説明

コンバインの排ワラカッタ

【課題】 前方上方から供給される排ワラを案内する案内カバーを、カッタケースの上部後方における横向き支点を中心に揺動可能に配備し、案内カバーを、カッタ入口を開放して排ワラをカッタケースの内方に導く細断用姿勢と、カッタ入口を閉塞して排ワラを機体後方に案内する放出用姿勢とに切換え揺動可能に構成したコンバインの排ワラカッタにおいて、排ワラ詰まりの発生によってカッタ入口に排ワラが盛り上がることがあっても、案内カバーが変形したり、負荷圧が過大になるのを回避できるようにする。
【解決手段】 案内カバー16を細断用姿勢aに保持する姿勢保持機構17を、前方からの設定以上の外力が案内カバー16に作用することを検知して、案内カバー16の後方への揺動を許容するよう構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自脱型のコンバインに搭載した脱穀装置の後部に連結される排ワラカッタに関する。
【背景技術】
【0002】
上記排ワラカッタとしては、カッタケースにおける左右のケース側壁に亘って回転受刃と回転切断刃とを前後所定間隔をもって左右水平に対向軸支して、互いに内向きに回転駆動するよう構成するとともに、前方上方から供給される排ワラを案内する案内カバーを、カッタケースの上部後方における横向き支点を中心に揺動可能に配備し、案内カバーを、カッタ入口を開放して排ワラをカッタケースの内方に導く細断用姿勢と、前記カッタ入口を閉塞して排ワラを機体後方に案内する放出用姿勢とに切換え揺動可能に構成した円板型の排ワラカッタが多用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−39号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように構成された排ワラカッタにおいては、回転切断刃の摩滅等によって切れ味が低下したような場合、回転受刃と回転切断刃との切断部位に排ワラ詰まりが発生して後続の排ワラがカッタ入口に盛り上がることがある。このような場合、排ワラ詰まりの発生に気づかずに排ワラ供給を続行すると、カッタ入口に盛り上がった排ワラが細断用姿勢に起立されている案内カバーを強く押圧して変形させたり、排ワラ詰まりの箇所に発生する過大な負荷圧によって回転切断刃や回転受刃の支軸が湾曲変形するおそれもある。
【0004】
このような不具合の発生を抑制するために、細断用姿勢にある案内カバーに作用する押圧力が設定以上に大きくなったことをリミットスイッチなどを用いて電気的に検知し、その検知作動に基づいてエンジンを自動的に停止して、後続の排ワラ供給を停止するような制御手段を備えることも行われている。
排ワラ詰まりの発生に基づいて排ワラ供給を停止する制御手段を適正に機能させるためには、センサの故障、配線の接続不良や断線、等の電気的トラブルを発生させないように事前に充分な点検整備や調整を行う必要があり、ユーザーにかかる管理負担が大きくなるものであった。
【0005】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、排ワラ詰まりの発生によってカッタ入口に排ワラが盛り上がることがあっても、案内カバーが変形したり、負荷圧が過大になるのを回避できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、前方上方から供給される排ワラを案内する案内カバーを、カッタケースの上部後方における横向き支点を中心に揺動可能に配備し、案内カバーを、カッタ入口を開放して排ワラをカッタケースの内方に導く細断用姿勢と、前記カッタ入口を閉塞して排ワラを機体後方に案内する放出用姿勢とに切換え揺動可能に構成したコンバインの排ワラカッタにおいて、
前記案内カバーを前記細断用姿勢に保持する姿勢保持機構を、前方からの設定以上の外力が案内カバーに作用することを検知して、案内カバーの後方への揺動を許容するよう構成してあることを特徴とする。
【0007】
上記構成によると、排ワラ細断状態において、細断部位に排ワラ詰まりが発生して後続の排ワラがカッタ入口の上方に盛り上がり、細断用姿勢にある案内カバーに前方から大きい押圧力が作用すると、姿勢保持機構による姿勢保持が自動的に解除されて案内カバーが後方の開放位置に退避し、排ワラの後方へのオーバーフローが許容される。
