説明

コンクリート漏水防止部材及びコンクリート漏水防止工法

【課題】氷結による膨張力による躯体から外れる方向の力を軽減させると共に、補強接着剤の塗布作業時間を短縮して作業コストを低減するようにしたコンクリート漏水防止部材とコンクリート漏水防止工法を提供するものである。
【解決手段】コンクリート躯体30に形成された2段溝46にコンクリート漏水防止部材10を取付ける。コンクリート漏水防止部材10は充填材12と、その充填材12に固定される表面部材16とそれに一体に形成される端部部材18ととから成る補強カバー材14とで構成する。充填材12を接触用壁面36に接触させ、端部部材18を入口溝48の中に入れて、入口溝48を補強接着剤28で埋めることで、コンクリート漏水防止部材10をコンクリート躯体30に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートのクラックや打継ぎ目地の不良箇所からの漏水を防止するためのコンクリート漏水防止部材及びコンクリート漏水防止工法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル等の外壁を形成するコンクリートには、クラックや打継ぎ目地の不良箇所が発生する。このようなクラックや打継ぎ目地の不良箇所からは漏水が発生したり水の凍結が生じたりして、それらの箇所からコンクリートの破壊が進行する。このため、コンクリートのクラックや打継ぎ目地の不良箇所からの漏水等による破壊を防止する工法が、特許文献1に提案されている。
【0003】
特許文献1の工法を図10及び図11に基づいて説明する。図10に示すように、コンクリート躯体30におけるクラック箇所や打継ぎ目地の不良箇所31と連絡するように、クラック箇所や打継ぎ目地の不良箇所31よりも幅の広い切り込み溝32を例えば上下方向に形成する。この切り込み溝32の開口部には、コンクリート躯体30の外表面34から直角方向に所定の深みdの接触用壁面36を形成する。この接触用壁面36に、遮水性があり伸縮可能な発泡ゴムや合成樹脂発泡体等を素材とする長尺の充填材38を挿入する。充填材38は断面四角形であり、その充填材38の横幅Aは左右の接触用壁面36の間隔aより大きく設定し、その奥行Dは接触用壁面36の深みdより小さく設定する。充填材38の左右を押して圧縮した状態で、充填材38を切り込み溝32の開口部に挿入する。この際、充填材38と接触用壁面36との接触位置に接着剤を取付ける。
【0004】
切り込み溝32の開口部に充填材38を取付けた状態(図11)では、充填材38の位置より奥の切り込み溝32は、充填材38で閉鎖された導水溝40となる。充填材38の圧縮に対する反発力と接着剤による接着力とによって充填材38が接触用壁面36に固定され、しかも、接触用壁面36と充填材38との接触面に接着剤が介在するため、その接触面からは漏水が発生することはない。クラックや打継ぎ目地の不良箇所から漏れ出る水は導水溝40に至り、この導水溝40を通って水は下方に導かれて、排水処理される。
【0005】
特許文献1の工法では、コンクリート躯体30におけるクラック発生箇所や打継ぎ目地の不良箇所31の位置に切り込み溝32を形成して、その切り込み溝32の開口部に接着剤を介して充填材38を取付けることで、クラック発生箇所や打継ぎ目地の不良箇所31から漏れ出る水を導水溝40から排出し、その水が充填材38と接触用壁面36との接触面からコンクリート躯体30の外表面34に漏れ出るのを防止している。また、導水溝40に導かれた水が凍結して膨張したとしても、充填材38は伸縮可能な発泡ゴム等を素材とするので、充填材38が膨張して対応することができる。
【0006】
【特許文献1】特許第1119105号
【0007】
図11に示した漏水防止工法では、導水溝40に導かれた水が凍結して充填材38に余りに大きな背圧がかかった場合に、その大きな背圧が充填材38をコンクリート躯体30に対して安定状態に保つことができず、充填材38がコンクリート躯体30から外れてしまうという不具合が発生した。
【0008】
