コンデンサ素子の乾燥方法、コンデンサの製造方法、及びコンデンサ素子乾燥装置
【課題】フィルム本体部を有するコンデンサ素子の乾燥時間を短くしつつコンデンサ素子の絶縁性を確保する。
【解決手段】フィルム(61)が巻回又は積層されて形成されたフィルム本体部(53)を有するコンデンサ素子(51)の乾燥を開始する乾燥開始工程と、乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する計測工程と、コンデンサ素子(51)の乾燥を停止させる乾燥停止条件が成立するか否かを、計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて判定する判定工程と、判定工程において乾燥停止条件が成立したと判定された場合、上記コンデンサ素子(51)の乾燥を停止する乾燥停止工程とを備える乾燥方法によって、コンデンサ素子(51)を乾燥する。
【解決手段】フィルム(61)が巻回又は積層されて形成されたフィルム本体部(53)を有するコンデンサ素子(51)の乾燥を開始する乾燥開始工程と、乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する計測工程と、コンデンサ素子(51)の乾燥を停止させる乾燥停止条件が成立するか否かを、計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて判定する判定工程と、判定工程において乾燥停止条件が成立したと判定された場合、上記コンデンサ素子(51)の乾燥を停止する乾燥停止工程とを備える乾燥方法によって、コンデンサ素子(51)を乾燥する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムが巻回又は積層されて形成されたフィルム本体部を有するコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルムコンデンサのフィルムに含まれる水分の影響による絶縁抵抗不良を低減するために、例えば特許文献1に開示されるように、コンデンサの製造工程において、フィルムあるいはコンデンサ素子(フィルム本体部)を乾燥することが知られている。これにより、フィルムに含まれる水分が外部へ放出されるため、該フィルム本体部を用いて形成されるフィルムコンデンサの絶縁抵抗の低下を抑制できる。
【0003】
更に、上述のように乾燥されたフィルム本体部は、例えば上記特許文献1に開示されるように、耐湿性を有する樹脂材料等によって封止される。これにより、フィルム本体部と外気とが遮断され、フィルムコンデンサの高い絶縁性が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−102219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フィルム本体部に含まれる水分の量は、該フィルム本体部が製造される湿度の違い(季節によって湿度は大きく異なる)や、フィルム本体部の個体差による特性のばらつき等によってばらつく。これに対して、従来は、全てのフィルム本体部を確実に乾燥できるような十分に余裕をもった長い時間、該フィルム本体部を乾燥していた。しかし、こうすると、含有される水分量が比較的少ないフィルム本体部については、必要以上に長い時間乾燥されることになる。その結果、無駄なエネルギーが消費されてしまう。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルム本体部を有するコンデンサ素子の乾燥時間を短くしつつコンデンサ素子の絶縁性を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、コンデンサ素子の乾燥方法を対象とし、フィルム(61)が巻回又は積層されて形成されたフィルム本体部(53)を有するコンデンサ素子(51)の乾燥を開始する乾燥開始工程と、乾燥中の上記コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する計測工程と、上記コンデンサ素子(51)の乾燥を停止させる乾燥停止条件が成立するか否かを、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて判定する判定工程と、該判定工程において上記乾燥停止条件が成立したと判定された場合、上記コンデンサ素子(51)の乾燥を停止する乾燥停止工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、コンデンサ素子(51)が乾燥されるため、該コンデンサ素子(51)に含まれる水分が蒸発する。その結果、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が高くなる。
【0009】
第1の発明では、乾燥開始工程によって乾燥が開始されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が計測され、この絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて、コンデンサ素子(51)の乾燥を停止させる乾燥停止条件が成立するか否かが判定される。乾燥停止条件が成立していないと判定された場合には、コンデンサ素子(51)の乾燥は継続され、乾燥停止条件が成立したと判定された場合には、コンデンサ素子(51)の乾燥は停止される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記計測工程では、乾燥中の上記コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が随時計測され、上記判定工程では、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxが所定値Raを上回った場合、上記乾燥停止条件が成立したと判定されることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、計測工程において、乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が、随時計測される。この計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxが所定値Raを上回った場合、乾燥停止条件が成立したと判定され、コンデンサ素子(51)の乾燥が停止される。
【0012】
第3の発明は、第1の発明において、上記判定工程では、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2,Rx3に基づいて上記コンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txが算出され、該残りの乾燥時間Txが経過した場合、上記乾燥停止条件が成立したと判定されることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2,Rx3に基づいて、該コンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txが算出される。そして、この残りの乾燥時間Txが経過した場合、乾燥停止条件が成立したと判定され、コンデンサ素子(51)の乾燥が停止される。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、上記判定工程では、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2の所定時間における変化量ΔRが算出され、該変化量ΔRに基づいて上記コンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txが算出されることを特徴とする。
【0015】
第4の発明では、計測工程において、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が、時間をおいて少なくとも2回計測される。このように計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2に基づいて、該コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2の所定時間における変化量ΔRが算出される。そして、該ΔRに基づいて、コンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txが算出される。この残りの乾燥時間Txが経過した場合、乾燥停止条件が成立したと判定され、コンデンサ素子(51)の乾燥が停止される。
【0016】
第5の発明は、コンデンサの製造方法を対象とし、上記第1から第4の発明によって乾燥されたコンデンサ素子(51)を封止する工程を備えることを特徴とする。
【0017】
第5の発明では、第1から第4の発明によって乾燥されたコンデンサ素子(51)が封止されてコンデンサが形成される。これにより、コンデンサ素子(51)は、外気に含まれる水分に触れないように密閉される。
【0018】
第6の発明は、コンデンサ素子乾燥装置を対象とし、フィルム(61)が巻回又は積層されて形成されたフィルム本体部(53)を有するコンデンサ素子(51)を乾燥する乾燥機構(20)と、該乾燥機構(20)で乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する絶縁抵抗計測器(40)と、該絶縁抵抗計測器(40)によって計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて上記乾燥機構(20)を制御する制御部(30)とを備えることを特徴とする。
【0019】
第6の発明では、乾燥機構(20)で乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が、絶縁抵抗計測器(40)によって計測され、該絶縁抵抗計測器(40)によって計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて、制御部(30)が乾燥機構(20)を制御する。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて乾燥停止条件を判定することで、乾燥中のコンデンサ素子(51)に含まれる水分量を直接的に把握しながら、乾燥停止条件を判定している。こうすると、乾燥時間が過剰とならないため乾燥エネルギーを低減できる。しかも、乾燥時間が不足しないためコンデンサ素子(51)を十分に乾燥できる。
【0021】
また、第2の発明によれば、乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxが所定値Raを上回った場合、コンデンサ素子(51)の乾燥が停止される。この所定値Raを適切な値に設定することで、コンデンサ素子(51)の絶縁性を確実に確保できる。
【0022】
また、第3の発明によれば、算出されたコンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txの経過後、コンデンサ素子(51)の乾燥が停止される。こうすると、残りの乾燥時間Txを算出した後、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxを計測する必要がなくなる。従って、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxを計測する時間を短くできる。
【0023】
また、第4の発明によれば、乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2が、時間をおいて少なくとも2回計測され、これらの絶縁抵抗Rx1,Rx2を用いて残りの乾燥時間Txを算出している。
【0024】
例えば、乾燥中のコンデンサ素子の絶縁抵抗が1回だけ計測され、該計測値のみを用いて残りの乾燥時間を算出する場合、コンデンサ素子の特性(具体的には、乾燥中のコンデンサ素子の絶縁抵抗の所定時間における変化量)を予測し、その予測された特性に基づいて残りの乾燥時間を算出する必要がある。しかし、こうすると、実際に絶縁抵抗が計測されるコンデンサ素子(51)の特性が、予測されるコンデンサ素子の特性と異なる場合、算出された残りの乾燥時間と、本来必要な残りの乾燥時間との間に大きなずれが生じる虞がある。
【0025】
これに対して、第4の発明では、コンデンサ素子の特性(乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗の所定時間における変化量ΔR)を実際に計測し、その値に基づいて残りの乾燥時間Txを算出している。こうすると、算出される残りの乾燥時間Txと、本来必要な残りの乾燥時間との間のずれを少なくできる。従って、コンデンサ素子(51)の乾燥不足や、乾燥に用いられるエネルギーの無駄を回避できる。
【0026】
また、第5の発明によれば、第1から第4の発明によって十分に乾燥されたコンデンサ素子(51)を封止することによりコンデンサが形成されるため、コンデンサの絶縁性を十分に確保できる。しかも、上記第1から第4の発明によるコンデンサ素子(51)を乾燥するためのエネルギーは従来よりも低いため、コンデンサの製造時に使用されるエネルギーを低減できる。
【0027】
また、第6の発明によれば、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて乾燥機構(20)が制御されるため、コンデンサ素子(51)の絶縁性を十分に確保しつつ、コンデンサ素子(51)の乾燥に必要なエネルギーを低減できる。しかも、コンデンサ素子(51)の乾燥は、制御部(30)によって自動で制御されるため、作業者の作業工数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、実施形態1に係るコンデンサ素子乾燥装置の概略構成図である。
【図2】図2は、乾燥器本体の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、絶縁抵抗計測器の概略構成図である。
【図4】図4は、コンデンサ素子の絶縁抵抗を算出するための等価回路図である。
【図5】図5は、制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、フィルムコンデンサの概略構成を示す縦断面図である。
【図7】図7は、2枚の金属化フィルムを重ね合わせた状態を示す断面図である。
【図8】図8は、フィルムコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【図9】図9は、コンデンサ素子の乾燥方法を示すフローチャートである。
【図10】図10は、コンデンサ素子を乾燥中の乾燥器本体内の様子を示す図である。
【図11】図11は、実施形態1から3の変形例に係るコンデンサ素子乾燥装置の概略構成図である。
