説明

コンバインの排ワラ処理部構造

【課題】開閉蓋を開閉操作する開閉レバーの操作性を維持しつつ、排ワラ切断部の後端から開閉レバーが露出しないようにしたコンバインの排ワラ処理部構造を提供する。
【解決手段】排ワラ切断部9と、排ワラ切断部9の上方の排ワラ導入口を回動軸12回りに開く排ワラ導入状態と、排ワラ導入口を閉じる排ワラ排出状態とに切り換える開閉蓋10と、を備え、開閉蓋10の回動軸12に操作アーム23を一体的に設けると共に、操作アーム23に開閉蓋10の開閉を操作する開閉レバー14を揺動自在に枢支し、操作アーム23と開閉レバー14との相対姿勢を固定及び固定解除自在な係合部23aと被係合部14aとを操作アーム23と開閉レバー14とに各別に設けて、係合部23aと被係合部14aとを係合させて操作アーム23との相対姿勢を固定した開閉レバー14により開閉蓋10を排ワラ導入状態と排ワラ排出状態とに切換自在に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀部から搬送される排ワラを排ワラ切断部によって切断する場合と、排ワラ切断部の後方に案内して落下放出する場合とに排ワラの処理を切り換えるコンバインの排ワラ処理部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインには、脱穀部からの排ワラ搬出経路に排ワラを切断する排ワラ切断部を設けたものが存在する。排ワラ切断部は、その上方に排ワラ導入口を有し、排ワラ導入口を開閉する開閉蓋が設けられている。開閉蓋が閉じた状態は排ワラを後方に排出する排ワラ排出状態であり、開閉蓋が開いた状態は排ワラを排ワラ切断部に導入する排ワラ導入状態である。排ワラ排出状態と排ワラ導入状態との切換えは、開閉蓋の回動軸に一体的に設けられた開閉レバーの操作によって行われる。図16に示される開閉レバー14は、開閉蓋10の回動軸12の上方側において揺動操作されるものであり、開閉レバー14の操作方向と開閉蓋10の開閉方向とが同じになる。一方、特許文献1に示される開閉レバーは、開閉蓋の回動軸の下方側において揺動操作されるものであり、開閉レバーの操作方向と開閉蓋の開閉方向とが反対になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4323591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図16に示される開閉蓋10の開閉レバー14は、操作性を考慮して操作部分が開閉蓋10よりも上方に配置されている。このため、開閉蓋10が開いた排ワラ導入状態では、機体側面視において排ワラ切断部9の後端から後方に開閉レバー14の端部が露出するおそれがある。一方、特許文献1に示される開閉レバーは、開閉蓋の閉じた排ワラ排出状態において排ワラ切断部の最後方に位置する。このとき、開閉レバーは鉛直方向に沿う姿勢であって排ワラ切断部の後端から後方に露出していない。
【0005】
開閉蓋が排ワラ導入状態または排ワラ排出状態において、開閉レバーの一部が機体側面視において排ワラ切断部の後端から後方に露出していると、機体の旋回時に開閉レバーが他物と接触するおそれがある。また、排ワラ切断部のメンテナンス時においても、開閉レバーの一部が排ワラ切断部の後端から後方に露出していると、開閉レバーが作業者に接触するおそれがある。このため、開閉レバーが機体側面視において排ワラ切断部の後端から後方に露出しない方が好ましく、開閉レバーの排ワラ切断部の後端からの露出量を小さくするために、例えば、図16のように、開閉レバー14の中途部を湾曲させてレバー長を短くすることも考えられる。しかし、そうすると、開閉レバー14が通常より短くなる結果、開閉レバー14の操作時において必要な加重は増すことになり、開閉レバー14の操作性が低下する。また、特許文献1のように、開閉レバーの揺動領域を開閉レバーが排ワラ切断部の後端から後方に露出しない範囲に設定した場合においても、開閉レバーの揺動領域が前方に偏ることにより開閉レバーの操作性が低下する。
【0006】
