説明

コンジュゲートされた物質を組織に送達するためのアプロチニン様ポリペプチド

本発明者らが、肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉等の細胞に効率的に輸送されるポリペプチド(Angiopep-7)を特定したことに基づいて、本発明は、ポリペプチド、該ポリペプチドを含むコンジュゲート、および前記細胞タイプと関連している疾患を治療するための方法を提供する。血液脳関門(BBB)を効率的に横切る本明細書中で特定される他のアプロチニン関連ポリペプチド(Angiopep-3、Angiopep-4a Angiopep-4b Angiopep-5、およびAngiopep-6を含む)と異なり、Angiopep-7はBBBを横切って効率的には輸送されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物送達分野における改良に関する。さらに具体的には、本発明は、ポリペプチド、本発明のポリペプチドを含むコンジュゲートおよび医薬組成物、および特定の細胞タイプ、例えば肝臓、肺、または腎臓にまで物質(薬剤)(例えば治療剤)を輸送するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓の疾患、例えば肝炎(例えばウイルス性肝炎)および肝臓の癌(例えば肝細胞癌)、および肺疾患、例えば肺癌(例えば小細胞および非小細胞肺癌)は深刻な健康上の問題である。そのような疾患のための多数の治療剤は望ましくない副作用を有する(例えば化学療法剤)か、またはin vivo安定性、輸送、または他の薬物動態学的特性等の理由で、標的組織において十分に高濃度で提供するか、または標的組織において最大の治療効果を可能にするために十分に長い期間提供することが困難である。
【発明の概要】
【0003】
したがって、標的器官または組織における治療剤および診断剤の濃度を増加させる方法および組成物が必要とされる。
【0004】
本発明者らは、本明細書中に記載のポリペプチド(例えばAngiopep-7; 配列番号112)が特定の細胞タイプ(例えば、肝臓、肺、脾臓、腎臓、および筋肉)に効率的に輸送されるが、血液脳関門(BBB)を横切って効率的には輸送されないことを見出した。該ポリペプチドは、物質(薬剤)にコンジュゲートされると、ベクターとして働き、コンジュゲートされた物質の細胞中の濃度を増加させることが可能である。本発明者らはまた、BBBを横切って効率的に輸送することができかつ、さらに、特定の細胞タイプ内に輸送することができるベクターとして、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、およびAngiopep-6 (配列番号107〜111)を特定した。したがって、本発明は、ポリペプチド、該ポリペプチドをベクターとして含むコンジュゲート、およびそのようなポリペプチドおよびコンジュゲートを用いて疾患(例えば癌)を診断および治療するための方法を特徴とする。
【0005】
したがって、第一の態様では、本発明は、以下の式を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを特徴とする:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19
[式中、X1〜X19のそれぞれ(例えば、X1〜X6、X8、X9、X11〜X14、およびX16〜X19)は、独立して、任意のアミノ酸(例えば、Ala, Arg, Asn, Asp, Cys, Gln, Glu, Gly, His, Ile, Leu, Lys, Met, Phe, Pro, Ser, Thr, Trp, Tyr, およびVal等の天然に存在するアミノ酸)であるか、または不存在であり、かつX1、X10、およびX15の少なくとも1つはアルギニンである]。いくつかの実施形態では、X7はSerまたはCysであり; またはX10およびX15はそれぞれ独立してArgまたはLysである。いくつかの実施形態では、X1〜X19の残基は、両端を含めて、配列番号1〜105および107〜112(例えば、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7)のいずれか1つの任意のアミノ酸配列と実質的に同一である。いくつかの実施形態では、アミノ酸X1〜X19の少なくとも1個(例えば、2個、3個、4個、または5個)はArgである(例えば、X1、X10、およびX15のいずれか1個、2個、または3個)。
【0006】
他の実施形態では、本発明は、配列番号1〜105および107〜112(例えば、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6およびAngiopep-7)のいずれか1つに対して実質的同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを特徴とする。特定の実施形態では、該ポリペプチドは、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、またはAngiopep-7 (配列番号107〜112)を含むかまたはそれらであってよく、Angiopep-7配列またはその断片(例えば機能的断片)と実質的に同一の配列を含んでよい。該ポリペプチドは10〜50アミノ酸長、例えば10〜30アミノ酸長のアミノ酸配列を有してよい。本発明はまた、前記ポリペプチドの機能的誘導体(例えば化学誘導体または変異体)を特徴とする。
【0007】
本発明の典型的なポリペプチドは、(配列番号1のアミノ酸配列に関して)第10位のリシンもしくはアルギニン、または(配列番号1のアミノ酸配列に関して)第15位のリシンもしくはアルギニン、または第10位および第15位の両位置のリシンもしくはアルギニンを有する。本発明のポリペプチドは、(配列番号1のアミノ酸配列に関して)第7位のセリンまたはシステインを有してもよい。ポリペプチドの多量体化が所望である場合、該ポリペプチドは(例えば第7位の)システインを含んでよい。
【0008】
特定の実施形態では、本発明のポリペプチド(例えば本明細書中に記載の任意のポリペプチド)を(例えば本明細書中に記載されるように)改変する。ポリペプチドに、アミド化、アセチル化、またはその両方を施してよい。例えば、Angiopep-6またはAngiopep-7を含むポリペプチドをアミド化するか、または配列番号67をアミド化してよい(ポリペプチド番号67)。別の例では、配列番号107〜112のいずれか1つ、または任意の他の本発明のポリペプチド、のアミノ酸をアミド化またはアセチル化する。本発明のポリペプチドに対するそのような改変は、該ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシ末端での改変であってよい。本発明はまた、本明細書中に記載の任意のポリペプチドのペプチド模倣体(peptidomimetics) (例えば本明細書中に記載のペプチド模倣体)を特徴とする。本発明のポリペプチドは多量体型であってよい。例えば、ポリペプチドは二量体型(例えばシステイン残基によるジスルフィド結合によって形成された二量体型)であってよい。
【0009】
本発明のポリペプチドは特定の細胞(例えば、肝臓、腎臓、肺、筋肉、または脾臓細胞)内に効率的に輸送されるか、またはBBBを効率的に横切ることができる(例えば、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、およびAngiopep-6)。いくつかの実施形態では、該ポリペプチドは特定の細胞(例えば、肝臓、腎臓、肺、筋肉、または脾臓細胞)内に効率的に輸送され、かつBBBを横切って効率的には輸送されない(例えばAngiopep-7)。該ポリペプチドは、肝臓、腎臓、肺、筋肉、または脾臓からなる群から選択される少なくとも1種の(例えば少なくとも2種、3種、4種、または5種)の細胞または組織に効率的に輸送される。
【0010】
本明細書中に記載の任意のポリペプチドおよびコンジュゲートに関して、アミノ酸配列は、配列番号1〜105および107〜112のいずれか(例えば、配列番号1〜96、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7のいずれか)を含むかまたはそれらからなるポリペプチドを特に除外してよい。いくつかの実施形態では、本発明のポリペプチドおよびコンジュゲートは、配列番号102、103、104および105のポリペプチドを除外する。他の実施形態では、本発明のポリペプチドおよびコンジュゲートはこれらのポリペプチドを含む。
【0011】
特定の実施形態では、本発明のポリペプチドは、少なくとも1個のアミノ酸置換(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個の置換)を有する本明細書中に記載のアミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、該ポリペプチドは、配列番号1、Angiopep-1、Angiopep-2、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7のいずれかのアミノ酸配列の第1位、第10位、および第15位に対応する1個、2個、または3個の位置でアルギニンを有する。例えば、該ポリペプチドは1〜12個のアミノ酸置換を含有してよい(例えば配列番号91)。例えば、アミノ酸配列は1〜10個(例えば、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個)のアミノ酸置換または1〜5個のアミノ酸置換を含有してよい。本発明では、アミノ酸置換は保存的アミノ酸置換または非保存的アミノ酸置換であってよい。
【0012】
本発明のポリペプチドは、当技術分野において公知のように、化学的に合成(例えば固相合成)するか、または組換えDNAテクノロジーによって製造してよい。本明細書中に記載の任意のポリペプチド、組成物、またはコンジュゲートは、単離された形式または実質的に精製された形式であってよい。
【0013】
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチド(例えば本明細書中に記載の任意のポリペプチド、例えばAngiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7)をコードするポリヌクレオチド配列を特徴とする。さらに具体的には、配列番号1〜97および配列番号107〜112のいずれかからなる群から選択されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはその誘導体)が本発明によって包含される。当技術分野において公知の方法によって所望のヌクレオチド配列を化学合成してよい。
【0014】
別の態様では、本発明は、本明細書中に記載のポリペプチド、アナログ、またはその誘導体(例えば、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7)のいずれかからなる群から選択されるベクター、および該ベクターにコンジュゲートされる対象の物質を含むコンジュゲートを特徴とする。
【0015】
該物質は、治療剤(例えば、小分子薬物、例えば抗癌剤、抗生物質、または本明細書中に記載の任意のもの)、検出可能な標識、ポリペプチド(例えば酵素)、およびタンパク質複合体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、該物質は約160,000ダルトンの最大分子量を有する。該物質は中枢神経系において活性な分子であってよい。該物質は、神経系、肝臓、肺、腎臓、または脾臓疾患の治療または検出に有用な任意の物質であってよい。検出可能な標識は、例えば、ラジオイメージング物質(radioimaging agent) (例えば同位体)、蛍光標識(例えば、ローダミン、FITC、cy5.5、alexa)、レポーター分子(例えばビオチン)である。検出可能な標識の他の例には、緑色蛍光タンパク質、hisタグタンパク質、およびβ-ガラクトシダーゼが含まれる。コンジュゲートはベクターおよびタンパク質から本質的に構成される融合タンパク質であってよい。本発明のベクターにコンジュゲートすることができるタンパク質ベースの化合物の例には、抗体(例えば重鎖および/または軽鎖を含む抗体)、抗体断片(例えば、抗体結合断片、例えばFv断片、F(ab)2、F(ab)2'、およびFab)が含まれる。ベクターにコンジュゲートすることができる抗体またはその断片には、モノクローナルまたはポリクローナル抗体が含まれ、さらに、それは任意の起源(例えば、ヒト、キメラ、およびヒト化抗体)であってよい。他のタンパク質またはタンパク質ベースの化合物には、細胞毒素(例えば、モノメチルアウリスタチンE (MMAE)、細菌内毒素および外毒素、ジフテリア毒素、ボツリヌス毒素、破傷風毒素、百日咳(perussis)毒素、ブドウ球菌エンテロトキシン、毒素ショック症候群毒素TSST-1、アデニル酸シクラーゼ毒素、志賀毒素、およびコレラエンテロトキシン)および抗血管新生化合物(エンドスタチン、カテキン、栄養補給食品(nutriceuticals)、ケモカインIP-10、マトリックスメタロプロテイナーゼのインヒビター(MMPI)、アナステリン(anastellin)、ビロネクチン(vironectin)、抗トロンビン、チロシンキナーゼインヒビター、VEGFインヒビター、受容体を標的にする抗体、ハーセプチン、アバスチン、およびパニツムマブ(panitumumab))が含まれる。
【0016】
レプチンエキセンディン-4、GLP-1、PYY、またはPYY(3-36)を、例えば肥満症の治療に使用してよい。本発明のコンジュゲートに含ませることができる他のポリペプチドは、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH、コルチコトロピン)、成長ホルモンペプチド(例えば、ヒト胎盤ラクトゲン(hPL)、成長ホルモン、およびプロラクチン(Prl))、メラニン細胞刺激ホルモン(MSH)、オキシトシン、バソプレッシン(ADH)、コルチコトロピン放出因子(CRF)、性腺刺激ホルモン放出ホルモン関連ペプチド(GAP)、成長ホルモン放出因子(GRF)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)、オレキシン、プロラクチン放出ペプチド、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(THR)、カルシトニン(CT)、カルチトニン(caltitonin)前駆ペプチド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)、アミリン、グルカゴン、インスリンおよびインシュリン様ペプチド、ニューロペプチドY、膵ポリペプチド(PP)、ペプチドYY、ソマトスタチン、コレシストキニン(CCK)、ガストリン放出ペプチド(GRP)、ガストリン、ガストリン阻害ペプチド、モチリン、セクレチン、血管作用性腸管ペプチド(VIP)、ナトリウム利尿ペプチド(例えば、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、脳ナトリウム利尿ペプチド、およびC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP))、タキキニン(例えば、ニューロキニンA、ニューロキニンB、およびサブスタンスP)、サブスタンスP、アンギオテンシン(例えばアンギオテンシンIおよびアンギオテンシンII)、レニン、エンドセリン(例えば、エンドセリン-1、エンドセリン-2、エンドセリン-3、サラフォトキシン(ヘビ毒)およびサソリ毒)、サラフォトキシンペプチド、オピオイドペプチド(例えば、カゾモルフィンペプチド、デモルフィン(demorphins)、エンドルフィン、エンケファリン、デルトルフィン(deltorphins)、ダイノルフィン)、胸腺ペプチド(例えば、サイモポエチン、サイムリン、チモペンチン(thymopentin)、チモシン、胸腺液性因子(THF))、アドレノメデュリンペプチド(AM)、アラトスタチンペプチド、アミロイドベータ-タンパク質断片(Aβ断片)、抗菌ペプチド(例えば、デフェンシン、セクロピン、ブホリン(buforin)、およびマガイニン)、抗酸化ペプチド(例えば、ナチュラルキラー増強因子B (NKEF-B)、ボンベシン、骨Glaタンパク質ペプチド(例えば、オステオカルシン(骨Gla-タンパク質、またはBGP)、CARTペプチド、細胞接着ペプチド、コルチスタチンペプチド、フィブロネクチン断片およびフィブリン関連ペプチド、FMRFペプチド、ガラニン、グアニリンおよびウログアニリン、およびインヒビンペプチドである。
【0017】
小分子薬物には、抗癌剤(例えば本明細書中に記載の任意のそのような物質)が含まれる。抗癌剤の例には、パクリタキセル(タキソール(Taxol))、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソテール、メルファラン、クロランブシル、および本明細書中に記載の任意の抗癌剤、またはその任意の組み合わせが含まれる。抗癌剤は、本発明のベクターへのコンジュゲーションを可能にする化学部分を有してよい。
【0018】
特定の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、式: Vx-Ly-Azまたは製薬的に許容されるその塩を含み、式中、Vは本明細書中に記載のポリペプチドまたはその誘導体(例えば、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、Angiopep-7、または本明細書中に記載の任意のアナログ、誘導体、または断片)である。Vは特定の細胞タイプ(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、または筋細胞)内に効率的に輸送されるか、または(例えばLy-Azへの取り付け後に) BBBを横切って効率的に輸送される。特定の実施形態では、ベクターまたはコンジュゲートはBBBを横切って効率的には輸送されないが、特定の細胞タイプ内に効率的に輸送される(例えばAngiopep-7)。Lはリンカーまたは結合(例えば化学結合または共有結合)である。Aは、治療剤(例えば小分子薬物)、検出可能な標識、タンパク質、またはタンパク質ベースの化合物(例えば、抗体、抗体断片)、抗生物質、抗癌剤、抗血管新生化合物および、中枢神経系のレベルで活性なポリペプチドまたは任意の分子からなる群から選択される物質等の物質である。
【0019】
X、Y、およびZは、それぞれ独立して、0より大きい任意の数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)であるか、または1 (例えば、2、3、4、5、6、7、8、9)〜10 (例えば、9、8、7、6、5、4、3、2)の範囲の一連の値であってよい。したがって、式: Vx-Ly-Azは特定の順序または特定の比率に制限されない; 例えば、コンジュゲートは、物質にカップリングされた1〜5個ベクター(1、2、3、4、または5)を含んでよい。他の実施形態では、2個以上の物質をベクターにコンジュゲートする。物質またはコンジュゲートは、物質がベクターにコンジュゲートされた場合に活性である。いくつかの実施形態では、例えばBBBを横切る輸送または特定の細胞タイプ内への輸送後に、ベクターから化合物を放出させることができる。化合物は(例えばプロドラッグとして)その放出後に活性になる。いくつかの実施形態では、物質は輸送後にベクターにコンジュゲートされたままである。ここで、コンジュゲートは、コンジュゲートされていない物質と比較して(例えばP-糖タンパクによる)低い排出輸送を示す。この場合、物質およびベクターが結合したままであることが望ましい。コンジュゲートを製薬的に許容される組成物中で提供してよい。
【0020】
物質は、ベクターにコンジュゲートされると、ベクターにコンジュゲートされていない場合の該物質と比較して、改変された(例えば向上した)バイオアベイラビリティ、向上した効力(例えば抗癌活性)、該物質の改変された組織分布、減少した毒性、または改変された薬物動態を示す。ベクター(例えば、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、およびAngiopep-6)は、個体の脳(例えば、グリア芽細胞腫等の腫瘍細胞を含有する脳、肺、乳房、結腸、肝臓、膵臓、または脾臓、腫瘍細胞)または特定の細胞もしくは組織(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉)中の物質の蓄積を促進する。Angiopep-7等のベクターは、肝臓、肺、腎臓、脾臓または筋肉等の細胞タイプ中の蓄積を促進することができるが、脳中の蓄積を促進しない。さらに具体的には、ベクターは、被験体に提供(例えば投与)された場合に、P-gpまたはP-gp-関連タンパク質(例えば、P-gpヒトまたは哺乳類対立遺伝子変異体、例えばげっ歯類由来のmdr1aまたはmdr1bアイソフォーム)によって放出されるP-gp基質または治療剤である物質の蓄積または効力を増加させることができる。該細胞はP-gpまたはP-gp関連タンパク質を発現するかまたは発現することができる。コンジュゲートが輸送される対象の細胞は、ベクター受容体または輸送体、例えば低密度リポタンパク質関連受容体(LRP)を発現する(例えば、P-gpまたはP-gp関連タンパク質を共発現している細胞)。該細胞は、例えば、正常細胞、腫瘍細胞、または転移細胞(例えば多剤耐性癌細胞)であってよい。細胞または腫瘍は(例えば本明細書中に記載の任意の癌の)転移であってよい。