【図12】図12は、実施形態2の制御部の構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、実施形態2におけるコンデンサ素子の乾燥方法を示すフローチャートである。
【図14】図14は、実施形態3の制御部の構成を示すブロック図である。
【図15】図15は、乾燥中のコンデンサ素子の絶縁抵抗と残りの乾燥時間との関係を表すグラフである。
【図16】図16は、実施形態3におけるコンデンサ素子の乾燥方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0030】
《発明の実施形態1》
−全体構成−
実施形態1に係るコンデンサ素子乾燥装置(1)は、図1に示すように、真空乾燥器(10)と、絶縁抵抗計測器(40)とを備えている。真空乾燥器(10)は、フィルムコンデンサ(50)のコンデンサ素子(51)を乾燥させるためのものであり、絶縁抵抗計測器(40)は、真空乾燥器(10)によって乾燥されるコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測するためのものである。
【0031】
真空乾燥器(10)は、図2に示すように、開口を有する箱状の乾燥器本体(11)と、該乾燥器本体(11)の開口を開閉可能な扉部(12)とを備えている。扉部(12)は、ヒンジ部(13)を介して乾燥器本体(11)に取り付けられている。扉部(12)の中央部には、耐熱性を有するガラス等で構成された観測窓(14)が設けられていて、乾燥器本体(11)の内部を観測することができるようになっている。また、乾燥器本体(11)には、該乾燥器本体(11)の内部に収容されたコンデンサ素子(51)に電圧を印加するための電圧印加用端子(15)が取り付けられている。
【0032】
乾燥器本体(11)の内側には、内槽部(16)が収容されている。内槽部(16)は、開口を有する箱状に形成されている。内槽部(16)の開口は、乾燥器本体(11)の開口と同じ向きに開いている。内槽部(16)は、ステンレスの鋼板等で構成される。内槽部(16)によって囲まれた空間は、コンデンサ素子(51)を収容可能な乾燥室(S)を構成している。
【0033】
真空乾燥器(10)は、図1に示すように、乾燥機構(20)と、制御部(30)とを備えている。
【0034】
乾燥機構(20)は、ヒーター(21)と、真空ポンプ(25)とを備えている。
【0035】
ヒーター(21)は、乾燥室(S)内を加熱するための加熱機構を構成している。ヒーター(21)は、内槽部(16)の外側に取り付けられている。ヒーター(21)によって内槽部(16)が加熱されると、内槽部(16)内の乾燥室(S)が昇温する。真空ポンプ(25)は、乾燥室(S)内を減圧するための減圧機構を構成している。真空ポンプ(25)は、配管(26)によって乾燥室(S)と繋がっている。真空ポンプ(25)が駆動すると、乾燥室(S)内の空気が配管(26)を通じて外部へ排出される。これにより、乾燥室(S)内が減圧される。
【0036】
制御部(30)は、絶縁抵抗計測器(40)で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗に基づいて、乾燥機構(20)を制御するように構成されている。制御部(30)の構成については、詳しくは後述する。
【0037】
絶縁抵抗計測器(40)は、真空乾燥器(10)によって乾燥されるコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測するためのものである。絶縁抵抗計測器(40)は、図3に示すように、絶縁抵抗計(41)と、素子設置台(45)とを備えている。
【0038】
絶縁抵抗計(41)は、乾燥器本体(11)の外側に配置されている。絶縁抵抗計(41)は、図4に示すように、直流電源部(42)と、固定抵抗(43)とが直列に接続された計測回路(41a)を備えている。この計測回路(41a)の両端は、ケーブル等によって、乾燥器本体(11)に取り付けられた電圧印加用端子(15)に接続される。
【0039】
なお、本実施形態1では、絶縁抵抗計(41)を、乾燥器本体(11)の外側に配置しているが、この限りでなく、例えば、乾燥器本体(11)に内蔵されていてもよい。また、絶縁抵抗計(41)の構成は上述のものに限らず、絶縁抵抗を計測可能であれば、どのような構成であってもよい。
【0040】
素子設置台(45)は、図3に示すように、乾燥室(S)内に配置されている。素子設置台(45)には、乾燥室(S)内で乾燥されるコンデンサ素子(51)が設置される。具体的には、素子設置台(45)は、一対の端子部(46,46)を備えていて、該一対の端子部(46,46)のそれぞれにコンデンサ素子(51)の外部端子(55,55)のそれぞれが接続される。これにより、コンデンサ素子(51)が素子設置台(45)に設置される。また、一対の端子部(46,46)は、それぞれ、ケーブル等によって、電圧印加用端子(15)に接続される。
【0041】
上記絶縁抵抗計測器(40)では、素子設置台(45)にコンデンサ素子(51)が設置された状態において直流電源部(42)がONされると、次の式(1)に基づいて、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が計測される。
【0042】
Rx=R0×(E/V0−1)…(1)
式(1)において、Rxはコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗、R0は固定抵抗(43)の抵抗、Eは直流電源部(42)の電圧、V0は固定抵抗(43)の電圧である。
【0043】
なお、式(1)において、E≫V0の場合(例えば、V0がEの1/100以下の場合)、式(1)は次の式(2)のように表すことができる。
【0044】
Rx=R0×E/V0…(2)
絶縁抵抗計(41)では、固定抵抗(43)の電圧V0が計測され、該電圧V0を式(1)又は式(2)に代入することによって、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxが算出される。絶縁抵抗計(41)では、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が、随時計測される。
【0045】
また、絶縁抵抗計(41)は、計測値送信部(44)を備えている。絶縁抵抗計(41)で随時計測されるコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxは、計測値送信部(44)から制御部(30)へ送信される。
【0046】
−制御部の構成−
制御部(30)は、上記絶縁抵抗計測器(40)で随時計測されるコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxが所定値Raを上回った場合、乾燥機構(20)(ヒーター(21)及び真空ポンプ(25))の駆動を停止するように構成されている。
【0047】
制御部(30)は、図5に示すように、記憶部(31)と、判定部(32)と、指令部(33)とを備えている。
【0048】
記憶部(31)には、絶縁抵抗の所定値Raが記憶されている。本実施形態1では、所定値Raは、フィルムコンデンサ(50)の絶縁抵抗の規格値(例えば100MΩ)よりも高い値に設定される。
【0049】
判定部(32)は、絶縁抵抗の所定値Raと、絶縁抵抗計(41)の計測値送信部(44)から随時送信されるコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxとを比較する。判定部(32)は、絶縁抵抗Rxが所定値Raを上回った場合、乾燥機構(20)を停止させるための乾燥停止条件が成立したと判定する。
【0050】
指令部(33)は、判定部(32)で乾燥停止条件が成立したと判定された場合(すなわち、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxが所定値Raを上回った場合)、ヒーター(21)へヒーター停止信号Shを送信するとともに、真空ポンプ(25)へポンプ停止信号Spを送信する。ヒーター停止信号Shを受信したヒーター(21)は乾燥室(S)の加熱を停止し、ポンプ停止信号Spを受信した真空ポンプ(25)は乾燥室(S)の減圧を停止する。
【0051】
−フィルムコンデンサ−
フィルムコンデンサ(50)は、電源供給回路の平滑コンデンサ等に用いられる。図6に示すように、フィルムコンデンサ(50)は、コンデンサ素子(51)と、絶縁カバー(57)と、封止樹脂(58)とを備えている。
【0052】
コンデンサ素子(51)は、巻芯(52)と、該巻芯(52)に巻回されたフィルム本体部としての巻回部(53)と、該巻回部(53)の軸方向両端部にそれぞれ設けられるメタリコン電極(54)と、各メタリコン電極(54)にそれぞれ電気的に接続される外部端子(55)とを備えている。
【0053】
巻芯(52)は、円筒状の樹脂部材で構成されている。なお、この円筒状の巻芯(52)の内部に金属製の芯部を設けてもよい。
【0054】
巻回部(53)は、フィルムコンデンサ用フィルムを構成する2枚の金属化フィルム(61,61)が厚さ方向に重ね合わされたものが、巻芯(52)に所定の回数巻回されて形成される。各金属化フィルム(61)は、図7に示すように、フィルム体(62)と、該フィルム体(62)の一方の面に形成される第1金属膜(63)と、フィルム体(62)の他方の面に形成される第2金属膜(64)とを有する。フィルム体(62)は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の絶縁性の樹脂材料で構成される。つまり、フィルム体(62)は、帯状の誘電体フィルムで構成される。
【0055】
メタリコン電極(54)は、コンデンサ素子(51)の軸方向端部に露出する2つの金属化フィルム(61,61)と電気的に導通する。外部端子(55)は、その基端部が巻芯(52)に対応する位置で、メタリコン電極(54)と電気的に接続している。これらの外部端子(55)は、メタリコン電極(54)の径方向外方に向かって延び、その先端部が封止樹脂(58)から外方に突出している。
【0056】
絶縁カバー(57)は、樹脂材料からなるシート状の部材を、円筒状の巻回部(53)の外周面に沿うように丸めて円筒状にしたものである。この絶縁カバー(57)は、巻回部(53)全体を覆うように設けられている。
【0057】
封止樹脂(58)は、絶縁カバー(57)、巻回部(53)、巻芯(52)、メタリコン電極(54)、及び外部端子(55)の基端部を封止している。すなわち、封止樹脂(58)は、コンデンサ素子(51)における、外部端子(55)の先端部を除く部分を封止している。なお、巻回部(53)の外周側を覆うように絶縁カバー(57)を配設しているが、この限りではなく、絶縁カバー(57)がなく、該巻回部(53)を封止樹脂(58)で直接、封止するような構成であってもよい。
【0058】
−フィルムコンデンサの製造方法−
フィルムコンデンサ(50)の製造方法について、図8を用いて説明する。
【0059】
まず、ステップS10で、巻芯(52)に2枚の金属化フィルム(61,61)を所定の回数巻回することにより、巻回部(53)を形成する。金属化フィルム(61,61)は、フィルム体(62)の両面にアルミニウム等が蒸着されることによって形成される。
【0060】
次に、巻回部(53)の両端面に金属を溶射してメタリコン電極(54)を形成し(ステップS20)、このメタリコン電極(54)に外部端子(55,55)を半田付け等によって取り付ける(ステップS30)。
【0061】
以上のステップS10、S20及びS30の工程により、巻芯(52)、巻回部(53)、メタリコン電極(54)及び外部端子(55)を備えたコンデンサ素子(51)が形成される。
【0062】
次に、ステップS40で、コンデンサ素子(51)をコンデンサ素子乾燥装置(1)によって乾燥する。ステップS40では、例えば作業者が、コンデンサ素子(51)を乾燥室(S)内に収容し、扉部(12)を閉じた後、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)を起動する。ヒーター(21)の起動によりコンデンサ素子(51)が加熱されるため、コンデンサ素子(51)に含まれる水分が蒸発し、コンデンサ素子(51)が乾燥される。しかも、真空ポンプ(25)の起動により、乾燥室(S)内が減圧されるため、コンデンサ素子(51)に含まれる水分が蒸発しやすくなる。従って、コンデンサ素子(51)が比較的短時間で乾燥される。
【0063】
従来は、コンデンサ素子の乾燥は、コンデンサ素子に含まれる水分の量に関係なく十分に長い時間行われていた。具体的には、コンデンサ素子の乾燥時間は、湿度の高い時期に形成される含水量の多いコンデンサ素子を基準として決定されていた。そして、この乾燥時間は、湿度の低い時期に形成される含水量の少ないコンデンサ素子にも適用されていた。
【0064】
しかし、上述のように乾燥時間を決定すると、全てのコンデンサ素子において含水量を十分に低減でき絶縁抵抗を所望の値以上にできる反面、含水量の少ないコンデンサ素子については、必要以上に長い時間乾燥されることになる。その結果、無駄なエネルギーが消費されることになったり、フィルムコンデンサの製造時間が長くなったりしてしまう。
【0065】
これに対して、本実施形態1では、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗に応じて、コンデンサ素子(51)の乾燥時間を決定している。具体的には、本実施形態1では、コンデンサ素子(51)の乾燥は、該コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が所定値Raを上回ると停止される。コンデンサ素子(51)の乾燥方法については、詳しくは後述する。
【0066】
次に、乾燥されたコンデンサ素子(51)の外周面に絶縁カバー(57)を巻きつける(ステップS50)。そして、該絶縁カバー(57)、巻回部(53)、巻芯(52)、メタリコン電極(54)、及び外部端子(55)の基端部を溶融した封止樹脂で覆い、該封止樹脂を硬化する(ステップS60)。これにより、コンデンサ素子(51)における外部端子(55)の先端部を除く部分が封止され、フィルムコンデンサが形成される。このステップS60により、コンデンサ素子(51)を封止する工程が行われる。
【0067】
このように、十分に乾燥されたコンデンサ素子(51)を樹脂で封止することにより、コンデンサ素子(51)に水分が侵入するのが抑制されるため、フィルムコンデンサの絶縁抵抗を維持できる。
【0068】
−コンデンサ素子の乾燥方法−
