説明

コンテンツ配信サーバ、コンテンツ配信システム及びコンテンツ配信プログラム

【課題】 キャッシュを起動したときからキャッシュデータを利用できるまでの時間が短いコンテンツ配信サーバを提供する。
【解決手段】 本発明は、コンテンツ格納装置に格納されているコンテンツのデータを1又は複数の配信先装置へ配信する、キャッシュデータ格納部とキャッシュ制御部とを有するコンテンツ配信サーバに関する。キャッシュ制御部は、キャッシュ処理の開始条件が成立したか否かを判定し、開始条件の成立前には、コンテンツ格納装置からデータを取得して各配信先装置に配信させ、開始条件の成立後には、配信すべきデータがキャッシュデータ格納部に格納されている各配信先装置に対しては、その格納部から読み出して配信させ、配信すべきデータがキャッシュデータ格納部に格納されていない各配信先装置に対しては、コンテンツ格納装置からデータを取得して配信させ、かつ、そのデータをキャッシュデータ格納部に格納させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンテンツ配信サーバ、コンテンツ配信システム及びコンテンツ配信プログラムに関し、例えば、映像コンテンツをキャッシュしながら発信する場合に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビデオ・オン・デマンドシステムなどの映像コンテンツ配信システムでは、映像コンテンツ配信サーバの負荷とネットワークトラフィックを軽減する目的で、コンテンツデータを複製するキャッシュを利用する場合がある。このようなキャッシュを利用する映像コンテンツ配信システムでは、対象の映像コンテンツを別のサーバに複製する機能を追加することによりキャッシュを実現している(特許文献1参照)。ここで、1つのコンテンツデータの同時配信数が所定値以上になると、要求されたコンテンツデータの複製をキャッシュする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−89019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来システムでは、1つのコンテンツデータの全体を別のサーバにキャッシュとして複製するため、大容量の映像コンテンツの複製には時間がかかり、複製が完了するまではキャッシュデータが使用できないという課題があった。
【0005】
そのため、キャッシュを起動したときからキャッシュデータを利用できるまでの時間が短いコンテンツ配信サーバ、コンテンツ配信システム及びコンテンツ配信プログラムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、コンテンツ配信サーバが、オリジナルコンテンツ格納装置に格納されているコンテンツのデータを配信対象の1又は複数の配信先装置へ配信するコンテンツ配信システムにおいて、(1)上記コンテンツ配信サーバは、(1−1)キャッシュデータ格納手段と、(1−2)キャッシュ処理を開始する条件が成立したか否かを判定し、キャッシュ処理を開始する条件の成立前には、そのときの上記各配信先装置に対するコンテンツデータをそれぞれ、上記オリジナルコンテンツ格納装置から取得して配信させ、キャッシュ処理を開始する条件の成立後には、配信すべきコンテンツデータが上記キャッシュデータ格納手段に格納されている上記各配信先装置に対しては、上記キャッシュデータ格納手段からコンテンツデータを読み出して配信させ、配信すべきコンテンツデータが上記キャッシュデータ格納手段に格納されていない上記各配信先装置に対しては、上記オリジナルコンテンツ格納装置からコンテンツデータを取得して配信させると共に、そのコンテンツデータを上記キャッシュデータ格納手段に格納させるキャッシュ制御手段とを有することを特徴とする。
【0007】
第2の本発明は、オリジナルコンテンツ格納装置に格納されているコンテンツのデータを、配信対象の1又は複数の配信先装置へ配信するコンテンツ配信サーバにおいて、(1)キャッシュデータ格納手段と、(2)キャッシュ処理を開始する条件が成立したか否かを判定し、キャッシュ処理を開始する条件の成立前には、そのときの上記各配信先装置に対するコンテンツデータをそれぞれ、上記オリジナルコンテンツ格納装置から取得して配信させ、キャッシュ処理を開始する条件の成立後には、配信すべきコンテンツデータが上記キャッシュデータ格納手段に格納されている上記各配信先装置に対しては、上記キャッシュデータ格納手段からコンテンツデータを読み出して配信させ、配信すべきコンテンツデータが上記キャッシュデータ格納手段に格納されていない上記各配信先装置に対しては、上記オリジナルコンテンツ格納装置からコンテンツデータを取得して配信させると共に、そのコンテンツデータを上記キャッシュデータ格納手段に格納させるキャッシュ制御手段とを有することを特徴とする。
