説明

コンデンサーの故障検出

【解決手段】 本発明の進歩的な技術は、磁気装置を監視する方法と、装置と、コンピューター可読媒体とを含む。このような1装置は、磁界を生成する磁気コアと、電源と、前記電源によって充電され、前記磁気コアにパルスを印加するコンデンサーバンクとを含む。また、前記装置は、さらに、充電中の前記コンデンサーバンクの充電応答を測定し、前記測定された充電応答が所定の充電応答の所定の公差内であるか否かを決定するプロセッサーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年2月20日付で出願された米国特許出願第11/676,571号明細書に対し、合衆国法典第35巻第120条に基づく優先権を主張するものであり、前記明細書の全文は参照によりここに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
数多くの病気は、患部に磁場を印加することによって治療され、および/または診断される。神経細胞および筋肉細胞は電気信号を伝達し、電磁的刺激に反応する生体回路である。通常の導線ループを磁場に通過させる、若しくは通常の導線ループを変動磁場の存在下に置くと、前記導線に電流が誘導される。
【0003】
これと同じ原則が伝導性の生体組織にも適用される。変動磁場を身体の一部に印加すると、神経細胞が脱分極し、刺激される。この刺激を受けた神経細胞に関連する筋肉は、あたかも通常の要因によって前記神経細胞が発火しているときと同じように収縮する。
【0004】
神経細胞すなわちニューロンを様々な方法で刺激することが可能であり、例えば経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation:TMS)により経皮的にそれを行うことができる。TMSは急速に変動する磁場を用いることにより、皮膚を切開または貫通することなく神経細胞に電流を誘導する。神経は、神経のタイプおよび周辺組織の局所pHに依るが、前記神経内の膜電位が通常の負の環境レベルである約−90mVより高まると「発火」すると言われる。
【0005】
磁気刺激の使用は、負傷または麻痺した筋肉群のリハビリテーションに非常に効果的である。大腿または腹部のような大筋肉群の刺激のほかに、心臓の刺激も実験的に行われてきた。CPRまたは電気的刺激は心臓全体に一度に激しい刺激を与える点で望ましくないため、心臓の磁気刺激はそれらの方法に勝るものとして実証される可能性がある。
【0006】
磁気刺激の効果が実証されつつあるもう1つの分野は、脊椎の治療である。脊髄は、椎骨に囲まれているため到達するのが困難である。背中の神経(例えば腰部疼痛の原因となる神経)を通じて伝わる痛みの伝達を阻止するために、磁気刺激を用いることができる。
【0007】
また、磁気刺激は、主に神経組織から成る脳の部位の刺激にも効果的であることが実証済みである。特に関心が持たれている分野は、うつ病の治療である。アメリカ合衆国だけでも、2,800万人を超す人々が何らかの神経精神病を患っていると言われる。このような神経精神病には、うつ病、統合失調症、躁病、強迫性障害、パニック障害、およびその他の状態が含まれる。うつ病は一般によくある精神病であり、アメリカ合衆国に1,900万人、世界には3億4,000万人のうつ病患者がいる可能性があると考えられている。
【0008】
現代医学によってうつ病患者には数多くの治療選択肢があり、これらには、いくつかに分類される坑うつ薬(例えばSSRI、MAOI、および三環系抗うつ薬)、リチウム、および電気痙攣療法(electroconvulsive therapy:ECT)が含まれる。しかし、多くの患者がうつ病の症状から十分に解放されていない。現在に至るまで、ECTは治療に対する抵抗性の高いうつ病に有効な治療法であるが、激しい副作用のためこの処置を受けない患者が多い。
【0009】
最近、反復経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)は、従来の方法に反応しない患者に有意な坑うつ効果があることが示された。基本的にrTMSは、前頭前皮質に繰り返し無痙攣性刺激(subconvulsive stimulation)を適用することにより皮質の神経細胞膜を脱分極させるものである。前記膜は、非侵襲的に印加される急速変動磁場の結果として得られる、1V/cmを超過する小電場の誘導によって脱分極される。
【0010】
上述の治療法の何れかに関連して、神経細胞に電流を誘導するために必要な前記急速変動磁場を生成するために、通常、磁気刺激装置には1若しくはそれ以上のエネルギー蓄積コンデンサーが含まれる。前記コンデンサーによって、前記磁気刺激装置における磁気コアなどの磁界発生器に前記所望の治療法に要求される方法で繰り返しパルスを印加するために必要な大電力および急速な再充電時間が提供される。このように配備された前記コンデンサーは、前記磁気パルスを患者に提供する前記磁気コアを直接駆動するので、静電容量の如何なる変化によっても前記患者に供給されるパルスの磁気エネルギーが直接変化する。
【0011】
従って、単一のコンデンサーを含む磁気刺激装置内で、前記単一コンデンサーが完全に故障した(例えば開路状態の)場合は、故障は容易に検出できる(前記磁気コアがパルスを印加しない、または生成されたパルスが予期されるパルスとは著しく異なるため)。従来の起動診断ルーチンは、通常この種の故障を検出できる。もしくは、これらの故障は治療提供者には明白であるかもしれない。例えば、前記磁気コアによって生成された磁界パルスを検出するセンサー(即ち「磁場センサー」)の示度は、コンデンサーの故障の結果、前記生成された磁気パルスが1若しくはそれ以上の所望の特性を有しないと決定するために使用できる。
【0012】
しかし、状況によっては、1若しくはそれ以上のコンデンサーの性能が時間と共に僅かに劣化するかも知れない。例えば、1若しくはそれ以上のコンデンサーが過度のパラメータードリフトを起こすかもしれない。さらに、通常並列に接続された2以上のコンデンサーが、多重コンデンサーバンク内に配列されているかもしれない。このような状況において単一のコンデンサーが故障すると(例えば開路となると)、前記バンクの総静電容量が僅かな比率で減少するだけかもしれない。前記磁場検出装置は幅広い合格/不合格の閾値を有し、そのため構成要素の公差および前記磁場センサーの位置のばらつきが許容される場合があるので、上記のような状況においては、前記生成されたパルスは、従来の磁場センサーでは検出できない程度に前記所望のパルスとは微妙に異なりうる。
【0013】
その結果、前記磁気装置が正しく動作しているように見えるが、実際には装置の公表仕様を外れた磁気パルスを生成している可能性があり、結果的に前記患者に不適切な治療を施す可能性がある。患者に不適当な磁気パルスを供給することによって前記磁気刺激治療に悪影響を及ぼすことがある。例えば、実際にはその意図された治療が前記患者に供給されていないときに、前記治療提供者は、前記患者が前記治療に応答していないと考えるかもしれない。このように、前記治療提供者が誤った情報に基づいて治療の判断をする結果を招きかねない。
【0014】
