説明

コンタクトレンズ用液体組成物

【課題】眼球の疲労感を解消したり和らげたりすると同時に、コンタクトレンズの保湿機能を兼備するコンタクトレンズ用液体組成物を提供する。
【解決手段】重量パーセント濃度が約1×10−5%〜約3%のビタミンと、重量パーセント濃度が約5×10−3%〜約1.0%の親水性高分子と、重量パーセント濃度が約1×10−3%〜約1%の界面活性剤と、ホウ酸塩緩衝溶液又はリン酸塩緩衝溶液とを含む。ビタミンは、重量パーセント濃度が0.01%〜1%のビタミンAを含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズ用液体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の文明及び教育の普及や発展に伴って、近視罹患者が益々増えている。便利性及び習慣性を考慮した上で、コンタクトレンズを利用する率は、かなり高い。コンタクトレンズを使用する場合、必ず洗浄して手入れしなければならず、そうしなければコンタクトレンズ上の微生物又は汚染物によって眼球を傷つけてしまう可能性がある。
【0003】
コンタクトレンズの手入れ方法として、通常、界面活性剤を含有するコンタクトレンズ洗浄液を利用して、レンズを洗浄する。洗浄ステップの後、通常、レンズ上の残存物を除去するために、コンタクトレンズを溶液に浸す。また、手入れ方法として、レンズを消毒して、レンズ上にいる可能性のある微生物を除去することがある。従来のコンタクトレンズ保存液は、コンタクトレンズに対し、既に良好な洗浄及び抗菌効果の提供が可能となっている。
【0004】
しかしながら、コンタクトレンズを長時間装着すると、眼精疲労や不快感を引き起こしやすく、従来のコンタクトレンズ保存液では、前記問題を効果的に改善することができない。そのため、現在、コンタクトレンズ利用者の眼球の疲労感や不快感を解消できるコンタクトレンズ保存液が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一目的は、利用者がコンタクトレンズを使用する際に、眼球の疲労感を解消したり和らげたりすることを実現可能にすると同時に、コンタクトレンズの保湿機能を兼備するコンタクトレンズ用液体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によると、前記コンタクトレンズ用液体組成物は、重量パーセント濃度が約1×10−5%〜約3%の1種以上のビタミンと、重量パーセント濃度が約5×10−3%〜約1.0%の1種以上の親水性高分子と、重量パーセント濃度が約1×10−3%〜約1%の1種以上の界面活性剤と、ホウ酸塩緩衝溶液又はリン酸塩緩衝溶液とを含む。
【0007】
本発明の一実施例によると、ビタミンは、重量パーセント濃度が約0.01%〜約1%のビタミンAを含む。
【0008】
本発明の一実施例によると、ビタミンは、重量パーセント濃度が約0.01%〜約1.5%の、ビタミンB3、ビタミンB6又はビタミンB12のようなビタミンB群を含む。
【0009】
本発明の一実施例によると、ビタミンは、重量パーセント濃度が約0.01%〜約1%のビタミンEを含む。
【0010】
本発明の一実施例によると、親水性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる。親水性高分子は、重量パーセント濃度が約0.01%〜約0.1%である。
【0011】
本発明の一実施例によると、界面活性剤は、少なくとも1つのTWEEN 80TM及びGEROPONTM SBFA‐30を含み、且つ重量パーセント濃度が約0.001%〜約0.08%である。
【0012】
本発明の一実施例によると、ホウ酸塩緩衝溶液は、ホウ酸と、ホウ酸ナトリウムと、塩化ナトリウムとを含む。リン酸塩緩衝溶液は、リン酸水素ナトリウムと、リン酸二水素ナトリウムと、塩化ナトリウムとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の記述をより詳細で完備なものにするように、以下に、本発明の実施態様と具体的な実施例に対して説明的な記述を提示するが、これは、本発明を実施・運用する具体的な実施例の唯一の形式ではない。有益になる場合、下記で開示された各実施例を、更に記載して説明せずに、互いに組み合わせたり取り替えたりすることができる。閲覧者が下記実施例を十分に理解できるように、以下の説明において、数多くの特定の細部について詳しく記述するが、これらの特定の細部がなくても、本発明の実施例を実行することができる。
【0014】
本発明は、ハードコンタクトレンズやソフトコンタクトレンズに使用可能なコンタクトレンズ用液体組成物を開示する。ソフトコンタクトレンズのレンズとしては、例えば、親水性ハイドロゲルレンズ、或いはシリコーン高分子軟性コンタクトレンズが挙げられる。
【0015】
通常の使用の場合、コンタクトレンズを、液体組成物と十分接触させるようにその中に浸す。その利用者がコンタクトレンズを使用したり、装着する場合、コンタクトレンズを液体組成物から取り出して、コンタクトレンズを眼球に装着する。コンタクトレンズが液体組成物に浸されている場合、液体組成物における成分がコンタクトレンズに付着したり吸着することがある。利用者がコンタクトレンズを眼球に装着すると、コンタクトレンズに付着したり吸着した成分は、眼球に入る。
【0016】
本発明の実施形態による液体組成物は、少なくとも、ビタミンと、親水性高分子と、界面活性剤と、少なくとも1つのホウ酸塩緩衝溶液又はリン酸塩緩衝溶液とを含む。
【0017】
ビタミンは、コンタクトレンズ利用者の眼球の疲労感を解消するのに有益である。液体組成物におけるビタミンは、コンタクトレンズに吸着したり付着して、利用者がコンタクトレンズを装着することに伴って眼球に入り、眼球組織に吸収される。前記ビタミンとしては、水溶性ビタミン、又は脂溶性ビタミンであってもよい。水溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンB群、脂溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンA又はビタミンEが挙げられる。
【0018】
液体組成物全体におけるビタミンの重量パーセント濃度は、約1×10−5%〜約3%である。液体組成物において、ビタミンの濃度が一定値を超えると、液体組成物のpH値に影響を及ぼして、液体組成物の浸透圧が高くなりすぎてしまう。この場合、液体組成物が眼球に入ると、コンタクトレンズ利用者は、眼球に不快感を感じる。一方、液体組成物のビタミン濃度が低すぎると、眼球の疲労を解消する効果を果たせなくなる。そのため、ビタミンの重量パーセント濃度を約1×10−5%〜約3%であるようにする。この点から見れば、本発明の実施形態で加えたビタミンの総量により、液体組成物のpH値を約6.0〜約8.0、液体組成物の浸透圧を約200mOsm/Kg〜約500mOsm/Kg、好ましくは約280mOsm/Kg〜約380mOsm/Kgに維持することができる。
【0019】