【0008】
第3の本発明のコンテンツ配信プログラムは、オリジナルコンテンツ格納装置に格納されているコンテンツのデータを、配信対象の1又は複数の配信先装置へ配信するコンテンツ配信サーバであって、キャッシュデータ格納手段となるメモリを有するコンテンツ配信サーバに搭載されているコンピュータを、キャッシュ処理を開始する条件が成立したか否かを判定し、キャッシュ処理を開始する条件の成立前には、そのときの上記各配信先装置に対するコンテンツデータをそれぞれ、上記オリジナルコンテンツ格納装置から取得して配信させ、キャッシュ処理を開始する条件の成立後には、配信すべきコンテンツデータが上記キャッシュデータ格納手段に格納されている上記各配信先装置に対しては、上記キャッシュデータ格納手段からコンテンツデータを読み出して配信させ、配信すべきコンテンツデータが上記キャッシュデータ格納手段に格納されていない上記各配信先装置に対しては、上記オリジナルコンテンツ格納装置からコンテンツデータを取得して配信させると共に、そのコンテンツデータを上記キャッシュデータ格納手段に格納させるキャッシュ制御手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャッシュを起動したときからキャッシュデータを利用できるまでの時間が短いコンテンツ配信サーバ、コンテンツ配信システム及びコンテンツ配信プログラムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態のコンテンツ配信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態のキャッシュ制御部の処理を示すフローチャートである。
【図3】第1の実施形態のキャッシュデータ格納部へ映像データが格納される状況を示したもの(その1)である。
【図4】第1の実施形態のキャッシュデータ格納部へ映像データが格納される状況を示したもの(その2)である。
【図5】第1の実施形態のキャッシュデータ格納部へ映像データが格納される状況を示したもの(その3)である。
【図6】第2の実施形態のコンテンツ配信システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(A)第1の実施形態
以下、本発明によるコンテンツ配信サーバ、コンテンツ配信システム及びコンテンツ配信プログラムの第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。第1の実施形態のコンテンツ配信システムは映像コンテンツを配信するものである。
【0012】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態のコンテンツ配信システムの構成を示すブロック図である。コンテンツ配信システムが配信可能な映像コンテンツは複数種類であることが多いが、図1は、ある1種類の映像コンテンツに着目して示している。
【0013】
図1において、第1の実施形態のコンテンツ配信システム1は、オリジナルコンテンツ格納部101、コンテンツ配信サーバ110及び映像再生端末30−1〜30−N(Nは任意の自然数)を有する。
【0014】
オリジナルコンテンツ格納部101は、配信対象の映像コンテンツのオリジナル(キャッシュの映像コンテンツに対する表現である)を格納しているものである。オリジナルコンテンツ格納部101は、コンテンツ配信サーバ110の外部記憶装置として実現されているものであっても良く、また、ネットワークや専用線を介してコンテンツ配信サーバ110に接続するコンテンツ格納サーバやコンテンツ供給元サーバとして実現されているものであっても良い。また、オリジナルの映像コンテンツは、圧縮処理がなされていないものであっても良く、また、圧縮処理がなされたものであっても良い。
【0015】
コンテンツ配信サーバ110は、オリジナルコンテンツ格納部101に格納されている映像コンテンツを、ネットワークNETを介して映像コンテンツを要求している映像再生端末30−1〜30−Nに供給するものである。例えば、ネットワークNETがパケット通信ネットワークである場合、映像コンテンツは1つのパケットに挿入できる所定量の映像データに切り分けられて映像再生端末30−1〜30−Nに供給される。この実施形態の場合、コンテンツ配信サーバ110は、オリジナルコンテンツ格納部101からの映像コンテンツを、所定量に切り分けたりすることはあっても、圧縮などの加工を実行しないものである。
【0016】