さらに、前記生成された磁気パルスが公差内であるか否かを決定する従来の機構は、大雑把に磁場検出するレベルなので、治療提供者に提供できる結果の種類が「合格/不合格」の決定のみである場合もある。このように、磁気刺激装置の故障に直面した治療提供者は、前記磁気装置が実際にどれほど公差から外れているかを知らず、前記治療を終えるか、予備の装置があるならばそれを使用しなければならない。通常、どちらの手順も不便であり、また不経済となる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の欠点および短所を考慮して、磁気装置を監視する方法、装置、およびコンピューター可読媒体を提供する。このような1装置は、磁界を生成する磁気コアと、電源と、前記電源によって充電され、前記磁気コアにパルスを印加するコンデンサーバンクとを含む。また、前記装置は、さらに充電中の前記コンデンサーバンクの充電応答を測定し、前記測定した充電応答が所定の充電応答の所定の公差内であるか否かを決定するプロセッサーを含む。
【0016】
1方法において、磁気コアにパルスを印加して磁気装置内に磁界を生成するようになっているコンデンサーバンクの充電工程が検出される。前記充電工程中の前記コンデンサーバンクの充電応答が測定され、所定の充電応答と比較される。前記測定された充電応答が前記所定の充電応答の所定の公差内であるか否かが決定される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】図1A〜Bは、ある実施形態の態様を実施できる磁気装置の例を図示する。
【図1B】図1A〜Bは、ある実施形態の態様を実施できる磁気装置の例を図示する。
【図2】図2は、ある実施形態による1若しくはそれ以上のコンデンサーを試験する方法の例を図示するフロー図である。
【図3】図3は、ある実施形態によるコンデンサー充電応答の例のプロットである。
【図4】図4は、ある実施形態による1若しくはそれ以上のコンデンサーを試験する方法の別の例を図示するフロー図である。
【図5】図5は、ある実施形態によるコンデンサー放電応答の例のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で開示された実施形態の要旨を法的要件を満たすよう具体的に説明する。ただし、この説明自体は、本特許の範囲を限定することを目的としたものではない。むしろ、本発明者らは、既存または将来の他の技術を参照することで、請求の範囲に記載された対象が他の方法でも実施でき、本明細書で説明するものと類似した異なる工程、または要素を含むよう企図している。さらに、本明細書では、使用される方法の異なる観点を暗示するため用語「工程」を使用する場合があるが、この用語は、個々の工程の順序を明示的に説明しない限り、本明細書に開示する種々の工程間で任意の特定順序を示唆すると解釈すべきものではない。
【0019】
概要
1実施形態において、磁気刺激装置のコンデンサー充電回路の出力には、帰還回路が含まれている。前記帰還回路は、制御回路への出力に関する情報を提供する。前記制御回路は、充電期間中の前記コンデンサー充電回路内の充電応答(例えば、前記コンデンサーのdV/dt、それから得られた静電容量の値など)を測定する。このような測定は繰り返される充電期間に亘って行われる場合があり、または単一の測定に基づくこともある。別の1実施形態において、前記制御回路は、放電期間中の前記コンデンサー充電回路内の放電応答を測定する。さらに別の実施形態において、前記制御回路は、前記コンデンサー充電回路の充電中または放電中の電源の応答を測定する。
【0020】
前記測定が完了すると、前記制御回路は、前記測定値を校正表の中の基準値と比較する。前記基準値は、理想的なコンデンサーまたは電源の応答に基づいてもよく、または通常のコンデンサーまたは電源の公差のばらつきを把握するために、校正過程中の前記実際のコンデンサーまたは電源の応答に基づいてもよい。
【0021】
前記測定された充電応答または放電応答が前記校正表の中の値の所定の公差内ではない場合、前記磁気刺激装置は装置の操作者にそれを通知することができる。さらに、前記磁気刺激装置は、例えば、前記装置の設定を修正して前記公差外れ状態を補正するオフションなどの選択肢を前記操作者に提供してもよい。
【0022】
磁気装置の概要
ここで、文脈を説明する目的で、前記種々の実施形態の態様を実施できる磁気装置の動作および用途の概要を説明する。当業者には周知のように、導体に誘導される電場の大きさは、その導体を横切る磁束密度の変化率に比例する。電場が導体中に誘導されると、この電場に対応する電流が導体内に生じる。この電流は、任意の時点における電場のベクトルと同方向に流れる。ピーク電場は磁束密度の経時的変化率が最大のときに起こり、その他の時間ではそれより小さくなる。磁気パルスの適用中、電流は磁場を維持する方向に流れる(レンツの法則)。
【0023】
この原理は、電場を誘導するため種々の装置で活用でき、そのような装置は種々の用途で使用できることが理解されるであろう。例えば、磁気装置は生体構造などの電気刺激に使用できる。本明細書の説明は、生体組織の磁気刺激に関連して使用される磁気装置に重点を置いているが、このような議論は説明および明瞭化のためだけに限定されていることが理解されるであろう。これを受け、一実施形態は、いかなる分野の磁気装置のいかなる用途にも同等に適用できることが理解されるであろう。このため、磁気装置に関する本明細書の説明は、本発明の実施形態を医療等の用途だけに限定するものと解釈されるべきではない。
【0024】
ここで生体構造の電気刺激の文脈に移るが、身体構造の特定部分(神経、組織、筋肉、脳など)は導体としての機能を果たし、電場が印加されると電流を伝達する。これらの生体構造の一部に時間変化する磁場(パルス磁場など)を印加すると、その生体構造の一部に経皮的に電場を生成することができる。例えばTMSの場合では、頭蓋骨を通して時間変化する磁場を印加することにより、脳組織内に電場、そして電流を生じさせることができる。誘導される電流に十分な密度があれば、膜のナトリウムチャネルが開き活動電位応答が生じる程度まで、神経細胞の活動電位が低下しうる。次に電流の衝撃が軸索膜に沿って伝播し、神経伝達物質の変調を介して他の神経細胞へ情報が伝達される。このような磁気刺激は、皮質組織内のグルコース代謝と局部血流量に急速に影響することが示されている。大うつ病性障害の場合は、前頭前皮質とそれにつながる辺縁系構造とにおける神経伝達物質の調節不全および異常なグルコース代謝が最も可能性の高い病態生理であると考えられる。磁気刺激を前頭前皮質に繰り返し与えると、神経伝達物質の濃度および代謝に慢性的な変化が生じてうつ病が緩和されうる。
【0025】
上記と同様に、非皮質神経細胞(脳神経、末梢神経、感覚神経(知覚神経)など)も誘導電場に刺激される。パルス磁場に誘導された刺激への応答における応答時間および伝導速度を観察することにより神経病理を診断するため、末梢神経を意図的に刺激する技術が開発されてきている。末梢神経または脳神経に与える誘導電場が、非常に強力であるか、あるいはそのような神経の小領域に集中した場合は、不快感および/または痛みが生じるおそれがある。この不快感は、罹患神経束の感覚神経を意図的に過剰刺激して外部からの痛み刺激に応答しなくなるようにする、あるいは痛みの感覚を起こしている誘導電場の強度および集束度を低下させることにより軽減することができる。
