説明

コンバインの操作装置

【課題】 移動走行の際、クラッチ操作手段を誤操作されることがあっても、刈取り部と脱穀装置とが駆動されないようにする。
【解決手段】 刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを切り換え操作する人為操作自在なクラッチ操作手段25と、走行変速装置13を変速操作する人為操作自在な変速操作具24とを備えている。クラッチ操作手段25による刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14との入り状態への切り換えを牽制する作用状態と、クラッチ操作手段25による刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14との入り状態への切り換えを許容する作用解除状態とに切り換え自在なクラッチ牽制手段45を備えている。走行変速装置13が低速側に操作されると、クラッチ牽制手段45が作用解除状態になり、走行変速装置13が高速側に操作されると、クラッチ牽制手段45が作用状態になるよう走行変速装置13とクラッチ牽制手段45とを連係させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取りクラッチと脱穀クラッチとを切り換え操作する人為操作自在なクラッチ操作手段と、走行変速装置を変速操作する人為操作自在な変速操作具とを備えたコンバインの操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインにおいて、刈取りクラッチと脱穀クラッチとを切り換え操作する人為操作自在なクラッチ操作手段を備えたものとして、従来、たとえば特許文献1に記載されたものがあった。
特許文献1に記載されたコンバインでは、刈取りクラッチのテンションアームに操作ケーブルと連動リンクとを介して連動された揺動自在なクラッチ操作部と、このクラッチ操作部を操作する刈取りクラッチ用カムと、脱穀クラッチのテンションアームに操作ケーブルと連動リンクとを介して連動された揺動自在なクラッチ操作部と、このクラッチ操作部を操作する脱穀クラッチ用カムとを備え、前記刈取りクラッチ用カムと前記脱穀クラッチ用カムとが一体回転自在に連結している回転ボスに一体回転自在に設けたギヤ部と、このギヤ部に出力ギヤが噛合ったモータとを備え、このモータに連係された制御装置と、この制御装置に連係されたクラッチ操作スイッチ(クラッチ操作手段に相当)とを備えている。
制御装置は、クラッチ操作スイッチが切り換え操作されると、モータを操作して回転ボスを回転操作することにより、刈取りクラッチ用カムを回転操作してクラッチ操作部を揺動操作することによって刈取りクラッチを切り換え操作し、脱穀クラッチ用カムを回転操作してクラッチ操作部を揺動操作することによって脱穀クラッチを切り換え操作する。
【0003】
【特許文献1】特開2002−262643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したコンバインでは、作業走行の際、植立穀稈の倒伏の有無や刈取り条数の多少によって走行速度を変更することができるように、移動走行の際、作業時よりも高速で走行することができるように、走行変速装置と、この走行変速装置を変速操作する人為操作自在な変速操作具とを備えられる。
この種のコンバインにおいて、移動走行の際、クラッチ操作手段を誤操作されることがあると、刈取り部や脱穀装置が駆動され、動力ロスが発生する。また、摩滅が発生しやすくなる。
【0005】
本発明の目的は、クラッチ操作手段の誤操作があっても、上記したトラブルの発生を回避できるコンバインを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、刈取りクラッチと脱穀クラッチとを切り換え操作する人為操作自在なクラッチ操作手段と、走行変速装置を変速操作する人為操作自在な変速操作具とを備えたコンバインの操作装置において、
