記未処理コンクリートpH測定工程により得られた結果と、前記判定対象コンクリートpH測定工程により得られた結果を照らし合わせて、コンクリート改質処理の施工を確認することを特徴とする、前記発明(1)のコンクリート改質処理確認方法である。
【0008】
本発明(3)は、判定対象コンクリート表面の一部に容器に入れた水を密着させて、当該容器内の水の損失量を測定する、判定対象コンクリート表面吸水試験工程を有することを特徴とする前記発明(1)又は(2)のコンクリート改質処理確認方法である。
【0009】
本発明(4)は、前記改質剤の塗布されていないコンクリート表面の一部に容器に入れた水を密着させて、前記容器内の水の損失量を測定する、未処理コンクリート表面吸水試験工程を有することを特徴とする、前記発明(3)のコンクリート改質処理確認方法である。
【0010】
本発明(5)は、コンクリート改質剤がコンクリート表面に塗布されたか否かを判定するコンクリート改質処理確認キットにおいて、
pH6〜8の水と、
pH試験紙と、
を含むことを特徴とするコンクリート改質処理確認キットである。
【0011】
本発明(6)は、側面が開口した容器と
前記容器内と連通しており、前記容器の上部に取り付けられたメスシリンダーとを有する、吸水試験用水容器を含むことを特徴とする、前記発明(5)のコンクリート改質処理確認キットである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コンクリート改質剤が塩基性成分等のpHを変動させる物質を含有しているため、コンクリート改質処理によって、コンクリート表面のpHが通常から変化した値を示すので、当該表面のpHを測定することにより、コンクリート改質処理が行われたか否かを、いつでも誰でも客観的に判断することができる。また、コンクリート自体がアルカリ性を示す場合が有るので、施工前のコンクリート表面のpHと、判定対象コンクリート表面のpHとを比較することによって、コンクリート改質処理が施工されたか否かの判断をより正確に行なうことができる。
【0013】
また、コンクリート表面の吸水試験を行なうことによって、単に改質剤が塗布されたか否かを判定するのみならず、改質剤の性能が十分に発揮されているか否かを確認することができる。即ち、吸水試験を行なうことによって、規定どおり量を使った施工が行なわれているか否かを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、吸水試験用水容器の概略構成図である。
【図2】図2(a)は、コンクリート改質処理を施工したコンクリート表面を水道水で濡らした様子を示す写真であり、図2(b)は、コンクリート改質処理を施工していないコンクリート表面を水道水で濡らした様子を示す写真である。
【図3】図3(a)は、コンクリート改質処理を施工したコンクリート表面のpH測定の様子を示す写真であり、図3(b)は、コンクリート改質処理を施工していないコンクリート表面のpH測定の様子を示す写真である。
【図4】図4は、コンクリート表面の吸水試験の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る確認方法は、コンクリート改質剤がコンクリート表面に塗布されたか否かを判定するコンクリート改質処理判定方法である。また、本発明は、判定対象コンクリート表面に水を接触させてpHを測定する判定対象コンクリートpH測定工程を含むことを特徴とする。このように、コンクリート表面のpHを測定することによって、極めて簡便にコンクリート改質剤が適用されているか否かを判定することができる。
【0016】
判定対象コンクリートpH測定工程
まずは、判定対象コンクリート表面に水を接触させる。コンクリート表面に水を接触させることにより、コンクリート表面に付着したコンクリート改質剤を水中に溶解させて、pHの測定を行うことにより、コンクリート改質処理が行われているか否かを判定する。ここで、コンクリート表面への水の接触方法は、特に限定されないが、コンクリート表面を水で濡らして滞留させる方法や、特に、天井面や壁面などの水の滞留が難しい場所では、紙や布などを使用して水と接触させる方法であってもよい。
【0017】
判定対象コンクリートpH測定工程において、判定対象コンクリート表面と接触させる水は、特に限定されないが、例えば、純水や、水道水等のpH6〜8のpH7付近の水が好適である。あらかじめ、使用する水のpHを測定して、高いアルカリ性を示すpHの水を使用しないことが好適である。
【0018】
判定対象コンクリートpH測定工程における、pH測定手段は、特に限定されないが、例えば、リトマス試験紙、全域pH試験紙などのpH試験紙、pH感受性色素、pHメーター等が挙げられる。これらの中でも、現場での使い勝手から、pH試験紙を使用することが好適である。
【0019】
pH試験紙を用いた場合、先述のコンクリート表面と水との接触において、天井面などの水の滞留が難しい場所では、紙や布などを使って試験紙を抑えてpHを測定することが好適である。この際、1〜2分間抑えることが好適である。