【0026】
上記のとおり、経皮的磁気刺激は、うつ病治療だけに限定されないことを理解すべきである。うつ病のほか、本発明に係る経皮的磁気刺激の方法および装置は、てんかん、統合失調症、パーキンソン病、トゥレット症候群、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)、多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)、アルツハイマー病、注意欠陥/多動性障害、肥満症、双極性障害/躁病、不安障害(広場恐怖症を伴う、または伴わないパニック障害、対人恐怖症(別名「社会不安障害」)、急性ストレス障害、全般性不安障害など)、心的外傷後ストレス障害(DSMにおける不安障害の1つ)、強迫性障害(DSMにおける不安障害の1つ)、痛み(片頭痛、三叉神経痛のほか、糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛、また線維筋痛症や局所性筋筋膜性疼痛症候群などの特発性疼痛性障害による痛みなどの神経因性疼痛を含む慢性疼痛性障害など)、脳卒中後のリハビリテーション(神経可塑性の誘導)、耳鳴り、融合を促進するための移植神経の刺激、物質関連障害(アルコール、コカイン、アンフェタミン、カフェイン、ニコチン、大麻などに関する依存症、乱用、離脱(禁断症状)など)、脊髄損傷および脊髄再生/リハビリテーション、脳卒中、頭部損傷、睡眠遮断逆転、原発性睡眠障害(原発性不眠症、原発性睡眠過剰(原発性過眠症)、概日リズム睡眠障害)、認知能力の向上、認知症、月経前不快気分障害(PMS、薬物送達システム(薬物への細胞膜透過性を変化させる)、タンパク質合成の誘導(転写と翻訳の誘導)、吃音症、失語症、嚥下障害、本態性振戦、および/または摂食障害(過食症、無食欲症、暴食など)などに罹患した患者の治療に使用することができる。
【0027】
磁気刺激装置の例
強磁性コアは、磁気装置に連結して磁場を生成するために使用することができる。一部の実施形態において、そのような磁場は、例えば経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation:TMS)、反復経頭蓋磁気刺激(Repetitive TMS:rTMS)、磁気発作治療(Magnetic Seizure Therapy:MST)、末梢神経の不快感を軽減するなどの経皮的磁気刺激を実施することが目的である可能性がある。上述したように、以下の例でも説明および明瞭化のためTMSおよびrTMSの実施形態に関連して説明しているが、上記のタイプ全てを含め、いかなるタイプの経皮的磁性刺激も、本発明の一実施形態に従った実施が可能である。また上記でも説明したが、本発明の実施形態は経皮的磁気刺激に限定されるものではなく、一実施形態は、いかなる目的で磁場を生成する磁気装置に関しても使用することができる。
【0028】
さらに、本明細書で提示する実施形態は、強磁性コア磁気刺激装置を使用するものと限定されるものではなく、例えば空気(空芯)など他のコア材料も使用可能である。したがって、本明細書における説明では、説明および明瞭化のためのみに強磁性コア磁気刺激装置について記載している。一実施形態では、強磁性コアは略半球形であり、別の一実施形態では、少なくとも0.5テスラで磁気飽和に至る高可飽和磁性材料が強磁性コアに含まれる。一部の実施形態では、強磁性コアは、治療領域で磁場分布を最適化する形状であってもよい。他の治療形態の治療領域(末梢神経における不快感の軽減など)は、程度の差はあるがTMSの場合より深部になる可能性がある。
【0029】
図1A〜Bは、装置の例100を図示する図である。磁気装置100内で、電源116と、コンデンサーバンク114と、スイッチ112と、TMSコントローラー120とが治療用コイル110への電力信号を提供する電気回路を形成する。前記電力信号は、電界および/または磁界を生成することが可能な任意の時間変化的電気信号であってよい。前記治療用コイル110を使用して、経頭蓋磁気刺激法(TMS)および/または反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)を実施することができる。
【0030】
電源116は、治療用コイル110に意図する目的(TMS、rTMS、MST、またはその他任意の種類の用途であれ)のための磁界を生成するのに十分なエネルギーを提供する任意の種類の電源であってよい。例えば、電源116は、従来の120VACまたは240VACの主電源であってよい。コンデンサーバンク114は、治療用コイル110にパルスを印加するためのエネルギー蓄積を提供する。本明細書内ではコンデンサーの「バンク」として参照されるものの、幾つかの実施形態において、コンデンサーバンク114は、単一のコンデンサーから構成されてもよい。このように、本明細書内のコンデンサーの「バンク」の参照は、前記バンク114内に1より以上のコンデンサーの存在を必要としないことを理解すべきである。
【0031】
120VACの電源などのみを利用できる用途において、例えばコンデンサーバンク114を使用してもよい。通常の医院では、より高出力の240VACまたは3相電源よりはむしろ従来の(例えば120VACなど)の電源を備えている。コンデンサーバンク114を使用して、治療用コイル110に電源116単独から直接前記治療用コイルを駆動することによって可能な電流よりも大きなピーク電流を生成することができる。例えば、電源116は、その入力における120VACを、その出力において、1500VDCで1アンペアDCを生成可能なDC出力を有する1500VDCに変換することができる。ある実施形態において、コンデンサー114を追加することによって、治療用コイル116に、電源116によって生成される1アンペアよりもはるかに大きなピークパルス電流を流すことが可能となる。このようなある実施形態において、コンデンサー114を、治療用コイル110に供給されるパルス間の時間内に電源116の出力電圧まで充電することができる。スイッチ112を起動して治療用コイル110内に前記パルスを生成すると、コンデンサー114に蓄積された電荷から治療用コイル110に、1000Aを超えるピーク電流を供給することができる。このピーク電流の大きさは、主として治療用コイル110のインダクタンス、および前記パルスが印加される前のコンデンサー114に蓄積された静電容量の値および電圧レベルによって決定できる。コンデンサーバンク114は、利用可能な電源116の種類に拘らずに使用できることが理解されるであろう。例えば、治療用コイル110に入力する所望のピーク電流を生成するための電源116が、例えば240VACまたは3相電源である状況において、コンデンサーバンク114を使用できる。
【0032】
コンデンサーバンク114は、装置100に必要な電力レベル、充電時間、および/またはパルスの種類に適切な、任意の数および/または任意の種類のコンデンサーを含んでもよい。例えば、限定的ではない1実施形態において、8個の10μFのコンデンサーを並列に接続して総容量80μFを得ることができる。上述のように、ある実施形態に関連して、例えば80μFの単一のコンデンサーを使用することもできる。