映像再生端末30−1〜30−Nはそれぞれ、例えば、ネットワーク接続機能を有するテレビ、セットトップボックス、パソコン、スマートフォンなどが該当し、コンテンツ配信サーバ110から供給された映像コンテンツを再生して利用者に提供するものである。映像コンテンツの配信開始は、例えば、利用者との契約に基づいた日時になると自動的に映像再生端末に対して配信を開始するようにしても良く、また例えば、映像再生端末から配信の要求があったときに、その映像再生端末に対して配信を開始するようにしても良い。以下では、後者であるとして説明する。
【0017】
コンテンツ配信サーバ110は、配信先管理部111、キャッシュ制御部112、キャッシュデータ格納部113及び映像送出データ部20−1〜20−N(図1では映像再生端末が割り当てられているものだけを描き出している)を有する。例えば、配信先管理部111及びキャッシュ制御部112は、専用的な処理用のICチップとして構成されていても良く(この場合であれば、配信先管理部111やキャッシュデータ格納部113なども実装可能である)、また、コンテンツ配信サーバ110に搭載されているCPUが実行するプログラムとして用意されたものであっても良い。すなわち、後者の場合であっても、機能的には、このような配信先管理部111及びキャッシュ制御部112に分けることができる。
【0018】
配信先管理部111は、配信を要求してきた映像再生端末に映像データを配信(送信)する映像データ送出部を割り当てたり、配信先の映像再生端末についての情報を管理したり、映像データ送出部に対して配信の開始を指示したりするものである。
【0019】
配信先管理部111は、例えば、配信が必要な映像再生端末の数(同時配信数)、配信先の各映像再生端末の特定情報(例えば、ネットワーク上のアドレス)、その特定情報に対応付けられている利用する映像データ送出部などが管理されている。
【0020】
例えば、映像再生端末が予め配信を要求する場合にアクセスしてくる当該コンテンツ配信サーバ110のアドレスやWebページなどが定まっており、そのようなアドレスやWebページなどへのアクセスを受け付ける図示しない要求受信部があり、要求受信部が任意の映像再生端末30−nからの配信要求を受け付けたときに、配信先管理部111は、未使用の映像データ送出部の中から、映像データを配信(送信)する映像データ送出部20−nを割り当てる。そして、配信先管理部111は、割り当てた映像データ送出部20−nに対して、配信先の映像再生端末30−nの特定情報を与えて配信の開始を指示する。
【0021】
キャッシュデータ格納部113は、映像コンテンツのキャッシュデータを格納するものである。すなわち、キャッシュデータ格納部113は、映像コンテンツの配信にキャッシュを利用することとなった場合に、配信に供した映像データが格納されると共に、適宜、格納された映像データが読み出されるものである。キャッシュデータ格納部113は、コンテンツ配信サーバ110内のメモリ(例えばRAM)やハードディスなどの内部の記憶装置上に形成されても良く、コンテンツ配信サーバ110の外部の記憶装置等に構築されても良い。ここで、外部の記憶装置が離れていても良いが、オリジナルコンテンツ格納部101との比較でアクセス性が格段的に良いことを要する。
【0022】
キャッシュ制御部112は、映像コンテンツを構成する部分のデータである映像データをキャッシュデータ格納部113に書き込んだり、キャッシュデータ格納部113から映像データを読み出したりするものである。
【0023】
キャッシュ制御部112は、配信先管理部111の管理情報や、キャッシュデータ格納部113に対する映像データ毎の格納済か否かの内蔵する格納有無情報を参照しながら、配信が必要な映像再生端末30−1〜30−Nに対する映像コンテンツ(従って映像データ)の配信を制御するものである。
【0024】
キャッシュ制御部112は、配信中の映像再生端末の数が予め定まっている所定数に達するまでは、オリジナルコンテンツ格納部101から読み出した映像データを映像再生端末30−1〜30−Nに配信させるが、キャッシュデータ格納部113への格納を実行しない。
【0025】
キャッシュ制御部112は、配信中の映像再生端末の数が予め定まっている所定数に達すると、オリジナルコンテンツ格納部101から読み出した映像データ又はキャッシュデータ格納部113から読み出した映像データを映像再生端末に配信させ、また、オリジナルコンテンツ格納部101から読み出した映像データを複製してキャッシュデータ格納部113へ格納させる。キャッシュデータ格納部113に映像コンテンツの全ての映像データが格納された以降は、キャッシュ制御部112は、キャッシュデータ格納部113から読み出した映像データを映像再生端末に配信させる。
【0026】
