説明

コンデンサ容量測定装置及びコンデンサ容量測定装置を備えた電力用機器

【課題】運用中の電力用機器の電磁操作機構に使用されるコンデンサによる駆動に支障を与えずに、定期的にコンデンサの容量測定が可能なコンデンサ容量測定装置及びコンデンサ容量測定装置を備えた電力用機器を提供することを目的としている。
【解決手段】コンデンサ容量測定装置1は、コンデンサ2に充電する充電回路3と、充電エネルギを放電させるためコンデンサ2に並列に接続され、放電抵抗5及び放電スイッチ4とにより構成される放電回路6と、放電時のコンデンサ電圧低下を測定するためコンデンサ2に並列に接続された抵抗分圧回路9と、充電回路3にコンデンサ2への充電の停止指令及び放電回路6の放電スイッチ4に導通指令を出すとともに抵抗分圧回路9の分圧点Aの電圧Vaからコンデンサ2の容量を算出するコンデンサ容量算出回路10とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギが蓄えられた状態でコンデンサの容量を測定するコンデンサ容量測定装置及びコンデンサ容量測定装置を備え、コンデンサに蓄えられたエネルギを電磁コイルに通電して操作する電磁操作機構を有する電力用機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送電系統に使用される電力用機器は長期に亘っての信頼性が要求される。例えば、電磁操作機構を有する遮断器では、充電によりコンデンサに蓄えられたエネルギをコイルに通電することで電磁力を生み出し、この電磁力により遮断器を動作させている。遮断器を動作させるために必要なエネルギは、コンデンサに蓄積されたエネルギに依存しているため、コンデンサの容量が低下すると動作に必要なエネルギを供給することができず、正常な動作を行うことができなくなってしまう。このため、コンデンサ容量の定期的な測定が欠かせない。しかしながら、LCRメータ等でコンデンサの容量のチェックを行うには、電力用機器を停止する必要がある。コンデンサにエネルギが蓄えられた状態で、かつ、コンデンサに蓄えられたエネルギにほとんど影響を与えずにコンデンサの容量を測定することができれば、電力用機器を停止させることなく、電力用機器の運用時における測定頻度を大幅に増加させることができ、電力用機器の信頼性の向上が期待される。また、コンデンサ容量の測定結果により、経年劣化によるコンデンサ容量の低下が認められた場合には、コンデンサの交換を実施することにより、電力用機器の安定的な運用を行うことができる。
【0003】
例えば、特許文献1に示す車両用乗員保護装置のエアバッグに使用されるバックアップコンデンサの従来のコンデンサ容量診断回路では、直列接続された抵抗とスイッチ回路とからなる放電回路をコンデンサに並列接続し、放電回路のスイッチ回路を一定時間オンし、そのオンする直前のコンデンサの充電電圧値V1と、一定時間の放電に伴うコンデンサの端子電圧の変化値(V1−V2)との比を演算して、その演算結果を基準値と比較することによってコンデンサの容量の良否を診断する。これにより、コンデンサに接続される直流電源の出力電圧のバラツキに影響されず、確実に、精度よく診断することを実現している。なお、コンデンサの診断は、車両始動時に実施される。
【0004】
また、例えば、特許文献2に示す静電容量測定装置では、コンデンサの静電容量を測定するために、正弦波測定信号によるコンデンサの通過電流波形を電流−電圧変換することによりセンサ応答電圧波形を一定時間間隔にてサンプリングすることにより電圧サンプリング点の組を取得し、それら電圧サンプリング点の組の平均電圧値によりセンサ応答電圧波形の推定中心線を決定し、該推定中心線を挟んで隣接する2つの電圧サンプリング点を基準点決定用サンプリング点として、それら基準点決定用サンプリング点間の波形形状を直線近似したときの、推定中心線と該直線との交点を波形基準点として求め、推定中心線に関して一方の側において、推定中心線からの電位差が最大となる最大電圧サンプリング点の電圧値と、同じく該側に位置する基準点決定用サンプリング点と波形基準点との位相差とに基づいてセンサ応答電圧波形の振幅を算出し、該振幅に基づいて静電容量を算出している。この静電容量測定装置は、劣化検知対象となるエンジンオイルを測定対象物として、該オイル中に浸漬される電極対によりセンシングコンデンサを形成し、そのセンシングコンデンサの静電容量変化に基づいて、該オイルの劣化検知を行なうオイル劣化検知装置として好適に使用可能である。これにより、測定対象となるオイルの静電容量変化に基づく劣化検知を常に正確に行なうことができる。