本実施形態では、ステップS10、S20及びS30で形成された多数のコンデンサ素子(51,51,…)を同時に乾燥する。ここで同時に乾燥される多数のコンデンサ素子(51,51,…)は、同一ロットのもの(同じ日に生産された素子)であり、概ね同じ湿度(例えば、±10%の範囲内)の下で形成されたものである。従って、これら同時に乾燥される多数のコンデンサ素子(51,51,…)については、含まれる水分量が概ね同じになるため、乾燥前における絶縁抵抗や、乾燥中における絶縁抵抗も、概ね同じになる。なお、上記多数のコンデンサ素子(51,51,…)は、同一ロットのものに限らず、概ね同じ湿度の下で形成されたものであればよい。
【0069】
コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥方法を、図9を用いて説明する。
【0070】
まず最初に、図10に示すように、乾燥対象となる多数のコンデンサ素子(51,51,…)のうちの1つを、素子設置台(45)にセットする(ステップS41a)。具体的には、コンデンサ素子(51)の各外部端子(55,55)を、素子設置台(45)の各端子部(46,46)に接続する。また、素子設置台(45)にセットされたコンデンサ素子(51)を除く残りのコンデンサ素子(51,51,…)をバスケット(70)に入れ、真空乾燥器(10)の乾燥室(S)内に収容する(ステップS41b)。なお、以下において、素子設置台(45)にセットされたコンデンサ素子(51)を、計測用コンデンサ素子(51)と呼ぶ場合もある。
【0071】
次に、ステップS42で、乾燥機構(20)(ヒーター(21)及び真空ポンプ(25))を起動する。これにより、乾燥室(S)内の昇温及び減圧が開始され、コンデンサ素子(51,51…)の乾燥が開始される。コンデンサ素子(51,51,…)に含まれる水分は、時間の経過とともに該コンデンサ素子(51,51,…)の外部へ徐々に放出される。なお、ステップS41a、S41b及びS42は、乾燥開始工程に相当する。
【0072】
次に、ステップS43では、絶縁抵抗計(41)が、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する計測工程を行う。本実施形態では、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗は、絶縁抵抗計(41)によって所定のタイミング毎に計測される。このように計測された絶縁抵抗Rxは、絶縁抵抗計(41)の計測値送信部(44)から制御部(30)の判定部(32)へ送信される。
【0073】
次に、ステップS44では、制御部(30)の判定部(32)が、計測値送信部(44)から送信された絶縁抵抗Rxと、記憶部(31)に記憶されている所定値Raとを比較し、乾燥停止条件が成立しているか否かを判定する判定工程を行う。具体的には、RxがRa以下の場合、判定部(32)は乾燥停止条件が成立していないと判定し、再びステップS43が行われる。RxがRaを上回った場合、判定部(32)は乾燥停止条件が成立したと判定し、ステップS45が行われる。
【0074】
通常、コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥が開始された直後は、コンデンサ素子(51,51,…)に含まれる水分は十分に除去されておらず、絶縁抵抗は十分に高くなっていない。よって、該コンデンサ素子(51,51,…)の絶縁抵抗Rxは所定値Raよりも低くなっている。従って、コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥が開始されてから暫くは、ステップS43とステップS44とが繰り返される。その間、コンデンサ素子(51,51,…)の絶縁抵抗は徐々に高くなる。そして、コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥が開始されてからある程度時間が経過し、RxがRaよりも大きくなると、ステップS45が行われる。
【0075】
ステップS45では、制御部(30)の指令部(33)が乾燥停止工程を行う。具体的には、制御部(30)の指令部(33)が、ヒーター(21)へヒーター停止信号Shを送信するとともに、真空ポンプ(25)へポンプ停止信号Spを送信する。ヒーター停止信号Shを受信したヒーター(21)、及びポンプ停止信号Spを受信した真空ポンプ(25)は、ともに停止する。その後、作業者によって、計測用コンデンサ素子(51)とバスケット(70)に収容されたコンデンサ素子(51,51,…)とが、乾燥器本体(11)から取り出される(ステップS46)。
【0076】
−実施形態1の効果−
以上のように、実施形態1では、乾燥中の計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が所定値Raを上回った場合、乾燥機構(20)が停止される。所定値Raは、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗の規格値よりも高い値に設定されているため、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を確実に所望の値以上にできる。
【0077】
また、本実施形態1で同時に乾燥される多数のコンデンサ素子(51,51,…)は、含水量が概ね同じであるため、乾燥中における絶縁抵抗の値もほぼ同じである。よって、同時に乾燥される多数のコンデンサ素子(51,51,…)のうちの1つ(計測用コンデンサ素子)の絶縁抵抗を計測すれば、残りのコンデンサ素子(51,51,…)の絶縁抵抗を計測する必要がなくなる。従って、計測用コンデンサ素子(51)以外のコンデンサ素子(51,51,…)については、素子設置台(45)への設置や、絶縁抵抗の計測に必要な電圧の印加を行わなくても、絶縁抵抗を十分に確保できる。
【0078】
また、従来の場合、コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥が必要以上長い時間行われていたのに対して、本実施形態1では、コンデンサ素子(51,51,…)の絶縁抵抗が所望の値を上回った場合に乾燥が停止される。従って、従来と比べてコンデンサ素子(51,51,…)を乾燥するのに必要なエネルギーを低減できる。
【0079】
しかも、本実施形態1では、乾燥停止条件の算出や、乾燥機構(20)の停止が、制御部(30)によって自動で行われるため、作業者の作業工数を低減できる。
【0080】
−実施形態1の変形例−
実施形態1の変形例におけるコンデンサ素子乾燥装置(1)は、図11に示すように、上記実施形態1の場合と比べて制御部(30)が省略された構成となっている。そして、本変形例のコンデンサ素子(51)の乾燥方法では、上記実施形態1において制御部(30)によって行われていた工程が、作業者によって行われる。具体的には、本変形例では、図9におけるステップS44及びS45の工程が、作業者によって行われる。
【0081】
ステップS44では、作業者は、絶縁抵抗計(41)で随時計測される絶縁抵抗Rxを目視し、該Rxが所定値Raを上回った場合、作業者は、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)の電源を切る(ステップS45)。
【0082】
このように、コンデンサ素子乾燥装置(1)において、制御部(30)を省略した構成であっても、作業者がステップS44及びS45を行うことで、コンデンサ素子(51)の絶縁性を確保しつつ、従来と比べて、コンデンサ素子(51)を乾燥するためのエネルギーを低減できる。
【0083】
《発明の実施形態2》
実施形態2では、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)を停止させるための乾燥停止条件が、上記実施形態1とは異なる。本実施形態2は、上記実施形態1の場合と比べて、絶縁抵抗計(41)の動作、制御部(30)の構成、及びコンデンサ素子(51)の乾燥方法が異なる。以下では、上記実施形態1と異なる点について説明する。
【0084】
−絶縁抵抗計の動作−
絶縁抵抗計(41)では、コンデンサ素子(51)の乾燥が開始された後、該コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が2回、計測される。具体的には、絶縁抵抗計(41)では、コンデンサ素子(51)の乾燥が開始されてから所定時間経過後にコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1が計測され、該Rx1が計測されてから所定時間経過後、再び該コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx2が計測される。これらの絶縁抵抗Rx1及びRx2は、計測値送信部(44)によって制御部(30)へ送信される。
【0085】
−制御部の構成−
制御部(30)は、図12に示すように、記憶部(31)と、算出部(34)と、判定部(32)と、指令部(33)とを備えている。
【0086】
記憶部(31)には、実施形態1の場合と同様、絶縁抵抗の所定値Raが記憶されている。本実施形態2では、所定値Raは、フィルムコンデンサ(50)の絶縁抵抗の規格値(例えば100MΩ)よりも高い値に設定される。
【0087】
算出部(34)は、変化量算出部(34a)と、残り乾燥時間算出部(34b)とを備えている。
【0088】
変化量算出部(34a)は、絶縁抵抗計(41)の計測値送信部(44)から送信される2つの絶縁抵抗Rx1及びRx2に基づいて、乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗の所定時間における変化量ΔRを算出する。所定時間における変化量ΔRは、次の式(3)に基づいて算出される。
【0089】
ΔR=(Rx2−Rx1)/ΔT…(3)
式(3)において、ΔTは、Rx1を計測してからRx2を計測するまでの時間である。
【0090】
変化量算出部(34a)は、このように算出されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗の所定時間における変化量ΔRを、残り乾燥時間算出部(34b)へ送信する。
【0091】
残り乾燥時間算出部(34b)は、記憶部(31)に記憶されている絶縁抵抗の所定値Raと、変化量算出部(34a)から送信される上記ΔRに基づいて、コンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txを算出する。本実施形態2では、残りの乾燥時間Txは、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗がTx経過後にRaとなるように設定される。具体的には、残りの乾燥時間Txは、次の式(4)の基づいて算出される。
【0092】
Tx=(Ra−Rx2)/ΔR…(4)
残り乾燥時間算出部(34b)は、このように算出された残りの乾燥時間Txを、判定部(32)へ送信する。
【0093】
判定部(32)は、タイマー部(32a)を備えている。タイマー部(32a)は、絶縁抵抗計(41)によってコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx2が計測されたときに起動する。タイマー部(32a)では、該タイマー部(32a)が起動してからの時間Tが計測される。
【0094】
判定部(32)は、残りの乾燥時間Txと、タイマー部(32a)が起動してからの時間Tとを比較する。判定部(32)は、上記タイマー部(32a)が起動してからの時間Tが残りの乾燥時間Txを上回った場合、乾燥機構(20)を停止させるための乾燥停止条件が成立したと判定する。
【0095】
指令部(33)は、判定部(32)で乾燥停止条件が成立したと判定された場合(すなわち、TがTxを上回った場合)、ヒーター(21)へヒーター停止信号Shを送信するとともに、真空ポンプ(25)へポンプ停止信号Spを送信する。ヒーター停止信号Shを受信したヒーター(21)は乾燥室(S)の加熱を停止し、ポンプ停止信号Spを受信した真空ポンプ(25)は乾燥室(S)の減圧を停止する。
【0096】
−コンデンサ素子の乾燥方法−
本実施形態2では、上記実施形態1と同様、ステップS10、S20及びS30で形成された多数のコンデンサ素子(51,51,…)を同時に乾燥する。
【0097】
実施形態2におけるコンデンサ素子(51,51,…)の乾燥方法を、図13を用いて説明する。
【0098】
まず最初に、実施形態1の場合と同様、乾燥対象となる多数のコンデンサ素子(51,51,…)のうちの1つを計測用コンデンサ素子(51)として素子設置台(45)にセットし(ステップS41a)、残りのコンデンサ素子(51,51,…)をバスケット(70)に入れ、真空乾燥器(10)の乾燥室(S)内に収容する(ステップS41b)。その後、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)を起動する(ステップS42)。ステップS41a、S41b及びS42により、乾燥開始工程が行われる。
【0099】
次に、ステップS43では、絶縁抵抗計(41)が、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する計測工程を行う。本実施形態2では、コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥が開始されてから所定時間経過後にRx1が計測され、該Rx1が計測されてから所定時間経過後にRx2が計測される。
【0100】
次に、ステップS44aでは、変化量算出部(34a)が、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗の所定時間における変化量ΔRを算出する。
【0101】
次に、ステップS44bでは、残り乾燥時間算出部(34b)が、記憶部(31)に記憶されている所定値Raと、ステップS44aで算出されたΔRとに基づいて、残りの乾燥時間Txを算出する。
【0102】
次に、ステップS44cでは、判定部(32)が、タイマー部(32a)が起動してからの時間Tと、ステップS44bで算出された残りの乾燥時間Txとを比較し、乾燥停止条件が成立しているか否かを判定する。具体的には、TがTx以下の場合、判定部(32)は乾燥停止条件が成立していないと判定し、再びステップS44cを行う。TがTxを上回った場合、判定部(32)は乾燥停止条件が成立したと判定し、ステップS45が行われる。なお、ステップS44a、S44b及びS44cが、判定工程に相当する。
【0103】
ステップS46では、実施形態1の場合と同様、制御部(30)の指令部(33)が乾燥停止工程を行う。具体的には、制御部(30)の指令部(33)が、ヒーター(21)へヒーター停止信号Shを送信するとともに、真空ポンプ(25)へポンプ停止信号Spを送信する。ヒーター停止信号Shを受信したヒーター(21)、及びポンプ停止信号Spを受信した真空ポンプ(25)は、ともに停止する。その後、作業者によって、計測用コンデンサ素子(51)とバスケット(70)に収容されたコンデンサ素子(51,51,…)とが、乾燥器本体(11)から取り出される(ステップS46)。
【0104】
−実施形態2の効果−