配信先の映像再生端末によって、同じ時刻でも、その時刻に配信すべき映像データは異なっている。配信中の映像再生端末の数が予め定まっている所定数に達した以降、キャッシュ制御部112は、キャッシュデータ格納部113に映像データがなければ、オリジナルコンテンツ格納部101から読み出した映像データを配信する。映像コンテンツ中で異なる箇所の映像データをオリジナルコンテンツ格納部101から読み出して異なる映像再生端末に配信する場合、キャッシュ制御部112は、読み出された映像データを全てキャッシュデータ格納部113に格納させる。そのため、キャッシュ制御部112は、キャッシュデータ格納部113への格納を開始する前に、映像コンテンツの長さなどに基づいて、キャッシュデータ格納部113のエリアを映像データ毎に分割すると共に、映像データ毎(若しくはキャッシュデータ格納部113のアドレス毎)に格納済か未格納を書き入れることができるテーブルを内部に生成し(生成直後は全てが未格納になっている)、キャッシュデータ格納部113に映像データを書き込む毎に「未格納」を「格納済」に更新する。キャッシュ制御部112は、映像データを、その映像データの映像コンテンツにおける位置に応じた、キャッシュデータ格納部113のエリアに書き込むように制御する。
【0027】
キャッシュ制御部112の映像データの読出し、書込み制御については、後述する動作説明の項でも明らかにする。
【0028】
キャッシュ制御部112は、映像データ送出部20−nから要求された映像コンテンツの要求された映像データを、要求元の映像再生端末30−nへ出力する。
【0029】
なお、キャッシュ制御部112は、キャッシュ処理を止める条件の成立をも監視しており、この条件の成立時には、オリジナルコンテンツ格納部101から読み出した映像データを映像再生端末30−1〜30−Nに配信させる状態に復帰させる。
【0030】
映像データ送出部20は、当該コンテンツ配信サーバ110が同時配信し得る最大数だけ設けられている。図1では、映像コンテンツを配信する映像再生端末30−1〜30−Nに割り当てられている映像データ送出部20−1〜20−Nだけを記載している。配信先の映像再生端末30−nが割り当てられた映像データ送出部20−nは、キャッシュ制御部112から映像データを取り出し、ネットワークNETを通過できる形式(例えば、所定形式のパケット)に変換して、対応付けられている映像再生端末30−nに配信(送信)するものである。
【0031】
映像データ送出部20−nが、配信中の映像コンテンツのうちの未配信のデータ部分情報、若しくは、配信済のデータ部分の情報を内部で管理しており、この管理情報に基づいて、次の映像データをキャッシュ制御部112に要求する。又は、キャッシュ制御部112が、映像データ送出部20−nに映像コンテンツのどこまでの映像データを与えたかを管理しておき、映像データ送出部20−nから次の映像データの要求(映像データを特定する情報は含まれていない要求)があったときに、管理している情報に基づいて、次の映像データを映像データ送出部20−nに与えるようにしても良い。
【0032】
以上では、映像データ送出部20−nが次の映像データをキャッシュ制御部112に要求し、それに応じて、キャッシュ制御部112が映像データ送出部20−nに次の映像データを与える方法を示したが、キャッシュ制御部112が映像データ送出部20−nに次々と映像データを自律的に与える方法であっても良い。後者の方法では、映像データ送出部20−nがバッファメモリを持っていることが好ましい。後述する動作の項では、前者の方法が適用されているとして説明する。
【0033】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態のコンテンツ配信システム1の動作を説明する。
【0034】
映像再生端末30−nからの映像コンテンツの配信要求(視聴要求)に対し、コンテンツ配信サーバ110においては、その映像再生端末30−nに映像データを配信(送信)する映像データ送出部20−nが割り当てられる。映像データ送出部20−nは、キャッシュ制御部112に対して、要求されている映像コンテンツの配信する区間のデータ取得を順次要求し、キャッシュ制御部112から順次与えられた映像データをキャッシュ制御部112に配信(送信)する。
【0035】
ここで、キャッシュ制御部112は、要求された区間の映像データがキャッシュデータ格納部113に格納されていれば、キャッシュデータ格納部113から映像データを取得して映像データ送出部20−nに渡す。一方、キャッシュ制御部112は、要求された区間の映像データがキャッシュデータ格納部113に格納されていなければ、オリジナルコンテンツ格納部101に対して当該区間の映像データの取得を要求し、取得した映像データを映像データ送出部20−nに渡す。このとき、キャッシュ制御部112は、キャッシュデータ格納部113へ格納する条件が成立していれば、オリジナルコンテンツ格納部101から取得した映像データを、キャッシュデータ格納部112にも格納する。