【0005】
さらに、例えば、特許文献3に示すコンデンサ容量診断装置では、コンデンサに充電す
るための電源と、コンデンサのエネルギを放電させるためコンデンサに並列に接続される放電回路と、放電時の電圧低下を測定するための抵抗分圧回路と、分圧電圧を測定する測定回路と、放電による電圧の時間変化からコンデンサ容量の良否を判定する診断回路と、を備えている。これにより、診断時にコンデンサによる動作に支障を及ぼさない範囲での放電による電圧低下となるよう所定の放電抵抗、時間内で測定が実施されているので、診断中もコンデンサ本来の動作が可能で、コンデンサの運用中もコンデンサ容量の適否の診断を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−229976号公報
【特許文献2】特開2004−219159号公報
【特許文献3】WO2010/150599A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の従来のコンデンサ容量診断回路にあっては、車両用のエアバックのバックアップコンデンサを診断することを目的としており、イグニッションスイッチを入れた直後の車の始動時に診断を実施するのみである。これに対して、電力用機器の電磁操作機構に使用されるコンデンサは、一旦、運用を開始すると長期的に使用されるため、エネルギを蓄えた状態を維持する必要があり、運用中のコンデンサ容量の定期的な診断が欠かせず、かつ、電磁操作機構に影響を与えないようにコンデンサの容量測定を行う必要がある。従来のコンデンサ容量診断回路は、運転中に常時診断することを想定しておらず、測定時にコンデンサの電圧が大幅に低下するため適用できないという問題点があった。また、特許文献2の従来の静電容量測定装置にあっても、自動車用のエンジンオイルの劣化を容量測定により判定することを目的としており、電力用機器の動作に使用されるコンデンサの容量測定には、適用できないという問題点があった。さらに、コンデンサ容量の変化を予測する場合、コンデンサ容量の変化の経過を観測する必要があり、コンデンサ容量そのものを測定する必要がある。特許文献3の従来のコンデンサ容量診断装置にあっては、コンデンサ容量の良否を判定するのみであり、コンデンサ容量の変化の経過を観測することはできないといった問題点があった。
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、例えば、運用中の電力用機器の電磁操作機構に使用されるコンデンサによる駆動に支障を与えずに、定期的にコンデンサの容量測定が可能なコンデンサ容量測定装置及びコンデンサ容量測定装置を備えた電力用機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係るコンデンサ容量測定装置は、コンデンサを充電する充電回路と、直列に接続された放電抵抗と放電スイッチとにより構成されると共に、前記コンデンサに並列に接続された放電回路と、直列に接続された第一の抵抗及び第二の抵抗により構成されると共に、前記コンデンサに並列に接続された抵抗分圧回路と、前記コンデンサの充電を停止させると共に、前記放電スイッチを導通させることにより前記コンデンサに充電されたエネルギを放電させ、前記放電時の前記抵抗分圧回路の分圧点の電圧の平均値及び時間変化値を用いてコンデンサ容量を算出するコンデンサ容量算出回路と、を備え、前記コンデンサを所定時間放電させ、電圧低下値を所定の値以内に抑えたものである。