【0020】
未処理コンクリートpH測定工程
本発明においては、改質剤の塗布されていないコンクリート表面に水を接触させてpHを測定する未処理コンクリートpH測定工程を更に有することが好適である。当該工程により、未処理のコンクリート表面のpHと判定対象コンクリート表面のpHとを比較することによって、コンクリート改質処理がなされたか否かをより正確に判定することができる。例えば、非常に極端なアルカリ性を有する改質剤であれば、判定対象のpHのみを測定すれば、改質処理がなされたか否かは容易に判断が可能かもしれないが、中性域に近いpHを有するコンクリート改質剤を用いた場合には、処理対象となるコンクリートそのものに含まれるアルカリ成分によってpHがアルカリよりに傾き判別し難くなる可能性がある。このため、未処理のコンクリート表面のpHと、判定対象のコンクリート表面を比較してpHの相違を確認することが好適である。
【0021】
判定対象コンクリート表面吸水試験工程
判定対象コンクリート表面吸水試験工程においては、判定対象コンクリート表面の一部に容器に入れた水を密着させて、当該容器内の水の損失量を測定する。ここで、吸水試験はJSEC−K571の試験方法に準じた方法で行なうことが好適である。
【0022】
当該吸水試験工程において使用する容器としては、図1に示す吸水試験用容器を使用することが好適である。吸水試験用容器100は、片側の側面に開口部111を有する容器110と、前記容器内と連通しており、前記容器の上部に設置されたメスシリンダー120とを有する。ここで容器110の開口部側の側面の周縁部には接合代112を有することが好適である。当該接合代を有することにより、壁面との密着性をより高め易くなる。
【0023】
判定対象コンクリート表面吸水試験工程は、より具体的には、判定対象コンクリート表面に前述の吸水試験用容器100を接合代112を利用して、シーリング材により固定する。固定した吸水試験用容器100の上部に設置されたメスシリンダー120の上部から水を投入して、容器の最下部からメスシリンダー内の水面の高さが270mmになるようにする。その後、メスシリンダーの上部にパラフィンフィルム等によって封鎖して、揮発による損失を少なくする。その後、1〜2時間程度放置して容器内の水の損失量を測定する。当該計測を毎日7日間継続して測定することが好適である。当該吸水試験は、改質処理の施工後、28日後以降に当該試験を行うことが好適である。
【0024】
未処理コンクリート表面吸水試験工程
未処理コンクリート表面吸水試験工程においては、未処理コンクリート表面の一部に容器に入れた水を密着させて、当該容器内の水の損失量を測定する。ここで未処理コンクリート表面吸水試験工程では、前記の判定対象コンクリート表面吸水試験工程と同じ試験内容とすることが好適である。このように未処理コンクリート表面吸水試験工程を設けることによって、未処理のデータと比較できるので、より適格に改質処理の効果を評価することができる。
【0025】
本発明において、確認の対象となりえるコンクリート改質剤は、コンクリート表面に適用することによって、pHの変化が生じる改質剤であれば、特に限定されないが、例えば、塩基性成分を含有するコンクリート改質剤が挙げられる。
【0026】
コンクリート改質剤としては、リチウムシリケート水溶液にアルカリ金属イオン源を配合したものを使用することが好適である。このような改質剤を用いることにより吸水性を低くすることが出来るため、吸水試験によりこのような改質剤が塗工されたか否かを判別することも可能である。以下、当該コンクリート改質剤の構成について説明する。尚、本明細書において、「LiO」、「NaO」及び「KO」は、等価酸化物換算表示である。
【0027】
「リチウムシリケート水溶液」とは、コロイダルシリカの一種でアルカリ部分がリチウムであるものをいう。ここで、「水溶液」とは、これら原料成分が完全に溶解していることを意味するのではなく、原料の少なくとも一部が何らかの形態で溶解している状態を指す。したがって、原料の一方(特にSiO)がコロイド状で存在していても、原料の一部が溶解、一部がコロイド状になっていても、これらの状態をすべて包含する。また、液中でこれら原料は、どのような形態で存在していてもよい。
【0028】
本発明に係るリチウムシリケート水溶液は、珪石を水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム水溶液中で煮沸し、得られるコロイダルシリカ中のNa、KをLiに置換して製造可能である。また、市販品としては、例えば、日産化学工業株式会社製のリチウムシリケート45{水溶液100量部に対してSiO 20.0〜21.0重量部、LiO 2.1〜2.4重量部、SiO/LiOモル比 4.5}、リチウムシリケート75{水溶液100量部に対してSiO 20.0〜21.0重量部、LiO 1.2〜1.4重量部、SiO/LiOモル比 7.5}、リチウムシリケート35{水溶液100量部に対してSiO 20.0〜21.0重量部、LiO 2.6〜3.3重量部、SiO/LiOモル比 3.5}が使用可能である。