この漏水防止工法の不具合を解消するために、改良した漏水防止工法と改良した充填材とが提案されている。この改良した漏水防止工法と改良した充填材とを図12乃至図14に基づいて説明する。図12乃至図14において図10及び図11と同一符号は同一部材を示す。図12及び図13に示すように、充填材42は充填材38と同様に、遮水性のある伸縮可能な発泡ゴム等を素材とする長尺物である。充填材38は断面が四角形であるのに対し、充填材42の断面は四角形の一面に外方に突出する突起部44を形成したものである。この突起部44は、充填材42の長尺方向の全域に形成されている。充填材42の左右の横幅は、図11の充填材38と同じく横幅Aとする。
【0009】
コンクリート躯体30に形成される切り込み溝46は、2段溝から成るものである。2段溝46は、開口部側の入口溝48の溝幅が相対的に広く、その入口溝48より奥側の溝幅が相対的に狭いように設定されている。入口溝48の溝幅は、充填材42の左右の横幅Aよりも広いものとする。奥側の相対的に狭い溝幅は、充填材42が接触するための左右の接触用壁面36の間のaとし、その接触用壁面36の間の幅aは、充填材42の左右の横幅Aよりも狭いものとする。
【0010】
充填材42をコンクリート躯体30に取付ける場合には、突起部44を外側にして、充填材42の左右を圧縮して、充填材42を左右の接触用壁面36の間に挿入する。この際、充填材42と左右の接触用壁面36との接触面に接着剤を取付ける。左右の接触用壁面36に充填材42を接着した状態(図14)では、突起部44の先端面50はコンクリート躯体30の外表面34と同じ面位置になるようにする。充填材42を左右の接触用壁面36に接着剤で接着させた状態では、切り込み溝46の奥は閉鎖された導水溝52となる。充填材42を左右の接触用壁面36に接着剤で接着させた後、入口溝48(充填材42の突起部44の両横)に補強接着剤54を詰める。この補強接着剤54の外表面は、突起部44の先端面50やコンクリート躯体30の外表面34と同じ面位置となるようにする。
【0011】
図14に示す状態では、従来(図11)には無い補強接着剤54によってコンクリート躯体30と充填材42とを接着固定しているので、コンクリート躯体30と充填材42との固定状態を従来と比べて大幅に強固にすることができる。よって、導水溝52内の水が凍結して充填材42に大きな背圧がかかっても、充填材42がコンクリート躯体30から外れることを防止することができる。更に、補強接着剤54によって充填材42と接触用壁面36との接合固定箇所の外側を覆っているので、コンクリート躯体30と充填材42との接合面からの漏水の発生を防止することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図14の状態では、充填材42においては突起部44の先端面50のみが外表面に露出しているが、この突起部44の先端面50の横幅Cは、図11で外表面に露出する充填材38の横幅Aと比べて、横幅が狭いものとなる。このため、導水溝52内の水が氷結した場合に、充填材42が膨らむことができる表面積が狭くなり、充填材42にコンクリート躯体30から外れる方向に強い力がかかるおそれがあった。更に、幅の狭い突起部44の先端面50からは、導水溝52内に氷結が発生しているかどうかは、認識することができないという不具合があった。
【0013】
図14に示すように、この工法では充填材42とコンクリート躯体30とを固定するために、入口溝48(充填材42における突起部44の両横の空間)に補強接着剤54を埋める。補強接着剤54を入口溝48に埋める作業は、壁を塗る作業と同じ作業であり、外表面をきれいに塗る作業を行わなければならない。補強接着剤54の外表面は広いため、補強接着剤54の表面をきれいに塗る作業に時間がかかり、作業コストが高くなるという欠点があった。
【0014】