従って、第1の発明によると、排ワラ詰まりの発生によってカッタ入口に排ワラが盛り上がることがあっても、案内カバーが変形したり、負荷圧が過大になるのを回避できる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記姿勢保持機構を、前記案内カバーに備えた係合部材をカッタケースに固定した被係合部材に係合して前記細断用姿勢に保持するよう構成し、前方からの設定以上の外力が案内カバーに作用することで、前記係合部材あるいは被係合部材の少なくとも一方が弾性変形して両者の係合が解除されるよう構成してあるものである。
【0009】
上記構成によると、排ワラ細断形態での案内カバーは、係合部材と被係合部材との係合によって確実に所定の細断用姿勢に位置決め保持され、供給される排ワラを的確にカッタ入口に案内して円滑な細断が促進することができる。排ワラ詰まりの発生に伴う過大な押圧力が案内カバーに作用すると、係合部材と被係合部材の係合が外れて案内カバーが後方の開放位置に退避し、排ワラの後方へのオーバーフローが許容される。
【0010】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
前記案内カバーが前記細断用姿勢から後方へ揺動したことを検知する検知手段を備えてあるものである。
【0011】
上記構成によると、案内カバーが細断用姿勢から後方へ揺動したことの検知によって排ワラ詰まりの発生を認識することができ、報知や排ワラの供給の停止などの適切な措置を行って、排ワラ詰まりが更に進行することを阻止することが可能となる。
【0012】
第4の発明は、上第3の発明において、
前記検知手段の検知作動に基づいて排ワラ供給を自動停止する制御手段を備えてあるものである。
【0013】
上記構成によると、案内カバーが細断用姿勢から後方へ揺動したことの検知から排ワラ詰まりの発生が認識されると、後続の排ワラの供給を自動的に停止して、強い排ワラ詰まりに発展することを阻止することができ、その後の排ワラ詰まりの除去作業を容易に行うことができる。
【0014】
第5の発明は、上第1〜4のうちのいずれか一つの発明において、
カッタ入口の上方の排ワラ搬送装置を上方および後方から覆う上部カバーと後部カバーを設けるとともに、前記後部カバーを、前方からの設定以上の外力が作用することによって後方への開放揺動を許容するよう構成してあるものである。
【0015】
上記構成によると、排ワラ詰まりの発生によってカッタ入口の上方に大きく排ワラが盛り上がっても、案内カバーが自動的に後方に揺動開放するのみならず、後部カバーも自動的に開放揺動して排ワラの後方へのオーバーフローを促し、案内カバーおよび後部カバーの損傷や変形を未然に回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に、自脱型のコンバインの全体側面が示されている。このコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に刈取り部3が上下揺動可能に連結されるとともに、走行機体2に脱穀装置4とアンローダ付きの穀粒回収タンク5が左右に並列して搭載され、穀粒回収タンク5の前方に原動部を含む運転部6が装備され、かつ、脱穀装置4の後方に排ワラカッタ7と、排ワラカッタ7に脱穀後の排ワラを送り込む排ワラ搬送装置8が配備された構造となっている。
【0017】
刈取り部3には、植立穀稈を所定の刈取り姿勢に引起す左右一対の引起し装置9、引起した植立穀稈を切断するバリカン型の刈取り装置10、引起し刈り取った穀稈を刈幅中間に合流した後、脱穀装置4の機体左側外方に備えられたフィードチェーン11に横倒れ姿勢で送り込む穀稈搬送装置12、等が装備されている。
【0018】
図2に示すように、前記排ワラカッタ7は、上下に開放されたカッタケース13における左右のケース側壁13aに亘って回転受刃14と回転切断刃15とを、前後所定間隔をもって左右水平に対向軸支して、互いに内向きに回転駆動するよう構成した円板型排ワラカッタが利用されている。カッタケース13の上部後寄り箇所には、排ワラ流路切換え用の案内カバー16が後部支点q周りに上下揺動可能に配備されている。
