説明

コンドロイチナーゼABCI変異体を使用する組成物及び方法

【解決手段】 本発明はコンドロイチナーゼABCIのタンパク質変異体および核酸変異体に関連する。そのようなコンドロイチナーゼABCI変異酵素は、コンドロイチナーゼ・リアーゼ活性の変化またはUV光または熱を含むストレス要因による不活性化に対する抵抗性増進を示す。コンドロイチナーゼABCI変異酵素の使用法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は2006年10月10日出願の米国仮特許出願第60/828,800号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
脊髄は神経線維で構成されている。脊髄を含む中枢神経系への損傷は機能消失をもたらす。最も多く見られる脊髄損傷(SCI)は挫傷(脊髄の打撲)および圧迫損傷(脊髄への長期間にわたる圧迫に起因する)である。成体哺乳動物の脊髄損傷では、軸索が再生不能になることにより、感覚消失、運動機能消失、および/または自律神経機能消失のみならず、永久麻痺をもたらすことがある。神経細胞が再生できない理由の一つは、神経細胞が脊髄損傷後に生じるグリア性瘢痕を越えられないことである。損傷によって誘発された病変部には、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPGs)などの細胞外基質分子を含むグリア性瘢痕が生じる。CSPGSは、インビトロでは神経組織の成長を阻害し、インビボではCSPGsが豊富な部位での神経組織の再生を阻害する。CSPGsは例えば炎症など他の様々な状態に関与する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一実施形態はコンドロイチナーゼABCI酵素の変異体を提供する。
【0004】
好ましい実施形態において、そのようなコンドロイチナーゼABCI変異酵素は活性亢進を示す。他の好ましい実施形態において、そのようなコンドロイチナーゼABCI変異酵素は、UVまたは熱への曝露による不活性化を含む不活性化への抵抗性亢進を示す。できれば本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるのが好ましい。
【0005】
プロテウス・ブルガリスの野生型コンドロイチナーゼABCIのヌクレオチド配列は配列ID番号:7、コンドロイチナーゼABCIのアミノ酸配列は配列ID番号:8で示される。
【0006】
本発明には、本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素をコード化する核酸およびそれらの使用法が含まれる。一実施形態において、本発明は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるコンドロイチナーゼABCI変異酵素をコード化する核酸配列を含む。できれば本発明の核酸配列は055D2−3核酸(配列ID番号:9)、079B6−2核酸(配列ID番号:10)、079D2−2核酸(配列ID番号:11)、057G1−1核酸(配列ID番号:12)、023G6−4核酸(配列ID番号:13)、005B12−3核酸(配列ID番号:15)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるのが好ましい。
【0007】
本発明の他の実施形態は、例えば中枢神経系(「CNS」)損傷または疾患後において感覚、運動、および自律神経機能回復が必要な患者の治療法に関連する。本発明のABCI変異酵素はCSPGSの分解にも使用可能である。従って、本発明の実施形態には、本発明のABCI変異酵素を含む組成物を用いて一つ若しくはそれ以上のCSPGSを分解する方法が含まれる。できれば、神経機能の回復促進に有効な本発明の組成物には、055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるコンドロイチナーゼABCI変異酵素が含有されるのが好ましい。
【0008】
本発明の一実施形態は、本発明の酵素を含有する組成物の患者への投与を含む、血管外腔および領域への細胞の接近を修飾する方法である。本発明の別の実施形態は、炎症関連細胞の患者組織中への浸透を低減する方法である。できれば前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるのが好ましい。
【0009】
本発明の別の実施形態は、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン開裂酵素を含有する組成物の患者への投与を含む、炎症関連細胞の血管外溢出抑制方法である。一実施形態において、本発明の酵素は、白血球(white blood cells,leukocytes)、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、B細胞、T細胞、単球、およびマクロファージから成る群から選択される細胞の血流からの離脱を防止する。できれば前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるのが好ましい。
【0010】
本発明の別の実施形態は、患者へのコンドロイチン硫酸プロテオグリカン開裂酵素投与を含む、患者における炎症治療法である。できれば前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるのが好ましい。本発明の様々な実施形態において、炎症は慢性炎症性疾患および中枢神経系疾患などの疾患または損傷に関連する。
【0011】
本発明の別の実施形態は、患者へのコンドロイチン硫酸プロテオグリカン開裂酵素含有組成物の投与を含む、患者における炎症予防法である。できれば前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるのが好ましい。
【0012】
本発明の別の実施形態は、炎症関連細胞の患者からの抽出、前記細胞を修飾するための生体外における前記細胞のコンドロイチン硫酸プロテオグリカン開裂酵素への曝露、前記修飾血球の患者への投与から成る、患者における炎症治療法である。できれば前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるのが好ましい。
【0013】
一実施形態において、本発明の酵素は損傷神経組織の再生を必要とする患者の治療に用いられる。別の実施形態において、本発明の酵素は神経発育阻止分子活性を阻止および/または克服することが出来る治療用分子の損傷または病変組織への拡散および輸送促進に用いられる。本発明の実施形態には、本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素を含有する組成物、および治療/診断用薬および神経・軸索再生促進剤の細胞または組織中への送達および拡散促進に用いられる方法が含まれる。できれば本発明の組成物は損傷神経組織の再生または拡散/輸送促進に有効であるのが好ましい。一実施形態において、本発明の組成物は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるコンドロイチナーゼABCI変異酵素を含有する。
【0014】
さらに別の実施形態は、そのようなコンドロイチンABCI変異酵素の投与による神経細胞の増殖促進法および脊髄損傷および関連CNS障害の治療への利用法に関連する。できれば、神経細胞の増殖促進に有効な本発明の組成物には、055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるコンドロイチナーゼABCI変異酵素が含有されるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
一つには、以下の説明、添付請求項、および添付図面に関し、本発明の実施形態に関する他の態様、特徴、利益、および利点は明白であろう。
【図1】図1は、全細胞溶解液中の相対的変異コンドロイチナーゼ・タンパク質値を示す。下記の実施例3にさらに詳細に記載されている。
【図2】図2は、37℃における変異コンドロイチナーゼABCI全細胞溶解液の安定性分析の結果を示している。実施例3にさらに詳細に記載されている。
【図3】図3は、半精製変異コンドロイチナーゼABCI酵素の安定性分析の結果を示している。実施例4にさらに詳細に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本組成物および方法について記載する前に、この発明が特定の分子、組成物、または記載された方法論またはプロトコル(これらは様々であり得る)に限定されないことを理解する必要がある。説明に用いた用語は特定の見解または実施形態の説明のみを目的に用いたものであり、添付請求項によってのみ限定される本発明の範囲の限定を意図したものではないことについても理解する必要がある。