前記クラッチ操作手段による前記刈取りクラッチと前記脱穀クラッチとの入り状態への切り換えを牽制する作用状態と、前記クラッチ操作手段による前記刈取りクラッチと前記脱穀クラッチとの入り状態への切り換えを許容する作用解除状態とに切り換え自在なクラッチ牽制手段を備え、
前記走行変速装置が低速側に操作されると、前記クラッチ牽制手段が前記作用解除状態になり、前記走行変速装置が高速側に操作されると、前記クラッチ牽制手段が前記作用状態になるよう前記走行変速装置と前記クラッチ牽制手段とを連係させてある。
【0007】
本第1発明の構成によると、走行変速装置を高速側に変速操作して走行される際、クラッチ操作手段をクラッチ入り側に操作されても、クラッチ牽制手段が作用状態になっていて刈取りクラッチと脱穀クラッチとの入り状態への切り換わりを牽制する。
【0008】
これにより、移動走行の際、クラッチ操作手段を誤操作されることがあっても、刈取り部と脱穀装置とが駆動されず、動力ロスと摩滅が発生しなくて燃料の浪費と使用寿命の低下を防止しながら走行できる有利なコンバインを得ることができる。
【0009】
本第2発明は、前記刈取りクラッチと前記脱穀クラッチとを入り状態に切り換え操作された際、エンジンが設定高回転速度よりも低速であれば、前記設定高回転速度に増速操作されるよう構成してある。
【0010】
本第2発明の構成によると、刈取りクラッチと脱穀クラッチとが入り状態に切り換え操作されると、エンジンがアイドリングなどの低速になっていても、作業用に設定した高回転速度に自ずと増速操作され、刈取り部と脱穀装置とを必要回転数で駆動させながら作業を行うことができる。
【0011】
これにより、刈取りクラッチと脱穀クラッチとを入り状態に切り換え操作するだけで、エンジンが高回転速度に自ずと増速操作されて刈取り部と脱穀部とが必要回転数で駆動され、刈取り不良や脱穀不良を伴わないで作業できる便利なコンバインを得ることができる。
【0012】
本第3発明は、脱穀深さを設定深さに維持する扱深さ制御手段を備え、
前記クラッチ操作手段による刈取りクラッチと脱穀クラッチとの入り状態への切り換えに連係して前記扱き深さ制御手段が切りから入りに切り換わるよう構成してある。
【0013】
本第3発明の構成によると、刈取りクラッチと脱穀クラッチとが入り状態に切り換え操作されると、扱き深さ制御手段が入りに自ずと切り換わり、脱穀深さを設定深さに維持させながら作業を行うことができる。
【0014】
これにより、刈取りクラッチと脱穀クラッチとを入り状態に切り換え操作するだけで、扱き深さ制御手段が自ずと入りに切り換え操作されて扱き深さ制御が行われ、脱穀深さが設定深さに維持されて脱穀不良のない脱穀が行われる便利なコンバインを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るコンバインの側面図である。図2は、本発明の実施例に係るコンバインの平面図である。これらの図に示すように、本発明の実施例に係るコンバインは、左右一対のクローラ式の走行装置1によって自走するよう構成され、かつ運転座席2が装備された運転部を有した走行機体と、この走行機体の機体フレーム3の前部に連結された刈取り部4とを備え、前記機体フレームの後部側に走行機体横方向に並べて設けた脱穀装置5と穀粒タンク6とを備え、脱穀装置5の後部に設けた排ワラカッタ装置9を備えている。
【0016】
このコンバインは、稲、麦などを収穫する。
すなわち、刈取り部4の刈取り部フレーム4aが機体フレーム3に上下揺動自在に連結されており、刈取り部4は、刈取り部フレーム4aが油圧シリンダ7によって上下に揺動操作されることにより、刈取り部4の前部に走行機体横方向に並んで位置する三つのデバイダ4bが地面近くに下降した下降作業状態と、前記デバイダ4bが地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降する。刈取り部4を下降作業状態にして走行機体を走行させると、刈取り部4は、刈取り対象の植立穀稈を前記デバイダ4bによって左右一対の引起し装置4c,4cのうちの対応する引起し装置4cに導入して引起し処理し、各引起し装置4c、4cによる引起し穀稈を一つのバリカン形の刈取り装置4dによって刈取り処理し、刈取り穀稈を供給搬送装置4eによって機体後方向きに搬送して脱穀装置5の脱穀フィードチェーン5aに供給する。