【0019】
案内カバー16を起立揺動した細断用姿勢(a)に保持してカッタ入口Kを開放することで、前記排ワラ搬送装置8から放出供給された排ワラを回転受刃14と回転切断刃15の間に横倒れ姿勢で供給して細断処理することができ、図2中の仮想線で示すように、案内カバー16を前方に倒した放出用姿勢(b)に保持してカッタ入口Kを閉じることで、排ワラを案内カバー16の上面に沿って後方に流して長ワラのまま放出することができるようになっている。
【0020】
図3〜図5に示すように、前記案内カバー16は、その横一側端(この例では左端)に配備された姿勢保持機構17によって細断用姿勢(a)に保持されるようになっている。この姿勢保持機構17は、案内カバー16の横一側端に備えた板バネ材からなる係合部材18と、カッタケース13における左側壁13aの内面に軸支固定したベアリングからなる被係合部材19とで構成されており、係合部材18の端辺に形成した湾曲凹部18aを被係合部材19に上方から係合して、案内カバー16を細断用姿勢(a)に保持するよう構成されている。
【0021】
細断用姿勢(a)に保持された案内カバー16に前方からの設定以上の外力が作用すると、板バネ製の係合部材18がねじれ弾性変形して被係合部材19から外れ、図8に示すように、案内カバー16が後方に揺動して、ケース側壁13aの内面に突設したストッパーピン20に接当する開放位置(c)まで退避するようになっている。
【0022】
前記細断用姿勢(a)の案内カバー16を前方に強く押すと、係合部材18がねじれ弾性変形して被係合部材19から外れて放出用姿勢(b)に切換え揺動することができる。なお、図4に示すように、案内カバー16の左端辺には、細断用姿勢(a)と放出用姿勢(b)との間で案内カバー16が揺動移動する際に、被係合部材19の通過を許容する切欠き21が形成されている。
【0023】
図7,図8に示すように、案内カバー16の基端に備えられた回動支軸16aの右端がカッタケース13における右側壁13bから外方に貫通突設され、この回動支軸16aの突出部にはカム部材22が固設されている。他方、ケース側壁13bの外側には前記カム部材22で押圧操作されるリミットスイッチ23が配備されている。図7に示すように、案内カバー16が細断用姿勢(a)と放出用姿勢(b)にある時にはカム部材22によってリミットスイッチ23が押圧操作され、図8に示すように、案内カバー16が細断用姿勢(a)から後方に揺動すると、カム部材22によるリミットスイッチ23の押圧が解除されるようになっている。
【0024】
前記リミットスイッチ23はエンジン自動停止制御装置に連係されており、案内カバー16が細断用姿勢(a)から後方に揺動したことが検知されると、自動的にエンジン停止が実行されるようになっている。
【0025】
図2,図3に示すように、排ワラ搬送装置8の後部を上方および左右両側から覆う上部カバー25と、排ワラ搬送装置8を後方から覆う後部カバー26とが備えられている。前記後部カバー26は、上部カバー25に前端部の支点r周りに上下揺動可能に支持されるとともに、その横一側端(図では左端)に備えられたロック機構27によって後方カバー姿勢に保持されている。このロック機構27は、後部カバー26に備えられた板バネ製のロック片28を上部カバー25の側壁に備えた先細り係止ピン29に係合させるよう構成されており、後部カバー26に前方からの設定以上の外力が作用すると、ロック片28が弾性変形しながら先細り係止ピン29から外れ、後部カバー26の後方への開放揺動が許容されるようになっている。
【0026】
本発明の排ワラカッタ7は以上のように構成されており、排ワラ細断状態において細断部位に排ワラ詰まりが発生して後続の排ワラがカッタ入口Kの上方に盛り上がり、細断用姿勢(a)にある案内カバー16に前方から大きい押圧力が作用すると、姿勢保持機構17による姿勢保持が自動的に解除されて案内カバー16が後方の開放位置(c)に退避し、排ワラの後方へのオーバーフローが許容される。排ワラの盛り上がりが特に大きい場合には、排ワラによる押圧力によって後部カバー26も自動的に上方に開放揺動し、更に排ワラの後方へのオーバーフローが容易となる。