【0021】
ベクターまたはコンジュゲートは、特定の細胞タイプ(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、または筋細胞)内に効率的に輸送することができ、かつBBBを横切って効率的に輸送することができる; そのようなコンジュゲートには、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、およびAngiopep-6が含まれる。特定の実施形態では、ベクターの輸送活性は、それ自体、それが送達される対象の細胞の統合性に影響しないか、またはBBBの統合性に影響しない。他の実施形態では、Angiopep-7等のベクターまたはコンジュゲートは特定の細胞タイプ内に効率的に輸送されるが、BBBを横切って効率的には輸送されない。本明細書中に記載の任意のベクターまたはコンジュゲートは受容体媒介性エンドサイトーシスもしくは経細胞輸送または吸着媒介性エンドサイトーシスもしくは経細胞輸送によって輸送される。
【0022】
本明細書中に記載の任意のベクターまたはコンジュゲートは製薬的に許容される担体中に存在させてよい(例えば医薬品形式であってよい)。したがって本発明は、(a) コンジュゲート(例えば本明細書中に記載の任意のコンジュゲート); (b) 製薬的に許容される担体(例えば本明細書中に記載の任意のもの)を含む医薬組成物を特徴とする。該コンジュゲートは(c) 可溶化剤をさらに含んでよい。可溶化剤は、例えば、脂肪酸のポリオキシエチレンエステル(例えば、Solutol(登録商標) HS-15)であってよい。化合物の薬物動態を改変するか、腫瘍細胞の成長を低減するか、または腫瘍細胞を検出するために該医薬組成物を使用してよい。
【0023】
別の態様では、本発明は、肝疾患、肺疾患、腎疾患、脾臓疾患、または筋肉疾患の診断または治療(例えば、それらの治療における医薬品の製造または使用)のための、本発明のベクターまたはコンジュゲートの使用を特徴とする。特定の実施形態では、BBBを横切って効率的に輸送される本発明のコンジュゲートを使用して神経系疾患または中枢神経系疾患(例えば本明細書中に記載の任意の疾患)を治療してよい。例えば、任意の前記疾患のin vivo検出のためにベクターまたはコンジュゲートを使用する。治療または診断を、それを必要としている哺乳類(例えばヒトまたは非ヒト哺乳類)、例えば疾患(例えば癌)を有するかまたは該疾患を有するリスク(例えば高いリスク)にさらされている哺乳類において実施してよい。投与は、当技術分野において公知の任意の手段を使用して、例えば、動脈内、鼻腔内、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、または経口で実施してよい。投与は治療有効量の投与であってよい。
【0024】
本明細書中に記載のベクターに物質をコンジュゲートすることによって、該物質の毒性を減少させ、ゆえに単独の該物質に関する推奨用量より高用量で該物質を被験体に提供することが可能になる。したがって、本発明は、疾患または症状(例えば癌等の本明細書中に記載の任意の疾患または症状)を有する被験体を治療する方法であって、本発明のコンジュゲートを被験体に提供するステップを含み、該コンジュゲートが、単独の該物質の治療量より高用量(例えば、少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、100%、250%、500%、1,000%、5,000%、または10,000%高い用量)の物質を含む、方法を特徴とする。
【0025】
本明細書中に記載のベクターは特定の細胞タイプ(例えば本明細書中に記載の細胞タイプ)に物質をターゲティングすることが可能であるため、特定の実施形態では、該物質は、ベクターにコンジュゲートされると、被験体に投与された場合に高い効力を有する。したがって、本発明はまた、本発明のコンジュゲートまたは、本発明のコンジュゲートを含む組成物を被験体に投与することによって疾患または症状(例えば癌等の本明細書中に記載の任意の疾患または症状)を有する被験体を治療する方法であって、該コンジュゲートが、単独の該物質の治療量より低用量(例えば、5%、10%、15%、20%、30%、50%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.9%低い用量)の物質しか含まない、方法を特徴とする。
【0026】
本発明の治療方法は、個体の腫瘍が多剤耐性腫瘍細胞(例えばP-gp (MDR1)を発現している細胞)を含むかどうかを評価するステップまたは該腫瘍が多剤耐性薬物表現型を有する可能性があるかもしくは有しているかどうかを決定するステップをさらに含んでよい。治療方法は、化学療法、放射線療法、または両者を提供するステップを含んでよい。あるいは、治療対象の被験体は(例えば、1年、6か月、3か月、2か月、1か月、2週間、1週間、3日、2日、または1日以内で)そのような治療を受けていてよい(または受けてよい)。該個体は外科手術を受けていてよい。該個体は、脳腫瘍(例えば原発性脳腫瘍)または脳以外の部位の腫瘍を有してよい(例えば脳腫瘍を有さない)。必要がある個体は、少なくとも1種の薬物に対する耐性(例えば多剤耐性(MDR)表現型)を示しているか、またはそれを発症するリスクにさらされている。腫瘍は、肺腫瘍、脳腫瘍(例えばグリア芽細胞腫由来)の頭蓋外転移、転移起源(例えば、肺腫瘍、乳房腫瘍、黒色腫、結腸直腸癌、または泌尿器腫瘍由来)の脳腫瘍であってよい。腫瘍は、P-gp、LRP、もしくは両者を発現している細胞、またはP-gp、LRP、もしくは両者を発現可能な細胞を含んでよい。P-gpおよびLRPは細胞表面に局在する。
【0027】
他の態様では、本発明はまた、細胞中の物質の濃度または細胞への物質の輸送を増加させる方法であって、細胞がLRP受容体ファミリーのメンバーを発現している、方法を特徴とする。該方法は、ベクター(例えば本明細書中に記載の任意のポリペプチド)にコンジュゲートされた物質を含むコンジュゲートと細胞を接触させ、それによって細胞中の該物質の濃度を増加させるか、または該物質を細胞に輸送するステップを含む。本発明はまた、細胞中の物質の濃度を増加させる方法であって、細胞がP-糖タンパクを発現している、方法を特徴とする。該方法は、ベクター(例えば本明細書中に記載の任意のポリペプチド)にコンジュゲートされた物質を含むコンジュゲートと細胞を接触させ、それによって、コンジュゲートされていない物質と比較して、細胞中の該物質の濃度を増加させるステップを含む。
【0028】
本発明の任意の態様にしたがって、神経系疾患には、脳腫瘍、脳転移、統合失調症、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、発作、およびBBB関連機能不全(例えば肥満症)が含まれる。肝疾患は肝細胞癌等の癌であってよい。他の肝疾患には、本明細書中に記載のものが含まれる。肺疾患は肺癌(例えば本明細書中に記載のもの)であってよい。
【0029】
コンジュゲートは多量体、例えば二量体型のベクターを含むことができる。ベクターの多量体型は、いくつかの実施形態で、物質の輸送または蓄積を増加させることができる。ベクターは少なくとも1:1 (物質:ベクター)、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、または1:10の比率であってもよい。本明細書中に記載されるように、物質に対する高い比率のベクターは輸送の増加を生じさせることができる。そのように、物質あたりのベクターの数は限定されないものとする。
【0030】
また本発明にしたがって、例えば個体のCNSに物質を送達するために医薬組成物を使用してよい。
【0031】
ベクター(ポリペプチド)またはコンジュゲートの製薬的に許容される塩は本発明によって包含され、それには、物質の製薬的に許容される酸付加塩が含まれる。
【0032】
本発明のベクターまたはコンジュゲートは慣用の治療方法または療法と組み合わせてまたはそれらと別々に使用してよい。他の物質との併用療法には、個体への逐次または同時投与が含まれる。本発明の医薬組成物は、本明細書中に記載のように製薬的に許容される賦形剤と組み合わされた本発明のベクター-物質コンジュゲートおよび当技術分野において公知の別の治療剤または予防剤の組み合わせを含んでよい。
【0033】
「ベクター」とは、特定の細胞タイプ(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、または筋肉)内に、またはBBBを横切って輸送されることが可能な化合物または分子、例えばポリペプチドを意味する。ベクターは、物質に(共有結合または非共有結合によって)取り付けるかまたはコンジュゲートすることができ、それによって特定の細胞タイプ内に、またはBBBを横切って該物質を輸送することができる。特定の実施形態では、ベクターは癌細胞または脳内皮細胞上に存在する受容体に結合し、それによって経細胞輸送により癌細胞内に、またはBBBを横切って輸送される。ベクターは、細胞またはBBB統合性に影響することなく高レベルの経内皮輸送が達成される分子であってよい。ベクターはポリペプチドまたはペプチド模倣体であってよく、天然に存在するかまたは化学合成または組換え遺伝子テクノロジーによって製造することができる。
【0034】
「コンジュゲート」とは、物質に連結されたベクターを意味する。コンジュゲーションは、リンカーを介するコンジュゲーション等の本質的に化学的なコンジュゲーションであるか、または例えばレポーター分子(例えば、緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、Hisタグ等)との融合タンパク質中のコンジュゲーション等の例えば組換え遺伝子テクノロジーによる本質的に遺伝子のコンジュゲーションであってよい。
【0035】
「BBBを横切って効率的に輸送される」ベクターとは、Angiopep-6と少なくとも同程度に効率的に(すなわち、本明細書中に記載のin situ脳灌流アッセイにおいてAngiopep-1 (250 nM)より38.5%高い効率で) BBBを横切ることができるベクターを意味する。したがって、「BBBを横切って効率的には輸送されない」ベクターまたはコンジュゲートは、低いレベルでしか脳に輸送されない(例えばAngiopep-6より低い効率で輸送される)。
【0036】
「特定の細胞タイプに効率的に輸送される」ベクターまたはコンジュゲートとは、(例えば、細胞内への輸送の増加、細胞からの流出の低下、またはその組み合わせに起因して)該細胞タイプ中に、コントロール物質より、または、コンジュゲートの場合、コンジュゲートされていない物質と比較して、少なくとも10% (例えば、25%、50%、100%、200%、500%、1,000%、5,000%、または10,000%)高い程度に蓄積することができるベクターまたはコンジュゲートを意味する。
【0037】
「実質的に純粋な」または「単離された」とは、他の化学成分から分離されている化合物(例えばポリペプチドまたはコンジュゲート)を意味する。典型的に、化合物は、他の成分から少なくとも30重量%分離されている場合に実質的に純粋である。特定の実施形態では、調製物は、他の成分から、重量単位で少なくとも50%、60%、75%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%分離されている。精製されたポリペプチドは、例えば、そのようなポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドの発現によって、またはポリペプチドを化学合成することによって取得することができる。純度は、任意の適切な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定することができる。
【0038】
「アナログ」とは、元の配列または元の配列の部分に由来し、1個以上の改変; 例えば、アミノ酸配列中の1個以上の改変(例えば、アミノ酸付加、欠失、挿入、または置換)、1個以上のアミノ酸の主鎖または側鎖中の1個以上の改変、または1個以上のアミノ酸(側鎖または主鎖)への基または別の分子の付加を含むポリペプチドを意味する。アナログは、ポリペプチドの片方もしくは両方の末端に、またはポリペプチドのアミノ酸配列内に1個以上のアミノ酸挿入を有してよい。アナログは、元の配列または元の配列の部分と配列類似性および/または配列同一性を有してよい(例えば、実質的に同一であってよい)。アナログは、例えば本明細書中に記載の、その構造の改変を含んでよい。2つの配列間の類似性の程度は、同一性(同一アミノ酸)および保存的置換のパーセンテージに基づく。アナログは、アミノ酸の主鎖または側鎖中の1個以上の改変、または基もしくは別の分子の付加とともに、元の配列に対して少なくとも35%、50f%、60%、70%、80%、90%、または95% (例えば、96%、97%、98%、99%、および100%)の配列類似性を有してよい。他のアミノ酸に類似であるとされる典型的なアミノ酸(保存されたアミノ酸)は当技術分野において公知であり、それには、例えば、表3に列挙されるものが含まれる。
【0039】
「実質的に同一の」とは、リファレンスアミノ酸または核酸配列に対して少なくとも35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、85%、90%、95%、または99%さえもの同一性を示すポリペプチドまたは核酸を意味する。ポリペプチドでは、比較配列の長さは、概して、少なくとも4 (例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、50、または100)アミノ酸である。核酸では、比較配列の長さは、概して、少なくとも60ヌクレオチド、好ましくは少なくとも90ヌクレオチド、およびさらに好ましくは少なくとも120ヌクレオチド、または全長である。元のポリペプチドのアミノ酸と同一または類似であるアナログのアミノ酸間にギャップが見出されることがここに理解されるものとする。ギャップは、アミノ酸を含まないか、元のポリペプチドと同一または類似でない1個以上のアミノ酸を含んでよい。本発明のベクター(ポリペプチド)の生物活性アナログは、これとともに包含される。同一性パーセントは、例えば、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0のアルゴリズムであるGAP、BESTFIT、またはFASTAで、デフォルトギャップウエイトを使用して決定してよい。
【0040】
「機能的誘導体」とは、本発明のベクターまたは物質またはコンジュゲートおよびその塩の生物活性配列または部分の「化学誘導体」、「断片」、または「変異体」を意味する。ベクターの機能的誘導体は、物質に取り付けるかまたはコンジュゲートすることが可能であり、かつ特定の細胞タイプに侵入し、それによって該物質を該細胞内に輸送することが可能である。
【0041】
「化学誘導体」とは、共有結合による改変を含む、ベクター、物質またはベクター-物質コンジュゲートの部分でない追加の化学部分を含有する本発明のベクター、物質、またはコンジュゲートを意味する。化学誘導体は、当技術分野において公知の方法を使用して直接化学合成することによって製造してよい。そのような改変は、選択側鎖または末端残基と反応可能な有機誘導体化剤と、標的のアミノ酸残基を反応させることによってタンパク質またはペプチドベクター、物質、またはベクター-物質コンジュゲートに導入してよい。ベクターの化学誘導体は、BBBを横切るかまたは特定の細胞タイプ(例えば本明細書中に記載のもの)に侵入するかもしくはそこに蓄積することが可能である。好ましい実施形態では、BBBを横切る非常に高レベルの経内皮輸送が、BBBの統合性に影響することなく達成される。
【0042】
「断片」とは、元の配列もしくは親配列の部分または該親配列のアナログに由来するポリペプチドを意味する。断片は、1個以上のアミノ酸のトランケーションを有するポリペプチドを包含し、該トランケーションはタンパク質のアミノ末端(N末端)、カルボキシ末端(C末端)に由来するか、またはタンパク質の内部に由来してよい。断片は元の配列の対応する部分と同一の配列を含んでよい。本明細書中に記載のベクター(ポリペプチド)の機能的断片は本発明によって包含される。断片は、少なくとも5 (例えば、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、25、28、30、35、40、45、50、60、75、100、または150)アミノ酸であってよい。本発明の断片は、例えば、7、8、9または10アミノ酸〜18アミノ酸のポリペプチドを含んでよい。断片は、本明細書中に記載の任意の改変(例えば、アセチル化、アミド化、アミノ酸置換)を含有してよい。
【0043】
「天然に存在しないアミノ酸」は、哺乳類中で天然に生産されないかまたは見出されないアミノ酸である。
【0044】
「物質(薬剤)」とは、任意の化合物、例えば抗体、または治療剤、マーカー、トレーサー、または画像化化合物(imaging compound)を意味する。
【0045】
「治療剤」とは、生物学的活性を有する物質を意味する。いくつかの場合では、治療剤は、疾患の徴候、身体的または精神的状態、傷害、または感染を治療するために使用され、それには、抗癌剤、抗生物質、抗血管新生物質、および中枢神経系のレベルで活性な分子が含まれる。
【0046】
「小分子薬物」とは、1,000 g/mol以下(例えば、800、600、500、400、または200 g/mol未満)の分子量を有する薬物を意味する。
【0047】
「被験体」とは、ヒトまたは非ヒト動物(例えば哺乳類)を意味する。
【0048】
「治療」、「治療する」、等とは、所望の薬理学的または生理的効果、例えば、癌細胞増殖の阻害、癌細胞の死、疾患または症状(例えば本明細書中に記載の任意の疾患または症状)の軽減、疾患または症状に関連している少なくとも1つの徴候の軽減を達成することを意味する。該効果は、例えば、疾患またはその徴候を完全または部分的に予防する予防効果であるか、または疾患および/または該疾患に起因する悪影響に関する部分的または完全な治癒に関する治療効果であってよい。治療には、(a) 個体(例えば、該疾患に罹患しやすいがそれを有すると診断されていない個体)において疾患または症状が生じることを予防(例えば癌を予防)すること; (b) 疾患を阻害(例えば、その発達を停止)すること; または(c) 疾患を緩和(例えば、疾患に関連している徴候を低減)することが含まれる。治療には、個体の症状を治療、治癒、軽減、改善、縮小または阻害するための個体への治療剤の任意の投与が含まれ、該投与には、非限定的に、ベクター-物質コンジュゲートを個体に投与することが含まれる。
【0049】
「癌」とは、無秩序な増殖、分化の欠如、または組織に侵入しかつ転移する能力を生じさせうる、正常なコントロールの喪失がその特有の形質である任意の細胞の増殖を意味する。癌は、任意の組織または任意の器官において発症しうる。癌は、非限定的に、脳、肝臓、肺、腎臓、または脾臓の癌を含むものとする。追加の癌は本明細書中に記載される。
【0050】
「提供する」とは、本発明のベクターまたはコンジュゲートの関連で、ベクターまたはコンジュゲートを標的細胞または組織とin vivoまたはin vitroで接触させることを意味する。ベクターまたはコンジュゲートを被験体に投与することによってベクターまたはコンジュゲートを提供することができる。
【0051】
「投与する」および「投与」とは、送達の様式を意味し、それには、非限定的に、動脈内、鼻腔内、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、または経口の様式が含まれる。一日量は、一定期間を通して1回、2回またはそれ以上の回数で投与されるために好適な形式で1、2、またはそれ以上の用量に分割することができる。
【0052】
「治療的に有効な」または「有効量」とは、治療対象の疾患または症状の任意の徴候を改善し、減少させ、予防し、遅延させ、抑制し、または停止させるために十分な治療剤の量を意味する。物質の治療有効量は疾患または症状を治癒する必要はないが、疾患または症状の治療を提供して、疾患または症状の発症を遅延させ、妨害し、または予防するか、または疾患または症状の徴候を軽減するか、または疾患または症状の期間を変化させるか、または、例えば、あまり重篤でないか、または個体において回復を早めるようにする。
【0053】
「症状」とは、個体に対してまたは個体において、疼痛、不快感、病気、疾患または能力障害(精神的または身体的)を引き起こす任意の状況を意味し、それには、神経系疾患、傷害、感染、または慢性または急性痛が含まれる。神経系疾患には、脳腫瘍、脳転移、統合失調症、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、および発作が含まれる。