以上のように、実施形態2では、乾燥中の計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗に基づいて、コンデンサ素子(51)を十分に乾燥するために必要な残りの乾燥時間Txを算出している。そして、残りの乾燥時間Tx経過後に乾燥機構(20)が停止される。従って、コンデンサ素子(51,51,…)の絶縁性を確保しつつ、コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥に必要なエネルギーを低減できる。
【0105】
また、実施形態2では、計測されるコンデンサ素子(51)の特性、具体的には、乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗の所定時間における変化量ΔRを、直接、計測している。
【0106】
例えば、乾燥中のコンデンサ素子の絶縁抵抗が1回だけ計測され、該計測値のみを用いて残りの乾燥時間を算出する場合、コンデンサ素子における上記ΔRを予測し、該ΔRに基づいて残りの乾燥時間を算出する必要がある。しかし、こうすると、実際に絶縁抵抗が計測されるコンデンサ素子(51)の特性が、予測されるコンデンサ素子の特性と異なる場合、算出された残りの乾燥時間と、本来必要な残りの乾燥時間との間に大きなずれが生じる虞がある。
【0107】
これに対して、実施形態2では、上記ΔRを実際に計測し、該ΔRに基づいて残りの乾燥時間Txを算出している。こうすると、算出される残りの乾燥時間Txと、本来必要な残りの乾燥時間との間のずれが少なくなる。従って、コンデンサ素子(51)の乾燥不足や、乾燥に用いられるエネルギーの無駄を回避できる。
【0108】
また、本実施形態2によれば、残りの乾燥時間Txを算出するために必要な計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx2が計測された後は、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する必要がない。従って、計測用コンデンサ素子(51)に電圧が印加される時間を短くしたり、絶縁抵抗計(41)に必要な電力を低減できる。
【0109】
−実施形態2の変形例−
実施形態2の変形例におけるコンデンサ素子乾燥装置(1)は、実施形態1の変形例と同様、図11に示すように、制御部(30)が省略された構成となっている。そして、本変形例のコンデンサ素子(51)の乾燥方法では、上記実施形態2では制御部(30)によって行われていた工程が、作業者によって行われる。具体的には、本変形例では、図12におけるステップS43、S44a、S44b、S44c及びS45の工程が、作業者によって行われる。
【0110】
ステップS43では、作業者は、コンデンサ素子(51)の乾燥が開始されてから所定時間経過後、絶縁抵抗計(41)で計測される絶縁抵抗Rx1を読み取る。そして、Rx1が計測されてから所定時間経過後、絶縁抵抗計(41)で計測される絶縁抵抗Rx2を読み取る。また、作業者は、Rx1を計測してからRx2を計測するまでの時間を、タイマー等によって計測する。
【0111】
ステップS44aでは、作業者は、ステップS43で計測した絶縁抵抗Rx1、絶縁抵抗Rx2、及びRx1とRx2とが計測される間の時間ΔTを、式(3)に代入することにより、所定時間における変化量ΔRを算出する。
【0112】
次に、ステップS44bでは、作業者は、予め設定された絶縁抵抗の所定値Raと、上記Rx2及びΔRとを、式(4)に代入することにより、残りの乾燥時間Txを算出する。
【0113】
そして、作業者は、Rx2が計測されてから上記残りの乾燥時間Txが経過した後(ステップS44cにおいてYesの場合)、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)の電源を切る(ステップS45)。
【0114】
このように、コンデンサ素子乾燥装置(1)において、制御部(30)を省略した構成であっても、作業者がステップS43、S44a、S44b、S44c及びS45を行うことで、コンデンサ素子(51)の絶縁性を確保しつつ、コンデンサ素子(51)を乾燥するためのエネルギーを低減できる。
【0115】
《発明の実施形態3》
実施形態3では、上記実施形態2の場合と比べて、残りの乾燥時間Txの算出方法が異なる。具体的には、本実施形態3では、上記実施形態2の場合と比べて、絶縁抵抗計(41)の動作、制御部(30)の構成、及びコンデンサ素子(51)の乾燥方法が異なっている。以下では、上記実施形態2と異なる点について説明する。
【0116】
−絶縁抵抗計の動作−
絶縁抵抗計(41)では、コンデンサ素子(51)の乾燥が開始されてから所定時間経過後、該コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が1回、計測される(この絶縁抵抗をRx3とする)。このRx3は、計測値送信部(44)によって制御部(30)へ送信される。
【0117】
−制御部の構成−
制御部(30)は、図14に示すように、記憶部(31)と、算出部(34)と、判定部(32)と、指令部(33)とを備えている。
【0118】
記憶部(31)には、テーブルAが記憶されている。このテーブルAをプロットしたグラフを図15に示す。テーブルAは、乾燥中のコンデンサ素子の絶縁抵抗と残りの乾燥時間との関係を表すものであって、実験等によって予め作成されたものである。このテーブルAによれば、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗の測定値Rx3に基づいて、残りの乾燥時間Txを算出することができる。
【0119】
算出部(34)は、絶縁抵抗計(41)の計測値送信部(44)から送信される絶縁抵抗Rx3を、記憶部(31)に記憶されているテーブルAに照らし合わせて、残りの乾燥時間Txを算出する。例えば、Rx3が10MΩであった場合、この値をテーブルAに照らし合わせると、残りの乾燥時間Txが10時間であると算出される。算出部(34)は、このように算出された残りの乾燥時間Txを、判定部(32)へ送信する。
【0120】
判定部(32)は、上記実施形態2の場合と同様、タイマー部(32a)を備えている。タイマー部(32a)は、絶縁抵抗計(41)によってコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx3が計測されたときに起動する。タイマー部(32a)では、該タイマー部(32a)が起動してからの時間Tが計測される。そして、判定部(32)では、TがTxを上回った場合、乾燥機構(20)を停止させるための乾燥停止条件が成立したと判定し、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)のそれぞれにヒータ停止信号Sh及びポンプ停止信号Spを送信して、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)を停止する。
【0121】
−コンデンサ素子の乾燥方法−
本実施形態3では、上記実施形態1及び2の場合と同様、図16に示すように、1つのコンデンサ素子を計測用コンデンサ素子(51)として素子設置台(45)にセットし(ステップS41a)、残りのコンデンサ素子(51,51,…)をバスケット(70)に入れて真空乾燥器(10)の乾燥室(S)内に収容する(ステップS41b)。その後、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)を起動する(ステップS42)。
【0122】
次に、ステップS43では、絶縁抵抗計(41)が、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する計測工程を行う。本実施形態3では、コンデンサ素子(51)の乾燥が開始されてから所定時間経過後にRx3が計測される。
【0123】
次に、ステップS44bでは、算出部(34)が、ステップS43で計測された絶縁抵抗Rx3を、記憶部(31)に記憶されているテーブルAと照らし合わせることにより、残りの乾燥時間Txを算出する。
【0124】
以下、ステップS44c以降の工程は、上記実施形態2と同じであるため、説明を省略する。
【0125】
−実施形態3の効果−
以上のように、実施形態3では、乾燥中の計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗と、予め準備されるテーブルAとに基づいて、コンデンサ素子(51,51,…)を十分に乾燥するために必要な残りの乾燥時間Txを算出している。そして、残りの乾燥時間Tx経過後に乾燥機構(20)が停止される。従って、コンデンサ素子(51,51,…)の絶縁性を確保しつつ、コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥に必要なエネルギーを低減できる。
【0126】
また、本実施形態2によれば、残りの乾燥時間Txを算出するために必要な計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx3が計測された後は、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する必要がない。従って、計測用コンデンサ素子(51)に電圧が印加される時間を短くしたり、絶縁抵抗計(41)に必要な電力を低減できる。
【0127】
−実施形態3の変形例−
実施形態3の変形例におけるコンデンサ素子乾燥装置(1)は、実施形態1の変形例及び実施形態2の変形例の場合と同様、図11に示すように、制御部(30)が省略された構成となっている。そして、本変形例のコンデンサ素子(51)の乾燥方法では、上記実施形態3では制御部(30)によって行われていた工程が、作業者によって行われる。具体的には、本変形例では、図16におけるステップS43、S44b、S44c及びS45の工程が、作業者によって行われる。
【0128】
ステップS43では、作業者は、コンデンサ素子(51)の乾燥が開始されてから所定時間経過後、絶縁抵抗計(41)で計測される絶縁抵抗Rx3を読み取る。
【0129】
ステップS44bでは、作業者は、ステップS43で計測された絶縁抵抗Rx3を、予め準備されたテーブルAに照らし合わせて、残りの乾燥時間Txを算出する。
【0130】
そして、作業者は、Rx3が計測されてから上記残りの乾燥時間Txが経過した後(ステップS44cにおいてYesの場合)、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)の電源を切る(ステップS45)。
【0131】
このように、コンデンサ素子乾燥装置(1)において、制御部(30)を省略した構成であっても、作業者がステップS43、S44b、S44c及びS45を行うことで、コンデンサ素子(51)の絶縁性を確保しつつ、コンデンサ素子(51)を乾燥するためのエネルギーを低減できる。
【0132】
−その他の実施形態−
上記実施形態については、以下のような構成にしてもよい。
【0133】
上記各実施形態では、金属化フィルム(61)を巻回した巻回部(53)を有するコンデンサ素子(51)の乾燥方法について記載しているが、この限りでなく、金属電極と誘電体とを交互に重ねることによって形成される、いわゆる積層コンデンサを対象とすることもできる。
【0134】
また、上記各実施形態では、乾燥機構(20)は、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)を備えているが、この限りでなく、ヒーター(21)のみを備えた構成であってもよい。
【0135】
また、上記各実施形態では、絶縁抵抗計測器(40)を、1つのコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測可能なように構成しているが、この限りでなく、複数のコンデンサ素子(51,51,…)の絶縁抵抗を計測可能なように構成してもよい。こうすると、コンデンサ素子(51)毎の絶縁抵抗のばらつきを加味して乾燥停止条件を決定することができるため、コンデンサ素子(51,51,…)をより確実に乾燥することができる。
【産業上の利用可能性】
【0136】
以上説明したように、本発明は、フィルムコンデンサに有用である。
【符号の説明】
【0137】
1 コンデンサ素子乾燥装置
20 乾燥機構
30 制御部
40 絶縁抵抗計測器
50 フィルムコンデンサ(コンデンサ)
51 コンデンサ素子
53 巻回部(フィルム本体部)
61 金属化フィルム(フィルム)
Rx,Rx1,Rx2,Rx3 絶縁抵抗
Ra 所定値
Tx 残りの乾燥時間
ΔR 所定時間における変化量
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムが巻回又は積層されて形成されたフィルム本体部を有するコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルムコンデンサのフィルムに含まれる水分の影響による絶縁抵抗不良を低減するために、例えば特許文献1に開示されるように、コンデンサの製造工程において、フィルムあるいはコンデンサ素子(フィルム本体部)を乾燥することが知られている。これにより、フィルムに含まれる水分が外部へ放出されるため、該フィルム本体部を用いて形成されるフィルムコンデンサの絶縁抵抗の低下を抑制できる。
【0003】
更に、上述のように乾燥されたフィルム本体部は、例えば上記特許文献1に開示されるように、耐湿性を有する樹脂材料等によって封止される。これにより、フィルム本体部と外気とが遮断され、フィルムコンデンサの高い絶縁性が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭55−102219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フィルム本体部に含まれる水分の量は、該フィルム本体部が製造される湿度の違い(季節によって湿度は大きく異なる)や、フィルム本体部の個体差による特性のばらつき等によってばらつく。これに対して、従来は、全てのフィルム本体部を確実に乾燥できるような十分に余裕をもった長い時間、該フィルム本体部を乾燥していた。しかし、こうすると、含有される水分量が比較的少ないフィルム本体部については、必要以上に長い時間乾燥されることになる。その結果、無駄なエネルギーが消費されてしまう。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルム本体部を有するコンデンサ素子の乾燥時間を短くしつつコンデンサ素子の絶縁性を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、コンデンサ素子の乾燥方法を対象とし、フィルム(61)が巻回又は積層されて形成されたフィルム本体部(53)を有するコンデンサ素子(51)の乾燥を開始する乾燥開始工程と、乾燥中の上記コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する計測工程と、上記コンデンサ素子(51)の乾燥を停止させる乾燥停止条件が成立するか否かを、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて判定する判定工程と、該判定工程において上記乾燥停止条件が成立したと判定された場合、上記コンデンサ素子(51)の乾燥を停止する乾燥停止工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
