説明

コンタクトレンズ用輸送保存容器

【課題】長期間コンタクトレンズを保存できるコンタクトレンズ用輸送保存容器を提供する。
【解決手段】脂肪族オレフィンと環状オレフィンの共重合体からなる共重合ポリオレフィンを主成分とする容器本体を有するコンタクトレンズの輸送保存用容器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズの輸送保存用容器、特に製造元から販売メーカーまでコンタクトレンズを輸送し、長期保存をするための容器に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズは、工場で製造してから、販売店頭にてユーザーに処方されるまでコンタクトレンズとしての品質を保ったまま、輸送、保管する必要がある。特に近年の傾向として、高酸素透過性の素材からなるコンタクトレンズが増加しているが、高酸素透過性の素材からなるコンタクトレンズが乾燥すると球面度が低下し適切なレンズパワーが得られなくなってしまうといった問題が発生する。また、輸送、保管中に、予期せぬ高温環境に晒されることで、保存液が蒸発しコンタクトレンズが変形や変質したり、輸送時に衝撃を受けコンタクトレンズケースが割れてしまうことがあった。従来、コンタクトレンズの輸送保存用容器として、ポリスチレン、ポリカーボネイトといった熱可塑性樹脂からなる容器本体を有する輸送保存用容器が用いられてきたが、このような輸送保存用容器を用いた場合、該樹脂のガス透過性の高さから保存液が蒸発し、容器外へ透過して容器中の保存液が蒸発し、コンタクトレンズが乾燥してしまうといった問題が発生した。
【0003】
さらに、容器の気密性を高めるため、オレフィン重合体からなる容器の表面に酸化ケイ素を皮膜する技術(特許文献1)や、ダイヤモンドライクカーボンを皮膜する技術(特許文献2)が提案されているが、いずれも薄膜形成のためプラズマCVDや蒸着法により皮膜されるため高価なものとなり、中に保管されるコンタクトレンズをユーザーに手渡したあと、廃棄される使い捨て用途には不向きであった。
【0004】
すなわち、製造元から販売者へとコンタクトレンズを入れて輸送、保存する使い捨て容器として、安価で高い防湿性を保つコンタクトレンズ用容器が存在しなかった。
【特許文献1】特開平8−182740
【特許文献2】特開平10−36541
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、高い防湿性、耐破損性を有するため、保存液の容器外への蒸発を抑制し、かつ、取り扱いまたは輸送時の保存容器の破損を低減できる、安価なコンタクトレンズ保存使い捨て容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、脂肪族オレフィン重合体をコンタクトレンズを製造元から販売店/ユーザーに手渡すまでに保存、輸送するための容器として用いると、特に優れた効果を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、コンタクトレンズの輸送および保管に最適なコンタクトレンズ用輸送保存容器を安価に得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のコンタクトレンズ用輸送保存容器本体の素材は、脂肪族オレフィンと環状オレフィンとの共重合体からなる脂肪族ポリオレフィン重合体であることが必要である。
【0009】
本発明の環状オレフィンとしては、公知のいかなる環状オレフィンであってもよいが、式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
(上記式(I)中、nは0または1であり、mは0または1以上の整数であり、qは0または1であり、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基であり、R15〜R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ該単環または多環が二重結合を有していてもよく、またR15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。)であらわされる環状オレフィンであることが好ましく、なかでも、耐湿性の点で、式(II)
【0012】
【化2】