【0054】
「医薬組成物」とは、製薬的に許容される希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、またはアジュバント、例えば本明細書中に記載の任意のものを伴う治療有効量の物質を意味する。
【0055】
「治療量」とは、毒性または効力に関して臨床使用に許容される、物質、例えば薬物(ベクターを含まない)の用量を意味する。物質を本発明のベクターにコンジュゲートすることによって、治療量より低用量または高用量の該物質を投与することが可能である。
【0056】
特定の特徴(例えば、温度、濃度、時間等)に関して「範囲」または「物質の群」が記載される場合、本発明は、それぞれおよびすべての特定のメンバーおよびその部分的な範囲または部分的な群の組み合わせに関し、かつそれらを明示的にここに組み入れる。ゆえに、例えば、9〜18アミノ酸の長さに関して、それぞれおよびすべての個々の長さ、例えば、18、17、15、10、9、およびそれらの間の任意の数の長さがここに明確に組み入れられると理解されるものとする。したがって、特に記載しない限り、本明細書中に記載のすべての範囲は両端を含むと理解されるものとする。例えば、5〜19アミノ酸長という表現には、5および19が含まれるものとする。このことは、他のパラメータ、例えば配列、長さ、濃度、要素、等に関して同様に適用される。
【0057】
本明細書中で定義される配列、領域、部分は、それぞれ、それによって記載されるそれぞれおよびすべての個々の配列、領域、および部分ならびにそれぞれおよびすべての可能なサブ配列、サブ領域、およびサブ部分を含み、そのようなサブ配列、サブ領域、およびサブ部分が、明確に特定の可能性を含むか、特定の可能性を除外するか、またはその組み合わせとして定義されるかどうかにかかわらない。例えば、領域に関する排他的定義は以下のように読むことができる: 「該ポリペプチドが、4、5、6、7、8または9アミノ酸より短くないことを条件とする」。消極的な限定の追加の例は以下のものである; 配列番号Yのポリペプチドを除いて配列番号Xを含む配列; 等。消極的限定の追加の例は以下のものである; 該ポリペプチドは配列番号Zではない(配列番号Zを含まないかまたは配列番号Zから構成されない)ことを条件とする。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明の典型的なポリペプチドの構造を示す。
【図2】図2は、架橋剤BS3を使用してアプロチニンをIgGとコンジュゲートするために使用されるプロトコルを示す。
【図3】図3は、架橋剤スルホ-EMCSを使用してアプロチニンをIgGとコンジュゲートするために使用されるプロトコルを示す。
【図4】図4は、架橋剤ECMSを使用してAngiopep-2を抗体とコンジュゲートするために使用されるプロトコルを示す。
【図5】図5は、架橋剤SATAを使用してAngiopep-2を抗体とコンジュゲートするために使用されるプロトコルを示す。
【図6】図6は、ヒドラジドを介して炭水化物標的を使用してAngiopep-2を抗体とコンジュゲートするために使用されるプロトコルを示す。
【図7】図7は、コンジュゲートの作製に使用することができる他のリンカー候補を示す。
【図8】図8は、本発明のベクターをパクリタキセルに取り付けるための方法を示す。
【図9】図9は、細胞表面の流出ポンプ、P-糖タンパク質(P-gpまたはMDR1)の概略図である。多剤耐性と関連している流出ポンプ、P-gpまたはMDRlは多数の癌細胞および、血液脳関門(BBB)を含む種々の組織の細胞表面で高度に発現される。
【図10】図10Aおよび10Bは、タキソール(Taxol)およびTxlAnlコンジュゲートの組織分布を表す図である。
【図11】図11は、TaxolおよびTxlAn1の肺分布を表す図である。
【図12】図12は、血漿および肺におけるTxlAn1コンジュゲートのレベルを表す図である。
【図13】図13は、IV注射の30分後のラットの脳におけるAngiopep-2およびAngiopep-7のin vivo蓄積を示すイメージセットである。Angiopep-2はAngiopep-7と比較して高い程度に脳に蓄積する。
【図14】図14は、蛍光標識Angiopep-2またはAngiopep-7の10分間のin situ灌流後の脳断片の蛍光顕微鏡検査を示すイメージセットである。これらのイメージは、Angiopep-2は脳内に局在するが、Angiopep-7は毛細管内に局在することを示す。
【図15】図15Aは、ラットの肝臓、肺、および腎臓におけるAngiopep-2およびAngiopep-7のin vivoイメージングを示すイメージセットである。Angiopep-7はこれらの組織に蓄積することが観察される。図15Bは、ラットにおけるAngiopep-2またはAngiopep-7の注射の24時間後のex-vivo器官イメージングを示すグラフである。両ポリペプチドは、腎臓、肝臓、および肺に蓄積する。Angiopep-2はAngiopep-7と比較して高い程度に脳に蓄積する。
【図16】図16は、遊離およびAngiopepにコンジュゲートされたIgGの脳実質中の分布容積を示す。
【図17】図17は、親薬物Taxolの存在下の細胞増殖の図である。グリア芽細胞腫細胞(U-87)を種々の濃度のTaxolに3日間曝露した。細胞に取り込まれた3H-チミジンをTaxol濃度の関数としてプロットした。
【図18A】図18Aは、皮下グリア芽細胞腫(U-87)腫瘍増殖に対するTxlAn2治療の効果を表すグラフである。
【図18B】図18Bは、皮下グリア芽細胞腫(U-87)腫瘍増殖に対するTxlAn2治療の効果を表すグラフである。
【図19】図19は、TaxolまたはTxlAn2コンジュゲートに曝露された癌細胞中の免疫蛍光または可視光によるNCI-H460細胞中のβ-チューブリンの検出を示す顕微鏡写真のセットである。コントロール(対照)として、細胞を1% DMSOに曝露した。
【図20】図20は、FACSによって測定されるNCI-H460細胞周期に対するTaxolおよびTxlAn2コンジュゲートの効果を示すグラフのセットである。ビヒクル(DMSO)、Taxol (100 nM)、またはTxlAn2コンジュゲート(30 nM, 100 nMのTaxolと等価)に細胞を24時間曝露した。
【図21】図21Aは、10μM CsA、P-gpインヒビターの存在または不存在(コントロール)下でのMDRlでトランスフェクトされたMDCK細胞中の種々の薬物の蓄積を示すグラフである。実験を1% DMSOの存在下で実施した。図21Bは、P-gpを過剰発現している細胞中のコンジュゲートの蓄積を示すグラフである。
【図22】図22Aおよび22Bは、ヒト脳腫瘍生検中のLRPの免疫検出を示すウエスタンブロットの写真である。
【図23A】図23Aは、本発明のベクターに対する薬物のコンジュゲーションの概略図である。
【図23B】図23Bは、本発明のベクターに対する薬物のコンジュゲーションの概略図である。
【図24】図24は、TxlAn2 (3:1)コンジュゲートの生産を示すクロマトグラムである。
【図25】図25は、AKTA-エクスプローラーを使用して疎水性カラム上で精製されたピークのHPLC分析である。
【図26】図26は、Angiopep-2とIgG軽鎖および重鎖の会合を示す。
【図27】図27は、スルホ-EMCSで架橋されたIgG-Angiopep-2コンジュゲートの脳分布容積の増加を示す。
【図28】図28は、in situ脳灌流を使用するIgG-Angiopep-2コンジュゲートの脳浸透を示す。
【図29】図29は、放射性標識[125I]-IgG-Angiopepコンジュゲートのオートラジオグラムを示す。
【図30】図30は、FACS解析による抗EGFRおよび抗EGFR-Angiopep-2コンジュゲートでのU87細胞上のEGFRの類似の検出を示す。
【図31】図31は、遊離およびAngiopep-2にコンジュゲートされたEGFR抗体の脳実質中の分布容積を示す。
【図32】図32は、遊離およびAngiopep-2にコンジュゲートされたVEFG抗体の脳実質中の分布容積を示す。
【図33】図33は、実質における、物質(抗体)に対して異なる比率のベクターを含むコンジュゲートの取り込みを示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明者らは、Angiopep-7が特定の細胞タイプまたは器官、例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉内に効率的に輸送されるが、Angiopep-1またはAngiopep-2等のポリペプチドと比較して、血液脳関門(BBB)を横切って効率的には輸送されないことを見出した。これに基づいて、本発明者らは、Angiopep-7が(例えば、これらの組織に関連している疾患、例えば癌または本明細書中に記載の任意の疾患の治療のための)物質の輸送に好適なベクターであると特定した。本発明者らはまた、本発明のベクターとして同様に使用することができるAngiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、およびAngiopep-6を含む他のポリペプチドを特定した。これらのポリペプチドは、BBBを横切って効率的に輸送されるか、または特定の組織または細胞タイプ(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉)内に輸送される能力を保持する。これらのポリペプチドでは、BBBを効率的に横切ることができないかまたはその点で無効である物質を、該ポリペプチドにコンジュゲートすると、BBBを横切って輸送することができる。コンジュゲートは、症状または疾患の治療または診断のための組成物、例えば医薬組成物の形態であってよい。
【0060】
本発明のコンジュゲート(例えば本明細書中に記載の任意のもの)は、単独の物質と比較して有益なin vivo薬物動態学的特性を有してもよい。これらの特性には、in vivo半減期の増加または所望の細胞タイプ中の濃度の増加、蓄積率の増加、または所望の細胞タイプからの除去の低下が含まれる。これに基づいて、コンジュゲートされていない物質より低用量で、低頻度で、または短い期間で本発明のコンジュゲートを被験体に投与することが可能である。投与の量、頻度、または期間の低下は公知の副作用を伴う薬物療法に特に望ましい。他の場合、本明細書中に記載のポリペプチドに物質をコンジュゲートすると、標的細胞または組織中の濃度の増加に起因して高い効力が生じる。実際、標的細胞タイプ中で物質を濃縮することによって、(例えば高い効力を伴って)望ましくない副作用を低減することができる。これは、必要とされる治療期間を減少させる。いくつかの場合、コンジュゲートされていない物質の用量と比較して高い用量、頻度、または期間でコンジュゲートを投与して、高い効力、低い副作用、または両者を観察することさえ可能である。
【0061】
本発明のポリペプチド
本発明は、本明細書中に記載の任意のポリペプチド、例えば表1に記載の任意のポリペプチド(例えば、配列番号1〜105および107〜112、例えば配列番号1〜97、99、100、101、または107〜112のいずれかで定義されるポリペプチド)、またはその任意の断片、アナログ、誘導体、または変異体を特徴とする。特定の実施形態では、ポリペプチドは、本明細書中に記載のポリペプチドに対して少なくとも35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%さえもの同一性を有してよい。ポリペプチドは、本明細書中に記載の配列の1つと比較して1個以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個)の置換を有してよい。他の改変は以下でさらに詳細に記載される。
【0062】
本発明はまた、これらのポリペプチドの断片(例えば機能的断片)を特徴とする。特定の実施形態では、断片は、特定の細胞タイプ(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、または筋肉)中に侵入するかまたは特定の細胞タイプ中で蓄積することが可能であるか、またはBBBを横切ることが可能である。ポリペプチドのトランケーションは、ポリペプチドのN末端から、ポリペプチドのC末端から、またはその組み合わせの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれ以上のアミノ酸であってよい。他の断片には、ポリペプチドの内部部分が欠失している配列が含まれる。
【0063】
米国特許出願公開第2006/0189515号(参照によりここに組み入れられる)に記載のアッセイまたは方法の1つを使用することによって、または当技術分野において公知の任意の方法によって追加のポリペプチドを特定することができる。例えば、ベクター候補を慣用のポリペプチド合成によって製造し、タキソール(Taxol)とコンジュゲートし、実験動物に投与してよい。生物活性ベクターを、例えば、腫瘍細胞を注射されかつ該コンジュゲートで治療された動物の生存を、コンジュゲートで治療されていない(例えばコンジュゲートされていない物質で治療された)コントロールと比較して増加させるその効力に基づいて特定することができる。
【0064】
別の例では、生物活性ポリペプチドを、in situ脳灌流アッセイにおける実質中のその位置に基づいて特定してよい。in vitro BBBアッセイ、例えばCELLIALTMテクノロジーによって開発されたモデルを使用して、そのようなベクターを特定することができる。
【0065】
他の組織中の蓄積を決定するためのアッセイを同様に実施してよい。例えば、本明細書中の実施例1を参照のこと。ポリペプチドの標識されたコンジュゲートを動物に投与して、異なる器官中の蓄積を測定することができる。例えば、検出可能な標識(例えば、近赤外蛍光分光標識、例えばCy5.5)にコンジュゲートされたポリペプチドは生存in vivo可視化を可能にする。そのようなポリペプチドを動物に投与して、器官中のポリペプチドの存在を決定することができ、ゆえに所望の器官中のポリペプチドの蓄積の割合および量の決定が可能になる。他の実施形態では、放射性同位体(例えば125I)でポリペプチドを標識することができる。そして該ポリペプチドを動物に投与する。一定期間後、動物を犠牲して、動物の器官を抽出する。そして当技術分野において公知の任意の手段を使用して各器官中の放射性同位体の量を測定することができる。標識されたコントロールの量を伴わない、特定の器官中の標識された候補ポリペプチドの量を比較することによって、候補ポリペプチドの能力、特定の組織中の候補ポリペプチドの蓄積の割合または量を確かめることができる。適切なネガティブコントロールは、特定の細胞タイプ内に輸送されないことが知られている任意のポリペプチドを含む。
【表1】

【0066】

【0067】

【0068】

【0069】
ペプチド5は配列番号5の配列を含み、そのC末端でアミド化される(例えば図1を参照のこと)。
【0070】
ペプチド67は配列番号67の配列を含み、そのC末端でアミド化される(例えば図1を参照のこと)。
【0071】
ペプチド76は配列番号76の配列を含み、そのC末端でアミド化される(例えば図1を参照のこと)。
【0072】
ペプチド91は配列番号91の配列を含み、そのC末端でアミド化される(例えば図1を参照のこと)。
【0073】
ペプチド107は配列番号97の配列を含み、そのN末端でアセチル化される。
【0074】
ペプチド109は配列番号109の配列を含み、そのN末端でアセチル化される。
【0075】
ペプチド110は配列番号110の配列を含み、そのN末端でアセチル化される。
【0076】
Angiopep-1 (配列番号67)およびAngiopep-2 (配列番号97)のアミン基は物質のコンジュゲーションの部位として使用されている。コンジュゲーションにおけるアミン基の役割およびこれらのベクターのトータルの輸送能力におけるその影響を研究するために、可変性の反応性アミン基および可変性のトータル電荷を有する、Angiopep-1およびAngiopep-2配列に基づく新規ベクターを設計した。これらのポリペプチドを表2に示す。
【表2】

【0077】
改変ポリペプチド
本発明はまた、本明細書中に記載のアミノ酸配列の改変を有するポリペプチド(例えば、Angiopep-3、-4a、-4b、-5、-6、または-7等の配列番号1〜105および107〜112のいずれかに記載の配列を有するポリペプチド)を含む。特定の実施形態では、改変は所望の生物学的活性を顕著には破壊しない。いくつかの実施形態では、改変は生物学的活性の(例えば、少なくとも5%、10%、20%、25%、35%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、または95%の)低減を生じさせる。他の実施形態では、改変は生物学的活性に対して影響を有さないか、または元のポリペプチドの生物学的活性を(例えば、少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、200%、500%、または1,000%)増加させる。改変ポリペプチドは、ある場合に必要であるかまたは望ましい本発明のポリペプチドの1つ以上の特性を有するか、または最適化する。そのような特性には、in vivo安定性、バイオアベイラビリティ、毒性、免疫学的活性、または免疫学的同一性が含まれる。
【0078】
本発明のポリペプチドは、翻訳後プロセシング等の天然のプロセシングによって、または当技術分野において公知の化学改変技術によって改変されたアミノ酸または配列を含んでよい。改変は、ポリペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシ末端を含むポリペプチド中のどこかに存在してよい。所定のポリペプチド中のいくつかの部位で同程度または種々の程度に同タイプの改変を存在させてよく、ポリペプチドは2種以上のタイプの改変を含有してよい。ポリペプチドは、ユビキチン結合の結果、分岐していてよく、それは分岐を有するか有さない環状ポリペプチドであってよい。環状、分岐、および分岐環状ポリペプチドは、翻訳後の天然プロセシングから生じるか、または合成によって作製してよい。他の改変には、ペグ化、アセチル化、アシル化、アセトミドメチル(acetomidomethyl) (Acm)基の付加、ADP-リボシル化、アルキル化、アミド化、ビオチニル化、カルバモイル化、カルボキシエチル化、エステル化、フィアビン(fiavin)への共有結合性結合、ヘム部分への共有結合性結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合性結合、薬物の共有結合性結合、マーカー(例えば蛍光または放射性マーカー)の共有結合性結合、脂質または脂質誘導体の共有結合性結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合性結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル、共有結合性架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解性プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、アルギニル化およびユビキチン結合等の、タンパク質に対するアミノ酸のトランスファー-RNA媒介性付加が含まれる。
【0079】
改変ポリペプチドは、ポリペプチド配列中に、保存的または非保存的(例えば、D-アミノ酸、デスアミノ酸(desamino acids))なアミノ酸挿入、欠失、または置換をさらに含んでよい(例えば、そのような変化が該ポリペプチドの生物学的活性を実質的に変化させない場合)。
【0080】
置換は保存的(すなわち、残基が別の同一の一般的タイプまたは基によって置換される)または非保存的(すなわち、残基が別のタイプのアミノ酸によって置換される)である。さらに、天然に存在するアミノ酸の代わりに天然に存在しないアミノ酸を使用してよい(すなわち、天然に存在しない保存的アミノ酸置換または天然に存在しない非保存的アミノ酸置換)。
【0081】
合成によって作製されるポリペプチドに、DNAによって天然にコードされないアミノ酸(例えば、天然に存在しないか、または不自然なアミノ酸)の置換を含んでよい。天然に存在しないアミノ酸の例には、D-アミノ酸、システインの硫黄原子に結合しているアセチルアミノメチル基を有するアミノ酸、ペグ化アミノ酸、式: NH2(CH2)nCOOH (式中、nは2〜6である)のオメガアミノ酸、中性無極性アミノ酸、例えばサルコシン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、およびノルロイシンが含まれる。フェニルグリシンは、Trp、Tyr、またはPheの代わりになり; シトルリンおよびメチオニンスルホキシドは中性無極性であり、システイン酸は酸性であり、オルニチンは塩基性である。プロリンをヒドロキシプロリンで置換し、特性を付与するコンフォメーションを保持することができる。
【0082】