【0017】
また、本明細書および添付請求項に記載したように、文脈から明らかに他の意味が示される場合を除き、単数形「一つの」および「前記」には複数への言及が含まれることにも留意する必要がある。従って、例えば、「ある、一つの」細胞は本分野の熟練者に知られた一つ若しくはそれ以上の細胞および等価物を意味する。特に別の指定がない限り、本明細書で用いられる技術および科学用語はいずれも本分野における通常の技術所有者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施形態の実践または試験に、本明細書に記載した方法と同様または同等のどんな方法および材料も使用可能であるが、好ましい方法、機器、および材料を記載する。ここで言及した出版物はいずれも参照により本明細書に組み込まれている。本明細書に記載した何ごとも、先行発明のため本発明がそのような開示に先行する資格がないことを認めたものと解釈されるべきではない。
【0018】
本明細書での使用において、用語「約」はそれが用いられる数値±10%を意味する。従って、約50%は45%〜55%を意味する。
【0019】
治療との関連で用いられる「投与」とは、薬剤を目標組織内または目標組織上に直接投与するか、目標とする組織に薬剤が良い影響を及ぼすように薬剤を患者に投与することを意味する。従って、本明細書における用語「投与する」には、酵素を目標組織内または目標組織上に供給すること、酵素が目標組織に到達するように例えば静脈内注射により全身的に供給すること、酵素をコード化配列の形で目標組織に供給すること(例えばいわゆる遺伝子治療技術により)、などを含み得るがそれらに限定されるものではない。
【0020】
本明細書における用語「動物」には、ヒトおよびヒト以外の脊椎動物(野生動物および家畜を含む)が含まれるが、それらに限定されない。
【0021】
用語「改善する」は、本発明がその提供、適用、または投与対象の外観、形状、特性、および/または体格を変化させるということを伝えるのに用いられる。前記変化は以下のいずれか単独またはそれらの組合せによって示し得る。すなわち、脊髄またはCNS内の病変部位におけるCSPGSの分解、または哺乳動物の運動、感覚、または自律神経機能の全部または一部の回復である。
【0022】
用語「阻害する」には、症状の発症を予防するための本発明の組成物の投与、症状の軽減、または疾病、病状、障害の除去が含まれる。
【0023】
「薬学的に許容される」により、その担体、希釈剤、または賦形剤が同剤形の他の成分と親和性があり、そのレシピエントに有害ではないことが意味される。
【0024】
用語「組換えタンパク質」は遺伝子組換え技術によって産生される本発明のポリペプチドに言及するものであり、ポリペプチドをコード化するDNAを適切な発現ベクターに挿入し、それを用いて宿主細胞を転換しタンパク質を産生させる。さらに、組換え遺伝子に関連したフレーズ「由来する」は、「組換えタンパク質」の意味の範囲内で、天然タンパク質のアミノ酸配列を有するタンパク質、または自然発生形態のタンパク質の置換および欠失(切断を含む)を含む突然変異によって産生されたものと同様のアミノ酸配列を有するタンパク質を含むように意図されている。
【0025】
本明細書での使用において、用語「治療薬」は患者の好ましからざる状態または疾病を治療、対処、改善、予防、改良するのに用いられる薬剤を意味する。一部には本発明の実施形態は、脊髄またはCNS内の病変部位におけるCSPGsの分解、または哺乳動物の運動、感覚、または自律神経機能の全体または部分的回復、など中枢神経系の治療を対象とする。本発明の他の実施形態は細胞の血管外溢出阻止を対象とする。ただし、本発明の他の実施形態は本明細書に記載したように、拡散の増進または促進が目的である。本発明の他の実施形態は炎症の治療または予防を対象とする。
【0026】
用語「治療的有効量」または「有効量」は本明細書では互いに置き換え可能であり、本発明の治療的化合物成分の量のことである。例えば、治療化合物の治療的有効量とは、所期の効果を達成するように(すなわち中枢神経系への損傷を効果的に治療するように)計算された所定量である。例えば、安定した活性酵素を提供するよう構成された治療的有効量のコンドロイチナーゼを含有する治療化合物は、脊髄病変部位のCSPGsを分解するのに十分であるか、または哺乳動物の運動、感覚、または自律神経機能の全体または一部を修復するのに十分な量であり、損傷部位への軸索の成長を促進するなどにより中枢神経系における神経細胞の再生をもたらす可能性がある。治療的有効量には、CSPGsを分解することによって神経機能の回復を促進するのに有効な量も含まれている。さらに治療的有効量には、細胞の血管外溢出を修飾するか炎症を軽減または予防するのに十分な量も含まれる。
【0027】
本明細書における用語「治療する」「治療された」「治療中」は治療と予防の両方を指し、その目的は好ましからざる生理的状態、障害、または疾病を予防または軽減するか、有益または好ましい臨床結果を得ることにある。本発明の目的において、有益または好ましい臨床結果としては、検知可能または検知不能、または病態、障害、疾病の増大または改善にかかわらず、以下が挙げられる(これらに限定されるものではないが):症状の軽減;病態、障害、または疾病範囲の縮小;病態、障害、または疾病状態の安定化(悪化しない);病態、障害、または疾病の発症遅延または進行抑制;病態、障害、または疾病状態の軽減;および寛解(部分的、完全に関わらず)。治療には過剰な副作用を引起すことなく臨床的に有意な反応を引き出すことが含まれる。さらに治療には治療を受けない場合の予想生存率に比べた生存延長も含まれる。
【0028】
「血管外溢出」のプロセスは白血球などの細胞の血管から血管外腔への遊走として知られ、さらに周辺組織への遊走が含まれることもある。本明細書中の用語「白血球」は炎症に関連した細胞クラスの言及に用いられ、核と細胞質を有する各種血球のすべてとも定義し得る。white blood cellsとしても知られる白血球(leukocytes)には、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球(B細胞、T細胞など)、単球、およびマクロファージが含まれる。4種類の白血球が免疫防御においては特に重要である。すなわち、各種抗菌性タンパク質を放出する好中球、異物を取り込み破壊するマクロファージの先駆物質である単球、および抗原認識を担当する免疫細胞であるTリンパ球およびBリンパ球である。
【0029】
用語「ベクター」は核酸分子を輸送することができる媒体を指す。コンドロイチナーゼ・ポリペプチドをコード化する核酸分子はベクターの核酸と共有結合する。本発明のこの態様において、前記ベクターは例えばプラスミド、一本鎖または二本鎖ファージ、一本鎖または二本鎖RNAまたはDNAウイルスベクター、またはBAC、PAC、YAC、MACなどの人工染色体であり得る。
【0030】
本発明の一実施形態はコンドロイチナーゼABCIの変異体を提供する。好ましい実施形態において、コンドロイチナーゼABCI変異酵素およびそれらをコード化する核酸は055D2−3(2007年9月26日にAmerican Type Culture Collection(ATCC、10801 University Blvd.,バージニア州マナッサス、20110−2209)に寄託され、ATCC寄託指定___を有する)(配列ID番号:1および配列ID番号:9)、079B6−2(2007年9月26日にATCCに寄託され、ATCC寄託指定___を有する)(配列ID番号:2および配列ID番号:10)、079D2−2(2007年9月26日にATCCに寄託され、ATCC寄託指定___を有する)(配列ID番号:3および配列ID番号:11)、021B8−3(2007年9月26日にATCCに寄託され、ATCC寄託指定___を有する)(配列ID番号:_および配列ID番号:_)、057G1−1(2007年9月26日にATCCに寄託され、ATCC寄託指定___を有する)(配列ID番号:4および配列ID番号:12)、023G6−4(2007年9月26日にATCCに寄託され、ATCC寄託指定___を有する)(配列ID番号:5および配列ID番号:13)、および005B12−3(2007年9月26日にATCCに寄託され、ATCC寄託指定___を有する)(配列ID番号:6および配列ID番号:14)から選択される単離クローンのものである。コンドロイチナーゼABCIのヌクレオチド配列は配列ID番号:7、コンドロイチナーゼABCIのアミノ酸配列は配列ID番号:8で示される。
【0031】
