説明

コンクリート構造物の補強体、コンクリート構造物の補強構造、およびコンクリート構造物の補強方法

【課題】改築の困難なコンクリート構造物を、コンクリート構造物に削孔を形成することなく補強できるコンクリート構造物の補強体、および補強構造を提供する。
【解決手段】PCケーブル10と、ブロック体20と、緊張力伝達体30と、を備えるコンクリート構造物(ダムの堤体C)の補強体2と、複数の補強体2からなる補強構造1である。PCケーブル10の一端11と他端12は共に不動体である地盤Gに固定される。ブロック体20は、堤体Cの上端部に配置され、PCケーブル10の中間部を鉛直上方に凸となるように湾曲させて支持する。支持ブロック(緊張力伝達体)30は、ブロック体20と堤体Cの上端面との間に介在されて、PCケーブル10を緊張された状態に維持すると共に、そのPCケーブル10の緊張力の一部を堤体Cの上端面に伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダムや地下の駅舎など、改築の困難なコンクリート構造物をPCケーブルで補強するコンクリート構造物の補強方法と、その補強方法により構築されたコンクリート構造物の補強体、およびこの補強体を複数備えてなるコンクリート構造物の補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、阪神・淡路大震災の教訓から、既設のダムや防波堤、地下の駅舎など、容易に改築することができない環境にあるコンクリート構造物を補強することが推奨されている。例えば、特許文献1〜3には、PCケーブルを用いたアンカー構造によりコンクリート構造物を補強する構造が提案されている。
【0003】
図5は、ダムの堤体C(コンクリート構造物)にアンカー構造を適用することで形成したコンクリート構造物の補強体の概略図である。この補強体では、堤体Cを貫通し地盤Gにまで到達する削孔H内にPCケーブル10を挿入し、PCケーブル10の一端を地盤Gに固定すると共に、PCケーブル10の他端を定着具Dにより堤体Cの上部に定着している。このような構成を備える補強体により、堤体Cに圧縮力を付与して堤体Cを補強することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−174553号公報
【特許文献2】特開2010−174554号公報
【特許文献3】特開2010−174555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したアンカー構造によりコンクリート構造物を補強するには、コンクリート構造物に削孔を形成しなければならず、その削孔の形成の際に、コンクリート構造物の耐久性が低下するのではないかとの懸念がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、改築の困難なコンクリート構造物を、コンクリート構造物に削孔を形成することなく補強できるコンクリート構造物の補強体、およびその補強体を複数備えてなるコンクリート構造物の補強構造を提供することにある。また、本発明の別の目的は、コンクリート構造物に削孔を形成することなく補強するためのコンクリート構造物の補強方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明コンクリート構造物の補強体は、緊張されたPCケーブルの緊張力をコンクリート構造物に圧縮力として付与することでコンクリート構造物を補強するコンクリート構造物の補強体であって、PCケーブルと、ブロック体と、緊張力伝達体と、を備える。PCケーブルは、その一端がコンクリート構造物とは異なる不動体に固定され、他端が前記不動体とはコンクリート構造物を挟んで反対側にある別の不動体に固定される。また、ブロック体は、コンクリート構造物の上端部に配置される部材であって、PCケーブルの中間部を鉛直上方に凸となるように湾曲させて支持する湾曲部を有する。そして、緊張力伝達体はブロック体とコンクリート構造物の上端面との間に介在されて、ブロック体に支持されるPCケーブルを緊張された状態に維持すると共に、そのPCケーブルの緊張力の一部をコンクリート構造物の上端面に伝達する部材である。
【0008】
上記本発明コンクリート構造物の補強体によれば、コンクリート構造物に孔を空けることなくコンクリート構造物を補強することができる。
【0009】
本発明コンクリート構造物の補強体の一形態として、PCケーブルが挿通される湾曲された管体により上記湾曲部を形成しても良い。その場合、管体は、ブロック体中に埋設されていることが好ましい。
【0010】
管体により湾曲部を形成することで、精度良くPCケーブルを湾曲させることができる。また、湾曲されたPCケーブルを外部から保護することができる。この管体は、鋼管やポリエチレン管で構成することができる。