置換的突然変異誘発によってアナログを作製し、元のポリペプチドの生物学的活性を保持することができる。「保存的置換」として特定される置換の例を表3に示す。そのような置換が望ましくない変化を生じさせる場合、表3中の「典型的な置換」と称される他のタイプの置換、またはアミノ酸クラスに関して本明細書中でさらに記載される他のタイプの置換を導入し、生成物をスクリーニングする。
【0083】
機能または免疫学的同一性の実質的改変は、(a) 例えばシートまたは螺旋(ヘリカル)コンフォメーションである、置換の領域におけるポリペプチド主鎖の構造、(b) 標的部位での分子の荷電または疎水性、または(c) 側鎖の容積、の維持に関するその影響が顕著に異なる置換を選択することによって達成される。天然に存在する残基は共通の側鎖特性に基づく群に分けられる:
(1) 疎水性: ノルロイシン、メチオニン(Met)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、ヒスチジン(His)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、
(2) 中性親水性: システイン(Cys)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)
(3) 酸性/負電荷: アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)
(4) 塩基性: アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、リシン(Lys)、アルギニン(Arg)
(5) 鎖の向きに影響する残基: グリシン(Gly)、プロリン(Pro);
(6) 芳香族: トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、ヒスチジン(His)、
(7) 極性: Ser、Thr、Asn、Gln
(8) 塩基性正電荷: Arg、Lys、His、および;
(9) 荷電: Asp、Glu、Arg、Lys、His。
【0084】
他の保存的アミノ酸置換を表3に列挙する。
【表3】

【0085】
追加のアナログ
本発明のポリペプチドおよびコンジュゲートは、当技術分野において公知のアプロチニンのポリペプチドアナログを含んでよい。例えば、米国特許第5,807,980号では、配列番号102のポリペプチドを含む、ウシ膵臓トリプシンインヒビター(アプロチニン)由来のインヒビターならびにその製造方法および治療上の使用が記載されている。これらのポリペプチドは、異常な血栓症等の組織因子および/または因子VIIIaの異常な出現または量を特徴とする症状の治療に使用されている。米国特許第5,780,265号では、配列番号103を含む、血漿カリクレインを阻害可能なセリンプロテアーゼインヒビターが記載されている。米国特許第5,118,668号では、配列番号105を含む、ウシ膵臓トリプシンインヒビター変異体が記載されている。アプロチニンのアミノ酸配列(配列番号98)、Angiopep-1アミノ酸配列(配列番号67)、および配列番号104、ならびにいくつかの生物活性アナログ配列が国際出願公開第WO 2004/060403号に見出せる。
【0086】
アプロチニンアナログをコードする典型的なヌクレオチド配列は配列番号106に示される(atgagaccag atttctgcct cgagccgccg tacactgggc cctgcaaagc tcgtatcatc cgttacttct acaatgcaaa ggcaggcctg tgtcagacct tcgtatacgg cggctgcaga gctaagcgta acaacttcaa atccgcggaa gactgcatgc gtacttgcgg tggtgcttag; Genbankアクセッション番号X04666)。この配列は第16位で配列番号98に見出されるバリンの代わりにリシンをコードする。配列番号106のヌクレオチド配列中の突然変異を当技術分野において公知の方法によって導入して、第16位にバリンを有する配列番号98のポリペプチド産物を変化させてよい。追加の突然変異または断片は、当技術分野において公知の任意の技術を使用して取得することができる。
【0087】
アプロチニンアナログの他の例は、国際出願第PCT/CA2004/000011号に開示される合成アプロチニン配列(またはその部分)を使用してタンパク質BLAST (Genebank: www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を実施することによって見出すことができる。典型的なアプロチニンアナログはアクセッション番号CAA37967 (GI:58005)および1405218C (GI:3604747)の下に見出せる。
【0088】
ポリペプチド誘導体およびペプチド模倣体の製造
天然に存在するアミノ酸のみから構成されるポリペプチドに加えて、ペプチド模倣体またはポリペプチドアナログもまた、本発明によって包含される。ポリペプチドアナログは、一般に、鋳型ポリペプチドの特性と類似の特性を有する非ポリペプチド薬物として製薬産業で使用される。非ポリペプチド化合物は「ポリペプチド模倣体」またはペプチド模倣体と称される(Fauchere et al., Infect. Immun. 54:283-287,1986; Evans et al., J. Med. Chem. 30:1229-1239, 1987)。治療的に有用なポリペプチドに構造的に関連しているポリペプチド模倣体を使用して、等価なまたは向上した治療的もしくは予防的効果を得ることができる。概して、ペプチド模倣体は、天然に存在する受容体結合ポリペプチド等の模範ポリペプチド(すなわち、生物学的または薬理学的活性を有するポリペプチド)に構造的に類似しているが、当技術分野において周知の方法によって、-CH2NH-、-CH2S-、-CH2-CH2-、-CH=CH- (シスおよびトランス)、-CH2SO-、-CH(OH)CH2-、-COCH2-等の結合によって場合により置換されている1個以上のペプチド結合を有する(Spatola, Peptide Backbone Modifications, Vega Data, 1(3):267, 1983); Spatola et al. (Life Sci. 38:1243-1249, 1986); Hudson et al. (Int. J. Pept. Res. 14:177-185, 1979); およびWeinstein. B., 1983, Chemistry and Biochemistry, of Amino Acids, Peptides and Proteins, Weinstein eds, Marcel Dekker, New-York)。そのようなポリペプチド模倣体は、天然に存在するポリペプチドより優れた顕著な利点を有し、それには、経済的な生産、高い化学的安定性、増強された薬理学的特性(例えば、半減期、吸収、効力、効率)、低減された抗原性および他の利点が含まれる。
【0089】
本発明のポリペプチドは、特定の細胞タイプ(例えば本明細書中に記載の細胞タイプ)への侵入に関して有効であるが、その有効性はプロテアーゼの存在によって低減する。血清プロテアーゼは特異的基質要求性を有する。基質は、切断のためにL-アミノ酸およびペプチド結合をともに有する必要がある。さらにまた、血清中のプロテアーゼ活性の最大成分であるエキソペプチダーゼは、通常、ポリペプチドの第一のペプチド結合に作用し、遊離のN末端を必要とする(Powell et al., Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。このことを考慮すると、改変バージョンのポリペプチドを使用することが有益であることがよくある。改変ポリペプチドは、IGF-1に関する生物学的活性を与える元のL-アミノ酸ポリペプチドの構造上の特徴を保持するが、有益には、プロテアーゼおよび/またはエキソペプチダーゼによる切断に容易には感受性でない。
【0090】
コンセンサス配列の1つ以上のアミノ酸を同タイプのD-アミノ酸(例えば、L-リシンの代わりのD-リシン)で系統的に置換することを使用して、より安定なポリペプチドを作製することができる。ゆえに、本発明のポリペプチド誘導体またはペプチド模倣体は、すべてL、すべてDまたは混合D、Lポリペプチドであってよい。N末端またはC末端D-アミノ酸の存在は、ポリペプチドのin vivo安定性を高める。その理由は、ペプチダーゼがD-アミノ酸を基質として利用できないからである(Powell et al., Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。リバース-Dポリペプチドは、L-アミノ酸を含有するポリペプチドと比較して逆配列に並べられたD-アミノ酸を含有するポリペプチドである。ゆえに、L-アミノ酸ポリペプチドのC末端残基はD-アミノ酸ポリペプチドのN末端になる、等である。リバースD-ポリペプチドはL-アミノ酸ポリペプチドと同一の三次コンフォメーションを保持し、したがって同一の活性を保持するが、元のポリペプチドより、in vitroおよびin vivoでの酵素分解に対して安定であり、ゆえに高い治療効力を有する(Brady and Dodson, Nature 368:692-693, 1994; Jameson et al., Nature 368:744-746, 1994)。リバース-D-ポリペプチドに加えて、コンセンサス配列または実質的に同一のコンセンサス配列変異を含む拘束(constrained)ポリペプチドを当技術分野において周知の方法によって作製してよい(Rizo and Gierasch, Ann. Rev. Biochem. 61:387-418, 1992)。例えば、拘束ポリペプチドは、ジスルフィド結合を形成可能なシステイン残基を付加し、それによって環状ポリペプチドを生じさせることによって作製してよい。環状ポリペプチドは遊離のN末端またはC末端を有さない。したがって、それらはエキソペプチダーゼによるタンパク質分解に対して感受性でないが、ペプチド末端を切断しないエンドペプチダーゼに対しては、当然、感受性である。N末端またはC末端D-アミノ酸を有するポリペプチドのアミノ酸配列および環状ポリペプチドのアミノ酸配列は、通常、それぞれN末端もしくはC末端D-アミノ酸残基の存在、またはその環状構造を除き、それらの対応元のポリペプチドの配列と同一である。
【0091】
分子内ジスルフィド結合を含有する環状誘導体を慣用の固相合成によって製造し、アミノおよびカルボキシ末端等の、環化のために選択された位置で、好適なS-保護システインまたはホモシステイン残基を組み入れることができる(Sah et al., J. Pharm. Pharmacol. 48:197, 1996)。鎖の組立ての完了後、(1) S-保護基を選択的に除去し、その結果として対応する2つの遊離SH官能基が支持体上で酸化されてS-S結合が形成され、次いで生成物を支持体から慣用的に除去し、適切な精製手順に付することによって、または(2) ポリペプチドを支持体から除去するとともに側鎖を完全に脱保護し、次いで高度に希釈された水性溶液中で遊離SH官能基を酸化することによって、環化を実施することができる。
【0092】
分子内アミド結合を含有する環状誘導体を慣用の固相合成によって製造し、環化のために選択された位置で、好適なアミノおよびカルボキシル側鎖保護アミノ酸誘導体を組み入れることができる。分子内-S-アルキル結合を含有する環状誘導体を慣用の固相化学によって製造し、環化のために選択された位置で、好適なアミノ保護側鎖を有するアミノ酸残基および好適なS-保護システインまたはホモシステイン残基を組み入れることができる。
【0093】
ポリペプチドのN末端またはC末端残基に対して作用するペプチダーゼに対する耐性を付与するための別の有効なアプローチは、ポリペプチド末端に化学基を付加して、改変ポリペプチドがもはや該ペプチダーゼの基質ではないようにすることである。そのような化学改変の1つは、片方または両方の末端でのポリペプチドのグリコシル化である。特定の化学改変、特にN末端グリコシル化はヒト血清中のポリペプチドの安定性を高めることが示されている(Powell et al., Pharm. Res. 10:1268-1273, 1993)。血清安定性を増強する他の化学改変には、非限定的に、アセチル基等の1〜20炭素の低級アルキルからなるN末端アルキル基の付加、および/またはC末端アミドまたは置換アミド基の付加が含まれる。特に、本発明は、N末端アセチル基および/またはC末端アミド基を保持するポリペプチドからなる改変ポリペプチドを含む。
【0094】
通常はポリペプチドの部分ではない追加の化学部分を含有する他のタイプのポリペプチド誘導体もまた、該誘導体が該ポリペプチドの所望の機能的活性を保持する限り、本発明に含まれる。そのような誘導体の例には、(1) アミノ末端の、または別の遊離アミノ基のN-アシル誘導体(該アシル基はアルカノイル基(例えば、アセチル、ヘキサノイル、オクタノイル) アロイル基(例えばベンゾイル) またはF-moc (フルオレニルメチル-O-CO-)等の保護基であってよい); (2) カルボキシ末端の、または別の遊離カルボキシもしくはヒドロキシル基のエステル; (3) アンモニアまたは好適なアミンとの反応によって生じるカルボキシ末端の、または別の遊離カルボキシル基のアミド; (4) リン酸化誘導体; (5) 抗体または他の生物学的リガンドにコンジュゲートされた誘導体、および他のタイプの誘導体が含まれる。
【0095】
本発明のポリペプチドに対する追加のアミノ酸残基の付加から生じる長いポリペプチド配列もまた、本発明に包含される。そのような長いポリペプチド配列は上記ポリペプチドと同一の生物学的活性(例えば特定の細胞タイプへの侵入)を有すると予測される。相当な数の追加のアミノ酸を有するポリペプチドは除外されないが、いくつかの大きいポリペプチドは、有効な配列を遮蔽する立体配置をとり、それによって標的(例えばLRPまたはLRP2等のLRP受容体ファミリーのメンバー)に対する結合を妨げることが認識される。これらの誘導体は競合的アンタゴニストとして作用しうる。ゆえに、本発明は、伸長を有する本明細書中に記載のポリペプチドまたはポリペプチドの誘導体を包含するが、望ましくは、該伸長は該ポリペプチドまたは誘導体の細胞ターゲティング活性を破壊しない。
【0096】
本発明に含まれる他の誘導体は、直接またはスペーサーを介して、例えばアラニン残基の短いストレッチによってまたはタンパク質分解のための推定部位によって(例えば、カテプシンによる連結。例えば米国特許第5,126,249号および欧州特許第495 049号を参照のこと)、互いに共有結合により連結された2つの同一または2つの異なる本発明のポリペプチドからなる二重ポリペプチドである。本発明のポリペプチドの多量体は、同一または異なるポリペプチドまたはその誘導体から形成された分子のポリマーから構成される。
【0097】
本発明はまた、異なるタンパク質のアミノ酸配列にアミノ末端もしくはカルボキシ末端またはその両方で連結されている本明細書中に記載のポリペプチド、またはその断片を含有するキメラまたは融合タンパク質であるポリペプチド誘導体を包含する。そのようなキメラまたは融合タンパク質は、該タンパク質をコードする核酸の組換え発現によって製造してよい。例えば、キメラまたは融合タンパク質は、本発明のポリペプチドの少なくとも6アミノ酸を含有し、望ましくは本発明のポリペプチドと等価なまたはそれより高い機能的活性を有する。
【0098】
本発明のポリペプチド誘導体は、置換、付加、または欠失またはアミノ酸残基によってアミノ酸配列を変化させて、所望のように、機能的に等価な分子、または機能的に増強もしくは減弱された分子を得ることによって作製することができる。本発明の誘導体には、非限定的に、機能的に等価なアミノ酸残基の置換を含有する改変配列を含む本明細書中に記載のポリペプチドのアミノ酸配列(例えば配列番号1〜105および107〜112のいずれか)の全体または部分を一次アミノ酸配列として含有するものが含まれる。例えば、配列内の1個以上のアミノ酸残基を、機能的等価物として機能する類似の極性の別のアミノ酸によって置換して、サイレント変化を生じさせることができる。配列内のアミノ酸に関する置換は、該アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択してよい。例えば、正電荷(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが含まれる。無極性(疎水性)アミノ酸には、ロイシン、イソロイシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、プロリン、トリプトファンおよびメチオニンが含まれる。無電荷極性アミノ酸には、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが含まれる。負電荷(酸性)アミノ酸には、グルタミン酸およびアスパラギン酸が含まれる。アミノ酸グリシンは無極性アミノ酸ファミリーまたは無電荷(中性)極性アミノ酸ファミリーに含まれる。アミノ酸のファミリー内で施される置換は概して保存的置換であると理解される。
【0099】
ペプチド模倣体を特定するためのアッセイ
上記のように、本発明の方法によって特定されたポリペプチドの主鎖形状およびファルマコフォアディスプレイを再現するように作製された非ペプチジル化合物(ペプチド模倣体)は、高い代謝安定性、高い効力、長い作用期間および良好なバイオアベイラビリティの属性を有することが多い。
【0100】
本発明のペプチド模倣体化合物は、生物学的ライブラリー; 空間的にアドレス可能なパラレル固相または液相ライブラリー; 逆重畳積分を必要とする合成ライブラリー法; 「1ビーズ1化合物」ライブラリー法; およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法を含む、当技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチのいずれかを使用して取得することができる。生物学的ライブラリーアプローチはポリペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチはポリペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは小分子ライブラリーの化合物に適用可能である(Lam, Anticancer Drug Des. 12:145, 1997)。分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当技術分野において、例えば: DeWitt et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909, 1993); Erb et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11422, 1994); Zuckermann et al., J. Med. Chem. 37:2678, 1994); Cho et al. (Science 261:1303, 1993); Carell et al. (Angew. Chem, Int. Ed. Engl. 33:2059, 1994および同書2061); およびGallop et al. (Med. Chem. 37:1233, 1994)に見出せる。化合物のライブラリーは、溶液中(例えばHoughten, Biotechniques 13:412-421, 1992)またはビーズ上(Lam, Nature 354:82-84, 1991)、チップ(Fodor, Nature 364:555-556, 1993)、細菌または胞子(米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cull et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865-1869, 1992)またはファージ上(Scott and Smith, Science 249:386-390, 1990)に存在させてよく、またはルシフェラーゼ、および酵素標識を、適切な基質から生成物への変換を決定することによって検出してよい。
【0101】
本発明のポリペプチドを特定した後、溶解度差(例えば沈降)、遠心分離、クロマトグラフィー(例えば、アフィニティー、イオン交換、サイズ排除、等)を非限定的に含む任意の数の標準的方法によってまたは、ポリペプチド、ペプチド模倣体またはタンパク質の精製に使用される任意の他の標準的技術によって単離および精製することができる。当技術分野において公知の任意の機能アッセイを使用して、特定された目的のポリペプチドの機能的特性を評価してよい。望ましくは、細胞内シグナル伝達における下流の受容体機能を評価するためのアッセイを使用する(例えば細胞増殖)。
【0102】