第1の発明では、コンデンサ素子(51)が乾燥されるため、該コンデンサ素子(51)に含まれる水分が蒸発する。その結果、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が高くなる。
【0009】
第1の発明では、乾燥開始工程によって乾燥が開始されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が計測され、この絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて、コンデンサ素子(51)の乾燥を停止させる乾燥停止条件が成立するか否かが判定される。乾燥停止条件が成立していないと判定された場合には、コンデンサ素子(51)の乾燥は継続され、乾燥停止条件が成立したと判定された場合には、コンデンサ素子(51)の乾燥は停止される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、上記計測工程では、乾燥中の上記コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が随時計測され、上記判定工程では、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxが所定値Raを上回った場合、上記乾燥停止条件が成立したと判定されることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、計測工程において、乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が、随時計測される。この計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxが所定値Raを上回った場合、乾燥停止条件が成立したと判定され、コンデンサ素子(51)の乾燥が停止される。
【0012】
第3の発明は、第1の発明において、上記判定工程では、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2,Rx3に基づいて上記コンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txが算出され、該残りの乾燥時間Txが経過した場合、上記乾燥停止条件が成立したと判定されることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2,Rx3に基づいて、該コンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txが算出される。そして、この残りの乾燥時間Txが経過した場合、乾燥停止条件が成立したと判定され、コンデンサ素子(51)の乾燥が停止される。
【0014】
第4の発明は、第3の発明において、上記判定工程では、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2の所定時間における変化量ΔRが算出され、該変化量ΔRに基づいて上記コンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txが算出されることを特徴とする。
【0015】
第4の発明では、計測工程において、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が、時間をおいて少なくとも2回計測される。このように計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2に基づいて、該コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2の所定時間における変化量ΔRが算出される。そして、該ΔRに基づいて、コンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txが算出される。この残りの乾燥時間Txが経過した場合、乾燥停止条件が成立したと判定され、コンデンサ素子(51)の乾燥が停止される。
【0016】
第5の発明は、コンデンサの製造方法を対象とし、上記第1から第4の発明によって乾燥されたコンデンサ素子(51)を封止する工程を備えることを特徴とする。
【0017】
第5の発明では、第1から第4の発明によって乾燥されたコンデンサ素子(51)が封止されてコンデンサが形成される。これにより、コンデンサ素子(51)は、外気に含まれる水分に触れないように密閉される。
【0018】
第6の発明は、コンデンサ素子乾燥装置を対象とし、フィルム(61)が巻回又は積層されて形成されたフィルム本体部(53)を有するコンデンサ素子(51)を乾燥する乾燥機構(20)と、該乾燥機構(20)で乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する絶縁抵抗計測器(40)と、該絶縁抵抗計測器(40)によって計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて上記乾燥機構(20)を制御する制御部(30)とを備えることを特徴とする。
【0019】
第6の発明では、乾燥機構(20)で乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が、絶縁抵抗計測器(40)によって計測され、該絶縁抵抗計測器(40)によって計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて、制御部(30)が乾燥機構(20)を制御する。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて乾燥停止条件を判定することで、乾燥中のコンデンサ素子(51)に含まれる水分量を直接的に把握しながら、乾燥停止条件を判定している。こうすると、乾燥時間が過剰とならないため乾燥エネルギーを低減できる。しかも、乾燥時間が不足しないためコンデンサ素子(51)を十分に乾燥できる。
【0021】
また、第2の発明によれば、乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxが所定値Raを上回った場合、コンデンサ素子(51)の乾燥が停止される。この所定値Raを適切な値に設定することで、コンデンサ素子(51)の絶縁性を確実に確保できる。
【0022】
また、第3の発明によれば、算出されたコンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txの経過後、コンデンサ素子(51)の乾燥が停止される。こうすると、残りの乾燥時間Txを算出した後、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxを計測する必要がなくなる。従って、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxを計測する時間を短くできる。
【0023】
また、第4の発明によれば、乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2が、時間をおいて少なくとも2回計測され、これらの絶縁抵抗Rx1,Rx2を用いて残りの乾燥時間Txを算出している。
【0024】
例えば、乾燥中のコンデンサ素子の絶縁抵抗が1回だけ計測され、該計測値のみを用いて残りの乾燥時間を算出する場合、コンデンサ素子の特性(具体的には、乾燥中のコンデンサ素子の絶縁抵抗の所定時間における変化量)を予測し、その予測された特性に基づいて残りの乾燥時間を算出する必要がある。しかし、こうすると、実際に絶縁抵抗が計測されるコンデンサ素子(51)の特性が、予測されるコンデンサ素子の特性と異なる場合、算出された残りの乾燥時間と、本来必要な残りの乾燥時間との間に大きなずれが生じる虞がある。
【0025】
これに対して、第4の発明では、コンデンサ素子の特性(乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗の所定時間における変化量ΔR)を実際に計測し、その値に基づいて残りの乾燥時間Txを算出している。こうすると、算出される残りの乾燥時間Txと、本来必要な残りの乾燥時間との間のずれを少なくできる。従って、コンデンサ素子(51)の乾燥不足や、乾燥に用いられるエネルギーの無駄を回避できる。
【0026】
また、第5の発明によれば、第1から第4の発明によって十分に乾燥されたコンデンサ素子(51)を封止することによりコンデンサが形成されるため、コンデンサの絶縁性を十分に確保できる。しかも、上記第1から第4の発明によるコンデンサ素子(51)を乾燥するためのエネルギーは従来よりも低いため、コンデンサの製造時に使用されるエネルギーを低減できる。
【0027】
また、第6の発明によれば、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて乾燥機構(20)が制御されるため、コンデンサ素子(51)の絶縁性を十分に確保しつつ、コンデンサ素子(51)の乾燥に必要なエネルギーを低減できる。しかも、コンデンサ素子(51)の乾燥は、制御部(30)によって自動で制御されるため、作業者の作業工数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、実施形態1に係るコンデンサ素子乾燥装置の概略構成図である。
【図2】図2は、乾燥器本体の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、絶縁抵抗計測器の概略構成図である。
【図4】図4は、コンデンサ素子の絶縁抵抗を算出するための等価回路図である。
【図5】図5は、制御部の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、フィルムコンデンサの概略構成を示す縦断面図である。
【図7】図7は、2枚の金属化フィルムを重ね合わせた状態を示す断面図である。
【図8】図8は、フィルムコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【図9】図9は、コンデンサ素子の乾燥方法を示すフローチャートである。
【図10】図10は、コンデンサ素子を乾燥中の乾燥器本体内の様子を示す図である。
【図11】図11は、実施形態1から3の変形例に係るコンデンサ素子乾燥装置の概略構成図である。
【図12】図12は、実施形態2の制御部の構成を示すブロック図である。
【図13】図13は、実施形態2におけるコンデンサ素子の乾燥方法を示すフローチャートである。
【図14】図14は、実施形態3の制御部の構成を示すブロック図である。
【図15】図15は、乾燥中のコンデンサ素子の絶縁抵抗と残りの乾燥時間との関係を表すグラフである。
【図16】図16は、実施形態3におけるコンデンサ素子の乾燥方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0030】
《発明の実施形態1》
−全体構成−
実施形態1に係るコンデンサ素子乾燥装置(1)は、図1に示すように、真空乾燥器(10)と、絶縁抵抗計測器(40)とを備えている。真空乾燥器(10)は、フィルムコンデンサ(50)のコンデンサ素子(51)を乾燥させるためのものであり、絶縁抵抗計測器(40)は、真空乾燥器(10)によって乾燥されるコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測するためのものである。
【0031】
真空乾燥器(10)は、図2に示すように、開口を有する箱状の乾燥器本体(11)と、該乾燥器本体(11)の開口を開閉可能な扉部(12)とを備えている。扉部(12)は、ヒンジ部(13)を介して乾燥器本体(11)に取り付けられている。扉部(12)の中央部には、耐熱性を有するガラス等で構成された観測窓(14)が設けられていて、乾燥器本体(11)の内部を観測することができるようになっている。また、乾燥器本体(11)には、該乾燥器本体(11)の内部に収容されたコンデンサ素子(51)に電圧を印加するための電圧印加用端子(15)が取り付けられている。
【0032】
乾燥器本体(11)の内側には、内槽部(16)が収容されている。内槽部(16)は、開口を有する箱状に形成されている。内槽部(16)の開口は、乾燥器本体(11)の開口と同じ向きに開いている。内槽部(16)は、ステンレスの鋼板等で構成される。内槽部(16)によって囲まれた空間は、コンデンサ素子(51)を収容可能な乾燥室(S)を構成している。
【0033】
真空乾燥器(10)は、図1に示すように、乾燥機構(20)と、制御部(30)とを備えている。
【0034】
乾燥機構(20)は、ヒーター(21)と、真空ポンプ(25)とを備えている。
【0035】
ヒーター(21)は、乾燥室(S)内を加熱するための加熱機構を構成している。ヒーター(21)は、内槽部(16)の外側に取り付けられている。ヒーター(21)によって内槽部(16)が加熱されると、内槽部(16)内の乾燥室(S)が昇温する。真空ポンプ(25)は、乾燥室(S)内を減圧するための減圧機構を構成している。真空ポンプ(25)は、配管(26)によって乾燥室(S)と繋がっている。真空ポンプ(25)が駆動すると、乾燥室(S)内の空気が配管(26)を通じて外部へ排出される。これにより、乾燥室(S)内が減圧される。
【0036】
制御部(30)は、絶縁抵抗計測器(40)で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗に基づいて、乾燥機構(20)を制御するように構成されている。制御部(30)の構成については、詳しくは後述する。
【0037】
絶縁抵抗計測器(40)は、真空乾燥器(10)によって乾燥されるコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測するためのものである。絶縁抵抗計測器(40)は、図3に示すように、絶縁抵抗計(41)と、素子設置台(45)とを備えている。
【0038】
絶縁抵抗計(41)は、乾燥器本体(11)の外側に配置されている。絶縁抵抗計(41)は、図4に示すように、直流電源部(42)と、固定抵抗(43)とが直列に接続された計測回路(41a)を備えている。この計測回路(41a)の両端は、ケーブル等によって、乾燥器本体(11)に取り付けられた電圧印加用端子(15)に接続される。
【0039】
