説明

コンクリート表面に対する模様成形法およびそれに用いる化粧マット

【課題】長期にわたって耐久性に優れて塗り変える必要のない自然調等のコンクリートを形成しうる模様成形法およびそれに用いる化粧マットを提供する。
【解決手段】凹凸模様転写面4に、(A)ポリエチレングリコール類および(B)ジイソシアネート類を主成分とし、(C)トリオール、テトラオール、アミノアルコールおよびジメチロールアルカン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの架橋剤を含有する組成物を用いて形成された水溶性ウレタン樹脂層(粘着層5)を介して多数の着色粒状物6が分布されている化粧マット1を準備し、この化粧マット1の上記凹凸模様転写面4をコンクリート表面に対する接触面にしてコンクリート材料を打設し、コンクリート材料の水分により上記粘着層5の粘着力を低減させて上記着色粒状物6をコンクリート表面に移行埋設させるとともに、コンクリート表面を凹凸模様面に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表面に対する模様成形法およびそれに用いる化粧マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート表面に自然石風の凹凸模様を形成する場合、例えば、図5に示すような化粧マット(化粧型枠)10を用い、それの凹凸模様転写面13をコンクリート表面へ転写させる方法が行われる。上記化粧マット10は、通常、硬質のウレタン発泡体やウレタンエラストマーや発泡スチロール等で形成されており、その一方の面は、上記のように凹凸模様転写面13に形成され、他方の面は、平坦な背面14に形成されている。さらに、上記化粧マット10表面の少なくとも凹凸模様転写面13には、気泡を殆ど有しないスキン層12が形成されており、これによって、上記凹凸模様転写面13は優れた表面平滑性を有している。
【0003】
このような化粧マット10を用いた、コンクリート表面への凹凸模様転写成形は、具体的には、つぎのようにして行われる。すなわち、まず、施工現場で、上記化粧マット10の凹凸模様転写面13に離型剤を塗布する。つぎに、これを、図6に示すように、別途準備した型枠16と、正面対設状態で配置し、さらに、上記化粧マット10と型枠16との間の、側方の開口と底部の開口とを、別途準備した板材17で塞ぐ(側方の板材は図示せず)。その後、セメントと水とを混練してなるコンクリート材料15を調製し、これを、上記化粧マット10と型枠16との間の空隙に、その上部開口から、流し込む。そしてそのまま、上記コンクリート材料15を養成硬化させ、その後、図7に示すように、化粧マット10等を取り外すことにより、上記化粧マット10の凹凸模様が転写され、自然石風の凹凸模様が形成されたコンクリート板18が得られるようになる。
【0004】
このようにして得られたコンクリート板18を、より自然石風に見せるため、従来では、その凹凸模様面に対し、さらに吹付け材等による塗装が行われてきた。ところが、上記塗装に用いられる塗料には有機系のものが多く、変色・褪色しやすいうえ、塗料中の有機材の劣化も生じやすいことから、無機系の材質(例えば天然石等)を用いて模様成形したものと比べると、長期にわたる耐久性に劣る。そのため、定期的に塗り変え(リフレッシュ)等のメンテナンスを要し、これが、コストアップにつながっていた。
【0005】
このような不都合をなくすため、本出願人は、上記化粧マット10の凹凸模様転写面13に、予め、水溶解性の粘着剤(コンクリート材料中の水分やアルカリ成分等によって粘着力が低下する粘着剤)を用いて着色粒状物を定着させておき、コンクリート材料の打設時に、上記化粧マット10の凹凸模様をコンクリート表面に転写させると同時に、上記着色粒状物を、硬化しつつあるコンクリート材料表面に移行埋設させ(上記粘着剤はコンクリート材料中の水分によって溶融させ)、この着色粒状物によりコンクリート表面への着色を行うといった技術を、既に提案している。これにより、コンクリート表層部には、経時劣化等に対する耐久性に優れた着色層が形成されるようになる。そして、このようなコンクリート表面に対する模様成形法に用いられる水溶解性粘着剤の主成分としては、通常、ポリビニルアルコール(PVA)等が用いられる(特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−71623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、PVAは、コンクリート材料中の水分に含まれるアルカリ成分によって変性を受けることが危惧される。