充填材42の長手方向の長さは例えば2m程度であり、充填材42同士の接続は、充填材42の端面56(図13参照)同士を接着剤で接着している。しかし、端面56同士の接続箇所の突起部44の外部には補強接着剤54が存在しないため、導水溝52内の水が氷結して端面56同士の接続箇所に背圧がかかった場合に、その端面56同士の接着箇所に接着剤を剥がす力がかかり、充填材42の端面56同士の接着箇所から漏水が発生するおそれがあった。
【0015】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、氷結での膨張力によるコンクリート躯体から外れる方向の力を軽減させると共に、補強接着剤の塗布作業時間を短縮して作業コストを低減するようにしたコンクリート漏水防止部材とコンクリート漏水防止工法を提供することを目的とするものである。本発明の他の目的は、充填材の端面同士の接着箇所からの水の漏れを防止するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るコンクリート漏水防止部材は、コンクリート躯体に形成する開口部側の溝幅が相対的に広く奥側の溝幅が相対的に狭い2段溝に取付けるものであって、前記2段溝に取付けられた際に奥側の両壁に接触するものであって伸縮性と遮水性のある充填材と、その充填材に固定され前記2段溝に取付けられた際に前記充填材より外側に位置する表面部材とその表面部材の両側にその表面部材に一体に形成されるものであって前記2段溝に取付けられた際に前記開口部側の溝の中に位置する端部部材とから成る可撓性と遮水性のある補強カバー材と、から成るようにしたものである。本発明は、補強カバー材の一端に前記充填材の端面より外方に伸びる伸張部を形成したものである。
【0017】
本発明に係る他のコンクリート漏水防止部材は、可撓性と遮水性のある素材から成るものであって、コンクリート躯体に形成される導水溝を覆うための表面部材とその表面部材の両側に形成されるものであって前記コンクリート躯体に形成される取付け溝の中に収納されて補強接着剤で前記コンクリート躯体に固定されるための端部部材とから成るものである。
【0018】
本発明に係るコンクリート漏水防止工法は、コンクリート躯体に開口部側の溝幅が相対的に広く奥側の溝幅が相対的に狭い2段溝を形成し、表面部材とその表面部材の両側に一体に形成される端部部材とから成る可撓性と遮水性のある補強カバー材を伸縮性と遮水性のある充填材に固定したコンクリート漏水防止部材を前記充填材側を先頭に前記2段溝に向けて挿入し、前記奥側の溝の両壁に前記充填材側を接触させると共に前記開口部側の溝内に前記端部部材を位置させ、前記開口部側の溝内に補強接着剤を埋めてその補強接着剤で前記端部部材を前記コンクリート躯体に固定するようにしたものである。本発明は、前記漏水防止部材において前記補強カバー材の一端に前記充填材の端面より外方に伸びる伸張部を形成し、前記漏水防止部材同士を接合させる際に一方側の漏水防止部材の前記伸張部を他方側の漏水防止部材の伸長部と反対側の箇所の補強カバー材に重ね合わせるようにしたものである。
【0019】
本発明に係る他のコンクリート漏水防止工法は、コンクリート躯体に形成される導水溝とは離れた位置で前記導水溝の両側に取付け溝を形成し、表面部材とその表面部材の両側に一体に形成される端部部材とから成る可撓性と遮水性のあるコンクリート漏水防止部材のうちの前記表面部材で前記導水溝を覆うと共に前記端部部材を前記取付け溝に挿入し、前記切り込み溝内に補強接着剤を埋めてその補強接着剤で前記端部部材を前記コンクリート躯体に固定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0020】
実施例1のコンクリート漏水防止部材では、充填材の外側に柔軟性のある補強カバー材を備えているので、導水溝に凍結が生じて大きな背圧が充填材にかかっても、充填材の膨らみを補強カバー材の表面部材が受けてその表面部材が膨らむ。これによって、コンクリート漏水防止部材で圧力を吸収してコンクリート躯体の剥離や破損を回避することができる。また、充填材とコンクリート躯体との接触面の外側の位置を補強接着剤で覆っているので、その接着面が剥離した場合でも、その接着箇所からの漏水の発生を補強接着剤で防止することができる。
【0021】