【0010】
また、本発明の請求項4に係るコンデンサ容量測定装置を備えた電力用機器は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコンデンサ容量測定装置を備えるとともに、前記
コンデンサに充電されたエネルギによって操作される電磁操作機構を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コンデンサ容量の測定時にコンデンサを所定時間放電させ、電圧低下値を所定の値以内に抑えることにより、コンデンサの運用中に容量測定を行うことが可能であり、また、このコンデンサ容量測定装置を電力用機器の電磁操作機構に使用されるコンデンサの容量測定に適用することにより、電力用機器の運用中に定期的にコンデンサ容量の測定を行うことができるといった顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1に係るコンデンサ容量測定装置の概略を示す回路構成図である。
【図2】実施の形態1に係るコンデンサ容量測定装置におけるコンデンサの放電による電圧の変化を示す図である。
【図3】実施の形態1に係るコンデンサ容量測定装置におけるコンデンサの容量を求める方法を説明する図である。
【図4】実施の形態2に係るコンデンサ容量測定装置におけるコンデンサの容量を求める方法を説明する図である。
【図5】実施の形態3に係るコンデンサ容量測定装置におけるコンデンサの容量を求める方法を説明する図である。
【図6】実施の形態4に係るコンデンサ容量測定装置を備えた電力用機器の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係るコンデンサ容量測定装置及びコンデンサ容量測定装置を備えた電力用機器について説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るコンデンサ容量測定装置の概略を示す回路構成図である。図2は、コンデンサ容量測定装置におけるコンデンサの放電による電圧の変化を示す図である。また、図3は、コンデンサ容量測定装置におけるコンデンサの容量を求める方法を説明する図である。
【0015】
図1に示すように、コンデンサ容量測定装置1は、コンデンサ2に充電する充電回路3と、コンデンサ2の充電エネルギを放電させるためコンデンサ2に並列に接続され、放電抵抗5及び放電スイッチ4とにより構成される放電回路6と、放電時のコンデンサ電圧低下値を計測するためコンデンサ2に並列に接続され、第一、第二の抵抗7、8とにより構成される抵抗分圧回路9と、充電回路3にコンデンサ2への充電の停止指令及び放電回路6の放電スイッチ4に導通指令を出すとともに抵抗分圧回路9の分圧点Aの電圧Vaからコンデンサ2の容量を算出するコンデンサ容量算出回路10とからなる。
【0016】
次に、図1、図2及び図3を参照して、実施の形態1におけるコンデンサ容量測定装置1の動作原理について説明する。測定対象であるコンデンサ2は、常時、充電回路3によりその定格電圧まで充電されている。このコンデンサ2の容量の変化の経過を観測するため、定期的にコンデンサ2に充電されているエネルギを放電させ、コンデンサ電圧の変化が定期的に観測される。まず、コンデンサ容量算出回路10の指令により、時刻t0に充電回路3にコンデンサ2への充電停止命令が出される(図2のSIG参照。)。同時に、放電回路6の放電スイッチ4に導通指令が出される(図2のSW参照。)。これにより、コンデンサ2に蓄えられたエネルギは、放電電流として放電抵抗5を流れることにより、コンデンサ2の両端の電圧Vcは低下する。この間、コンデンサ2に並列に接続された抵