【0036】
一般的に、キャッシュデータ格納部113に格納できるデータ量は、オリジナルコンテンツ格納部101のデータ量よりも少なく、全ての映像コンテンツをキャッシュデータ格納部113に格納することは困難である。従って、利用頻度の高い映像コンテンツをキャッシュデータ格納部113に格納する制御が重要となる。キャッシュ制御部112は、キャッシュデータ格納部113に映像コンテンツを効率的に格納するための制御を行う。
【0037】
図2は、キャッシュ制御部112の処理を示すフローチャートである。図2において、1区画分の映像データを処理するステップS102〜S105の処理は、同一の映像コンテンツが配信される全ての映像再生端末について、並行的に、又は、時間順次に実行される処理である。ステップS101、S106、S107は、例えば、所定周期毎に、若しくは、同一の映像コンテンツが配信される全ての映像再生端末について、ステップS102〜S105の処理が実行される毎に、実行される処理である。
【0038】
キャッシュ制御部112は、所定の判定タイミングになると、ある映像コンテンツ(以下、映像コンテンツAとする)の同時配信数が予め設定しているキャッシュ開始配信数を超えたか否かを判定する(ステップS101)。言い換えると、この判定は、キャッシュデータ格納部113を利用したキャッシュを開始するか否かの判定になっている。
【0039】
キャッシュ制御部112は、同時配信数がキャッシュ開始配信数を超えていなければ、映像コンテンツAに関する映像データ送出部20−nからのデータ取得要求に対して、オリジナルコンテンツ格納部101から取得した映像データを、キャッシュデータ格納部113に格納することなく映像データ送出部20−nに与えて映像再生端末30−nに配信させる(ステップS105)。キャッシュ制御部112は、かかるステップS105の処理を、その時点で映像コンテンツAが配信される全ての映像再生端末30−1〜30−Nに対して並行的に又は順次に実行する。このような処理後には、キャッシュ制御部112は、所定の判定タイミングになると、映像コンテンツAの同時配信数が予め設定しているキャッシュ開始配信数を超えたか否かを判定する次のタイミングを待ち受けることとなる。
【0040】
一方、キャッシュ制御部112は、同時配信数がキャッシュ開始配信数を超えた場合には、映像コンテンツAに関する映像送出データ部20−nからのデータ取得要求に対して、要求された部分の映像データがキャッシュデータ格納部113に格納されているか否かを判定する(ステップS102)。キャッシュ制御部112は、要求された部分の映像データがキャッシュデータ格納部113に格納されていた場合には、キャッシュデータ格納部113から映像データを取得して映像データ送出部20−nに与えて映像再生端末30−nに配信させる(ステップS103)。これに対して、キャッシュ制御部112は、要求された部分の映像データがキャッシュデータ格納部113に格納されていない場合には、オリジナルコンテンツ格納部101から取得して、映像データ送出部20−nに与えて映像再生端末30−nに配信させながら、キャッシュデータ格納部113にも映像データを格納する(ステップS104)。キャッシュ制御部112は、かかるステップS102〜S104の処理を、その時点で映像コンテンツAが配信される全ての映像再生端末30−1〜30−Nに対して並行的に又は順次に実行する。
【0041】
キャッシュ制御部112は、キャッシュ処理を実行している場合において、所定の判定タイミングになると、映像コンテンツAの同時配信数が予め設定しているキャッシュ終了配信数を下回ったか否かを判定する(ステップS106)。言い換えると、この判定は、キャッシュデータ格納部113を利用したキャッシュを終了するか否かの判定になっている。キャッシュ終了配信数は、キャッシュ開始配信数と同じ数であっても良いが、キャッシュ状態への移行と、キャッシュ状態の終了とが頻繁に繰り返さないように、キャッシュ終了配信数をキャッシュ開始配信数より小さく選定しておくことが好ましい。
【0042】
キャッシュ制御部112は、同時配信数がキャッシュ終了配信数を下回っていなければ、引き続き、要求された部分の映像データがキャッシュデータ格納部113に格納されているか否かの判定を実施しながら配信を制御する処理(ステップS102〜S104)に戻る。
【0043】