実施例2のコンクリート漏水防止部材では、導水溝に凍結が生じて大きな背圧が表面部材にかかっても、凍結による膨らみを表面部材が吸収する。これによって、コンクリート躯体の剥離や破損を回避することができる。また、このコンクリート漏水防止部材では、充填材を含まないので製品価格が安くなる。更に、表面部材の横方向の長さを短くすることができるので、素材の使用量を少なくでき、製品コストをより安くすることができる。
【0022】
実施例1のコンクリート漏水防止方法では、充填材を2段溝の奥側に挿入して、充填材に固定した補強カバー部材の両端の端部部材を入口溝の内部に位置させる。その後、入口溝に補強接着材を埋める作業で済む。その補強接着材を埋める幅が狭いので、補強接着材の取付け作業時間を短縮して作業コストを低減することができる。本発明では、コンクリート漏水防止部材の端面同士を接着する箇所において、下側のコンクリート漏水防止部材に設けた補強カバーの伸張部を、端面同士の接着箇所を越えて上側のコンクリート漏水防止部材の補強カバーの上に重ね合わせて接着する。これによって、コンクリート漏水防止部材の端面同士の接着箇所に剥離が生じても、補強カバーの伸張部によって端面同士の接着箇所の剥離に基づく漏水を防止することができる。
【0023】
実施例2のコンクリート漏水防止方法においては、コンクリート躯体に形成する導水溝や取付け溝は、奥行きが浅くしかも横幅に厳密な寸法を必要としない狭いものであるので、その取付け溝の形成作業が簡単である。コンクリート漏水防止部材の両側の端部部材を取付け溝に入れ、その状態で取付け溝に補強接着剤を埋めるだけで、コンクリート漏水防止部材をコンクリート躯体に固定することができ、コンクリート漏水防止部材のコンクリート躯体への固定作業が簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、氷結による膨張力によってコンクリート漏水防止部材が躯体から外れる方向の力を軽減させると共に、コンクリート漏水防止部材の取付け作業時間を短縮して作業コストを低減するようにするものである。
【実施例1】
【0025】
次に本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るコンクリート漏水防止部材をコンクリート躯体に固定する前の状態を示す断面図、図2は図1の状態を示す斜視図である。本発明の実施例1において図12乃至図14と同一符号は同一部材を示す。本発明の実施例1のコンクリート漏水防止部材10は、例えば2m程度の長尺物であり、遮水性のある伸縮可能な発泡ゴムや合成樹脂発泡体等を素材とする充填材12と、その充填材12に接着剤等で固定される遮水性と可撓性(柔軟性)と難燃性と耐寒性とがあり引張りに強い特殊樹脂エラストマー等を素材とする補強カバー材14とから成る。充填材12の断面は例えば断面四角形の形状をしている。補強カバー材14は、充填材12の一方の面12aに接着剤等で固定される表面部材16と、その表面部材16と一体に形成される両側の端部部材18とから成る。
【0026】
端部部材18は、表面部材16の外表面より外側に突出しないように設定されるもので、例えば表面部材16に対して直角方向に伸びる(充填材12の側面12bに沿って伸びる)支柱部20と、その支柱部20に対してほぼ直角方向に伸びる(充填材12の側面12bから離れる方向に伸びる)第一腕部22a並びに第二腕部22bとから成る。第一腕部22aは第二腕部22bに対して表面部材16に近い位置に備えられ、第二腕部22bは第一腕部22aよりも外側に長く伸びた状態とされている。支柱部20からは表面部材16にほぼ平行な方向に2個の腕部22a,22bを設けているが、方向は平行でなくて斜め方向でも良く、腕部の数は1個でも3個以上であっても良い。腕部の数が複数である場合には、表面部材16に近いほど腕部の長さを短くするのが望ましい。
【0027】
図3に示すように、コンクリート漏水防止部材10は、長手方向の一端において補強カバー材14の端は充填材12の端面24とは同一面位置になっているが、長手方向の他端においては補強カバー材14は充填材12の端面25よりも外方に長く伸びる伸張部26を有している。