抗分圧回路9の第一及び第二の抵抗7、8のR1、R2の分圧点Aの電圧Vaの変化(電圧低下)が、コンデンサ容量算出回路10の電圧計測部により計測される。放電スイッチ4の所定の導通時間T後、コンデンサ容量算出回路10の指令により、時刻teで放電スイッチ4が開放され、放電電流は停止し、充電回路3により再びコンデンサ2の充電が開始される。導通時間Tは、このコンデンサ2のエネルギを利用する電力用機器の動作に支障をきたさない短時間、例えば、200ms程度に設定される。コンデンサ2の容量は、コンデンサ容量算出回路10の電圧計測部が計測を行っている時間T−2dtと、計測時のコンデンサ2の電圧Vc(=(R1+R2)×Va/R1)の平均値Vaveと、コンデンサ2の電圧低下値ΔVと、放電抵抗5のRdに流れる電流Iから算出される(図3参照)。但し、コンデンサ2の容量Cの算出時には、放電スイッチ4の導通開始直後の所定時間dt、例えば5ms程度と、開放直前の所定時間dt、例えば5ms程度は、スイッチングノイズやコンデンサ2の電圧Vcの計測開始時刻t1と放電スイッチ4の導通開始時刻t0との時間誤差を考慮し、この時間を計測の対象から除外する。
【0017】
次に、コンデンサ2の電圧Vcの変化からコンデンサ容量Cを算出する方法について図3を用いて説明する。放電スイッチ4の導通時間Tを200msと極めて短時間で行うため、コンデンサ2から放電抵抗5のRdに流れる電流Iは、ほぼ一定であると見做すことができる。計測時間T−2dt(=tn−t1)でコンデンサ2から流出される電荷ΔQは、式(1)に示すように、コンデンサ容量Cと電圧低下値ΔV(=V1−Vn)との積で表すことができる。なお、電荷ΔQは、電流Iと計測時間T−2dtとの積で表すことができるので、式(2)のように書き換えることができる。ここで、コンデンサ容量Cについて解いたものを式(3)で表す。さらに、電流Iをコンデンサ2の平均電圧Vaveを放電抵抗Rdで割ったもので表し、式(3)の(V1−Vn)/(T−2dt)をコンデンサ電圧Vcの時間変化値dVとすると式(4)で表すことができる。ここで、コンデンサ電圧Vcは、分割数nで均等に分割された計測時刻tn(n:1〜n)でそれぞれ計測され、その平均電圧Vaveはコンデンサ電圧V1からVnの和を計測点数nで割ったものであり、コンデンサ電圧Vcの時間変化値dVは計測したコンデンサ電圧V1からVnを最小二乗法で算出したものである。なお、図3のV0はコンデンサ2の定格電圧を示すものである。
C×ΔV=ΔQ (1)
C×(V1−Vn)=∫Idt=I×(T−2dt) (2)
C=I×(T−2dt)/(V1−Vn) (3)
C=Vave×(T−2dt)/Rd/dV (4)
【0018】
従来のコンデンサの容量測定方法では、コンデンサの容量を測定するためにコンデンサを放電させてコンデンサの容量変化からコンデンサの容量を推定している。しかし、放電によるコンデンサの容量変化は、指数関数的でありその変化から容量を推定するには複雑な計算が必要であった。このため、従来のコンデンサの容量測定方法では、ある程度高速な処理が行える計算機が必要であるが、本発明では、放電回路の放電スイッチをきわめて短い時間である200ms程度のみ導通させて計測を行っているので、コンデンサの容量変化を直線近似することができて、簡単な計算で容量を求めることができ、低速な処理能力の計算機つまり廉価な計算機を用いてもコンデンサの容量を算出することができる特徴がある。また、コンデンサの放電による電圧低下値が少なくて済むよう所定の値以内になるように短時間の放電で計測を行っているため、コンデンサのエネルギを動力に利用する電力用機器、例えば、電磁操作機構を持つ遮断器等に適用すれば、遮断器の動作に影響を与えずに、コンデンサの容量を測定することができる。
【0019】
このように、本発明の実施の形態1に係るコンデンサ容量測定装置では、コンデンサ容量の測定時にコンデンサの放電による電圧低下値が所定の値以内に設定することによりコンデンサの運用中に容量測定を行うことが可能であり、また、このコンデンサ容量測定装
置を電力用機器の電磁操作機構に使用されるコンデンサの容量測定に適用することにより、電力用機器の運用中にコンデンサ容量の測定を行うことができるといった顕著な効果を奏するものである。
【0020】
実施の形態2.
