説明

コンクリート用混和剤

【課題】コンクリート温度が35℃以上でも、調製からの経過時間が60分以上においても、流動性の保持性に優れたコンクリートが得られるコンクリート混和剤を提供する。
【解決手段】ポリオキシアルキレン基を有するエチレン系不飽和カルボン酸誘導体等の特定の単量体1とリン酸モノエステル系単量体2とリン酸ジエステル系単量体3とを共重合して得られる重合体Aと、オキシカルボン酸又はその塩、糖類及び糖アルコールからなる群から選ばれる一種以上の化合物Bとを含有するコンクリート混和剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート用混和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
流動性に優れるコンクリート用混和剤として、ポリカルボン酸系混和剤が知られている(特許文献1)。さらに、30℃を超える高温下での流動性の経時低下(スランプロス)を防止するセメント分散剤も提案されている(特許文献2)。また一方で、流動性に優れるリン酸基を有するセメント用分散剤が提案されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平8−12396号公報
【特許文献2】特開2002−167257号公報
【特許文献3】特開2000−327386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、コンクリート温度が、30℃以上、特に、35℃以上で、調製からの経過時間が60分以上になるとコンクリートの流動性の低下が顕著となり、従来の混和剤では充分ではなく、高温期のスランプロスは大きな課題となる。
【0004】
本発明の課題は、高温、例えばコンクリート温度が、35℃以上で、調製からの経過時間が60分以上において、流動性の保持性に優れたコンクリートが得られるコンクリート混和剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記一般式(1)で表される単量体1〔以下、単量体1という〕と、下記一般式(2)で表される単量体2〔以下、単量体2という〕と、下記一般式(3)で表される単量体3〔以下、単量体2という〕とを共重合して得られる重合体Aと、オキシカルボン酸又はその塩、糖類及び糖アルコールからなる群から選ばれる一種以上の化合物B〔以下、化合物Bという〕とを含有するコンクリート混和剤に関する。
【0006】
【化4】

【0007】
〔式中、R1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基、R3は水素原子又は-(CH2)q(CO)pO(AO)rR4、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、pは0又は1の数、qは0〜2の数、rはAOの平均付加モル数であり、3〜300の数、R4は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
【0008】
【化5】

【0009】
〔式中、R11は水素原子又はメチル基、R12は炭素数2〜12のアルキレン基、m1は1〜30の数、M3、M4はそれぞれ水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
【0010】
【化6】

【0011】
〔式中、R13、R15は、それぞれ水素原子又はメチル基、R14、R16は、それぞれ炭素数2〜12のアルキレン基、m2、m3は、それぞれ1〜30の数、M5は水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高温、例えばコンクリート温度が35℃以上で、調製からの経過時間が60分以上においても、流動性の保持性に優れたコンクリートが得られるコンクリート混和剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<重合体A>
重合体Aは、前述の一般式(1)で表される単量体1と、前述の一般式(2)で表される単量体2と、前述の一般式(3)で表される単量体3とを共重合して得られるリン酸エステル系重合体である。
【0014】
[単量体1]
単量体1において、一般式(1)中のR1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基である。R3は水素原子又は-(CH2)q(CO)pO(AO)r4であり、水素原子が好ましい。R4は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基であり、更に1〜12、更に1〜4、更に1、2のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。pが0の場合はAOは(CH2)qとエーテル結合、pが1の場合はエステル結合をする。qは0〜2であり、好ましくは0又は1であり、更に好ましくは0である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基が好ましく、エチレンオキシ基(以下、EO基)を含むことがより好ましく、EO基が70モル%以上、更に80モル%以上、更に90モル%以上、特に全AOがEO基であることが好ましい。rはAOの平均付加モル数であり、3〜300の数であり、重合体の水硬性組成物に対する分散性と粘性低減効果の点で、3〜300であり、好ましくは4〜120であり、より好ましくは4〜80、さらに好ましくは4〜50、特にこのましくは4〜30である。また、平均r個の繰り返し単位中にAOが異なるもので、ランダム付加又はブロック付加又はこれらの混在を含むものであっても良い。例えばAOは、EO基以外にもプロピレンオキシ基等を含むこともできる。
【0015】
単量体1としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリブチレングリコール、メトキシポリスチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸、マレイン酸との(ハーフ)エステル化物や、(メタ)アリルアルコールとのエーテル化物、及び(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アリルアルコールへの炭素数2〜4のアルキレンオキシド付加物付加物が好ましく用いられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の意味であり、(メタ)アリルは、アリル及び/又はメタリルの意味である(以下同様)。
【0016】