【0033】
スイッチ112は、コンデンサーバンク114および/または電源116からの電力を接続し切断することによって治療用コイル110を操作することができる任意の種類の電気的開閉装置であってよい。例えば、スイッチ112は、電源116からの電力を切り替えてコンデンサーバンク114を充電するように操作することができる。また、スイッチを使用して治療用コイル110を通してコンデンサーバンク114を放電することで、例えばTMS治療に使用できる磁界を生成することもできる。TMSコントローラー120は、スイッチ112および/または電源116を制御する任意の種類のハードウェア、ソフトウェア、またはその組み合わせであってよい。
【0034】
図1Bもまた、ある実施形態をより完全に説明するために、装置100を図1Aよりも詳細に図示した図である。実施形態は、図1Aまたは1Bに示したような装置100に限定されるものではなく、その他の構成要素の構成もこのような実施形態と同様であることが理解されるであろう。
【0035】
電源116と、コンデンサーバンク114と、スイッチ112と、TMSコントローラー120と、治療用コイル110とは、図1Aに関連して上記に説明した通りである。ある実施形態において、帰還回路の構成要素が、デジタルインターフェース130A〜Bと、通信インターフェース140と、A/Dコンバーター142と、タイマー144と、コンデンサー監視プロセッサー146と、切り替えインターフェース150と、コンデンサー切り替えネットワーク162と、バックアップ用コンデンサーバンク160とから構成されるものとして図1Bに図示されている一方、これらの構成要素の何れかまたは全ては、単一の磁気装置に統合されていてもよい。このように、これらの構成要素は説明の目的で別個のものとして図示されており、本発明の実施形態(並びにその中で使用される帰還回路の種々の構成)は、図1Bに示した構成に限定されるものではないことを理解すべきである。さらに、種々の実施形態では、装置100内に、図1Bに示されたよりも多くの、または少ない構成要素が存在する可能性が予期され、従って、図1B内のこれらの構成要素の何れの存在も、実施形態を図示された構成に限定するものではない。さらに、デジタルインターフェース130A〜B、通信インターフェース140、A/Dコンバーター142、タイマー144、コンデンサー監視プロセッサー146、切り替えインターフェース150、コンデンサー切り替えネットワーク162、およびバックアップ用コンデンサーバンク160の何れかまたは全てを、ハードウェアおよび/またはソフトウェアの任意の組み合わせとして実施してもよい。例えば、上記の構成要素の何れも、コンピューター可読媒体(例えば、CD−ROM、DVD、符号化された信号など)に記憶されたコンピューター可読命令として実施してもよい。
【0036】
電源116およびTMSコントローラー120とそれぞれインターフェースするために、デジタルインターフェース130A〜Bが提供されている。1実施形態において、電源116およびTMSコントローラー120の両方がデジタル通信可能であってよく、従って、デジタルインターフェース130A〜Bと接続されて装置100のその他の構成要素と通信可能であってよいことが理解されるであろう。別の実施形態において、電源116およびTMSコントローラー120の1若しくは両方がアナログ通信のみ可能であってもよく、この場合、装置100のその他の構成要素とこのような通信を可能とするために、アナログ/デジタル(A/D)コンバーターが必要となる場合もある。例えば、前記コンデンサー電圧の減衰の表示を、A/Dコンバーター142に供給してもよい。通信インターフェース140は、電源116と、TMSコントローラー120と、コンデンサー監視プロセッサー146との間の通信を可能とする。さらに、通信インターフェース140は、装置100と製造者や保守施設などとの間の通信を可能とする。このような実施形態において、通信インターフェース140自体、または通信インターフェース140が利用できる構成要素は、例えば電話回線、インターネット(ケーブルモデム、T1接続、デジタル加入者回線など)、イントラネットなどのような任意の種類の通信チャンネルを通じて通信するようになっていてもよい。別の実施形態において、通信インターフェース140は、RS232準拠のインターフェースなどであってもよい。
【0037】
コンデンサー監視プロセッサー146は、コンデンサーバンク114の状態を(例えば充電応答という観点から)監視する。1実施形態において、コンデンサー監視プロセッサー146は、Microchip PICまたはFreescale 68HC08ファミリーのコントローラーなどのマイクロコントローラーであってよい。1実施形態において、コンデンサー監視プロセッサー146(またはコンデンサー監視プロセッサー146と動作可能に連通しているメモリー)は、コンデンサーバンク114に関する情報を記憶してもよい。例えば、このようなメモリー(明確にするために図1Bには図示せず)は、充電中のコンデンサーバンクの許容可能なdV/dt応答などの動作規格を含んでもよい。このような情報は、図2および図3に関連して以下に述べるように使用してもよい。コンデンサー監視プロセッサー146は、図2および図3に関連して以下に述べるように、A/Dコンバーター142を使用して充電中および放電中のコンデンサーバンク114を監視してもよい。このような監視に関連して、コンデンサー監視プロセッサー146は、タイマー144を使用してコンデンサーバンク114の充電時間の所定の部分を測定し、コンデンサー監視プロセッサー146にタイミング測定機能を提供してもよい。
【0038】
コンデンサーバンク114が規格内で動作しなくなった場合に1若しくはそれ以上のバックアップ用コンデンサーバンク160を利用できるある実施形態において、切り替えインターフェース150と、コンデンサー切り替えネットワーク162と、バックアップ用コンデンサーバンク160とを使用してもよい。このように、切り替えインターフェース150が、コンデンサー切り替えネットワーク162を通じてコンデンサーバンク114と1若しくはそれ以上のバックアップ用コンデンサーバンク160との間を切り替える役を果たしてもよい。
【0039】
また、図1Bは、抵抗器として作用する任意の構成要素である抵抗器115を含み、その結果、抵抗器115は、1若しくはそれ以上の抵抗器および/またはその他の構成要素を含んでもよい。抵抗器115は、図4において以下に述べる実施形態に関連して、コンデンサーバンク114を放電させる役を果してもよい。抵抗器115は、主として試験中のコンデンサーバンク114を放電する目的を有してもよく、1若しくはそれ以上の他の機能を有してもよい。抵抗器115は、1実施形態において、抵抗器115が使用されていないときに抵抗器115を磁気装置100の1若しくはそれ以上の構成要素から電気的に切断することのできる開閉部品を含んでもよく、またはそれによって抵抗器115を制御してもよい。
【0040】
