説明

コントローラと、これを有する光学装置

【課題】コントローラ上のツマミやスイッチ類をコントローラが右向きで操作される場合と左向きで操作される場合とで電動駆動装置に対する操作感が同じに設定可能なコントローラと、これを有する光学装置を提供すること。
【解決手段】電動駆動装置20、22を搭載する鏡体21に着脱可能であり、前記電動駆動装置の駆動をコントロールし、前記コントローラから出力する前記電動駆動装置への駆動信号の極性を反転する極性反転スイッチ15,16を少なくとも1つ有することを特徴とするコントローラ10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駆動装置のコントローラと、これを有する光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、レボルバ、XYステージ、合焦機構等の電動で駆動される電動駆動装置を有する顕微鏡、計測装置等の光学装置が提案されている。そして、これらの電動駆動装置を観察者がコントロールするコントローラが光学装置の外部に有線で設けられているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−58066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のコントローラでは、電動駆動装置を操作するツマミやスイッチは、ツマミやスイッチの操作方向と電動駆動装置の動作方向とが決められているため、コントローラを右向きに置いてツマミやスイッチを右手で操作する場合と、左向きにおいて左手で操作する場合で、ツマミやスイッチを操作する方向が違ってしまうと言う問題がある。
【0004】
例えば、コントローラを右向きに立てて設置し(本体の右側に設置)右手でツマミを手前から奥に向かって回転操作することで電動焦準装置でステージを上方に移動させるように設定されているとき、このコントローラを左向きに立てて設置(本体の左側に設置)した場合には、同じ駆動操作を左手でツマミを奥から手前に向かって回転操作することになる。一方、本体の手動焦準ハンドルは、右手であれ左手であれ、ステージを上方に移動させるとき、例えば焦準ハンドルを手前から奥に向かって回転操作することで実行される。従って、左手では、手動焦準ハンドルとコントローラのツマミの回転操作方向が違うことにより使用者の操作感が異なってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、電動駆動装置を搭載する筐体に着脱可能であり、前記電動駆動装置の駆動をコントロールし、前記コントローラから出力する前記電動駆動装置への駆動信号の極性を反転する極性反転スイッチを少なくとも1つ有することを特徴とするコントローラを提供する。
【0006】
また、本発明は、電動駆動装置を有し、前記電動駆動装置は、前記コントローラで駆動をコントロールされることを特徴とする光学装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コントローラのツマミやスイッチ類をコントローラが右向きで操作される場合と左向きで操作される場合とで電動駆動装置に対する操作感が同じに設定可能なコントローラと、これを有する光学装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施の形態にかかるコントローラと、これを有する顕微鏡について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、発明の理解の容易化のためのものに過ぎず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加・置換等を施すことを排除することは意図していない。
【0009】
図1は、実施の形態にかかるコントローラを示し、(a)は正面図、(b)は背面斜視図をそれぞれ示す。図2は、コントローラが接続される実体顕微鏡の一例を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図をそれぞれ示す。図3は、コントローラを実体顕微鏡右側に設置した状態を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図をそれぞれ示す。図4は、コントローラを実体顕微鏡の左側に設置した状態を示し、(a)は正面図、(b)は左側面図をそれぞれ示す。図5は、コントローラを実体顕微鏡から取り外して使用する状態を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図をそれぞれ示す。
【0010】
図1、図2において、コントローラ10は、実体顕微鏡(以後、顕微鏡と記す)200の電動ズーム光学系20を駆動するズームコントロールダイヤル11と焦準のために電動上下動装置22を上下動方向に駆動する焦準コントロールダイヤル12とが、ボックス13に配置されている。そしてボックス13と顕微鏡200とは配線14を介して接続されている。なお、配線14はコネクタ27により顕微鏡200に着脱可能に構成されている。
【0011】
顕微鏡200は、左右一対の電動ズーム光学系20、20が内蔵された鏡体21の上部に鏡筒23が取り付けられ、鏡筒23には左右一対の接眼レンズ24、24が取り付けられ、鏡体21の下部には対物レンズ25が取り付けられている。鏡体21は顕微鏡200の筐体の一部である支柱26に電動上下動装置22を介して取り付けられ、支柱26は標本30を載置するベース32に取り付けられている。
【0012】
支柱26の下方の左右には、コントローラ10を支柱2bに取り付けた際にコントローラ10の各ダイヤル11、12の回転方向(極性)を変える為の極性反転スイッチを操作する突起34、35がそれぞれ配置されている。