【0017】
脱穀装置5は、脱穀フィードチェーン5aによって刈取り穀稈の株元側を機体後方向きに挟持搬送し、これによって刈取り穀稈の穂先側を扱室(図示せず)に供給して脱穀処理する。穀粒タンク6は、脱穀装置5からの脱穀粒を回収して貯留し、貯留した脱穀粒をオーガ8によって搬出する。排ワラカッタ装置9は、脱穀装置5から搬出された脱穀排ワラを細断処理して圃場に落下放出する。
【0018】
前記三つのデバイダ4bのうちの中間に位置するデバイダ4bを中デバイダ4bと呼称し、運転部に最も近いデバイダ4bを運転部側デバイダ4bと呼称し、運転部から最も遠いデバイダ4bを反運転部側デバイダ4bと呼称する。
図2に示すように、三つのデバイダ4bは、中デバイダ4bと運転部側デバイダ4bとの先端どうしの走行機体横方向での間隔D1が、中デバイダ4bと反運転部側デバイダ4bとの先端どうしの走行機体横方向での間隔D2よりも大になり、かつ運転部側デバイダ4bが運転部の直前方に位置した配置になっている。
【0019】
図15(a)は、刈取り部4の回り刈り作業状態での平面図である。この図に示すaは、刈取り対象の植立穀稈を示し、bは、未刈り地の植立穀稈を示す。この図に示すように、刈取り部4は、回り刈り作業の際、中デバイダ4bと運転部側デバイダ4bとの間に一つの植付け条の植立穀稈を導入し、中デバイダ4bと反運転部側デバイダ4bとの間に一つの植付け条の植立穀稈を導入する。すなわち、刈取り部4は、回り刈り作業の際、二条刈りを行う。
【0020】
図15(b)は、刈取り部4の中割り作業状態での平面図である。この図に示すaは、刈取り対象の植立穀稈を示し、bは、未刈り地の植立穀稈を示す。この図に示すように、刈取り部4は、中割り作業の際、中デバイダ4bと運転部側デバイダ4bとの間に二つの植付け条の植立穀稈を導入し、中デバイダ4bと反運転部側デバイダ4bとの間に一つの植付け条の植立穀稈を導入する。すなわち、刈取り部4は、中割り作業の際、三条刈りを行う。刈取り部4は、畦際を畦に沿って走行しながら刈取りを行う作業、すなわち周囲刈り作業の際も、中割り作業の際と同様に三条刈りを行う。
【0021】
前記走行機体は、前記運転座席2の下方に設けたエンジン10を備えている。図3は、前記エンジン10の出力を前記左右一対の走行装置1,1と前記刈取り部4と前記脱穀装置5とに伝達するよう走行機体に設けた伝動装置の概略図である。この図に示すように、前記伝動装置は、エンジン10の出力軸10aの駆動力を、ベルト伝動機構11を介して走行変速装置13の入力軸13aに伝達し、この走行変速装置13の出力軸13bの駆動力をミッションケース12の内部に位置する走行副変速装置19を介して左右一対の走行装置1、1に伝達する。
前記伝動装置は、前記エンジン10の出力軸10aの駆動力を、脱穀クラッチ14を介して脱穀装置5の入力軸5bに伝達する。
前記伝動装置は、前記走行変速装置13の入力軸13aの駆動力を前記ミッションケース12の内部に位置する刈取り変速装置15に入力し、この刈取り変速装置15の出力軸16の駆動力を、刈取りクラッチ17を介して刈取り部4の入力軸4fに伝達する。
【0022】
前記走行変速装置13は、前記ミッションケース12に連設されている。この走行変速装置13は、前記入力軸13aをポンプ軸として備えた可変容量形で、かつアキシャルプランジャ形の油圧ポンプと、この油圧ポンプからの圧油によって駆動され、前記出力軸13bをモータ軸として備えたアキシャルプランジャ形の油圧モータとを備えて構成してある。つまり、走行変速装置13は、静油圧式無段変速装置になっており、油圧ポンプの斜板角を変更操作されることによって前進状態と中立状態と後進状態とに切り換わり、前進状態では、エンジン10からの駆動力を前進側の駆動力に変換して、かつ無段階に変速して出力し、後進状態では、エンジン10からの駆動力を後進側の駆動力に変換して、かつ無段階に変速して出力し、中立状態では、出力を停止する。