以下の説明の中で、適宜、図2および図3への参照がなされる。図2はある実施形態による方法の例200を図示したフロー図であり、図3はコンデンサーバンク内に蓄積された電荷のプロットの例310である。上述のように、コンデンサーバンクは1若しくはそれ以上のコンデンサーを含んでもよい。このように、プロット310は、3回の充電期間中および2回の放電期間中の磁気装置内のコンデンサーバンクの蓄積電荷を表す。前記蓄積電荷はそのY軸302上に電圧として図示され、時間はそのX軸301上に表示されている。
【0041】
プロット310の始点322aと終点324a間の部分である区間320aは、前記コンデンサーバンクの充電応答の区域を表す。区間320aは、前記コンデンサーバンクのdV/dtを比較的容易に決定できるように、プロット310の実質的に線形である部分を捉えるように選択してもよい。プロット310の充電期間内の他の区域を選択してもよいが、その区域が実質的に線形ではない場合、前記コンデンサーバンクのdV/dtの計算はより複雑となる場合があることが理解されるであろう。このように、区間320aは、前記コンデンサーバンクの充電時間よりも短い期間を含んでもよい。
【0042】
一連の充電および放電期間を図示するために、図3には、区間320b〜cおよび区間330a〜bをも示す。区間320b〜cは、前記コンデンサーバンクの充電応答の区域を図示する。区間320bはプロット310の始点322bと終点324b間に位置する部分であり、区間320cはプロット310の始点322cと終点324c間に位置する部分である。コンデンサーの放電は、区間330a〜bとして図示されている。区間330aは、プロット310の始点332aと終点334a間の部分である。同様に、区間330bは、プロット310の始点332bと終点334b間の部分である。
【0043】
1実施形態において、方法200は、例えば起動ルーチンの一部のような前記磁気装置の実際の動作の前に行ってもよい。別の実施形態において、方法200は、動作中に、または停止ルーチンの一部として行ってもよい。例えば、方法200がTMS装置に関連して用いられる実施形態において、方法200は起動ルーチン中に実行してもよく、次に、前記TMS装置が確実に規格内に維持されるように、治療中に継続して実行してもよい。
【0044】
工程201において、コンデンサー充電サイクル(例えば区間320a〜cの1つ)が検出される。このような検出は、例えば前記コンデンサーバンク内の蓄積電荷(図3にプロット310として図示)が所定の速度で増加している(例えば前記コンデンサーバンクのdV/dtが所定の値に達するのを検出するなど)ことの決定によって発生する。もしくは、図1Bに関連して上述したようなタイマー144などのタイマーを使用して、プロット310の区間320a〜cを選択してもよい。例えば、このようなタイマーは、区間330a〜bとして図示された電圧降下などの所定の電圧降下によって始動してもよく、プロット310の区間320a〜cを選択するように所定の期間に設定できる。
【0045】
工程203において、前記コンデンサーの充電が時間の関数として測定される。1実施形態において、前記コンデンサーバンクのdV/dtは、1若しくはそれ以上の区間320a〜cについて測定される。1実施形態において、区間320a〜cの各々は、各充電曲線の共通の部分を表すように選択されることが理解されるであろう。工程205において、所定の数のサンプルが読み取られたか否かが決定される。例えば、1実施形態において単一の区間320aを測定してもよい一方、別の実施形態において複数の区間320a〜cを測定して平均を得てもよい。例えば、雑音およびその他の間欠的な現象を除去するために、複数のサンプルを使用してもよい。
【0046】
工程209において、前記計算された静電容量が所定の規格/公差内であるか否かが決定される。このような決定は、前記測定されたdV/dtを装置のメモリーに記憶された校正表内に格納された所定のdV/dtと比較することによって行うことができる。例えば、校正表は、動作中の正確に故障を決定するのを容易にするために、装置の製造過程で生成できる。この校正表は、製造過程での1若しくはそれ以上の充電電圧におけるコンデンサーバンクの充電時間を測定することによって生成することができる。これらの測定値は、エネルギー蓄積静電容量の購入品の公差、および充電用電源の出力容量の購入品の公差などの通常の製造公差を計上するための合格/不合格限界を調節するために使用できる。あるいは、(例えば、前記測定されたdV/dt、および前記コンデンサーバンクを充電するために使用される電源の出力特性に関する知識を使用して)前記コンデンサーバンクの静電容量を計算することもできる。次に、この計算された静電容量を、例えば通常動作の静電容量を収容している校正表と比較することができる。
【0047】
工程209において、前記計算されたdV/dtが所定の規格/公差内であると決定されると、方法200は工程211に進み、例えば磁気装置の動作が継続され(方法200が動作中に実行されている場合)、または許可される(方法200が起動、自己試験、または校正のシーケンスの一部として実行されている場合)。
【0048】
工程209において、前記計算されたdV/dtが所定の規格/公差内ではないと決定された場合、方法200は工程213に進み、前記磁気装置の操作者に公差外れ状態を通知することができる。必要に応じて、その他の情報を表示し、および/またはディスプレイ(明確にするために図2には図示せず)上にオプションを提示してもよい。1実施形態において、このようなディスプレイは、従来のものであってよい。例えば、前記磁気装置の設定を修正するためのオプションを提示してもよい。このようなオプションは、例えば電圧を上げる、前記電源からの電力信号の特性を変更する、など、前記コンデンサーバンクの公差外れ状態の補正をある程度許可してもよい。別の実施形態では、予備のコンデンサーバンクを利用でき、従って、前記予備のコンデンサーバンクへの切り替えに関して前記操作者にオプションまたは指示を提示してもよい。工程213は、さらに(またはその代わりに)業務連絡を含む。このような業務連絡は電話回線またはその他の電子通信路(例えばインターネット接続による電子メールのメッセージなど)を介して自動的に行うことができる。このようにすれば、前記磁気装置を修理し、または交換するための迅速な業務連絡を整備できる。
【0049】
工程215において、継続動作を許可することができるか否かを決定することができる。例えば、前記磁気装置の設定に修正がなされた場合、工程215の決定においては、前記コンデンサーバンク、前記生成された磁界、または1若しくはそれ以上の他のパラメーターをテストして前記修正によって前記公差外れの状態を十分に対処したか否かを決定する。その場合、方法200は終了するか、または工程201で、再度試験の開始を繰り返す。工程215で継続動作を許可できないと決定された場合、前記磁気装置は動作を停止し、併せて継続動作が許可されないことを前記操作者に警告する。例えば、前記磁気装置は、補正の量に拘らず良好な磁界を生成できず、従って前記磁気装置が治療動作を停止すべきであると決定する場合がある。
【0050】