本明細書で言及されるATCC寄託は、特許手続きのための微生物寄託の国際承認に関するブダペスト条約の条項に従って維持される。これらの寄託は本分野の熟練者への便宜としてのみ提供され、寄託が35 U.S.C.112項に基づいて要求されることを認めるものではない。寄託材料に含まれるポリヌクレオチドの配列、およびそれによってコード化されるポリペプチドのアミノ酸配列は参照により本明細書に組み込まれており、ここの配列のどんな内容との対立が生じた場合にも優先される。前記寄託材料を作製、使用、または販売するには許可が必要であり、そのような許可はここでは認められない。
【0032】
本発明の一実施形態はコンドロイチナーゼABCIの変異体を提供する。好ましい実施形態において、そのようなコンドロイチナーゼABCI変異酵素は活性亢進を示す。一実施形態において、本発明の酵素の活性値(CSPG基質分解能により評価)は対応する野生型酵素の活性値の最大約2倍である。別の実施形態において、本発明の酵素の活性値は対応する野生型コンドロイチナーゼの活性値の最大約3倍である。一実施形態において、前記コンドロイチナーゼABCI変異酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択される。できれば前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、および023G6−4(配列ID番号:5)から成る群から選択されるのが好ましい。
【0033】
本発明には、高い活性を有する本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素をコード化する核酸およびそれらの使用法が含まれる。一実施形態において、本発明は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるコンドロイチナーゼABCI変異酵素をコード化する核酸配列を含む。できれば本発明の核酸配列は055D2−3核酸(配列ID番号:9)、079B6−2核酸(配列ID番号:10)、079D2−2核酸(配列ID番号:11)、057G1−1核酸(配列ID番号:12)、023G6−4核酸(配列ID番号:13)、005B12−3核酸(配列ID番号:15)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるのが好ましい。
【0034】
別の好ましい実施形態において、そのようなコンドロイチナーゼABCI変異酵素は不活性化に対する高い抵抗性を示す。一実施形態において、不活性化に対する高い抵抗性は本発明の酵素がストレス(熱またはUVなど)負荷後に対応する野生型コンドロイチナーゼに比べ最大約10倍長く活性を維持するのを可能にする。例えば、野生型コンドロイチナーゼが測定可能な活性を最大約3日間維持するとすれば、同じ条件下で本発明のコンドロイチナーゼ酵素は測定可能な活性を最大約30日間維持する。一実施形態において、不活性化に高い抵抗性を示す前記コンドロイチナーゼABCI変異酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択される。できれば前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、および023G6−4(配列ID番号:5)から成る群から選択されるのが好ましい。
【0035】
本発明には、不活性化に高い抵抗性を示す本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素をコード化する核酸およびそれらの使用法が含まれる。一実施形態において、本発明は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるコンドロイチナーゼABCI変異酵素をコード化する核酸配列を含む。できれば本発明の核酸配列は、055D2−3核酸(配列ID番号:9)、079B6−2核酸(配列ID番号:10)、079D2−2核酸(配列ID番号:11)、057G1−1核酸(配列ID番号:12)、023G6−4核酸(配列ID番号:13)、005B12−3核酸(配列ID番号:15)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるのが好ましい。
【0036】
さらなる実施形態において、変異コンドロイチナーゼABCI酵素は高い安定性を有する状態で提供される。前記酵素はUV光または熱などのストレスが負荷された状況で不活性化に対し野生型ABCI酵素に比べ高い抵抗性を示す。好ましい実施形態において、前記酵素はストレス負荷に対し野生型コンドロイチナーゼABCI酵素に比べ高い安定性を示す。一実施形態において、高い安定性を有する前記コンドロイチナーゼABCI変異酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択される。できれば前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、および023G6−4(配列ID番号:5)から成る群から選択されるのが好ましい。
【0037】
本発明の酵素は炎症および炎症状態による症状の予防、治療、軽減に用いることが可能である。一実施形態において、本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素は慢性炎症性疾患による症状の予防、治療、または軽減に用いられる。本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素は疼痛、注射、および病的状態に関連した炎症の治療に用いることが可能である。本発明の酵素は炎症プロセスに関連した組織損傷の予防に用いることが可能である。慢性炎症性疾患を含むいくつかの状態が、制御された免疫反応から利益を得る可能性がある。慢性炎症性疾患の例としては、喘息、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(SLE)、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)が挙げられる。本発明の酵素は、中枢神経系障害、中枢神経系疾患、脊髄損傷、および心臓血管疾患から成る群から選択される一つ若しくはそれ以上の疾患に関連した炎症状態の制御にも用いることが可能である。
【0038】
本発明の酵素を含有する組成物で治療可能な炎症性疾患、自己免疫疾患、および炎症性要素を伴った疾患としては、多発性硬化症、髄膜炎、脳炎、関節リウマチ、変形性関節症、ループス(Lupus)、ヴェグナー肉芽腫症、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、喘息、クラミジア感染、梅毒、甲状腺炎、側頭動脈炎、リウマチ性多発筋痛、強直性脊椎炎、乾癬、血管炎(側頭動脈炎、高安動脈炎、梅毒性大動脈炎など)、感染性動脈瘤、アテローム硬化性動脈瘤、炎症性腹部大動脈瘤、結節性多発動脈炎、川崎病、チャーグ・ストラウス、過敏性血管炎、バージャー病、腸間膜の炎症性静脈閉塞症(mesenteric inflammatory veno−occlusive disease)、静脈炎、血栓性静脈炎、チャーグ・ストラウス、中枢神経限局性血管炎、薬剤性血管炎、二次性の動脈炎または小静脈炎の全て、痛風、偽痛風、サルコイドーシス、シェ−グレン症候群、脊髄炎、全ての病因による卵管炎、グッドパスチャー症候群、心膜炎、心筋炎、心内膜炎、および膵炎も挙げられる。
【0039】
本発明の一実施形態は、本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素を含有する組成物の患者への投与から成る、血管外腔および領域への細胞の接近を修飾する方法である。本発明の別の実施形態は、本発明の酵素を含有する組成物の患者への投与から成る、炎症関連細胞の患者組織への浸透低減法である。
【0040】
本発明の別の実施形態は、本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素を含有する組成物の患者への投与から成る、炎症関連細胞の血管外溢出抑制法である。本発明の酵素は、白血球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、B細胞、T細胞、単球、およびマクロファージから成る群から選択される細胞の血流離脱を防止する可能性がある。
【0041】
本発明の別の実施形態は、患者の循環細胞を抽出する工程と、その細胞を生体外において本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素に曝露して前記細胞を修飾する前記曝露する工程と、その修飾血液細胞を患者に投与する工程とから成る、患者における炎症治療法である。従って、本明細書に記載した本酵素は生体外治療への使用も考慮される。
【0042】
細胞の抽出は様々な方法で達成可能であり、静脈血採血、輸血、透析、バイパス、臓器移植、および身体からの細胞除去をもたらす他の同様の方法などが挙げられるが、それらに限定されない。前記細胞の投与は同抽出に用いた同じ方法で達成可能であり、静脈内投与、輸血、透析、バイパス、臓器移植などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0043】