図4は、本発明の実施の形態2に係るコンデンサ容量測定装置におけるコンデンサの容量を求める方法を説明する図である。ここで、コンデンサ容量測定装置の構成は、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。実施の形態1との相違点は、コンデンサの容量を算出する方法が異なる点である。
【0021】
次に、実施の形態2によるコンデンサ2の電圧Vcの変化からコンデンサ容量Cを算出する方法について図4を用いて説明する。コンデンサ2の容量は、実施の形態1と同様、放電スイッチ4の導通時間Tにおける、計測時間T−2dtでのコンデンサ2の電圧Vc(=(R1+R2)×Va/R1)の平均値Vaveと、コンデンサ2の電圧低下値ΔVと、放電抵抗5のRdに流れる電流Iから算出する(図4参照)。ここで、式(1)から式(3)は実施の形態1と同じであり、説明を省略する。なお、実施の形態2では、計測時のコンデンサ電圧Vcの平均値Vaveを、計測時間T−2dtの前半半分の平均値Vave1、後半半分の平均値Vave2に分けて求める。ここで、式(3)は、放電時間の半分を(T−2dt)/2とすると、式(5)で表すことができる。また、分割数nで均等に分割された計測時刻でそれぞれコンデンサ電圧Vcが計測され、計測時間T−2dtの前半半分のコンデンサ電圧Vcの平均値Vave1は、計測時間の前半半分のコンデンサ電圧Vcの和を計測点数n/2で割った値であり、計測時間T−2dtの後半半分のコンデンサ電圧Vcの平均値Vave2は、計測時間の後半半分のコンデンサ電圧Vcの和を計測点数n/2で割った値である。平均電圧Vaveは、コンデンサ電圧V1からVnの和を計測点数nで割ったものである。あるいは、平均電圧Vaveは、平均値Vave1とVave2の和を2で割った値を用いても同様である。
C=Vave×(T−2dt)/Rd/2(Vave1−Vave2) (5)
【0022】
続いて、具体的な例として数値を挙げて説明する。計測時間T−2dtの分割数nを1,000点とすると、前半半分の分割数n1=500、後半半数n2=500となり、まず、コンデンサ電圧Vcの前半半分の500点の平均値Vave1とコンデンサ電圧Vcの後半半分の500点の平均値Vave2を求める。前半中間時刻(T−2dt)/4と後半中間時刻3×(T−2dt)/4でのコンデンサ電圧Vcを平均値Vave1とVave2が求められたことになり、これと前半中間時刻と後半中間時刻との時間(T−2dt)/2を用いてコンデンサ電圧Vcの時間変化値dVを求める。これにより、式(5)からコンデンサ容量Cを求めることができる。
【0023】
ここで、計測時刻(T−2dt)/4と3×(T−2dt)/4でのコンデンサ電圧Vcの実測値を用いず、平均値Vave1とVave2を用いる理由は、以下の通りである。例として、コンデンサ2の計測開始電圧V1を15V、計測終了時のコンデンサ電圧Vnを14.85V、コンデンサ容量算出回路10の電圧計測部の分解能を0.015Vとすると、V1からVnへの電圧低下値が0.15V(=15V−14.85V)であり、電圧計測部の分解能が0.015Vであるために分割数nが10(=0.15V/0.015V)となり、計測点数が少ないため、充分な精度が得られない。
【0024】
従って、実施の形態2では、計測時間T−2dt中にコンデンサ電圧Vcを1,000点計測して、計測時刻(T−2dt)/4と3×(T−2dt)/4で、それぞれの前後250点(すなわち、前後合わせて500点)のコンデンサ電圧Vcの計測値の平均値Vave1とVave2を算出して用いることにより、コンデンサ2の容量を精度よく求めることができる。本来、コンデンサ電圧Vcが電圧計測部の分解能である0.015V刻
みでしか得られない計測時刻(T−2dt)/4と3×(T−2dt)/4でのコンデンサの電圧値Vcをそれぞれ500点の計測値の平均値Vave1とVave2とを用いることで精度を向上させることができる。
【0025】