【0028】
本発明の実施例1のコンクリート漏水防止部材10を使用する場合、コンクリート躯体30に形成する切り込み溝は、図12及び図13に示すものと同じ2段の切り込み溝(2段溝)46である。この2段の切り込み溝46は、開口部側は溝幅が相対的に広い入口溝48と、その入口溝48より溝幅が狭い奥側の溝とから構成する。奥側の溝の左右には接触用壁面36が形成され、左右の接触用壁面36の溝幅をaとし、その溝幅aは充填材12の左右の側面12bの横幅Aよりも狭いものとする。
【0029】
次に、コンクリート漏水防止部材10をコンクリート躯体30に形成した切り込み溝46に取付ける場合について説明する。図1並びに図2に示すように、補強カバー材14を外側にして充填材12を切り込み溝46側に向けて、充填材12の左右の側面12bを圧縮した状態で、充填材12を切り込み溝46の左右の接触用壁面36の間に挿入する。この際、充填材12左右の側面12bと左右の接触用壁面36との接触面に接着剤を取付ける。左右の接触用壁面36に充填材12の側面12bを接着した状態(図4)では、補強カバー材14の表面部材16はコンクリート躯体30の外表面34にほぼ近い位置になるようにする。左右の接触用壁面36に充填材12の側面12bを接着した状態では、左右の端部部材18は入口溝48の内部に位置する。即ち、第一腕部22aや第二腕部22bは入口溝48の内部空間に突出する。
【0030】
その後、端部部材18が位置する入口溝48に補強接着剤28を埋める。この補強接着剤28の外表面は、補強カバー材14の表面部材16やコンクリート躯体30の外表面34とほぼ同じ面位置となるようにする。入口溝48内に補強接着剤28が埋められた状態では、補強接着剤28によってコンクリート躯体30とコンクリート漏水防止部材10(充填材12の側面12b)とが接着固定される。更に、第一腕部22aや第二腕部22bを含む端部部材18が補強接着剤28の内部に埋められるので、端部部材18と一体に形成される表面部材16は両側を補強接着剤28によってコンクリート躯体30に固定された状態となる。コンクリート漏水防止部材10をコンクリート躯体30に形成した切り込み溝46に取付けた状態(図4)では、充填材12の位置より奥の切り込み溝46は、充填材12で閉鎖された導水溝52となる。
【0031】
本発明に係るコンクリート漏水防止部材10では、導水溝52内の水が凍結して大きな背圧が充填材12にかかっても、充填材12の膨らみがそのまま補強カバー材14のうちの表面部材16の全域にかかって、その表面部材16が膨らむ。これによって、凍結による背圧(閉塞圧)の圧力をコンクリート漏水防止部材10で低減させて、コンクリート躯体30の剥離や破損を回避することができる。本発明に係るコンクリート漏水防止部材10では、導入溝52の内部が凍結や閉塞した場合に表面部材16が膨らむが、外部から表面部材16の膨らみ状況の程度を目視で確認することができる。これによって、凍結以外の場合には清掃を行ったり、遊離石灰等で導入溝52が詰まった場合には、コンクリート漏水防止部材10の表面を木槌等で叩くことによって導入溝52の詰まった箇所の遊離石灰等を取り除いたり、場合によっては導入溝52の清掃を行ったりすることができる。
【0032】
本発明に係るコンクリート漏水防止部材10は、充填材12の左右の側面12bと左右の接触用壁面36との接触面の外側を補強接着剤28で覆っているので、コンクリート躯体30と充填材12との接着面が剥離した場合でも、その補強接着剤28で剥離した接着箇所からの漏水の発生を防止することができる。本発明では、入口溝48の内部に表面部材16の両端の端部部材18のみを入れれば良いため、補強接着剤28を埋める入口溝48の幅を狭くすることができる。これによって、外表面をきれいに塗らなければならない補強接着剤28の作業時間を短縮することができ、作業コストを低減することができる。
【0033】