本発明は、開閉蓋を開閉操作する開閉レバーの操作性を維持しつつ、機体側面視において開閉レバーを排ワラ切断部の後端から露出しない位置に収納可能なコンバインの排ワラ処理部構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコンバインの排ワラ処理部構造の第1特徴構成は、脱穀部から搬送される排ワラを切断する排ワラ切断部と、前記排ワラ切断部の上方の排ワラ導入口を回動軸回りに前側を上下に揺動させて開閉し、前記排ワラ導入口を開いて前記排ワラ切断部へ排ワラを導入する排ワラ導入状態と、前記排ワラ導入口を閉じて排ワラを後方へ排出する排ワラ排出状態とに切り換える開閉蓋と、を備えたコンバインの排ワラ処理部構造であって、
前記開閉蓋の前記回動軸に操作アームを一体的に設けると共に、前記操作アームに前記開閉蓋の開閉を操作する開閉レバーを揺動自在に枢支し、前記操作アームと前記開閉レバーとの相対姿勢を固定及び固定解除自在な係合部と被係合部とを前記操作アームと前記開閉レバーとに各別に設けて、
前記係合部と前記被係合部とを係合させて前記操作アームとの相対姿勢を固定した前記開閉レバーにより前記開閉蓋を排ワラ導入状態と排ワラ排出状態とに切換自在に構成してある点にある。
【0008】
〔作用〕
排ワラを切断処理するときには、開閉蓋を開いて排ワラ切断部へ排ワラを導入する排ワラ導入状態にする。閉じ状態の開閉蓋を開くには、操作アームと開閉レバーとに各別に設けられた係合部と被係合部とを係合して操作アームと開閉レバーとの相対姿勢を固定した後、開閉レバーを開閉蓋の回動軸回りに操作する。開閉レバーを開閉蓋の開く方向に操作すると、操作アームを介して回動軸回りに開閉蓋の前側が上方に回動する。
【0009】
排ワラを切断せずにそのまま排出処理するときには、開閉蓋を閉じて排ワラを後方へ排出する排ワラ排出状態にする。開き状態の開閉蓋を閉じるには、操作アームと開閉レバーとに各別に設けられた係合部と被係合部とを係合して操作アームと開閉レバーとの相対姿勢を固定した後、開閉レバーを開閉蓋の回動軸回りに回動操作する。開閉レバーを開閉蓋の閉じ方向に操作すると、操作アームを介して回動軸回りに開閉蓋の前側が下方に回動する。
【0010】
一方、開閉蓋を排ワラ導入状態または排ワラ排出状態に維持する場合には、操作アームと開閉レバーとに各別に設けられた係合部と被係合部との係合を解除することで、開閉レバーと操作アームとの相対姿勢を変更することができる。したがって、仮に、開閉蓋が排ワラ導入状態または排ワラ排出状態において、開閉レバーが排ワラ切断部の後端から後方に露出する場合等のように不都合な位置に存在したとしても、操作アームと開閉レバーとの係合状態を解除することで、開閉蓋及び操作アームの位置を保持したまま、開閉レバーを回動領域のうちの所望の収納位置に移動させることができる。
【0011】
〔効果〕
このように、開閉蓋が排ワラ導入状態または排ワラ排出状態において、開閉蓋及び操作アームの位置を変えずに開閉レバーの位置だけを変更できるので、コンバインの旋回時や排ワラ切断部のメンテナンス時等において開閉レバーが邪魔にならず、コンバインにおける作業性が向上する。
【0012】
本発明のコンバインの排ワラ処理部構造の第2特徴構成は、前記開閉蓋が排ワラ導入状態または排ワラ排出状態において前記係合部と前記被係合部との係合により前記操作アームとの相対姿勢が固定された前記開閉レバーを前記排ワラ切断部の後端から後方に露出するように構成し、前記開閉レバーの一方側の端部に前記操作アームに対する枢支部を設けると共に、他方側の端部と前記一方側の端部との間の位置に前記係合部または前記被係合部を設けた点にある。
【0013】
〔作用〕
開閉蓋が排ワラ導入状態または排ワラ排出状態において、係合部と被係合部との係合により操作アームとの相対姿勢が固定された開閉レバーを排ワラ切断部の後端から後方に露出するよう構成すると、通常、開閉レバーの端部(操作部)が露出するため、開閉レバーの操作部の位置は開閉レバーの枢支部及び係合部(被係合部)の位置よりも機体後方になる。ここで、仮に、開閉レバーの中間部に操作アームに対する枢支部を設けると共に、一方の端部に係合部または被係合部を設けると、係合部の位置が枢支部の位置よりも前方になる。このため、操作アームとの相対姿勢の固定を解除した開閉レバーが自重によって枢支部に支持される位置は係合部(または被係合部)よりも機体後方側になる。