より好ましくはアルコキシ、特にはメトキシポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物である。具体的には、ω−メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステル、ω−メトキシポリオキシアルキレンアクリル酸エステル等を挙げることができ、ω−メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステルがより好ましい。
【0017】
重合体Aの製造に用いる単量体1は、例えば、アルコキシポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化によって得ることができる。該エステル化物は、本発明のコンクリート混和剤に用いた場合の必要添加量および粘性低減の観点から、未反応の(メタ)アクリル酸は、酸型換算で単量体1に対して5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、1.5重量%以下がさらに好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。単量体1の製造時に残留する(メタ)アクリル酸の量を低減する方法として、トッピング、スチーミング、溶媒抽出等が挙げられる。
【0018】
[単量体2]
単量体2は、一般式(2)において、R11は水素原子又はメチル基であり、R12は炭素数2〜12のアルキレン基である。m1は1〜30の数であり、M3、M4はそれぞれ水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。一般式(2)中のm1は1〜20が好ましく、1〜10が更に好ましく、1〜5が特に好ましい。
【0019】
具体的には、有機ヒドロキシ化合物のリン酸モノエステルが挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートアシッドリン酸エステル等が挙げられる。例えば、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸エステル〕等が挙げられる。中でも、製造の容易さ及び製造物の品質安定性の観点から、リン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルが好ましい。また、これらの化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩などであっても良い。
【0020】
[単量体3]
単量体3は、一般式(3)において、R13、R15は、それぞれ水素原子又はメチル基であり、R14、R16は、それぞれ炭素数2〜12のアルキレン基である。m2、m3は、それぞれ1〜30の数であり、M5は水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。一般式(3)中のm2、m3は、それぞれ1〜20が好ましく、1〜10が更に好ましく、1〜5が特に好ましい。
【0021】
具体的には、有機ヒドロキシ化合物のリン酸ジエステルが挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートアシッドリン酸ジエステル等が挙げられる。例えば、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステル等が挙げられる。中でも、製造の容易さ及び製造物の品質安定性の観点から、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルが好ましい。また、これらの化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩などであっても良い。
【0022】
単量体2及び3は、単量体2及び単量体3を含む混合単量体として用いることができる。また、単量体2及び単量体3として、一般式(4)で表される有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させて得られるリン酸エステルを用いても良い。
【0023】
単量体2及び単量体3を含む混合単量体は、例えば、一般式(4)で表される有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤を所定の仕込み比で反応させることで、反応生成物として製造することもできる。
【0024】
【化7】

【0025】
〔式中、R20は水素原子又はメチル基、R21は炭素数2〜12のアルキレン基、m4は1〜30の数を表す。〕
【0026】
一般式(4)中のm4は、1〜20が好ましく、1〜10が更に好ましく、1〜5が特に好ましい。
【0027】
リン酸化剤としては、オルトリン酸、五酸化リン(無水リン酸)、ポリリン酸、オキシ塩化リン等が挙げられ、オルトリン酸、五酸化リンが好ましい。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いることも出来る。有機ヒドロキシ化合物とリン酸化剤とを反応させる際のリン酸化剤の量は目的とするリン酸エステル組成に応じ適時決めることができる。
【0028】
単量体2及び単量体3を含む混合単量体として、例えばリン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物を製造する場合、公知の技術(例えば特開昭57−180618号)により、合成することができる。
【0029】
単量体2及び単量体3を含む混合単量体としては、モノエステル体とジエステル体とを含む市販品を使用することもでき、例えば、ホスマーM、ホスマーPE、ホスマーP(ユニケミカル)、JAMP514、JAMP514P、JMP100(何れも城北化学)、ライトエステルP−1M、ライトアクリレートP−1A(いずれも共栄社化学)、MR200(大八化学)、カヤマー(日本化薬)、Ethyleneglycol methacrylate phosphate(アルドリッチ試薬)などとして入手できる。
【0030】
上記の市販品や反応生成物にはモノエステル体(単量体2)とジエステル体(単量体3)以外の化合物を含んでいる事が確認されている。それらの他の化合物は、重合性、非重合性のものが混在していると考えられるが、本発明ではこのような混合物(混合単量体)をそのまま使用することができる。
【0031】
本発明に係る重合体Aは、単量体1と、単量体2と、単量体3とを、共重合させて得られるリン酸エステル系重合体である。単量体2及び単量体3を含有する混合単量体を用いることも好ましい。
【0032】
