コンデンサ
【課題】絶縁耐力を向上できるコンデンサを提供する。
【解決手段】コンデンサ1は、1対の内部電極7と、当該1対の内部電極7間に位置する誘電体5と、を有する。誘電体5は、粒径が130nm以下の複数の第1の無機粒子15と、粒径が160nm以上の複数の第2の無機粒子17と、を含む。第2の無機粒子17同士は、複数の第1の無機粒子15を互いに結合してなる三次元マトリクス構造を介して連結されている。
【解決手段】コンデンサ1は、1対の内部電極7と、当該1対の内部電極7間に位置する誘電体5と、を有する。誘電体5は、粒径が130nm以下の複数の第1の無機粒子15と、粒径が160nm以上の複数の第2の無機粒子17と、を含む。第2の無機粒子17同士は、複数の第1の無機粒子15を互いに結合してなる三次元マトリクス構造を介して連結されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ型コンデンサ、リード付きコンデンサ等のコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂中に無機粒子からなる誘電体フィラーを分散させて誘電体フィルムとし、これを誘電体層に適用したコンデンサが知られている(例えば特許文献1及び2)。このようなコンデンサでは、樹脂よりも誘電率が高い無機粒子が樹脂中に分散されることにより、高い容量が実現される。なお、特許文献1では、誘電体フィラーの平均粒径として0.3μm〜0.5μmが開示されており、特許文献2では、誘電体フィラーの平均粒径として0.2μmが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−225484号公報
【特許文献2】特開2008−229849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した無機粒子を分散させた誘電体フィルムは、無機粒子の誘電率が樹脂の誘電率に比較して高いために、印加された電界が無機粒子の周囲に集中しやすく、これにより絶縁耐力が低下する。
【0005】
本発明の目的は、絶縁耐力を向上できるコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係るコンデンサは、1対の電極と、前記1対の電極間に位置する誘電体と、を有し、前記誘電体は、粒径が130nm以下の複数の第1の無機粒子と、粒径が160nm以上の複数の第2の無機粒子と、を含み、前記第2の無機粒子同士は、前記複数の第1の無機粒子を互いに結合してなる三次元マトリクス構造を介して連結されている。
【0007】
好適には、前記第1の無機粒子および前記第2の無機粒子の少なくとも一方はペロブスカイト構造を有している。
【0008】
好適には、前記第1の無機粒子および前記第2の無機粒子は第1のネック部を介して結合している。
【0009】
好適には、前記第1のネック部が前記第1の無機粒子と同一材料からなる。
【0010】
好適には、前記第1の無機粒子同士が第2のネック部を介して互いに結合している。
【0011】
好適には、前記三次元マトリクス構造をなす前記第1の無機粒子間に樹脂が存在する。
【0012】
好適には、前記第2の無機粒子同士は直接結合していない。
【0013】
好適には、前記第2のネック部の幅は前記第1のネック部の幅よりも大きい。
【0014】
好適には、前記第1の無機粒子は第1の誘電率を有し、前記第2の無機粒子は前記第1の誘電率よりも高い第2の誘電率を有する。
【0015】
上記の構成によれば、絶縁耐力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は本発明の実施形態に係るコンデンサの外観を示す斜視図、図1(b)は図1(a)のIb−Ib線における断面図。
【図2】図2(a)は図1(b)の領域IIaを示す拡大断面図、図2(b)は図2(a)の領域IIbを示す拡大断面図。
【図3】図3(a)〜図3(d)は図1のコンデンサの製造方法を説明する図。
【図4】図4(a)〜図4(c)は図3(d)の続きを示す図。
【図5】図5(a)及び図5(b)は図4(c)の続きを示す図。
【図6】実施例に係る誘電体を電子顕微鏡で撮像した写真。
【図7】図6の領域VIIを拡大して示す写真。
【図8】実施例に係る誘電体における粒度分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1(a)は、本発明の実施形態に係るコンデンサ1の外観を示す斜視図である。
【0018】
コンデンサ1は、リード付きコンデンサとして構成されており、本体部3と、本体部3から延出し、電圧が印加される1対のリード4とを有している。本体部3は、例えば、概ね直方体状に形成されており、1対のリード4は、例えば、直方体の一の面から延出している。本体部3の大きさは適宜に設定されてよいが、例えば、1辺が3〜10数ミリである。
【0019】
図1(b)は、図1(a)のIb−Ib線における断面図である。
【0020】
本体部3は、例えば、積層型コンデンサとして構成されており、交互に積層された複数の誘電体5及び複数の内部電極7を有している。また、本体部3は、複数の内部電極7に接続された1対の外部電極9と、誘電体5及び外部電極9等を覆う外装部11とを有している。
【0021】
複数の誘電体5及び複数の内部電極7は、要求される容量等に応じて適宜な数で積層されている。図1では、内部電極7が8層となるように積層されているが、積層数はこれに限定されるものではなく、例えば、100〜1000層であってもよい。
【0022】
複数の誘電体5は、例えば、互いに同一の形状及び大きさとされている。各誘電体5は、厚さが概ね一定の平板状(フィルム状)に形成されている。誘電体5の厚さは、印加される電圧及び要求される容量等に応じて適宜に設定されてよいが、例えば、5〜20μmである。誘電体5の平面形状は、適宜に設定されてよいが、例えば矩形である。
【0023】
複数の内部電極7は、例えば、互いに同一の形状及び大きさとされている。各内部電極7は、厚さが概ね一定の平板状(フィルム状)に形成されている。内部電極7の平面形状は、適宜に設定されてよいが、例えば矩形である。複数の内部電極7は、その積層方向において交互に、1対の外部電極9の対向方向において互いにずれて配置されている。そして、複数の内部電極7は、その積層方向において交互に、1対の外部電極9の一方又は他方に、平面形状の矩形の1辺(縁部)が接続されている。内部電極7は、例えば、Al若しくはAl−Zn合金等の金属又はこれらを主成分とする混合材料により形成されている。
【0024】
外部電極9は、複数の誘電体5及び複数の内部電極7によって構成された積層体8の側面を覆うように形成されており、例えば、Sn、Zn若しくはSn−Zn合金等の金属により形成されている。
【0025】
外装部11は、積層体8及び1対の外部電極9の全体を覆っており、本体部3の外面全体を構成している。外装部11は、樹脂等の絶縁性材料により形成されている。樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアノレジン樹脂等の熱硬化性樹脂である。
【0026】
リード4は、金属板若しくは線材からなり、一端側が外部電極9の外側面に接続されており、他端側が外装部11から延出している。リード4は、例えば、Fe、Cu若しくはSn等の金属により形成されている。
【0027】
図2(a)は、図1(b)の領域IIaを示す拡大断面図である。図2(b)は、図2(a)の領域IIbを示す拡大断面図である。
【0028】
誘電体5は、互いに結合した複数の無機粒子(15、17等)と、これらの隙間に位置する樹脂19とから構成されている。
【0029】
例えば、誘電体5は、無機粒子を20体積%以上80%体積以下含み、樹脂19を20体積%以上80体積%以下含み、より好ましくは、無機粒子を50体積%以上80%体積以下含み、樹脂19を20体積%以上50体積%以下含み(無機粒子の体積割合が樹脂19の体積割合以上であり)、さらに好ましくは、無機粒子を60体積%以上70%体積以下含み、樹脂19を30体積%以上40体積%以下含んでいる。
【0030】
複数の無機粒子は、複数の第1の無機粒子15と、複数の第1の無機粒子15よりも粒径が大きい第2の無機粒子17とを有している。第1の無機粒子15の粒径と第2の無機粒子17の粒径との境界は、例えば、150nmである。
【0031】
第1の無機粒子15の粒径は、130nm以下である。この場合において、好ましくは、第1の無機粒子15は、110nm以下の粒径の粒子を第1の無機粒子15全体の体積に対して80体積%以上含んでいる。また、より好ましくは、第1の無機粒子15は、その全てが110nm以下である。なお、第1の無機粒子15の粒径の下限値は、例えば、3nm若しくは30nmである。
【0032】
第2の無機粒子17の粒径は、160nm以上である。この場合において、好ましくは、第2の無機粒子17は、200nm以上の粒径の粒子を第2の無機粒子17全体の体積に対して90体積%以上含んでいる。また、より好ましくは、第2の無機粒子17は、その全てが200nm以上である。なお、第2の無機粒子17の粒径の上限値は、5μm若しくは600nmである。