【0011】
本発明コンクリート構造物の補強体の一形態として、PCケーブルが案内される湾曲された樋状のガイド体により湾曲部を形成しても良い。その場合、ガイド体は、その内周面がブロック体の上端面に露出するようにブロック体に埋設されていることが好ましい。
【0012】
ガイド体により湾曲部を形成することで、コンクリート構造物から剥き出しになったガイド体にPCケーブルの中間部を引っ掛けるように配置するだけで、ブロック体にPCケーブルの中間部を配置できる。
【0013】
本発明コンクリート構造物の補強体の一形態として、PCケーブルは、グラウトにより湾曲部に固定されていることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、湾曲部に対するPCケーブルの移動を抑制できる。その結果、PCケーブルの外周面が湾曲部に擦れて損傷することを防止できる。
【0015】
本発明コンクリート構造物の補強体の一形態として、緊張力伝達体は、ブロック体をコンクリート構造体の上端面から持ち上げるジャッキであっても良い。
【0016】
後述する本発明コンクリート構造物の補強方法に示すように、本発明コンクリート構造物の補強体を構築するには、ブロック体をコンクリート構造物の上端面から持ち上げるジャッキを用いる。このジャッキをそのまま、本発明補強体の緊張力伝達体として利用すれば、必要に応じてジャッキによるPCケーブルの再緊張を速やかに行うことができる。
【0017】
本発明コンクリート構造物の補強体の一形態として、緊張力伝達体は、ブロック体とコンクリート構造体の上端面との間に介在される支持ブロックであっても良い。
【0018】
上記構成によれば、ジャッキを用いて本発明コンクリート構造物の補強体を構築した後、そのジャッキを取り外してもコンクリート構造物に所定の圧縮力を付与することができる。この場合、ジャッキを別の用途に使いまわしできる。例えば、一つのコンクリート構造物に複数の補強体を形成する場合、少数のジャッキで各補強体を順次構築することができる。もちろん、取り外したジャッキは、本発明補強体を構築する以外の用途にも利用できる。
【0019】
本発明コンクリート構造物の補強体の一形態として、PCケーブルは、マルチケーブルであることが好ましい。
【0020】
複数の素線を撚り合せたストランドをさらに複数本撚り合わせてシースに収納したマルチケーブルであれば、複数の素線を一体に扱うことができる。複数素線を一体に扱えることで、各素線に導入される緊張力のバラツキを低減でき、コンクリート構造物に付与する圧縮力にバラツキが生じることを回避できる。
【0021】
ところで、本発明補強体では、PCケーブルの大部分が外部に露出する構成である。これに対して、最外周にシースを有するマルチケーブルは、外部環境に晒されても損傷し難いため、マルチケーブルを備える補強体であれば、長期に亘ってコンクリート構造物に圧縮力を付与できる。
【0022】
上述した本発明コンクリート構造物の補強体を用いて実際にコンクリート構造物を補強する際は、当該補強体を複数用いることが好ましい。即ち、本発明補強体を、一つのコンクリート構造物に複数設けることで形成されるコンクリート構造物の補強構造とする。
【0023】
一つの補強体でコンクリート構造物に付与できる圧縮力には限界がある。そのため、コンクリート構造物に所望の圧縮力を付与することができるように、複数の補強体によりコンクリート構造物の補強構造を構築すると良い。
【0024】
上記補強構造を構築するコンクリート構造物がダムの場合、本発明補強体は、ダムの幅方向に複数並列されていることが好ましい。
【0025】
ダムの幅方向に補強体を並べることで、ダム全体を確実に補強することができる。ここで、ダムの幅方向とは、川幅の方向のことである。
【0026】
一方、本発明コンクリート構造物の補強方法は、緊張されたPCケーブルの緊張力をコンクリート構造物に圧縮力として付与することでコンクリート構造物を補強するためのコンクリート構造物の補強方法であって、以下の工程を備えることを特徴とする。
・コンクリート構造物の上端部にジャッキを配置する工程。
・鉛直上方に凸となるように湾曲した湾曲部を有するブロック体を、前記ジャッキの上に配置する工程。
・前記PCケーブルの中間部を前記湾曲部に配置すると共に、PCケーブルの一端と他端をそれぞれ、コンクリート構造物を挟んだ位置にある別々の不動体に固定する工程。
・前記ジャッキで前記ブロック体を鉛直上方に持ち上げて、両端部が固定されたPCケーブルを緊張する工程。
以上の工程を経ることで、PCケーブルの緊張力の一部でブロック体をコンクリート構造物に向かって引き下げて、コンクリート構造物に圧縮力を付与する。
【0027】
上記本発明コンクリート構造物の補強方法によれば、コンクリート構造物に削孔を空けることなくコンクリート構造物を補強することができる本発明コンクリート構造体の補強体および補強構造を構築することができる。