例えば、以下の3相のプロセス: (1) 本発明のポリペプチドをスキャンして、本明細書中に記載の特定の細胞タイプのターゲティングに必要な二次構造の領域を特定するステップ; (2) コンフォメーションが制約されたジペプチド代用物を使用して、主鎖形状を絞り込み、これらの代用物に対応する有機物プラットフォームを提供するステップ; および(3) 最良の有機物プラットフォームを使用して、ネイティブポリペプチドの所望の活性を模倣するように設計された候補のライブラリー中で有機物ファルマコフォア(pharmocophores)をディスプレイするステップ、を使用して本発明のペプチド模倣体化合物を取得してよい。さらに詳細には、3相は以下の通りである。1相では、リード候補ポリペプチドをスキャンし、その構造を制約してその活性に関する必要条件を特定する。元のポリペプチドの一連のポリペプチドアナログを合成する。2相では、コンフォメーションが制約されたジペプチド代用物を使用して最良のポリペプチドアナログを調査する。最良のポリペプチド候補の主鎖形状を研究するために、インドリジジン-2-オン、インドリジジン-9-オンおよびキノリジジノンアミノ酸(それぞれI2aa、I9aaおよびQaa)をプラットフォームとして使用する。これらのプラットフォームおよび関連プラットフォーム(Halab et al., Biopolymers 55:101-122, 2000; およびHanessian et al. Tetrahedron 53:12789-12854, 1997でレビューされている)をポリペプチドの特定領域に導入して、ファルマコフォアを異なる方向に向けることができる。これらのアナログの生物学的評価によって、活性に関する形状的必要条件を模倣する、改善されたリードポリペプチドを特定する。3相では、最も活性なリードポリペプチド由来のプラットフォームを使用して、ネイティブポリペプチドの活性を担うファルマコフォアの有機代用物をディスプレイする。ファルマコフォアおよび骨格をパラレル合成形式で組み合わせる。ポリペプチドの誘導および上記相は、当技術分野において公知の方法を使用する他の手段によって達成することができる。
【0103】
本発明のポリペプチド、ポリペプチド誘導体、ペプチド模倣体、または他の小分子から決定された構造機能関連性を使用して、類似または良好な特性を有する類似の分子構造を絞り込みかつ製造することができる。したがって、本発明の化合物はまた、本明細書中に記載のポリペプチドの構造、極性、荷電特性、および側鎖特性を共有する分子を含む。
【0104】
要約すれば、本明細書中の開示に基づいて、当業者は、特定の細胞タイプ(例えば本明細書中に記載の細胞タイプ)に物質をターゲティングするための化合物を特定するために有用なポリペプチドおよびペプチド模倣体スクリーニングアッセイを開発することができる。本発明のアッセイは、低処理、高処理、または超高処理スクリーニング形式用に開発することができる。本発明のアッセイには、自動化しやすいアッセイが含まれる。
【0105】
本発明のコンジュゲート
本明細書中に記載のポリペプチドまたはその誘導体を物質に連結することができる。例えば、ポリペプチド(例えばAngiopep-7)を、治療剤、診断剤、または標識に取り付けてよい。特定の実施形態では、疾患または症状の診断のための、ラジオイメージング物質等の検出可能な標識にポリペプチドを連結するか、または該標識で標識する。これらの物質の例には、抗体が疾患または症状特異的抗原に結合する、ラジオイメージング物質-抗体-ベクターコンジュゲート(例えば診断または治療用)が含まれる。他の結合分子もまた、本発明によって想定される。他の場合では、ポリペプチドまたは誘導体を、疾患または症状を治療するための治療剤に連結するか、またはその混合物に連結するかもしくはその混合物で標識してよい。BBBを横切る物質の輸送または特定の細胞タイプ内への物質の輸送を可能にする条件下でベクター-物質コンジュゲートを個体に投与することによって該疾患または症状を治療することができる。各ポリペプチドは、少なくとも1、2、3、4、5、6、または7個の物質を含んでよい。他の実施形態では、各物質は、それに結合している少なくとも1、2、3、4、5、6 7、10、15、20個、またはそれ以上のポリペプチドを有する。本発明のコンジュゲートは、被験体の特定の細胞タイプまたは組織、例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓または筋肉における物質の(例えば取り込みの増加または除去の低減に起因する)蓄積を促進することができる。
【0106】
物質は、特定の細胞タイプ内への輸送またはBBBを横切る輸送後にベクターから放出可能であってよい。物質は、例えばベクターと物質の間の化学結合の、酵素による切断または他の切断によって放出させることができる。そして、放出された物質は、ベクターの不存在下で、その意図される能力に関して機能する。
【0107】
治療剤
治療剤は任意の生物活性物質であってよい。例えば、治療薬は、疾患を治療するための(例えば癌細胞を死滅させるための)薬物、医薬、放射能を放出する物質、細胞毒素(例えば化学療法剤)、その生物活性断片、またはその混合物であるか、または個体の疾患または症状を治療するための物質であってよい。治療剤は、合成品または、真菌、細菌または他の微生物(例えばマイコプラズマまたはウイルス)、動物、例えば爬虫類、または植物起源の産物であってよい。治療剤および/またはその生物活性断片は酵素活性物質および/またはその断片であるか、または重要なかつ/または必須の細胞経路を阻害もしくはブロックすることによって、または重要なかつ/または必須の天然に存在する細胞成分と競合することによって働く。他の治療剤には、抗体および抗体断片が含まれる。
【0108】
抗癌剤。当技術分野において公知の任意の抗癌剤が本発明のコンジュゲートの部分であってよい。BBBを横切って効率的に輸送されるベクター(例えば、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、またはAngiopep-6)を含有するコンジュゲートで脳の癌を治療してよい。適切な細胞タイプ内に効率的に輸送されるベクター(例えばAngiopep-7)にコンジュゲートされた抗癌剤で、肝臓、肺、腎臓、または脾臓の癌を治療してよい。典型的な物質には、アバレリックス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナキンラ、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アザシチジン、生BCG、ベバクジマブ(bevacuzimab)、ベキサロテン、ブレオマイシン、ブレオマイシン、ボルテゾムビ(bortezombi)、ボルテゾミブ、ブスルファン、ブスルファン、カルステロン(calusterone)、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロランブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、アクチノマイシンD、ダルテパリン(例えばナトリウム塩)、ダーベポエチンアルファ、ダサチニブ、ダウノルビシン、ダウノマイシン、デシタビン、デニロイキン、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エクリズマブ、エピルビシン(例えばHCl塩)、エポエチンアルファ、エルロチニブ、エストラムスチン、エトポシド(例えばリン酸塩)、エキセメスタン、フェンタニル(例えばクエン酸塩)、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、5-FU、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン(例えばHCl塩)、ゲムツズマブ・オゾガマイシン、ゴセレリン(例えば酢酸塩)、ヒストレリン(例えば酢酸塩)、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ(例えばメシラート)、インターフェロンアルファ-2b、イリノテカン、ラパチニブジトシラート、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド(例えば酢酸塩)、レバミゾール、ロムスチン、CCNU、メクロレタミン(meclorethamine) (ナイトロジェンマスタード)、メゲストロール、メルファラン(L-PAM)、メルカプトプリン(6-MP)、メスナ、メトトレキセート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロンフェンプロピオナート、ネララビン、ノフェツモマブ(nofetumomab)、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パリフェルミン、パミドロナート、パニツムマブ、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンアルファ-2b、ペメトレキセド(例えば二ナトリウム塩)、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、ポルフィマー(例えばナトリウム塩)、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ(例えばマレイン酸塩)、タルク、タモキシフェン、テモゾロマイド、テニポシド(VM-26)、テストラクトン、サリドマイド、チオグアニン(6-TG)、チオテパ、チオテパ、チオテパ、トポテカン(例えばhcl塩)、トレミフェン、トシツモマブ/I-131 (トシツモマブ)、トラスツズマブ、トラスツズマブ、トレチノイン(ATRA)、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ボリノスタット、ゾレドロナート、およびゾレドロン酸が含まれる。パクリタキセルの典型的な誘導体は米国特許第6,911,549号(該文献の内容全体は参照によりここに組み入れられる)に記載される。
【0109】
検出可能な標識
検出または診断目的で本発明のコンジュゲートを標識してよい。検出可能な標識、またはマーカーは、放射性標識、蛍光標識、核磁気共鳴活性標識、発光標識、発色団標識、PETスキャナー用のポジトロン放出同位体、化学発光標識、または酵素標識であってよい。放射能を放出する典型的なラジオイメージング物質(検出可能な放射性標識)には、インジウム-111、テクニチウム(technitium)-99、または低用量のヨウ素-131が含まれる。ガンマおよびベータ放出放射性核種には、67Cu、67Ga、90Y、111In、99mTc、および201Tl)が含まれる。ポジトロン放出放射性核種には、18F、55Co、60Cu、62Cu、64Cu、66Ga、68Ga、82Rb、および86Yが含まれる。蛍光標識には、Cy5.5、緑色蛍光タンパク質(GFP)、フルオレセイン、およびローダミンが含まれる。化学発光標識には、ルシフェラーゼおよびβ-ガラクトシダーゼが含まれる。酵素標識には、ペルオキシダーゼおよびホスファターゼが含まれる。hisタグもまた、検出可能な標識である。例えば、コンジュゲートはベクター部分および抗体部分(抗体または抗体断片)を含んでよく、それは標識をさらに含んでよい。この場合、該標識はベクターまたは抗体に結合させてよい。
【0110】
抗体
当技術分野において公知の任意の手段によって(例えば本明細書中に記載のコンジュゲーションストラテジーを使用して)本発明のポリペプチドに抗体をコンジュゲートしてもよい。任意の診断用または治療用抗体を1個以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、またはそれ以上)の本発明のベクターにコンジュゲートしてよい。さらに、抗体断片(例えば抗原に結合可能な抗体断片)を本発明のベクターにコンジュゲートしてもよい。抗体断片には、抗体の(例えば本明細書中に記載の任意の抗体の) FabおよびFc領域、重鎖、および軽鎖が含まれる。癌の診断および治療における使用に典型的な抗体には、ABX-EGF (パニチムマブ(Panitimumab))、OvaRex (オレゴベマブ(Oregovemab))、Theragyn (ペムツモマブイットリウム-90 (pemtumomabytrrium-90))、Therex、ビバツズマブ(Bivatuzumab)、Panorex (エドレコロマブ)、ReoPro (レオプロ) (アブシキシマブ)、Bexxar (ベキサール) (トシツモマブ)、MAb、イディオタイプ105AD7、抗-EpCAM (カツマキソマブ)、MAb肺癌(Cytoclonal製)、Herceptin (ハーセプチン) (トラスツズマブ)、Rituxan (リツキサン) (リツキシマブ)、Avastin (アバスチン) (ベバシズマブ)、AMD Fab (ラニビズマブ)、E-26 (2nd gen. IgE) (オマリズマブ)、Zevalin (ゼヴァリン) (Rituxan +イットリウム-90) (イブリツモマブチウキセタン)、セツキシマブ、BEC2 (ミツモマブ(Mitumomab))、IMC-1C11、nuC242-DM1、LymphoCide (エプラツズマブ(Epratuzumab))、LymphoCide Y-90、CEA-Cide (ラベツズマブ)、CEA-Cide Y-90、CEA-Scan (Tc-99m-標識アルシツモマブ)、LeukoScan (Tc-99m-標識スレソマブ(sulesomab))、LymphoScan (Tc-99m-標識ベクツモマブ(bectumomab))、AFP-Scan (Tc-99m-標識)、HumaRAD-HN (+イットリウム-90)、HumaSPECT (ボツムマブ(Votumumab))、MDX-101 (CTLA-4)、MDX-210 (her-2過剰発現)、MDX-210/MAK、Vitaxin、MAb 425、IS-IL-2、Campath (キャンパス) (アレムツズマブ)、CD20ストレプトアビジン、Avidicin、(アルブミン+ NRLU13)、Oncolym (+ヨウ素-131) Cotara (+ヨウ素-131)、C215 (+ブドウ球菌エンテロトキシン、MAb肺/腎臓癌(Pharmacia Corp.製)、ナコロマブタフェナトキス(nacolomab tafenatox) (C242ブドウ球菌エンテロトキシン)、Nuvion (ヌヴィオン) (ビジリズマブ)、SMART M195、SMART 1D10、CEAVac、TriGem、TriAb、放射性標識NovoMAb-G2、Monopharm C、GlioMAb-H (+ゲロニン毒素)、Rituxan (リツキシマブ)、およびING-1が含まれる。追加の治療用抗体には、5G1.1 (エクルイズマブ(Ecluizumab))、5G1.1-SC (ペキセリズマブ(Pexelizumab))、ABX-CBL (ガビリモマブ(Gavilimomab))、ABX-IL8、Antegren (アンテグレン) (ナタリズマブ)、抗-CD11a (エファリズマブ)、抗-CD18 (Genetech製)、抗-LFA1、Antova、BTI-322、CDP571、CDP850、Corsevin M、D2E7 (アダリムマブ)、Humira (ヒュミラ) (アダリムマブ)、Hu23F2G (ロベリズマブ(Rovelizumab))、IC14、IDEC-114、IDEC-131、IDEC-151、IDEC-152、インフリキシマブ(Remicade (レミケード))、LDP-01、LDP-02、MAK-195F (アフェリモマブ)、MDX-33、MDX-CD4、MEDI-507 (シプリズマブ)、OKT4A、OKT3 (ムロモナブ-CD3)、およびReoPro (アブシキシマブ)が含まれる。
【0111】
コンジュゲーションリンカー
当技術分野において公知の任意の架橋(コンジュゲーション)試薬またはプロトコル(多数市販されている)を使用して、コンジュゲート(例えばタンパク質-タンパク質コンジュゲート)を得ることができる。そのようなプロトコルおよび試薬には、アミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、カルボニル、炭水化物および/またはフェノール基と反応性の架橋剤が含まれる。そのようなプロトコルの量、時間、および条件を変動させてコンジュゲーションを最適化することができる。架橋試薬は少なくとも2個の反応基を含有し、概して、ホモ官能性(homofunctional)架橋剤(同一の反応基を含有する)およびヘテロ官能性(heterofunctional)架橋剤(同一でない反応基を含有する)に分けられる。本発明の架橋剤は、ホモ二官能性および/またはヘテロ二官能性であってよい。さらにまた、架橋剤は反応性部分の間に「スペーサー」を含むか、または架橋剤中の2個の反応性部分が直接連結されてもよい。結合には、エステル結合が含まれる。
【0112】
典型的なリンカーには、BS3 [ビス(スルホスクシンイミジル)スベラート]、NHS/EDC (N-ヒドロキシスクシンイミドおよびN-エチル-(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、スルホ-EMCS ([N-e-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド)、SATA (N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)、およびヒドラジドが含まれる。BS3は、アクセス可能な一級アミンを標的にするホモ二官能性N-ヒドロキシスクシンイミドエステルである。コンジュゲーションスキームを図2に例示する。NHS/EDCは一級アミン基とカルボキシル基のコンジュゲーションを可能にする。スルホ-EMCSは、スルフヒドリルおよびアミノ基に対して反応性のヘテロ二官能性反応基(マレイミドおよびNHS-エステル)である。スルホ-NHS/EDC活性化を使用するアミンカップリングを使用して、図3および4に例示されるように、本発明のポリペプチドと治療用抗体を架橋することができる。これは迅速で単純でかつ再現可能なカップリング技術である。得られたコンジュゲートは安定であり、かつ抗体の生物学的活性を保持する。さらに、それは容易にコントロールできる高いコンジュゲーション能力を有し、かつカップリング手順中に低い非特異的相互作用しか有さない。SATAはアミンに対して反応性であり、かつ保護されたスルフヒドリル基を付加する。NHS-エステルは一級アミンと反応して安定なアミド結合を形成する。スルフヒドリル基はヒドロキシルアミンを使用して脱保護することができる。コンジュゲーション法を図5に例示する。図6に示されるように、ヒドラジドを使用してカルボキシル基を一級アミンに連結することができ、したがってヒドラジドは糖タンパク質の連結に有用である。追加の典型的なリンカーを図7に示す。
【0113】
小分子、例えば治療剤を本発明のポリペプチドにコンジュゲートすることができる。典型的な小分子、パクリタキセルは、コンジュゲーションに有用な2個の戦略的に重要な位置(C2'位およびC7位)を有する。ベクターまたは本発明のベクターとパクリタキセルのコンジュゲーションは以下のように実施することができる(図8)。簡潔に言えば、パクリタキセルを無水コハク酸ピリジン(anhydride succinic pyridine)と室温で3時間反応させて2'位にスクシニル基を取り付ける。2'-スクシニルパクリタキセルは2'位に切断可能なエステル結合を有し、それは単純にコハク酸を放出させることができる。この切断可能なエステル結合を、所望であれば、リンカーを用いる種々の改変にさらに使用することができる。そして、得られた2'-O-スクシニル-パクリタキセルをDMSO中で室温で9時間EDC/NHSと反応させ、次いで室温で4時間の追加の反応時間中にベクターまたはリンゲル/DMSO中のベクターを加える。図8に示されるコンジュゲーションの反応をHPLCによってモニターする。各中間体、例えばパクリタキセル、2'-O-スクシニル-パクリタキセルおよび2'-O-NHS-スクシニル-パクリタキセルを精製し、HPLC、薄層(thin)液体クロマトグラフィー、NMR (13Cまたは1H交換)、融点、または質量分析等の異なるアプローチを使用して検証する。質量分析およびSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって最終コンジュゲートを分析する。これにより、各ベクターにコンジュゲートされたパクリタキセル分子の数を決定することが可能である。
【0114】
コンジュゲート活性
本明細書中に記載のベクターに物質をコンジュゲートすることによって、望ましい特性、例えば改変された薬物動態、改変された組織分布(例えば特定の組織または細胞タイプ、例えば肝臓、脳、肺、脾臓、または腎臓への送達の増加)を達成することができる。簡潔に言えば、発明者らは、BBBを横切って効率的に物質を輸送するベクター(例えば、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、およびAngiopep-6)を特定した。Angiopep-2のように、これらのベクターは他の細胞タイプまたは組織(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、または筋肉)に物質をターゲティングすることが可能でもある。発明者らはまた、BBBを横切って効率的には輸送されないが、特定の組織(例えば、肝臓、肺、腎臓、脾臓、または筋肉)に輸送されるベクター、Angiopep-7を特定した。したがって、この活性を有するベクターは、BBBを横切る輸送が望ましくない場合に有用である。