単量体の共重合に際して、単量体1と、単量体2、3とのモル比は、単量体1/(単量体2+単量体3)=5/95〜95/5、更に、10/90〜90/10が好ましい。また、単量体1と単量体2と単量体3のモル比は、単量体1/単量体2/単量体3=5〜95/3〜90/1〜80、更に5〜96/3〜80/1〜60(ただし合計は100である)が好ましい。なお、単量体2と単量体3については、酸型の化合物に基づきモル比やモル%を算出するものとする(以下、同様)。
【0033】
また、重合体Aの製造では、反応に用いる全単量体中、単量体3の比率を1〜60モル%、更に1〜30モル%とすることが好ましい。
【0034】
また、単量体2と単量体3のモル比を、単量体2/単量体3=99/1〜4/96、更に99/1〜5/95とすることが好ましい。
【0035】
ゲル化を抑制する観点から、単量体2及び/又は単量体3を含む単量体溶液のpHを7以下で反応に用いることが好ましい。
【0036】
以下、ゲル化抑制、好適分子量の調整及び水硬性組成物用分散剤の性能設計の観点から、更に好ましい製造条件を説明する。このような観点から、共重合の際に、単量体1、2及び3の合計モル数に対して4モル%以上、更に6モル%以上、特に8モル%以上の連鎖移動剤を使用することが好ましい。また、連鎖移動剤の使用量の上限は、単量体1、2及び3の合計モル数に対して好ましくは100モル%以下、より好ましくは60モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、特に好ましくは15モル%以下とすることができる。更に詳しくは、(1)単量体1のrが3〜30の場合で、
(1−1)単量体2と単量体3の単量体1、2及び3の合計のモル比が50モル%以上の場合は、連鎖移動剤は、単量体1、2及び3の合計に対して6〜100モル%、特に8〜60モル%を用いるのが好ましく、
(1−2)単量体2と単量体3の単量体1、2及び3の合計中のモル比が50モル%未満の場合は、連鎖移動剤は、単量体1、2及び3の合計に対して4〜60モル%、特に5〜30モル%を用いるのが好ましい。
(2)重合体Aに用いる単量体1のrが30超の場合は、連鎖移動剤は、単量体1〜3に対して6〜50モル%、特に8〜40モル%を用いるのが好ましい。
【0037】
単量体2と3の反応率は60%以上、更に70%以上、更に80%以上、更に90%以上、特に95%以上を目標に行うことが好ましく、連鎖移動剤の使用量は、この観点から選定することができる。ここに、単量体2と3の反応率は、下記の式によって算出する。
【0038】
【数1】

【0039】
なお、反応開始時と反応終了時の反応系中のリン含有化合物中の単量体2と単量体3のエチレン性不飽和結合の割合(モル%)は、下記の1H−NMRの測定結果に基づき算出することができる。
1H−NMR条件]
水に溶解した重合体Aを減圧乾燥したものを3〜4重量%の濃度で重メタノールに溶解し、1H−NMRを測定する。エチレン性不飽和結合の残存率は、5.5〜6.2ppmの積分値により測定される。なお、1H−NMRの測定は、Varian社製「Mercury 400 NMR」を用い、データポイント数42052、測定範囲6410.3Hz、パルス幅4.5μs、パルス待ち時間10S、測定温度25.0℃の条件で行う。
【0040】
重合体Aの製造においては、上記単量体1、2及び3の他に、共重合可能なその他の単量体を用いることもできる。共重合可能な他の単量体としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、これら何れかのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又はアミン塩を挙げることができる。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのアクリル酸系単量体を挙げることができ、またこれらの何れか1種以上のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、メチルエステル、エチルエステルや無水マレイン酸などの無水化合物であっても良い。更に、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−(メタ)アクリルアミド−2−メタスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−エタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、スチレン、スチレンスルホン酸などが挙げられる。全単量体中、単量体1、2及び3の合計の割合は、30〜100モル%、更に50〜100モル%、特に75〜100モル%が好ましく、更に、95モル%超〜100モル%、更に97〜100モル%が好ましい。
【0041】
重合体Aの製造は、好ましくは所定量の連鎖移動剤の存在下で、単量体を共重合させる。また、共重合可能な他の単量体や重合開始剤等を用いても良い。
【0042】
単量体1、2及び3の反応温度は、40〜100℃、更に60〜90℃が好ましく、反応圧力はゲージ圧で101.3〜111.5kPa(1〜1.1atm)、更に101.3〜106.4kPa(1〜1.05atm)が好ましい。
【0043】
なお、反応系のpHは、必要に応じて、無機酸(リン酸、塩酸、硝酸、硫酸等)や、NaOH、KOH、トリエタノールアミンなどを用いて調整できる。
【0044】
ここで、単量体2及び/又は単量体3を含む単量体溶液は、pH測定上、含水系(すなわち、溶媒が水を含むこと)である事が好ましいが、非水系の場合には必要量の水を加えて測定しても良い。単量体溶液の均一性、ゲル化防止、性能低下の抑制の観点で、pHは7以下が好ましく、0.1〜6がより好ましく、更に0.2〜4.5が好ましい。また、単量体1もpH7以下の単量体溶液として用いることが好ましい。このpHは、20℃のものである。
【0045】
本発明では、反応途中(反応開始時〜反応終了時)で採取した反応液の20℃でのpHを、反応中のpHとする。反応中のpHが7以下となることが明らかな条件(単量体比率、溶媒、その他の成分等)で反応を開始することが好ましい。
【0046】
なお、反応系が非水系の場合は、pH測定可能な量の水を反応系に加えて測定することができる。
【0047】
重合体Aの製造方法において、単量体1、2及び3は、以下の(1)、(2)に例示した条件で反応を行えば、その他の条件の考慮の下で、通常は、反応中のpHも7以下になると考えられる。
(1)単量体1、2及び3を全て含むpH7以下の単量体溶液を、単量体1、2及び3の共重合反応に用いる。
(2)単量体1、2及び3の共重合反応をpH7以下で開始する。すなわち、単量体1、2及び3を含む反応系を、pH7以下にした後、反応を開始する。
【0048】
[連鎖移動剤]
