説明

コンタクトマイクロホン

【課題】振動源に対する密着性が良好な動電型のコンタクトマイクロホンを提供する。
【解決手段】カップ状のヨーク11、ヨーク11内の底面側に配置される永久磁石12およびヨーク11の内壁面との間で磁気ギャップGを形成するポールピース13を含む磁気回路部10と、磁気回路部10の周りに装着される支持筐体20と、周縁部が支持筐体20に支持され一方の面に磁気ギャップG内に配置される発電コイル32を有する振動板30とを備え、振動板30の他方の面が振動源Sに接触し、振動源Sの機械的振動を電気信号に変換するコンタクトマイクロホンにおいて、磁気ギャップG内に磁性流体40を充填し、磁性流体40により発電コイル32に対して磁気ギャップGから押し出す力を作用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器等の振動源に接触して用いられるコンタクトマイクロホンに関し、さらに詳しくいえば、振動源に対する密着性が良好な動電型のコンタクトマイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンタクトマイクロホンは、例えば特許文献1に記載されているように、楽器の収音時には琴やギターの胴などに取り付けて使用されるが、その取り付け方によって音質が大きく変化する。そのため、振動源に対する取り付け方法や振動源に加える圧力が重要な課題となる。
【0003】
圧電型は、機械的インピーダンスが高く、また、出力電圧も高いことから、取り付けに失敗して音がでなくなるなどの不具合がすくないため、コンタクトマイクロホンに広く用いられている。
【0004】
しかしながら、他方において、圧電型は加速度を検出するため固有の音質を持つことから、その音質を特別に調整して使用する必要がある。
【0005】
音質の面で言えば、動電型や電磁型は圧電型のように固有の音質がないため、音質を調整する必要はないが、動電型や電磁型は機械的インピーダンスが低いことから、振動源に対する取り付け方が悪い(例えば圧力が高い)場合には振動部が振動しなくなり、音がでなくなることがある。
【0006】
また、電磁型は、振動部が磁力で吸引されることから、感度を上げようとして磁力を高めると、磁極に振動部が吸着され音がでなくなることがある。
【0007】
【特許文献1】実開平3−66292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のことから、動電型の変換器で振動源に密着しやすく、好ましくは振動源に対する接触圧力を可変できることが望まれている。したがって、本発明の課題は、振動源に対する密着性が良好な動電型のコンタクトマイクロホンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、カップ状のヨーク、上記ヨーク内の底面側に配置される円盤状で厚さ方向に着磁された永久磁石および上記永久磁石上に配置され上記ヨークの内壁面との間で磁気ギャップを形成するポールピースを含む磁気回路部と、上記磁気回路部の周りに装着される支持筐体と、周縁部が上記支持筐体に支持され一方の面に上記磁気ギャップ内に配置される発電コイルを有する振動板とを備え、上記振動板の他方の面が振動源に接触し、上記振動源の機械的振動を電気信号に変換するコンタクトマイクロホンにおいて、上記磁気ギャップ内には磁性流体が充填されており、上記発電コイルが上記磁性流体とともに上記磁気ギャップ内に配置されていることを特徴としている。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記ヨーク内に配置される上記永久磁石を第1永久磁石として、上記ヨークの底面部の外側には第2永久磁石が配置されることを特徴としている。
【0011】
請求項3に係る発明は、カップ状のヨークおよび上記ヨークの内径よりも小径な円盤状で厚さ方向に着磁され上記ヨーク内に所定の空隙をもって配置される永久磁石を含む磁気回路部と、上記磁気回路部の周りに装着される支持筐体と、発電コイルを有し周縁が上記支持筐体に支持される振動板とを備え、上記振動板が振動源に接触し、上記振動源の機械的振動を電気信号に変換するコンタクトマイクロホンにおいて、上記振動板が、上記発電コイルとしての平面コイルが形成された可撓性を要するプリント配線板からなるとともに、上記空隙内および上記磁気回路部と上記プリント配線板との間に磁性流体が充填されていることを特徴としている。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3において、上記磁性流体により上記プリント配線板に所定の張力が付与されることを特徴としている。