次に、コンクリート漏水防止部材10の端面同士の接合箇所の防水方法について説明する。図5に示すように、一方側のコンクリート漏水防止部材10の充填材12の端面24(補強カバー材14と同一面位置)と、他方側のコンクリート漏水防止部材10の充填材12の端面25(補強カバー材14においてはその端面25の位置から外側に伸びる伸張部26を有している)、とを接合させる。その際に、端面24を上方に端面25を下方に位置させ、それら端面24と端面25とを接着剤で接着させる。更に、下側に位置するコンクリート漏水防止部材10の補強カバー材14の伸張部26を上方に伸びるように配置し、その伸張部26を上側に位置するコンクリート漏水防止部材10の補強カバー材14の上に重ね合わせると共に、その重ね合わせた接合箇所を接着剤で接着する。
【0034】
一方のコンクリート漏水防止部材10の伸張部26を他方のコンクリート漏水防止部材10の補強カバー材14の上に重ね合わせて接着することによって、コンクリート漏水防止部材10同士の接合面の剥がれの防止に寄与する。更に、伸張部26の先端を上方に向けた状態で、伸張部26を他方のコンクリート漏水防止部材10の補強カバー材14の上に接着しているので、端面24と端面25との接着箇所が万一剥離したとしても、伸張部26による接着箇所によって漏水の発生を防止することができる。
【実施例2】
【0035】
次に本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図6は本発明に係る他のコンクリート漏水防止部材をコンクリート躯体に固定する前の状態を示す断面図、図7は図6の状態を示す斜視図である。この実施例2の発明において図1乃至図2と同一符号は同一部材を示す。実施例2の発明におけるコンクリート漏水防止部材60は、実施例1で示したコンクリート漏水防止部材10から発泡ゴムや合成樹脂発泡体等を素材とする充填材12を取り除いたものである。即ち、コンクリート漏水防止部材60は、遮水性と可撓性(柔軟性)と難燃性と耐寒性とがあり引張りに強い特殊樹脂エラストマー等を素材とする補強カバー材14から成るものである。補強カバー材14は、コンクリート躯体30の不良箇所31から切り込みによって形成される導水溝62を覆うための表面部材16と、その表面部材16と一体に形成される両側の端部部材18とから成る。
【0036】
端部部材18は、コンクリート躯体30にコンクリート漏水防止部材60を取付ける際に、コンクリート躯体30に埋め込まれるものであって、コンクリート躯体30に固定された際に表面部材16の外表面より外側に突出しないように設定されるものである。この端部部材18は、表面部材16に対して直角方向に伸びる支柱部20と、その支柱部20に対してほぼ直角方向に伸びる第一腕部22a並びに第二腕部22bとから成る。腕部の数は1個でも3個以上であっても良い。
【0037】
次に、実施例2のコンクリート漏水防止部材60を使用する場合について説明する。コンクリート漏水防止部材60を使用する場合には、コンクリート躯体30の表面において導水溝40とは接続しない位置でしかもその近辺の両側の位置に、端部部材18を充分収容できる大きさの取付け溝64を形成する。実施例1のコンクリート漏水防止部材10を使用する場合には、コンクリート躯体30に形成する切り込み溝46や入口溝48は導水溝52(不良箇所31と通じている)と連絡しているのに対し、実施例2のコンクリート漏水防止部材60では、コンクリート躯体30に形成する取付け溝64は、導水溝62(不良箇所31と通じている)と連絡しないものとする。
【0038】
コンクリート漏水防止部材60をコンクリート躯体30に取付ける場合には、図8に示すように、補強カバー材14の両側の端部部材18をそれぞれコンクリート躯体30に形成した取付け溝64の中に入れる。その後、端部部材18を収容した取付け溝64に補強接着剤28を埋める。取付け溝64内に補強接着剤28を埋めた状態では、コンクリート漏水防止部材60の端部部材18が補強接着剤28によってコンクリート躯体30に接着固定される。この際、端部部材18の支柱部20や第一腕部22aや第二腕部22bが取付け溝64の内部に張り出した状態で補強接着剤28に埋められるので、端部部材18とコンクリート躯体30との固定状態は強固となる。コンクリート漏水防止部材60がコンクリート躯体30に固定された状態では、導水溝62は表面部材16で覆われ、表面部材16の両端の端部部材18は補強接着剤28でコンクリート躯体30の取付け溝64に埋められているので、導水溝62を流れる水は補強接着剤28によって外部に漏れることは無い。
