説明

コントラストを向上させる素子を具備するTEMにおける光学素子をセンタリングするための方法

【課題】透過型電子顕微鏡おいて、光学素子をセンタリングする際にコントラスト向上素子の汚染や損傷を防止する方法の実現。
【解決手段】透過型電子顕微鏡500の複数の光学素子を用いることにより非散乱電子ビームを偏向して、回折平面に配置されたコントラスト向上素子518に該電子ビームが照射されないように調節する。更に、該電子ビームを逆戻りに偏向する事により再び光軸に戻すように調整して光学素子のセンタリングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、透過型電子顕微鏡(TEM)における一つの若しくはより多い光学素子を調節する又はそれを整列させるための方法であって、TEMが試料へ電子のビームをガイドするための対物レンズが備え付けられたものであると共にTEMが少なくとも散乱されてない電子のビームが集束させられる回折平面を示すものであると共に、TEMがコントラスト伝達関数(CTF)を向上させるための構造体が備え付けられたものであると共に、上記の構造体が回折平面又はそれのイメージに位置を定められたものであると共に、方法が光学素子を調節すること又はそれを整列させることを具備する、方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法は、US特許番号6,744,048から知られたものである。この特許は、TEMにおいて位相板を整列させることに関係する。
【0003】
TEMにおいて、高エネルギーの電子のビームは、薄い試料を照射する。好ましくは、ビームは、平行なビームである。試料は、大部分の電子が、影響を及ぼされないでそれを通過するが、しかしいくつかの電子が、吸収される又は散乱されるように薄いもの(典型的には、25nm及び250nmの間におけるもの)である。(平行なビームが、試料を照射するとき、対物レンズの後方焦点面と一致する)回折平面において、妨害されないで試料を通過した電子は、全て一つの点に集束させられる。散乱された電子は、この回折平面における他の点に集束させられる。
【0004】
回折させられた電子は、回折させられてない電子との破壊的な又は建設的な干渉によって位相のイメージを形成する。上記のイメージングの方法の問題は、低い空間周波数についてのCTFが最小を示すと共に、このように大きい構造体のコントラストが低いものであるということである。
【0005】
イメージは、回折平面において位相板を挿入することによって向上させられることができるが、位相板が中央の回折させられてないビーム及び回折させられた電子の間における位相差を含む。好ましくは、導入された位相シフトは、+π/2又は−π/2であるが、それによって余弦の挙動へCTFの正弦の挙動を変化させる。
【0006】
上のものは、例えば、“Phase contrast enhancement with phase plates in biological electron microscopy”,K.Nagayama et al.,Microscopy Today,Vol.18,No.4,2010,pp.10−13において議論された及び例証されたものである。
【0007】
知られた特許US6,744,048の共著者、Nagayamaによって使用された位相板は、薄い炭素の箔からなるいわゆるゼルニケ(Zernike)位相板である。箔は、箔を通過する電子ビームが−π/2の位相シフトを経験することを引き起こす。300keVの電子については、炭素の箔の厚さは、このようにおおよそ24nmであるべきである。箔は、1μmの直径を備えた、又は0.5μmのものさえもある、中央の穴を示すが、それを回折させられてないビームが通過する。回折平面における中央のビームの直径(全ての回折させられてない電子が集束させられる焦点)がおおよそ20nmであることは、留意されることである。位相板が整列させられるのでなければならない確度は、このように+/−0.5μmと比べてより良好なものである又は+/−0.25μmと比べてより良好なものでさえもある。
【0008】
特許は、要求された確度まで位相板の機械的な整列と関連させられた問題を議論すると共に、位相板をセンタリングするためにコイルとの電気機械的な整列を使用することを提案する。
【0009】