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項3または4において、上記ヨーク内に配置される上記永久磁石を第1永久磁石として、上記ヨークの底面部の外側には第2永久磁石が配置されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、ヨークとポールピースとの間に形成される磁気ギャップ内に磁性流体を充填し、発電コイルを磁性流体とともに磁気ギャップ内に配置したことにより、磁性流体より発電コイルに対して磁気ギャップ内から押し出す力が加えられ、この押し出す力で振動板を振動源により広い面積で密着させることができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、ヨーク内に配置される永久磁石を第1永久磁石として、ヨークの底面部の外側に第2永久磁石を配置することにより、磁性流体に加わる磁力が可変されるため、振動源に対する振動板の密着力を調整することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、振動板に発電コイルとしての平面コイルが形成された可撓性を要するプリント配線板を用いるとともに、ヨークと永久磁石との間の空隙内および磁気回路部とプリント配線板との間に磁性流体を充填するようにしたことにより、磁性流体から加えられる力によってプリント配線板が振動源に密着し、また、振動源の振動により平面コイルで直接発電されるめ、音質の向上がはかれる。
【0017】
また、請求項4に係る発明によれば、磁性流体によりプリント配線板に所定の張力を付与するようにしたことにより、振動板としてのプリント配線板を弾性的に支持する支持手段を不要とすることができる。
【0018】
また、請求項5に係る発明によれば、ヨーク内に配置される永久磁石を第1永久磁石として、ヨークの底面部の外側に第2永久磁石を配置することにより、振動板としてプリント配線板を用いる場合においても、請求項2に係る発明と同じく、振動源に対するプリント配線板の密着力を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、図1ないし図3により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるもではない。図1は本発明によるコンタクトマイクロホンの第1実施形態を示す模式的な断面図、図2は第2実施形態を示す模式的な断面図、図3は第2実施形態における平面コイルを示す模式図である。
【0020】
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態(請求項1に対応)に係るコンタクトマイクロホン1Aは、動電型であり、その基本的な構成として、磁気回路部10と、支持筐体20と、発電コイル(「ボイスコイル」とも言う)32を有する振動板30とを備えている。
【0021】
磁気回路部10は、カップ状に形成されたヨーク11と、ヨーク11内の底面側に配置される円盤状で厚さ方向に着磁された永久磁石12と、永久磁石12上に配置されヨーク11の内壁面との間で磁気ギャップGを形成するポールピース13とを有する。
【0022】
支持筐体20は、中央部分にヨーク11の外周面に嵌合される孔を有するドーナツ状の円盤体で、磁気回路部10の周りに振動板30を支持するフランジを提供する。材質は、合成樹脂もしくは金属のいずれであってもよい。
【0023】
振動板30には、通常の動電型(ダイナミック)マイクロホンと同じく、例えば合成樹脂の薄膜からなり、周辺部分にバネ弾性を発揮するエッジ(サブドーム)31が形成されている振動板が用いられてよい。
【0024】
振動板30は、その周縁部分が支持筐体20に支持されるが、その一方の面(内面)には、磁気ギャップG内に振動可能に配置される発電コイル32が取り付けられている。
【0025】
このコンタクトマイクロホン1Aは、振動板30を振動源S(例えばギターの胴などに設けられているブリッジSa)に当接させることにより、振動源Sの振動により発電コイル32が磁気ギャップG内で振動し、振動源Sの振動が発電コイル32より電圧(音声信号)に変換されて出力される。
【0026】
ところで、動電型の変換器は機械インピーダンスが低いため、振動源Sに対する当接圧力を高くすると、振動板30が容易に変形して発電コイル32が磁気ギャップG内に押し込まれた状態で振動不能となり、音が出なくなることがある。
【0027】
この点を防止するため、この第1実施形態では、磁気ギャップG内に磁性流体40を充填することを特徴としている。
【0028】
磁性流体40は、直径が10nm程度の磁性超微粒子と、主成分である水、有機溶剤または油等の液体(分散媒)、およびその粒子に吸着して粒子を液体中(分散媒)に安定に分散させるための界面活性剤の3成分よりなるコロイド溶液で、磁界が零のときは単なる液体であるが、磁界を作用させることにより磁化する物質として知られている。
【0029】
磁性流体40は、このような特性を有しているため、磁気ギャップG内で磁界にさらされると、発電コイル32を磁気ギャップGから押し出すように作用する。
【0030】
したがって、この第1実施形態では、磁性流体40により発電コイル32にかけられる押し出し力にて振動板30をより広い面積で振動源Sに密着させることができる。
【0031】
また、磁性流体40に加えられる磁力を可変にすることにより、発電コイル32を磁気ギャップGから押し出そうとする力を可変することができる。
【0032】
これには、ヨーク11内の永久磁石12を第1永久磁石として、図1の想像線で示すように、ヨーク11の底面の外側に第2永久磁石14を配置すればよい。