【0013】
で示されるテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(以後単にテトラシクロドデセンという、上記式中において、1〜12の数字は炭素の位置番号を示す。)、およびこれに炭化水素基が置換した誘導体が特に好ましく用いられ、置換基として例えば、8−メチル、8−エチル、8−プロピル、8−ブチル、8−イソブチル、8−ヘキシル、8−シクロヘキシル、8−ステアリル、5,10−ジメチル、2,10−ジメチル、8,9−ジメチル、8−エチル−9−メチル、11,12−ジメチル、2,7,9−トリメチル、2,7−ジメチル−9−エチル、9−イソブチル−2,7−ジメチル、9,11,12−トリメチル、9−エチル−11,12−ジメチル、9−イソブチル−11,12−ジメチル、5,8,9,10−テトラメチル、8−エチリデン、8−エチリデン−9−メチル、8−エチリデン−9−エチル、8−エチリデン−9−イソプロピル、8−エチリデン−9−ブチル、8−n−プロピリデン、8−n−プロピリデン−9−メチル、8−n−プロピリデン−9−エチル、8−n−プロピリデン−9−イソプロピル、8−n−プロピリデン−9−ブチル、8−イソプロピリデン、8−イソプロピリデン−9−メチル、8−イソプロピリデン−9−エチル、8−イソプロピリデン−9−イソプロピル、8−イソプロピリデン−9−ブチル、8−クロロ、8−ブロモ、8−フルオロ、8,9−ジクロロ、8−フェニル、8−メチル−8−フェニル、8−ベンジル、8−トリル、8−(エチルフェニル)、8−(イソプロピルフェニル)、8,9−ジフェニル、8−(ビフェニル)、8−(β−ナフチル)、8−(α−ナフチル)、8−(アントラセニル)、5,6−ジフェニル等を付加した誘導体が好ましく用いられる。さらに他の誘導体として、(シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物)とシクロペンタジエンとの付加物などが挙げられる。
【0014】
上記のような式(I)または(II)のような環状オレフィンを製造するには公知のいかなる方法でもよいが、シクロペンタジエンと対応する構造を有するオレフィン類とのディールス・アルダー反応等を挙げることが出来る。
【0015】
また、本発明に使用される環状オレフィンとして、下記(III)式
【0016】
【化3】

【0017】
で示されるビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(別名ノルボルネン。上記式中において、1〜7の数字は炭素の位置番号を示す。)および該化合物に炭化水素基が置換した誘導体も好ましく用いることが出来る。この置換炭化水素基として、5−メチル、5,6−ジメチル、1−メチル、5−エチル、5−n−ブチル、5−イソブチル、7−メチル、5−フェニル、5−メチル−5−フェニル、5−ベンジル、5−トリル、5−(エチルフェニル)、5−(イソプロピルフェニル)、5−(ビフェニル)、5−(β−ナフチル)、5−(α−ナフチル)、5−(アントラセニル)、5,6−ジフェニルをこのましく用いることができる。さらに他の誘導体として、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセンなどのビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン誘導体等が好ましく用いられる。
【0018】
また、これらの環状オレフィンは、単独でも、あるいは2種以上組み合わせても用いてもよい。
本発明における、脂肪族オレフィンとしては、直鎖状でも分岐状でもよく、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素原子数が2〜20の直鎖状脂肪族オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセンなどの炭素原子数が4〜20の分岐状脂肪族オレフィンなどが挙げられる。これらのなかでは、炭素原子数が2〜4の直鎖状脂肪族オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。このような直鎖状または分岐状の脂肪族オレフィンは、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
【0019】
または、環状オレフィンとして、下記(IV)式にあらわされる環状オレフィン開環体であってもよい。
【0020】
【化4】

【0021】
上記式(IV)において、n、m、qおよびR〜R18ならびにRおよびRは、式(I)におけるものと同じ意味である。
【0022】
本発明の脂肪族ポリオレフィン重合体の透湿係数は、内容物の蒸発を防ぐため0.5以下であることが好ましい。透湿係数はASTMD638により測定される。環状オレフィンの共重合比率が少ないほうが重合時に密な構造となるため、低透湿性を得ることができるので環状オレフィンの共重合比率は40モル%以下であることが好ましい。なお、環状オレフィンの共重合比率が40モル%よりも多くなると、樹脂の破断伸度が弱くなり蓋の開閉時の僅かな変形により容器にヒビが入ってしまう問題が発生する点においても好ましくない。また環状オレフィンの共重合比率が10モル%未満だと樹脂が柔軟になるため、輸送時に容器表面にキズが入り、商品価値を低下させてしまう問題が発生することから環状オレフィンの共重合比率は10モル%以上40モル%以下であることが好ましい。より好ましくは20モル%以上35モル%以下である。脂肪族オレフィンおよび環状オレフィンの組成比は、13C−NMRによって測定することが出来る。
【0023】
本発明のコンタクトレンズ用輸送保存容器には、環境影響による透明性低下を防止する目的で、脂肪族オレフィンに多価アルコールを添加した共重合体を使用することもできる。多価アルコールとしては、3,7,11,15−テトラメチル−1,2,3−トリヒドロキシヘキサデカン、ジヒドロキシオクタン、トリヒドロキシオクタン、テトラヒドロキシオクタン、ジヒドロキシノナン、トリヒドロキシノナン、テトラヒドロキシノナン、ペンタヒドロキシノナン、ヘキサヒドロキシノナン、ジヒドロキシトリアコンタン、トリヒドロキシトリアコンタン、エイコサヒドロキシトリアコンタンなどが挙げられ、中でも、3,7,11,15−テトラメチル−1,2,3−トリヒドロキシヘキサデカンが好ましい。多価アルコールの添加量としては、共重合ポリオレフィン100重量部に対して、多価アルコールを0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜10重量部、より好ましくは0.05〜7重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部の割合で含有することで、環状ポリオレフィンの透明性や吸水率に変化を及ぼすことなく環境変化による透明性の低下を少なくできる。
【0024】
本発明の共重合体ポリオレフィンとしては、耐湿性、透明性、耐衝撃性の観点からアペル(三井化学(株)製)、ゼオネックス(日本ゼオン(株)製)、TOPAS(Ticona社製)が好ましく用いられ、なかでも加工性の点からアペルが好ましく用いられる。アペルは、式V
【0025】
【化5】