なお、本実施形態1では、絶縁抵抗計(41)を、乾燥器本体(11)の外側に配置しているが、この限りでなく、例えば、乾燥器本体(11)に内蔵されていてもよい。また、絶縁抵抗計(41)の構成は上述のものに限らず、絶縁抵抗を計測可能であれば、どのような構成であってもよい。
【0040】
素子設置台(45)は、図3に示すように、乾燥室(S)内に配置されている。素子設置台(45)には、乾燥室(S)内で乾燥されるコンデンサ素子(51)が設置される。具体的には、素子設置台(45)は、一対の端子部(46,46)を備えていて、該一対の端子部(46,46)のそれぞれにコンデンサ素子(51)の外部端子(55,55)のそれぞれが接続される。これにより、コンデンサ素子(51)が素子設置台(45)に設置される。また、一対の端子部(46,46)は、それぞれ、ケーブル等によって、電圧印加用端子(15)に接続される。
【0041】
上記絶縁抵抗計測器(40)では、素子設置台(45)にコンデンサ素子(51)が設置された状態において直流電源部(42)がONされると、次の式(1)に基づいて、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が計測される。
【0042】
Rx=R0×(E/V0−1)…(1)
式(1)において、Rxはコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗、R0は固定抵抗(43)の抵抗、Eは直流電源部(42)の電圧、V0は固定抵抗(43)の電圧である。
【0043】
なお、式(1)において、E≫V0の場合(例えば、V0がEの1/100以下の場合)、式(1)は次の式(2)のように表すことができる。
【0044】
Rx=R0×E/V0…(2)
絶縁抵抗計(41)では、固定抵抗(43)の電圧V0が計測され、該電圧V0を式(1)又は式(2)に代入することによって、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxが算出される。絶縁抵抗計(41)では、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が、随時計測される。
【0045】
また、絶縁抵抗計(41)は、計測値送信部(44)を備えている。絶縁抵抗計(41)で随時計測されるコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxは、計測値送信部(44)から制御部(30)へ送信される。
【0046】
−制御部の構成−
制御部(30)は、上記絶縁抵抗計測器(40)で随時計測されるコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxが所定値Raを上回った場合、乾燥機構(20)(ヒーター(21)及び真空ポンプ(25))の駆動を停止するように構成されている。
【0047】
制御部(30)は、図5に示すように、記憶部(31)と、判定部(32)と、指令部(33)とを備えている。
【0048】
記憶部(31)には、絶縁抵抗の所定値Raが記憶されている。本実施形態1では、所定値Raは、フィルムコンデンサ(50)の絶縁抵抗の規格値(例えば100MΩ)よりも高い値に設定される。
【0049】
判定部(32)は、絶縁抵抗の所定値Raと、絶縁抵抗計(41)の計測値送信部(44)から随時送信されるコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxとを比較する。判定部(32)は、絶縁抵抗Rxが所定値Raを上回った場合、乾燥機構(20)を停止させるための乾燥停止条件が成立したと判定する。
【0050】
指令部(33)は、判定部(32)で乾燥停止条件が成立したと判定された場合(すなわち、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxが所定値Raを上回った場合)、ヒーター(21)へヒーター停止信号Shを送信するとともに、真空ポンプ(25)へポンプ停止信号Spを送信する。ヒーター停止信号Shを受信したヒーター(21)は乾燥室(S)の加熱を停止し、ポンプ停止信号Spを受信した真空ポンプ(25)は乾燥室(S)の減圧を停止する。
【0051】
−フィルムコンデンサ−
フィルムコンデンサ(50)は、電源供給回路の平滑コンデンサ等に用いられる。図6に示すように、フィルムコンデンサ(50)は、コンデンサ素子(51)と、絶縁カバー(57)と、封止樹脂(58)とを備えている。
【0052】
コンデンサ素子(51)は、巻芯(52)と、該巻芯(52)に巻回されたフィルム本体部としての巻回部(53)と、該巻回部(53)の軸方向両端部にそれぞれ設けられるメタリコン電極(54)と、各メタリコン電極(54)にそれぞれ電気的に接続される外部端子(55)とを備えている。
【0053】
巻芯(52)は、円筒状の樹脂部材で構成されている。なお、この円筒状の巻芯(52)の内部に金属製の芯部を設けてもよい。
【0054】
巻回部(53)は、フィルムコンデンサ用フィルムを構成する2枚の金属化フィルム(61,61)が厚さ方向に重ね合わされたものが、巻芯(52)に所定の回数巻回されて形成される。各金属化フィルム(61)は、図7に示すように、フィルム体(62)と、該フィルム体(62)の一方の面に形成される第1金属膜(63)と、フィルム体(62)の他方の面に形成される第2金属膜(64)とを有する。フィルム体(62)は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の絶縁性の樹脂材料で構成される。つまり、フィルム体(62)は、帯状の誘電体フィルムで構成される。
【0055】
メタリコン電極(54)は、コンデンサ素子(51)の軸方向端部に露出する2つの金属化フィルム(61,61)と電気的に導通する。外部端子(55)は、その基端部が巻芯(52)に対応する位置で、メタリコン電極(54)と電気的に接続している。これらの外部端子(55)は、メタリコン電極(54)の径方向外方に向かって延び、その先端部が封止樹脂(58)から外方に突出している。
【0056】
絶縁カバー(57)は、樹脂材料からなるシート状の部材を、円筒状の巻回部(53)の外周面に沿うように丸めて円筒状にしたものである。この絶縁カバー(57)は、巻回部(53)全体を覆うように設けられている。
【0057】
封止樹脂(58)は、絶縁カバー(57)、巻回部(53)、巻芯(52)、メタリコン電極(54)、及び外部端子(55)の基端部を封止している。すなわち、封止樹脂(58)は、コンデンサ素子(51)における、外部端子(55)の先端部を除く部分を封止している。なお、巻回部(53)の外周側を覆うように絶縁カバー(57)を配設しているが、この限りではなく、絶縁カバー(57)がなく、該巻回部(53)を封止樹脂(58)で直接、封止するような構成であってもよい。
【0058】
−フィルムコンデンサの製造方法−
フィルムコンデンサ(50)の製造方法について、図8を用いて説明する。
【0059】
まず、ステップS10で、巻芯(52)に2枚の金属化フィルム(61,61)を所定の回数巻回することにより、巻回部(53)を形成する。金属化フィルム(61,61)は、フィルム体(62)の両面にアルミニウム等が蒸着されることによって形成される。
【0060】
次に、巻回部(53)の両端面に金属を溶射してメタリコン電極(54)を形成し(ステップS20)、このメタリコン電極(54)に外部端子(55,55)を半田付け等によって取り付ける(ステップS30)。
【0061】
以上のステップS10、S20及びS30の工程により、巻芯(52)、巻回部(53)、メタリコン電極(54)及び外部端子(55)を備えたコンデンサ素子(51)が形成される。
【0062】
次に、ステップS40で、コンデンサ素子(51)をコンデンサ素子乾燥装置(1)によって乾燥する。ステップS40では、例えば作業者が、コンデンサ素子(51)を乾燥室(S)内に収容し、扉部(12)を閉じた後、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)を起動する。ヒーター(21)の起動によりコンデンサ素子(51)が加熱されるため、コンデンサ素子(51)に含まれる水分が蒸発し、コンデンサ素子(51)が乾燥される。しかも、真空ポンプ(25)の起動により、乾燥室(S)内が減圧されるため、コンデンサ素子(51)に含まれる水分が蒸発しやすくなる。従って、コンデンサ素子(51)が比較的短時間で乾燥される。
【0063】
従来は、コンデンサ素子の乾燥は、コンデンサ素子に含まれる水分の量に関係なく十分に長い時間行われていた。具体的には、コンデンサ素子の乾燥時間は、湿度の高い時期に形成される含水量の多いコンデンサ素子を基準として決定されていた。そして、この乾燥時間は、湿度の低い時期に形成される含水量の少ないコンデンサ素子にも適用されていた。
【0064】
しかし、上述のように乾燥時間を決定すると、全てのコンデンサ素子において含水量を十分に低減でき絶縁抵抗を所望の値以上にできる反面、含水量の少ないコンデンサ素子については、必要以上に長い時間乾燥されることになる。その結果、無駄なエネルギーが消費されることになったり、フィルムコンデンサの製造時間が長くなったりしてしまう。
【0065】
これに対して、本実施形態1では、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗に応じて、コンデンサ素子(51)の乾燥時間を決定している。具体的には、本実施形態1では、コンデンサ素子(51)の乾燥は、該コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が所定値Raを上回ると停止される。コンデンサ素子(51)の乾燥方法については、詳しくは後述する。
【0066】
次に、乾燥されたコンデンサ素子(51)の外周面に絶縁カバー(57)を巻きつける(ステップS50)。そして、該絶縁カバー(57)、巻回部(53)、巻芯(52)、メタリコン電極(54)、及び外部端子(55)の基端部を溶融した封止樹脂で覆い、該封止樹脂を硬化する(ステップS60)。これにより、コンデンサ素子(51)における外部端子(55)の先端部を除く部分が封止され、フィルムコンデンサが形成される。このステップS60により、コンデンサ素子(51)を封止する工程が行われる。
【0067】
このように、十分に乾燥されたコンデンサ素子(51)を樹脂で封止することにより、コンデンサ素子(51)に水分が侵入するのが抑制されるため、フィルムコンデンサの絶縁抵抗を維持できる。
【0068】
−コンデンサ素子の乾燥方法−
本実施形態では、ステップS10、S20及びS30で形成された多数のコンデンサ素子(51,51,…)を同時に乾燥する。ここで同時に乾燥される多数のコンデンサ素子(51,51,…)は、同一ロットのもの(同じ日に生産された素子)であり、概ね同じ湿度(例えば、±10%の範囲内)の下で形成されたものである。従って、これら同時に乾燥される多数のコンデンサ素子(51,51,…)については、含まれる水分量が概ね同じになるため、乾燥前における絶縁抵抗や、乾燥中における絶縁抵抗も、概ね同じになる。なお、上記多数のコンデンサ素子(51,51,…)は、同一ロットのものに限らず、概ね同じ湿度の下で形成されたものであればよい。
【0069】
コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥方法を、図9を用いて説明する。
【0070】
まず最初に、図10に示すように、乾燥対象となる多数のコンデンサ素子(51,51,…)のうちの1つを、素子設置台(45)にセットする(ステップS41a)。具体的には、コンデンサ素子(51)の各外部端子(55,55)を、素子設置台(45)の各端子部(46,46)に接続する。また、素子設置台(45)にセットされたコンデンサ素子(51)を除く残りのコンデンサ素子(51,51,…)をバスケット(70)に入れ、真空乾燥器(10)の乾燥室(S)内に収容する(ステップS41b)。なお、以下において、素子設置台(45)にセットされたコンデンサ素子(51)を、計測用コンデンサ素子(51)と呼ぶ場合もある。
【0071】
次に、ステップS42で、乾燥機構(20)(ヒーター(21)及び真空ポンプ(25))を起動する。これにより、乾燥室(S)内の昇温及び減圧が開始され、コンデンサ素子(51,51…)の乾燥が開始される。コンデンサ素子(51,51,…)に含まれる水分は、時間の経過とともに該コンデンサ素子(51,51,…)の外部へ徐々に放出される。なお、ステップS41a、S41b及びS42は、乾燥開始工程に相当する。
【0072】
次に、ステップS43では、絶縁抵抗計(41)が、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する計測工程を行う。本実施形態では、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗は、絶縁抵抗計(41)によって所定のタイミング毎に計測される。このように計測された絶縁抵抗Rxは、絶縁抵抗計(41)の計測値送信部(44)から制御部(30)の判定部(32)へ送信される。
【0073】
次に、ステップS44では、制御部(30)の判定部(32)が、計測値送信部(44)から送信された絶縁抵抗Rxと、記憶部(31)に記憶されている所定値Raとを比較し、乾燥停止条件が成立しているか否かを判定する判定工程を行う。具体的には、RxがRa以下の場合、判定部(32)は乾燥停止条件が成立していないと判定し、再びステップS43が行われる。RxがRaを上回った場合、判定部(32)は乾燥停止条件が成立したと判定し、ステップS45が行われる。
【0074】
通常、コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥が開始された直後は、コンデンサ素子(51,51,…)に含まれる水分は十分に除去されておらず、絶縁抵抗は十分に高くなっていない。よって、該コンデンサ素子(51,51,…)の絶縁抵抗Rxは所定値Raよりも低くなっている。従って、コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥が開始されてから暫くは、ステップS43とステップS44とが繰り返される。その間、コンデンサ素子(51,51,…)の絶縁抵抗は徐々に高くなる。そして、コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥が開始されてからある程度時間が経過し、RxがRaよりも大きくなると、ステップS45が行われる。
【0075】
ステップS45では、制御部(30)の指令部(33)が乾燥停止工程を行う。具体的には、制御部(30)の指令部(33)が、ヒーター(21)へヒーター停止信号Shを送信するとともに、真空ポンプ(25)へポンプ停止信号Spを送信する。ヒーター停止信号Shを受信したヒーター(21)、及びポンプ停止信号Spを受信した真空ポンプ(25)は、ともに停止する。その後、作業者によって、計測用コンデンサ素子(51)とバスケット(70)に収容されたコンデンサ素子(51,51,…)とが、乾燥器本体(11)から取り出される(ステップS46)。