【0039】
実施例2のコンクリート漏水防止部材60では、導水溝62内に大量の水が流れたり導水溝62内の水が凍結したりして、大きな背圧がコンクリート漏水防止部材60にかかっても、その背圧がそのまま表面部材16の全域で圧力を吸収し、図9に示すように表面部材16が外部に向けて膨らむ。このように、柔軟性があり引張りに強い表面部材16の膨らみによって凍結による背圧(閉塞圧)の圧力を吸収することで、コンクリート躯体30の剥離や破損を回避することができる。実施例2に係るコンクリート漏水防止部材60では、導水溝40の内部が凍結や閉塞した場合に表面部材16が外部に向けて膨らむため、表面部材16の膨らみ状況の程度を目視で確認することができる。これによって、凍結以外の場合には清掃を行ったり、遊離石灰等で導入溝52が詰まった場合には、コンクリート漏水防止部材60の表面を木槌等で叩くことによって遊離石灰等を取り除いたり、場合によっては導入溝40の清掃を行ったりすることができる。また、取付け溝64の幅が狭いので、外表面をきれいに塗らなければならない補強接着剤28の作業時間を短縮することができ、作業コストを低減することができる。
【0040】
実施例2のコンクリート漏水防止部材60は、実施例1で示したコンクリート漏水防止部材10から充填材12を無くしたものである。このため、実施例2のコンクリート漏水防止部材60は、必ずしも充填材12を必要としない導水溝の箇所に適応でき、実施例1のコンクリート漏水防止部材10に比べて製品価格が非常に安いものとなる。また、実施例1のコンクリート漏水防止部材10を使用する場合には、コンクリート躯体30に奥行きが深く幅が広い厳密な間隔aの接触用壁面36の切り込み溝46を形成しなければならなかったが、実施例2のコンクリート漏水防止部材60を使用する場合には、コンクリート躯体30に形成する導水溝62も取付け溝64も奥行きが浅く幅が狭いもので良いため、溝62,64の形成作業が切り込み溝46に比べて簡単である。
【0041】
更に、実施例1のコンクリート漏水防止部材10では、充填材12を嵌合するための幅の広い切り込み溝46を形成しなければならなかったが、実施例2のコンクリート漏水防止部材60を用いる場合には、導水溝62の幅を広げる必要がないので、表面部材16の横方向の長さB(図6)を、コンクリート漏水防止部材10の表面部材16の横方向の長さA(図1)より短くすることができる。この結果、コンクリート漏水防止部材60の製品価格をコンクリート漏水防止部材10に比べて、更に安価にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る実施例1のコンクリート漏水防止部材をコンクリート躯体に固定する前の状態を示す断面図である。
【図2】図1の状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示すコンクリート漏水防止部材の先端部の断面図である。
【図4】図1の状態からコンクリート漏水防止部材をコンクリート躯体に取付けた状態を示す断面図である。
【図5】図3に示すコンクリート漏水防止部材を接合した状態を示す断面図である。
【図6】本発明に係る実施例2のコンクリート漏水防止部材をコンクリート躯体に固定する前の状態を示す断面図である。
【図7】図6の状態を示す斜視図である。
【図8】図6の状態からコンクリート漏水防止部材をコンクリート躯体に取付けた状態を示す断面図である。
【図9】図8の状態からコンクリート漏水防止部材の表面部材が膨らんだ状態を示す断面図である。
【図10】従来既知の漏水防止工法を示すもので充填材をコンクリート躯体に固定する前の状態を示す断面図である。