自明に位相板は、整列の間に、中央のビームを遮断することができる。このビームが、試料が照射される電流の大部分を具備すると共に、焦点が小さい直径を有する際に、電流及び電流密度の両方は、高いものである。位相板は、熱的な加熱をすることのせいでこのように損傷させられることがある共に、また汚染は、生ずることがあるが、上記の汚染が照射されたとき帯電することを生じさせるものである。またビームによって誘導された酸化は、帯電することに帰着することがある。今日では、また、TEMは、利用可能なものになるが、それにおいて、試料は、気体が導入される体積に存する。これは、微量化学等を研究するためになされる。試料におけるより高い気体の圧力の結果は、しばしば、また、例えば、位相板の位置における、圧力が、より高いものであるというものである。これは、位相板の構造体の表面の酸化、このように帯電すること、を生じさせることがある。
【0010】
そのような損傷させること又は汚染の問題が、また、位相板の上流の(上流は電子源及び位相板の間を意味する)他の光学素子が整列させられるとき、これが回折平面におけるイメージのシフトを引き起こすことがあるので、生ずることがあることは、留意されることである。そのような光学素子の例は、電子源及び位相板の間に位置決めされた偏向器、レンズ、及びアパーチャである。
【0011】
類似の損傷及び/又は汚染が、単側波帯イメージングに使用されたナイフエッジのような、他の位相の向上の構造体について、又は、(選択された空間周波数の範囲についての単側波帯イメージングデバイスとして作用するものである)欧州特許出願EP10167258に記載されたいわゆる“チューリップデバイス”、小型の静電気的な小型のレンズ(例.US特許番号US5,814,815を参照のこと)、若しくはUS特許番号7,737,412において開示された位相シフト素子において、全てのこれらの構造体が中央のビームに近い位置まで延びるのでなければならないので、生ずることがあることは、さらに留意されることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,744,048号
【特許文献2】欧州特許出願公開第10167258号
【特許文献3】米国特許第5,814,815号
【特許文献4】米国特許第7,737,412号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】K.Nagayama et al.,Microscopy Today,Vol.18,No.4,2010,pp.10−13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明は、CFTを向上させるための構造体の損傷又は帯電することが、回避される一方で、光学素子をセンタリングするための方法を提供することを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そのためには、発明に従った方法は、上記の調節すること又は整列させることの間における構造体の散乱されてない電子での照射が、構造体から離れて散乱されてない電子のビームを偏向させることによって予防されることにおいて特徴付けられたものである。
【0016】
構造体から離れてビームを偏向させることによって、構造体は、照射されないものであると共に、このように構造体の帯電すること、汚染、及び/又は損傷は、予防される。これが、軸から取り除かれた部分の照射に帰着することがあるが、しかし、これが、大部分の事例においては、これらの遠方の所におけるいずれの汚染も正常な使用の間により少ない電子を遮断すると共に、このようにより少ない帯電をすることが生ずるので、より少ない重要性のものであることは、留意されることである。いくらかの追加的な非点収差についての補正は、通常では、アパーチャのエッジの帯電をすることの効果を除去するためには十分なものである。
【0017】
ある実施形態において、構造体は、位相板又は単側波帯イメージングデバイスである。
【0018】
位相板は、イメージのコントラストを向上させるためのそれらの使用、より具体的には低い空間周波数(大きい構造体)におけるそれらの向上、について知られたものである。異なるタイプの位相板が一般的に有するものは、正常な動作において、それらが、回折させられてない集束させられたビームに非常に近いところまで、典型的には5μmと比べてより少ない、より好ましくは、1μmと比べてより少ないところまで、延びるというものである。軸において、回折させられてない電子のビームは、集束させられる。位相板は、このように大きい電流を備えたスポットまで延びる。いずれの帯電をすることも、上記のスポットの偏向を引き起こすと共にイメージの劣化に至ることになる。
【0019】
また、先に述べられたNagayamaによる“Phase contrast enhancement with phase plates in biological electron microscopy”に記載されたフーコー(Foucault)のナイフエッジ又はヒルベルト(Hilbert)のナイフエッジのような単側波帯イメージングデバイスは、軸に近い位置まで延びる。これらのデバイスが定義によって軸に対して非対照的なものであることは、それをより悪いものにする。