炭水化物鎖を含有するリガンドを表面に発現した循環白血球を患者から抽出し、本発明のABCI変異酵素の一つ若しくはそれ以上によって生体外で修飾することが可能である。抽出は採血、輸血、透析、バイパス、または臓器移植によって達成可能である。記載されるように、本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素は炭水化物鎖を修飾する。修飾後に当該白血球を患者血液中に再導入する。修飾された白血球は内膜に発現したセクレチン、ムチン、およびインテグリンに接着することができない。抽出および血流中への再導入のタイミングは、白血球が特定の損傷または感染部位に遊走するべくシグナルを送られた後は、炎症反応および血流中の白血球の状況を観察することによって最適化することができる。その結果、白血球の組織中への溢出は制御、予防、軽減、または管理され得る。そのような制御は炎症反応および炎症性成分を伴う疾患の制御および治療を目的とした方法および治療に用いることが可能である。
【0044】
本発明の組成物は脊髄損傷の治療および軸索の再生促進に使用可能である。また本発明の組成物は、アルツハイマー病およびパーキンソン病を含む変性疾患などにより障害を受けたCNSにおける機能不全神経細胞の可塑性、再増殖、修復、および/または再生の促進にも用いることが可能である。都合の良いことに、本発明の組成物におけるプロテオグリカン分解ポリペプチドまたは膜形質導入ポリペプチドの使用により、神経細胞の再生を促進する他の治療薬も損傷または疾病組織への拡散およびアクセスが促進される。
【0045】
本発明のさらなる実施形態は、コンドロイチナーゼABCI変異酵素含有組成物の投与による中枢神経系の治療法である。好ましい実施形態において、コンドロイチナーゼABCI変異酵素は治療的有効量が投与される。好ましい実施形態において、中枢神経系損傷の治療に用いられる前記コンドロイチナーゼABCI変異酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から成る群から選択される。できれば前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、および023G6−4(配列ID番号:5)から成る群から選択されるのが好ましい。そのような中枢神経系損傷としては、外傷性を含む脊髄損傷、打撲傷、圧迫損傷が挙げられるが、それらに限定されない。
【0046】
本発明の別の実施形態は、コンドロイチナーゼABCI変異酵素含有組成物の投与による神経細胞の増殖促進法である。好ましい実施形態において、コンドロイチナーゼABCI変異酵素は治療的有効量が投与される。好ましい実施形態において、神経細胞の増殖を促進する前記コンドロイチナーゼABCI変異酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から成る群から選択される。できれば前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、および023G6−4(配列ID番号:5)から成る群から選択されるのが好ましい。
【0047】
本発明の他の実施形態は、中枢神経系(「CNS」)損傷または疾患後の神経機能回復促進法に関連する。好ましい実施形態において、コンドロイチナーゼABCI変異酵素は治療的有効量が投与される。特に、本発明は脊髄内または脊髄への損傷後の感覚、運動、または自律神経機能回復促進のためのコンドロイチナーゼ利用法を対象とする。この方法において有用な組成物には、例えば酵素の即時放出製剤および持続放出製剤など、本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素の許容可能な製剤が含まれる。さらに本発明は脊髄挫傷後の神経機能回復促進法も対象とする。最も多く見られる脊髄損傷(SCI)は、挫傷(脊髄の打撲)および圧迫損傷(脊髄への圧迫に起因する)である。最も多く見られる損傷である挫傷では、しばしば脊髄の中心に空洞または穴が形成される。本発明のABCI変異酵素はCSPGSの分解にも使用可能である。従って、本発明の実施形態には、本発明のABCI変異酵素を含有する組成物を用いて一つ若しくはそれ以上のCSPGSを分解する方法が含まれる。できれば、神経機能の回復促進に有効な本発明の組成物には、055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるコンドロイチナーゼABCI変異酵素が含有されるのが好ましい。
【0048】
本発明の一実施形態は、プロテオグリカンを開裂できる少なくとも一つの酵素を含有する組成物の使用により、組成物中の治療薬および診断薬が膜を経由して細胞中または組織中へアクセスおよび分布するのを促進する組成物および使用法である。できれば、前記組成物には055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるコンドロイチナーゼABCI変異酵素が含有されるのが好ましい。前記組成物中の分子または薬剤には一つ若しくはそれ以上の成長因子が含まれる。例えば、脳由来神経栄養因子、インスリン様成長因子、線維芽細胞成長因子、毛様体神経栄養因子、グリア細胞由来神経栄養因子、形質転換成長因子、グリア成長因子2、L1、GM1、血管内皮増殖因子、神経成長因子、およびイムノフィリンなどである。一部の実施形態において前記組成物には造影用の蛍光剤または造影剤が含有される。一実施形態によれば、前記薬剤には例えば幹細胞または神経細胞などの移植用細胞、送達剤としての細胞、化学療法剤、抗生剤、抗体、またはノゴ受容体拮抗薬などが含まれる。前記組成物はCNS損傷の治療に使用可能である。できれば、前記組成物は挫傷による神経損傷の治療に用いられるのが好ましい。
【0049】
本明細書に記載した治療は、CSPGsを分解しそれによって例えば神経機能の回復促進に有効な量のコンドロイチナーゼABCI変異酵素(選択的に治療薬を含め)をCNSに送達する。そのような方法には、本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素との併用によるコンドロイチナーゼABCI、コンドロイチナーゼABCII、コンドロイチナーゼAC、コンドロイチナーゼBなど(これらに限定されない)別のコンドロイチナーゼの投与、またはヒアルロニダーゼHyal1、Hyal2、Hyal3、Hyal4、PH20などコンドロイチナーゼ様活性を有する哺乳動物酵素の併用が選択的に含まれ、できればCNSへの投与が好ましく、CNSの損傷部位への投与であればさらに好ましい。組成物中のタンパク質またはポリペプチドを望ましい程度にまで精製した後は、治療のため適切な生理学的担体または賦形剤中に懸濁または溶解可能である。
【0050】
コンドロイチナーゼは、大腸菌、プロテウス・ブルガリスなど(これらに限定されないが)、自然にコンドロイチナーゼを発現する微生物を含む様々な供給源から、または宿主細胞中の組換えタンパク質の発現により獲得可能である。前記宿主細胞は原核細胞(大腸菌など)または真核細胞(酵母菌、哺乳類細胞、昆虫細胞など)のいずれでもよい。
【0051】
本発明のコンドロイチナーゼABCI変異体核酸は本分野で知られる数多くの方法により獲得可能である。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応および/または他の技術を用いて、野生型P.ブルガリスまたはコンドロイチナーゼをコード化する他の配列に突然変異を引起すことが可能である。一実施形態において、本発明は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるコンドロイチナーゼABCI変異酵素をコード化する核酸配列の作成法を含む。できれば本発明は本発明の核酸配列作成法を含み、当該核酸は055D2−3核酸(配列ID番号:9)、079B6−2核酸(配列ID番号:10)、079D2−2核酸(配列ID番号:11)、057G1−1核酸(配列ID番号:12)、023G6−4核酸(配列ID番号:13)、005B12−3核酸(配列ID番号:15)、および021B8−3(配列ID番号:_)から選択されるのが好ましい。
【0052】
本発明の組換えABCI変異体核酸配列の発現は、ABCI変異体タンパク質をコード化する核酸またはその一部を原核細胞、真核細胞、またはその両方での発現に適したベクターに結合させることにより実行可能である。結合方法は本分野の通常の技量を有するものにはよく知られたものである。組換え型コンドロイチナーゼペプチド作製のための発現ベクターにはプラスミドおよび他のベクターがある。例えば、コンドロイチナーゼABCI変異体ポリペプチドの発現に適したベクターには、大腸菌などの原核細胞における発現を目的としたPBR322由来のプラスミド、pEMBL由来のプラスミド、pEX由来のプラスミド、pBTac由来のプラスミド、pUC由来のプラスミドがある。