【0028】
本発明コンクリート構造物の補強方法の一形態として、さらに、鉛直上方に持ち上げたブロック体と、前記コンクリート構造物の上端面との間に緊張力伝達体を介在させ、前記ジャッキを取り除く工程を備えることが好ましい。この場合、緊張力伝達体を介してコンクリート構造物に圧縮力が付与される。
【0029】
上記構成によれば、ジャッキを取り外してもコンクリート構造物に圧縮力を付与し続けることができる本発明コンクリート構造物の補強体および補強構造を構築することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明コンクリート構造物の補強体、および補強構造によれば、コンクリート構造部に削孔を空けることなくコンクリート構造物を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態1に係る補強構造により補強した砂防ダムの概略図である。
【図2】図1に示す砂防ダムの堤体の上端面近傍における補強構造の設置状態を示す概略図である。
【図3】(A)〜(C)は、実施形態1に係る補強構造に備わる各補強体の構築方法を経時的に示す説明図である。
【図4】実施形態2に係る補強構造に備わる補強体の一部を示す概略図である。
【図5】従来のアンカー構造により補強した砂防ダムの堤体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明コンクリート構造物の補強構造を砂防ダムの堤体の補強に適用した例を図面に基づいて説明する。
【0033】
<実施形態1>
図1,2に示すように、本発明コンクリート構造物の補強構造1は、砂防ダムの堤体Cの幅方向に複数設けられるコンクリート構造物の補強体2からなる(図1においては、紙面奥行き方向に補強体2が並んでいる)。各補強体2は、PCケーブル10と、ブロック体20と、支持ブロック(緊張力伝達部材)30とを備え、砂防ダムの堤体Cに圧縮力を付与することで、当該堤体Cを補強する。以下、補強構造1の構築方法を説明すると共に、補強構造1の各補強体2に備わる構成についても詳細に説明する。
【0034】
まず、補強構造1の各補強体2を構築するにあたって、PCケーブル10を用意する。PCケーブル10には、例えば、複数本の素線を撚り合せてエポキシなどの絶縁被覆で一体化したストランドをさらに複数本撚り合わせた上で、ワックスなどの防錆剤と共にポリエチレンシースに収納したマルチケーブルなどを利用することができる。その他、特許文献1〜3に記載のように、単数あるいは複数のストランドをコルゲートシースに収納したPCケーブルなどを利用することもできる。
【0035】
また、補強体2の構築にあたって、PCケーブル10の他、堤体Cの上端面に配置できる大きさを有するブロック体20を用意する。このブロック体20には、その内部に湾曲した管体(湾曲部)21が埋設されている。管体21の両端部は、ブロック体20の側面に開口しており、管体21の内部にPCケーブル10を挿通できるようになっている。ブロック体20の材質は、所定の強度を有するものであれば特に限定されない。例えば、コンクリートなどを利用できる。また、管体21の材質は、所定の強度を有し、耐食性に優れるものであれば特に限定されない。例えば、剛性、耐食性に優れる鋼や、安価で耐食性に優れるポリエチレンなどを使用することができる。
【0036】
PCケーブル10とブロック体20を用意したら、図3(A)に示すように、堤体Cの上端面にジャッキJを配置し、そのジャッキJの上にブロック体20を載置する。さらに、ブロック体20の管体21内にPCケーブル10を挿通させる。管体21に挿通されるPCケーブル10の中間部は、管体21により支持されて鉛直上方に凸となるように湾曲する。
【0037】
次いで、PCケーブル10の両端部のシースを剥ぎ取り、PCケーブル10のストランドを剥き出しにして、その剥き出しの部分をグラウトなどで不動体に固定する。本実施形態では、図1に示すように、PCケーブル10の一端11を、ブロック体20よりも低い位置にある地盤Gのうち堤体Cよりも紙面左側にある部分に固定し、PCケーブル10の他端12を、地盤Gのうち堤体Cよりも紙面右側にある部分に固定する。これら一端11と他端12の固定の際は、PCケーブル10をでき得る限り緩みなく張られた状態とする。なお、図面上、水没している他端12を固定する際は、その近傍の水を抜いておく。
【0038】
ここで、PCケーブル10の一端11と他端12を固定する位置は、堤体Cに近い位置であることが好ましい。例えば、重力の方向に直交する水平面に対するPCケーブル10の傾きをθとすると、θは45°以上とすることが好ましく、60°以上とすることがより好ましい(90°未満)。上記θを大きくするほど、PCケーブル10の全長を短くできる。また、θを大きくするほど、PCケーブル10の緊張力のうち、鉛直方向の成分が大きくなるので、一本のPCケーブル10で堤体Cに付与できる圧縮力を強くすることができる。