【0023】
図3,6に示すように、前記脱穀クラッチ14は、エンジン10の出力軸10aと脱穀装置5の入力軸5bとに巻回された伝動ベルト14aと、前記入力軸5bに支持されたテンションアーム14bとを備えて構成してあり、ベルトテンションクラッチになっている。
テンションアーム14bは、入力軸5bの軸芯まわりに揺動操作されることにより、テンション輪体14cによって伝動ベルト14aを伝動用の緊張状態に加圧操作して脱穀クラッチ14を入り状態に切り換え、テンション輪体14cによる伝動ベルト14aの加圧操作を解除して脱穀クラッチ14を切り状態に切り換える。
【0024】
図3,6に示すように、前記刈取りクラッチ17は、刈取り変速装置15の出力軸16と刈取り部4の入力軸4fとに巻回された伝動ベルト17aと、前記出力軸16に支持されたテンションアーム17bとを備えて構成したあり、ベルトテンションクラッチになっている。
テンションアーム17bは、出力軸16の軸芯まわりに揺動操作されることにより、テンション輪体17cによって伝動ベルト17aを伝動用の緊張状態に加圧操作して刈取りクラッチ17を入り状態に切り換え、テンション輪体17cによる伝動ベルト17aの加圧操作を解除して刈取りクラッチ17を切り状態に切り換える。
【0025】
図4は、前記走行変速装置13と前記刈取りクラッチ17と前記脱穀クラッチ14とを操作するよう前記走行機体に設けた操作装置Aのブロック図である。この図に示すように、前記操作装置Aは、レバー形の変速操作具24と、変速操作具24に連動させた操作位置検出手段41と、クラッチ操作手段25とを備え、前記操作位置検出手段41と前記クラッチ操作手段25とに連係された制御手段42を備え、この制御手段42に連係された電動モータ22と、前記制御手段42に連係された操作体位置検出手段43とを備えて構成してある。
【0026】
図2に示すように、前記変速操作具24は、運転座席2の横側方に位置するサイドパネル23に設けてある。図13は、前記変速操作具24の操作位置を示す平面図である。この図に示すように、変速操作具24は、前記サイドパネル23に設けたガイド溝23aに沿わせて走行機体前後方向に揺動操作されることにより、中立位置Nと、この中立位置Nよりも走行機体後方側に位置した後進域Rと、前記中立位置Nよりも走行機体前方側に位置した第一作業域FLと、この第一作業域FLよりも走行機体前方側に位置した第二作業位置FMと、この第二作業位置FMよりも走行機体前方側に位置した移動域FHとに切り換わる。
この変速操作具24は、前記した各操作位置に操作されることにより、連動ロッドを利用した機械式の連動機構26を介して走行変速装置13の変速操作部13cを揺動操作し、走行変速装置13を変速操作具24の操作位置に対応した変速状態に変速操作する。
【0027】
前記操作位置手段41は、回転ポテンショメータによって構成してあり、変速操作具24の操作位置を検出し、この検出結果を制御手段42に出力する。
【0028】
前記クラッチ操作手段25は、入り状態と切り状態とを備えた押しボタン式の切り換えスイッチによって構成してある。このクラッチ操作手段25は、図14に示す如く前記サイドパネル23の前端部に設けてある。このクラッチ操作手段25は、入り状態に切り換え操作されると、刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを入り状態と切り状態とに切り換え操作するべき切り換え指令を前記制御手段42に出力する。このクラッチ操作手段25は、切り状態に切り換え操作されると、刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを切り状態に切り換え操作するべき切り指令を前記制御手段42に出力する。
クラッチ操作手段25を構成する切り換えスイッチは、ランプを内装されている。このランプは、クラッチ操作手段25が入り状態に切り換え操作されると点灯し、クラッチ操作手段25が切り状態に切り換え操作されると消灯する。