【図11】図10の状態から充填材をコンクリート躯体に取付けた状態を示す断面図である。
【図12】従来既知の他の漏水防止工法を示すもので充填材をコンクリート躯体に固定する前の状態を示す断面図である。
【図13】図12の状態を示す斜視図である。
【図14】図12の状態から充填材をコンクリート躯体に取付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 コンクリート漏水防止部材
12 充填材
14 補強カバー材
16 表面部材
18 端部部材
20 支柱部
22a 第一腕部
22b 第二腕部
24 端面
25 端面
26 伸長部
28 補強接着材
30 コンクリート躯体
36 接触用壁面
52 導水溝
60 コンクリート漏水防止部材
62 導水溝
64 取付け溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート躯体に形成する開口部側の溝幅が相対的に広く奥側の溝幅が相対的に狭い2段溝に取付けるものであって、前記2段溝に取付けられた際に奥側の両壁に接触するものであって伸縮性と遮水性のある充填材と、その充填材に固定され前記2段溝に取付けられた際に前記充填材より外側に位置する表面部材とその表面部材の両側にその表面部材に一体に形成されるものであって前記2段溝に取付けられた際に前記開口部側の溝の中に位置する端部部材とから成る可撓性と遮水性のある補強カバー材と、から成ることを特徴とするコンクリート漏水防止部材。
【請求項2】
補強カバー材の一端に前記充填材の端面より外方に伸びる伸張部を形成したことを特徴とする請求項1記載のコンクリート漏水防止部材。
【請求項3】
可撓性と遮水性のある素材から成るものであって、コンクリート躯体に形成される導水溝を覆うための表面部材とその表面部材の両側に形成されるものであって前記コンクリート躯体に形成される取付け溝の中に収納されるための端部部材とから成ることを特徴とするコンクリート漏水防止部材。
【請求項4】
コンクリート躯体に開口部側の溝幅が相対的に広く奥側の溝幅が相対的に狭い2段溝を形成し、表面部材とその表面部材の両側に一体に形成される端部部材とから成る可撓性と遮水性のある補強カバー材を伸縮性と遮水性のある充填材に固定したコンクリート漏水防止部材を前記充填材側を先頭に前記2段溝に向けて挿入し、前記奥側の溝の両壁に前記充填材側を接触させると共に前記開口部側の溝内に前記端部部材を位置させ、前記開口部側の溝内に補強接着剤を埋めてその補強接着剤で前記端部部材を前記コンクリート躯体に固定することを特徴とするコンクリート漏水防止工法。
【請求項5】
前記漏水防止部材において前記補強カバー材の一端に前記充填材の端面より外方に伸びる伸張部を形成し、前記漏水防止部材同士を接合させる際に一方側の漏水防止部材の前記伸張部を他方側の漏水防止部材の伸長部と反対側の箇所の補強カバー材に重ね合わせることを特徴とする請求項4記載のコンクリート漏水防止工法。
【請求項6】
コンクリート躯体に形成される導水溝とは離れた位置で前記導水溝の両側に取付け溝を形成し、表面部材とその表面部材の両側に一体に形成される端部部材とから成る可撓性と遮水性のあるコンクリート漏水防止部材のうちの前記表面部材で前記導水溝を覆うと共に前記端部部材を前記取付け溝に挿入し、前記切り込み溝内に補強接着剤を埋めてその補強接着剤で前記端部部材を前記コンクリート躯体に固定することを特徴とするコンクリート漏水防止工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−2558(P2006−2558A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369556(P2004−369556)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(504191992)東和産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】