【0039】
PCケーブル10の両端部の固定が終了したら、図3(A)の白抜き矢印に示すように、ジャッキJで鉛直上方にブロック体20を持ち上げる。そうすることで、両端部が固定されたPCケーブル10の中間部も鉛直上方に持ち上げられ、PCケーブル10が緊張される。PCケーブル10を緊張することでPCケーブル10に導入される導入荷重は、規格引張荷重の60%前後とすることが好ましい。
【0040】
なお、緊張し終えたPCケーブル10は、グラウトにより管体21と一体化しても良い。その場合、管体21の開口端と、PCケーブル10との隙間は、例えば、特開2007−309028号公報の図1などに記載されるゴムブーツなどの公知の止水構造により封止すると良い。
【0041】
ジャッキJでPCケーブル10を緊張し、PCケーブル10に所定の荷重を導入したら、図3(B)に示すように、ブロック体20と堤体Cの上端面との間に、コンクリートなどでできた支持ブロック30を複数介在させる。そして、ジャッキJを緩めて、堤体Cの上端面からジャッキJを取り外し、図3(C)に示すように、支持ブロック30のみでブロック体20が支持された状態とする。さらに図3(C)の状態から堤体Cから上の部分全体を防錆キャップなどで覆って、キャップ内に防錆剤を充填するなど、防錆構造を構築しても良い。
【0042】
以上説明した一連の工程により、図1,2に示す補強体1を一つ完成させることができる。以降は、図2に示すように、補強体1の形成を堤体Cの幅方向に繰り返して、堤体Cの幅方向に並列される複数の補強体2からなるコンクリート構造物の補強構造1を構築する。
【0043】
完成された補強構造1の各補強体2では、図1に示すように、PCケーブル10に導入された緊張力のうち、鉛直下方の成分によりブロック体20が鉛直下方に引き下げられる。そのブロック体20が支持ブロック30を介して堤体Cを圧縮し、堤体Cが補強される。
【0044】
<変形実施形態>
実施形態1に示す補強体2において、ブロック体20を持ち上げるジャッキJを緊張力伝達体として利用しても良い。その場合、補強体2の構築にあたり、図3(A)に示すようにブロック体20をジャッキJで持ち上げた後、そのジャッキJをそのまま堤体Cの上端面に配置しておく。
【0045】
上記構成によれば、補強体2の構築後に経年的にPCケーブル10の緊張力が緩んだとしても、速やかにPCケーブル10を再緊張することができる。PCケーブル10の再緊張は、自動で行っても良い。その場合、PCケーブル10の緊張力を監視するセンサを設け、そのセンサの検知結果に基づいてジャッキJを制御する制御機構を設けると良い。
【0046】
<実施形態2>
上述した実施形態1とは、ブロック体に設けられる湾曲部の構成が異なる補強体を図4に基づいて説明する。
【0047】
図4は、堤体Cの上端面近傍における本実施形態の補強体2´の形成状態を示す概略図である。この図4に示すように、補強体2´のブロック体20´は、実施形態1に示す管体と同様に、PCケーブル10を鉛直上方に凸となるように湾曲させるガイド体22を備える。このガイド体22は、湾曲管を半割りすることで作製した樋状の部材であって、その内周面がブロック体20´から露出するようにブロック体20´の上端面に埋設されている。
【0048】
上記ガイド体22によれば、PCケーブル10をガイド体22に配置するときに、ガイド体22の上方からPCケーブル10を引っ掛けるようにして配置することができるため、補強体2´の形成が容易になる。ここで、ガイド体22に配置されるPCケーブル10はグラウトなどでガイド体22に一体化させてもかまわない。
【0049】
なお、本発明の実施形態は、上述した実施形態に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。例えば、図2のように補強構造1を完成させた後、補強構造1の全てのブロック体20を、図中の二点鎖線で示すように、コンクリートで一体に覆ってしまっても良い。そうすることで、堤体Cの嵩を増すことができるし、堤体Cの上面をフラットにしてメンテナンスのための通路を確保することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明コンクリート構造物の補強体および補強構造は、ダムや防波堤、地下の駅舎など、改築が容易でないコンクリート構造物の補強に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
C 堤体(コンクリート構造物)
G 地盤
H 削孔
D 定着具
1 補強構造
2,2´ 補強体
10 PCケーブル 11 一端 12 他端
20,20´ ブロック体