【0020】
これらの構造体の大部分が、とても繊細なものであると共に、電子の集束させられたビームでそれらを照射することによって構造体の加熱をすることが、構造体を損傷させることがあることは、さらに述べられることである。
【0021】
先に述べられた“チューリップデバイス”が、また、そのような構造体であることは、留意されることである。
【0022】
発明の別の実施形態において、構造体(例えば、位相板又は単側波帯デバイス)は、(対物レンズのいわゆる後方焦点面における又はそれの付近の)回折平面にではなく、それのイメージに、位置決めされたものである。
【0023】
回折平面のイメージに、好ましくは大きくされたイメージに、そのようなデバイスを置くことは、すでに知られたことである。これは、デバイスのサイズ及び軸に対するセンタリングについての要求をゆるめる。
【0024】
発明のなおも別の実施形態において、構造体は、光軸を囲んで位置させられたものであると共に、ビームは、構造体の照射を予防するために光軸から離れて曲げられると共に、ビームは、一つの又はより多い偏向器及び/又はレンズを使用することで軸へと逆戻りに曲げられると共に軸へ整列させられる。
【0025】
光学的なデバイスをセンタリングするとき、イメージが(イメージを向上させるデバイスの下流における)装置の終端で検出器に作られることは、しばしば要求されることである。そのような検出器は、CCDカメラ、CMOSカメラ、蛍光スクリーン、いわゆるポストカラムフィルター(Post Column Filter)、等であることがある。そのような検出器に軸から偏向させられるビームをイメージングするために、ビームは、軸へ逆戻りにもってこられると共に軸と整列させられるべきである。当業者に知られたように、ビームは、偏向器を、しかしまたレンズと共に、使用することで軸へ逆戻りにもってこられることができる。軸へビームを整列させる(それを軸に対して平行なものにする)ために、偏向器は、使用されるべきである。
【0026】
発明のなおも別の実施形態において、構造体は、ホルダーの部分又はそれに取り付けられたものであるが、ホルダーに対する構造体の位置は知られたものであると共に構造体はホルダーの一つの又はより多い特徴を位置決めすることによってセンタリングされる。
【0027】
センタリングされる光学素子が、位相を向上させる構造体それ自体であるとき、これが、構造体の照射なしになされることができないようにみえる。しかしながら、構造体を保持するホルダーにおける特徴に対する構造体の位置があるとすれば、それは、特徴が位置決めされたものであるとき、十分である。そのような特徴は、ホルダーにおける透明な部分又は例えばホルダーの他の部分と異なる二次電子係数を示すホルダーにおける部分であることができる。一つの又はより多い特徴に対する構造体の位置が、例えば、低い電流密度で構造体及び特徴の影のイメージを作ることによって、決定されることができることは、留意されることである。
【0028】
発明の好適な実施形態において、ホルダーは、円形の穴を示すが、円形の穴の中心は構造体と一致すると共に、特徴は、円形の穴のへりである。
【0029】
(円形の)アパーチャに位相板又は単側波帯デバイスを置くことは、良く知られたことである。位相板は、半導体を製造する工程において形成された、MEMSのデバイスであることがある。アパーチャ内におけるそのようなデバイスのセンタリングは、しばしば、非常に良好なものである。その次にアパーチャのへりをセンタリングすることによって、デバイスそれ自体は、同様にセンタリングされる。
【0030】
発明の別の実施形態において、回折平面は、対物レンズの後方焦点面と一致する。
【0031】
回折平面及び対物レンズの後方焦点面が、一致することを必要とするものではない(これは、試料を照射するビームが平行なビームでないものであるときに生ずる)とはいえ、それは、照射するビームが平行なビームであると共に回折平面及び後方焦点面がこのように一致するときに好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1a】図1aは、概略的にボーシュ(Boersch)位相板を示す。
【図1b】図1bは、概略的にボーシュ(Boersch)位相板の断面を示す。
【図2a】図2aは、概略的にゼルニケ(Zernike)位相板を示す。
【図2b】図2bは、概略的にゼルニケ(Zernike)位相板の断面を示す。
【図3】図3は、概略的にボーシュ(Boersch)位相板のCTFを示す。
【図4】図4は、概略的に位相板を備えたTEMの回折平面における光線を示す。
【図5】図5は、概略的に発明に従ったTEMを示す。