すなわち、PVAは、季節等によって耐アルカリ性が変化するが、上記のようにPVAが変性されると、PVAが不溶化したり、その分子鎖が切れたりすることがある。そのため、コンクリート表面に着色粒状物を移行埋設する際に、着色粒状物ごと、PVAの白色皮膜がコンクリート表面に付着し、コンクリート表面を汚染して見栄えを悪くしたり、逆に、PVAの接着力が強くなり過ぎ、着色粒状物がコンクリート表面に移行埋設されなくなるおそれがある。これを解決するため、これまでは、PVA中にホウ酸を適宜配合し、季節毎にその配合量を調整して(夏は多く配合し、冬は少なく配合する)、対処していた。しかしながら、このような作業は、非常に煩雑である。
【0007】
一方、前記化粧マット10(コンクリート材料を打設する前のもの)の運搬中に、その凹凸模様転写面13に定着させている着色粒状物が、運搬の際の振動で脱落してしまうといった不具合を生じることもあった。これは、上記着色粒状物を接着固定しているPVAの接着力が、温度や湿度といった環境変化に依存しやすく、そのために上記着色粒状物の定着性が不安定であったからである。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、コンクリート表面への凹凸模様の転写成形およびその面へのカラー転写性に優れ、長期にわたって耐久性に優れて塗り変える必要のない自然調等のコンクリートを形成しうる模様成形法およびそれに用いる化粧マットの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、凹凸模様転写面に、吸水により粘着力が減少する粘着層を介して多数の着色粒状物が分布されている化粧マットを準備し、この化粧マットの上記凹凸模様転写面をコンクリート表面に対する接触面にしてコンクリート材料を打設し、コンクリート材料の水分により上記粘着層の粘着力を低減させて上記着色粒状物をコンクリート表面に移行埋設させるとともに、コンクリート表面を上記凹凸模様転写面の転写により凹凸模様面に形成する、コンクリート表面に対する模様成形法であって、上記粘着層が、下記(A)および(B)を主成分とし下記(C)を含有する樹脂組成物を用いて形成された水溶性ウレタン樹脂層であるコンクリート表面に対する模様成形法を第1の要旨とする。
(A)ポリエチレングリコール類。
(B)ジイソシアネート類。
(C)トリオール、テトラオール、アミノアルコールおよびジメチロールアルカン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの架橋剤。
【0010】
また、本発明は、凹凸模様転写面に、吸水により粘着力が減少する粘着層を介して多数の着色粒状物が分布されている化粧マットであって、上記粘着層が、下記(A)および(B)を主成分とし下記(C)を含有する樹脂組成物を用いて形成された水溶性ウレタン樹脂層である化粧マットを第2の要旨とする。
(A)ポリエチレングリコール類。
(B)ジイソシアネート類。
(C)トリオール、テトラオール、アミノアルコールおよびジメチロールアルカン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの架橋剤。
【0011】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、水溶性ウレタン樹脂の特性に関する知見を得、これを、コンクリート表面への凹凸模様の転写成形に用いられる化粧マットにおける粘着層の構成材料として用いることを想起した。水溶性ウレタン樹脂は、通常、ポリエチレングリコール類とジイソシアネート類とを反応させて得られる直鎖構造のポリウレタン化化合物のことを指すが、これによって形成された上記粘着層は、コンクリート材料中の水分により粘着力が減少(水溶解)しやすく、しかも、季節等により耐アルカリ性等が変わったりすることがないといった利点を有する。しかしながら、上記粘着層の水溶解性が速過ぎると、コンクリートの打設を良好に行うことを目的として通常施される振動付与(バイブレーターを用いての振動付与)により、上記粘着層に定着させておいた着色粒状物が、コンクリート材料硬化前に離脱し、コンクリート躯体内に入り込んでしまうといった問題や、また、化粧マットとコンクリート材料(硬化前)とが上記粘着層の溶解によって直に接することとなって脱型不良を生じるといった問題がある。