21 管体(湾曲部) 22 ガイド体(湾曲部)
30 支持ブロック(緊張力伝達体)
J ジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊張されたPCケーブルの緊張力をコンクリート構造物に圧縮力として付与することでコンクリート構造物を補強するコンクリート構造物の補強体であって、
一端がコンクリート構造物とは異なる不動体に固定され、他端が前記不動体とはコンクリート構造物を挟んで反対側にある別の不動体に固定されるPCケーブルと、
前記PCケーブルの中間部を鉛直上方に凸となるように湾曲させて支持する湾曲部を有し、前記コンクリート構造物の上端部に配置されるブロック体と、
前記ブロック体とコンクリート構造物の上端面との間に介在されて、ブロック体に支持されるPCケーブルを緊張された状態に維持すると共に、そのPCケーブルの緊張力の一部をコンクリート構造物の上端面に伝達する緊張力伝達体と、
を備えることを特徴とするコンクリート構造物の補強体。
【請求項2】
前記湾曲部は、前記PCケーブルが挿通される湾曲された管体であり、
この管体は、前記ブロック体中に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物の補強体。
【請求項3】
前記湾曲部は、前記PCケーブルが案内される湾曲された樋状のガイド体であり、
このガイド体は、その内周面がブロック体の上端面に露出するようにブロック体に埋設されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造物の補強体。
【請求項4】
前記PCケーブルは、グラウトにより前記湾曲部に固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体。
【請求項5】
前記緊張力伝達体は、前記ブロック体をコンクリート構造体の上端面から持ち上げるジャッキであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体。
【請求項6】
前記緊張力伝達体は、前記ブロック体とコンクリート構造体の上端面との間に介在される支持ブロックであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体。
【請求項7】
前記PCケーブルは、マルチケーブルであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のコンクリート構造物の補強体を、一つのコンクリート構造物に複数設けることで形成されるコンクリート構造物の補強構造。
【請求項9】
前記コンクリート構造物がダムの場合、
前記補強体は、ダムの幅方向に複数並列されていることを特徴とする請求項8に記載のコンクリート構造物の補強構造。
【請求項10】
緊張されたPCケーブルの緊張力をコンクリート構造物に圧縮力として付与することでコンクリート構造物を補強するためのコンクリート構造物の補強方法であって、
コンクリート構造物の上端部にジャッキを配置する工程と、
鉛直上方に凸となるように湾曲した湾曲部を有するブロック体を、前記ジャッキの上に配置する工程と、
前記PCケーブルの中間部を前記湾曲部に配置すると共に、PCケーブルの一端と他端をそれぞれ、コンクリート構造物を挟んだ位置にある別々の不動体に固定する工程と、
前記ジャッキで前記ブロック体を鉛直上方に持ち上げて、両端部が固定されたPCケーブルを緊張する工程と、
を備え、
前記PCケーブルの緊張力の一部で前記ブロック体をコンクリート構造物に向かって引き下げて、コンクリート構造物に圧縮力を付与することを特徴とするコンクリート構造物の補強方法。
【請求項11】
さらに、鉛直上方に持ち上げたブロック体と、前記コンクリート構造物の上端面との間に緊張力伝達体を介在させ、前記ジャッキを取り除く工程を備え、
前記緊張力伝達体を介してコンクリート構造物に圧縮力を付与することを特徴とする請求項10に記載のコンクリート構造物の補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−92568(P2012−92568A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240940(P2010−240940)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(302061613)住友電工スチールワイヤー株式会社 (163)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【出願人】(391019740)三信建設工業株式会社 (59)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【Fターム(参考)】