【0013】
なお、本実施の形態の顕微鏡200は、鏡筒23内に左右一対の接眼光学系が内蔵され、左右一対の電動ズーム光学系20、20を有し、対物レンズ25は左右の光学系で共通に使用する構成である。
【0014】
図1(b)に示すように、コントローラ10の背面には、コントローラ10から出力される電動ズーム光学系20,20や電動上下動装置22への信号の極性を反転する極性反転スイッチ15、16が設けられている。極性とは、駆動信号を発するコントローラ10に設けられている部材が回転部材である場合、その回転方向であり、ジョイスティック方であればスティックの傾斜する方向であり、またシーソー型の部材であれば一方と他方の方向性である。極性反転とは、例えば駆動信号を発する部材が回転部材の場合、右回転で信号Aを発したとすると、左回転でも信号Aを発するように切り替わることを称している。
【0015】
図3に示すように、極性反転スイッチ15は、ボックス10を支柱21の右下方部に取り付けた際、極性反転スイッチ操作部である突起34により押されることで、ボックス10の各ダイヤル11、12が右向きに配置された状態での信号を出力するように設定する。この状態では、使用者が右手で各ダイヤル11、12を操作する、右手系の操作状態に設定される。ボックス10の幅と支柱21の幅とを略同じとすることで、極性反転スイッチ15と突起34の横方向の位置を気にすることなく嵌合可能となる。
【0016】
この状態での各ダイヤル11、12の回転操作と各駆動状況について図3を参照しつつ説明する。
【0017】
図3に示すように、右手系の操作状態では、右手でズームコントロールダイヤル11を手前から奥方向(図1において時計回り方向)に回転したとき電動ズーム光学系20、20の倍率が上がり、奥から手前方向(図1において反時計回り方向)に回転したとき電動ズーム光学系20、20の倍率が下がるように設定される。また、焦準コントロールダイヤル12は、手前から奥方向(図1において時計回り方向)に回転したとき電動上下動装置22が下方に移動し、奥から手前方向(図1において反時計回り方向)に回転したとき電動上下動装置22が上方に移動し、標本30に対物レンズ25の前側焦点を合わせる。これにより、使用者が標本30の像を接眼レンズ24を介して観察することが可能になる。
【0018】
このように、ボックス13を支柱21の右側の突起34位置に取り付けることで、突起34が極性反転スイッチ15を押し、右手系の操作状態に各ダイヤル11、12が設定される。なお、支柱21へのボックス13の取り付け、固定は不図示の機構(例えば、クリック機構、磁石による吸着)などにより行う。
【0019】
次に、左手系の操作状態の場合を図4を参照しつつ説明する。
【0020】
図4に示すように、極性反転スイッチ16は、ボックス10を支柱21の左下方部に取り付けた際、極性反転スイッチである突起35により押されることで、ボックス10の各ダイヤル11、12が左向きに配置された状態での信号を出力するように設定する。この状態で、使用者が左手で各ダイヤル11、12を操作する、左手系の操作状態に設定される。
【0021】
この状態での各ダイヤル11、12の回転操作と各駆動状況について説明する。
【0022】
図4に示すように、左手操作の状態で、ズームコントロールダイヤル11を手前から奥方向(図1において反時計回り方向)に回転したとき電動ズーム光学系20、20の倍率が上がり、奥から手前方向(図1において時計回り方向)に回転したとき電動ズーム光学系20、20の倍率が下がるように設定される。また、焦準コントロールダイヤル12は、手前から奥方向(図1において反時計回り方向)に回転したとき電動上下動装置22が下方に移動し、奥から手前方向(図1において時計回り方向)に回転したとき電動上下動装置22が上方に移動し、標本30に対物レンズ25の前側焦点を合わせる。これにより、使用者が標本30の像を接眼レンズ24を介して観察することが可能になる。
【0023】
このように、ボックス13を支柱21の左側の突起35位置に取り付けることで、突起35が極性反転スイッチ16を押し、左手系の操作状態に各ダイヤル11、12が設定される。なお、支柱21へのボックス10の取り付け、固定は右側と同様の不図示の機構(例えば、クリック機構、磁石による吸着)などにより行う。
【0024】
以上述べたように、実施の形態にかかるコントローラ10は、顕微鏡200の左右の取り付け位置に応じて極性反転スイッチ15、16が突起34、35で押されて動作することで、右手系の操作状態、左手系の操作状態に設定される。この結果、左右の手で操作する時の操作状態が同じ状態に設定することができる。このように設定することで、例えば、メカ的なズーム光学系の操作リングや、メカ的な焦準ハンドルの回転方向とコントローラ上の各ダイヤル11、12の回転方向とを右手操作、或いは左手操作にかかわらず一致させることができ、操作する手が変わることによる誤操作を防止し、操作感を向上させることができる。
【0025】
なお、上記実施の形態では、2つの極性反転スイッチ15、16と2つの突起34、35で右手系、左手系の操作状態(例えば、ダイヤルの回転方向)を切替えているが、右手系の操作状態を初期状態(デフォルト)とし、1つの極性反転スイッチをコントローラに、1つの突起を支柱21の左下方に設け、コントローラを左側に配置したときに突起が極性反転スイッチを操作して左手系の操作状態に設定するように構成しても良い。コントローラを左側に設置していないときには極性反転スイッチが初期状態(デフォルト)設定される。なお、極性反転スイッチと突起がそれぞれ1つの説明で右と左を入れ替えて構成しても同様の効果を奏することができる。また、極性反転スイッチ15、16は、上記機械的な動作に限らず、ホール素子等の各種センサーを用いて極性反転動作を行わせるように構成しても良い。ホール素子等を用いることで、接触不良等による誤動作を防止することができる。