そこで、本発明者らが各種試験を行った結果、上記粘着層材料中に特定の架橋剤を含有し、粘着層の水溶解性が損なわれない範囲で、直鎖構造のポリウレタン化化合物に部分的に架橋構造を持たせたところ、上記問題も解消されるようになることを突き止め、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明では、特殊な水溶性ウレタン樹脂によって形成された粘着層を介して多数の着色粒状物が分布された凹凸模様転写面を有する化粧マットを用い、その凹凸模様転写面を、コンクリート表面に対する接触面にしてコンクリート材料を打設し、コンクリート材料の水分により上記粘着層の粘着力を低減させて、上記着色粒状物をコンクリート表面に移行埋設させるとともに、コンクリート表面を、上記凹凸模様転写面の転写により凹凸模様面となるよう成形している。このように、上記粘着層が、特殊な水溶性ウレタン樹脂によって形成されているため、コンクリート材料中のアルカリ成分による変性を受けず、その結果、コンクリート表面を上記粘着層の変性物により汚染させることがなく、着色粒状物のコンクリート表面への移行埋設も良好に行われるようになる。また、上記粘着層の材料として従来用いられたPVAのような、ホウ酸濃度の季節毎の調整といった面倒な作業も不要となる。一方、コンクリート表面層に埋設された着色粒状物は、コンクリートによる被覆効果と相まって、変色・褪色したり、劣化することもなく、長期の耐久性に優れる。したがって、従来のように一定期間後に塗り変え等する必要もなく、メンテナンスに要する費用が少なくて済む。
【0013】
また、上記特殊な水溶性ウレタン樹脂によって形成された粘着層を備えた化粧マットは、温度や湿度といった環境変化に対し、従来のものと比べると安定していることから、化粧マットの運搬時や保存時に、着色粒状物の脱落が生じずに、取り扱い易く、優れた品質を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
本発明の、コンクリート表面に対する模様成形法は、図1に示すような、粘着層5を介して多数の着色粒状物6が分布された凹凸模様転写面4を有する化粧マット1を準備し、この化粧マット1の上記凹凸模様転写面4を、コンクリート表面に対する接触面にしてコンクリート材料を打設し、コンクリート材料の水分により上記粘着層5の粘着力を低減させて、上記着色粒状物6をコンクリート表面に移行埋設させるとともに、コンクリート表面を上記凹凸模様転写面4の転写により凹凸模様面にすることにより、行われる(図2、図3参照)。そして、本発明では、上記粘着層が、特殊な水溶性ウレタン樹脂によって形成されていることを、最大の特徴とする。
【0016】
上記化粧マット1の材質としては、特に限定されるものではないが、通常、剛性発泡ウレタン樹脂や発泡スチロールが用いられる。これにより、上記化粧マット1は、打設時に打ち込まれるコンクリート材料に対して充分な機械的強度を有するマットに形成される。そして、上記化粧マット1の一方の面は、上記のように凹凸模様転写面4に形成されており、他方の面は、通常、平坦な背面7に形成される。さらに、上記化粧マット1表面の少なくとも凹凸模様転写面4には、気泡を殆ど有しないスキン層3が形成されていることが好ましい。すなわち、これにより、上記凹凸模様転写面4は優れた表面平滑性が得られるからである。なお、上記凹凸模様転写面4の形状は、本発明では特に限定されるものではない。
【0017】
上記化粧マット1において、その凹凸模様転写面4上の粘着層5は、特殊な水溶性ウレタン樹脂層によって形成されている。詳しくは、下記(A)および(B)を主成分とし下記(C)を含有する樹脂組成物を用いて形成されている。
(A)ポリエチレングリコール類。
(B)ジイソシアネート類。
(C)トリオール、テトラオール、アミノアルコールおよびジメチロールアルカン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの架橋剤。
【0018】
ここで、上記「水溶性ウレタン樹脂」とは、水にほぼ完全に溶解し得るウレタン樹脂のことをいい、オキシエチレン基を50重量%以上含有した樹脂のことをいう。また、上記「主成分」とは、組成物の特性に大きな影響を与えるもののことを意味し、通常、上記A成分およびB成分の合計が、全体の50重量%以上を占めることを意味する。そして、上記C成分の架橋剤の含有割合は、上記A成分100重量部(以下、「部」と略す)に対し、0.5〜5部の範囲に設定することが、水溶性を阻害させずに適度に強度を保持する点から好ましく、より好ましくは1〜3部の範囲内である。
【0019】