キャッシュ制御部112は、同時配信数がキャッシュ終了配信数を下回っていれば、映像コンテンツAのキャッシュデータ格納部113に格納されている映像データを削除する(ステップS107)。キャッシュ制御部112は、これ以降のデータ取得については、同時配信数がキャッシュ開始配信数を超えたと判定されるまで(ステップS102)、オリジナルコンテンツ格納部101から取得した映像データをキャッシュデータ格納部113に格納せずに配信させることとなる(ステップS105)。
【0044】
図3〜図5はそれぞれ、キャッシュデータ格納部113へデータが格納される状況を示したものであり、図3より図4の方が、図4より図5の方が時間的に後の状況を示している。図3〜図5は、キャッシュ開始配信数が3本に設定されている例である。映像送出データ部20−1〜20−5が割り当てられている映像再生端末(図3で示していないが端末30−1〜30−5)は、枝番が小さい方が早く配信を要求している。
【0045】
図3は、ある時刻に映像コンテンツAを同時に3本配信しているときの状態である。キャッシュ開始配信数が3本に設定されている状況では、映像コンテンツAを配信している3つの映像送出データ部20−1〜20−3に対し、キャッシュ制御部112は、キャッシュデータ格納部113からではなく、オリジナルコンテンツ格納部101から映像データを取得して供給している。この際には、キャッシュデータ格納部113に対する書込みは実行されない。
【0046】
同時配信数が3本のままで配信が進んでいくと、キャッシュ制御部112は、オリジナルコンテンツ格納部101からの映像コンテンツAの読み出し位置を先頭から末尾の方向へ移動しながら映像データを取得する。
【0047】
図4は、時間が経過して映像コンテンツAの4本目の配信が開始されるときの状態である。キャッシュ制御部112は、同時配信数(=4)がキャッシュ開始配信数(=3)を超えたことにより、映像送出データ部20−1〜20−4に送出する映像データをオリジナルコンテンツ格納部101から取得すると共に、キャッシュデータ格納部113の対応する格納領域w1〜w4に映像データを格納する。
【0048】
図5は、さらに時間が経過して映像送出データ部20−4が読み出す部分が、映像送出データ部20−3への映像データをキャッシュデータ格納部113へ格納した部分r3まで到達した状態である。図5に示す直前には、映像送出データ部20−1〜20−4へ送出しながらキャッシュデータ格納部113へ格納した映像データにより、キャッシュデータ格納部113のr1〜r4の部分に、映像コンテンツAに係る映像データが格納されている。従って、キャッシュ制御部112は、映像送出データ部20−4が配信する映像データは、キャッシュデータ格納部113の区間r3に格納されているため、オリジナルコンテンツ格納部101からではなくキャッシュデータ格納部113から取得する。
【0049】
図5は、新たに映像コンテンツAの配信を開始する映像送出データ部20−5が増え、キャッシュ制御部112が、キャッシュデータ格納部113の区間r4から映像データを取得して映像送出データ部20−5に送出する様子をも示している。
【0050】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態のコンテンツ配信システムによれば、キャッシュの起動後に、同一の映像コンテンツを複数の映像再生端末にそれぞれ配信している際、配信している部分の映像データがオリジナルコンテンツ格納部101から取得したものである場合には並行してキャッシュデータ格納部113に格納するようにしたので、起動から短時間で、映像コンテンツのキャッシュデータの生成と利用とを可能にすることができる。
【0051】
(B)第2の実施形態
次に、本発明によるコンテンツ配信システムの第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0052】
図6は、第2の実施形態のコンテンツ配信システムの構成を示すブロック図である。図6において、第2の実施形態のコンテンツ配信システム2は、オリジナルコンテンツ格納部401、オリジナル配信サーバ402、複数のキャッシュ配信サーバ501〜50M、複数の映像再生端末501−1〜501−a、502−1〜502−b、…、50M−1〜50M−zを有する。
【0053】
オリジナルコンテンツ格納部401は、配信対象の映像コンテンツのオリジナルを格納しているものである。
【0054】
オリジナル配信サーバ402は、各キャッシュ配信サーバ501〜50Mに対して映像コンテンツを配信するものである。オリジナル配信サーバ402は、キャッシュデータ格納部を内蔵し、キャッシュ配信サーバ501〜50Mに対する配信を、第1の実施形態のコンテンツ配信サーバが映像再生端末に配信すると同様な方法で配信するものである。
【0055】