連鎖移動剤は、ラジカル重合における連鎖移動反応(成長しつつある重合体ラジカルが他の分子と反応してラジカル活性点の移動が起こる反応)をもたらす機能を有し、連鎖単体の移動を目的として添加される物質である。
【0049】
連鎖移動剤としては、チオール系連鎖移動剤、ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤等が挙げられ、チオール系連鎖移動剤が好ましい。
【0050】
チオール系連鎖移動剤としては、−SH基を有するものが好ましく、特に一般式HS−R−Eg(ただし、式中Rは炭素原子数1〜4の炭化水素由来の基を表し、Eは−OH、−COOM、−COOR’または−SO3M基を表し、Mは水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基または有機アミン基を表し、R’は炭素原子数1〜10のアルキル基を表わし、gは1〜2の整数を表す。)で表されるものが好ましく、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等が挙げられ、単量体1〜3を含む共重合反応での連鎖移動効果の観点から、メルカプトプロピオン酸、メルカプトエタノールが好ましく、メルカプトプロピオン酸が更に好ましい。これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0051】
ハロゲン化炭化水素系連鎖移動剤としては、四塩化炭素、四臭化炭素などが挙げられる。
【0052】
その他の連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、ジペンテン、2−アミノプロパン−1−オールなどを挙げることができる。連鎖移動剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
【0053】
[重合開始剤]
重合体Aの製造方法では、重合開始剤を使用することが好ましく、特に、単量体1、2及び3の合計モル数に対して重合開始剤を5モル%以上、更に7〜50モル%、特に10〜30モル%使用することが好ましい。
【0054】
水系の重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム塩又はアルカリ金属塩あるいは過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジハイドレート等の水溶性アゾ化合物が使用できる。また、重合開始剤と併用して、亜硫酸水素ナトリウム、アミン化合物などの促進剤を使用することもできる。
【0055】
[溶媒]
重合体Aの製造では、溶液重合法で実施することができ、その際に使用される溶媒としては、水、あるいは、水と、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールアセトン、メチルエチルケトン等とを含有する含水溶媒系の溶媒が挙げられる。取り扱いと反応設備から考慮すると、水が好ましい。特に水系の溶媒を用いる場合、単量体2及び/又は単量体3を含む単量体溶液のpHは7以下であることが好ましく、更に0.1〜6、特に0.2〜4で反応に用いて共重合反応を行うことが、モノマー混液の均一性(取り扱い性)、モノマー反応率の観点や、リン酸系化合物のピロ体の加水分解により架橋を抑制する点で好ましい。
【0056】
重合体Aの製造方法の一例を示す。反応容器に所定量の水を仕込み、窒素等の不活性気体で雰囲気を置換し昇温する。予め単量体1、単量体2、単量体3、連鎖移動剤を水に混合溶解したものと、重合開始剤を水に溶解したものとを用意し、0.5〜5時間かけて反応容器に滴下する。その際、各単量体、連鎖移動剤及び重合開始剤を別々に滴下してもよく、また、単量体の混合溶液を予め反応容器に仕込み、重合開始剤のみを滴下することも可能である。すなわち、連鎖移動剤、重合開始剤、その他の添加剤は、単量体溶液とは別に添加剤溶液として添加しても良いし、単量体溶液に配合して添加してもよいが、重合の安定性の観点からは、単量体溶液とは別に添加剤溶液として反応系に供給することが好ましい。何れの場合も、単量体2及び/又は単量体3を含有する溶液はpH7以下が好ましい。また、酸剤等により、好ましくはpHを7以下に維持して共重合反応を行い、好ましくは所定時間の熟成を行う。なお、重合開始剤は、全量を単量体と同時に滴下しても良いし、分割して添加しても良いが、分割して添加することが未反応単量体の低減の点では好ましい。例えば、最終的に使用する重合開始剤の全量中、1/2〜2/3の重合開始剤を単量体と同時に添加し、残部を単量体滴下終了後1〜2時間熟成した後、添加することが好ましい。必要に応じ、熟成終了後に更にアルカリ剤(水酸化ナトリウム等)で中和し、本発明に係るリン酸エステル系重合体を得る。この製造例は、本発明に係る重合体Aの製造方法として好適である。
【0057】
反応系の単量体1、2及び3並びに共重合可能なその他の単量体の総量は、5〜80重量%が好ましく、10〜65重量%がより好ましく、20〜50重量%が特に好ましい。
【0058】
重合体Aは、重量平均分子量(Mw)が10,000〜150,000であることが好ましい。この重合体Aは、分散効果の発現や粘性低減効果の観点から、Mwが10,000以上であり、好ましくは12,000以上、さらに好ましくは13,000以上、より好ましくは14,000以上、特に好ましくは15,000以上で、架橋による高分子量化、ゲル化の抑制や性能面では分散効果や粘性低減効果の観点から、150,000以下であり、好ましくは130,000以下、さらに好ましくは120,000以下、より好ましくは110,000以下、特に好ましくは100,000以下であり、前記両者の観点から、好ましくは12,000〜130,000、より好ましくは13,000〜120,000、さらに好ましくは14,000〜110,000、特に好ましくは15,000〜100,000である。この範囲のMwを有し、かつMw/Mnが1.0〜2.6であることが好ましい。ここで、Mnは数平均分子量である。
【0059】
重合体AのMw及びMnは、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されたものである。
[GPC条件]
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算
【0060】
また、上記条件でのGPC法で得られる分子量分布を示すチャートのパターンにおいて、分子量10万以上の面積が当該チャート全体の面積の5%以下であることが、分散性(必要添加量低減)や粘性低減効果の点でより好ましい。
【0061】
<化合物B>