上記A成分のポリエチレングリコール類としては、特に限定されるものではなく、例えば、その重量平均分子量が1000〜30000までのポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレングリコール等があげられる。そして、これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0020】
上記B成分のジイソシアネート類としては、特に限定されるものではなく、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、3,3′−ビトリレン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4−TDIの二量体)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、カルボジイミド変性MDI、オルトトルイジンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル等があげられる。そして、これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0021】
上記C成分の架橋剤としては、トリオール(グリセリン、トリメチロールプロパン、これらにアルキレンオキサイドを数モル付加したもの等)、テトラオール(ペンタエリスリトール等)、アミノアルコール(トリエタノールアミン等)、ジメチロールアルカン酸(ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等)が用いられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、ジメチロールブタン酸(DMBA)が好ましく用いられる。なお、DMBAを上記C成分の架橋剤として用いた水溶性ウレタン樹脂には、市販品では、例えば、大原パラヂウム化学社製のパラミオンKF−19をあげることができる(パラミオンKF−19中のDMBA(C成分)含有割合:そのA成分100部に対し2部)。
【0022】
なお、上記粘着層5の材料として、仮に、水不溶性樹脂をエマルジョン化したもののみを用いた場合、その乾燥により形成される皮膜は、水不溶性のものとなるため、本発明のように水で再溶解させることができない。しかしながら、上記特殊な水溶性ウレタン樹脂に、粘度調整や皮膜強度等の他の目的として併用させることは可能である。ただし、このように水不溶性樹脂のエマルジョン等を併用する場合、その水不溶成分が、水溶性ウレタン樹脂の皮膜の乾燥後における水の分散性(再溶解性)を妨げないことが要求されるため、水溶性ウレタン樹脂組成物に対する上記水不溶成分の割合は、20重量%以下に設定することが望ましい。
【0023】
また、上記粘着層5の形成材料には、上記水溶性ウレタン樹脂組成物以外にも、例えば、水、エチレン酢酸ビニルエマルジョン、ポリアクリル酸ナトリウム、水溶性のセルロース系化合物(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,メチルセルロース等)の粘度調整剤、含硫黄系化合物等の防かび剤、酸化防止剤等を併用することが可能である。そして、これらの材料からなる液剤を塗布および乾燥(架橋)することにより生成される上記粘着層5は、その厚みが、通常、0.001〜5mmの範囲となるよう形成される。
【0024】
上記粘着層5を介して凹凸模様転写面4に接着固定される着色粒状物6としては、天然石の着色砕石粒、セラミック粒子、ガラス粒子等が用いられる。上記着色粒状物6の平均粒径は、通常、10μm〜15mmの範囲内に設定され、好ましくは10μm〜10mmの範囲内である。
【0025】
また、上記着色粒状物6として、例えば図4に示すような、セラミック粒21を核とし、その外周面に微細な顔料粒子22やセメント粒子23を吸着させてなるものを用いてもよい。これを用いると、コンクリートを打設する際に、セメント粒子23より大きなセラミック粒21が、セメントに包み込まれ、また、その顔料粒子22がセメント粒子23より細かいために分散しやすく、その結果、コンクリート表面に良好な着色層が形成されるようになる。なお、上記セラミック粒21の平均粒径は、2〜15mmの範囲に設定され、顔料粒子22の平均粒径は、5〜150μmの範囲に設定され、セメント粒子23の平均粒径は、50〜500μmの範囲に設定される。
【0026】