【0115】
本発明のコンジュゲートは特定の組織に物質を輸送するため、コンジュゲートされた物質は、低い毒性(例えば少ない副作用)、高い効力(例えば、取り込みの増加または組織もしくは細胞からの流出の減少に起因して物質が標的組織内に濃縮されるため、または物質がコンジュゲートされると高い安定性を有するため)、またはその組み合わせを生じさせる。そのような活性は以下および国際公開第WO 2007/009229号(該文献は参照によりここに組み入れられる)に記載される。
【0116】
いくつかの場合には、ベクターに物質をコンジュゲートすると、該物質が、細胞から特定の物質を排出可能な流出ポンプであるP-糖タンパク質(P-gp)の作用を回避することが可能になる。細胞から物質を排出するP-gpの能力を減少させることによって、細胞における該物質の効力を増加させることができる。ゆえにこれらのコンジュゲートは癌細胞増殖を活発に阻害する。さらに、in vivo腫瘍増殖に関して得られた結果は、本発明のベクターが受容体LRPを標的にすることを示す。また、コンジュゲーションはコンジュゲートされていない物質の薬物動態または体内分布を改変する。
【0117】
総合すると、乳房、肺、および皮膚の癌を含む原発腫瘍ならびに原発腫瘍に由来する転移に対抗してコンジュゲートを使用することができる。
【0118】
P-糖タンパク質バイパス
種々の化学療法剤、例えばビンクリスチン、エトポシド、およびドキソルビシンに対する耐性はP-gp (MDR1)過剰発現によって媒介されるため(図9)、この流出ポンプをバイパスすると、種々の癌タイプに対するこれらの薬物の作用を増強することができる。ベクターをそのような物質にコンジュゲートすることによって、P-gp媒介性の物質の流出を減少させることが可能になる。これらのコンジュゲートはP-gpによって媒介される耐性と関連する薬物の効力を増加させるために有用である。以下で例証されるように、本明細書中に記載のベクターを、P-gpによる排除を回避するその能力に関して試験した。
【0119】
LRP媒介性取り込み
本発明者らの以前の成果(国際特許出願第PCT/CA2004/00011号(該文献は参照によりここに組み入れられる)を参照のこと)に基づき、受容体関連タンパク質(RAP)は血液脳関門のin vitroモデルにおいてアプロチニンの経細胞輸送を阻害した。LRPは種々の癌細胞上で発現される(例えば国際公開第WO 2007/009229号を参照のこと)。したがって本発明者らは、低密度リポタンパク質関連受容体(LRP)が脳内へのアプロチニンの浸透に関与することを提唱した。また、血液脳関門のin vitroモデルを横切るAngiopep-1およびAngiopep-2輸送の類似の阻害が得られた(データは示していない)。これは、脳内皮細胞を横切るこれらのポリペプチドの経細胞輸送にもLRPが同様に関与することを示唆する。これに基づいて、本発明者らは、概して、本明細書中に記載のアプロチニン関連ポリペプチドの取り込みにLRPが関与すると考える。
【0120】
LRPは、2サブユニット; サブユニット-α(515 kDa)およびサブユニット-β(85 kDa)からなる600 kDaのヘテロ二量体の膜受容体である。LRPは本明細書中に記載のベクターの輸送に関与するため、本発明のコンジュゲートは、この受容体を発現する細胞および腫瘍を標的にする。特定の癌細胞は、例えば、LRPのメンバー(例えばLRPまたはLRP2)を発現する。
【0121】
治療方法
本発明はまた、本明細書中に記載のポリペプチドコンジュゲートを使用する治療方法を特徴とする。BBBを横切って効率的に輸送されるコンジュゲート(例えば、Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、およびAngiopep-6)を使用して任意の脳または中枢神経系疾患を治療することができる。これらのコンジュゲートはまた、肝臓、肺、腎臓、脾臓または筋肉に効率的に輸送され、したがってこれらのコンジュゲートを適切な治療剤と組み合わせて使用して、これらの組織と関連している疾患(例えば癌)を治療してもよい。Angiopep-7は脳に効率的には輸送されないが、組織および細胞、例えば肝臓、肺、腎臓、脾臓および筋肉に効率的に輸送されるため、Angiopep-7は、脳への物質のターゲティングが望ましくない場合に、前記組織と関連している疾患の治療のためのベクターとして特によく適している。
【0122】
肝疾患には、アメーバ性肝膿瘍、硬変、播種性コクシジオイデス症; 薬物性胆汁うっ滞、血色素症、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、肝細胞癌、肝癌、アルコールに起因する肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、化膿性肝膿瘍、ライ症侯群、硬化性胆管炎、およびウィルソン病が含まれる。メトロニダゾールにコンジュゲートされたベクターの投与によってアメーバ性肝膿瘍を治療することができる。例えばインターフェロン-アルファ、ラミブジン、アデホビルジピボキシル、エンテカビル、または他の抗ウイルス薬にコンジュゲートされたベクターの投与によってB型肝炎を治療することができる。例えばペグ化インターフェロンまたはリバビリン、またはその組み合わせにコンジュゲートされたベクターの投与によってC型肝炎を治療することができる。
【0123】
肺疾患には、肺癌、例えば小細胞癌(例えばエンバク細胞癌)、混合性小細胞/大細胞癌、複合性小細胞癌、および転移性腫瘍が含まれる。転移性腫瘍は、乳癌、結腸癌、前立腺癌、肉腫、膀胱癌、神経芽細胞腫、およびウィルムス腫瘍を含む任意の組織の癌に由来しうる。脾臓疾患には、癌、例えばリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および特定のT細胞リンパ腫が含まれる。
【0124】
本発明のコンジュゲートまたは組成物を使用して治療することができる追加の典型的な癌には、肝細胞癌、乳癌、頭部および頸部の癌、例えば種々のリンパ腫、例えば外套細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、腺腫、扁平上皮癌、喉頭癌、網膜の癌、食道の癌、多発性骨髄腫、卵巣癌、子宮癌、黒色腫、結腸直腸癌、膀胱癌、前立腺癌、肺癌(非小細胞肺癌を含む)、膵癌、子宮頸癌、頭部および頸部癌、皮膚癌、上咽頭癌、脂肪肉腫、上皮癌、腎細胞癌、胆嚢腺癌、耳下腺癌、子宮内膜肉腫、多剤耐性癌; および増殖性疾患および症状、例えば腫瘍血管新生と関連している血管新生、黄斑変性(例えば滲出型/非滲出型AMD)、コミール血管新生(comeal neovascularization)、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、近視性変性および他の増殖性疾患および症状、例えば再狭窄および多発性嚢胞腎が含まれる。BBBを横切って効率的に輸送されるベクターで治療することができる脳の癌には、星細胞腫、毛様性星細胞腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、乏突起膠腫、上衣細胞腫、多形性グリア芽細胞腫、混合性神経膠腫、オリゴ星細胞腫(oligoastrocytomas)、髄芽腫、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫、胚細胞腫、および奇形腫が含まれる。
【0125】
本発明のコンジュゲートまたは組成物は当技術分野において公知の任意の手段によって、例えば、経口、動脈内、鼻腔内、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、または経口で被験体に投与することができる。物質は、例えば、抗血管原性化合物であってよい。
【0126】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は本明細書中に記載のポリペプチドまたはコンジュゲートを製薬的に許容される担体とともに含んでよい。そのような組成物は液体または凍結乾燥製剤もしくは別の方法で乾燥された製剤であり、種々のバッファー内容(例えば、Tris-HCl、酢酸、リン酸)、pHおよびイオン強度の希釈剤、表面への吸収を防ぐための添加物、例えばアルブミンまたはゼラチン、界面活性剤(例えば、Tween 20、Tween 80、Pluronic F68、胆汁酸塩)を含む。可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、増量物質または張性改変因子(tonicity modifiers) (例えば、ラクトース、マンニトール)、タンパク質に対するポリエチレングリコール等のポリマーの共有結合性付加、金属イオンとの錯体形成、またはポリマー化合物、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲル、等の微粒子調製物内または微粒子調製物上への物質の取り込み、またはリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層または多層状小胞、赤血球ゴースト、またはスフェロプラスト上への物質の取り込みを含む。そのような組成物は、物理的状態、溶解度、安定性、in vivo放出の割合、およびin vivoクリアランスの割合に影響する。制御放出または徐放性組成物は親油性デポー(例えば、脂肪酸、ろう、油)中に製剤を含む。また、ポリマー(例えばポロキサマーまたはポロキサミン(poloxamines))でコーティングされた微粒子組成物も本発明に含まれる。本発明の組成物の他の実施形態は、微粒子形式保護コーティング、プロテアーゼインヒビターまたは、種々の投与経路、例えば非経口、肺、鼻、経口、膣、経直腸経路のための浸透エンハンサーを含む。一実施形態では、非経口、癌の近く(paracancerally)、経粘膜(transmucosally)、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、頭蓋内、および腫瘍内で医薬組成物を投与する。
【0127】
製薬的に許容される担体は0.01〜0.1 Mまたは0.05 Mリン酸バッファーまたは0.8%生理食塩水をさらに含む。さらに、そのような製薬的に許容される担体は、水性または非水性溶液、懸濁液、およびエマルジョンであってよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体には、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液が含まれる(生理食塩水および緩衝化された媒体を含む)。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲルまたは固定油が含まれる。静脈内ビヒクルには、液体および栄養補充液、電解質補充液、例えばリンゲルデキストロースに基づくもの、等が含まれる。例えば、抗菌剤、酸化防止剤、照合剤(collating agents)、不活性ガス等の保存剤および他の添加物を加えてもよい。
【0128】
他の製剤には、脂肪酸(例えば12-ヒドロキシステアリン酸)のポリ-オキシエチレンエステル、例えばSolutol(登録商標) HS15が含まれる。ゆえに、いくつかの実施形態では、医薬組成物は、a) 本明細書中に記載のコンジュゲート、b) Solutol(登録商標) HS15およびc) 水性溶液またはバッファー(例えばpH 5〜7のリンゲル/Hepes溶液)を含んでよい。製剤中のSolutol(登録商標) HS15の濃度は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、または60% (例えば30%)であるか、またはこれらの数値のいずれか2つの間の任意の範囲内であってよい。被験体を効率的に治療するために必要とされる用量、または投与されるコンジュゲートの溶解性に必要とされるエステルの量に基づいてコンジュゲートの濃度を決定することができる。Taxolコンジュゲートの投与のための製剤中でのSolutolの使用は、例えば、国際公開第WO 2007/009229号(該文献は参照によりここに組み入れられる)に記載される。
【0129】
経口用途の固形投与剤形
経口用途の製剤には、無毒の製薬的に許容される賦形剤との混合物中で活性成分(群)を含有する錠剤が含まれ、そのような製剤は当業者に公知である(例えば、U.S.P.N.: 5,817,307, 5,824,300, 5,830,456, 5,846,526, 5,882,640, 5,910,304, 6,036,949, 6,036,949, 6,372,218 (該文献は参照によりここに組み入れられる))。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤または充填剤(例えば、ショ糖、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶性セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム); 造粒剤および崩壊剤(例えば、微結晶性セルロースを含むセルロース誘導体、ジャガイモデンプンを含むデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギナート、またはアルギン酸); 結合剤(例えば、ショ糖、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはポリエチレングリコール); および潤滑剤、流動促進剤、および抗接着剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油、またはタルク)であってよい。他の製薬的に許容される賦形剤は、着色剤、香味物質、可塑剤、湿潤剤、緩衝剤、等であってよい。
【0130】
錠剤はコーティングされていないか、または、場合により消化管での崩壊および吸収を遅延させて長期間にわたる持続作用を提供するために、公知技術によってコーティングされていてよい。コーティングは、(例えば制御放出製剤を達成するために)あらかじめ決められたパターンで物質を放出するように構成されるか、または胃を通過する後まで物質(群)を放出しないように構成される(腸溶コーティング)。コーティングは、糖衣、フィルムコーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリラートコポリマー、ポリエチレングリコール、および/またはポリビニルピロリドンに基づくコーティング)、または腸溶コーティング(例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、シェラック、および/またはエチルセルロースに基づくコーティング)であってよい。さらにまた、時間遅延物質、例えばモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルを用いてもよい。
【0131】
固体錠剤組成物は、望ましくない化学変化(例えば活性物質の放出前の化学分解)から組成物を保護するように構成されたコーティングを含んでよい。上記Encyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載の様式と類似の様式で固形投与剤形上にコーティングを施してよい。
【0132】
本発明の組成物を錠剤中でともに混合するか、または分割してよい。一例では、第一の物質を錠剤内部に含有させ、かつ第二の物質を外部に含有させ、第二の物質のかなりの部分が第一の物質の放出前に放出されるようにする。
【0133】
経口用途の製剤は、チュアブル錠として、または活性成分が不活性固体希釈剤(例えば、ジャガイモデンプン、ラクトース、微結晶性セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリン)と混合されている硬ゼラチンカプセルとして、または活性成分が水または油媒体、例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン、またはオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセルとして提供してもよい。例えばミキサー、流動床装置、またはスプレー乾燥装置を使用する慣用の様式で、錠剤およびカプセルのもとで上述される成分を使用して粉末および顆粒を製造してもよい。
【0134】
用量
本明細書中に記載の、または本明細書中に記載の方法を使用して特定される任意のコンジュゲートまたは組成物の用量は、投与方法、治療対象の疾患(例えば癌)、疾患の重症度、癌を治療しようとするかまたは予防しようとするか、ならびに治療対象の被験体の年齢、体重、および健康を含むいくつかの要因に依存する。
【0135】
本発明の治療方法に関して、被験体へのベクター、コンジュゲート、または組成物の投与は、投与、用量、または投薬の頻度についての特定の様式に限定されないものとする; 本発明はすべての投与様式を想定する。コンジュゲート、または組成物を一回量でまたは複数回の用量で被験体に投与してよい。例えば、本明細書中に記載の、または本発明のスクリーニング方法を使用して特定される化合物、コンジュゲートを、例えば、2、3、4、5、6、7、8、10、15、20、またはそれ以上の週にわたって週1回投与してよい。任意の特定の被験体に関して、個別の必要性およびベクター、コンジュゲート、または組成物を投与するかまたはその投与を指揮する者の専門的判断にしたがって、具体的な投与方式を経時的に調節すべきであろうことが理解されるものとする。例えば、本明細書中に記載の疾患または症状(例えば癌)の治療において低用量が十分な活性を提供しなければ、コンジュゲートの用量を増加させることができる。逆に、疾患(例えば癌)が軽減または排除されれば、化合物の用量を減少させることができる。
【0136】
最終的に主治医が適切な量および投与方式を決定するが、本明細書中に記載のベクター、コンジュゲート、または組成物の治療有効量は、例えば、0.0035μg〜20μg/体重kg/日または0.010μg〜140μg/体重kg/週の範囲であってよい。望ましくは、治療有効量は、毎日、1日おき、または週2回投与される0.025μg〜10μg/kgの範囲、例えば、少なくとも0.025、0.035、0.05、0.075、0.1、0.25、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、または9.0μg/体重kgである。さらに、治療有効量は、毎週、1週おき、または月1回投与される0.05μg〜20μg/kgの範囲、例えば、少なくとも0.05、0.7、0.15、0.2、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、10.0、12.0、14.0、16.0、または18.0μg/体重kgであってよい。さらにまた、化合物の治療有効量は、例えば、1日おき、週1回、または1週おきに投与される100μg/m2〜100,000μg/m2の範囲であってよい。望ましい実施形態では、治療有効量は、毎日、1日おき、週2回、毎週、または1週おきに投与される1,000μg/m2〜20,000μg/m2の範囲、例えば、少なくとも1,000、1,500、4,000、または14,000μg/m2の化合物である。
【0137】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明を限定するためのものではない。
【実施例1】
【0138】
コンジュゲートの分布および薬物動態
物質(薬剤)をベクターにコンジュゲートすることの、物質の分布に関する効果を、標識ポリペプチドまたはコンジュゲートを動物に投与しかつポリペプチドまたはコンジュゲートの器官への分布を測定することによって評価することができる。一例では、3H-タキソール(Taxol) (5 mg/kg)または125I-Taxol-Angiopep-1 (TxlAn-1) (10 mg/kg, 5 mg Taxol/kgと等価)をマウスに投与する。Angiopep-3、Angiopep-4a、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7のいずれかを用いて類似の実験を実施することができる。ここでは、コンジュゲートされていない抗癌剤およびコンジュゲートをボーラスとしてマウスに静脈内注射する。種々の時点(0.25、0.5、1、および4時間)で組織を回収し、ホモジナイズする。3H-Taxolの量を定量するために、組織ホモジネートを組織可溶化剤で消化し、10 mlの液体シンチレーターをサンプルに加えた。種々の組織中の125I標識コンジュゲートの量をTCA沈殿後に測定する。組織に付随する放射能を定量する。Prismソフトウェアを使用して曲線下面積(AUC 0-4)を見積もり、種々の組織に関してプロットする。Angiopep-1コンジュゲートを使用すると、コンジュゲートに関して得られたAUC 0-4値は、脳、腎臓、肝臓、および眼を含む種々の組織においてTaxolより高い(図10A)。このことは、これらの組織における、コンジュゲートされていない物質と比較して高いコンジュゲートの蓄積を示す。肺では、コンジュゲートの蓄積はコンジュゲートされていない物質より非常に高い(図10B)。