【0076】
−実施形態1の効果−
以上のように、実施形態1では、乾燥中の計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が所定値Raを上回った場合、乾燥機構(20)が停止される。所定値Raは、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗の規格値よりも高い値に設定されているため、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を確実に所望の値以上にできる。
【0077】
また、本実施形態1で同時に乾燥される多数のコンデンサ素子(51,51,…)は、含水量が概ね同じであるため、乾燥中における絶縁抵抗の値もほぼ同じである。よって、同時に乾燥される多数のコンデンサ素子(51,51,…)のうちの1つ(計測用コンデンサ素子)の絶縁抵抗を計測すれば、残りのコンデンサ素子(51,51,…)の絶縁抵抗を計測する必要がなくなる。従って、計測用コンデンサ素子(51)以外のコンデンサ素子(51,51,…)については、素子設置台(45)への設置や、絶縁抵抗の計測に必要な電圧の印加を行わなくても、絶縁抵抗を十分に確保できる。
【0078】
また、従来の場合、コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥が必要以上長い時間行われていたのに対して、本実施形態1では、コンデンサ素子(51,51,…)の絶縁抵抗が所望の値を上回った場合に乾燥が停止される。従って、従来と比べてコンデンサ素子(51,51,…)を乾燥するのに必要なエネルギーを低減できる。
【0079】
しかも、本実施形態1では、乾燥停止条件の算出や、乾燥機構(20)の停止が、制御部(30)によって自動で行われるため、作業者の作業工数を低減できる。
【0080】
−実施形態1の変形例−
実施形態1の変形例におけるコンデンサ素子乾燥装置(1)は、図11に示すように、上記実施形態1の場合と比べて制御部(30)が省略された構成となっている。そして、本変形例のコンデンサ素子(51)の乾燥方法では、上記実施形態1において制御部(30)によって行われていた工程が、作業者によって行われる。具体的には、本変形例では、図9におけるステップS44及びS45の工程が、作業者によって行われる。
【0081】
ステップS44では、作業者は、絶縁抵抗計(41)で随時計測される絶縁抵抗Rxを目視し、該Rxが所定値Raを上回った場合、作業者は、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)の電源を切る(ステップS45)。
【0082】
このように、コンデンサ素子乾燥装置(1)において、制御部(30)を省略した構成であっても、作業者がステップS44及びS45を行うことで、コンデンサ素子(51)の絶縁性を確保しつつ、従来と比べて、コンデンサ素子(51)を乾燥するためのエネルギーを低減できる。
【0083】
《発明の実施形態2》
実施形態2では、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)を停止させるための乾燥停止条件が、上記実施形態1とは異なる。本実施形態2は、上記実施形態1の場合と比べて、絶縁抵抗計(41)の動作、制御部(30)の構成、及びコンデンサ素子(51)の乾燥方法が異なる。以下では、上記実施形態1と異なる点について説明する。
【0084】
−絶縁抵抗計の動作−
絶縁抵抗計(41)では、コンデンサ素子(51)の乾燥が開始された後、該コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が2回、計測される。具体的には、絶縁抵抗計(41)では、コンデンサ素子(51)の乾燥が開始されてから所定時間経過後にコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1が計測され、該Rx1が計測されてから所定時間経過後、再び該コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx2が計測される。これらの絶縁抵抗Rx1及びRx2は、計測値送信部(44)によって制御部(30)へ送信される。
【0085】
−制御部の構成−
制御部(30)は、図12に示すように、記憶部(31)と、算出部(34)と、判定部(32)と、指令部(33)とを備えている。
【0086】
記憶部(31)には、実施形態1の場合と同様、絶縁抵抗の所定値Raが記憶されている。本実施形態2では、所定値Raは、フィルムコンデンサ(50)の絶縁抵抗の規格値(例えば100MΩ)よりも高い値に設定される。
【0087】
算出部(34)は、変化量算出部(34a)と、残り乾燥時間算出部(34b)とを備えている。
【0088】
変化量算出部(34a)は、絶縁抵抗計(41)の計測値送信部(44)から送信される2つの絶縁抵抗Rx1及びRx2に基づいて、乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗の所定時間における変化量ΔRを算出する。所定時間における変化量ΔRは、次の式(3)に基づいて算出される。
【0089】
ΔR=(Rx2−Rx1)/ΔT…(3)
式(3)において、ΔTは、Rx1を計測してからRx2を計測するまでの時間である。
【0090】
変化量算出部(34a)は、このように算出されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗の所定時間における変化量ΔRを、残り乾燥時間算出部(34b)へ送信する。
【0091】
残り乾燥時間算出部(34b)は、記憶部(31)に記憶されている絶縁抵抗の所定値Raと、変化量算出部(34a)から送信される上記ΔRに基づいて、コンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txを算出する。本実施形態2では、残りの乾燥時間Txは、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗がTx経過後にRaとなるように設定される。具体的には、残りの乾燥時間Txは、次の式(4)の基づいて算出される。
【0092】
Tx=(Ra−Rx2)/ΔR…(4)
残り乾燥時間算出部(34b)は、このように算出された残りの乾燥時間Txを、判定部(32)へ送信する。
【0093】
判定部(32)は、タイマー部(32a)を備えている。タイマー部(32a)は、絶縁抵抗計(41)によってコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx2が計測されたときに起動する。タイマー部(32a)では、該タイマー部(32a)が起動してからの時間Tが計測される。
【0094】
判定部(32)は、残りの乾燥時間Txと、タイマー部(32a)が起動してからの時間Tとを比較する。判定部(32)は、上記タイマー部(32a)が起動してからの時間Tが残りの乾燥時間Txを上回った場合、乾燥機構(20)を停止させるための乾燥停止条件が成立したと判定する。
【0095】
指令部(33)は、判定部(32)で乾燥停止条件が成立したと判定された場合(すなわち、TがTxを上回った場合)、ヒーター(21)へヒーター停止信号Shを送信するとともに、真空ポンプ(25)へポンプ停止信号Spを送信する。ヒーター停止信号Shを受信したヒーター(21)は乾燥室(S)の加熱を停止し、ポンプ停止信号Spを受信した真空ポンプ(25)は乾燥室(S)の減圧を停止する。
【0096】
−コンデンサ素子の乾燥方法−
本実施形態2では、上記実施形態1と同様、ステップS10、S20及びS30で形成された多数のコンデンサ素子(51,51,…)を同時に乾燥する。
【0097】
実施形態2におけるコンデンサ素子(51,51,…)の乾燥方法を、図13を用いて説明する。
【0098】
まず最初に、実施形態1の場合と同様、乾燥対象となる多数のコンデンサ素子(51,51,…)のうちの1つを計測用コンデンサ素子(51)として素子設置台(45)にセットし(ステップS41a)、残りのコンデンサ素子(51,51,…)をバスケット(70)に入れ、真空乾燥器(10)の乾燥室(S)内に収容する(ステップS41b)。その後、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)を起動する(ステップS42)。ステップS41a、S41b及びS42により、乾燥開始工程が行われる。
【0099】
次に、ステップS43では、絶縁抵抗計(41)が、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する計測工程を行う。本実施形態2では、コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥が開始されてから所定時間経過後にRx1が計測され、該Rx1が計測されてから所定時間経過後にRx2が計測される。
【0100】
次に、ステップS44aでは、変化量算出部(34a)が、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗の所定時間における変化量ΔRを算出する。
【0101】
次に、ステップS44bでは、残り乾燥時間算出部(34b)が、記憶部(31)に記憶されている所定値Raと、ステップS44aで算出されたΔRとに基づいて、残りの乾燥時間Txを算出する。
【0102】
次に、ステップS44cでは、判定部(32)が、タイマー部(32a)が起動してからの時間Tと、ステップS44bで算出された残りの乾燥時間Txとを比較し、乾燥停止条件が成立しているか否かを判定する。具体的には、TがTx以下の場合、判定部(32)は乾燥停止条件が成立していないと判定し、再びステップS44cを行う。TがTxを上回った場合、判定部(32)は乾燥停止条件が成立したと判定し、ステップS45が行われる。なお、ステップS44a、S44b及びS44cが、判定工程に相当する。
【0103】
ステップS46では、実施形態1の場合と同様、制御部(30)の指令部(33)が乾燥停止工程を行う。具体的には、制御部(30)の指令部(33)が、ヒーター(21)へヒーター停止信号Shを送信するとともに、真空ポンプ(25)へポンプ停止信号Spを送信する。ヒーター停止信号Shを受信したヒーター(21)、及びポンプ停止信号Spを受信した真空ポンプ(25)は、ともに停止する。その後、作業者によって、計測用コンデンサ素子(51)とバスケット(70)に収容されたコンデンサ素子(51,51,…)とが、乾燥器本体(11)から取り出される(ステップS46)。
【0104】
−実施形態2の効果−
以上のように、実施形態2では、乾燥中の計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗に基づいて、コンデンサ素子(51)を十分に乾燥するために必要な残りの乾燥時間Txを算出している。そして、残りの乾燥時間Tx経過後に乾燥機構(20)が停止される。従って、コンデンサ素子(51,51,…)の絶縁性を確保しつつ、コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥に必要なエネルギーを低減できる。
【0105】
また、実施形態2では、計測されるコンデンサ素子(51)の特性、具体的には、乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗の所定時間における変化量ΔRを、直接、計測している。
【0106】
例えば、乾燥中のコンデンサ素子の絶縁抵抗が1回だけ計測され、該計測値のみを用いて残りの乾燥時間を算出する場合、コンデンサ素子における上記ΔRを予測し、該ΔRに基づいて残りの乾燥時間を算出する必要がある。しかし、こうすると、実際に絶縁抵抗が計測されるコンデンサ素子(51)の特性が、予測されるコンデンサ素子の特性と異なる場合、算出された残りの乾燥時間と、本来必要な残りの乾燥時間との間に大きなずれが生じる虞がある。
【0107】
これに対して、実施形態2では、上記ΔRを実際に計測し、該ΔRに基づいて残りの乾燥時間Txを算出している。こうすると、算出される残りの乾燥時間Txと、本来必要な残りの乾燥時間との間のずれが少なくなる。従って、コンデンサ素子(51)の乾燥不足や、乾燥に用いられるエネルギーの無駄を回避できる。
【0108】
また、本実施形態2によれば、残りの乾燥時間Txを算出するために必要な計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx2が計測された後は、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する必要がない。従って、計測用コンデンサ素子(51)に電圧が印加される時間を短くしたり、絶縁抵抗計(41)に必要な電力を低減できる。
【0109】
−実施形態2の変形例−
実施形態2の変形例におけるコンデンサ素子乾燥装置(1)は、実施形態1の変形例と同様、図11に示すように、制御部(30)が省略された構成となっている。そして、本変形例のコンデンサ素子(51)の乾燥方法では、上記実施形態2では制御部(30)によって行われていた工程が、作業者によって行われる。具体的には、本変形例では、図12におけるステップS43、S44a、S44b、S44c及びS45の工程が、作業者によって行われる。
【0110】
ステップS43では、作業者は、コンデンサ素子(51)の乾燥が開始されてから所定時間経過後、絶縁抵抗計(41)で計測される絶縁抵抗Rx1を読み取る。そして、Rx1が計測されてから所定時間経過後、絶縁抵抗計(41)で計測される絶縁抵抗Rx2を読み取る。また、作業者は、Rx1を計測してからRx2を計測するまでの時間を、タイマー等によって計測する。
【0111】
ステップS44aでは、作業者は、ステップS43で計測した絶縁抵抗Rx1、絶縁抵抗Rx2、及びRx1とRx2とが計測される間の時間ΔTを、式(3)に代入することにより、所定時間における変化量ΔRを算出する。
【0112】
次に、ステップS44bでは、作業者は、予め設定された絶縁抵抗の所定値Raと、上記Rx2及びΔRとを、式(4)に代入することにより、残りの乾燥時間Txを算出する。
【0113】
そして、作業者は、Rx2が計測されてから上記残りの乾燥時間Txが経過した後(ステップS44cにおいてYesの場合)、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)の電源を切る(ステップS45)。
【0114】
このように、コンデンサ素子乾燥装置(1)において、制御部(30)を省略した構成であっても、作業者がステップS43、S44a、S44b、S44c及びS45を行うことで、コンデンサ素子(51)の絶縁性を確保しつつ、コンデンサ素子(51)を乾燥するためのエネルギーを低減できる。