【0033】
さらに、誘電体5に含まれる無機粒子について所定の間隔(例えば10nm毎)で粒度分布をとったときに小径側(第1の無機粒子15)の山の最大頻度を示す粒径と大径側(第2の無機粒子17)の山の最大頻度を示す粒径との差が100nm以上、好ましくは200nm以上であるのがよい。
【0034】
第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17の粒径は、例えば、誘電体5の研磨面若しくは破断面をSEM(Scanning Electron Microscope)によって適宜な倍率(例えば30000倍)で撮像して得られるSEI(二次電子像)及び/又はBEI(反射電子像)を観察することにより測定できる。
【0035】
粒径は、SEI及び/又はBEIにおいて観察される粒子の面積と同等の面積を有する円の直径(円相当径)として算出(測定)されることが好ましい。ただし、最大径が粒径とされるなどしてもよい。
【0036】
誘電体5を構成する複数の無機粒子は、例えば、第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17の合計体積に対して、第1の無機粒子15を20体積%以上90体積%以下含み、第2の無機粒子17を10体積%以上80体積%以下含み、より好ましくは、第1の無機粒子15を20体積%以上40体積%以下含み、第2の無機粒子17を60体積%以上80体積%以下含んでいる。
【0037】
なお、複数の無機粒子及び樹脂19の好ましい体積割合と併せると、最も好ましくは、誘電体5は、複数の無機粒子(15、17)及び樹脂19の合計体積に対して、第1の無機粒子15を12体積%以上28体積%以下含み、第2の無機粒子17を36体積%以上56体積%以下含み、樹脂19を30体積%以上40体積%以下含む。
【0038】
各粒子等の体積%は、例えば、上述のSEI及び/又はBEIにおいて、画像解析装置等を用いて誘電体5に占める各粒子の面積比率(面積%)を複数個所(例えば10箇所)の断面にて測定し、その測定値の平均値を算出して含有量(体積%)とみなすことにより、測定される。
【0039】
第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17は、例えば、互いに異なる材料により構成されている。この場合において、別の観点では、誘電体5を構成する複数の無機粒子は、複数の第1材料粒子21と、複数の第1材料粒子21とは異なる材料からなる第2材料粒子23とからなる。そして、第2材料粒子23の粒径は、第1材料粒子21の粒径よりも大きいものとされる。
【0040】
なお、誤差範囲(例えば無機粒子全体の1体積%未満)で第1材料粒子21の粒径よりも粒径が小さい第2材料粒子23が存在してもよい。以下では、特に断りがない限り、第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17と、第1材料粒子21及び第2材料粒子23とを特に区別しないものとし、主として第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17の語を用いる。
【0041】
第1材料粒子21と第2材料粒子23との判別(粒子を構成する材料の判別)は、例えば、EDS(Energy Dispersive x-ray Spectroscopy)による元素分析に基づいて行われる。そして、EDSによって材料判別をした後に、上述のようにSEI及び/又はBEIに基づいて粒径を測定することにより、第1材料粒子21及び第2材料粒子23の粒径をそれぞれ測定することができる。
【0042】
第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17は、例えば、比較的誘電率が大きい材料により構成されていることが好ましい。このような誘電率が高い材料としては、例えば、ペロブスカイト構造を有する材料を挙げることができる。ペロブスカイト構造を有する材料は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3、比誘電率:1200〜3000)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、比誘電率:300)、チタン酸カルシウム(CaTiO3、比誘電率:200)、チタン酸バリウムストロンチウム(Ba1−xSrxTiO3、比誘電率:800〜1500)、チタン酸バリウムカルシウム(Ba1−xCaxTiO3、比誘電率:600〜1200)である。
【0043】
また、第2の無機粒子17は、例えば、第1の無機粒子15に比較して、誘電率が大きい材料によって形成されている。例えば、第1の無機粒子15が、シリカ(SiO2、比誘電率:3〜4)によって形成されているのに対して、第2の無機粒子17は、アルミナ(Al2O3、比誘電率:8〜11)、二酸化チタン(TiO2、比誘電率:83〜183)若しくは上述のペロブスカイト構造を有する材料によって形成されている。また、例えば、第1の無機粒子15が、シリカ、アルミナ若しくは二酸化チタンによって形成されているのに対して、第2の無機粒子17は、上述のペロブスカイト構造を有する材料によって形成されている。また、例えば、第1の無機粒子15が常誘電体(チタン酸ストロンチウム等)によって形成されているのに対し、第2の無機粒子17は強誘電体(チタン酸バリウム等)によって形成されている。
【0044】
複数の第1の無機粒子15は、互いに結合して三次元マトリクス構造(三次元網目構造、骨格構造)を構成している。そして、複数の第2の無機粒子17同士は、複数の第1の無機粒子15からなる三次元マトリクス構造を介して互いに連結されている。具体的には、以下のとおりである。
【0045】
複数の第1の無機粒子15は、複数の第2ネック部27を介して互いに結合している。第2ネック部27は、例えば物質の拡散によって形成されるものである。ただし、複数の第1の無機粒子15は、焼成されたセラミックのように緻密化はされておらず、複数の第1の無機粒子15間には複数の第1間隙G1が形成されている。すなわち、複数の第1の無機粒子15は、誘電体5において三次元マトリクス構造を構成している。
【0046】
また、各第2の無機粒子17は、複数の第1の無機粒子15に対して複数の第1ネック部25を介して結合している。なお、第1ネック部25も第2ネック部27と同様に例えば物質の拡散によって形成されるものである。そして、複数の第2の無機粒子17は、複数の第1の無機粒子15からなる三次元マトリクス構造を介して互いに連結されている。なお、第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17間においても緻密化はなされておらず、これらの間には第2間隙G2が形成されている。
【0047】
複数の第2の無機粒子17同士は、その間に複数の第1の無機粒子15が介在していることから、そのほとんどは、直接当接していない。また、複数の第2の無機粒子17同士は、直接当接していたとしても、互いに結合はしていない(ネック部は形成されていない。)。また、第2ネック部27の幅w2は、第1ネック部25の幅w1よりも大きい。第1ネック部25及び第2ネック部27はいずれも、第1の無機粒子15と同一材料により形成されている。この場合、第1の無機粒子15と同一材料とは、第2の無機粒子17の成分を微量(EPMA分析により求められる測定で0.1質量%以下)含んでいてもよいことを意味する。
【0048】
第1間隙G1及び第2間隙G2は、第1の無機粒子15が緻密化されないことによって形成されており、その大きさは、概略(オーダー的に)、第1の無機粒子15の粒径程度である。複数の第1間隙G1は、断面図においては閉じられているが、三次元的に互いに連通されている。そして、複数の第1間隙G1は、直接又は間接に誘電体5の主面に通じている。複数の第2間隙G2も、直接又は間接に誘電体5の主面に通じている。
【0049】
複数の第1の無機粒子15及び複数の第2の無機粒子17からなる無機材料には、複数の空隙G3が形成されている。各空隙G3は、その内周面が複数の第1の無機粒子15及び複数の第2の無機粒子17により構成されている。複数の空隙G3も、直接又は間接に誘電体5の主面に通じている。
【0050】
樹脂19は、第1間隙G1、第2間隙G2及び空隙G3に充填されている。樹脂19は、例えば、エポキシ樹脂(比誘電率:2.5〜6)、ポリイミド樹脂(比誘電率:3.55)、シアノレジン樹脂(比誘電率:15〜20)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB、比誘電率:3.9〜4)、フッ素樹脂(比誘電率:4〜8)、アクリル樹脂(比誘電率:2.7〜4.5)、ポリエチレンテレフタラート樹脂(PET、比誘電率:2.9〜3)、ポリプロピレン樹脂(PP、比誘電率:2.2〜2.3)である。また、樹脂19は、例えば、第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17、又は、第2の無機粒子17に比較して、誘電率が小さいものを用いるのがよい。