なお、上記実施の形態2の説明では、計測時刻(T−2dt)/4と3×(T−2dt)/4におけるそれぞれの前後250点のコンデンサ電圧Vcの計測値の平均値をVave1とVave2としたが、簡易的にそれぞれ前後100点を用いてコンデンサの容量を求めてもよい。また、平均値Vave1とVave2を求めるために、計測時間T−2dtの中心時刻(T−2dt)/2に対して対称な前後2つの時刻、例えば、計測時刻(T−2dt)/5と4×(T−2dt)/5とで、その前後、均等に分割された時刻で計測されたコンデンサの電圧値Vcを用いて、コンデンサ容量Cを求めることも可能である。さらに、上記説明では、計測時間T−2dtの全体を均等に分割する(例では、1,000点)としたが、必要に応じて、計測時刻の2点の前後の計測間隔、点数を設定してもよい。
【0026】
また、実施の形態2では、コンデンサの容量を算出するのに、まず、コンデンサ電圧Vcの平均値Vave1とVave2を出し、この2点間の時間で割り算を行い、コンデンサ電圧Vcの時間変化値dVを算出する方法を採り、足し算中心の計算によって求めている。このため、最小二乗法による計算を行っている実施の形態1に比べ、より短時間で計算を行うことができる。
【0027】
このように、本発明の実施の形態2に係るコンデンサ容量測定装置では、実施の形態1と同様、コンデンサ容量の測定時にコンデンサの放電による電圧低下値が所定の値以内に設定することによりコンデンサの運用中に容量測定を行うことが可能であるとともに、計測時刻を前後に分け、それぞれで算出されたコンデンサ電圧の平均値を利用することにより、その精度の向上を図り、短時間で行うことができるという効果がある。また、このコンデンサ容量測定装置を電力用機器の電磁操作機構に使用されるコンデンサの容量測定に適用することにより、電力用機器の運用中にコンデンサ容量の測定を行うことができるといった顕著な効果を奏するものである。
【0028】
実施の形態3.
図5は、本発明の実施の形態3に係るコンデンサ容量測定装置におけるコンデンサの容量を求める方法を説明する図である。ここで、コンデンサ容量測定装置の構成は、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。実施の形態1との相違点は、コンデンサの容量を算出する方法が異なる点である。
【0029】
次に、実施の形態3によるコンデンサ2の電圧Vcの変化からコンデンサ容量Cを算出する方法について図5を用いて説明する。コンデンサ2の容量は、実施の形態1と同様、放電スイッチ4の導通時間Tにおける、計測時間T−2dtでのコンデンサ2の電圧Vc(=(R1+R2)×Va/R1)の平均値Vaveと、コンデンサ2の電圧低下値ΔVと、放電抵抗5のRdに流れる電流Iから算出する(図4参照)。ここで、式(1)から式(3)は実施の形態1と同じであり、説明を省略する。
【0030】
実施の形態1及び実施の形態2では、コンデンサ2への充電は、コンデンサ2の定格電圧V0までとし、放電によりコンデンサ2の電圧低下値ΔVからコンデンサ2の容量を算出しているのに対して、実施の形態3では、図5に示すように、コンデンサ2の電圧Vcの計測を開始するに当って、まず、時刻tsから充電回路3により、コンデンサ2に定格電圧V0を超える所定の電圧Vs(=1.01×V0)まで充電する。コンデンサ2の電圧が予め設定されたVsに達し、充電が完了したところで、放電スイッチ4を導通させて、計測時間T−2dtでのコンデンサ2の電圧Vc(=(R1+R2)×Va/R1)の平均値Vaveと、コンデンサ2の電圧低下値ΔVと、放電抵抗5のRdに流れる電流Iから算出する。具体的なコンデンサの容量の算出については、実施の形態1あるいは実施の形態2の容量を求める方法を利用することができる。
【0031】