【0029】
本発明に係る「アルカリ金属イオン源」は、水に添加した際、アルカリ金属イオンをリチウムシリケート水溶液中に存在させるものである限り特に限定されず、例えば、水に添加した際、アルカリ金属イオンに解離する物質、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物又はアルカリ金属塩(例えばアルカリ金属の炭酸塩)等の水溶性のアルカリ金属含有物質や、アルカリ金属自体やアルカリ金属イオン水溶液を挙げることができる。また、「アルカリ金属イオン」も特に限定されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムのいずれでもよい。更に、リチウムシリケート水溶液に配合するアルカリ金属イオン源は、一種でなくともよく、同一のアルカリ金属イオンをリチウムシリケート水溶液中に存在させる複数種(例えば、水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウムとの組み合わせ)であっても、異なるアルカリ金属イオンをリチウムシリケート水溶液中に存在させる複数種(例えば、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの組み合わせ)であってもよい。
【0030】
好適なアルカリ金属イオンは、ナトリウムイオンとカリウムイオンとを組み合わせたものである。特に、ナトリウムイオンに対するカリウムイオンの比が、モル比で0.02〜2.7であることが好適であり、より好適には0.04〜1.8である。尚、この場合、好適なアルカリ金属イオン源は、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの組み合わせである。これらの組み合わせに関し、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの好適な配合比は、重量比(水酸化ナトリウム/水酸化カリウム)で1.3〜2.5(より好適には1.7〜2.2)である。
【0031】
更に、アルカリ金属イオン源の添加量は、モル比(アルカリ金属イオン換算)で、SiOに対して0.08〜1.8であることが好適であり、より好適には0.12〜1.2
である。
【0032】
更には、本発明に係る改質剤は、以下の測定方法1に従って飽和水酸化カルシウム水溶液に添加した場合、白濁ゲル相と透明溶液相の二相構造を形成するものであることが好適である。
【0033】
測定方法1:分光光度計用キュベット(ポリスチレン製。内寸=1×1×4.5cm、容量4.5mL)に濾過した飽和水酸化カルシウム水溶液を2.7mL入れ、改質剤0.3mLをゆっくりと滴下する。混合後、容器をパラフィルムで密封してそのまま静置し、滴下直後から7日目まで観察する。
【0034】
次に、本発明に係るコンクリート改質剤の原液の製造方法について説明する。本発明に係る改質剤の原液は、リチウムシリケート水溶液にアルカリ金属イオン源を配合することにより製造される。尚、順番を変え、アルカリ金属イオン源を水に添加し、その後にリチウムシリケート水溶液を添加した場合には、ゲル化する可能性があることに留意すべきである。
【0035】
ここで、好適なリチウムシリケート水溶液は、該水溶液の全重量に対しSiO2とLi2Oの合計重量が15〜30重量%(より好適には20〜25重量%)となるように、これら成分をモル比(SiO/LiO)3〜8(より好適には4〜5)の割合で水に添加して得られたものである。
【0036】
尚、アルカリ金属イオン源としてアルカリ金属の水酸化物を用いる場合には、発熱反応があるため、アルカリ金属の水酸化物を少量ずつ、リチウムシリケート水溶液に加える。
【0037】
リチウムシリケート水溶液にアルカリ金属イオン源を添加しよく攪拌した後、必要量の水を加えることにより、本発明に係る改質剤の原液を得ることができる。尚、この水の添加は、粘度を低下させることを目的としてなされる。また、使用する水は、好適には、純水又はイオン交換水である。
【0038】
尚、製造に際して留意すべき点は、原材料であるリチウムシリケート水溶液は、+5〜25℃で保管し、氷点下環境でゲル化した材料はできる限り使用しないことが好適である。また、製造に当たっても、+5〜25℃の温度管理を行うことが好ましい。
【0039】
また、製造に際し、混合方法や材料の投入する順序は基本的に問わない。具体的な調製手段の例を以下に示す。
(1)予め、イオン交換水の一部あるいは全てに水酸化ナトリウム、水酸化カリウムもしくはリチウムシリケートを溶解させたものを用いて調製した溶液
(2)水酸化物(粒状もしくは水溶液)の投入する順序を、(i)ナトリウム−カリウムの順としたもの、(ii)カリウム−ナトリウムの順としたもの、(iii)ナトリウムとカリウムを同時に投入したもの、のいずれの溶液
(3)水酸化物(粒状もしくは水溶液)を投入する量を、(i)少量ずつ投入したもの、(ii)一度に全量投入したもの、のいずれの溶液