以下の説明の中で、適宜、図4および図5への参照がなされる。図4は、ある実施形態による方法の例400を図示したフロー図で、図5は、コンデンサーバンク内の蓄積電荷のプロットの例500である。上述のように、コンデンサーバンクは1若しくはそれ以上のコンデンサーを含んでもよい。このように、プロット500は、磁気装置内のコンデンサーバンクの、単一の充電期間520の間、中間の休止期間510の間、および放電期間530の間の蓄積電荷を表す。前記蓄積電荷は、そのY軸502上に電圧として図示され、時間はそのX軸501上に表示されている。
【0051】
プロット500の始点522と終点524間の部分である区間520は、前記コンデンサーバンクの充電応答の区域を表す。区間520は、前記コンデンサーバンクのdV/dtを比較的容易に決定できるように、プロット500の実質的に線形の部分を捉えるように選択してもよい。プロット500の充電期間内のその他の区域を選択してもよいが、前記区域が実質的に線形でない場合、前記コンデンサーバンクのdV/dtの計算がより複雑となる場合があることが理解されるであろう。このように、区間520は、前記コンデンサーバンクの充電時間よりも短い期間を含んでもよい。
【0052】
プロット500の始点512と終点514間の部分である区間510は、前記コンデンサーバンクの休止応答の区域を表す。区間510によって表されるこの期間の間、前記コンデンサーバンクの電圧レベルは、電圧垂下513によって表されるように、「垂下」し、または時間と共にゆっくりと下降する。このような垂下は、前記コンデンサーバンクの(または前記コンデンサーバンク内のコンデンサーの)欠陥または劣化に起因して、またはその他の要因に起因して発生する場合がある。コンデンサーの放電は、区間530として図示される。区間530は、プロット500の始点532と終点534間の部分である。区間530によって表される放電は、例えば、図1Bに関連して上記に説明したような試験用抵抗器115を通じて行うことができる。もしくは、前記放電は、治療用コイル110などを通じて行ってもよい。
【0053】
1実施形態において、方法400は、例えば起動ルーチンなどの一部として、前記磁気装置の実際の動作以前に実施してもよい。別の実施形態において、方法400は、動作中に、または停止ルーチンの一部として実施してもよい。例えば、TMS装置に関連して方法400が用いられるある実施形態において、方法400を起動ルーチン中に実施し、次に、前記TMS装置が確実に規格内に維持されるように、治療中に継続して実施してもよい。
【0054】
工程401において、試験手順が始動する。工程402において、前記コンデンサーの充電が時間の関数として測定される。1実施形態において、区間520について、前記コンデンサーバンクのdV/dtが測定される。工程403において、前記計算された静電容量が所定の規格/公差内であるか否かが決定される。このような決定は、例えば図2に関連して上述したような方法と類似の方法で、またはそれとは異なる方法で行ってもよい。
【0055】
工程403において、前記計算されたdV/dtが所定の規格/公差内であると決定されると、方法400は工程404に進み、(図5内の電圧垂下513によって表される)前記電圧垂下が測定される。工程403において前記計算されたdV/dtが所定の規格/公差内ではないと決定されると、方法400は工程413に進み、前記公差外れ状態を前記磁気装置の操作者に通知することができる。必要に応じて、その他の情報を表示してもよく、および/またはディスプレイ(明確にするために図4には図示せず)上にオプションを提示してもよい。1実施形態において、このようなディスプレイは従来のものであってよい。例えば、前記磁気装置の設定を修正するオプションを提示してもよい。このようなオプションは、例えば電圧を上げる、前記電源からの電力信号の特性を変更する、など、前記コンデンサーバンクの公差外れ状態の補正をある程度許可してもよい。別の実施形態では、予備のコンデンサーバンクを利用でき、従って、前記予備のコンデンサーバンクへの切り替えに関するオプションまたは指示を前記操作者に提示してもよい。工程413は、さらに(またはその代わりに)業務連絡を含む。このような業務連絡は、電話回線またはその他の電子通信路(例えばインターネット接続による電子メールのメッセージなど)を介して自動的に行うことができる。このようにすれば、前記磁気装置を修理し、または交換するための迅速な業務連絡を整備できる。
【0056】
工程413に工程415が続くことができ、継続動作を許可できるか否かを決定できる。例えば、前記磁気装置の設定に修正がなされた場合、工程415の決定においては、前記コンデンサーバンク、前記生成された磁界、または1若しくはそれ以上の他のパラメーターをテストして前記修正によって前記公差外れの状態を十分に対処したか否かを決定する。その場合、方法400は終了するか、または再度工程401で、試験の開始を繰り返す。1実施形態において、(以下に説明する工程402並びに工程404および406が実行されるときの)全ての測定が行われると、工程415を実行してもよく、前記全ての測定値に基づいて動作を許可できるか否かを決定することができる。いずれにしても、工程415において継続動作が許可できないと決定された場合、前記磁気装置は動作を停止し、併せて継続動作が許可されないことを前記操作者に警告する。例えば、前記磁気装置は、補正の量に拘らず良好な磁界を生成できず、従って前記磁気装置が治療動作を停止すべきであると決定する場合がある。
【0057】
上述のように、工程403において、前記計算されたdV/dtが所定の規格/公差内であると決定されると、方法400は工程404に進み、(図5内の電圧垂下513によって表される)前記電圧垂下が測定される。1実施形態において、区間510について前記コンデンサーバンクの電圧垂下が測定される。工程405において、前記電圧垂下が所定の規格/公差内であるか否かが決定される。工程405において、前記測定された電圧垂下が所定の規格/公差内ではないと決定されると、方法400は工程413に進む。工程405において、前記測定された電圧垂下が所定の規格/公差内であると決定されると、方法400は工程406に進む。
【0058】
工程406において、前記コンデンサー放電が時間の関数として測定される。1実施形態において、区間530について、前記コンデンサーバンクのdV/dtが測定される。工程406に関連して、いろいろな工程を実行できる。例えば、前記コンデンサーバンクを試験用抵抗器(図1Bの試験用抵抗器115など)に電気的に接続し、試験目的で放電してもよく、または別の実施形態において、前記コンデンサーバンクを治療目的で(即ち、図1Bの治療用コイル110を通じて)放電してもよい。さらに別の実施形態において、試験目的で(即ち、試験用パルスの印加中などに)治療用コイル110を通じて前記コンデンサーバンクを放電してもよい。
【0059】
工程407において、前記計算された静電容量が所定の規格/公差内であるか否かが決定される。このような決定は、例えば図2に関連して上述したような方法と類似の方法で、またはそれとは異なる方法で行うことができる。
【0060】