図5に示す例では、定格電圧V0を超える所定の電圧Vsとしては、定格電圧V0より1%高く設定し、この1%分を放電して定格電圧V0に戻るまでのコンデンサ2の電圧Vcの計測によってコンデンサ容量Cの算出を行っているので、電力用機器の電磁操作機構の動作に全く影響を与えずにコンデンサの容量を求めることができる。なお、定格電圧V0を超える所定の電圧Vsとしては、コンデンサ2の性能に影響を与えない電圧であればよく、必ずしも1%でなくてもよい。また、放電は、コンデンサ2の電圧が定格電圧V0になったところで終了させる例を示しているが、必ずしも、定格電圧V0で終了させる必要はなく、コンデンサ2の電圧を計測に必要な電圧まで低下させればよい。
【0032】
このように、本発明の実施の形態3に係るコンデンサ容量測定装置では、コンデンサの定格電圧を超える所定の電圧まで充電して、放電による電圧低下値を用いてコンデンサの容量を求めることにより、実施の形態1と同様、コンデンサの運用中に容量測定を行うことが可能であるという効果がある。また、このコンデンサ容量測定装置を電力用機器の電磁操作機構に使用されるコンデンサの容量測定に適用する際に、コンデンサが常に定格電圧以上に保たれているので、電力用機器の運用中にいつでも電磁操作機構の動作に全く影響を与えずにコンデンサの容量を求めることができるといった顕著な効果を奏するものである。
【0033】
実施の形態4.
図6は、本発明の実施の形態4におけるコンデンサ容量測定装置を備えた電力用機器の概略を示す構成図である。
【0034】
実施の形態4では、蓄積されたコンデンサのエネルギによる電磁操作機構を有する電力用機器の例として、真空遮断器(VCB)にコンデンサ容量測定装置を適用する場合について説明する。図6に示すように、真空遮断器30は、タンク遮蔽壁11内に設置され、固定接点12と可動軸13に取り付けられた可動接点14とが開閉される真空スイッチ管(VST)15と、タンク遮蔽壁11外に設けられ、固定鉄心16とこの固定鉄心16内に設置された引外し用コイル17及び投入用コイル18と、この引外し用コイル17に電力を供給するコンデンサ2と、コンデンサ2から引外し用コイル17にスイッチ19により通電された場合に電流を計測する計器用変流器(CT)20と、これらのコイル17,18を貫通するように設置された可動軸21と、この可動軸21に取り付けられた永久磁石22と可動鉄心23と、可動軸21に取り付けられた接圧バネ24により真空スイッチ管15の接点12,14を開閉する機能を持つ電磁操作機構25と、コンデンサ2の容量を診断するコンデンサ容量測定装置1とで構成される。なお、コンデンサ容量測定装置1の構成は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0035】
次に、図6を参照して、実施の形態4における真空遮断器の動作原理について説明する。真空遮断器30の開閉操作は電磁操作機構25の電磁コイル17,18による電磁力で行い、開閉状態は永久磁石22の磁力によって保持される。固定鉄心16に電磁コイルの引外し用コイル17と投入用コイル18が設けられ、可動鉄心23と永久磁石22が取り付けられた可動軸21は、引外し用コイル17と投入用コイル18間を移動できるように設定されており、この可動軸21は接圧バネ24を介して真空スイッチ管15の固定接点12と対抗する可動接点14に繋がっている真空スイッチ管15側の可動軸13に接続されている。真空スイッチ管15の投入状態では、可動鉄心23は固定鉄心16の投入側に永久磁石22により吸着保持されている。真空スイッチ管15を開放状態にするために引外し指令により、引外し用コイル17にコンデンサ2から通電することにより、その磁力により可動鉄心23が開極側に吸引され、永久磁石22により引外し用コイル17への通電停止後も可動鉄心23は開極側に吸着保持される。これにより、可動鉄心23が取り付けられている可動軸21が移動することになり、真空スイッチ管15の接点は開放状態となる。投入用コイル18に通電すれば、逆の動作で真空スイッチ管15は投入状態となる。引外し用コイル17に通電するコンデンサ2は上述したコンデンサ容量測定装置1により定期的に容量が測定され信頼性の維持が図られる。コンデンサ2により通電された電流をモニタするため計器用変流器20にて計測される。コンデンサ容量診断装置1の動作については、実施の形態1で説明したので省略する。