【0051】
図3(a)〜図5(b)は、コンデンサ1の製造方法を説明する図である。コンデンサ1の製造方法は、図3(a)から図5(b)へ順次進行する。なお、図3(a)は、ボールミルの模式的な斜視図である。図3(b)及び図3(d)〜図5(b)は、図1(b)に対応する断面図である。図3(c)は、図2(b)と同様に誘電体5の一部拡大断面図である。
【0052】
まず、図3(a)に示すように、ボールミルを用いて第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17を所定の配合比で混合するとともに溶剤に分散させてスラリーを調製する。なお、第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17の配合比(体積比)は、上述したように、例えば、2:8〜4:6である。
【0053】
なお、溶剤は、例えば、メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、又は、これらから選択された2種以上の混合物を含んだ有機溶剤である。
【0054】
次に、図3(b)に示すように、作製したスラリーをキャリアフィルム31上に塗布してシート状に成形し、乾燥(溶剤を蒸発)させることにより、誘電体5(この時点では樹脂19を含まない)が多数個取りされる、無機材料からなる誘電層33を形成する。
【0055】
スラリーの塗布は、例えば、ドクターブレード、ディスペンサー、バーコーター、ダイコーター又はスクリーン印刷を用いて行うことができる。スラリーの乾燥は、例えば加熱及び風乾により行われる。乾燥温度は、例えば、20℃以上且つ溶剤の沸点(二種類以上の溶剤を混合している場合には、最も沸点の低い溶剤の沸点)未満に設定される。
【0056】
乾燥中、第1の無機粒子15同士の結合が進行し、また、第1の無機粒子15と第2の無機粒子17との結合が進行する。ただし、高温に加熱しないため、ネック構造(第1ネック部25及び第2ネック部27)を維持することができ、第1の無機粒子15による骨格構造が形成される(第1間隙G1および第2間隙G2が形成される。)。
【0057】
第1の無機粒子15は、第2の無機粒子17に比較して原子の運動が活発なので、第1の無機粒子15同士の第2ネック部27の方が第1の無機粒子15と第2の無機粒子17との第1ネック部25よりも太くなる。また、同様の理由により及び/又は拡散係数の相違により、第1ネック部25は主として第1の無機粒子15によって構成される。また、第2の無機粒子17同士は、第1の無機粒子15が間に介在していて結合が困難であるとともに、仮に互いに当接していても、原子の運動が活発でないことから、結合しにくい。なお、このような結合態様は、第1の無機粒子15の粒径が110nm以下であり、第2の無機粒子17の粒径が200nm以上である場合に好適に生じやすい。
【0058】
また、第1の無機粒子15の結合の進行に伴って複数の第1の無機粒子15全体としての収縮が生じ、空隙G3が形成される。なお、空隙G3は、第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17の合計体積に対して、第2の無機粒子17を60体積%以上とするなど、第2の無機粒子17の体積%を比較的大きくすると形成されやすい。
【0059】
キャリアフィルム31は、樹脂等の適宜な材料により形成されていてよいが、耐熱性、機械的強度及びコストの観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)により形成されていることが好ましい。
【0060】
次に、図3(c)に示すように、誘電層33に溶融状態又は液状の樹脂を含浸させる。例えば、スピンコーターによって、樹脂を誘電層33の主面に塗布しつつ誘電層33に含浸しない樹脂は回収する。スクリーン印刷等によって必要十分な量の樹脂を誘電層33に供給してもよい。なお、含浸は、毛細管力によってなされる。含浸した溶融状態又は液状の樹脂が硬化すると、第1間隙G1、第2間隙G2及び空隙G3に充填された樹脂19が形成される。
【0061】
その後、特に図示しないが、誘電層33に対して加熱処理を行う。これにより、粒子同士の結合は強固になる。この加熱温度は、無機材料の粒成長を抑制するために無機材料の結晶開始温度未満であることが好ましく、また、残存した溶剤を蒸発させるために溶剤の沸点以上であることが好ましい。例えば、第1の無機粒子15がシリカ(結晶開始温度1300℃)からなる場合、加熱温度は100〜600℃である。なお、この加熱処理は、樹脂の誘電層33への含浸よりも前に行われてもよい。
【0062】
次に、図3(d)に示すように、内部電極7を誘電体5上に形成する。例えば、メタルマスクを介して内部電極7となる金属を誘電体5に蒸着することによってパターニングされた内部電極7を形成する。なお、内部電極7は、めっき法やフォトリソグラフィーあるいは金属箔の転写等によって形成されてもよい。
【0063】
そして、図3(b)〜図3(d)を参照して説明した工程を繰り返すことにより、図4(a)さらには図4(b)に示すように、誘電体5(誘電層33)及び内部電極7を積層していく。なお、このように繰り返しの塗工によって積層していくことにより、キャリアフィルム31の使用量を低減することができる。また、図3(d)に示した内部電極7の形成された誘電層33を、逐次キャリアフィルム31を剥がしながら積層していく工法を用いてもよい。
【0064】
なお、積層体8は、1軸プレスからなる仮プレス及び静水圧プレスからなる本プレス等を経て、誘電層33と内部電極7との間及び誘電層33間の密着が強化されてよい。
【0065】
その後、図4(c)に示すように、キャリアフィルム31を剥離し、ダイシングブレード若しくはレーザ等を用いて誘電層33を個片にカットする。
【0066】
次に、図5(a)に示すように外部電極9を形成する。例えば、誘電体5及び内部電極7からなる積層体8の側面に金属を溶射することによって外部電極9を形成する。また、複数の積層体8をディップ治具に整列させて積層体8の側面をめっき液に浸透させることなどにより、外部電極9の外層にSn等のめっきを施してもよい。
【0067】
次に、図5(b)に示すように、リード4を外部電極9に接合する。例えば、溶接によってリード4を外部電極9に接合する。なお、レーザ溶接を用いる場合においては、リード4及び外部電極9の外装がレーザを吸収しやすいSnによって覆われていることが好ましい。
【0068】
そして、図2(b)に示すように、外装部11を形成する。例えば、まず、真空雰囲気下で下塗り樹脂をチップ全体に含浸させ、樹脂種に応じて熱硬化若しくは紫外線硬化させる。その後、エポキシを主成分とする樹脂を粉体塗装等によって塗布し、硬化させる。このように外装部11が形成され、ひいては、コンデンサ1が作製される。
【0069】
以上のとおり、実施形態のコンデンサ1は、1対の内部電極7と、当該1対の内部電極7間に位置する誘電体5と、を有する。誘電体5は、粒径が130nm以下の複数の第1の無機粒子15と、粒径が160nm以上の複数の第2の無機粒子17と、を含む。第2の無機粒子17同士は、複数の第1の無機粒子15を互いに結合してなる三次元マトリクス構造を介して連結されている。
【0070】
従って、三次元マトリクス構造によって第2の無機粒子17の周囲において電界が集中することを抑制でき、絶縁耐圧を高めることができる。また、三次元マトリクス構造のアンカー効果によって誘電体5と内部電極7との接合性も向上する。また、誘電体5は、焼成されず、ひいては、焼成による内部電極7の酸化は生じないことから、内部電極7としてCu等の酸化しやすい金属を利用することが容易化される。また、例えば、第2の無機粒子17のみで誘電体5を構成すると、1つの第2の無機粒子17の周囲に多くの他の第2の無機粒子17を配置することが困難であることから、その三次元マトリックス構造は緻密でなく、電界集中の抑制効果が発揮されなかったり、接触面積が小さくなるが、そのような不都合は生じない。
【0071】
また、コンデンサ1では、第1の無機粒子15および第2の無機粒子17の少なくとも一方はペロブスカイト構造を有している。従って、誘電体5の誘電率を高くすることができ、絶縁耐圧の向上によって高電圧を印加できることと相俟って、容量の大きいコンデンサを実現することができる。
【0072】
また、コンデンサ1では、第1の無機粒子15および第2の無機粒子17は第1ネック部25を介して結合している。従って、第1の無機粒子15と第2の無機粒子17とが単に当接することによって第2の無機粒子17が三次元マトリクス構造に保持されている場合に比較して、誘電体5の強度が向上する。
【0073】
また、コンデンサ1では、第1ネック部25が第1の無機粒子15と同一材料からなる。従って、例えば、第2の無機粒子17の外周面に第2の無機粒子17の材料による凹凸が生じることが抑制され、その結果、第2の無機粒子17の誘電率を高くしても、当該外周面の局所において電界集中が生じることが抑制される。また、第1の無機粒子15は結合に好適な材料とし、第2の無機粒子17は誘電率が高い材料とするなどして、強度を向上させつつ誘電率を向上させることができる。