一実施例において、前記ビタミンは、重量パーセント濃度が約0.01%〜約1%のビタミンAを含む。本願では、特に説明がない限り、液体組成物全体を重量パーセント濃度の計算基準とする。
【0020】
また他の実施形態において、前記ビタミンは、ビタミンB群を含む。一実施例において、ビタミンは、重量パーセント濃度が約0.01%〜約1.5%のビタミンB3を含む。また他の実施例において、ビタミンは、重量パーセント濃度が約0.01%〜約1.5%のビタミンB6を含む。また一つの実施例において、ビタミンは、重量パーセント濃度が約0.01%〜約1.5%のビタミンB12を含む。
【0021】
他の実施形態において、前記ビタミンは、重量パーセント濃度が約0.01%〜約1%のビタミンEを含む。
【0022】
親水性高分子は、コンタクトレンズがより多くのビタミンを吸着するよう促すと同時に、眼球の涙液によって、コンタクトレンズ上のビタミンが急速に流失してしまうのを避けることができる。液体組成物におけるビタミンはコンタクトレンズに吸着することができるが、その吸着量は、一般的にわずかしかない。液体組成物における親水性高分子は、コンタクトレンズ上のビタミンの吸着量及び付着量を効果的に向上させることができる。具体的には、液体組成物における親水性高分子が、コンタクトレンズに吸着して、ビタミンと吸着作用を起こすことで、コンタクトレンズにおけるビタミンの吸着量を増加させる。また、親水性高分子は、コンタクトレンズの表面に吸着するビタミンを維持する助けをし、眼球からの涙液によって、ビタミンがコンタクトレンズから溶解し、除去されて、急速に流失してしまうことを避けることができる。特に、コンタクトレンズを装着する際、コンタクトレンズが眼球と接触する瞬間に、常に涙液の大量分泌が伴うので、コンタクトレンズに元来吸着しているビタミンを適宜に維持できなければ、ビタミンは、涙液中に急速に溶解して、涙液が眼球から離れることに伴い、眼球に吸収されなくなる。この点から見れば、本発明は、単にビタミンを添加するものではなく、ビタミンと親水性高分子との間の交互作用に関するものである。より明確には、本発明の実施形態に係る技術内容は、ビタミン、親水性高分子、コンタクトレンズ、眼球、涙液からなる生化学系に関し、つまり、この生化学系は、コンタクトレンズをかけることによって利用者の眼球にビタミンを効果的に吸収させるものである。
【0023】
親水性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol;PVA)、ポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone;PVP)、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid;HA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hydroxypropyl methylcellulose;HPMC)又はポリエチレングリコール(Polyethylene glycol;PEG)が挙げられる。一実施形態において、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンの重量平均分子量は、約2000g/mol〜約50000g/molであり、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒアルロン酸の重量平均分子量は、約50000g/mol〜約350000g/molである。前記親水性高分子はコンタクトレンズの保湿も助ける。
【0024】
液体組成物における親水性高分子の濃度を、ビタミンの種類及び濃度によって調整することができる。一実施形態において、コンタクトレンズに十分にビタミンを吸着させるために、親水性高分子の重量パーセント濃度を約5×10−3%〜約0.5%、好ましくは約0.01%〜約0.1%にする。
【0025】
コンタクトレンズの液体組成物に、コンタクトレンズを洗浄するための適量の界面活性剤を添加してもよい。添加された界面活性剤の種類及び濃度としては、利用者の眼球に対する刺激がなく、且つ人の健康に害がないものであればよい。例えば、TWEEN 20TM、TWEEN 80TM、GEROPONTM SBFA‐30又はTETRONIC 1107TMであってもよく、界面活性剤重量パーセント濃度を約1×10−3〜約1%、より明確には約1×10−3〜約0.1%にする。
【0026】
本発明の発明者は、いくつかの界面活性剤が、コンタクトレンズを洗浄する機能を持っているだけでなく、同時に、コンタクトレンズにより多くのビタミンを吸着させるように促進することができることを発見した。一実施例において、界面活性剤は、少なくとも1つのTWEEN 80TM及びGEROPONTM SBFA‐30の界面活性剤を含み、それはコンタクトレンズ上のビタミンの吸着量を更に向上させることが可能であると同時に、コンタクトレンズを洗浄する機能を兼備している。本実施例において、液体組成物全体における界面活性剤の重量パーセント濃度は、約1×10−3〜約0.08%であり、好ましくは約0.002%〜約0.01%である。また、界面活性剤であるTWEEN 80TM及びGEROPONTM SBFA‐30は、液体組成物における脂溶性ビタミンの溶解度を増やすことができる。
【0027】
ホウ酸塩緩衝溶液又はリン酸塩緩衝溶液は、pH値が安定した環境を提供することに用いられる。例えば、ホウ酸塩緩衝溶液は、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、及び塩化ナトリウムを含んでもよい。リン酸塩緩衝溶液は、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、及び塩化ナトリウムを含んでもよい。また、前記液体組成物の浸透圧が、例えば、約200mOsm/Kg〜約500mOsm/Kgのような適宜の範囲に維持するように、前記塩類緩衝溶液に、適量の塩化ナトリウムを含ませる。
【0028】
前記液体組成物がホウ酸塩緩衝溶液を含む一実施形態において、液体組成物全体における塩化ナトリウムの重量パーセント濃度は、約0.35%〜約1.05%であり、ホウ酸の重量パーセント濃度は、約0.20%〜約0.70%であり、ホウ酸ナトリウムの重量パーセント濃度は、約0.01%〜約0.7%である。
【0029】
前記液体組成物がリン酸塩緩衝溶液を含む一実施形態において、液体組成物全体における塩化ナトリウムの重量パーセント濃度は、約0.40%〜約1.20%であり、リン酸水素ナトリウムの重量パーセント濃度は、約0.10%〜約0.70%であり、リン酸二水素ナトリウムの重量パーセント濃度は、約0.01%〜約0.70%である。
【0030】
他の実施形態において、前記液体組成物は、十分量の抗微生物剤を更に含んでもよく、例えば、本技術分野で周知の3ppm未満のポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)を添加してよい。
【0031】
以下、複数の代表的な実施例を列挙する。
【0032】
実施例1
【表1】