一方、本構成のように、開閉レバーの一方側の端部に操作アームに対する枢支部を設けると共に、開閉レバーの中間部に係合部または被係合部を設けると、係合部と被係合部との係合により操作アームとの相対姿勢が固定された開閉レバーの枢支部の位置が係合部(または被係合部)の位置よりも前方になる。これにより、操作アームとの相対姿勢の固定を解除した開閉レバーが自重によって枢支部に支持される位置は係合部(または被係合部)よりも機体前方側になる。すなわち、本構成の方が、開閉レバーの枢支部を機体前方に配置し易い。
【0014】
〔効果〕
開閉レバーの枢支部が機体前方に配置されると、操作アームから離脱した後の開閉レバー全体も自重によって機体前方に移動する。その結果、開閉レバーを自重のみで排ワラ切断部の後端より機体前方側の収納位置に移動させ易くなり、開閉レバーの操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】コンバインの全体を示す左側面図である。
【図2】コンバインの全体を示す平面図である。
【図3】コンバインの全体を示す右側面図である。
【図4】コンバインの後部を示す平面図である。
【図5】コンバインの後部を示す側断面図である。
【図6】開閉蓋が閉じた状態の排ワラ切断部を示す側面図である。
【図7】排ワラ切断部における操作アームと開閉レバーとの係合状態を示す背面図である。
【図8】排ワラ切断部の開閉蓋が閉じた状態のときの開閉レバーの状態を示す側面図であって、(a)は開閉レバーが操作アームに係合した状態、(b)は開閉レバーが操作アームから離脱した状態を示す。
【図9】排ワラ切断部の開閉蓋が開いた状態のときの開閉レバーの状態を示す側面図である。
【図10】コンバインの右後部を示す側面図である。
【図11】コンバインの右後部を示す平面図である。
【図12】コンバインの左後方カバー部の側面図である。
【図13】コンバインの左後方カバー部の背面図である。
【図14】別実施形態における排ワラ切断部の開閉蓋が閉じた状態のときの開閉レバーの状態を示す側面図であって、(a)は開閉レバーが操作アームに係合した状態、(b)は開閉レバーが操作アームから離脱した状態を示す。
【図15】図14(a)のXV−XV矢視断面図である。
【図16】従来の排ワラ切断部の開閉蓋の開閉状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、コンバインは、クローラ走行装置1によって自走するように構成され、かつ乗用型の運転部2が装備された走行機体と、走行機体の機体フレーム3の前部に連結された刈取り部4と、機体フレーム3の後部側に機体横方向に並べて設けられた脱穀装置5と穀粒タンク6と、スクリュー式アンローダ7と、脱穀装置5(脱穀部に相当)の後部に連結された排ワラ処理部8とを備えて構成され、稲、麦などの収穫作業を行なう。
【0017】
すなわち、刈取り部4は、機体フレーム3から上下揺動自在に延出する刈取り部フレーム4aを備え、この刈取り部フレーム4aが昇降シリンダ30によって揺動操作されることにより、刈取り部4の前端部に設けられた分草具4bが地面付近に下降した下降作業位置と分草具4bが地面から高く上昇した上昇非作業位置とに昇降する。刈取り部4を下降作業位置に下降させて走行機体を走行させると、刈取り部4は、分草具4bによって刈取対象の植立穀稈を引起し経路に導入する。引起し経路に導入した植立穀稈を引起し装置4cによって引起すとともにバリカン型の刈取装置4dによって刈り取り、刈取り穀稈を供給装置4eによって脱穀装置5に供給する。脱穀装置5は、供給された刈取り穀稈を脱穀処理して脱穀粒を穀粒タンク6に送り込む。スクリュー式アンローダ7は、穀粒タンク6から穀粒を排出する。排ワラ処理部8は、脱穀装置5からの脱穀排ワラを稈身方向に細断処理するか、細断せずにそのまま排出する。
【0018】
図4及び図5に示すように、排ワラ処理部8は、排ワラを切断する排ワラ切断部9と、排ワラ切断部9の上方の排ワラ導入口11を開閉する開閉蓋10とを備える。排ワラ切断部9は、脱穀装置5の機体後部に連結された細断ケース90と、細断ケース90の内部に回転自在に設けた一対の回転軸92,93と、細断ケース90の横外側に設けた駆動機構94とを備えて構成してある。