化合物Bは、高温で時間が経過しても、重合体Aによる流動性の付与効果を低下させないように働く。化合物Bのうち、オキシカルボン酸は、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸及びクエン酸から選ばれる一種以上が好ましい。オキシカルボン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩等の有機塩、無機塩が挙げられる。また、化合物Bのうち、糖類は、単糖類、オリゴ糖類及び多糖類から選ばれる一種以上の化合物が好ましい。単糖類は、グルコース、フラクトース、ガラクトース、キシロース、アビトース、リポーズ、異性化糖等が、オリゴ糖としては、二糖類、三糖類等が挙げられ、サッカロース、マルトース、デキストリン等が挙げられる。また、これら単糖類、オリゴ糖類を含む糖蜜類が挙げられる。また、化合物Bのうち、糖アルコールは、エリトリトール、アラビトール、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール等が挙げられ、ソルビトールが好ましい。
【0062】
化合物Bとしては、オキシカルボン酸又はその塩、糖類が好ましく、糖類が特に好ましく、なかでもサッカロースがより好ましい。コンクリート温度が35℃を超える過酷な条件では、グルコース等の単糖類、サッカロース等の二糖類、グルコン酸等のオキシカルボン酸又はその塩が好ましく、特に、サッカロースが好ましい。
【0063】
<コンクリート混和剤>
本発明のコンクリート混和剤は、重合体Aと化合物Bとを含有する。使用目的によって配合比率は任意に調整できるが、流動性発現と35℃以上の流動保持性の観点から、重合体Aと化合物Bの重量比(重合体A/化合物B)は、重合体A/化合物B=100/1〜100/50が好ましく、100/3〜100/40がより好ましく、100/3〜100/30が特に好ましい。
【0064】
本発明のコンクリート混和剤は、例えば、重合体Aを含有する水溶液と化合物Bを含有する水溶液とを混合することで得られる。作業性の観点から、液体状であることが好ましい。
【0065】
本発明のコンクリート混和剤は、水硬性粉体、特にセメント100重量部に対し、固形分濃度、好ましくは重合体Aと化合物Bの合計の固形分濃度で、0.01〜5重量部、更に0.05〜2重量部の比率で用いられることが、流動性発現と35℃以上の流動保持性の点で好ましい。
【0066】
本発明のコンクリート混和剤は、上記一般式(1)で表される単量体1と、下記の一般式(5)で表される単量体5とを共重合して得られる重合体Cを含有することができる。
【0067】
【化8】

【0068】
〔式中、R5〜R7は、それぞれ水素原子、メチル基又は(CH2)sCOOM2であり、(CH2)sCOOM2はCOOM1又は他の(CH2)sCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。sは0〜2の数を表す。M1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルケニル基を表す。〕
【0069】
[単量体1]
重合体Cを得る場合、単量体1において、一般式(1)中のR1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基である。R3は水素原子又は-(CH2)q(CO)pO(AO)r4であり、水素原子が好ましい。R4は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基であり、更に1〜12、更に1〜4、更に1、2のアルキル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。pが0の場合はAOは(CH2)qとエーテル結合、pが1の場合はエステル結合をする。qは0〜2であり、好ましくは0又は1であり、更に好ましくは0である。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基が好ましく、エチレンオキシ基(以下、EO基)を含むことがより好ましく、EO基が70モル%以上、更に80モル%以上、更に90モル%以上、特に全AOがEO基であることが好ましい。rはAOの平均付加モル数であり、3〜300の数であり、好ましくは5〜120である。また、平均r個の繰り返し単位中にAOが異なるもので、ランダム付加又はブロック付加又はこれらの混在を含むものであっても良い。例えばAOは、EO基以外にもプロピレンオキシ基等を含むこともできる。
【0070】
重合体Cがコンクリートの初期強度と流動性をより高く発現するために、一般式(1)中のrは50〜300が好ましく、さらに110〜300が好ましく、重合性からrは200以下、更に150以下、特に130以下が好ましいので、総合的な観点から、rとしては110〜200、更に110〜150、特に110〜130が好ましい。コンクリートの粘性を更に低くする観点から、一般式(1)中のrは3〜100が好ましく、3〜50がより好ましい。
【0071】
単量体1としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリブチレングリコール、メトキシポリスチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸、マレイン酸との(ハーフ)エステル化物や、(メタ)アリルアルコールとのエーテル化物、及び(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アリルアルコールへの炭素数2〜4のアルキレンオキシド付加物付加物が好ましく用いられる。
【0072】
より好ましくはアルコキシ、特にはメトキシポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物である。具体的には、ω−メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステル、ω−メトキシポリオキシアルキレンアクリル酸エステル等を挙げることができ、ω−メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステルがより好ましい。
【0073】
重合体Cが、rの異なる複数の単量体1を用いて得られる場合は、rは重合体全体の平均値を表す。例えば、重合体Cがr=r1である単量体をx1モル%、r=r2である単量体をx2モル%用いて得られる場合、rは、r=(r11+r22)/(x1+x2)により求められる。
【0074】
[単量体5]
単量体5において、一般式(5)中のR5〜R7は、それぞれ水素原子、メチル基又は(CH2)sCOOM2であり、(CH2)sCOOM2はCOOM1又は他の(CH2)sCOOM2と無水物を形成していてもよい。その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。sは0〜2の数を表す。R5は水素原子が好ましく、R6はメチル基が好ましい。R7は水素原子又は(CH2)sCOOM2が好ましい。