【0115】
《発明の実施形態3》
実施形態3では、上記実施形態2の場合と比べて、残りの乾燥時間Txの算出方法が異なる。具体的には、本実施形態3では、上記実施形態2の場合と比べて、絶縁抵抗計(41)の動作、制御部(30)の構成、及びコンデンサ素子(51)の乾燥方法が異なっている。以下では、上記実施形態2と異なる点について説明する。
【0116】
−絶縁抵抗計の動作−
絶縁抵抗計(41)では、コンデンサ素子(51)の乾燥が開始されてから所定時間経過後、該コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が1回、計測される(この絶縁抵抗をRx3とする)。このRx3は、計測値送信部(44)によって制御部(30)へ送信される。
【0117】
−制御部の構成−
制御部(30)は、図14に示すように、記憶部(31)と、算出部(34)と、判定部(32)と、指令部(33)とを備えている。
【0118】
記憶部(31)には、テーブルAが記憶されている。このテーブルAをプロットしたグラフを図15に示す。テーブルAは、乾燥中のコンデンサ素子の絶縁抵抗と残りの乾燥時間との関係を表すものであって、実験等によって予め作成されたものである。このテーブルAによれば、コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗の測定値Rx3に基づいて、残りの乾燥時間Txを算出することができる。
【0119】
算出部(34)は、絶縁抵抗計(41)の計測値送信部(44)から送信される絶縁抵抗Rx3を、記憶部(31)に記憶されているテーブルAに照らし合わせて、残りの乾燥時間Txを算出する。例えば、Rx3が10MΩであった場合、この値をテーブルAに照らし合わせると、残りの乾燥時間Txが10時間であると算出される。算出部(34)は、このように算出された残りの乾燥時間Txを、判定部(32)へ送信する。
【0120】
判定部(32)は、上記実施形態2の場合と同様、タイマー部(32a)を備えている。タイマー部(32a)は、絶縁抵抗計(41)によってコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx3が計測されたときに起動する。タイマー部(32a)では、該タイマー部(32a)が起動してからの時間Tが計測される。そして、判定部(32)では、TがTxを上回った場合、乾燥機構(20)を停止させるための乾燥停止条件が成立したと判定し、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)のそれぞれにヒータ停止信号Sh及びポンプ停止信号Spを送信して、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)を停止する。
【0121】
−コンデンサ素子の乾燥方法−
本実施形態3では、上記実施形態1及び2の場合と同様、図16に示すように、1つのコンデンサ素子を計測用コンデンサ素子(51)として素子設置台(45)にセットし(ステップS41a)、残りのコンデンサ素子(51,51,…)をバスケット(70)に入れて真空乾燥器(10)の乾燥室(S)内に収容する(ステップS41b)。その後、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)を起動する(ステップS42)。
【0122】
次に、ステップS43では、絶縁抵抗計(41)が、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する計測工程を行う。本実施形態3では、コンデンサ素子(51)の乾燥が開始されてから所定時間経過後にRx3が計測される。
【0123】
次に、ステップS44bでは、算出部(34)が、ステップS43で計測された絶縁抵抗Rx3を、記憶部(31)に記憶されているテーブルAと照らし合わせることにより、残りの乾燥時間Txを算出する。
【0124】
以下、ステップS44c以降の工程は、上記実施形態2と同じであるため、説明を省略する。
【0125】
−実施形態3の効果−
以上のように、実施形態3では、乾燥中の計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗と、予め準備されるテーブルAとに基づいて、コンデンサ素子(51,51,…)を十分に乾燥するために必要な残りの乾燥時間Txを算出している。そして、残りの乾燥時間Tx経過後に乾燥機構(20)が停止される。従って、コンデンサ素子(51,51,…)の絶縁性を確保しつつ、コンデンサ素子(51,51,…)の乾燥に必要なエネルギーを低減できる。
【0126】
また、本実施形態2によれば、残りの乾燥時間Txを算出するために必要な計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx3が計測された後は、計測用コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する必要がない。従って、計測用コンデンサ素子(51)に電圧が印加される時間を短くしたり、絶縁抵抗計(41)に必要な電力を低減できる。
【0127】
−実施形態3の変形例−
実施形態3の変形例におけるコンデンサ素子乾燥装置(1)は、実施形態1の変形例及び実施形態2の変形例の場合と同様、図11に示すように、制御部(30)が省略された構成となっている。そして、本変形例のコンデンサ素子(51)の乾燥方法では、上記実施形態3では制御部(30)によって行われていた工程が、作業者によって行われる。具体的には、本変形例では、図16におけるステップS43、S44b、S44c及びS45の工程が、作業者によって行われる。
【0128】
ステップS43では、作業者は、コンデンサ素子(51)の乾燥が開始されてから所定時間経過後、絶縁抵抗計(41)で計測される絶縁抵抗Rx3を読み取る。
【0129】
ステップS44bでは、作業者は、ステップS43で計測された絶縁抵抗Rx3を、予め準備されたテーブルAに照らし合わせて、残りの乾燥時間Txを算出する。
【0130】
そして、作業者は、Rx3が計測されてから上記残りの乾燥時間Txが経過した後(ステップS44cにおいてYesの場合)、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)の電源を切る(ステップS45)。
【0131】
このように、コンデンサ素子乾燥装置(1)において、制御部(30)を省略した構成であっても、作業者がステップS43、S44b、S44c及びS45を行うことで、コンデンサ素子(51)の絶縁性を確保しつつ、コンデンサ素子(51)を乾燥するためのエネルギーを低減できる。
【0132】
−その他の実施形態−
上記実施形態については、以下のような構成にしてもよい。
【0133】
上記各実施形態では、金属化フィルム(61)を巻回した巻回部(53)を有するコンデンサ素子(51)の乾燥方法について記載しているが、この限りでなく、金属電極と誘電体とを交互に重ねることによって形成される、いわゆる積層コンデンサを対象とすることもできる。
【0134】
また、上記各実施形態では、乾燥機構(20)は、ヒーター(21)及び真空ポンプ(25)を備えているが、この限りでなく、ヒーター(21)のみを備えた構成であってもよい。
【0135】
また、上記各実施形態では、絶縁抵抗計測器(40)を、1つのコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測可能なように構成しているが、この限りでなく、複数のコンデンサ素子(51,51,…)の絶縁抵抗を計測可能なように構成してもよい。こうすると、コンデンサ素子(51)毎の絶縁抵抗のばらつきを加味して乾燥停止条件を決定することができるため、コンデンサ素子(51,51,…)をより確実に乾燥することができる。
【産業上の利用可能性】
【0136】
以上説明したように、本発明は、フィルムコンデンサに有用である。
【符号の説明】
【0137】
1 コンデンサ素子乾燥装置
20 乾燥機構
30 制御部
40 絶縁抵抗計測器
50 フィルムコンデンサ(コンデンサ)
51 コンデンサ素子
53 巻回部(フィルム本体部)
61 金属化フィルム(フィルム)
Rx,Rx1,Rx2,Rx3 絶縁抵抗
Ra 所定値
Tx 残りの乾燥時間
ΔR 所定時間における変化量
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム(61)が巻回又は積層されて形成されたフィルム本体部(53)を有するコンデンサ素子(51)の乾燥を開始する乾燥開始工程と、
乾燥中の上記コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する計測工程と、
上記コンデンサ素子(51)の乾燥を停止させる乾燥停止条件が成立するか否かを、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて判定する判定工程と、
上記判定工程において上記乾燥停止条件が成立したと判定された場合、上記コンデンサ素子(51)の乾燥を停止する乾燥停止工程と
を備えることを特徴とするコンデンサ素子の乾燥方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記計測工程では、乾燥中の上記コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が随時計測され、
上記判定工程では、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxが所定値Raを上回った場合、上記乾燥停止条件が成立したと判定されることを特徴とするコンデンサ素子の乾燥方法。
【請求項3】
請求項1において、
上記判定工程では、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2,Rx3に基づいて上記コンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txが算出され、該残りの乾燥時間Txが経過した場合、上記乾燥停止条件が成立したと判定されることを特徴とするコンデンサ素子の乾燥方法。
【請求項4】
請求項3において、
上記判定工程では、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2の所定時間における変化量ΔRが算出され、該変化量ΔRに基づいて上記コンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txが算出されることを特徴とするコンデンサ素子の乾燥方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の乾燥方法によって乾燥されたコンデンサ素子(51)を封止する工程を備えることを特徴とするコンデンサの製造方法。
【請求項6】
フィルム(61)が巻回又は積層されて形成されたフィルム本体部(53)を有するコンデンサ素子(51)を乾燥する乾燥機構(20)と、
上記乾燥機構(20)で乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する絶縁抵抗計測器(40)と、
上記絶縁抵抗計測器(40)によって計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて上記乾燥機構(20)を制御する制御部(30)と
を備えることを特徴とするコンデンサ素子乾燥装置。
【請求項1】
フィルム(61)が巻回又は積層されて形成されたフィルム本体部(53)を有するコンデンサ素子(51)の乾燥を開始する乾燥開始工程と、
乾燥中の上記コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する計測工程と、
上記コンデンサ素子(51)の乾燥を停止させる乾燥停止条件が成立するか否かを、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて判定する判定工程と、
上記判定工程において上記乾燥停止条件が成立したと判定された場合、上記コンデンサ素子(51)の乾燥を停止する乾燥停止工程と
を備えることを特徴とするコンデンサ素子の乾燥方法。
【請求項2】
請求項1において、
上記計測工程では、乾燥中の上記コンデンサ素子(51)の絶縁抵抗が随時計測され、
上記判定工程では、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rxが所定値Raを上回った場合、上記乾燥停止条件が成立したと判定されることを特徴とするコンデンサ素子の乾燥方法。
【請求項3】
請求項1において、
上記判定工程では、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2,Rx3に基づいて上記コンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txが算出され、該残りの乾燥時間Txが経過した場合、上記乾燥停止条件が成立したと判定されることを特徴とするコンデンサ素子の乾燥方法。
【請求項4】
請求項3において、
上記判定工程では、上記計測工程で計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx1,Rx2の所定時間における変化量ΔRが算出され、該変化量ΔRに基づいて上記コンデンサ素子(51)の残りの乾燥時間Txが算出されることを特徴とするコンデンサ素子の乾燥方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の乾燥方法によって乾燥されたコンデンサ素子(51)を封止する工程を備えることを特徴とするコンデンサの製造方法。
【請求項6】
フィルム(61)が巻回又は積層されて形成されたフィルム本体部(53)を有するコンデンサ素子(51)を乾燥する乾燥機構(20)と、
上記乾燥機構(20)で乾燥中のコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗を計測する絶縁抵抗計測器(40)と、
上記絶縁抵抗計測器(40)によって計測されたコンデンサ素子(51)の絶縁抵抗Rx,Rx1,Rx2,Rx3に基づいて上記乾燥機構(20)を制御する制御部(30)と
を備えることを特徴とするコンデンサ素子乾燥装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−26376(P2013−26376A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158814(P2011−158814)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】
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