【0036】
真空遮断器30において、例えば、コンデンサ2が電磁操作駆動に支障を及ぼさないよう容量測定時の放電による電圧低下値ΔVが設定される。例えば、実施の形態4では、DC電圧77.5Vで放電による電圧低下値として1Vでコンデンサ容量の測定が可能である。したがって、コンデンサ容量測定に必要な放電による電圧低下値ΔVの範囲内となるよう放電スイッチの導通時間Tは決定されるが、通常200msあれば充分である。
【0037】
このように、本発明の実施の形態4におけるコンデンサ容量測定装置を備えた電力用機器である真空遮断器では、コンデンサを取り外すことなく真空遮断器の運用中も定期的に駆動用のコンデンサの容量測定を行い、容量の適否を判定することができるので、長期的な電力用機器の信頼性向上が図れるといった顕著な効果を奏するものである。
【0038】
なお、上記実施の形態では電力用機器として真空遮断器の駆動用のコンデンサの容量測定に適用する場合について述べたが、コンデンサを駆動エネルギとして使用する機器であれば他の電力用機器にも適用可能である。また、自動車等、車両用のコンデンサに適用して、運用中に診断を行うことにより信頼性向上を図ることも可能である。
【0039】
なお、上記実施の形態では、コンデンサが定格電圧まで充電されている場合について説明したが、定格電圧より低い電圧でコンデンサが運用されている場合には、上記定格電圧を運用電圧と読み替えてもよい。
【0040】
また、図中、同一符号は、同一又は相当部分を示す。
【符号の説明】
【0041】
1 コンデンサ容量測定装置
2 コンデンサ
3 充電回路
4 放電スイッチ
5 放電抵抗
6 放電回路
7 第一の抵抗
8 第二の抵抗
9 抵抗分圧回路
10 コンデンサ容量算出回路
15 真空スイッチ管
25 電磁操作機構
30 真空遮断器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサを充電する充電回路と、
直列に接続された放電抵抗と放電スイッチとにより構成されると共に、前記コンデンサに並列に接続された放電回路と、
直列に接続された第一の抵抗及び第二の抵抗により構成されると共に、前記コンデンサに並列に接続された抵抗分圧回路と、
前記コンデンサの充電を停止させると共に、前記放電スイッチを導通させることにより前記コンデンサに充電されたエネルギを放電させ、前記放電時の前記抵抗分圧回路の分圧点の電圧の平均値及び時間変化値を用いてコンデンサ容量を算出するコンデンサ容量算出回路と、を備え、
前記コンデンサを所定時間放電させ、電圧低下値を所定の値以内に抑えたことを特徴するコンデンサ容量測定装置。
【請求項2】
前記コンデンサを運用電圧を超える所定の電圧まで充電させることを特徴する請求項1に記載のコンデンサ容量測定装置。
【請求項3】
前記放電スイッチの導通開始の所定時間後から導通開放の所定時間前の前記分圧点の電圧よってコンデンサ容量を算出することを特徴する請求項1または請求項2に記載のコンデンサ容量測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコンデンサ容量測定装置を備えるとともに、前記コンデンサに充電されたエネルギによって操作される電磁操作機構を備えた電力用機器。
【請求項5】
前記コンデンサ容量の算出時において、前記放電による前記コンデンサの電圧低下値を電磁操作機構の動作が可能な所定の値以内に抑えたことを特徴とする請求項4に記載の電力用機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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