【0074】
また、コンデンサ1では、第1の無機粒子15同士が第2ネック部27を介して互いに結合している。従って、第1の無機粒子15同士は物質の拡散に基づく結合によって結合されており、強固に結合される。また、第1の無機粒子15同士の結合と、第1の無機粒子15と第2の無機粒子17との結合との双方がネック部を介したものであることから、製造方法が簡素化される。
【0075】
また、コンデンサ1では、三次元マトリクス構造をなす第1の無機粒子15間に樹脂19が存在する。従って、第1の無機粒子15間の第1間隙G1が真空になっている場合等に比較して、誘電体5内部の誘電率を向上させて容量を大きくすることができるとともに、粒子とその外側との誘電率の差を縮小して電界集中が生じることを抑制し、絶縁耐力を向上させることができる。さらに、樹脂19によって三次元マトリクス構造の強度が補強される。
【0076】
また、コンデンサ1では、第2の無機粒子17同士は直接結合していない。従って、第2の無機粒子17同士が結合した大きな粒子が存在することが抑制され、ひいては、電気特性や機械特性に関して異方性が生じることが抑制される。
【0077】
また、コンデンサ1では、第2ネック部27の幅w2は第1ネック部25の幅w1よりも大きい。別の観点では、三次元マトリクス構造は、太い部分(第1の無機粒子15)と細い部分(第2ネック部27)との太さの差をもたせていることになる。その結果、第2の無機粒子17の周囲において電界を好適に迂回させることができる。また、三次元マトリクス構造を構成する第1の無機粒子15間の結合がより強固になされることになり、誘電体5の機械的強度も向上する。
【0078】
また、コンデンサ1では、第1の無機粒子15は第1の誘電率を有し、第2の無機粒子17は前記第1の誘電率よりも高い第2の誘電率を有する。従って、第1の無機粒子15と第2の無機粒子17との配合比率を適宜に変更することにより、任意の誘電率の誘電体5を得ることなどが可能である。また、一般に、誘電率が高い材料は、誘電損失が大きいことから、第2の誘電率の材料のみで誘電体5を形成する場合に比較して、誘電率と誘電損失とを好適にバランスさせて要求される仕様に応じることが可能となる。
【0079】
(実施例)
実施形態の誘電体5について、具体的な材料の選択及び寸法の設定等を行い、実施例に係る誘電体(試料)を作製し、その研磨面をSEMによって観察し、また、絶縁耐力を調べた。具体的には、以下のとおりである。
【0080】
(実施例の誘電体の製造方法)
まず、以下の第1の無機粒子及び第2の無機粒子を用意した。
第1の無機粒子:
材料:シリカ、粒径:130nm以下(平均粒径60nm)
第2の無機粒子:
材料:チタン酸バリウム、粒径:160nm以上(平均粒径340nm)
【0081】
上記の第1の無機粒子及び第2の無機粒子を体積比で3:7になるように配合し、MEK(メチルエチルケトン)中に分散させてスラリーを調製した。
【0082】
この後、上記スラリーをコーターを用いてキャリアフィルム上に塗布してシート状に成形し、乾燥させて、厚み10μmの誘電層33を得た。次に、エポキシ樹脂をシートに含浸させて、80〜250℃の温度で熱処理を行って誘電体5を作製した。
【0083】
(比較例の誘電体の製造方法)
比較例として、第2の無機粒子と同じチタン酸バリウム粒子とエポキシ樹脂とを混合して調整したスラリーから作製した厚み10μmのシートを同じ条件(80〜250℃)で加熱して誘電体を作製した。
【0084】
そして、上記の実施例及び比較例の誘電体のそれぞれの両主面のほぼ全面に蒸着によりAl膜を形成して試料を作製した。
【0085】
(実施例の誘電体の粒径測定方法)
上記のように作製した誘電体5を研磨して第1の無機粒子及び第2の無機粒子を露出させた。
【0086】
次に、30000倍の倍率でSEMによりSEI及びBEMを得て、そのうち、縦横の長さが約20μm×約15μmの領域を選択して粒子の解析を行った。
【0087】
粒子の解析では、まず、観察した粒子一つ一つをEDSにて元素分析し、シリカとチタン酸バリウムとの判別を行った。
【0088】
次に、粒子径の測定をマウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウェア「マックビュー」を用いて行った。具体的には、まず、EDSにて判別した粒子を1個ずつ指定し、ソフトウエアの機能により粒子の領域を判定した。次に、ソフトウエアに判別させた領域の面積から、円相当径を算出させ、その値を粒子径とし、粒子径の最大値、最小値および平均値を求めた。なお、シリカ粒子はSEIから粒子径の解析を行った。チタン酸バリウム粒子はBEIから粒子径の解析を行った。
【0089】
(実施例の解析結果)
図6は、実施例の誘電体5に係るSEIの一例であり、図7は、図6の領域VIIの拡大像である。ただし、これらの写真は、樹脂の含浸前のものである。これらの写真に示されるように、第2の無機粒子23同士は、複数の第1の無機粒子21によって形成された三次元マトリクス構造によって連結されている。
【0090】
図8は、解析の結果から得られた実施例に係る粒径の分布を示す図である。横軸は、粒径を対数軸で示し、縦軸は、体積%を示している。体積%は、解析対象の領域における全粒子の体積に対する各粒子の体積割合である。実線L1は第1の無機粒子の粒径及び体積%を示し、実線L2は第2の無機粒子の粒径及び体積%を示し、実線L3は全粒子の累積体積%を示している。
【0091】
この実施例における第1の無機粒子及び第2の無機粒子の粒径の最小値、最大値及び平均値は以下のとおりであった。
最小値(nm) 最大値(nm) 平均値(nm)
第1材料粒子 31 123 56
第2材料粒子 161 539 332
【0092】
作製した試料について交流電源を用いて破壊電界強度を測定した。その結果は、以下のとおりであった。
比較例:43.2(V/μm)
実施例:57.3(V/μm)
このように、実施例は比較例よりも高い破壊電界強度を示した。
【0093】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0094】
コンデンサは、積層型のものに限定されず、例えば、一の誘電体のみを有する単板型のものであってもよいし、誘電体及び電極が巻かれた巻き型のものであってもよい。また、コンデンサは、リード付きのものに限定されず、例えば、表面実装されるチップ型のものであってもよい。また、コンデンサは、回路基板の一部として構成されたものであってもよい。また、コンデンサは、2重に重ねられた電極が誘電体を挟んで対向するものであってもよいし、複数対の電極が直列に接続されるものであってもよい。
【0095】
また、コンデンサが積層型のものである場合において、誘電体が複数積層されたブロック体を接着層を介して積層してもよい。この接着層は、誘電体間に位置してもよいし、電極間に位置してもよい。最外層は誘電体(電極よりも外側の誘電体)に代えて樹脂層としてもよい。
【0096】
第1の無機粒子及び第2の無機粒子は、互いに同一の材料によって構成されていてもよい。例えば、第1の無機粒子及び第2の無機粒子の双方がシリカによって構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…コンデンサ、5…誘電体、7…内部電極(電極)、15…第1の無機粒子、17…第2の無機粒子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ型コンデンサ、リード付きコンデンサ等のコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂中に無機粒子からなる誘電体フィラーを分散させて誘電体フィルムとし、これを誘電体層に適用したコンデンサが知られている(例えば特許文献1及び2)。このようなコンデンサでは、樹脂よりも誘電率が高い無機粒子が樹脂中に分散されることにより、高い容量が実現される。なお、特許文献1では、誘電体フィラーの平均粒径として0.3μm〜0.5μmが開示されており、特許文献2では、誘電体フィラーの平均粒径として0.2μmが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−225484号公報
【特許文献2】特開2008−229849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した無機粒子を分散させた誘電体フィルムは、無機粒子の誘電率が樹脂の誘電率に比較して高いために、印加された電界が無機粒子の周囲に集中しやすく、これにより絶縁耐力が低下する。
【0005】
本発明の目的は、絶縁耐力を向上できるコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係るコンデンサは、1対の電極と、前記1対の電極間に位置する誘電体と、を有し、前記誘電体は、粒径が130nm以下の複数の第1の無機粒子と、粒径が160nm以上の複数の第2の無機粒子と、を含み、前記第2の無機粒子同士は、前記複数の第1の無機粒子を互いに結合してなる三次元マトリクス構造を介して連結されている。
【0007】