【0033】
実施例2
【表2】

【0034】
実施例3
【表3】

【0035】
実施例4
【表4】

【0036】
実施例5
【表5】

【0037】
本発明では実施形態を前述の通り開示したが、これは本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の精神と領域から逸脱しない限り、多様の変動や修正を加えることができる。従って本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量パーセント濃度が1×10−5%〜3%のビタミンと、
重量パーセント濃度が5×10−3%〜1.0%の親水性高分子と、
重量パーセント濃度が1×10−3〜1%の界面活性剤と、
ホウ酸塩緩衝溶液又はリン酸塩緩衝溶液とを含むコンタクトレンズ用液体組成物。
【請求項2】
前記ビタミンは、重量パーセント濃度が0.01%〜1%のビタミンAを含む請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記ビタミンは、重量パーセント濃度が0.01%〜1.5%のビタミンB3を含む請求項1に記載の液体組成物。
【請求項4】
前記ビタミンは、重量パーセント濃度が0.01%〜1.5%のビタミンB6を含む請求項1に記載の液体組成物。
【請求項5】
前記ビタミンは、重量パーセント濃度が0.01%〜1.5%のビタミンB12を含む請求項1に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記ビタミンは、重量パーセント濃度が0.01%〜1%のビタミンEを含む請求項1に記載の液体組成物。
【請求項7】
前記親水性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれるものである請求項1に記載の液体組成物。
【請求項8】
前記親水性高分子は、重量パーセント濃度が0.01%〜0.1%である請求項1に記載の液体組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤は、TWEEN 80TM及びGEROPONTM SBFA-30の少なくとも1つを含み、且つ重量パーセント濃度が0.001%〜0.08%である請求項1に記載の液体組成物。
【請求項10】
前記ホウ酸塩緩衝溶液は、ホウ酸と、ホウ酸ナトリウムと、塩化ナトリウムとを含む請求項1に記載の液体組成物。
【請求項11】
前記リン酸塩緩衝溶液は、リン酸水素ナトリウムと、リン酸二水素ナトリウムと、塩化ナトリウムとを含む請求項1に記載の液体組成物。

【公開番号】特開2012−189993(P2012−189993A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−12877(P2012−12877)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【出願人】(512020327)ペガヴィジョン コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】PEGAVISION CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2F.−1, No.5, Xingye St., Guishan Township, Taoyuan County, Taiwan
【Fターム(参考)】