【0139】
Taxol-Angiopep-2コンジュゲートを用いて行われた類似の実験の結果を以下の表4にまとめる。TxlAn-1コンジュゲートに関して得られた結果と差はあるが、表4のコンジュゲートもまた、コンジュゲートされていないTaxolより効率的に肺、脳、および肝臓に蓄積する。
【表4】

【0140】
肺におけるTaxolおよびTaxol-Angiopep-1蓄積の動態を研究した(図11)。種々の時点で肺で測定されたコンジュゲートの量はコンジュゲートされていない物質より非常に高い。肺でのコンジュゲートの蓄積はまた、種々の時点での血清(血漿)中のその濃度より非常に高い(図12)。これらの結果は、本発明のベクター(例えばAngiopep-1または2)へのコンジュゲーションによって、抗癌剤、例えばTaxolの体内分布または薬物動態を改変できることを示す。
【実施例2】
【0141】
Angiopep-7は脳に効率的には輸送されない
Angiopep-7は血液脳関門を横切って効率的には輸送されない。IV注射の30分間後のラットの脳中のAngiopep-2およびAngiopep-7の蓄積を測定すると、Angiopep-7はAngiopep-1またはAngiopep-2より低レベルでしか脳に存在しなかった(図13)。
【0142】
本発明者らはまた、10分間のin situ脳灌流後に蛍光顕微鏡検査を使用して脳におけるAngiopep-2およびAngiopep-7の蓄積を調査した。ここでは、それぞれCy5.5蛍光マーカーにコンジュゲートされた2 mMのAngiopep-2またはAngiopep-7を頸動脈に注射した。そして蛍光顕微鏡検査(fluorescence microcopy)によって動物の脳を評価した。各場合で、毛細管をVessel Green (FITC-レクチン)で染色し、脳細胞の核をDAPI (青色)で染色し、Cy5.5標識を使用してAngiopepを可視化した(図14)。これらのセクションから、Angiopep-2は脳内に局在することが観察され、Angiopep-7は毛細管内に局在することが観察される。Angiopep-2と比較して低いAngiopep-7の脳蓄積はin vivoでも観察される。Angiopep-2およびAngiopep-7のそれぞれをCy5.5にコンジュゲートしてラットに投与した。30分後、Cy5.5指示薬の蛍光を使用して脳中の蓄積を測定した。これに基づいて、発明者らは、Angiopep-7はBBBを横切って効率的には輸送されないが、Angiopep-2はBBBを横切って効率的に輸送されることを結論する。
【実施例3】
【0143】
Angiopep-7は肝臓、腎臓 肺、脾臓、および筋肉に効率的に輸送される
実施例2に記載のようにCy5.5にコンジュゲートされたAngiopep-2またはAngiopep-7を投与されたラットを使用して、肝臓、腎臓、および肺等の器官においてAngiopep-7およびAngiopep-2のレベルを測定した。これらの器官では、Angiopep-7を用いた場合に、Angiopep-2と比較して類似のレベルのポリペプチドが観察された。これらの結果を考慮して、本発明者らは、Angiopep-7は、脳への送達が望ましくない適用における肝臓、腎臓、および肺への物質の送達に特に有用であると考える。
【0144】
動物におけるAngiopep-7の濃度を測定するために、Cy5.5にコンジュゲートされたAngiopep-7の画像化研究を実施した。注射の30分後のin vivo画像化研究に基づいて、腎臓、肝臓、および肺においてCy5.5シグナルの蓄積が観察された(図15A)。Angiopep-7の注射の24時間後にex vivo器官分析を実施し、Angiopep-2を使用する注射と比較した。これらの研究では、肝臓、肺、および腎臓におけるAngiopep-2およびAngiopep-7の両者の有意な蓄積も示された。しかし、Angiopep-7はAngiopep-2と比較して有意に少ない脳での蓄積を示した(図15B)。これらの結果に基づいて、本発明者らは、Angiopep-7が、脳への送達が望ましくない適用において、肝臓、腎臓、肺、脾臓、または筋肉等の末梢器官内への物質のベクターとして有用であると考える。
【実施例4】
【0145】
IgGコンジュゲートの輸送
in situ脳灌流実験モデルを使用して前記ベクターの脳における取り込みを測定した。結果(以下の表5に示す)では、前記ベクターがBBBを横切る能力に関して第10位および第15位のリシンが重要であることが示された。
【表5】

【0146】
SATA架橋剤を使用してAngiopepポリペプチドをIgGにコンジュゲートし、in situ脳灌流を使用してその輸送能力を研究した。図16に示されるように、Angiopep-2は脳実質に最も多く分布するコンジュゲートである。また、ポリペプチド二量体は効率的に輸送されるようである。Angiopep-7は脳内に効率的には輸送されなかった。
【実施例5】
【0147】
in vitro細胞増殖に対するコンジュゲートの効果
癌細胞を死滅させる、ベクターおよび抗癌剤を含むコンジュゲートの能力の検査をin vitroで実施することができる。一例では、Taxol (コンジュゲートされていない)は、約10 nMのIC50値でグリア芽細胞腫(gliobiastoma)細胞(U-87)の増殖をブロックすることが示される(図17)。本明細書中に記載のベクターにコンジュゲートされた場合のコンジュゲートされたTaxolの効果を評価し、コンジュゲートされていないTaxolと比較する。表6Aに示されるように、Taxol-Angiopep-2 (TxlAn2)コンジュゲートに関して得られたIC50値は、多数の癌細胞において、コンジュゲートされてないTaxolと非常に類似していた。ラット脳由来の内皮細胞(RBE4)は、試験された癌細胞系より低感受性であった。比較のために、得られた結果をTaxol濃度に換算して表記した。
【0148】
ほとんどの前記細胞(U-87、U-118、NC1-H460、A549)はLRPを発現する。しかし、このデータはRBE4細胞に関して利用できない。in vitroでの癌細胞に対するコンジュゲートの抗増殖活性を評価する。このアッセイでは、癌細胞(U87およびU118)を抗癌剤(例えばTaxol)およびコンジュゲート(例えばTxlAn2 (3:1)コンジュゲート)に48時間曝露する。U87およびU118細胞における[3H]-チミジンの取り込みは物質の濃度に応じて減少する。細胞増殖を50%阻害するために必要とされる値(1C50)を表記する。増殖アッセイから得られた結果は、癌細胞増殖の阻害に必要とされるIC50値がnM単位で表記され、TxlAn2 (3:1)コンジュゲートがパクリタキセルより3倍高い効力を有することを実証し、パクリタキセル等価物に関して報告された場合に同一範囲内であることを示す(表6B)。本明細書中に記載の任意のベクターまたはコンジュゲートを使用して類似の実験を実施することができる。
【0149】
また、他の癌細胞タイプの増殖をブロックするコンジュゲート(例えばTxlAn2 (3:1))の能力を見積もる。そのようなアッセイは、肺癌細胞(NC1-H460)ならびに乳癌細胞系(MDA-MB231、MDA-MB-468、HCC-1954、BT-474) 肝細胞癌(SK-Hepl)およびグリア芽細胞腫(U-87MG)において実施することができる。本発明者らは、そのような細胞もまた、TxlAn2 (3:1)コンジュゲートに非常に感受性であることを示した(表6B)。
【表6】

【実施例6】
【0150】
in vivo腫瘍増殖の阻害(U-87)
腫瘍増殖を阻害するコンジュゲートの能力をin vivoモデルで評価することができる(例えば図18Aを参照のこと)。U-87細胞をマウスの右側腹部に皮下移植し、移植の3日後、ビヒクル(DMSO/リンゲル:80/20; コントロール)、コンジュゲートされていない物質(例えばTaxol (5 mg/kg))またはコンジュゲートの部分としての物質(例えば5 mg Taxol/kgと等価のTaxol-Angiopep-2 (10 mg/kg))をマウスに注射する。腫瘍増殖の阻害は、コンジュゲートされていない抗癌剤で処置されたマウスより、コンジュゲートで処置されたマウスにおいて、より顕著である。
【0151】
一例では、移植の17日後に、TxlAn2を使用して腫瘍増殖が75%以上阻害されたが、コンジュゲートされていない物質を使用すると腫瘍増殖が34%しか阻害されなかった(表7)。ゆえに、コンジュゲートは、in vivoの腫瘍増殖の阻害に関して、コンジュゲートされていない物質より効率的である。結局、コンジュゲートされていない物質と比較して、コンジュゲートでは、2.2倍の腫瘍増殖阻害レベルが測定された。
【表7】

【実施例7】
【0152】
in vivo腫瘍増殖の阻害(肝細胞癌)
コンジュゲートが、皮下移植された肝細胞癌細胞(SK-Hep 1)の増殖を阻害できるかどうかを決定するin vivo研究を行う。ヌードマウスの右側腹部に2.5 x 106のヒトSK-Hep 1細胞の皮下注射を施す。移植された腫瘍のサイズが約200 mm3に達したら処置を開始する。動物に腹腔内注射によるコンジュゲートまたはビヒクルでの処置を施す。
【0153】
腹腔内注射によって80 mg/kgで投与されたTxlAn2 (3:1)で実施された実験から得られた結果を図18Bに示す; 処置を黒色矢印で示す。この実験では、最大で80 mg/kgの指定用量で5回の処置に関して週2回処置を施した。i.p.投与されたTxlAn2 (3:1)コンジュゲートは、通常Taxol(登録商標)に感受性でないタイプの癌である肝細胞癌の増殖の阻害に関して高い効力を示す(図18B)。
【実施例8】
【0154】
コンジュゲート活性を評価するための方法
本明細書中に記載の実施例では、以下の方法を使用した。
【0155】
細胞増殖アッセイ
in vitro細胞増殖アッセイでは、24ウェル組織培養マイクロプレートにおいて10%血清を含む最終容量1 mlの培地中に2.5〜5 x 104の範囲のU87またはA549細胞を播種し、37℃で5% CO2で24時間インキュベートする。そして培地を無血清培地に交換し、一晩インキュベートする。翌朝、物質をジメチルスルホキシド(DMSO)に新たに溶解し、3回重複して種々の濃度の物質を含有する完全培地に培地を交換する。DMSOの終濃度は0.1%である。使用されるコントロールは、細胞を含むが物質を含まないマイクロプレートウェルである。37℃で5% CO2で48〜72時間細胞をインキュベートする。インキュベーション後、培地を変え、[3H]-チミジン(1 pCi/アッセイ)を含有する1 mlの完全培地に交換する。プレートを37℃で5% CO2で4時間インキュベートする。培地を取り出し、37℃のPBSで細胞を洗浄する。細胞をエタノール:酢酸(3:1)の混合物で固定し、水で洗浄し、10%の氷冷TCA (トリクロロ酢酸)で3回沈殿させる。最終的に500μlのPCA (過塩素酸)をウェルに加え、マイクロプレートを65℃で30分および75℃で30分加熱する。そして、10 mlのシンチレーション反応混液を含むシンチレーションバイアルに各ウェルに内容物を移し、Packard製の液体シンチレーションカウンターTri-CarbでCPM (カウント/分)単位で活性を測定する。
【0156】
ポリペプチドのヨウ素化
Sigma製のヨード-ビーズを使用する標準的手順でポリペプチドをヨウ素化する。簡潔に言えば、ポリペプチドを0.1 M リン酸バッファー(pH 6.5) (PB)中に希釈する。各タンパク質に2つのヨード-ビーズを使用する。これらのビーズをWhatmanフィルターで3 mlのPBで2回洗浄し、60μlのPBに再懸濁する。Amersham-Pharmacia biotech製の125I (1 mCi)をビーズ懸濁液に室温で5分間加えた。ポリペプチド(100μg)を加えることによって各ヨウ素化を開始した。室温で10分間のインキュベーション後、遊離のヨウ素をHPLCによって除去した。
【0157】
皮下移植
腫瘍増殖に対するコンジュゲートおよび製剤の効力を見積もるために、本発明者らはグリア芽細胞腫の皮下モデルを開発した。このモデルでは、1%メチルセルロースを含有する血清を含まない100μlの細胞培地中の2.5 x 106細胞をマウス側腹部に皮下注射する。腫瘍ははっきりと可視であり、バーニアキャリパーを使用して測定することができる。そして、見積もられた腫瘍容積を時間の関数としてプロットした。
【0158】
in situマウス脳灌流
マウス脳における物質の取り込みを研究するために本発明者らの実験室で構成されたin situ脳灌流法を使用してマウス脳毛細管の腔側への[125I]-ポリペプチドの取り込みを測定する。簡潔に言えば、ケタミン/キシラジン(140/8 mg/kg i.p.)で麻酔されたマウスの右総頸動脈を露出させ、後頭動脈の吻側の総頸動脈の分岐のレベルで結紮する。そして、ヘパリン(25 U/ml)で充填されかつ26ゲージ針にマウントされたポリエチレンチューブを用いて総頸動脈の吻側にカテーテルを挿入する。灌流液(95% O2および5% CO2でガス供給されたpH7.4のKrebs/重炭酸塩バッファー中の[125I]-ポリペプチドまたは[14C]-イヌリン)を含有するシリンジを注入ポンプ(Harvard pump PHD 2000; Harvard Apparatus)に配置し、カテーテルに連結する。灌流前に、心室を分断することによって反対側の血流寄与を排除する。1.15 ml/分の流速で指定の時間、脳を灌流する。14.5分の灌流後、Krebsバッファーで60秒間、脳をさらに灌流して過剰の[125I]-タンパク質を洗浄する。そして、マウスの頭部をはずして(decapitated)灌流を終結させ、右半球を氷上で単離した後、毛細管枯渇に付する。一定分量のホモジネート、上清、ペレットおよび灌流液を採取して、TCA沈殿によってその[125I]-コンジュゲート含量を測定し、見かけの分布容積を評価する。
【実施例9】
【0159】
コンジュゲートの作用機序
コンジュゲートされた治療剤の作用機序の研究を実施することもできる。一例では、肺癌細胞(NCI-H460)を遊離Taxol (30 nM)またはTaxolコンジュゲート(例えばTxlAn2 10 nM; 30 nMのタキソールと等価)と24時間インキュベートする(図19)。FITCに連結された二次抗体を使用して細胞のβ-チューブリンを標識した後、可視および蛍光様式で写真を撮影する。この例では、TaxolおよびTaxolコンジュゲートの両者は、ポリマー化に至るβ-チューブリンに対して類似の効果を有する。図20で例証されるように、TaxolおよびTaxolコンジュゲートを加えると、G2/M期でのNCI-H460細胞のブロックが誘発される。これらの結果は、TxlAnコンジュゲートが、Taxolと類似の、癌細胞に対する作用機序を有することを示唆する。
【実施例10】
【0160】
コンジュゲートの調製
本明細書中に記載のベクターへの物質のコンジュゲーションは図23A〜23Bに例示される。この例では、まずTaxolをN-スクシンイミド(2'-NHS-Txl)誘導体に活性化する。例えばベクター中に見出されるアミン(例えばアミノ末端アミンまたはリシン残基)を活性化Taxolと反応させてペプチド結合(アミド結合)を形成させる。複数のアミンが利用可能である場合、この反応は、例えば使用されるモル比に応じて1、2または3つのTaxolがポリペプチドに付加されているコンジュゲートの複数の組み合わせを生じさせる。コンジュゲーション産物をHPLCによって分析し、質量分析(Maldi-Tof)によってコンジュゲーションを確認する。Taxolはエステラーゼでのエステル結合の切断によってベクターから放出可能であることが見出される。
【0161】
本方法を使用して本明細書中に記載の任意のベクターを物質にコンジュゲートすることができる。2.5モル当量の2'-NHS-Taxolの溶液に1モル当量のAngiopep-2を直接加えることによってTxlAn2 (3:1)コンジュゲートの調製を実行した。リンゲル液(pH 7.3)中の68% DMSO中で12℃で1時間反応を実施した。冷浴を除去した後、反応を室温で約22時間継続させた(図24)。Angiopep-2、2'-NHS-TaxolおよびTxlAn2 (3:1)コンジュゲートをクロマトグラム上で矢印によって示す。反応物の一定分量を採取し、図24に示されるように25分、2時間15分、5時間および23時間後にHPLCによって分析した。Angiopep-2、2'-NHS-TaxolおよびTxlAn2 (3:1)コンジュゲートのピークをクロマトグラム上で矢印によって示す。図24の結果は、主にTxlAn2 (3:1)コンジュゲートの利益に対する、反応期間中のAngiopep-2および2'-NHS-Taxolの消失を示す。
【0162】
AKTA-explorerを使用する4 ml/分の流速のRPC 300 mmカラムでの疎水性クロマトグラフィーによってこの生成物混合物を分離した(図25)。TxlAn2 (3:1)コンジュゲートに対応するピークに関して、フラクションをプールし、HPLCおよびMSによって分析した。図25において、上のクロマトグラムはt=23時間での流出反応物に対応し、下のクロマトグラムは、AKTA精製後の質量分析(MW 5107)によって確認されたTxlAn2 (3:1)コンジュゲートに対応する。
【実施例11】
【0163】
抗体コンジュゲートおよび取り込み
米国特許出願公開第2006/0189515号に記載されるように抗体をアプロチニンにコンジュゲートすることができる。本明細書中に記載の任意のベクターを用いて類似の結果を得ることができる。
【0164】
したがって本発明者らはSATAを使用してAngiopep-2をIgGにコンジュゲートした。コンジュゲーション後、約3〜5分子のAngiopep-2がIgGの軽鎖および重鎖の両鎖に結合する(図26)。したがって、このアプローチを使用して、2〜6分子のベクター(例えばAngiopep-1、Angiopep-2)が抗体の各分子(重鎖および軽鎖)にコンジュゲートされると予測される。
【0165】
また、図4に示されるように、スルホ-EMCSを使用するAngiopep-2のコンジュゲーションを実施した。EMCS-Angiopep-2を使用してスルフヒドリル基を介してカップリングされたIgG-Angiopep-2コンジュゲートの脳分布を種々の脳組織(全脳、毛細管、実質)において検査した。コンジュゲートされていない[125I]-IgGより高い(約3倍差) [125I]-IgG-Angiopep-2コンジュゲートの脳における取り込みが観察される(図27を参照のこと)。したがってIgGとAngiopep-2のコンジュゲーションはin vivoの脳におけるIgG蓄積を増加させる。
【0166】
また、SATA法を使用してカップリングされたAngiopep-2-IgGコンジュゲートの輸送を、in situ脳灌流実験を使用して検査した。IgG-An2コンジュゲートは脳組織内に輸送される(図28)。IgG-Angiopep-2コンジュゲートは、実質中で、IgGより約50倍多く蓄積した。
【0167】
IgGとベクターのコンジュゲーション後、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫検出、およびオートラジオグラフィーを実施して適正なコンジュゲーションを保証した; 例えば[125I]-IgG-Angiopepコンジュゲートのみが検出されたことを示す図29を参照のこと。遊離Angiopep-2コンジュゲートの証拠は存在しなかった。このことはコンジュゲーションアプローチの効率を示す。
【実施例12】
【0168】
ベクターへの抗EGFR抗体のカップリング
上皮細胞成長因子受容体を介するシグナル伝達は細胞増殖シグナルを誘導し、正常細胞から悪性細胞への形質転換と関連している。EGFR中のいくつかの突然変異が腫瘍細胞において検出される。EGFRの最も一般的な突然変異の1つは、アミノ酸6〜273が欠失しているEGFRvIII突然変異である。
【0169】
IgG以外の抗体への本発明のベクターのカップリングが可能であること、およびカップリングが抗体機能を維持することを示すために、典型的な治療用ポリペプチドとして、架橋剤SATAを使用してEGFR抗体(ATCCから入手可能なモノクローナル528)をベクターに架橋した。EGFR陽性U87細胞を染色することによって、カップリングされたEGFR抗体の生物学的活性を検査した。FACS解析により、カップリングされていないEGFR抗体およびカップリングされたEGFR抗体の両者を使用してU87中のEGFRの類似の検出が実証された(図30)。このことは、本発明のベクターの抗体のカップリングがその活性を変化させなかったことを示す。
【0170】
表8では、本発明者らは、抗体がコンジュゲーションによって不活性化されず、in vitroアッセイにおいて同一の結合親和性を示すことを示す。
【表8】

【0171】