好適には、前記第1の無機粒子および前記第2の無機粒子の少なくとも一方はペロブスカイト構造を有している。
【0008】
好適には、前記第1の無機粒子および前記第2の無機粒子は第1のネック部を介して結合している。
【0009】
好適には、前記第1のネック部が前記第1の無機粒子と同一材料からなる。
【0010】
好適には、前記第1の無機粒子同士が第2のネック部を介して互いに結合している。
【0011】
好適には、前記三次元マトリクス構造をなす前記第1の無機粒子間に樹脂が存在する。
【0012】
好適には、前記第2の無機粒子同士は直接結合していない。
【0013】
好適には、前記第2のネック部の幅は前記第1のネック部の幅よりも大きい。
【0014】
好適には、前記第1の無機粒子は第1の誘電率を有し、前記第2の無機粒子は前記第1の誘電率よりも高い第2の誘電率を有する。
【0015】
上記の構成によれば、絶縁耐力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は本発明の実施形態に係るコンデンサの外観を示す斜視図、図1(b)は図1(a)のIb−Ib線における断面図。
【図2】図2(a)は図1(b)の領域IIaを示す拡大断面図、図2(b)は図2(a)の領域IIbを示す拡大断面図。
【図3】図3(a)〜図3(d)は図1のコンデンサの製造方法を説明する図。
【図4】図4(a)〜図4(c)は図3(d)の続きを示す図。
【図5】図5(a)及び図5(b)は図4(c)の続きを示す図。
【図6】実施例に係る誘電体を電子顕微鏡で撮像した写真。
【図7】図6の領域VIIを拡大して示す写真。
【図8】実施例に係る誘電体における粒度分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1(a)は、本発明の実施形態に係るコンデンサ1の外観を示す斜視図である。
【0018】
コンデンサ1は、リード付きコンデンサとして構成されており、本体部3と、本体部3から延出し、電圧が印加される1対のリード4とを有している。本体部3は、例えば、概ね直方体状に形成されており、1対のリード4は、例えば、直方体の一の面から延出している。本体部3の大きさは適宜に設定されてよいが、例えば、1辺が3〜10数ミリである。
【0019】
図1(b)は、図1(a)のIb−Ib線における断面図である。
【0020】
本体部3は、例えば、積層型コンデンサとして構成されており、交互に積層された複数の誘電体5及び複数の内部電極7を有している。また、本体部3は、複数の内部電極7に接続された1対の外部電極9と、誘電体5及び外部電極9等を覆う外装部11とを有している。
【0021】
複数の誘電体5及び複数の内部電極7は、要求される容量等に応じて適宜な数で積層されている。図1では、内部電極7が8層となるように積層されているが、積層数はこれに限定されるものではなく、例えば、100〜1000層であってもよい。
【0022】
複数の誘電体5は、例えば、互いに同一の形状及び大きさとされている。各誘電体5は、厚さが概ね一定の平板状(フィルム状)に形成されている。誘電体5の厚さは、印加される電圧及び要求される容量等に応じて適宜に設定されてよいが、例えば、5〜20μmである。誘電体5の平面形状は、適宜に設定されてよいが、例えば矩形である。
【0023】
複数の内部電極7は、例えば、互いに同一の形状及び大きさとされている。各内部電極7は、厚さが概ね一定の平板状(フィルム状)に形成されている。内部電極7の平面形状は、適宜に設定されてよいが、例えば矩形である。複数の内部電極7は、その積層方向において交互に、1対の外部電極9の対向方向において互いにずれて配置されている。そして、複数の内部電極7は、その積層方向において交互に、1対の外部電極9の一方又は他方に、平面形状の矩形の1辺(縁部)が接続されている。内部電極7は、例えば、Al若しくはAl−Zn合金等の金属又はこれらを主成分とする混合材料により形成されている。
【0024】
外部電極9は、複数の誘電体5及び複数の内部電極7によって構成された積層体8の側面を覆うように形成されており、例えば、Sn、Zn若しくはSn−Zn合金等の金属により形成されている。
【0025】
外装部11は、積層体8及び1対の外部電極9の全体を覆っており、本体部3の外面全体を構成している。外装部11は、樹脂等の絶縁性材料により形成されている。樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアノレジン樹脂等の熱硬化性樹脂である。
【0026】
リード4は、金属板若しくは線材からなり、一端側が外部電極9の外側面に接続されており、他端側が外装部11から延出している。リード4は、例えば、Fe、Cu若しくはSn等の金属により形成されている。
【0027】
図2(a)は、図1(b)の領域IIaを示す拡大断面図である。図2(b)は、図2(a)の領域IIbを示す拡大断面図である。
【0028】
誘電体5は、互いに結合した複数の無機粒子(15、17等)と、これらの隙間に位置する樹脂19とから構成されている。
【0029】
例えば、誘電体5は、無機粒子を20体積%以上80%体積以下含み、樹脂19を20体積%以上80体積%以下含み、より好ましくは、無機粒子を50体積%以上80%体積以下含み、樹脂19を20体積%以上50体積%以下含み(無機粒子の体積割合が樹脂19の体積割合以上であり)、さらに好ましくは、無機粒子を60体積%以上70%体積以下含み、樹脂19を30体積%以上40体積%以下含んでいる。
【0030】
複数の無機粒子は、複数の第1の無機粒子15と、複数の第1の無機粒子15よりも粒径が大きい第2の無機粒子17とを有している。第1の無機粒子15の粒径と第2の無機粒子17の粒径との境界は、例えば、150nmである。
【0031】
第1の無機粒子15の粒径は、130nm以下である。この場合において、好ましくは、第1の無機粒子15は、110nm以下の粒径の粒子を第1の無機粒子15全体の体積に対して80体積%以上含んでいる。また、より好ましくは、第1の無機粒子15は、その全てが110nm以下である。なお、第1の無機粒子15の粒径の下限値は、例えば、3nm若しくは30nmである。
【0032】
第2の無機粒子17の粒径は、160nm以上である。この場合において、好ましくは、第2の無機粒子17は、200nm以上の粒径の粒子を第2の無機粒子17全体の体積に対して90体積%以上含んでいる。また、より好ましくは、第2の無機粒子17は、その全てが200nm以上である。なお、第2の無機粒子17の粒径の上限値は、5μm若しくは600nmである。
【0033】
さらに、誘電体5に含まれる無機粒子について所定の間隔(例えば10nm毎)で粒度分布をとったときに小径側(第1の無機粒子15)の山の最大頻度を示す粒径と大径側(第2の無機粒子17)の山の最大頻度を示す粒径との差が100nm以上、好ましくは200nm以上であるのがよい。
【0034】
第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17の粒径は、例えば、誘電体5の研磨面若しくは破断面をSEM(Scanning Electron Microscope)によって適宜な倍率(例えば30000倍)で撮像して得られるSEI(二次電子像)及び/又はBEI(反射電子像)を観察することにより測定できる。
【0035】
粒径は、SEI及び/又はBEIにおいて観察される粒子の面積と同等の面積を有する円の直径(円相当径)として算出(測定)されることが好ましい。ただし、最大径が粒径とされるなどしてもよい。
【0036】
誘電体5を構成する複数の無機粒子は、例えば、第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17の合計体積に対して、第1の無機粒子15を20体積%以上90体積%以下含み、第2の無機粒子17を10体積%以上80体積%以下含み、より好ましくは、第1の無機粒子15を20体積%以上40体積%以下含み、第2の無機粒子17を60体積%以上80体積%以下含んでいる。
【0037】
なお、複数の無機粒子及び樹脂19の好ましい体積割合と併せると、最も好ましくは、誘電体5は、複数の無機粒子(15、17)及び樹脂19の合計体積に対して、第1の無機粒子15を12体積%以上28体積%以下含み、第2の無機粒子17を36体積%以上56体積%以下含み、樹脂19を30体積%以上40体積%以下含む。
【0038】
各粒子等の体積%は、例えば、上述のSEI及び/又はBEIにおいて、画像解析装置等を用いて誘電体5に占める各粒子の面積比率(面積%)を複数個所(例えば10箇所)の断面にて測定し、その測定値の平均値を算出して含有量(体積%)とみなすことにより、測定される。
【0039】
第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17は、例えば、互いに異なる材料により構成されている。この場合において、別の観点では、誘電体5を構成する複数の無機粒子は、複数の第1材料粒子21と、複数の第1材料粒子21とは異なる材料からなる第2材料粒子23とからなる。そして、第2材料粒子23の粒径は、第1材料粒子21の粒径よりも大きいものとされる。