【0026】
(l、m、nは整数)であらわされるポリオレフィンである。
本発明のコンタクトレンズ用輸送保存容器を構成する共重合ポリオレフィン重合体には、目的を損なわない範囲にて、目的を損なわない範囲内であれば、その他の任意成分を配合してもよく、例えば耐候安定剤、耐熱安定剤などの安定剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、鉱物油系軟化剤、石油樹脂、天然油、合成油、ワックス、有機または無機の充填剤などが必要に応じて配合される。これらの任意成分は公知の方法にて配合することができる。
【0027】
このような任意成分として配合される耐候安定剤の紫外線吸収剤の例としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ニッケル系化合物、ヒンダードアミン系化合物があり、具体的には、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールや2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルフォスフォリックアシッドエチルエステルのニッケル塩、ビス(2,2’,6,6’−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケイトなどが挙げられる。
【0028】
また、任意成分として含有される安定剤の例としては、具体的にテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2’−オギザミドビス[エチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのフェノール系酸化防止剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2−ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩などが挙げられる。これらは組合わせて用いることもでき、たとえばテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンとステアリン酸亜鉛またはステアリン酸カルシウムとを組合わせて用いることができる。
【0029】
また安定剤として、たとえばジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニル−4,4’−イソプロピリデンジフェノール−ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニルビスフェノール−A−ペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリス(ノニルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジフォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトなどのリン系安定剤を用いることもできる。これらの安定剤は、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
上述の共重合ポリオレフィン重合体は、高い耐湿性を有するとともに、低複屈折性、耐熱性、機械的特性、精密成形性等が優れており、各種医療容器等に用いることができるが、コンタクトレンズ保存液を充填しコンタクトレンズを保存するコンタクトレンズ用輸送保存容器として特に好ましく用いることができる。
【0031】
容器はこれらの樹脂単層容器はこれらの樹脂単層または複数層から構成されるが成型法としては任意の方法が用いられる。例えばブロー成形、射出成形、押し出し成形等が採用されるが、通常はブロー成形、多層ブロー成形が好ましい。
【0032】
本発明では、保存液を充填したコンタクトレンズ用輸送保存容器内でコンタクトレンズを保管、輸送する方法も提供する。
【0033】
保存溶液には公知のいかなるコンタクトレンズ用保存液を用いることが出来るが、コンタクトレンズのメンテナンスおよび品質保持の点から、(A)陰イオン界面活性剤、(B)緩衝剤、(C)粘度調整剤、(D)非還元性多糖類、(E)金属キレート剤から選ばれる少なくとも1つをふくむ溶液を使用することが好ましい。
【0034】
保存液には、レンズに付着した涙液成分、特に脂質成分を可溶化して除去する目的で、(A)陰イオン界面活性剤を含むことが好ましく、公知の陰イオン界面活性剤であればよく、1 種であっても、2 種以上を含んでいても良い。陰イオン系の界面活性剤であればよく、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、脂肪族オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレン鎖を有するカルボキシ化エーテルリン酸塩/硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキル硫酸エーテル、アルキルサルコシン塩、アルキロイルメチルタウリンおよびアルキロイルベンザルコシンらなる群から選ばれたものが好ましく用いられ、なかでも涙液成分の除去能力、生体適合性の点で、スルホン酸系の界面活性剤が好ましい。なかでも、生体適合性、安定性、脂質除去能力の点で脂肪族オレフィンスルホン酸塩が好ましくもちいられ、更に好ましくは脂肪族オレフィンスルホン酸ナトリウムが用いられる。
【0035】