【0075】
1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアルケニル基である。M1、M2は、それぞれ水素原子、アルカリ金属が好ましい。
【0076】
具体的には、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸系単量体、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のジカルボン酸系単量体、又はこれらの無水物もしくは塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキル(炭素数2〜8)アンモニウム塩)もしくはエステルが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、更に好ましくは(メタ)アクリル酸又はこれらのアルカリ金属塩である。
【0077】
重合体Cは、例えば反応容器に水を仕込み昇温し、その中で単量体1と単量体5とを連鎖移動剤等の存在下、モル比及び重量比を一定として反応させ、熟成することにより製造することができる。必要により熟成後中和する。
【0078】
重合体Cの製造に用いる単量体1と単量体5の重量比(単量体1/単量体5)は97/3〜3/97が好ましく、95/5〜5/95がより好ましく、90/10〜10/90が更に好ましい。
【0079】
重合体Cは、該重合体を製造するための全単量体に対する単量体5の平均重量比(YI)が1〜30(重量%)であることが好ましい。平均重量比は、〔単量体5の合計量/重合体Cの合成に用いた全単量体の合計量〕×100(重量%)で表される。重合体Cの汎用性をより広くするには、該重合体Cの平均重量比とは異なる平均重量比(YII)により製造された重合体C’を併用することが好ましい。
【0080】
重合体C及びC’は、平均重量比(YI)と(YII)とが2以上異なるように選択することが好ましい。なお、重合体CとC’とで、製造に用いる単量体1及び単量体5の種類が異なっていても同一であってもよいが、同一の種類のものを用いるのが好ましい。
【0081】
また、本発明では、重合体Bとして、単量体1の少なくとも1種と単量体5の少なくとも1種とを共重合させて得られ、且つ前記単量体1と単量体5のモル比[単量体1]/[単量体5]が反応途中において少なくとも1回変化されている共重合体混合物を用いることもできる。このような共重合体混合物は、反応系に添加する単量体1と単量体5のモル比[単量体1]/[単量体5]を反応途中において少なくとも1回変化することにより製造することができる。その際、モル比[単量体1]/[単量体5]の最大値と最小値の差が少なくとも0.05、特に0.05〜2.5の範囲にあることが好ましい。
【0082】
重合体Cを用いる場合、重合体Aと重合体Cの重量比は、重合体A/重合体C=99/1〜20/80、更に、95/5〜30/70、特に90/10〜50/50が好ましい。
【0083】
本発明のコンクリート混和剤は、その他の添加剤(材)を含有することもできる。例えば、樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルカンスルホネート、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル(塩)、蛋白質材料、アルケニルコハク酸、α−オレフィンスルホネート等のAE剤;起泡剤;増粘剤;珪砂;AE減水剤;塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、沃化カルシウム等の可溶性カルシウム塩、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物等、硫酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸塩、チオ硫酸塩、蟻酸(塩)、アルカノールアミン等の早強剤又は促進剤;発泡剤;樹脂酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等の防水剤;高炉スラグ;流動化剤;ジメチルポリシロキサン系、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル系、鉱油系、油脂系、オキシアルキレン系、アルコール系、アミド系等の消泡剤;防泡剤;フライアッシュ;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系、アミノスルホン酸系、ポリマレイン酸系等の高性能減水剤;シリカヒューム;亜硝酸塩、燐酸塩、酸化亜鉛等の防錆剤;ポリアクリル酸アミド、ポリエチレングリコール、オレイルアルコールのEO付加物もしくはこれとビニルシクロヘキセンジエポキシドとの反応物等の合成系等の水溶性高分子;(メタ)アクリル酸アルキル等の高分子エマルジョンが挙げられる。本発明のコンクリート混和剤の全固形分中、重合体Aと化合物Bの合計濃度は、50〜100重量%、更に、80〜100重量%であることが好ましい。
【0084】
<コンクリート>
本発明の混和剤の対象となるコンクリートは、水硬性粉体を含有する水硬性組成物であり、水硬性粉体とは、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸セメント等のセメントであり、またこれらに高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加されたものでもよい。なお、これらの粉体に骨材として、砂、砂及び砂利が添加されて最終的に得られる水硬性組成物が、一般にそれぞれモルタル、コンクリートなどと呼ばれている。本発明の混和剤は、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、グラウト用、地盤改良用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野においても有用である。
【0085】
該コンクリートは、水/水硬性粉体比〔スラリー中の水と水硬性粉体の重量百分率(重量%)、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記される。〕65重量%以下、更に10〜60重量%、更に12〜57重量%、更に15〜55重量%、特に20〜55重量%であることができる。特に、30〜50重量%の配合においても本発明の混和剤の効果は顕著に奏される。
【実施例】
【0086】