【0040】
なお、誤差範囲(例えば無機粒子全体の1体積%未満)で第1材料粒子21の粒径よりも粒径が小さい第2材料粒子23が存在してもよい。以下では、特に断りがない限り、第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17と、第1材料粒子21及び第2材料粒子23とを特に区別しないものとし、主として第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17の語を用いる。
【0041】
第1材料粒子21と第2材料粒子23との判別(粒子を構成する材料の判別)は、例えば、EDS(Energy Dispersive x-ray Spectroscopy)による元素分析に基づいて行われる。そして、EDSによって材料判別をした後に、上述のようにSEI及び/又はBEIに基づいて粒径を測定することにより、第1材料粒子21及び第2材料粒子23の粒径をそれぞれ測定することができる。
【0042】
第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17は、例えば、比較的誘電率が大きい材料により構成されていることが好ましい。このような誘電率が高い材料としては、例えば、ペロブスカイト構造を有する材料を挙げることができる。ペロブスカイト構造を有する材料は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3、比誘電率:1200〜3000)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3、比誘電率:300)、チタン酸カルシウム(CaTiO3、比誘電率:200)、チタン酸バリウムストロンチウム(Ba1−xSrxTiO3、比誘電率:800〜1500)、チタン酸バリウムカルシウム(Ba1−xCaxTiO3、比誘電率:600〜1200)である。
【0043】
また、第2の無機粒子17は、例えば、第1の無機粒子15に比較して、誘電率が大きい材料によって形成されている。例えば、第1の無機粒子15が、シリカ(SiO2、比誘電率:3〜4)によって形成されているのに対して、第2の無機粒子17は、アルミナ(Al2O3、比誘電率:8〜11)、二酸化チタン(TiO2、比誘電率:83〜183)若しくは上述のペロブスカイト構造を有する材料によって形成されている。また、例えば、第1の無機粒子15が、シリカ、アルミナ若しくは二酸化チタンによって形成されているのに対して、第2の無機粒子17は、上述のペロブスカイト構造を有する材料によって形成されている。また、例えば、第1の無機粒子15が常誘電体(チタン酸ストロンチウム等)によって形成されているのに対し、第2の無機粒子17は強誘電体(チタン酸バリウム等)によって形成されている。
【0044】
複数の第1の無機粒子15は、互いに結合して三次元マトリクス構造(三次元網目構造、骨格構造)を構成している。そして、複数の第2の無機粒子17同士は、複数の第1の無機粒子15からなる三次元マトリクス構造を介して互いに連結されている。具体的には、以下のとおりである。
【0045】
複数の第1の無機粒子15は、複数の第2ネック部27を介して互いに結合している。第2ネック部27は、例えば物質の拡散によって形成されるものである。ただし、複数の第1の無機粒子15は、焼成されたセラミックのように緻密化はされておらず、複数の第1の無機粒子15間には複数の第1間隙G1が形成されている。すなわち、複数の第1の無機粒子15は、誘電体5において三次元マトリクス構造を構成している。
【0046】
また、各第2の無機粒子17は、複数の第1の無機粒子15に対して複数の第1ネック部25を介して結合している。なお、第1ネック部25も第2ネック部27と同様に例えば物質の拡散によって形成されるものである。そして、複数の第2の無機粒子17は、複数の第1の無機粒子15からなる三次元マトリクス構造を介して互いに連結されている。なお、第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17間においても緻密化はなされておらず、これらの間には第2間隙G2が形成されている。
【0047】
複数の第2の無機粒子17同士は、その間に複数の第1の無機粒子15が介在していることから、そのほとんどは、直接当接していない。また、複数の第2の無機粒子17同士は、直接当接していたとしても、互いに結合はしていない(ネック部は形成されていない。)。また、第2ネック部27の幅w2は、第1ネック部25の幅w1よりも大きい。第1ネック部25及び第2ネック部27はいずれも、第1の無機粒子15と同一材料により形成されている。この場合、第1の無機粒子15と同一材料とは、第2の無機粒子17の成分を微量(EPMA分析により求められる測定で0.1質量%以下)含んでいてもよいことを意味する。
【0048】
第1間隙G1及び第2間隙G2は、第1の無機粒子15が緻密化されないことによって形成されており、その大きさは、概略(オーダー的に)、第1の無機粒子15の粒径程度である。複数の第1間隙G1は、断面図においては閉じられているが、三次元的に互いに連通されている。そして、複数の第1間隙G1は、直接又は間接に誘電体5の主面に通じている。複数の第2間隙G2も、直接又は間接に誘電体5の主面に通じている。
【0049】
複数の第1の無機粒子15及び複数の第2の無機粒子17からなる無機材料には、複数の空隙G3が形成されている。各空隙G3は、その内周面が複数の第1の無機粒子15及び複数の第2の無機粒子17により構成されている。複数の空隙G3も、直接又は間接に誘電体5の主面に通じている。
【0050】
樹脂19は、第1間隙G1、第2間隙G2及び空隙G3に充填されている。樹脂19は、例えば、エポキシ樹脂(比誘電率:2.5〜6)、ポリイミド樹脂(比誘電率:3.55)、シアノレジン樹脂(比誘電率:15〜20)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB、比誘電率:3.9〜4)、フッ素樹脂(比誘電率:4〜8)、アクリル樹脂(比誘電率:2.7〜4.5)、ポリエチレンテレフタラート樹脂(PET、比誘電率:2.9〜3)、ポリプロピレン樹脂(PP、比誘電率:2.2〜2.3)である。また、樹脂19は、例えば、第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17、又は、第2の無機粒子17に比較して、誘電率が小さいものを用いるのがよい。
【0051】
図3(a)〜図5(b)は、コンデンサ1の製造方法を説明する図である。コンデンサ1の製造方法は、図3(a)から図5(b)へ順次進行する。なお、図3(a)は、ボールミルの模式的な斜視図である。図3(b)及び図3(d)〜図5(b)は、図1(b)に対応する断面図である。図3(c)は、図2(b)と同様に誘電体5の一部拡大断面図である。
【0052】
まず、図3(a)に示すように、ボールミルを用いて第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17を所定の配合比で混合するとともに溶剤に分散させてスラリーを調製する。なお、第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17の配合比(体積比)は、上述したように、例えば、2:8〜4:6である。
【0053】
なお、溶剤は、例えば、メタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルアセトアミド、又は、これらから選択された2種以上の混合物を含んだ有機溶剤である。
【0054】
次に、図3(b)に示すように、作製したスラリーをキャリアフィルム31上に塗布してシート状に成形し、乾燥(溶剤を蒸発)させることにより、誘電体5(この時点では樹脂19を含まない)が多数個取りされる、無機材料からなる誘電層33を形成する。
【0055】
スラリーの塗布は、例えば、ドクターブレード、ディスペンサー、バーコーター、ダイコーター又はスクリーン印刷を用いて行うことができる。スラリーの乾燥は、例えば加熱及び風乾により行われる。乾燥温度は、例えば、20℃以上且つ溶剤の沸点(二種類以上の溶剤を混合している場合には、最も沸点の低い溶剤の沸点)未満に設定される。
【0056】
乾燥中、第1の無機粒子15同士の結合が進行し、また、第1の無機粒子15と第2の無機粒子17との結合が進行する。ただし、高温に加熱しないため、ネック構造(第1ネック部25及び第2ネック部27)を維持することができ、第1の無機粒子15による骨格構造が形成される(第1間隙G1および第2間隙G2が形成される。)。
【0057】
第1の無機粒子15は、第2の無機粒子17に比較して原子の運動が活発なので、第1の無機粒子15同士の第2ネック部27の方が第1の無機粒子15と第2の無機粒子17との第1ネック部25よりも太くなる。また、同様の理由により及び/又は拡散係数の相違により、第1ネック部25は主として第1の無機粒子15によって構成される。また、第2の無機粒子17同士は、第1の無機粒子15が間に介在していて結合が困難であるとともに、仮に互いに当接していても、原子の運動が活発でないことから、結合しにくい。なお、このような結合態様は、第1の無機粒子15の粒径が110nm以下であり、第2の無機粒子17の粒径が200nm以上である場合に好適に生じやすい。