次いで、標識されたコンジュゲートを使用して、BBBを横切るEGFR抗体コンジュゲート(例えば抗EGFR-Angiopep-2)の輸送を測定した。図31に示されるようにin situ脳灌流法を使用してマウス脳毛細管の腔側への抗-[125I]-EGFR-Angiopep-2の取り込みを測定した。すべての試験組織において、コンジュゲートされていない[125I]-EGFR Abより高い[125I]-EGFR-Angiopep-2コンジュゲートの脳における取り込みが観察された。したがって、EGFR AbとAngiopep-2のコンジュゲーションはin vivoの脳実質におけるその蓄積を増加させる。いくつかの異なる腫瘍タイプが種々のレベルでEGFRを発現することが示されたため、これらのコンジュゲートは興味深い手段である(表9を参照のこと)。
【表9】

【実施例13】
【0172】
ベクターへの抗VEGF抗体のカップリングおよび輸送
本発明のベクターへの抗体のカップリングの多用性および適用可能性をさらに実証するために、別の典型的な治療用抗体であるアバスチン(Avastin)を使用した。Avastinは、Roche Biochemicalから入手可能な抗VEGF組換えヒト化モノクローナルIgG1κアイソタイプ抗体であり、該抗体は生物活性形式の血管内皮増殖因子(VEGF)に結合し、それを阻害する。
【0173】
コンジュゲーション後、in situ脳灌流法を使用して、BBBを横切るAvastinコンジュゲートの輸送を測定した。コンジュゲートされていない[125I]-Avastinより高い[125I]-Avastin-Angiopep-2コンジュゲートの脳における取り込みが観察される(図32)。
【0174】
したがって、ベクター(例えば、Angiopep-1、-2、-3、-4a、-4b、5、および6)への治療用抗体(例えばAvastinまたはATCCから入手可能なMAb 528)のコンジュゲーションは、それらを脳内へ輸送するために有用なストラテジーである。
【実施例14】
【0175】
二量体輸送
ベクター二量体を輸送することもできる。一例では、Angiopep-1を4℃で少なくとも12時間インキュベートし、それによってポリペプチドの多量体化/二量体化を生じさせた。Angiopep-1二量体の経細胞輸送能力をin vitroで評価した。Angiopep-1二量体はIgGより良好に経細胞輸送される。さらに、表5に示されるように、二量体形式のAngiopep-1はAngiopep-1より高い分布容積を示す。ゆえに、BBBを横切ってベクター二量体を輸送することができる。
【実施例15】
【0176】
2個以上のベクターへの抗体のコンジュゲーション
典型的に、架橋反応によって、1分子の抗体、重鎖および軽鎖あたり1〜6分子のベクターが得られる。
【0177】
IgGのアミン上のSATAの脱保護後に、Angiopep-2のN末端上のマレイミド基との反応前および反応後に、スルフヒドリル基の量の滴定を可能にするアッセイを使用してIgGへのAngiopep-2のコンジュゲーションのレベルを見積もった。コンジュゲーションプロトコルに使用される種々の反応物の相対濃度を変化させることによって、IgGにコンジュゲートされるAngiopep-2の量を最適化することができる。
【0178】
in vivo脳灌流実験を使用すると、コンジュゲーションのレベルが高いほど、コンジュゲートの実質による取り込みが高かった(図33)。したがって、分子あたりに多数のベクターを有することが望ましい。そのように、BBBを横切る化合物(物質)の輸送に7個以上のベクターを使用することができる。
【0179】
他の実施形態
本出願中で記載される各刊行物、特許、および特許出願の内容は参照により組み入れられる。該刊行物、特許、および特許出願には、2007年5月29日提出の米国出願第11/807,597号、および2007年5月30日提出の第11/807,917号、および2007年12月20日提出の米国仮出願第61/008,825号が含まれる。
【0180】
本発明は本明細書中で詳細に説明され、添付の図面に図示されているが、本発明は本明細書中に記載の実施形態に限定されないことおよび本発明の範囲または思想から逸脱することなく種々の変更および改変を施すことができることが理解されるものとする。
【0181】
本発明はその特定の実施形態に関連して説明されているが、それは追加の改変が可能であることが理解され、かつ本出願は、本発明の原理に概してしたがうが、本発明が関連する技術分野内の公知または慣用の実施の範囲内に入りかつ上記、および以下の通り特許請求の範囲中の、必須の特徴に適用することができる、本開示内容からの逸脱を含む本発明の任意のバリエーション、用途、または改作を含むものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式:
X1-X2-X3-X4-X5-X6-X7-X8-X9-X10-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17-X18-X19
[式中、
X1〜X19は任意のアミノ酸または不存在であり、
X1、X10、およびX15の少なくとも1つはArgである]
を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、該アミノ酸配列は、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7 (配列番号109〜112)からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも50%の同一性を有する、前記ポリペプチド。
【請求項2】
Angiopep-7の配列に対して少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記同一性が少なくとも70%である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記同一性が少なくとも90%である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項5】
X10がLysもしくはArgであるか、X15がLysもしくはArgであるか、またはその双方である、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項6】
X1がArgである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項7】
X10がArgである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項8】
X15がArgである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項9】
X10およびX15がArgである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項10】
X7がSerまたはCysである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項11】
X7がSerである、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項12】
Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項13】
Angiopep-7のアミノ酸配列を含む、請求項12記載のポリペプチド。
【請求項14】
Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、請求項12記載のポリペプチド。
【請求項15】
Angiopep-7のアミノ酸配列からなる、請求項14記載のポリペプチド。
【請求項16】
肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉からなる群から選択される少なくとも1つの細胞または組織に輸送される、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項17】
血液脳関門(BBB)を横切って効率的には輸送されない、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項18】
Angiopep-7に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含む、請求項17記載のポリペプチド。
【請求項19】
請求項1記載のポリペプチドを含む組成物。
【請求項20】
製薬的に許容される担体を含む、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
(a) 請求項1記載のポリペプチドを含むベクター、および、
(b) 前記ベクターにコンジュゲートされている治療剤、診断剤または検出可能な標識、
を含むコンジュゲート。
【請求項22】
前記ベクターが、Angiopep-7の配列に対して少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項23】
前記同一性が少なくとも70%である、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項24】
前記同一性が少なくとも90%である、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項25】
X10がLysもしくはArgであるか; X15がLysもしくはArgであるか; またはその双方である、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項26】
X1がArgである、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項27】
X10がArgである、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項28】
X15がArgである、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項29】
X10およびX15がArgである、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項30】
X7がSerまたはCysである、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項31】
X7がSerである、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項32】
前記ベクターが、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項33】
前記ベクターがAngiopep-7のアミノ酸配列を含む、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項34】
前記ベクターが、Angiopep-4b、Angiopep-5、Angiopep-6、およびAngiopep-7からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項35】
前記ベクターがAngiopep-7のアミノ酸配列からなる、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項36】
前記ベクターが治療剤にコンジュゲートされている、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項37】
前記治療剤が抗癌剤である、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項38】
前記ベクターが、肝臓、肺、腎臓、脾臓、および筋肉からなる群から選択される少なくとも1つの細胞または組織に効率的に輸送される、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項39】
前記ベクターがBBBを横切って効率的には輸送されない、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項40】
前記抗癌剤が、アバレリックス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナキンラ、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アザシチジン、生BCG、ベバクジマブ(bevacuzimab)、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾムビ(bortezombi)、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン(calusterone)、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロランブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、アクチノマイシンD、ダルテパリン、ダーベポエチンアルファ、ダサチニブ、ダウノルビシン、ダウノマイシン、デシタビン、デニロイキン、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エクリズマブ、エピルビシン、エポエチンアルファ、エルロチニブ、エストラムスチン、エトポシド(例えばリン酸塩)、エキセメスタン、フェンタニル、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、5-FU、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブ・オゾガマイシン、ゴセレリン、ヒストレリン、ヒドロキシ尿素、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ-2b、イリノテカン、ラパチニブジトシラート、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、CCNU、メクロレタミン(meclorethamine) (ナイトロジェンマスタード)、メゲストロール、メルファラン(L-PAM)、メルカプトプリン(6-MP)、メスナ、メトトレキセート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロンフェンプロピオナート、ネララビン、ノフェツモマブ(nofetumomab)、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パリフェルミン、パミドロナート、パニツムマブ、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペグインターフェロンアルファ-2b、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、ポルフィマー、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、マレイン酸スニチニブ、タルク、タモキシフェン、テモゾロマイド、テニポシド(VM-26)、テストラクトン、サリドマイド、チオグアニン(6-TG)、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ/I-131 (トシツモマブ)、トラスツズマブ、トレチノイン(ATRA)、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ボリノスタット、ゾレドロナート、およびゾレドロン酸からなる群から選択される、請求項37記載のコンジュゲート。
【請求項41】
前記抗癌剤がパクリタキセルである、請求項40記載のコンジュゲート。
【請求項42】
前記薬剤が抗体である、請求項37記載のコンジュゲート。
【請求項43】
前記抗体が、ABX-EGF (パニチムマブ(Panitimumab))、OvaRex (オレゴベマブ(Oregovemab))、Theragyn (ペムツモマブイットリウム-90 (pemtumomabytrrium-90))、Therex、ビバツズマブ(Bivatuzumab)、Panorex (エドレコロマブ)、ReoPro (レオプロ) (アブシキシマブ)、Bexxar (ベキサール) (トシツモマブ)、MAb、イディオタイプ105AD7、抗-EpCAM (カツマキソマブ)、MAb肺癌(Cytoclonal製)、Herceptin (ハーセプチン) (トラスツズマブ)、Rituxan (リツキサン) (リツキシマブ)、Avastin (アバスチン) (ベバシズマブ)、AMD Fab (ラニビズマブ)、E-26 (2nd gen. IgE) (オマリズマブ)、Zevalin (ゼヴァリン) (Rituxan +イットリウム-90) (イブリツモマブチウキセタン)、セツキシマブ、BEC2 (ミツモマブ(Mitumomab))、IMC-1C11、nuC242-DM1、LymphoCide (エプラツズマブ(Epratuzumab))、LymphoCide Y-90、CEA-Cide (ラベツズマブ)、CEA-Cide Y-90、HumaRAD-HN (+イットリウム-90)、MDX-101 (CTLA-4)、MDX-210、MDX-210/MAK、Vitaxin、MAb 425、IS-IL-2、Campath (キャンパス) (アレムツズマブ)、CD20ストレプトアビジン、Avidicin、(アルブミン+ NRLU13)、Oncolym (+ヨウ素-131) Cotara (+ヨウ素-131)、C215 (+ブドウ球菌エンテロトキシン)、MAb肺/腎臓癌(Pharmacia Corp.製)、ナコロマブタフェナトキス(nacolomab tafenatox) (C242ブドウ球菌エンテロトキシン)、Nuvion (ヌヴィオン) (ビジリズマブ)、SMART M195、SMART 1D10、CEAVac、TriGem、TriAb、放射性標識NovoMAb-G2、Monopharm C、GlioMAb-H (+ゲロニン毒素)、Rituxan (リツキシマブ)、およびING-1からなる群から選択される、請求項42記載のコンジュゲート。
【請求項44】
肝臓、肺、腎臓、または脾臓細胞において、前記ベクターにコンジュゲートされていない場合の前記薬剤または標識と比較して、迅速に蓄積し、高濃度に蓄積し、減少したP-gp媒介性流出を示す、請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項45】
請求項21記載のコンジュゲートおよび製薬的に許容される担体を含む組成物。
【請求項46】
癌を有する被験体の治療方法であって、該被験体を治療するために十分な量の請求項37記載のコンジュゲートを該被験体に提供するステップを含む、前記方法。
【請求項47】
前記癌が、肺、肝臓、腎臓または脾臓の癌である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記癌が、肝細胞癌、乳癌、頭部および頸部の癌、リンパ腫、外套細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、腺腫、扁平上皮癌、喉頭癌、網膜の癌、食道の癌、多発性骨髄腫、卵巣癌、子宮癌、黒色腫、結腸直腸癌、膀胱癌、前立腺癌、肺癌、非小細胞肺癌、膵癌、子宮頸癌、頭部および頸部癌、皮膚癌、上咽頭癌、脂肪肉腫、上皮癌、腎細胞癌、胆嚢腺癌、耳下腺癌、子宮内膜肉腫および多剤耐性癌からなる群から選択される、請求項46記載の方法。
【請求項49】
前記コンジュゲートが、肝臓、肺、腎臓、脾臓、または筋肉からなる群から選択される少なくとも1つの細胞または組織に効率的に輸送されるベクターを含む、請求項46記載の方法。
【請求項50】
前記コンジュゲートが、BBBを横切って効率的には輸送されないベクターを含む、請求項46記載の方法。
【請求項51】
前記コンジュゲートがAngiopep-7を含む、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記抗癌剤がパクリタキセルである、請求項46記載の方法。
【請求項53】
前記抗癌剤が前記ポリペプチドにコンジュゲートされた場合に、該ポリペプチドにコンジュゲートされていない場合の該抗癌剤と比較して、増加した効力または減少した副作用を有する、請求項46記載の方法。
【請求項54】
前記被験体がヒトである、請求項46記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公表番号】特表2010−528058(P2010−528058A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509648(P2010−509648)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際出願番号】PCT/CA2008/001030
【国際公開番号】WO2008/144919
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(509110839)アンジオケム,インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】