【図6】図6は、概略的にセンタリングの方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明は、今、図への参照と共に記載されるが、それらにおいて同一の参照数字は、対応する特徴を指す。ここで:
図1aは、概略的にボーシュ(Boersch)位相板を示す、
図1bは、概略的にボーシュ(Boersch)位相板の断面を示す、
図2aは、概略的にゼルニケ(Zernike)位相板を示す、
図2bは、概略的にゼルニケ(Zernike)位相板の断面を示す、
図3は、概略的にボーシュ(Boersch)位相板のCTFを示す、
図4は、概略的に位相板を備えたTEMの回折平面における光線を示す、
図5は、概略的に発明に従ったTEMを示す、及び、
図6は、概略的にセンタリングの方法を示す。
【0034】
図1Bが、概略的に、線AA’に沿った図1Aの位相板の断面を示す一方で、図1Aは、概略的に、例.US特許番号5,814,815に記載されたもののような、ボーシュ(Boersch)位相板を示す。
【0035】
シリンダーの形態における中央の構造体は、軸11に沿ったボアと共に示されたものであるが、ボアの内側は、シリンダーの軸を囲んで配置された三個のリングに整形された電極12A、12B、及び13を示す。二個の外側の電極が、相互に対して電気的に接続されたものである一方で、中央の電極13は、絶縁する材料19によって二個の外側の電極12A及び12Bから絶縁されたものである。シリンダーの表面14A、14B、及び15を具備する導電性の外側の表面は、導電性の表面によって形成されたものであるが、外側の電極12A、12Bは、上記の導電性の外側の表面の部分である。この導電性の外側の表面は、接地に電気的に接続されたものである。
【0036】
位相板からの二個のスポーク16A、16Bは、(示されたものではない)ホルダーにおける位相板を保持するために延びる。スポークの外側は、シリンダーの導電性の外側の表面に接続された電気的に伝導性の層を示す。スポークの少なくとも一つは、外側の層から絶縁された内側の導電性のトラック17を示すが、内側のトラックは、中央の電極13に電気的に接続されたものである。一個のスポークのみを備えた位相板が、2個及び3個のスポークを備えた位相板のみならず、知られたものであることは、留意されることである。
【0037】
中央の電極へ電圧を印加することによって、(ボアを通過する)散乱されてないビームの電子は、シリンダーの外側で進む電子と比べて(中央の電極の電圧の極性に依存することで)より遅く又はより速く進むことになる。これは、ビームの散乱された部分が、中央の電極の電圧によって影響を及ぼされてないものであるので、ビームの散乱された部分に対してビームの散乱されてない部分へ位相シフトを適用することと等価なものである。
【0038】
現実の位相シフトは、電子のエネルギーに、及び、電圧は、中央の電極に、依存する。電圧の適切な選択によって、π/2又は−π/2の位相シフトは、中央のビームに適用される。
【0039】
導電性の外側の層は、散乱されてない電子及び散乱された電子の間における均一な位相シフトを引き起こすようにシリンダーを取り巻く。導電性の層は、散乱されてないビームへの中央の電極13の効果を制限すると共に、中央の電極13における電圧によるシリンダーの外側における電場を予防する。従って、シリンダーの外側を通過するいずれの電子も位相シフトを経験するものではない。
【0040】
図2Bが、概略的に、図2Aに示された位相板の断面を示す一方で、図2Aは、概略的に、ゼルニケ(Zernike)位相板を示す。
【0041】
炭素箔22は、標準的な白金のアパーチャのような、担体21に付けられたものである。担体は、円形の内側の壁24を示すと共に、炭素箔は、わずかにこの内側の壁を越えて延びる。炭素泊は、散乱されてない電子を通過させるためのアパーチャ23を示す。全ての他の電子、すなわち、イメージに寄与する全ての散乱された電子は、箔を通過する。箔を通過することによって、これらの電子は、位相シフトを経験する。現実の位相シフトは、電子のエネルギー及び箔の厚さに依存する。厚さの適切な選択によって、−π/2の位相シフトは、実現される。300keVの電子については、おおよそ28nmの厚さは、π/2の位相シフトに帰着する。
【0042】
ボーシュ(Boersch)位相板によって引き起こされた位相シフトと反対に、ゼルニケ(Zernike)位相板によって引き起こされた位相シフトが、調節されることができないことは、留意されることである。従って、ゼルニケ(Zernike)位相板は、200keVの電子ビームについて必要とされた、しかし300keVのビームについてのものではない、最適な位相シフトを示すことがある。ゼルニケ(Zernike)位相板を使用することで、電子の典型的には30%又はより多いものが、箔によって吸収される又は散乱されると共に、それによって16%又はより多いものだけCTFを低減することは、さらに留意されることである。これは、特に、信号対雑音比によって限定された、TEMの高い解像度の性能に影響を与える。