上記着色粒状物6を多数、上記粘着層5に分布させる方法としては、上記粘着層5に多数の着色粒状物6を圧力吹付けにより接着させる方法、上記粘着層5に多数の着色粒状物6を散布し、プレス等により埋込みアンカー処理する方法、または、両方法を組み合わせたもの等があげられる。
【0027】
ここで、上記化粧マット1を用いた、本発明の、コンクリート表面に対する模様成形法の一例を、詳細に説明する。すなわち、まず、図1に示すような化粧マット1を、先に述べたような方法により作製する。つぎに、図2に示すように、上記化粧マット1の凹凸模様転写面と、別途準備した型枠16とを、正面対設状態となるよう配置し、さらに、上記化粧マット10と型枠16との間の、側方の開口と底部の開口とを、別途準備した板材17で塞ぐ(側方の板材は図示せず)。その後、セメントと水とを混練してなるコンクリート材料15を調製し、これを、上記化粧マット10と型枠16との間の空隙に、その上部開口から、流し込む。そしてそのまま、上記コンクリート材料15を養成硬化させる。その際に、上記化粧マット1の凹凸模様転写面上に形成された粘着層が、コンクリート材料15の水分中のアルカリに変性を受けることなく良好に溶け、この粘着層が接着固定していた着色粒状物6が、コンクリート表面に、ほぼ完全に移行埋設される。そして、コンクリート材料15を完全に硬化させた後、図3に示すように、化粧マット1等を取り外すことにより、着色粒状物6により着色された凹凸模様面8を備えたコンクリート板18を得ることができる。
【0028】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例1】
【0029】
〔接着剤の調製〕
水溶性ウレタン樹脂(パラミオンKF−19、大原パラヂウム化学社製)の水溶液を接着剤として使用した。そして、上記水溶性ウレタン樹脂100部に対し、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩を0.1〜2部加え、その20℃での粘度が、約12000mPa・sとなるよう調整した。
【0030】
〔化粧マットの作製〕
所定の凹凸模様転写面(表層部分にスキン層を有する)が形成された、剛性発泡ウレタン樹脂製のマットを準備した。つぎに、その凹凸模様転写面上に、上記調製の接着剤を、従来公知の手法により塗布し、さらに、その面に対し、粒径1〜3mmの天然石の着色砕石粒を多数、圧力吹付けした。そして、上記塗布した接着剤を乾燥することにより、厚み0.1mmの粘着層を形成し、目的とする化粧マットを作製した(図1参照)。
【実施例2】
【0031】
化粧マットの作製時に用いる天然石の着色砕石粒に代えて、図4に示すような着色粒状物を用いた。なお、上記着色粒状物において、そのセラミック粒21の粒径は0.5〜1mmであり、顔料粒子22の粒径は10〜50μmであり、セメント粒子23の粒径は10〜100μmであった。これ以外は、実施例1と同様にして化粧マットを作製した。
【0032】
〔比較例〕
実施例1にて調製した接着剤に代えて、PVA水溶液を用いた。これ以外は、実施例1と同様にして化粧マットを作製した。
【0033】
このようにして得られた化粧マットを用い、下記の基準に従い、その特性評価を行った。各特性評価の試験は、5℃、25℃、40℃の温度環境下でそれぞれ実施した。そして、これらの結果を、後記の表1および表2に示した。
【0034】
〔定着性〕
各化粧マットの背面から、加振機にて100〜500Hzの振動を3時間与え、それにより脱落した着色粒状物の重量を測定し、定着性の評価を行った。すなわち、脱落した着色粒状物の重量が、初期の化粧マット総重量に対し10重量%以下であったものを○、10重量%を超えたものを×として評価した。
【0035】
〔転写率〕
各化粧マットの凹凸模様転写面を、コンクリート表面に対する接触面にしてコンクリート材料(セメントと水とを混練したもの。pH:12〜14)を打設した。その際、コンクリートを良好に充填するために、バイブレーターを使用した。ついで、コンクリート材料を養生,硬化させ、その後、上記化粧マット等を取り外した(図2、図3参照)。そして、コンクリート板表面(凹凸模様面)への着色粒状物の転写状況を、目視により観察した。すなわち、着色粒状物の転写により全面着色した場合の転写率を「100%」とし、これを基準として転写率(概数)を評価した。
【0036】
〔外観〕
各化粧マットの凹凸模様転写面を、コンクリート表面に対する接触面にしてコンクリート材料(セメントと水とを混練したもの。pH:12〜14)を打設し、ついで、コンクリート材料を養生,硬化させ、その後、上記化粧マット等を取り外した(図2、図3参照)。そして、コンクリート板の表面(凹凸模様面)の外観を、目視により評価した。すなわち、コンクリート表面が、接着剤により汚染されていないものを○、接着剤により汚染されているものを×として評価した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