【0019】
一対の回転軸92,93は、排ワラ導入口11の下方に脱穀装置前後方向に所定間隔を隔てて並べて細断ケース90の左右の側壁96に回転自在に支持されている。一対の回転軸92,93の脱穀装置後方側の回転軸92には、複数枚の円盤型のカッタ97を回転軸92の軸芯方向に所定間隔を隔てて並べて一体回自在に設け、一対の回転軸92,93の脱穀装置前方側の回転軸93には、複数枚の円盤型の供給体98を回転軸93の軸芯方向に所定間隔を隔てて並べて一体回転自在に設けてある。
【0020】
駆動機構94は、脱穀装置5から伝達される駆動力を変速して一対の回転軸92,93に伝達し、一対の回転軸92,93が図4に示す回転方向A,Bに回転するように、かつカッタ97を設けてある回転軸92が供給体98を設けてある回転軸93より高速で回転するように一対の回転軸92,93を駆動する。
【0021】
従って、排ワラ切断部9は、排ワラ導入口11が開閉蓋10によって開閉されることにより、排ワラ搬送部20からの脱穀排ワラを細断せずに長ワラのままで放出する長ワラ放出形態と、排ワラ搬送部20からの脱穀排ワラを細断処理して放出する細断放出形態とに切り換わる。
【0022】
すなわち、開閉蓋10が閉じ操作されて排ワラ導入口11が閉鎖されると、排ワラ搬送部20によって細断ケース90の上に落下された脱穀排ワラが閉じ姿勢の開閉蓋10による落下案内を受けて細断ケース90から脱穀装置5の後方に落下する。
【0023】
開閉蓋10が開き操作されて排ワラ導入口11が開放されると、排ワラ搬送部20によって細断ケース90の上に落下された脱穀排ワラが排ワラ導入口11から細断ケース90の内部に落下し、細断ケース90の内部に落下した脱穀排ワラを、回転方向Bに回転する供給体98と回転方向Aに回転するカッタ97とによって供給体98とカッタ97の間に掻き込んで複数枚のカッタ97によって稈身方向に細断し、細断ワラを一対の回転軸92,93の間から落下させ、細断ケース90の下部に設けてある放出口から脱穀装置5の後方に落下させる。
【0024】
図6及び図7に示すように、開閉蓋10の開閉は、排ワラ切断部9の右側部に設けられた開閉レバー14の操作によって行う。開閉レバー14は、回動軸12を介して開閉蓋10と連結されている。詳述すると、機体左右方向に長い略長方形状の開閉蓋10の基端部に機体左右方向の回動軸12が一体的に取付けられている。回動軸12は、排ワラ切断部9の内部の左右の側壁を形成する左右の側板18(左側板は図示しない)の後部上側に回動自在に軸支されており、右側端部が右側板18から機体側方に突出している。
【0025】
回動軸12の右端には延長アーム13が延設されており、この延長アーム13に右側板18と略平行に形成された操作アーム23が固定されている。開閉レバー14の一方側の端部14Aに操作アーム23に対するピン状の枢支部15が設けられている。開閉レバー14は、右側板18と略平行であり、操作アーム23を介して開閉蓋10と一体回動する。
【0026】
操作アーム23には、開閉レバー14に向かって係合ピン23aが突設されている。開閉レバー14には、一方側の端部14Aと他方側の端部14Bとの間の位置に係合ピン23aに対応する係合孔14aが形成されている。操作アーム23の係合ピン23aに開閉レバー14の係合孔14aを挿入して両者を係合状態にすると、回動軸12回りに開閉レバー14と操作アーム23とが一体回動する。なお、枢支部15には、開閉レバー14を操作アーム23側に付勢するバネSが備えられており、バネSを弾性変形させつつ開閉レバー14を操作アーム23に対して近接離間することで、係合ピン23aと係合孔14aとの係合及び離脱を可能にしている。
【0027】
操作アーム23の係合ピン23aに開閉レバー14の係合孔14aを係合させて操作アーム23と開閉レバー14との相対姿勢を固定させた状態で、開閉レバー14を機体前方に回動操作すると、操作アーム23を介して開閉蓋10が上方回動して開いた排ワラ導入状態となる。また、同じく係合ピン23aに係合孔14aを係合させて操作アーム23と開閉レバー14との相対姿勢を固定させた状態で、開閉レバー14を機体後方に回動操作すると、操作アーム23を介して開閉蓋10が下方回動して閉じた排ワラ排出状態となる。一方、係合ピン23aと係合孔14aとの係合を解除すると、操作アーム23と開閉レバー14との相対姿勢の固定も解除される。