工程403において、前記計算されたdV/dtが所定の規格/公差内ではないと決定されると、方法400は、上述のように工程413に進む。工程407において、前記計算されたdV/dtが所定の規格/公差内であると決定されると、方法400は工程409に進む。工程409において、例えば、前記磁気装置の動作は継続され(方法400が動作中に実行されている場合)、または許可される(方法400が起動、自己試験、または校正のシーケンスの一部として実行されている場合)。上記に、方法400は、コンデンサーバンクの充電期間、休止期間、および放電期間の各々を測定するものとして説明したが、ある実施形態は、任意の1若しくはそれ以上の前記測定を行うことのできる方法を含むことが理解されるであろう。例えば、1実施形態において、前記休止期間および放電期間のみの測定値を使用してもよい。このように、ある実施形態は、コンデンサーバンクの性能をいろいろな方法で測定する方法を含んでもよいことが理解できる。
【0061】
前述の実例となる実施形態は、ただ単に説明の目的で提供されたものであって、決して本発明を限定するものとして解釈すべきではないことを理解すべきである。本明細書内で使用される用語は、限定のための用語ではなく、むしろ説明および図示のための用語である。さらに、本発明を実施する各実施形態および全ての実施形態によって、本明細書で述べた利点および目的が実現されない可能性もある。さらに、本発明は、特定の構造、材料、および/または実施形態を参照して本明細書内に説明したものの、本発明は、本明細書内に開示した前記特定のものに限定する意図のものではない。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲にあるような、機能的に均等である全ての構造、方法、および使用法を包含するものである。
【0062】
例えば、本開示は患者の治療に関するものであるが、本明細書内で述べた技術はまた、患者の診断も考慮することを理解すべきである。実際に、本開示が、一定条件について患者の治療を参照する点において、前記技術は、同一のまたは類似の条件について患者の監視および診断にも等しく適用される。
【0063】
本明細書の教示の利益を得る当業者は、それに数多くの改良を施すことができ、本発明の範囲および趣旨を逸脱することなく変更を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
磁気コアにパルスを印加して磁界を生成するようになっている磁気装置のコンデンサーバンクに対する充電工程を検出する工程と、
前記検出された充電工程中に前記コンデンサーバンクの充電応答を測定する工程と、
前記測定された充電応答を所定の充電応答と比較する工程と、
前記測定された充電応答が前記所定の充電応答の所定の公差内であるか否かを決定する工程と
を有する方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、さらに、
放電中に前記コンデンサーバンクの放電応答を測定する工程と、
前記測定された放電応答を所定の放電応答と比較する工程と、
前記測定された放電応答が前記所定の放電応答の所定の公差内であるか否かを決定する工程と
を有するものである方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、さらに、
試験用コンデンサーおよび前記磁気コアのうちの1つによって前記コンデンサーバンクを放電する工程を有するものである方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、さらに、
前記コンデンサーバンクの休止期間中の電圧垂下を測定する工程と、
前記測定された電圧垂下を所定の電圧垂下と比較する工程と、
前記測定された電圧垂下が、前記所定の電圧垂下の所定の公差内であるか否かを決定する工程と
を有するものである方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、さらに、
前記決定する工程で、前記測定された充電応答が前記所定の充電応答の前記所定の公差内ではないと決定された場合、使用者にアラートを提供する工程を有するものである方法。
【請求項6】
請求項2記載の方法において、前記アラートを提供する工程は、電力特性を修正するオプションを提供して、前記磁気コアによって生成された磁界が実質的に所望の磁界と同等にする工程を有するものである方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記オプションは、前記コンデンサーバンクへの電力入力を増加させるためのものである方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記電力の増加は、前記測定された充電応答と前記所定の充電応答との差に比例するものである方法。
【請求項9】
請求項2記載の方法において、さらに、
前記コンデンサーバンクの前記測定された充電応答が、前記所定の充電応答の前記所定の公差から外れていることを示すメッセージを送信する工程を有するものである方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、前記メッセージは、前記磁気装置の識別と前記コンデンサーバンクの充電応答の表示とを含むものである方法。
【請求項11】
請求項9記載の方法において、前記メッセージは、電子メールのメッセージである方法。
【請求項12】
請求項1記載の方法において、さらに、
前記決定する工程で、前記測定された充電応答が前記所定の充電応答の前記所定の公差内ではないと決定された場合、前記コンデンサーバンクが磁気回路にパルスを印加するのを阻止する工程を有するものである方法。
【請求項13】
請求項1記載の方法において、さらに、
前記測定された充電応答が前記所定の充電応答の前記所定の公差内ではない場合、前記コンデンサーバンクの前記磁気コアにパルスを印加する動作に対する調節を決定して、所望の特性を有する磁気パルスを生成する工程を有するものである方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、前記調節は、前記コンデンサーバンクの充電中に充電電圧を上昇させる工程である方法。
【請求項15】
請求項1記載の方法において、さらに、
前記決定する工程で、前記測定された充電応答が前記所定の充電応答の前記所定の閾値内であると決定された場合、前記コンデンサーバンクが前記磁気コアにパルスを印加することを許可する工程を有するものである方法。
【請求項16】
請求項1記載の方法において、前記検出する工程は、前記コンデンサーバンクのdV/dtが所定の値に達した場合に検出する工程を有するものである方法。
【請求項17】
請求項1記載の方法において、前記測定する工程は、前記充電工程中に前記コンデンサーバンクのdV/dtを測定する工程を有するものである方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法において、前記決定する工程は、前記コンデンサーバンクの前記測定されたdV/dtを所定のdV/dtと比較する工程を有するものである方法。
【請求項19】
請求項17記載の方法において、さらに、
前記測定されたdV/dtおよび前記コンデンサーバンクを充電するために使用される電圧から静電容量の値を計算する工程を有し、
前記決定する工程は、前記計算された静電容量の値が所定の静電容量の値の所定の公差内であるか否かを決定する工程を有するものである方法。
【請求項20】
請求項1記載の方法において、前記所定の充電応答は、前記磁気装置の製造過程で決定されるものである方法。