【0027】
案内カバー16が細断用姿勢(a)から後方に揺動すると、リミットスイッチ23がそれを検知してエンジン自動的制御が実行され、走行の停止、刈取り部3の駆動停止、脱穀装置4の駆動停止、および、脱穀装置4に連動連結された排ワラの搬送装置8と排ワラカッタ7の駆動停止が行われ、後続の排ワラの供給が断たれて排ワラカッタ7における排ワラ詰まりの進行が阻止される。
【0028】
〔他の実施例〕
(1)案内カバー16が細断用姿勢(a)から後方へ揺動したことが検知されると、走行系および刈取り部駆動系の動力断続を司る主クラッチと、脱穀装置4への動力断続を司る脱穀クラッチとを自動的に切って、走行の停止、刈取り部3の駆動停止、脱穀装置4の駆動停止、および、脱穀装置4に連動連結された排ワラ搬送装置8と排ワラカッタ7の駆動停止を行って、エンジン停止を行うことなく排ワラカッタ7への排ワラの供給を停止する形態で実施することもできる。
【0029】
(2)排ワラカッタ7としてシリンダ型カッタを利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】自脱型のコンバインの側面図
【図2】排ワラカッタの縦断左側面図
【図3】排ワラカッタの縦断右側面図
【図4】排ワラカッタの背面図
【図5】姿勢保持機構の背面図
【図6】案内カバーの右端側を示す背面図
【図7】案内カバーを細断用姿勢にした状態の要部を示す右側面図
【図8】案内カバーが開放位置まで揺動した状態の要部を示す右側面図
【図9】後部カバーのロック機構を示す横断平面図
【符号の説明】
【0031】
13 カッタケース
16 案内カバー
17 姿勢保持機構
18 係合部材
19 被係合部材
25 上部カバー
26 後部カバー
a 細断用姿勢
b 放出用姿勢
K カッタ入口
q 横向き支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方上方から供給される排ワラを案内する案内カバーを、カッタケースの上部後方における横向き支点を中心に揺動可能に配備し、前記案内カバーを、カッタ入口を開放して排ワラをカッタケースの内方に導く細断用姿勢と、前記カッタ入口を閉塞して排ワラを機体後方に案内する放出用姿勢とに切換え揺動可能に構成したコンバインの排ワラカッタにおいて、
前記案内カバーを前記細断用姿勢に保持する姿勢保持機構を、前方からの設定以上の外力が案内カバーに作用することを検知して、案内カバーの後方への揺動を許容するよう構成してあることを特徴とするコンバインの排ワラカッタ。
【請求項2】
前記姿勢保持機構を、前記案内カバーに備えた係合部材をカッタケースに固定した被係合部材に係合して前記細断用姿勢に保持するよう構成し、前方からの設定以上の外力が案内カバーに作用することで、前記係合部材あるいは被係合部材係合の少なくとも一方が弾性変形して両者の係合が解除されるよう構成してある請求項1記載のコンバインの排ワラカッタ。
【請求項3】
前記案内カバーが前記細断用姿勢から後方へ揺動したことを検知する検知手段を備えてある請求項1または2記載のコンバインの排ワラカッタ。
【請求項4】
前記検知手段の検知作動に基づいて排ワラ供給を自動停止する制御手段を備えてある請求項3記載のコンバインの排ワラカッタ。
【請求項5】
カッタ入口の上方の排ワラ搬送装置を上方および後方から覆う上部カバーと後部カバーを設けるとともに、前記後部カバーを、前方からの設定以上の外力が作用することによって後方への開放揺動を許容するよう構成してある請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンバインの排ワラカッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−148185(P2009−148185A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327704(P2007−327704)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】