【0043】
ゼルニケ(Zernike)位相板の性質の及び一般的に位相板のCTFの詳細な分析は、“Transmission electron microscopy with Zernike phase plate”,R.Danev and K.Nagayama,Ultramicroscopy 88(2001)243−252に与えられる。
【0044】
図3は、概略的に、従来のTEMのCTFのみならず、図1aの位相板を備えたTEMの“イン・フォーカル”のコントラスト伝達関数(CTF)を示す。
【0045】
CTFの理論的な処理は、先に述べられた“Transmission electron microscopy with Zernike phase plate”、具体的には§2及びappendix Aに与えられる。それの図2において、従来のTEM及び位相板を備えたTEMのCTFは、その図においてはいわゆる“包絡関数”が無視されたものであるにもかかわらず、示される。包絡関数は、高い周波数における伝達関数の損失を記述する関数である。
【0046】
図3は、(位相を向上させる構造体無しの)従来のTEMのCTF301及び焦点にボーシュ(Boersch)の板を備えたTEMのCTF302を示す。両方のCTFは、TEMの光学的な品質及び源の明るさの関数である包絡関数303によって切り取られたものである。
【0047】
図3に明りょうに認識可能なものであるように、従来のTEMのCTFは、低い空間周波数について(この事例では、1nmと比べてより大きい構造体に対応する、0及び1個毎nmの間において)ゼロに近づくものである。しかしながら、位相が補正されたTEMについては、CTFは、この周波数帯で最大を示す。トレードオフは、より高い周波数におけるものであるが、ここでCTFは、振動を示す。ここで、一方のCTFの最大は、他方のものの最小と一致する、又は、逆もまた同じである、ことがある。
【0048】
ゼルニケ(Zernike)位相板が、曲線302に匹敵するが、しかし、その次に炭素フィルムの先に述べられた散乱をすることを説明するために0.84の因子だけ拡大又は縮小される、CTFを示すことは、留意されることである。
【0049】
非常に低い周波数については、回折させられた電子が、構造体によって遮断される、又は、回折させられてないビームと一緒に穴を通過する、ことは、さらに留意されることである。従って、非常に低い周波数では、CTFは、ゼロまで下がる。
【0050】
CTFが、先に述べられた論文の図2に示されたように、試料が焦点には無いものであるとき、異なる伝達を示すことは、述べられることである。これは、CTFの使用可能な範囲を拡張することがある。この理由のために、いわゆるシェルツァー(Scherzer)の焦点は、しばしば、従来のTEMにおける対物レンズの焦点合わせ(焦点はずれ)の条件の最適な設定をするものとして使用される。
【0051】
図4は、概略的に、いわゆる“チューリップ”デバイスを示す。
【0052】
図4は、外側のへり406及び円形の内側のへり404を示す、例えば、ケイ素で作られた、ホルダー402を示す。内側のへりから押し出しされることでステム408は、内側のへりの中央まで突き出るが、ここで半導体の構造体410は、散乱された電子の一部分をさえぎる。回折させられてないビームは、構造体410の軸11に沿って通過する。典型的な寸法は、1μmのステムの幅及び6μmの構造体410の半径である。円形のへり404の半径は、典型的には、50μmの程度のものである。
【0053】
外側のへり406は、好ましくは、チューリップを位置決めするためのホルダーにおいてクランプで締められる。チューリップそれ自体は、例えば、フォトリソグラフィーの工程によって、形成されたものであると共に、円形の内側のへり404に対してセンタリングされたものである。
【0054】
図5は、概略的に、発明に従った位相板が備え付けられたTEMを示す。
【0055】