(4)イオン交換水を添加する際、(i)各原材料をまず原液となる濃度に調製した後、その原液を所定の希釈率(例えば2倍)に希釈した溶液、(ii)各原材料を最初から所定の希釈率(例えば2倍)の希釈の濃度になるように調製した溶液
【0040】
このようにして得られた原液は、好適には、当該原液の全重量に対して、水を65〜85重量%(より好適には70〜80重量%)含有する。また、当該原液の好適な粘度(キャノン−フェンスケ型粘度計で測定、20℃)は、1.0〜15mPa・s(より好適には1.5〜10mPa・s)である。
【0041】
更に、このようにして得られた原液のpHは、12.0〜13.5の範囲であることが好適であり、より好適には12.4〜12.9の範囲である。また、希釈液のpHも、概ね上記範囲内であることが好適である。
【0042】
次に、本発明に係る改質剤の使用方法(コンクリートの劣化防止又は劣化抑止方法)について説明する。まず、本発明に係る改質剤の原液を、必要に応じて希釈(以下では、2倍希釈を例にとり説明する)しよく攪拌する(工程1)。そして、本改質剤をコンクリートに塗布する前に、塗布面のコンクリートを湿潤状態にするために水を散布する(工程2)。その後、コンクリートの湿潤状態を確認し、水で2倍希釈した本改質剤を、低圧の噴霧器、刷毛、ローラー等(施工場所状況により選択)にて塗布する(工程3)。ここで、コンクリート1m当たりの本改質剤の使用量は、例えば、200cc/m(2倍希釈したもの)であり、原液ベースでは100cc/mである。次いで、塗布後、乾燥する前に水を低圧にて散布する(工程4)。この際、湿潤養生(基本90分)乾燥が速いようならば散水することとする(工程5)。工程2〜工程4を繰り返す(工程6)。表面に本改質剤が残存しているかを確認する(工程7)。最終工程として低圧で散水し、工程6で残存が確認された場合は、ブラッシング等で洗浄し、コンクリート表面に残存させないようにする(工程8)。その後自然乾燥させる(工程9)。尚、工程8終了後は、すぐに供用可能である(道路白舗装など床面の場合は、重量車両の走行や重量物の移動も可)。また、施工時には、外気温が+5℃以上であることが好適であり、+5℃未満の場合は採暖養生等により温度管理をすることが好適である。尚、塗装やポリマーセメントのように、浸透を阻害する被覆材で被覆されている場合には、当該被覆材を剥離した後に、本改質剤を塗布する。判定対象コンクリートpH測定工程は、特に限定されないが、工程8の終了後24時間以内に行なうことが好適である。工程8においてコンクリート表面を洗浄するが、再度水と接触させてpHを測定すると、改質処理の塗布前後でpHの値に変化が生じることを実験的に確認している。
【0043】
ここで、カルシウムが溶脱している劣化構造物やカルシウム含有量が低い高炉スラグセメントを用いたコンクリートに関しては、改質剤塗布工程に先立ち、又は、複数の改質剤塗布工程の途中で、前記コンクリートに水酸化カルシウムを塗布し、カルシウム分をコンクリートに補給することが好適である。例えば、最初にコンクリートに水を塗布し、その後に改質剤を塗布し、その後に水酸化カルシウム水溶液を塗布する態様を挙げることができる。更には、本改質剤を他の材料(例えばセメント)と混ぜて、当該混合物をコンクリート表面に塗布する態様も挙げることができる。更には、例えば、クラックが発生している場合においては、本改質剤をコンクリート表面に塗布するのではなく、クラックを介してコンクリート内部に注入する態様も挙げることができる。
【0044】
また、本発明に係る確認方法に使用可能なコンクリートの種類も特に限定されず、セメント種類や配合を変えたあらゆるコンクリートに有効である。例えば、セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、ビーライトセメント、エコセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、低熱セメントを挙げることができる。また、コンクリートとしては、例えば、普通コンクリート、高強度コンクリート、低発熱コンクリート、水中不分離コンクリート、水中コンクリート、工場製品コンクリート、海洋コンクリート、吹付けコンクリート、繊維補強コンクリート、プレパックドコンクリート、高流動コンクリート、軽量(骨材)コンクリート、鋼コンクリート合成構造、プレストレストコンクリート、再生骨材コンクリート等を挙げることができる。尚、例えば、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカフューム等の混和材が混合されていてもよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例を参照しながら具体的に説明する。尚、本発明は実施例によりいかなる限定も受けない。
【0046】
製造例1(LN422)