【0026】
図5は、コントローラ10を顕微鏡200から外して使用する状態を示している。この場合、前述の極性反転スイッチ15、16はいずれも動作しないので、コントローラ10を右向きに置いた場合と左向きに置いた場合における信号極性の切替えを行うことができない。
【0027】
そこで、実施の形態にかかるコントローラ10は、手動極性反転スイッチ17が更に設けられている。この結果、顕微鏡200から離れた所でもコントローラ10を前述の左右同様の操作感が得られる状態に設定することができ、またこれに限らず使用者の好みに応じた設定が可能となる。このように手動極性反転スイッチ17を設けることで、コントローラ10を顕微鏡200から離れたところで、好ましい姿勢で使用することが可能になる。
【0028】
なお、上述のコントローラ10は有線で顕微鏡200と接続する場合について説明したが、コントローラにバッテリーと無線や赤外線を送受する送受信部を内蔵し、顕微鏡200側にも無線や赤外線を送受する送受信部を内蔵して、顕微鏡200と無線や赤外線で信号を送受信するように構成しても良い。これにより配線の取り回しに気を使う必要が無くなる。
【0029】
また、無線や赤外線で信号を送受信するコントローラの場合、顕微鏡200のコントローラを取り付ける位置に、顕微鏡200からコントローラに電源を供給する電力供給端子を配置し、かつコントローラにこの電力供給端子に接合する端子部を更に設けることで、顕微鏡200にコントローラを取り付けている間nコントローラ10のバッテリーに電力チャージするようにすることができる。
【0030】
なお、上述の実施の形態では、コントローラ10上にはズームコントロールダイヤル11と焦準コントロールダイヤル12がある場合について説明したが、これに限定されず他の電動駆動装置に対応する各種ダイヤルやスイッチが配置されていても良い。いずれのダイヤルやスイッチの極性を極性反転スイッチで反転するか否かは設計時に適宜決めればよい。即ち、右向き左向きで動作方向と操作方向が変化しないスイッチ類は出力の極性を反転せず、操作方向が変化するスイッチ類のみ出力の極性を反転するように設計すればよい。
【0031】
なお、上記実施の形態では、実体顕微鏡を代表として説明したが、その他の顕微鏡、計測装置等、電動駆動装置を搭載する各種装置及びコントローラに適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態にかかるコントローラを示し、(a)は正面図、(b)は背面斜視図をそれぞれ示す。
【図2】コントローラが接続される実体顕微鏡の一例を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図をそれぞれ示す。
【図3】コントローラを実体顕微鏡右側に設置した状態を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図をそれぞれ示す。
【図4】コントローラを実体顕微鏡の左側に設置した状態を示し、(a)は正面図、(b)は左側面図をそれぞれ示す。
【図5】コントローラを実体顕微鏡から取り外して使用する状態の正面図を示す。
【符号の説明】
【0033】
10 コントローラ
11 ズームコントロールダイヤル
12 焦準コントロールダイヤル
13 ボックス
14 配線
15、16 極性反転スイッチ
17 手動極性反転スイッチ
20 電動ズーム光学系
21 鏡体
22 電動上下動装置
23 鏡筒
24 接眼レンズ
25 対物レンズ
26 支柱
27 コネクタ
30 標本
32 ベース
34、35 突起部
200 実体顕微鏡(顕微鏡)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動駆動装置を搭載する筐体に着脱可能であり、前記電動駆動装置の駆動をコントロールし、前記コントローラから出力する前記電動駆動装置への駆動信号の極性を反転する極性反転スイッチを少なくとも1つ有することを特徴とするコントローラ。
【請求項2】
前記極性反転スイッチは、前記筐体に設けられた前記極性反転スイッチ操作部で操作されることをことを特徴とする請求項1に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記コントローラは、手動の極性反転スイッチを更に有することを特徴とする請求項1または2に記載のコントローラ。
【請求項4】
前記極性反転スイッチは、前記筐体の右側に前記コントローラを取り付けた際に前記極性反転スイッチ操作部で操作される右側用スイッチと、前記筐体の左側に前記コントローラを取り付けた際に前記極性反転スイッチ操作部で操作される左側用スイッチと、を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のコントローラ。
【請求項5】
電動駆動装置を有し、
前記電動駆動装置は、請求項1から4のいずれか1項に記載のコントローラで駆動をコントロールされることを特徴とする光学装置。
【請求項6】
顕微鏡の筐体の左右壁の少なくとも1つに前記コントローラの極性反転スイッチを操作する極性反転スイッチ操作部が配設され、
前記コントローラが前記極性反転スイッチ操作部近傍に装着された際、当該極性反転スイッチ操作部が前記極性反転スイッチを操作することを特徴とする請求項前5に記載の光学装置。
【請求項7】
前記電動駆動装置のコントロール信号を前記コントローラと送受信する送受信部を有することを特徴とする請求項5または6に記載の光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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