図5は、光軸502に沿った、電子のような、粒子のビームを生じさせる粒子源504を示す。粒子は、より高いエネルギー、例.400keV−1MeV又はより低いエネルギー、例.50keVが使用されることがあるとはいえ、80−300keVの典型的なエネルギーを有する。粒子のビームは、試料508に突き当たる平行なビームを形成するためにコンデンサーシステム506によって操作されるが、試料は、試料ホルダー510と共に位置決めされたものである。試料ホルダーは、光軸に対して試料を位置決めすることができると共に、光軸に対して垂直な平面において試料をシフトさせると共に上記の軸に対して試料を傾けることがある。対物レンズ512は、試料の拡大されたイメージを形成する。対物系は、拡大するシステム516、例.レンズのダブレット、が後に続けられたものであるが、対物レンズの後方焦点面514の大きくされたイメージを形成する。位相板518は、対物レンズの後方焦点面の大きくされたイメージに置かれたものであるが、この共役の平面は、拡大するシステム及び投射システム522の間に位置決めされたものである。拡大するシステム522は、このように、可変の倍率で後方焦点面のイメージを形成する。位相板は、位相板が光軸を囲んでセンタリングされることを可能にする、マニピュレーター520で位置決めされる。投射システムは、検出器524に試料の拡大されたイメージを形成するが、それによって例.0.1nmの試料の細部を明らかにする。検出器は、蛍光スクリーン又は、例.CCDカメラの形態をとることがある。例.蛍光スクリーンの事例においては、スクリーンは、ガラス窓526を介して眺められることができる。軸において光学的な構成部品を整列させるために、TEMは、他の所に他の偏向器が含まれることがあるとはいえ、528−1...528−7として概略的に示された、大きな数の偏向器を具備する。また、異なるモジュール506,516のレンズは、機械的にシフトさせられる/センタリングされることがあると共に、電子源504の位置は、同様に機械的に整列させられることがある。これは、回折平面514における、及び、このように、位相板が存するそれの共役平面における、回折させられてないビームの位置の変化に帰着する。特別な事例は、コントラスト向上デバイスそれ自体がセンタリングされる場合である。その次に、同様に、中央の構造体は、軸から離れて中央のビームを偏向させることによって保護されるものでなければならない。
【0056】
TEMにおける偏向器が、しばしば相対的に鈍いものであること、それらが、(例えば、磁気レンズの一部分である)鉄のヨークによって取り巻かれた電磁的なコイルからなることは、留意されることであるが、それの結果として最大の偏向の周波数は、低いものである。偏向器は、また、取り巻く鉄によるヒステリシスを示す。コントラスト向上デバイスがセンタリングされる特別な事例においては、当業者は、一つの方向においてビームを走査すること及びその次にビームを垂直な方向において走査することによって例えば図4に示されたようなデバイスを保持するホルダーをセンタリングすることを企図することがある。そのアプローチに備わった問題は、時間遅延が偏向の信号及びビームの偏向の間に導入されるということ、及び、このようにホルダーをセンタリングすることに相対的に長い時間がかかるということ、である。また、ヒステリシスは、偏向の誤差に帰着することがある。従って、これは、満足を与える方法ではないものである。センタリングの改善された方法は、穴のへりの内側でビームに円を描かせると共に、その次にビームがちょうどへりに触れるまで円の半径を広げることである。へりが、円と同心のものではないものであるとすれば、穴を通じて透過させられた(又は、代わりに、ホルダーによって遮断された)電流の量は、ビームが回転する周波数に等しい周波数を備えた変調を示す。この信号を使用することで、穴のへりは、(例えば、電動化されたアパーチャの機構を使用する)機械的な移動によってビームと同心にされることができるか、又は、回転の中心をシフトさせることによってセンタリングされることができるかのいずれかである。穴が、完璧に又はほとんど完璧に、センタリングされるとき、(偏向の信号の励起を変化させることによる)ビームが円を描く円の直径における小さい変動は、完全に透過させられた又は完全に遮断された信号に帰着する。(典型的には1及び10nmの間における)おおよそ一つのビームの直径の分解能(センタリング)は、達成されることができる。
【0057】
前に述べられた時間遅延は、高い周波数でのみ円を描くことが、偏向の信号の振幅の増加(又はより低い回転の周波数)によって解決される、偏向の減少に帰着する際には、生ずるものではない。
【0058】
ボーシュ(Boersch)位相板のような、中央の構造体のための一つの又はより多い支持体を要求する位相板について、支持体による遮断の結果として、ビームが穴のへりの内側で円を描くときに一つの又はより多い短い遮断の周期が生ずることは、留意されることである。しかしながら、支持体が、穴の周囲の小さいフラクションを占めるのみである際には、これらの周期は、全体の回転の周期の小さいフラクションを占めるのみである。
【0059】
センタリングの上に述べられた方法は、さらに、図6において解明される。
【0060】