複数のキャッシュ配信サーバ501〜50Mは、例えば、地域毎に設けられているものである。キャッシュ配信サーバ501は、自己が担当する地域に属する映像再生端末501−1〜501−aに対して映像コンテンツを配信するものである。キャッシュ配信サーバ501は、オリジナル配信サーバ402からダウンロードされた映像コンテンツを格納するダウンロードコンテンツ格納部(第1の実施形態のオリジナルコンテンツ格納部101に相当する)の他に、キャッシュデータ格納部を内蔵し、映像再生端末501−1〜501−aに対する配信を、第1の実施形態のコンテンツ配信サーバが映像再生端末に配信すると同様な方法で配信するものである。他のキャッシュ配信サーバ501〜50Mも同様なものである。
【0056】
第2の実施形態のコンテンツ配信システムによれば、オリジナル配信サーバ402からキャッシュ配信サーバ501〜50Mへの配信でキャッシュの起動後に、短時間で、映像コンテンツのキャッシュデータの生成と利用とを可能にすることができる。
【0057】
また、各キャッシュ配信サーバ501、502、…50Mから、映像再生端末501−1〜501−a、502−1〜502−b、…、50M−1〜50M−zへの配信でキャッシュの起動後に、短時間で、映像コンテンツのキャッシュデータの生成と利用とを可能にすることができる。
【0058】
(C)他の実施形態
上記各実施形態では、逐次的にデータを読み出す通常再生を想定した説明となっているが、早送り再生のようにデータを間欠的に読み飛ばすような高速再生についても同様に適用可能である。通常再生時に格納されたデータに対して、高速再生時に読む部分のキャッシュデータの格納を確認し、キャッシュに格納されていればキャッシュから読み出して配信すれば良い。あるいは、キャッシュデータ格納部に、通常再生用のデータを格納する部分と、高速再生用のデータを格納する部分とを設け、通常再生の同時配信数に基づいてキャッシュ処理の実行有無を制御すると共に、高速再生の同時配信数に基づいてキャッシュ処理の実行有無を制御するようにすれば良い。
【0059】
上記第1の実施形態では、キャッシュデータ格納部に映像コンテンツの全てのデータが格納された後でも、ステップS102による格納を確認する判定を行うものを示したが、満杯フラグなどを用意し、満杯フラグが満杯を表しているときには、直ちにステップS103のキャッシュデータ格納部からの読出しを実行するようにしても良い。
【0060】
上記第1の実施形態では、キャッシュ処理を開始するかを決定するキャッシュ開始配信数が固定値のものを示したが、キャッシュ開始配信数を状況に応じて変化させるものであっても良い。例えば、キャッシュデータ格納部を構成するメモリが複数の映像コンテンツで併用される場合において、既に、キャッシュ処理を開始している映像コンテンツの数(若しくは数が属する範囲)をキャッシュ開始配信数に変換するテーブルを設け、このテーブルに従って、適用するキャッシュ開始配信数を定めるようにしても良い。また例えば、キャッシュデータ格納部を構成するメモリの残容量に応じて、適用するキャッシュ開始配信数を定めるようにしても良い。
【0061】
キャッシュ終了配信数についても、状況に応じて変化させるようにしても良い。
【0062】
上記第1の実施形態では、キャッシュ処理を開始するか否かを決定するために用いるパラメータが同時配信数であるものを示したが、これに代え、又は、これに加え、他のパラメータを用いるようにしても良い。例えば、映像コンテンツの先頭から末尾を2つ(3つ以上であっても良い)の区間に分け、先頭側の区間における同時配信数がキャッシュ開始配信数を超えたことを1条件として、キャッシュ処理を開始するようにしても良い。また例えば、最新の要求を含め、所定時間内に増加した配信数が所定数を超えたことを1条件として、キャッシュ処理を開始するようにしても良い。
【0063】
キャッシュ終了条件についても、同時配信数に代え、又は、同時配信数に加え、他のパラメータを適用するようにしても良い。配信が終了した端末の増加率や、配信がまもなく終了する端末数を、終了条件に反映させることができる。
【0064】
上記第1の実施形態では、キャッシュ処理の終了条件が成立すると直ちにキャッシュしていた映像データを消去するものを示したが、終了条件を成立した後、新たに別のキャッシュ処理を開始するタイミングで映像データを消去するようにしても良い。あるいは、所定の待機時間の経過を待ってから映像データを消去するようにしても良い。ここで、所定の待機時間は、例えば、固定時間であっても良く、また、映像コンテンツの先頭から末尾を2つ(3つ以上であっても良い)の区間に分け、末尾側の区間における同時配信数に応じて待機時間を選定するようにしても良い。さらに、映像データの削除は、コンテンツの全区間を同時に消去せずに、配信が終了した先頭側の区間から順次消去するようにしても良い。
【0065】