リチウムシリケート45(日産化学工業株式会社製、水溶液100重量部に対してSiO 20.0〜21.0重量部、LiO 2.1〜2.4重量部、SiO/LiOモル比4.5)85.70gをビーカーに計り取り、水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製、純度97%)4.12gをガラス棒でよく混ぜながら少量ずつ、投入した量が溶解しきってから順次加えた。水酸化ナトリウムが全量溶けきってから、水酸化カリウム(関東化学株式会社製、純度86%)1.96gを少量ずつ投入し、溶解しきったところへイオン交換水8.22gを静かに加え、ガラス棒でよく攪拌して本製造例に係るコンクリート改質剤の原液を得た(粘度:7.32mPa・s)。尚、表1に各成分の組成を示した(ここで、酸化リチウム、酸化ナトリウム及び酸化カリウムの値は等価酸化物に換算したものである。)。
【0047】
【表1】

【0048】
施工例1
製造例1で得られた原液を水で2倍希釈することにより得られた改質剤をコンクリート(水セメント比60%細骨材/モルタル体積比55%のOPCモルタル)表面に塗布した。塗布方法としては、湿潤状態の供試体の打設面に前記改質剤を1.07L/m塗布した。
【0049】
試験例1(pH測定試験)
施工例1により処理したコンクリート表面aを水道水で濡らした(図2(a))。同時に施工例1で用いたコンクリートであって、改質剤の塗布されていないコンクリート表面bを水道水で濡らした(図2(b))。濡らした後、pH試験紙(ケニス社製 スティック型全域試験紙)を表面a及び表面bにそれぞれ表面に接触させて、pH試験紙の色の変化を観察した(図3(a)及び(b))。結果、表面aでは、pHが11程度と観測されたのに対して、表面bではpH7程度であった。従って、表面aではコンクリート改質処理が施されていることが確認できた。
【0050】
試験例2(吸水試験)
コンクリート表面に対して、JSCE−K571の試験方法に準拠し、壁面に図1に示す構造を有するアクリル製円筒を密着させ、水頭高さ270mmとなるようメスシリンダーを取り付けた(図4)。接着(ブルーミックス)が固まってから水(水道水)を入れ、開始直後の目盛を読み取った。開始後1〜2時間程度は漏水やシールの不備をチェックした。水頭が下がり、目盛が読みとれなくなる前に水を追加した。7日後の数値を計測する。これらの作業を施工例1の施工前、施工後28日養生後に計測した。結果、施工後のコンクリート表面の吸水性が低くなっていることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、処理が施されたか否かが外見上判別できないコンクリート改質処理であっても、施工されたか否かが第三者によって客観的に確認できるので、施工主に対して施工したことの証拠を示す方法が提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート改質剤がコンクリート表面に塗布されたか否かを判定するコンクリート改質処理確認方法において、
判定対象コンクリート表面に水を接触させてpHを測定する判定対象コンクリートpH測定工程を含むことを特徴とする、コンクリート改質処理確認方法。
【請求項2】
前記改質剤の塗布されていないコンクリート表面に水を接触させてpHを測定する未処理コンクリートpH測定工程を更に有し、
前記未処理コンクリートpH測定工程により得られた結果と、前記判定対象コンクリートpH測定工程により得られた結果を照らし合わせて、コンクリート改質処理の施工を確認することを特徴とする、請求項1記載のコンクリート改質処理確認方法。
【請求項3】
判定対象コンクリート表面の一部に容器に入れた水を密着させて、当該容器内の水の損失量を測定する、判定対象コンクリート表面吸水試験工程を有することを特徴とする請求項1又は2記載のコンクリート改質処理確認方法。
【請求項4】
前記改質剤の塗布されていないコンクリート表面の一部に容器に入れた水を密着させて、前記容器内の水の損失量を測定する、未処理コンクリート表面吸水試験工程を有することを特徴とする、請求項3記載のコンクリート改質処理確認方法。
【請求項5】
コンクリート改質剤がコンクリート表面に塗布されたか否かを判定するコンクリート改質処理確認キットにおいて、
pH6〜8の水と、
pH試験紙と、
を含むことを特徴とするコンクリート改質処理確認キット。
【請求項6】
側面が開口した容器と
前記容器内と連通しており、前記容器の上部に取り付けられたメスシリンダーとを有する、吸水試験用水容器を含むことを特徴とする、請求項5記載のコンクリート改質処理確認キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−36033(P2012−36033A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176146(P2010−176146)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(510214218)株式会社 八千代 (2)
【Fターム(参考)】