図6は、他のデバイスが使用されることがあるとはいえ、図4の位相を向上させるデバイスを示す。ビームは、経路602においてデバイスにわたって走査させられる。走査の信号の振幅は、ビームが、二回毎周期でホルダーによって遮断されるまで、調節される。すでに述べられたように、ビームの経路は、好ましくは、円であるが、しかし、現実には、経路は、しばしば、ここでは誇張された方式で示されたものである、小さい楕円率を示す。結果として、ビームは、ホルダー402によって位置A及びBの間において遮断されるものではない、位置B及びCの間で遮断される、位置C及びDの間で遮断されるものではない、並びに、位置D及びAの間で遮断される。示された位置づけにおいて、ステム408は、非常に短い周期の間にビームを遮断するが、しかし、これは、全ての位置づけについての事例ではないものである。ビームは、今、デバイスをセンタリングすることによって又は周期AB対CD及び/又はBC対DAの対称性を使用することで経路602の中心を調節することによってセンタリングされることができるが、ビームが良好にセンタリングされるとき、周期ABは、周期CDに等しいものであるべきであると共に、周期BCは、周期DAに等しいものであるべきである。
【0061】
これは、経路が高度に円形のものであると共にへり404と一致するまで、数回繰り返される。散乱されてない電子のビームの直径が、非常に小さいもの、典型的には10−100nmの範囲におけるもの、である際に、完全にさえぎられたビーム及び完全に透過させられたビームの間における直径における差異は、非常に急なものであると共に、100nmと比べてより少ないものの分解能は、達成可能なものである。
【0062】
穴の真円度及び/又はビームが回転する円形における一次の誤差、楕円率、が、回転周期の二倍の変調に帰着すると共に、このように中心性の信号から簡単に区別されることができることは、留意されることである。
【0063】
当業者は、提案された方法が、正方形の穴のような、穴の他の形態を備えた使用に適合させられることができることは認識することになる。ビームが、S/√2及びSの間におけるdを備えた、対角線Sを備えた正方形の穴にわたって直径dを備えた円形に回転するとき、ビームは、一回転当たり四回遮断されると共に一回転当たり四回透過させられる。センタリングは、遮断の周期が相互に対して対称的なものである及び/又は透過の周期が相互に対して対称的なものであるときに達成される。しかしながら、この方法が、ビームが回転する直径のわずかな変動が一般的にはビーム電流における大きい変動にではなく、むしろ透過させられた又は遮断されたビーム電流のデューティサイクルにおける小さい変動のおかげでビーム電流における小さい変動に帰着することになるので、丸い穴を使用する方法と比べてより少なく敏感なものであることは、留意されることである。さらには、丸い穴は、ビームが穴の完全なへりを露出することになるが、このことから結果として生じるいずれの汚染及び関連させられた帯電をすることも、ビームにおける少ない影響力を有することになる(単極子場のみ、より高い次数の場ではない)という利点を有する。
【0064】
穴の内側のへりの代わりに、また、穴と同心の別個に形成された弧のような、他の特別に形成された構造体が、使用されることがあることは、述べられることである。
【0065】
穴だけではなく、取り巻く材料と比較された電子の異なる透過又は反射に帰着するいずれの構造体も使用されることがあることは、さらに述べられることである。異なる透過の例は、ケイ素、炭素、及び同様のものの薄いフィルムであると共に、異なる反射の例は、例,ケイ素上の金(より多い反射)又は酸化物(より多い二次的な放出)である。
【0066】
上に述べられた方法が、デバイスをセンタリングするために、しかしまたミスアライメントに等しい大きさでの機械的な移動に帰着するセンタリングデバイスに対する命令が後に続けられた、(それがあるべきである)軸からのデバイスの距離を決定するためにも、使用されることができることは、留意されることである。
【0067】
我々は、後に続くもの以下のように請求する:
クレーム
1. 透過型電子顕微鏡(TEM)における一つの若しくはより多い光学素子を調節する又はそれを整列させるための方法であって、前記TEM(500)が試料(508)へ電子のビームをガイドするための対物レンズ(512)が備え付けられたものであると共に前記TEMが少なくとも散乱されてない電子のビームが集束させられる回折平面(514)を示すものであると共に、前記TEMがコントラスト伝達関数(CTF)を向上させるための構造体(518)が備え付けられたものであると共に、上記の構造体が前記回折平面又はそれのイメージに位置を定められたものであると共に、前記方法が前記光学素子を調節すること又はそれを整列させることを具備する、方法において、上記の調節すること又は整列させることの間における前記構造体の散乱されてない電子での照射は、前記構造体から離れて前記散乱されてない電子のビームを偏向させることによって予防されることにおいて特徴付けられた、方法。