【0053】
数多くのベクターが酵母菌における組換えタンパク質の発現用として存在し、本発明の組換えABCI変異体タンパク質発現に使用可能である。例えば、YEP24、YIP5、YEP51、YEP52、PYES2、およびYRP17は遺伝子構造のS.cerevisiaeへの導入に有用なクローニングおよび発現媒体である(例えば参照により本明細書に組み込まれた、Broachらによるin Experimental Manipulation of Gene Expression,ed.M.Inouye Academic Press,p.83,を参照のこと)。
【0054】
別の実施形態において、本発明のコンドロイチナーゼABCI変異体ポリペプチドは、055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、005B12−3(配列ID番号:6)、および021B8−3(配列ID番号:_)に示されるコンドロイチナーゼ・タンパク質の一つのコード配列をサブクローニングすることによって生成される発現ベクターを利用することにより組換え技術を用いて作製される。
【0055】
場合によっては、本発明の組換えコンドロイチナーゼABCI変異体ポリペプチドを、バキュロウイルス発現系などの昆虫発現系を用いて発現させるのが好ましい可能性がある。そのようなバキュロウイルス発現系の例としては、pVL由来ベクター(pVL1392、pVL1393およびpVL941など)、pAcUW由来ベクター(pAcUW1など)、およびpBlueBac由来ベクター(pBlueBacIII含有のβ−galなど)などが挙げられる。
【0056】
本明細書に記載の発現ベクターおよび宿主細胞はほんの一例として挙げたに過ぎず、本分野において通常の技量を有する者に利用できるよく知られたシステムであり、核酸分子の発現に有用である可能性がある。本分野において通常の技量を有する者は、本明細書に記載した核酸分子の維持増殖(maintenance propagation)または発現に適した他のシステムを承知しているものと思われる。
【0057】
本発明の酵素は医薬品組成物および製剤に形成可能である。適切な安定的製剤および精製法は2005年5月18日付けで「Methods of Purifying Chondroitinase and Stable Formulations Thereof」のタイトルで出願された同時係属PCT出願NO.US2005/017464に示されている(参考文献参照)。
【0058】
様々な実施形態が、保存と投与の両方に関する本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素の安定的製剤を提供する。一般に、そのような安定的製剤の酵素は約24時間後に活性の少なくとも約50%を示し、できれば少なくとも活性の約75%が好ましく、少なくとも活性の約85%であればさらに好ましい。本発明の別の態様において、前記製剤は一貫して安定的コンドロイチナーゼ活性を提供する。
【0059】
一実施形態において、コンドロイチナーゼはリン酸緩衝液中で作成されるが、できれば濃度が約50mM〜1Mのリン酸ナトリウム緩衝液であるのが好ましい。好ましい実施形態は約750mMのリン酸ナトリウムである。別の好ましい実施形態は約100mMのリン酸ナトリウムである。さらなる実施形態において、コンドロイチナーゼはさらに酢酸ナトリウムを含有するリン酸ナトリウム緩衝液中で形成され得る。酢酸ナトリウムは約25〜75mMで存在し得る。好ましい実施形態において、前記酢酸ナトリウムの濃度は約50mMである。一実施形態において、投与に好ましい製剤はコンドロイチナーゼをPHが約7.4の緩衝液に入れたものである。保存と投与のための製剤に関するさらなる実施形態は実施例に記載される。
【0060】
さらなる実施形態において、本発明の精製コンドロイチナーゼABCI変異酵素および高イオン強度の緩衝液を含有する製剤が提供される。剤形中に高イオン濃度を含有する実施形態は、酵素製剤の安定性を増す可能性がある。例えば、好ましい実施形態はリン酸ナトリウム中の約1MのNaClとともに製剤を提供する。リン酸ナトリウムの濃度は約50mMである。好ましい実施形態において、前記酵素保存濃度は約0.4mg/ml未満である。
【0061】
一実施形態において、コンドロイチナーゼABCI変異酵素製剤は約100mMのリン酸ナトリウム中にPH約7.4において本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素を約0.4mg/ml含有し、コンドロイチンA、B、およびCに対する好ましい基質特異性はほぼ同じである。
【0062】
様々な実施形態において、本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素の安定的製剤が保存と投与の両方に関し提供される。一般に、そのような安定的製剤の酵素は約24時間後に活性の少なくとも約50%を示し、できれば少なくとも活性の約75%が好ましく、少なくとも活性の約85%であればさらに好ましい。本発明の別の態様において、前記製剤は一貫して安定的コンドロイチナーゼ活性を提供する。
【0063】
別の実施形態において、コンドロイチンABCI変異酵素の精製は以下の手順で行われる:1)細胞から酵素を抽出、2)陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて粗細胞抽出物を分離、3)前記抽出物をゲル濾過クロマトグラフィーによりさらに分離、4)陰イオン交換膜によりエンドトキシンを除去し、本発明の精製コンドロイチナーゼABCI変異酵素を作製する。一実施形態において、本発明の精製コンドロイチナーゼABCIは揮発性緩衝液で透析、凍結乾燥され、−80℃で保存される。
【0064】
コンドロイチナーゼ活性は賦形剤を加えるかまたは凍結乾燥により安定化可能である。安定剤には炭水化物、アミノ酸、脂肪酸、および界面活性剤が含まれ、本分野の熟練者には既知である。例えば、スクロース、ラクトース、マンニトール、デキストランなどの炭水化物、アルブミン、プロタミンなどのタンパク質、アルギニン、グリシン、スレオニンなどのアミノ酸、TWEEN(登録商標)、PLURONIC(登録商標)などの界面活性剤、塩化カルシウム、リン酸ナトリウムなどの塩、脂肪酸、リン脂質、胆汁塩などの脂質が挙げられる。
【0065】
本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素は、局所性投与(topically)、局所投与(locally)、全身投与が可能である。適用を適切に制御するためには局所(表面)投与の方が好ましい。本発明の酵素は、単独または本発明の他の酵素または他のCSPG分解酵素との併用に関わらず、投与前に適切な薬学的担体と混合することができる。投与には損傷部位または分解対象のCSPGsが認められる部位への当該酵素の送達が含まれる。一般に用いられる薬学的担体および添加剤の例としては、通常の希釈剤、結合剤、潤滑剤、着色剤、崩壊剤、緩衝剤、等張(isotonizing)脂肪酸、等張剤、保存剤、麻酔剤、界面活性剤などが挙げられ、いずれも本分野の熟練者に知られたものである。使用可能な薬学的担体には、デキストラン、スクロース、ラクトース、マルトース、キシロース、トレハロース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、血清アルブミン、ゼラチン、クレアチニン、ポリエチレングリコール、非イオン界面活性剤(例えばポリオキシエチレン・ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、スクロース脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン・ポリプロピレングリコールなど)および同様の化合物がある。
【0066】
本発明に基づいた治療法は、本発明のコンドロイチナーゼABCI変異酵素を含有した組成物を投与することによって実行可能である。前記治療計画にはさらにコンドロイチナーゼABCI、コンドロイチナーゼABCII、コンドロイチナーゼAC、およびコンドロイチナーゼBの投与、またはCNSの損傷部位に対しヒアルロニダーゼHyal1、Hyal2、Hyal3、Hyal4、PH20などコンドロイチナーゼ様活性を有する哺乳動物酵素の投与が含まれる可能性がある。投与方法、投与時期、投与量はCNS障害からの機能的回復が神経突起伸長の進展によって強化されるように実行される。
【0067】