【0028】
図6及び図7に示すように、回動軸12の延長アーム13には開閉蓋10を閉じ方向または開き方向に付勢する引っ張りコイルバネ24が設けられている。引っ張りコイルバネ24は、一端部24aが右側板18に設けられたピン部材18aに連結されており、他端部24bが回動軸12の延長アーム13の側部に設けられたピン部材13aに連結されている。
開閉蓋10が閉じ方向に操作されると、延長アーム13の姿勢変更に伴って引っ張りコイルバネ24の他端部24bが機体後方に移動し、引っ張りコイルバネ24の付勢力は開閉蓋10の閉じ方向に働く。反対に、開閉蓋10が開き方向に操作されると、延長アーム13の姿勢変更に伴って引っ張りコイルバネ24の他端部24bが機体前方に移動し、引っ張りコイルバネ24の付勢力は開閉蓋10の開き方向に働く。すなわち、引っ張りコイルバネ24は、開閉蓋10の開閉操作を補助しつつ、開閉蓋10の開閉状態が維持されるように作用する。
【0029】
上述の通り、係合ピン23a及び係合孔14aによって操作アーム23と開閉レバー14との相対姿勢は固定及び固定解除自在に構成されている。
図8(a)のように、開閉蓋10が閉じた排ワラ排出状態において、係合ピン23aと係合孔14aとの係合により操作アーム23との相対姿勢を固定した開閉レバー14の端部14Bが機体側面視において排ワラ切断部9の後端から後方に露出する場合であっても、操作アーム23の係合ピン23aから開閉レバー14の係合孔14aを離脱させると、図8(b)に示すように、開閉レバー14は自重により枢支部15から鉛直方向に姿勢変更する。その結果、開閉レバー14は、開閉蓋10が閉じた排ワラ排出状態であっても機体側面視において排ワラ切断部9の後端から露出しない位置に収納される。
【0030】
図8(a)に示される開閉蓋10が閉じた排ワラ排出状態では、開閉レバー14の長手方向は閉じ姿勢に傾斜した開閉蓋10に連続するように、開閉蓋10と同様の角度で後方斜め下方に向く姿勢となる。これにより、開閉レバー14を操作する上で端部14Bが持ち易くなる。また、開閉蓋10が閉じた排ワラ排出状態から開閉蓋10が開く排ワラ導入状態にする際に、後方斜め下方に向く姿勢の開閉レバー14を機体前方に向けて操作できるため開閉レバー14の使い勝手がよい。さらに、機体前後方向における開閉レバー14の姿勢と開閉蓋10の姿勢がほぼ同じになるので、開閉レバー14の姿勢と開閉蓋10の姿勢が異なることによる違和感がなく開閉レバー14の操作性が良い。図8(b)に示される開閉レバー14は、排ワラ切断部9の後端から露出しない位置であって枢支部15から垂下された姿勢である。したがって、開閉レバー14の係合孔14aを再度操作アーム23の係合ピン23aに係合させる場合にも、端部14Bを持って開閉レバー14を機体後方に移動させる操作を容易に行うことができる。
【0031】
図9は、排ワラ切断部9の開閉蓋10が開いた排ワラ導入状態を示す。図9に示されるように、開閉蓋10が開いた排ワラ導入状態では、開閉レバー14は全体が排ワラ切断部9の後端より機体前方側に位置している。このため、開閉蓋10が排ワラ導入状態においては、開閉レバー14は操作アーム23に係合した状態で保持されたままでもよい。
【0032】
図6〜図9では、開閉レバー14は、枢支部15及び係合孔14aのうち、枢支部15を端部14A寄りに設けているが、反対に、係合孔14aを端部14A寄りに設けてもよい。ただ、係合ピン23aと係合孔14aとの係合により操作アーム23との相対姿勢が固定された開閉レバー14の端部14Bが排ワラ切断部9の後端から後方に露出する状態では、枢支部15を開閉レバー14の一方側の端部14A寄りに設け、係合孔14aを一方側の端部14Aと他方側の端部14Bとの間に設けた方が、開閉レバー14の枢支部15は係合孔14aよりも機体前方側の位置になる。このため、開閉レバー14は、操作アーム23との相対姿勢の固定を解除(係合ピン23aと係合孔14aとの係合を解除)して排ワラ切断部9の後端より機体前方側の収納位置に移動させる際に、開閉レバー14全体をその自重によって機体前方側に移動させ易い。