【請求項21】
請求項1記載の方法において、前記測定する工程は、複数の測定値の平均を計算する工程を有するものである方法。
【請求項22】
請求項1記載の方法において、さらに、
前記コンデンサーバンクを充電する工程を有するものである方法。
【請求項23】
磁気刺激装置であって、
磁界を生成する磁気コアと、
電源と、
前記電源によって充電され、前記磁気コアにパルスを印加するコンデンサーバンクと、
充電中に前記コンデンサーバンクの充電応答を測定し、前記測定された充電応答が所定の充電応答の所定の公差内であるか否かを決定するプロセッサーと
を有する磁気刺激装置。
【請求項24】
請求項23記載の装置において、さらに、
試験用抵抗器を有し、
前記プロセッサーは、前記試験用抵抗器を介して前記コンデンサーバンクの放電中に前記コンデンサーバンクの放電応答を測定し、且つ前記測定された放電応答が所定の放電応答の所定の公差内であるか否かを決定するものである装置。
【請求項25】
請求項23記載の装置において、前記プロセッサーは、前記コンデンサーバンクの休止期間中の電圧垂下を測定し、且つ前記測定された電圧垂下が所定の電圧垂下の所定の公差内であるか否かを決定するものである装置。
【請求項26】
請求項23記載の装置において、さらに、
前記決定で、前記測定された充電応答が前記所定の充電応答の前記所定の公差内ではないと決定された場合に使用者にアラートを提供するディスプレイを有するものである装置。
【請求項27】
請求項24記載の装置において、前記ディスプレイは電力特性を修正するオプションを提供して、前記磁気コアによって生成された前記磁界が所望の磁界と実質的に同等にするものである装置。
【請求項28】
請求項27記載の装置において、前記オプションは、前記コンデンサーバンクへの電力入力を増加させるためのものである装置。
【請求項29】
請求項28記載の装置において、前記電力の増加は、前記測定された充電応答と前記所定の充電応答との差に比例するものである装置。
【請求項30】
請求項24記載の装置において、さらに、
前記プロセッサーに動作可能に連結した通信インターフェースを有し、
前記通信インターフェースは、前記コンデンサーバンクの前記測定された充電応答が、前記所定の充電応答の前記所定の公差を外れていることを示すメッセージを送信するものである装置。
【請求項31】
請求項30記載の装置において、前記通信インターフェースは、モデムおよびケーブルモデムのうちの1つである装置。
【請求項32】
請求項30記載の装置において、前記メッセージは、前記磁気装置の識別と前記コンデンサーバンクの前記充電応答の表示とを含むものである装置。
【請求項33】
請求項30記載の装置において、前記メッセージは、電子メールのメッセージである装置。
【請求項34】
請求項23記載の装置において、前記測定された充電応答が前記所定の充電応答の前記所定の公差内ではない場合、前記プロセッサーは前記コンデンサーバンクの前記磁気コアにパルスを印加する動作に対する調節を決定して、所望の特性を有する磁気パルスを生成するものである装置。
【請求項35】
請求項34記載の装置において、前記調節は、前記コンデンサーバンクの充電中の充電電圧を上昇させる工程である装置。
【請求項36】
請求項23記載の装置において、前記プロセッサーは、さらに、前記測定された充電応答が前記所定の充電応答の前記所定の閾値内であると決定した場合、前記コンデンサーバンクが前記磁気コアにパルスを印加することを許可するものである装置。
【請求項37】
請求項23記載の装置において、前記プロセッサーは、前記充電中に前記コンデンサーバンクのdV/dtを測定するものである装置。
【請求項38】
請求項37記載の装置において、さらに、
前記コンデンサーバンクのための所定のdV/dtを記憶するメモリーを有し、
前記プロセッサーは、前記測定されたdV/dtを前記所定のdV/dtと比較することによって、前記測定された充電応答が所定の充電応答の所定の公差内であるか否かを決定するものである装置。
【請求項39】
請求項23記載の装置において、前記所定の充電応答は、前記磁気装置の製造過程において決定されるものである装置。
【請求項40】
請求項23記載の装置において、前記プロセッサーは、複数の測定値を取得し、当該複数の測定値の平均を計算するものである装置。
【請求項41】
請求項23記載の装置において、さらに、
バックアップ用コンデンサーバンクとスイッチとを有し、
前記スイッチは、前記プロセッサーが、前記測定された充電応答が所定の充電応答の所定の公差内であると決定した場合、前記コンデンサーバンクを切断し、前記バックアップ用コンデンサーバンクを接続して前記磁気コアにパルスを印加するようになっているものである装置。
【請求項42】
方法であって、
磁気コアにパルスを印加して磁界を生成するようになっている、磁気装置内のコンデンサーバンクの放電中の放電応答を測定する工程と、
前記測定した放電応答を所定の放電応答と比較する工程と、
前記測定した放電応答が前記所定の放電応答の所定の公差内であるか否かを決定する工程と
を有する方法。
【請求項43】
請求項42記載の方法において、さらに、
試験用コンデンサーおよび前記磁気コアのうちの1つによって前記コンデンサーバンクを放電する工程を有するものである方法。
【請求項44】
方法であって、
磁気コアにパルスを印加して磁界を生成するようになっている、磁気装置内のコンデンサーバンクの休止期間中の電圧垂下を測定する工程と、
前記測定された電圧垂下を所定の電圧垂下と比較する工程と、
前記測定された電圧垂下が前記所定の電圧垂下の所定の公差内であるか否かを決定する工程と
を有する方法。
【請求項45】
磁気刺激装置であって、
磁界を生成する磁気コアと、
電源と、
前記電源によって充電され、前記磁気コアにパルスを印加するコンデンサーバンクと、
試験用抵抗器と、
前記試験用抵抗器を介した前記コンデンサーバンクの放電中に、前記コンデンサーバンクの放電応答を測定し、且つ前記測定された放電応答が所定の放電応答の所定の公差内であるか否かを決定するプロセッサーと
を有する磁気刺激装置。
【請求項46】
磁気刺激装置であって、
磁界を生成する磁気コアと、
電源と、
前記電源によって充電され、前記磁気コアにパルスを印加するコンデンサーバンクと、
前記コンデンサーバンクの休止期間中の電圧垂下を測定し、前記測定された電圧垂下が所定の電圧垂下の所定の公差内であるか否かを決定するプロセッサーと
を有する磁気刺激装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−518967(P2010−518967A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550893(P2009−550893)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/002088
【国際公開番号】WO2008/103316
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(505338442)ニューロネティクス、インク. (13)
【Fターム(参考)】