有効量のコンドロイチナーゼを単回または複数回に分けて投与することができる。投与はいつ行っても良いと理解されるべきであるが、一実施形態では投与は損傷後12時間以内、または可能な限り早く行う。別の実施形態において、損傷した哺乳動物に単回または複数回投与を行うが、そのような投与回数は損傷の重症度およびグリア性瘢痕におけるCSPGsの量次第である。複数回投与を行う場合、毎日、毎週、または隔週での投与が考えられる。投与はカテーテルまたはシリンジで行う。あるいは手術中にグリア性瘢痕に直接投与することも可能である。
【0068】
例えば、一部の態様において、本発明は前記のような化合物および薬学的に許容される担体または希釈剤、または前記のような化合物を含有する薬剤組成の有効量を対象とする。
【0069】
本発明の化合物は、従来の方法により、使用できるいかなる経路を通じて投与することも可能である。全身投与、局所投与、経口投与のいずれも可能である。例えば、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、経口、口腔内、眼内、膣内、吸入、蓄積、埋め込みによる投与などが考えられるが、これらに限定されない。従って、本発明の化合物の投与法は(単独若しくは他の薬剤との併用に関わらず)、舌下、注射(短時間作用型、蓄積、埋め込み、皮下ペレット、筋内ペレットなど)、膣クリーム、坐薬、ペッサリー、膣リング、肛門坐薬、子宮内器具、経皮製剤(パッチ、クリームなど)のいずれであってもよく、またこれらに限定されない。
【0070】
具体的な投与法は適応次第である。最適の臨床反応を得るために、医師は既知の方法に従って具体的な投与経路の選択および投与計画の調節または漸増を行う必要がある。投与化合物の量は治療的に有効な量である。投与量は、例えば特定の治療対象動物、年齢、体重、健康状態、併用治療(もしあれば)の内容、および治療回数など、投与対象となる患者の特性次第であり、本分野の熟練者(例えば医師など)によって容易に決定可能である。
【0071】
本発明の化合物と適切な担体を含有する剤形としては、本発明のポリマーまたはコポリマーの有効量からなる、タブレット、カプセル、ペレット、粉末、顆粒など(これらに限定されない)の固形剤、溶液、粉末、乳液、懸濁液、半固形剤、軟膏、ペースト、クリーム、ゲル、ゼリー、フォームなど(これらに限定されない)の局所製剤、溶液、懸濁液、乳液、乾燥粉末など(これらに限定されない)の非経口剤などが考えられる。当該有効成分は、薬学的に許容できる希釈剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、界面活性剤、疎水性賦形剤、水溶性賦形剤、乳化剤、緩衝剤、保湿剤、可溶化剤、防腐剤などとともに製剤可能であることも本分野では知られている。投与手段および方法は本分野では既知であり、熟練者は様々な薬学的参考文献を参照できる。例えば、Modern Pharmaceutics,Banker&Rhodes,4th Ed., Informa Healthcare(2002)、およびGoodman&Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics,10th Ed.,McGraw−Hill(2001)を参照のこと。
【0072】
本発明の化合物を、例えばボーラス注射若しくは持続注入など、注射による非経口投与用として製剤することができる。前記化合物を約15分から24時間かけて持続皮下注入することが可能である。注射用製剤は、保存剤を加えたアンプルまたは複数回使用容器(multi−dose containers)などの単位服用量形態で提供することが可能である。当該組成物は、油性または水性賦形剤を基剤とする懸濁液、溶液、または乳液のような形態が可能であり、懸濁化剤、安定剤、および/または分散剤などの製剤化剤(formulatory agents)を含有することがある。
【0073】
経口投与用として、当該化合物を本分野でよく知られた薬学的に許容できる担体と組み合わせることによって容易に製剤可能である。そのような担体により、本発明の化合物は治療対象となる患者による経口摂取用として、タブレット、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などに製剤可能である。経口投与用の医薬製剤は、固形賦形剤を加えて出来上がった混合物を選択的に砕き、必要に応じ適切な助剤を加えた後に顆粒混合物を処理してタブレットまたは糖衣錠コアとすることにより獲得可能である。適切な賦形剤としては、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトールなどの(これらに限定されない)糖、トウモロコシでんぷん、小麦でんぷん、米でんぷん、ジャガイモでんぷん、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル・セルロース、カルボキシメチル・セルロース・ナトリウム、ポリビニルピロリドン(PVP)など(これらに限定されない)のセルロース製剤などが挙げられるが、これらに限定されない。必要に応じ、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはその塩(アルギン酸ナトリウム)など(これらに限定されないが)の崩壊剤を加えることが出来る。
【0074】
適切なコーティングを施した糖衣錠コアを提供することができる。この目的用として糖濃縮液を使用することが可能であり、選択的にアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適当な有機溶剤または溶剤混合物を含有することが出来る。識別のため、または活性化合物用量の異なった組合せを明示するため、タブレットまたは糖衣錠コーティングに染料または色素を加えてもよい。
【0075】
経口使用可能な医薬製剤には、ゼラチンでできた押し込み型カプセルやゼラチンおよび可塑剤(グリセロールやソルビトールなど)でできた軟らかな密閉カプセルなどがあるが、それらに限定されない。押し込み型カプセル(push−fit capsules)には、ラクトースなどの充填剤、でんぷんなどの結合剤、および/またはタルクやステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および選択的に安定剤と混合された活性成分が含有され得る。軟カプセルでは前記活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、液体ポリエチレングリコールなど適当な液体中に溶解または懸濁し得る。さらに安定剤を加えてもよい。すべての経口投与剤はそのような投与に適した剤形である必要がある。
【0076】
口腔投与用として、前記組成物は例えば従来の方法で製剤されたタブレットまたはトローチの形態であり得る。
【0077】
吸入投与用として、本発明に基づいた使用のための化合物は、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフロオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適当なガスなど、適当な高圧ガスを用いた加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形での送達が便利である。加圧エアロゾルの場合、投与単位はバルブの提供により測定量を送達することによって決定可能である。吸入器で使用するためのゼラチンなどでできたカプセルやカートリッジは、当該化合物の粉末混合物およびラクトースやでんぷんなどの適当な粉末ベースを含有したものが製剤可能である。
【0078】
さらに本発明の化合物は、例えばココアバターや他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を含有する坐薬や持続性浣腸剤などの直腸組成に製剤することも可能である。
前記製剤に加え、本発明の化合物はデポ製剤として製剤することも可能である。そのような長時間作用型製剤は埋め込み(皮下、筋肉内など)または筋肉内注射により投与可能である。
【0079】
デポ注射は約1〜6ヵ月またはそれ以上の間隔をあけて投与可能である。従って本化合物は、例えば適当なポリマー材料または疎水性物質(例えば許容できる油基剤のエマルジョンとして)またはイオン交換レジンとともに、またはやや溶けにくい誘導体(例えばやや溶けにくい塩など)として製剤可能である。
【0080】
経皮投与の場合、本発明の化合物は例えば湿布薬に加えるか、または経皮吸収治療システムにより当該生命体に適用することが可能である。
【0081】
当該化合物の医薬組成物には、適当な固形またはゲル相の担体または賦形剤が含有されることもある。そのような担体または賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種糖類、でんぷん、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明の化合物は、本明細書に記載された所望の効果を達成するのに好ましいか都合が良いと見なされる場合、例えばアジュバント、プロテアーゼ阻害剤、または他の適合薬または適応化合物など他の有効成分と組み合わせて投与することも可能である。