【0033】
図3及び図10に示すように、スクリュー式アンローダ7は、穀粒タンク6の内底部に配置された横送り用の底スクリューコンベアからの穀粒を揚送するスクリューコンベア式の縦送り筒71、及び、縦送り筒71からの穀粒を横送りして排出するスクリューコンベア式の横送り排出筒72を備える。横送り排出筒72が油圧シリンダ73により上下揺動し、縦送り筒71及び横送り排出筒72が電動モータ等の駆動装置74により旋回することで、穀粒を所望の場所に取り出せるようにしてある。駆動装置74に連動する小径ギア76を縦送り筒71の上部に固定した大径ギア77に咬合させて、横送り排出筒72に駆動装置74を連動させている。
【0034】
図10及び図11に示すように、排ワラ切断部9の上方側に大径ギア77の側部を覆う板状のカバー78が設けてある。排ワラ搬送部20の天板79には下方向きのブラケット79aが延設されており、このブラケット79aにカバー78の上部がボルト等で固定されている。また、カバー78は、図11に示されるように、平面視において機体後方側が大径ギア77の後部を覆う向きに中途部が屈曲している。
【0035】
図1、図12及び図13に示されるように、コンバインの左側部のカバーとして、脱穀部カバー25と後部カバー26とが機体前後に隣接されて設けられている。後部カバー26は、排ワラ切断部9の下方に位置する。後部カバー26には後壁部27が設けられており、この後部カバー26によって燃料タンク28の側部及び後部が覆われている。したがって、後部カバー26の内側下方の領域にはワラやゴミが堆積しやすい。このため、図12及び図13に示されるように、後部カバー26は、その下部26Aに底部を設けずに圃場面に連通する空間を機体フレーム3との間に形成している。これにより、排ワラ切断部9によって排ワラが切断されても、切断されたワラやゴミ等は後部カバー26の下部26Aには堆積せずに圃場に落下する。
【0036】
[第2実施形態]
本実施形態では、図14、図15に示すように、開閉レバー14が、基部側板材16の一部と、操作部側板材17の一部とを重ね合わせボルト16aで接合されている。図14(a)及び図15に示す、操作アーム23と開閉レバー14との相対姿勢の固定状態では、操作アーム23の端面23Aと開閉レバー14の操作部側板材17の基部側端面17Aとが面接触するように構成されている。このため、操作アーム23と開閉レバー14とは、操作アーム23の係合ピン23aに開閉レバー14の係合孔14aが係合すると同時に、操作アーム23の端面23Aと開閉レバー14の操作部側板材17の基部側端面17Aとが面接触して係合する。これにより、開閉レバー14と操作アーム23との係合部分の面積が増し、開閉レバー14の操作時に操作アーム23に付与される荷重が分散する。その結果、開閉レバー14及び操作アーム23の耐久性が向上する。
【0037】
図14(b)に示されるように、操作アーム23との相対姿勢の固定が解除された開閉レバー14は、その自重により枢支部15から鉛直方向に姿勢変更する。
なお、基部側板材16は、硬質材料で構成してもよいが、弾性を有する材料で構成すると、図15に示すように、基部側板材16を弾性変形させつつ開閉レバー14を操作アーム23に対して近接離間することができ、係合ピン23aと係合孔14aとの係合及び離脱が容易になる。
また、操作アーム23と開閉レバー14とに各別に設けられる係合部及び被係合部を、操作アーム23の端面23Aと開閉レバー14の操作部側板材17の基部側端面17Aとの面接触部分のみで構成してもよい。
図15において、バネSに代えてバネSの位置に複数の座金(図示せず)を入れて、基部側板材16の弾性変形のみで、開閉レバー14を操作アーム23に対して近接離間することができるように構成してもよい。
【0038】
〔他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、開閉レバー14が真直ぐな部材の例を示したが、開閉レバー14は真直ぐな部材に限定されず、例えば中途部が屈曲した構成であってもよい。
【0039】
(2)上記の実施形態では、開閉レバー14は開閉蓋10の揺動方向とは反対方向に操作する構成であったが、開閉レバー14及び操作アーム23を上向きに設定し、開閉レバー14は開閉蓋10の揺動方向と同方向に操作する構成であってもよい。