【0058】
また、第1の無機粒子15の結合の進行に伴って複数の第1の無機粒子15全体としての収縮が生じ、空隙G3が形成される。なお、空隙G3は、第1の無機粒子15及び第2の無機粒子17の合計体積に対して、第2の無機粒子17を60体積%以上とするなど、第2の無機粒子17の体積%を比較的大きくすると形成されやすい。
【0059】
キャリアフィルム31は、樹脂等の適宜な材料により形成されていてよいが、耐熱性、機械的強度及びコストの観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)により形成されていることが好ましい。
【0060】
次に、図3(c)に示すように、誘電層33に溶融状態又は液状の樹脂を含浸させる。例えば、スピンコーターによって、樹脂を誘電層33の主面に塗布しつつ誘電層33に含浸しない樹脂は回収する。スクリーン印刷等によって必要十分な量の樹脂を誘電層33に供給してもよい。なお、含浸は、毛細管力によってなされる。含浸した溶融状態又は液状の樹脂が硬化すると、第1間隙G1、第2間隙G2及び空隙G3に充填された樹脂19が形成される。
【0061】
その後、特に図示しないが、誘電層33に対して加熱処理を行う。これにより、粒子同士の結合は強固になる。この加熱温度は、無機材料の粒成長を抑制するために無機材料の結晶開始温度未満であることが好ましく、また、残存した溶剤を蒸発させるために溶剤の沸点以上であることが好ましい。例えば、第1の無機粒子15がシリカ(結晶開始温度1300℃)からなる場合、加熱温度は100〜600℃である。なお、この加熱処理は、樹脂の誘電層33への含浸よりも前に行われてもよい。
【0062】
次に、図3(d)に示すように、内部電極7を誘電体5上に形成する。例えば、メタルマスクを介して内部電極7となる金属を誘電体5に蒸着することによってパターニングされた内部電極7を形成する。なお、内部電極7は、めっき法やフォトリソグラフィーあるいは金属箔の転写等によって形成されてもよい。
【0063】
そして、図3(b)〜図3(d)を参照して説明した工程を繰り返すことにより、図4(a)さらには図4(b)に示すように、誘電体5(誘電層33)及び内部電極7を積層していく。なお、このように繰り返しの塗工によって積層していくことにより、キャリアフィルム31の使用量を低減することができる。また、図3(d)に示した内部電極7の形成された誘電層33を、逐次キャリアフィルム31を剥がしながら積層していく工法を用いてもよい。
【0064】
なお、積層体8は、1軸プレスからなる仮プレス及び静水圧プレスからなる本プレス等を経て、誘電層33と内部電極7との間及び誘電層33間の密着が強化されてよい。
【0065】
その後、図4(c)に示すように、キャリアフィルム31を剥離し、ダイシングブレード若しくはレーザ等を用いて誘電層33を個片にカットする。
【0066】
次に、図5(a)に示すように外部電極9を形成する。例えば、誘電体5及び内部電極7からなる積層体8の側面に金属を溶射することによって外部電極9を形成する。また、複数の積層体8をディップ治具に整列させて積層体8の側面をめっき液に浸透させることなどにより、外部電極9の外層にSn等のめっきを施してもよい。
【0067】
次に、図5(b)に示すように、リード4を外部電極9に接合する。例えば、溶接によってリード4を外部電極9に接合する。なお、レーザ溶接を用いる場合においては、リード4及び外部電極9の外装がレーザを吸収しやすいSnによって覆われていることが好ましい。
【0068】
そして、図2(b)に示すように、外装部11を形成する。例えば、まず、真空雰囲気下で下塗り樹脂をチップ全体に含浸させ、樹脂種に応じて熱硬化若しくは紫外線硬化させる。その後、エポキシを主成分とする樹脂を粉体塗装等によって塗布し、硬化させる。このように外装部11が形成され、ひいては、コンデンサ1が作製される。
【0069】
以上のとおり、実施形態のコンデンサ1は、1対の内部電極7と、当該1対の内部電極7間に位置する誘電体5と、を有する。誘電体5は、粒径が130nm以下の複数の第1の無機粒子15と、粒径が160nm以上の複数の第2の無機粒子17と、を含む。第2の無機粒子17同士は、複数の第1の無機粒子15を互いに結合してなる三次元マトリクス構造を介して連結されている。
【0070】
従って、三次元マトリクス構造によって第2の無機粒子17の周囲において電界が集中することを抑制でき、絶縁耐圧を高めることができる。また、三次元マトリクス構造のアンカー効果によって誘電体5と内部電極7との接合性も向上する。また、誘電体5は、焼成されず、ひいては、焼成による内部電極7の酸化は生じないことから、内部電極7としてCu等の酸化しやすい金属を利用することが容易化される。また、例えば、第2の無機粒子17のみで誘電体5を構成すると、1つの第2の無機粒子17の周囲に多くの他の第2の無機粒子17を配置することが困難であることから、その三次元マトリックス構造は緻密でなく、電界集中の抑制効果が発揮されなかったり、接触面積が小さくなるが、そのような不都合は生じない。
【0071】
また、コンデンサ1では、第1の無機粒子15および第2の無機粒子17の少なくとも一方はペロブスカイト構造を有している。従って、誘電体5の誘電率を高くすることができ、絶縁耐圧の向上によって高電圧を印加できることと相俟って、容量の大きいコンデンサを実現することができる。
【0072】
また、コンデンサ1では、第1の無機粒子15および第2の無機粒子17は第1ネック部25を介して結合している。従って、第1の無機粒子15と第2の無機粒子17とが単に当接することによって第2の無機粒子17が三次元マトリクス構造に保持されている場合に比較して、誘電体5の強度が向上する。
【0073】
また、コンデンサ1では、第1ネック部25が第1の無機粒子15と同一材料からなる。従って、例えば、第2の無機粒子17の外周面に第2の無機粒子17の材料による凹凸が生じることが抑制され、その結果、第2の無機粒子17の誘電率を高くしても、当該外周面の局所において電界集中が生じることが抑制される。また、第1の無機粒子15は結合に好適な材料とし、第2の無機粒子17は誘電率が高い材料とするなどして、強度を向上させつつ誘電率を向上させることができる。
【0074】
また、コンデンサ1では、第1の無機粒子15同士が第2ネック部27を介して互いに結合している。従って、第1の無機粒子15同士は物質の拡散に基づく結合によって結合されており、強固に結合される。また、第1の無機粒子15同士の結合と、第1の無機粒子15と第2の無機粒子17との結合との双方がネック部を介したものであることから、製造方法が簡素化される。
【0075】
また、コンデンサ1では、三次元マトリクス構造をなす第1の無機粒子15間に樹脂19が存在する。従って、第1の無機粒子15間の第1間隙G1が真空になっている場合等に比較して、誘電体5内部の誘電率を向上させて容量を大きくすることができるとともに、粒子とその外側との誘電率の差を縮小して電界集中が生じることを抑制し、絶縁耐力を向上させることができる。さらに、樹脂19によって三次元マトリクス構造の強度が補強される。
【0076】
また、コンデンサ1では、第2の無機粒子17同士は直接結合していない。従って、第2の無機粒子17同士が結合した大きな粒子が存在することが抑制され、ひいては、電気特性や機械特性に関して異方性が生じることが抑制される。
【0077】
また、コンデンサ1では、第2ネック部27の幅w2は第1ネック部25の幅w1よりも大きい。別の観点では、三次元マトリクス構造は、太い部分(第1の無機粒子15)と細い部分(第2ネック部27)との太さの差をもたせていることになる。その結果、第2の無機粒子17の周囲において電界を好適に迂回させることができる。また、三次元マトリクス構造を構成する第1の無機粒子15間の結合がより強固になされることになり、誘電体5の機械的強度も向上する。
【0078】
また、コンデンサ1では、第1の無機粒子15は第1の誘電率を有し、第2の無機粒子17は前記第1の誘電率よりも高い第2の誘電率を有する。従って、第1の無機粒子15と第2の無機粒子17との配合比率を適宜に変更することにより、任意の誘電率の誘電体5を得ることなどが可能である。また、一般に、誘電率が高い材料は、誘電損失が大きいことから、第2の誘電率の材料のみで誘電体5を形成する場合に比較して、誘電率と誘電損失とを好適にバランスさせて要求される仕様に応じることが可能となる。
【0079】
(実施例)
実施形態の誘電体5について、具体的な材料の選択及び寸法の設定等を行い、実施例に係る誘電体(試料)を作製し、その研磨面をSEMによって観察し、また、絶縁耐力を調べた。具体的には、以下のとおりである。
【0080】
(実施例の誘電体の製造方法)
まず、以下の第1の無機粒子及び第2の無機粒子を用意した。
第1の無機粒子:
材料:シリカ、粒径:130nm以下(平均粒径60nm)
第2の無機粒子:
材料:チタン酸バリウム、粒径:160nm以上(平均粒径340nm)
【0081】
上記の第1の無機粒子及び第2の無機粒子を体積比で3:7になるように配合し、MEK(メチルエチルケトン)中に分散させてスラリーを調製した。
【0082】
この後、上記スラリーをコーターを用いてキャリアフィルム上に塗布してシート状に成形し、乾燥させて、厚み10μmの誘電層33を得た。次に、エポキシ樹脂をシートに含浸させて、80〜250℃の温度で熱処理を行って誘電体5を作製した。
【0083】
(比較例の誘電体の製造方法)
比較例として、第2の無機粒子と同じチタン酸バリウム粒子とエポキシ樹脂とを混合して調整したスラリーから作製した厚み10μmのシートを同じ条件(80〜250℃)で加熱して誘電体を作製した。
【0084】
そして、上記の実施例及び比較例の誘電体のそれぞれの両主面のほぼ全面に蒸着によりAl膜を形成して試料を作製した。
【0085】
(実施例の誘電体の粒径測定方法)
上記のように作製した誘電体5を研磨して第1の無機粒子及び第2の無機粒子を露出させた。
【0086】
次に、30000倍の倍率でSEMによりSEI及びBEMを得て、そのうち、縦横の長さが約20μm×約15μmの領域を選択して粒子の解析を行った。
【0087】
粒子の解析では、まず、観察した粒子一つ一つをEDSにて元素分析し、シリカとチタン酸バリウムとの判別を行った。
【0088】
次に、粒子径の測定をマウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウェア「マックビュー」を用いて行った。具体的には、まず、EDSにて判別した粒子を1個ずつ指定し、ソフトウエアの機能により粒子の領域を判定した。次に、ソフトウエアに判別させた領域の面積から、円相当径を算出させ、その値を粒子径とし、粒子径の最大値、最小値および平均値を求めた。なお、シリカ粒子はSEIから粒子径の解析を行った。チタン酸バリウム粒子はBEIから粒子径の解析を行った。
【0089】
(実施例の解析結果)
図6は、実施例の誘電体5に係るSEIの一例であり、図7は、図6の領域VIIの拡大像である。ただし、これらの写真は、樹脂の含浸前のものである。これらの写真に示されるように、第2の無機粒子23同士は、複数の第1の無機粒子21によって形成された三次元マトリクス構造によって連結されている。
【0090】
図8は、解析の結果から得られた実施例に係る粒径の分布を示す図である。横軸は、粒径を対数軸で示し、縦軸は、体積%を示している。体積%は、解析対象の領域における全粒子の体積に対する各粒子の体積割合である。実線L1は第1の無機粒子の粒径及び体積%を示し、実線L2は第2の無機粒子の粒径及び体積%を示し、実線L3は全粒子の累積体積%を示している。
【0091】
この実施例における第1の無機粒子及び第2の無機粒子の粒径の最小値、最大値及び平均値は以下のとおりであった。
最小値(nm) 最大値(nm) 平均値(nm)
第1材料粒子 31 123 56
第2材料粒子 161 539 332
【0092】
作製した試料について交流電源を用いて破壊電界強度を測定した。その結果は、以下のとおりであった。
比較例:43.2(V/μm)
実施例:57.3(V/μm)
このように、実施例は比較例よりも高い破壊電界強度を示した。
【0093】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0094】
コンデンサは、積層型のものに限定されず、例えば、一の誘電体のみを有する単板型のものであってもよいし、誘電体及び電極が巻かれた巻き型のものであってもよい。また、コンデンサは、リード付きのものに限定されず、例えば、表面実装されるチップ型のものであってもよい。また、コンデンサは、回路基板の一部として構成されたものであってもよい。また、コンデンサは、2重に重ねられた電極が誘電体を挟んで対向するものであってもよいし、複数対の電極が直列に接続されるものであってもよい。
【0095】
また、コンデンサが積層型のものである場合において、誘電体が複数積層されたブロック体を接着層を介して積層してもよい。この接着層は、誘電体間に位置してもよいし、電極間に位置してもよい。最外層は誘電体(電極よりも外側の誘電体)に代えて樹脂層としてもよい。
【0096】
第1の無機粒子及び第2の無機粒子は、互いに同一の材料によって構成されていてもよい。例えば、第1の無機粒子及び第2の無機粒子の双方がシリカによって構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…コンデンサ、5…誘電体、7…内部電極(電極)、15…第1の無機粒子、17…第2の無機粒子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の電極と、
前記1対の電極間に位置する誘電体と、
を有し、
前記誘電体は、
粒径が130nm以下の複数の第1の無機粒子と、
粒径が160nm以上の複数の第2の無機粒子と、を含み、
前記第2の無機粒子同士は、前記複数の第1の無機粒子を互いに結合してなる三次元マ
トリクス構造を介して連結されている
コンデンサ。
【請求項2】
前記第1の無機粒子および前記第2の無機粒子の少なくとも一方はペロブスカイト構造
を有している
請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記第1の無機粒子および前記第2の無機粒子は第1のネック部を介して結合している
請求項1または2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記第1のネック部が前記第1の無機粒子と同一材料からなる
請求項3に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記第1の無機粒子同士が第2のネック部を介して互いに結合している
請求項3に記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記三次元マトリクス構造をなす前記第1の無機粒子間に樹脂が存在する
請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記第2の無機粒子同士は直接結合していない
請求項3に記載のコンデンサ。
【請求項8】
前記第2のネック部の幅は前記第1のネック部の幅よりも大きい
請求項5に記載のコンデンサ。
【請求項9】
前記第1の無機粒子は第1の誘電率を有し、前記第2の無機粒子は前記第1の誘電率よりも高い第2の誘電率を有する
請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載のコンデンサ。
【請求項1】
1対の電極と、
前記1対の電極間に位置する誘電体と、
を有し、
前記誘電体は、
粒径が130nm以下の複数の第1の無機粒子と、
粒径が160nm以上の複数の第2の無機粒子と、を含み、
前記第2の無機粒子同士は、前記複数の第1の無機粒子を互いに結合してなる三次元マ
トリクス構造を介して連結されている
コンデンサ。
【請求項2】
前記第1の無機粒子および前記第2の無機粒子の少なくとも一方はペロブスカイト構造
を有している
請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記第1の無機粒子および前記第2の無機粒子は第1のネック部を介して結合している
請求項1または2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記第1のネック部が前記第1の無機粒子と同一材料からなる
請求項3に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記第1の無機粒子同士が第2のネック部を介して互いに結合している
請求項3に記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記三次元マトリクス構造をなす前記第1の無機粒子間に樹脂が存在する
請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記第2の無機粒子同士は直接結合していない
請求項3に記載のコンデンサ。
【請求項8】
前記第2のネック部の幅は前記第1のネック部の幅よりも大きい
請求項5に記載のコンデンサ。
【請求項9】
前記第1の無機粒子は第1の誘電率を有し、前記第2の無機粒子は前記第1の誘電率よりも高い第2の誘電率を有する
請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載のコンデンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−51304(P2013−51304A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188285(P2011−188285)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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