以下の方法は本発明の様々な実施形態の例証に用いられる。これらの方法は例証用であり、本発明の限定を意図するものではない。
【実施例1】
【0083】
本実施例は本発明に基づいた典型的コンドロイチナーゼABCI変異酵素および核酸の生成を例示する。
【0084】
野生型cABCIのクローニング:コンドロイチナーゼABCIはP.ブルガリスのcDNA全体を用いたPCRによって生成され、pET15b発現ベクターのNdeI部位およびBamHI部位にクローニングされた。前記ベクターは大腸菌で発現された(Prabhakar Vら。Biochem J.2005)。
【0085】
CABCIのランダム変異導入法:前記コンドロイチナーゼABCI遺伝子は4つのモジュールに分割された。ランダム変異の導入はGenemorph IIキット(Stratagene)を用いて各モジュールに対し行われ、変異体当たり1〜2のアミノ酸変化を含む産物が作製された。産物はクローニングされ、正常なクローン構造を含む獲得コロニー数が前記DNA集団中に存在すると予想される個々の変異体遺伝子の数の少なくとも5倍であるように大腸菌DH10Bに転換された。前記コロニーをプールし、プラスミドDNAを精製して発現株BL21の転換に使用した。
【0086】
熱応力分析:cABCI変異酵素を発現する大腸菌株を、成長と誘導のため96ウェルプレートに均一に配置した。野生型酵素を発現する大腸菌も入れた。生じた細菌ペレットからBPER(PIERCE)を用いて全タンパク質を抽出し、続いてPBSにより1:50に希釈した。試料を加湿インキュベーター内で42℃の熱応力に2時間曝露した。次に試料をGAG鎖の開裂を引起すCABCIの基質である同量のLコンドロイチン硫酸C(Sigma)0.25mg/mlと混合した。室温で10分間培養後、DMB試薬を加え、660NMにおける吸光度を測定した。吸光度が同じプレート上の野生型酵素よりも大きい陽性ヒット数を陽性ヒットに数えた。熱ストレス負荷後の方が大きな活性を示した。
【0087】
組換えライブラリの作製:モジュールA、B、およびCからの最も耐熱性の高いクローン10個を無作為に組換え、コンビナトリアルプロダクト・ライブラリ(combinatorial product library)を作製した。対応する野生型1モル当量も存在する状態で、各モジュールのPCR産物を同モル比で組合せた。これにより、モジュールCに対する9つの変異体配列から成るプールとモジュールAおよびBに対する11の変異体から成るプールが作製された。3ウェイ・ライゲーションが行われ、各モジュールが適切な隣接モジュールと正しい方向にのみライゲート可能であり、またpET15bベクターDNAにライゲートされ、CABCI全体を含む発現クローンが産生された。このライブラリの全長は1089変異体cABCI配列である。得られた正しいクローン構造を有するコロニーの数は、予想された個々の変異体遺伝子数の少なくとも5倍であった。ライゲーションにウエイトを加えて2〜3の変異体モジュールを含有するクローンを主に産生するようにし、それによって当初のスクリーニング「ヒット」で認められた突然変異の新たな組合せを作製した。
【実施例2】
【0088】
本実施例は本発明の典型的なコンドロイチナーゼ変異酵素を例示するものである。
熱的に安定な変異体は分子進化プロセスを通して生成されることが確認された。修飾DMB分析により、42℃、2時間で野生型cABCIに比べ熱的に安定なクローンが確認された。この温度での安定性は37℃ではさらに大きな安定性をもたらす可能性が高く、内在ミニポンプの投与への利用が可能になることにより、インビボ研究のための処理および送達が容易となる。個々のモジュールは全体として、試験パラメータで定義された予想範囲内の陽性ヒットをもたらした。
【0089】
高い熱安定性を有するクローンをシークエンシングにより特徴付けた。全てのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を野生型として、次に変異体として示した(野生型−変異体)。
【0090】
【表1】

【実施例3】
【0091】
安定性評価−細菌溶解物37℃安定性。大腸菌を発現する野生型および変異型コンドロイチナーゼABCIを拡大し、96ウェルプレートに発現させた。生じた細菌ペレットからタンパク質を抽出した。ペレットをBPER(Pierce)で10分間室温で溶解させ、1000Gで遠沈して不溶物質をペレット化した。上澄液を新しい容器に移した。タンパク質量をBCAタンパク質定量法を用いて標準化した。さらに溶解物もSDS−PAGEゲルに適用し、クーマシー染色を行った。産生された酵素の量をGeneToolsソフトウエア(Syngene)を用いて測定し、当該酵素のバンドサイズを抽出された他の全てのタンパク質バンドと比較した(本書の最後にヒストグラムを掲載)。全細胞溶解タンパク質に基づいた酵素の割合を図1に示す。
【0092】
試料に対し加湿インキュベーター中で37℃の熱応力を負荷した。DMB(ジメチル、メチレンブルー)比色分析を用いて長時間にわたり漸増的に活性を測定した。試料をGAG鎖の開裂を引起すコンドロイチナーゼABCIの基質である同量のコンドロイチン硫酸C 0.25MG/MLと混合した。室温で10分間培養後、DMB試薬を加え、660NMで吸光度を測定した。結果を図2および表1A、1Bに示す。
【0093】
【表1A】

【表1B】

【実施例4】
【0094】
半精製37℃安定性。野生型および変異型コンドロイチナーゼABCI発現大腸菌の全酵素を高速SPカラムを用いて精製した。タンパク質試料をA280で標準化し、溶出緩衝液(20mM酢酸ナトリウム+250mM NaCl)中で希釈により天然酵素の吸光度(0.35)に合わせた。さらに完全に精製したcABCI酵素をもどし、天然半精製試料と同様に0.35(A280)まで希釈した。コンドロイチンC基質分光学的定量法を用いて全試料の初期活性値を測定した。同定量法は、コンドロイチン硫酸Cの摂取による産生物をA232で長時間かけて測定するものである。試料に対し加湿インキュベーター中で37℃の熱応力を負荷した。天然試料の活性が全て消失するまで、活性値を毎日測定した。残留試料の定量は週3回で続けられた。2〜3の変異体に関し保持された総活性値に対する割合としての活性値を図3および表2A、2Bに示す。
【0095】
【表2A】

【表2B】

【実施例5】
【0096】
UV処理後における変異コンドロイチナーゼの安定性成長および発現後、上記のようにBPER(Pierce)を用いてコンドロイチナーゼ変異体を抽出し、UV光に曝露する。コンドロイチン・リアーゼ活性をDMB分析を用いて測定する。
【0097】
本発明は上に記載、例示した実施形態に限定されず、添付請求項の範囲内での変形例および修正が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、021B8−3(配列ID番号:_)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、および005B12−3(配列ID番号:6)から選択される変異コンドロイチナーゼABCI酵素。
【請求項2】
請求項1記載の変異コンドロイチナーゼABCI酵素において、前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)を有するものである。
【請求項3】
請求項1記載の変異コンドロイチナーゼABCI酵素において、前記酵素は079B6−2(配列ID番号:2)を有するものである。
【請求項4】
請求項1記載の変異コンドロイチナーゼABCI酵素において、前記酵素は023G6−4(配列ID番号:5)を有するものである。
【請求項5】
中枢神経系損傷を治療する方法であって、055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、021B8−3(配列ID番号:_)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、および005B12−3(配列ID番号:6)から選択される酵素の治療的有効量を投与する工程を有する、方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、変異コンドロイチナーゼABCI酵素は中枢神経系への打撲損傷後に投与されるものである。
【請求項7】
請求項5記載の方法において、変異コンドロイチナーゼABCI酵素は中枢神経系への非打撲損傷後に投与されるものである。
【請求項8】
請求項5記載の方法において、変異コンドロイチナーゼABCI酵素は脊髄損傷後に投与されるものである。