【0033】
例えば、第1永久磁石12のヨーク11の底面と対向する側(図1において上側)がS極に着磁されているとして、磁性流体40に対する磁力を高めるには、第2永久磁石14のN極をヨーク11の底面に向けて配置する。これに対して、磁性流体40に対する磁力を弱めるには、第2永久磁石14のS極をヨーク11の底面に向けて配置する。
【0034】
次に、図2,図3を参照して、本発明の第2実施形態(請求項3に対応)に係るコンタクトマイクロホン1Bついて説明する。なお、上記第1実施形態と同一の構成要素には同じ参照符号を用いる。
【0035】
このコンタクトマイクロホン1Bにおいては、磁気回路部10は、カップ状に形成されたヨーク11と、ヨーク11内に配置される円盤状もしくは円柱状の永久磁石12とにより構成される。永久磁石12の着磁方向は、ヨーク11の軸線方向である。
【0036】
また、振動板30には、厚みが例えば0.5mm程度の可撓性を有するプリント配線板35が用いられる。このプリント配線板35には、図3に示すような渦巻き状の平面コイル36が形成されている。この平面コイル36は、上記第1実施形態における発電コイル32に相当する。
【0037】
プリント配線板35は、その周縁部を支持筐体20に例えば接着材等を介して取り付けることにより、支持筐体20に振動可能に支持されるが、ヨーク11と永久磁石12との間の空隙を含めてプリント配線板35の内面と磁気回路部10との間に磁性流体40が充填される。
【0038】
磁性流体40は、永久磁石12の磁力によって磁化し、上記第1実施形態と同じく、プリント配線板35を押し下げるように作用する。
【0039】
これにより、プリント配線板35は所定の張力がかけられた状態となり、振動源Sに対しての密着性が高められる。また、振動源Sの振動が平面コイル36に直接伝わり発電効率がよいため、音質の向上がはかられる。
【0040】
なお、このコンタクトマイクロホン1Bにおいても、上記第1実施形態と同じく、ヨーク11の底面の外側に第2永久磁石14を配置することにより、磁性流体40によるプリント配線板の押し下げ力を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態に係るコンタクトマイクロホンを示す模式的な断面図。
【図2】本発明の第2実施形態に係るコンタクトマイクロホンを示す模式的な断面図。
【図3】上記第2実施形態における平面コイルを示す模式図。
【符号の説明】
【0042】
1A,1B コンタクトマイクロホン
11 ヨーク
12 永久磁石(第1永久磁石)
13 ポールピース
14 第2永久磁石
20 支持筐体
30 振動板
32 ボイスコイル
35 プリント配線板
36 平面コイル
G 磁気ギャップ
S 振動源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状のヨーク、上記ヨーク内の底面側に配置される円盤状で厚さ方向に着磁された永久磁石および上記永久磁石上に配置され上記ヨークの内壁面との間で磁気ギャップを形成するポールピースを含む磁気回路部と、上記磁気回路部の周りに装着される支持筐体と、周縁部が上記支持筐体に支持され一方の面に上記磁気ギャップ内に配置される発電コイルを有する振動板とを備え、上記振動板の他方の面が振動源に接触し、上記振動源の機械的振動を電気信号に変換するコンタクトマイクロホンにおいて、
上記磁気ギャップ内には磁性流体が充填されており、上記発電コイルが上記磁性流体とともに上記磁気ギャップ内に配置されていることを特徴とするコンタクトマイクロホン。
【請求項2】
上記ヨーク内に配置される上記永久磁石を第1永久磁石として、上記ヨークの底面部の外側には第2永久磁石が配置されることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトマイクロホン。
【請求項3】
カップ状のヨークおよび上記ヨークの内径よりも小径な円盤状で厚さ方向に着磁され上記ヨーク内に所定の空隙をもって配置される永久磁石を含む磁気回路部と、上記磁気回路部の周りに装着される支持筐体と、発電コイルを有し周縁が上記支持筐体に支持される振動板とを備え、上記振動板が振動源に接触し、上記振動源の機械的振動を電気信号に変換するコンタクトマイクロホンにおいて、
上記振動板が、上記発電コイルとしての平面コイルが形成された可撓性を要するプリント配線板からなるとともに、上記空隙内および上記磁気回路部と上記プリント配線板との間に磁性流体が充填されていることを特徴とするコンタクトマイクロホン。
【請求項4】
上記磁性流体により上記プリント配線板に所定の張力が付与されることを特徴とする請求項3に記載のコンタクトマイクロホン。
【請求項5】
上記ヨーク内に配置される上記永久磁石を第1永久磁石として、上記ヨークの底面部の外側には第2永久磁石が配置されることを特徴とする請求項3または4に記載のコンタクトマイクロホン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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