【0040】
(3)上記の実施形態では、開閉レバー14と操作アーム23との係合状態が解除されると、開閉レバー14が自重により収納位置に移動する構成であったが、操作アーム23との係合状態が解除された開閉レバー14は排ワラ切断部9の側部に別途設けられた係止部に係止して収納保持するよう構成してもよい。
【0041】
(4)上記の実施形態では、操作アーム23に係合部(係合ピン)23aを設け、開閉レバー14に被係合部(係合孔)14aを設ける例を示したが、反対に、開閉レバー14に係合部を設け、操作アーム23に被係合部を設けてもよい。
【0042】
(5)上記の実施形態では、操作アーム23と係合状態にある開閉レバー14が、開閉蓋10が排ワラ排出状態のときのみ排ワラ切断部9の後端から後方に露出する構成を示したが、開閉蓋10が排ワラ導入状態において、操作アーム23と係合状態の開閉レバー14が排ワラ切断部9の後端から後方に露出し、開閉蓋10が排ワラ排出状態において、操作アーム23と係合状態の開閉レバー14が排ワラ切断部9の後端から後方に露出しない構成でもよい。また、開閉蓋10が排ワラ導入状態及び排ワラ排出状態の両方において、操作アーム23と係合状態の開閉レバー14が排ワラ切断部9の後端から後方に露出する構成でもよい。
【0043】
(6)上記の実施形態では、開閉蓋10の開閉レバー14を排ワラ切断部9に対して機体右側側面に配置したが、開閉レバー14は排ワラ切断部9に対して機体左側側面に配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、コンバインの排ワラ処理部に関するものであり、その排ワラ処理部としては種々のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0045】
5 脱穀部
8 排ワラ処理部
9 排ワラ切断部
10 開閉蓋
11 排ワラ導入口
12 回動軸
14 開閉レバー
14A 端部
14B 端部
14a 係合孔(被係合部)
15 枢支部
16 基部側板材
17 操作部側板材
17A 基部側端面
23 操作アーム
23a 係合ピン(係合部)
23A 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀部から搬送される排ワラを切断する排ワラ切断部と、前記排ワラ切断部の上方の排ワラ導入口を回動軸回りに前側を上下に揺動させて開閉し、前記排ワラ導入口を開いて前記排ワラ切断部へ排ワラを導入する排ワラ導入状態と、前記排ワラ導入口を閉じて排ワラを後方へ排出する排ワラ排出状態とに切り換える開閉蓋と、を備えたコンバインの排ワラ処理部構造であって、
前記開閉蓋の前記回動軸に操作アームを一体的に設けると共に、前記操作アームに前記開閉蓋の開閉を操作する開閉レバーを揺動自在に枢支し、前記操作アームと前記開閉レバーとの相対姿勢を固定及び固定解除自在な係合部と被係合部とを前記操作アームと前記開閉レバーとに各別に設けて、
前記係合部と前記被係合部とを係合させて前記操作アームとの相対姿勢を固定した前記開閉レバーにより前記開閉蓋を排ワラ導入状態と排ワラ排出状態とに切換自在に構成してあるコンバインの排ワラ処理部構造。
【請求項2】
前記開閉蓋が排ワラ導入状態または排ワラ排出状態において前記係合部と前記被係合部との係合により前記操作アームとの相対姿勢が固定された前記開閉レバーを前記排ワラ切断部の後端から後方に露出するように構成し、前記開閉レバーの一方側の端部に前記操作アームに対する枢支部を設けると共に、他方側の端部と前記一方側の端部との間の位置に前記係合部または前記被係合部を設けた請求項1記載のコンバインの排ワラ処理部構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−231713(P2012−231713A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101472(P2011−101472)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】