PH調整、浸透圧調整のため(B)緩衝剤を用いることが好ましい。緩衝剤としては、例えば、リン酸水素二ナトリウム−クエン酸の組み合わせ、リン酸水素二ナトリウム−リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カリウム−ホウ砂、ホウ酸、ホウ砂−ホウ酸、水酸化ナトリウム−リン酸二水素カリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩−エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩等である。なかでも、防腐効果も示すため、ホウ酸、ホウ酸カリウムが好ましく用いられる。
【0036】
レンズのこすり洗いする際のレンズの傷つき防止、コンタクトレンズ装着時の装着ミスでのレンズによる角膜損傷防止のため、(C)粘度調整剤を加えることが好ましい。溶液の粘度を調整には、水溶性高分子としてどのようなものも使用可能であるが、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、カルボキシプロピルセルロース、イソブチレンとマレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、アラビアゴム、デンプン、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、グリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、ショ糖、コンドロイチン硫酸もしくはその塩等を挙げることができる。
【0037】
保存液には、制菌性をあげるため、(D)非還元性多糖類を加えても良い。非還元性多糖類としては、例えば、1−O−アルキルグルコース、シュークロース、トレハロース、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、アラビトール、リビトール、スレイトール、ダルシット、ソルビトール、ズルシトール、ラフィノース、ゲンチアノース、メレジトース、プランテオース、スタキオース、ベルバスコース等があり、これらは単独であるいは2種以上併用することができる。また、ポリオールとしては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリビニルアルコールおよびポリエチレングリコールまたはこれらの混合物がある。これらの非還元性の糖質またはポリオールは、製剤全量の0.01〜10.0重量%となる濃度の範囲で用いられる。なかでも、生態安全性から、トレハロース、マンニトールおよびグリセリンが良好に用いられる。
【0038】
(E)金属キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、グルコン酸、クエン酸、酒石酸、ジエチレントリアミン五酢酸およびこれらのナトリウム塩とカリウム塩、ポリリン酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウムが好ましく、その中でもエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムは特に好ましい。これらのキレート化剤は、製剤全量の0.01〜1.0重量%となる濃度の範囲で用いられる。
【0039】
本発明のコンタクトレンズ用輸送保存容器の使用方法により、コンタクトレンズを安全に輸送することが出来、かつ、保存液の蒸発を抑制できるため長期間にわたりコンタクトレンズの品質を保つことが出来る。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0041】
実施例1
市販の共重合オレフィン重合体(三井化学社製アペル、APL6509T、環状オレフィン含有量25モル%)を用いて、射出成形によって肉厚3mm、外径17.5mm、高さ30mmのコンタクトレンズ用保存容器(バイアルケース)を射出成形により製造した。さらにハードコンタクトレンズ用保存液(オフテクス製、東レ洗浄保存液)をバイアルケース中に注ぎ、ポリエチレン製の蓋に据え付けたコンタクトレンズホルダーにハードコンタクトレンズを装着し、蓋を閉め、重量を測定した。1ヵ月後の重量を測定し、重量減少率を算出したところ、0.2%であった。
【0042】
また、蓋を開け容器を観察したところ容器にヒビ、キズが発生していなかった。
【0043】
実施例2
市販の共重合オレフィン重合体(三井化学社製アペル、APL8008T、環状オレフィン含有量20モル%)を用いた以外は実施例1と同様にして、1ヵ月後の重量を測定し、重量減少率を算出したところ、0.2%であった。また、蓋を開け容器を観察したところ容器にヒビ、キズが発生していなかった。
【0044】
実施例3
市販の共重合ポリオレフィン重合体を他の市販品(日本ゼオン社製、ゼオネックス330R)に変えた以外は実施例1と同様にして射出成形し、コンタクトレンズを保存した。重量減少率を測定したところ、0.5%であった。また、蓋を開け容器を観察したところ容器にヒビ、キズが発生していなかった。
【0045】
比較例1
市販のポリスチレン重合体(村角株式会社製樹脂ボトル)を用いた以外は実施例1と同様にしてコンタクトレンズ用保存容器を作成した。重量減少率を測定したところ8.8%であった。蓋を開け容器を観察したところ容器にヒビ、キズが発生していなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族オレフィンと環状オレフィンの共重合体からなる共重合ポリオレフィンを主成分とする容器本体を有するコンタクトレンズの輸送保存用容器。
【請求項2】
前記環状オレフィンが、テトラシクロドデセン誘導体、またはノルボルネン誘導体である請求項1記載のコンタクトレンズの輸送保存用容器。

【公開番号】特開2008−111054(P2008−111054A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295390(P2006−295390)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】