製造例A1
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水366gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数23)450g(有効分60.8重量%、水分35重量%)とリン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物であるリン酸エステル化物(A)71.6gと3−メルカプトプロピオン酸4.5gを混合したものと、過硫酸アンモニウム8.4gを水48gに溶解したものの2者を、それぞれ1.5時間かけて滴下した。1時間の熟成後、過硫酸アンモニウム1.8gを水10gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に32%水酸化ナトリウム水溶液44.4gで中和し、重量平均分子量35000の重合体a−1を得た。(単量体重合pH:1.0、反応率100%)
【0087】
なお、本製造例で使用したリン酸エステル化物(A)は、反応容器中にメタクリル酸2-ヒドロキシエチル200gと85%リン酸(H3PO4)36.0gを仕込み、5酸化2リン(無水リン酸)(P2O5)89.1gを温度が60℃を超えないように冷却しながら徐々に添加した。終了後、反応温度を80℃に設定し、6時間反応させ、冷却して得られたものである。以下の製造例の一部でも、このリン酸エステル化物(A)を使用した。
【0088】
製造例A2
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水371gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数23)500g(有効分60.8重量%、水分35重量%)とリン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物であるリン酸エステル化物(A)34.1gと3−メルカプトプロピオン酸2.8gを混合したものと、過硫酸アンモニウム7.2gを水41gに溶解したものの2者を、それぞれ1.5時間かけて滴下した。1時間の熟成後、過硫酸アンモニウム1.6gを水9gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に32%水酸化ナトリウム水溶液21.2gで中和し、重量平均分子量34000の重合体a−2を得た。(単量体重合pH:1.1、反応率100%)
【0089】
製造例A3
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水381gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数23)520g(有効分60.8重量%、水分35重量%)とリン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物であるリン酸エステル化物(A)28.6gと3−メルカプトプロピオン酸2.8gを混合したものと、過硫酸アンモニウム7.2gを水41gに溶解したものの2者を、それぞれ1.5時間かけて滴下した。1時間の熟成後、過硫酸アンモニウム1.6gを水9gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に32%水酸化ナトリウム水溶液17.7gで中和し、重量平均分子量36000の重合体a−3を得た。(単量体重合pH:1.1、反応率100%)
【0090】
製造例A4
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水471gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数9)290g(有効分84.4重量%、水分10重量%)とリン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物であるリン酸エステル化物(A)93.8gと3−メルカプトプロピオン酸11.3gを混合したものと、過硫酸アンモニウム8.2gを水46gに溶解したものの2者を、それぞれ1.5時間かけて滴下した。1時間の熟成後、過硫酸アンモニウム3.3gを水19gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に32%水酸化ナトリウム水溶液58.2gで中和し、重量平均分子量25000の重合体a−4を得た。(単量体重合pH:1.0、反応率99%)
【0091】
製造例A5
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水489gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数9)290g(有効分84.4重量%、水分10重量%)とリン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物であるリン酸エステル化物(A)53.2gと3−メルカプトプロピオン酸9.1gを混合したものと、過硫酸アンモニウム7.8gを水44gに溶解したものの2者を、それぞれ1.5時間かけて滴下した。1時間の熟成後、過硫酸アンモニウム3.1gを水18gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に32%水酸化ナトリウム水溶液33.0gで中和し、重量平均分子量21000の重合体a−5を得た。(単量体重合pH:1.1、反応率98%)
【0092】
製造例A6
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水189gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの付加モル数9:新中村化学製NKエステルM90G)40gとリン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物(ホスマーM:ユニケミカル(株))43.8gと3−メルカプトプロピオン酸1.6gとを水40gに溶解したものと、過硫酸アンモニウム5.4gを水62gに溶解したものの2者を、それぞれ1.5時間かけて滴下した。1時間の熟成後、過硫酸アンモニウム2.7gを水31gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に20%水酸化ナトリウム水溶液54.4gで中和し、重量平均分子量51000の重合体a−6を得た。(単量体重合pH:1.1、反応率100%)
【0093】
製造例A7