【0068】
2. 前記構造体(518)は、位相板(1,2)である又は単側波帯イメージングデバイス(400)である、クレーム1の方法。
【0069】
3. 前記構造体は、光軸(11)を囲んで位置させられたものであると共に、前記ビームは、前記構造体の照射を予防するために前記光軸(11)から離れて曲げられると共に、前記ビームは、一つの又はより多い偏向器(528−6,528−7)及び/又はレンズを使用することで前記軸(11)へと逆戻りに曲げられると共に前記軸へ整列させられる、クレーム1又はクレーム2の方法。
【0070】
4. 前記構造体(518)は、ホルダーの部分である又はそれに取り付けられたものであると共に、前記ホルダーに対する前記構造体の位置は、知られたものであると共に、前記構造体は、前記ホルダーの一つの又はより多い特徴を位置決めすることによってセンタリングされる、先行するクレームのいずれのものの方法。
【0071】
5. 前記ホルダーは、円形の穴を示すと共に、前記円形の穴の中心は、前記構造体(518,410)と一致するものであると共に、前記特徴は、前記円形の穴のへり(404)である、クレーム4の方法。
【0072】
6. 前記方法は、さらに、前記一つの又はより多い特徴(404)に対する前記構造体(518,410)の位置を決定することを具備する、クレーム4又は5の方法。
【0073】
7. 前記回折平面は、前記対物レンズ(514)の後方焦点面と一致する、先行するクレームのいずれのものの方法。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型電子顕微鏡における一つの若しくはより多い光学素子を調節する又はそれを整列させるための方法であって、
前記TEMが、試料へ電子のビームをガイドするための対物レンズが備え付けられたものであると共に、
前記TEMが、少なくとも散乱れてない電子のビームが集束させられる回折平面を示すものであると共に、
前記TEMが、コントラスト伝達関数を向上させるための構造体が備え付けられたものであると共に、
上記の構造体が、前記回折平面又はそれのイメージに位置を定められたものであると共に、
前記方法が、前記光学素子を調節すること又はそれを整列させることを具備する、
方法において、
上記の調節すること又は整列させることの間における前記構造体の散乱されてない電子での照射は、前記構造体から離れて前記散乱されてない電子のビームを偏向させることによって予防される
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記構造体は、位相板である又は単側波帯イメージングデバイスである、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
前記構造体は、光軸を囲んで位置させられたものであると共に、
前記ビームは、前記構造体の照射を予防するために前記光軸から離れて曲げられると共に、
前記ビームは、一つの又はより多い偏向器及び/又はレンズを使用することで前記軸へと逆戻りに曲げられると共に前記軸へ整列させられる、
方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の方法において、
前記構造体は、ホルダーの部分である又はそれに取り付けられたものであると共に、
前記ホルダーに対する前記構造体の位置は、知られたものであると共に、
前記構造体は、前記ホルダーの一つの又はより多い特徴を位置決めすることによってセンタリングされる、
方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
前記ホルダーは、円形の穴を示すと共に、
前記円形の穴の中心は、前記構造体と一致するものであると共に、
前記特徴は、前記円形の穴のへりである、
方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の方法において、
前記方法は、さらに、前記一つの又はより多い特徴に対する前記構造体の位置を決定することを具備する、方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれかに記載の方法において、
前記回折平面は、前記対物レンズの後方焦点面と一致する、方法。


【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−164657(P2012−164657A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23292(P2012−23292)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】