上記表の結果から、実施例の化粧マットは、いずれも、環境温度に左右されず定着性の評価に優れていることから、取り扱い易く、高品質で信頼性の高いものであることがわかる。また、上記化粧マットを用いたコンクリート表面に対する模様成形法に関しても、その着色粒状物の転写率や、コンクリート表面の外観評価において、環境温度に左右されずに良好な結果が得られていることがわかる。
【0040】
これに対し、比較例の化粧マットは、環境温度が20℃の領域(25℃)では定着性が良好なものの、夏季や冬季を想定した条件(40℃,5℃)にすると問題があることがわかる。このことからも、現場における取り扱い性に難があり、実施例品と比べて品質の劣るものであることがわかる。また、この化粧マットを用いたコンクリート表面に対する模様成形状況(転写率・外観)に関しても、実施例にみられるように良好なものとなっていないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の化粧マットの一実施例を示す説明図である。
【図2】上記化粧マットを用いての模様成形法を示す説明図である。
【図3】コンクリート板を離型しているところを示す説明図である。
【図4】着色粒状物の一例を示す説明図である。
【図5】従来の化粧マットの一例を示す説明図である。
【図6】上記従来の化粧マットを用いての模様成形法を示す説明図である。
【図7】コンクリート板を離型しているところを示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 化粧マット
4 凹凸模様転写面
5 粘着層
6 着色粒状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸模様転写面に、吸水により粘着力が減少する粘着層を介して多数の着色粒状物が分布されている化粧マットを準備し、この化粧マットの上記凹凸模様転写面をコンクリート表面に対する接触面にしてコンクリート材料を打設し、コンクリート材料の水分により上記粘着層の粘着力を低減させて上記着色粒状物をコンクリート表面に移行埋設させるとともに、コンクリート表面を上記凹凸模様転写面の転写により凹凸模様面に形成する、コンクリート表面に対する模様成形法であって、上記粘着層が、下記(A)および(B)を主成分とし下記(C)を含有する樹脂組成物を用いて形成された水溶性ウレタン樹脂層であることを特徴とするコンクリート表面に対する模様成形法。
(A)ポリエチレングリコール類。
(B)ジイソシアネート類。
(C)トリオール、テトラオール、アミノアルコールおよびジメチロールアルカン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの架橋剤。
【請求項2】
上記樹脂組成物における(C)成分の含有割合が、上記(A)成分100重量部に対し、0.5〜5重量部の範囲に設定されている請求項1記載のコンクリート表面に対する模様成形法。
【請求項3】
凹凸模様転写面に、吸水により粘着力が減少する粘着層を介して多数の着色粒状物が分布されている化粧マットであって、上記粘着層が、下記(A)および(B)を主成分とし下記(C)を含有する樹脂組成物を用いて形成された水溶性ウレタン樹脂層であることを特徴とする化粧マット。
(A)ポリエチレングリコール類。
(B)ジイソシアネート類。
(C)トリオール、テトラオール、アミノアルコールおよびジメチロールアルカン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの架橋剤。
【請求項4】
上記樹脂組成物における(C)成分の含有割合が、上記(A)成分100重量部に対し、0.5〜5重量部の範囲に設定されている請求項3記載の化粧マット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−256058(P2006−256058A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75700(P2005−75700)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(504241297)株式会社ビュープランニング (8)
【Fターム(参考)】