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水218gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキサイドの付加モル数23:新中村化学製NKエステルM230G)55gとリン酸モノ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルの混合物(ホスマーM:ユニケミカル(株))32.3gと3−メルカプトプロピオン酸1.1gとを水55gに溶解したものと、過硫酸アンモニウム3.8gを水43gに溶解したものの2者を、それぞれ1.5時間かけて滴下した。1時間の熟成後、過硫酸アンモニウム1.9gを水22gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に20%水酸化ナトリウム水溶液40.1gで中和し、重量平均分子量51000の重合体a−7を得た。(単量体重合pH:1.3、反応率100%)
【0094】
製造例C1
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水281.4g仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω-メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイドの付加モル数120)336.5gとメタクリル酸22.2gと2-メルカプトエタノール1.89gを水238.2gに溶解したものと、過硫酸アンモニウム3.68gを水45gに溶解したものの二者をそれぞれ1.5時間かけて滴下した。引き続き、過硫酸アンモニウム1.47gを水15gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後1時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に48%水酸化ナトリウム18.7gで中和し、共重合体c−1を得た。(重量平均分子量79000)
【0095】
製造例C2
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水246.4g仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で56℃まで昇温した。ω-メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイドの付加モル数10)148.8gとメタクリル酸39.2gと3-メルカプトプロピオン酸2.32gを混合したものと、過硫酸アンモニウム5%水溶液43.3gの二者をそれぞれ1.5時間かけて滴下した。その後3時間同温度(56℃)で熟成した。熟成終了後に48%水酸化ナトリウムでpH=6まで中和し、共重合体c−2を得た。(分子量34000)
【0096】
以下の実施例、比較例で使用した化合物Bを表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
上記重合体A、化合物B、その他の共重合体を用いて、コンクリート混和剤を調製し、表2の配合のコンクリートに対して用いた場合の評価を行った。結果を表3に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
表2中の使用材料は以下のものである。
W(水):水道水(和歌山紀ノ川上水道)
C(セメント):普通ポルトランドセメント、密度=3.16
S1(細骨材):茨城県鹿島郡波崎産陸砂、密度=2.60
S2(細骨材):茨城県佐野市戸室町産砕砂、密度=2.60
G(粗骨材):茨城県佐野市戸室町産砕石、密度=2.65
【0101】
(性能評価)
35℃の環境室で、コンクリート配合30リットル分の材料を強制2軸ミキサー(50リットル)に投入し、90秒間混練りし、排出直後のコンクリートスランプが22〜24cmになるように混和剤の添加量を調整した(コンクリート温度、35℃)。混練直後から30分おきに90分後までスランプ値を測定し、混練直後のスランプ値に対するスランプ保持率を算出した。結果を表3に示す。なお、スランプ値は、JIS−A1101により測定した。
【0102】
【表3】

【0103】
表3中、添加量は、重合体(重合体A、C、一部の化合物B)と化合物Bの合計の、有効分としての対セメント重量%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単量体1と、下記一般式(2)で表される単量体2と、下記一般式(3)で表される単量体3とを共重合して得られる重合体Aと、オキシカルボン酸又はその塩、糖類及び糖アルコールからなる群から選ばれる一種以上の化合物Bとを含有するコンクリート混和剤。
【化1】


〔式中、R1、R2は、それぞれ水素原子又はメチル基、R3は水素原子又は-(CH2)q(CO)pO(AO)rR4、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、pは0又は1の数、qは0〜2の数、rはAOの平均付加モル数であり、3〜300の数、R4は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表す。〕
【化2】


〔式中、R11は水素原子又はメチル基、R12は炭素数2〜12のアルキレン基、m1は1〜30の数、M3、M4はそれぞれ水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
【化3】


〔式中、R13、R15は、それぞれ水素原子又はメチル基、R14、R16は、それぞれ炭素数2〜12のアルキレン基、m2、m3は、それぞれ1〜30の数、M5は水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を表す。〕
【請求項2】
化合物Bが、単糖類又は二糖類である請求項1記載のコンクリート用混和剤。
【請求項3】
重合体Aと化合物Bの重量比(重合体A/化合物B)が、100/1〜100/50である請求項1又は2記載のコンクリート用混和剤。
【請求項4】
重合体Aが単量体1〜3をpH7以下で共重合して得られたものである請求項1〜3いずれか記載のコンクリート用混和剤。
【請求項5】
重合体Aが単量体1〜3を連鎖移動剤の存在下で共重合して得られたものである請求項1〜4いずれか記載のコンクリート混和剤。

【公開番号】特開2007−99552(P2007−99552A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290268(P2005−290268)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】