本発明が対象とするコンテンツは、映像コンテンツに限定されるものではなく、種々のコンテンツを対象とすることができる。例えば、1つのコンテンツ配信システムが複数種類のコンテンツを扱うことができる場合において、コンテンツの種類によって、上述のキャッシュ開始配信数などを変更するようにしても良い。
【符号の説明】
【0066】
1…コンテンツ配信システム、101…オリジナルコンテンツ格納部、110…コンテンツ配信サーバ、111…配信先管理部、112…キャッシュ制御部、113…キャッシュデータ格納部、20−1〜20−N…映像送出データ部、30−1〜30−N…映像再生端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツ配信サーバが、オリジナルコンテンツ格納装置に格納されているコンテンツのデータを配信対象の1又は複数の配信先装置へ配信するコンテンツ配信システムにおいて、
上記コンテンツ配信サーバは、
キャッシュデータ格納手段と、
キャッシュ処理を開始する条件が成立したか否かを判定し、キャッシュ処理を開始する条件の成立前には、そのときの上記各配信先装置に対するコンテンツデータをそれぞれ、上記オリジナルコンテンツ格納装置から取得して配信させ、キャッシュ処理を開始する条件の成立後には、配信すべきコンテンツデータが上記キャッシュデータ格納手段に格納されている上記各配信先装置に対しては、上記キャッシュデータ格納手段からコンテンツデータを読み出して配信させ、配信すべきコンテンツデータが上記キャッシュデータ格納手段に格納されていない上記各配信先装置に対しては、上記オリジナルコンテンツ格納装置からコンテンツデータを取得して配信させると共に、そのコンテンツデータを上記キャッシュデータ格納手段に格納させるキャッシュ制御手段とを有する
ことを特徴とするコンテンツ配信システム。
【請求項2】
キャッシュ処理を開始する条件が、そのときに配信対象である配信先装置の数が、所定値を超えていることであることを特徴とする請求項1に記載のコンテンツ配信システム。
【請求項3】
オリジナルコンテンツ格納装置に格納されているコンテンツのデータを、配信対象の1又は複数の配信先装置へ配信するコンテンツ配信サーバにおいて、
キャッシュデータ格納手段と、
キャッシュ処理を開始する条件が成立したか否かを判定し、キャッシュ処理を開始する条件の成立前には、そのときの上記各配信先装置に対するコンテンツデータをそれぞれ、上記オリジナルコンテンツ格納装置から取得して配信させ、キャッシュ処理を開始する条件の成立後には、配信すべきコンテンツデータが上記キャッシュデータ格納手段に格納されている上記各配信先装置に対しては、上記キャッシュデータ格納手段からコンテンツデータを読み出して配信させ、配信すべきコンテンツデータが上記キャッシュデータ格納手段に格納されていない上記各配信先装置に対しては、上記オリジナルコンテンツ格納装置からコンテンツデータを取得して配信させると共に、そのコンテンツデータを上記キャッシュデータ格納手段に格納させるキャッシュ制御手段と
を有することを特徴とするコンテンツ配信サーバ。
【請求項4】
オリジナルコンテンツ格納装置に格納されているコンテンツのデータを、配信対象の1又は複数の配信先装置へ配信するコンテンツ配信サーバであって、キャッシュデータ格納手段となるメモリを有するコンテンツ配信サーバに搭載されているコンピュータを、
キャッシュ処理を開始する条件が成立したか否かを判定し、キャッシュ処理を開始する条件の成立前には、そのときの上記各配信先装置に対するコンテンツデータをそれぞれ、上記オリジナルコンテンツ格納装置から取得して配信させ、キャッシュ処理を開始する条件の成立後には、配信すべきコンテンツデータが上記キャッシュデータ格納手段に格納されている上記各配信先装置に対しては、上記キャッシュデータ格納手段からコンテンツデータを読み出して配信させ、配信すべきコンテンツデータが上記キャッシュデータ格納手段に格納されていない上記各配信先装置に対しては、上記オリジナルコンテンツ格納装置からコンテンツデータを取得して配信させると共に、そのコンテンツデータを上記キャッシュデータ格納手段に格納させるキャッシュ制御手段として機能させる
ことを特徴とするコンテンツ配信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−195854(P2012−195854A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59662(P2011−59662)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(308033722)株式会社OKIネットワークス (165)
【Fターム(参考)】