【請求項9】
請求項5記載の方法において、変異コンドロイチナーゼABCI酵素は局所投与されるものである。
【請求項10】
請求項9記載の方法において、前記局所投与は髄腔内投与および局所性投与から選択されるものである。
【請求項11】
請求項5記載の方法において、前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)を有するものである。
【請求項12】
請求項5記載の方法において、前記酵素は079B6−2(配列ID番号:2)を有するものである。
【請求項13】
請求項5記載の方法において、前記酵素は023G6−4(配列ID番号:5)を有するものである。
【請求項14】
神経細胞の増殖を促進する方法であって、055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、021B8−3(配列ID番号:_)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、および005B12−3(配列ID番号:6)から選択される酵素の治療的有効量を投与する工程を有する、方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法において、変異コンドロイチナーゼABCI酵素は中枢神経系への打撲損傷後に投与されるものである。
【請求項16】
請求項14記載の方法において、変異コンドロイチナーゼABCI酵素は中枢神経系への非打撲損傷後に投与されるものである。
【請求項17】
請求項14記載の方法において、変異コンドロイチナーゼABCI酵素は脊髄損傷後に投与されるものである。
【請求項18】
請求項14記載の方法において、変異コンドロイチナーゼABCI酵素は局所投与されるものである。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、前記局所投与は髄腔内投与および局所性投与から選択されるものである。
【請求項20】
請求項14記載の方法において、前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)を有するものである。
【請求項21】
請求項14記載の方法において、前記酵素は079B6−2(配列ID番号:2)を有するものである。
【請求項22】
請求項14記載の方法において、前記酵素は023G6−4(配列ID番号:5)を有するものである。
【請求項23】
中枢神経系における薬剤の拡散を促進する方法であって、
前記中枢神経系に薬剤を投与する工程と、
055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、021B8−3(配列ID番号:_)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、および005B12−3(配列ID番号:6)から選択される酵素を中枢神経系に投与する工程と
を有する方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法において、少なくとも一つの酵素は055D2−3(配列ID番号:1)を有するものである。
【請求項25】
請求項23記載の方法において、少なくとも一つの酵素は079B6−2(配列ID番号:2)を有するものである。
【請求項26】
請求項23記載の方法において、少なくとも一つの酵素は023G6−4(配列ID番号:5)を有するものである。
【請求項27】
請求項23記載の方法において、少なくとも一つの酵素は有効量で投与されるものである。
【請求項28】
請求項23記載の方法において、少なくとも一つの酵素は1若しくはそれ以上の薬学的担体と共に投与されるものである。
【請求項29】
請求項23記載の方法において、前記薬学的担体は希釈剤、結合剤、潤滑剤、着色剤、崩壊剤、緩衝剤、等張剤、ポリオール、保存剤、麻酔剤から成る群から選択されるものである。
【請求項30】
請求項23記載の方法において、前記薬剤は複合生物製剤、小分子、および移植細胞から成る群から選択されるものである。
【請求項31】
中枢神経系における薬剤の取込みを促進する方法であって、前記薬剤とコンドロイチン硫酸プロテオグリカンを開裂することのできる少なくとも一つの酵素とを投与する工程を有し、前記少なくとも一つの酵素は、055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、021B8−3(配列ID番号:_)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、および005B12−3(配列ID番号:6)から選択されるものである、方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法において、前記少なくとも一つの酵素は055D2−3(配列ID番号:1)を有するものである。
【請求項33】
請求項31記載の方法において、前記少なくとも一つの酵素は079B6−2(配列ID番号:2)を有するものである。
【請求項34】
請求項31記載の方法において、前記少なくとも一つの酵素は023G6−4(配列ID番号:5)を有するものである。
【請求項35】
請求項31記載の方法において、前記少なくとも一つの酵素は有効量で投与されるものである。
【請求項36】
請求項31記載の方法において、前記少なくとも一つの酵素は1若しくはそれ以上の薬学的担体と共に投与されるものである。
【請求項37】
請求項31記載の方法において、前記薬学的担体は希釈剤、結合剤、潤滑剤、着色剤、崩壊剤、緩衝剤、等張剤、ポリオール、保存剤、麻酔剤から成る群から選択されるものである。
【請求項38】
請求項31記載の方法において、前記薬剤は複合生物製剤、小分子、および移植細胞から成る群から選択されるものである。
【請求項39】
血管からの細胞溢出を阻害する方法であって、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンを開裂する酵素を患者に投与する工程を有し、前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、021B8−3(配列ID番号:_)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、および005B12−3(配列ID番号:6)から選択されるものである、方法。
【請求項40】
請求項39記載の方法において、前記細胞は、白血球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、B細胞、T細胞、単球、およびマクロファージから成る群から選択されるものである。
【請求項41】
患者の炎症を治療する方法であって、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンを開裂する酵素を患者に投与する工程を有し、前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、021B8−3(配列ID番号:_)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、および005B12−3(配列ID番号:6)から選択されるものである、方法。
【請求項42】
患者の炎症を治療する方法であって、
前記患者の血流中を循環する細胞を抽出する工程と、
前記細胞を修飾するために、生体外で、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンを開裂する酵素を前記細胞に曝露する工程と、
前記修飾細胞を前記患者に投与する工程と
を有し、
前記酵素は055D2−3(配列ID番号:1)、079B6−2(配列ID番号:2)、079D2−2(配列ID番号:3)、021B8−3(配列ID番号:_)、057G1−1(配列ID番号:4)、023G6−4(配列ID番号:5)、および005B12−3(配列ID番号:6)から選択されるものである、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−505448(P2010−505448A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532566(P2009−532566)
【出願日】平成19年10月10日(2007.10.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/081001
【国際公開番号】WO2008/045970
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(505425351)アコーダ セラピューティクス、インク. (12)
【Fターム(参考)】