【0029】
図6、図10に示すように、前記電動モータ22は、走行機体の機体部分に固定の支持部材30に支持されたクラッチ操作体37を有した機械式のクラッチ連動機構39を介して前記刈取りクラッチ17の前記テンションアーム17bと、前記脱穀クラッチ14の前記テンションアーム14bとに連動されている。
【0030】
図6に示すように、電動モータ22は、前記支持部材30に減速ケース22bを介して支持された電動モータ本体22aと、この電動モータ本体22aの出力軸(図示せず)に前記減速ケース22bが収容する減速ギヤ機構(図示せず)を介して連動された出力ギヤ22cとを備えている。図6,10に示すように、前記クラッチ操作体37は、前記支持部材30に取り付けた回転支軸37aと、この回転支軸37aに一体回転自在に設けた一対のクラッチ操作アーム31,33とを備えて構成してある。
【0031】
図6、10に示すように、前記クラッチ連動機構39は、前記クラッチ操作体37を備える他、前記電動モータ22の出力ギヤ22cに噛合った状態で前記回転支軸37aの一端側に一体回転自在に設けた扇形の伝動ギヤ38を備え、クラッチ操作体37の前記一対のクラッチ操作アーム31,33の一方のクラッチ操作アーム31と脱穀クラッチ14のテンションアーム14bとを連動させている連動リンク32aとスプリング32bとを備え、クラッチ操作体37の前記一対のクラッチ操作アーム31,33の他方のクラッチ操作アーム33と刈取りクラッチ17のテンションアーム17bとを連動させている連動リンク34aとスプリング34bとを備えて構成してある。
【0032】
図6は、クラッチ連動機構39の刈り取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを切り操作した状態での側面図である。この図に示すように、クラッチ連動機構39は、電動モータ22による伝動ギヤ38の回転操作によってクラッチ操作体37が切り位置に回転操作されると、クラッチ操作アーム31によって連動リンク32aを脱穀クラッチ14が位置する側に移動操作し、スプリング32bが緩め操作されてテンションアーム14bの引っ張り操作を解除することにより、脱穀クラッチ14を切り状態に切り換える。このとき、クラッチ連動機構39は、クラッチ操作アーム33によって連動リンク34aを刈取りクラッチ17が位置する方に移動操作し、スプリング34bが緩め操作されてテンションアーム17bの引っ張り操作を解除することにより、刈取りクラッチ17を切り状態に切り換える。
【0033】
図7は、クラッチ連動機構39の脱穀クラッチ14を入り状態に操作し、刈取りクラッチ17を切り状態に操作した状態での側面図である。この図に示すように、クラッチ連動機構39は、電動モータ22による伝動ギヤ38の回転操作によってクラッチ操作体37が枕扱き位置に回転操作されると、クラッチ操作アーム31によって連動リンク32aを脱穀クラッチ14から離間するよう移動操作し、スプリング32bが引っ張り操作されてテンションアーム14bを引き寄せ操作することにより、脱穀クラッチ14を入り状態に切り換える。このとき、クラッチ連動機構39は、クラッチ操作アーム33によって連動リンク34aを刈取りクラッチ17から離間するよう移動操作してスプリング34bを引っ張り操作する。しかし、スプリング34bの曲げ端部34dの長さにより、スプリング34bがテンションアーム17bの連動ピン40に対して相対移動してテンションアーム17bを弾き寄せ操作せず、クラッチ連動機構39は、刈取りクラッチ17を切り状態にする。
【0034】
図8は、クラッチ連動機構39の脱穀クラッチ14と刈取りクラッチ17とを入り状態に操作した状態での側面図である。この図に示すように、クラッチ連動機構39は、電動モータ22による伝動ギヤ38の回転操作によってクラッチ操作体37が通常作業位置に回転操作されると、クラッチ操作アーム31によって連動リンク32aを引き操作し、スプリング32bが引っ張り操作されてテンションアーム14bを引き寄せ状態に操作することにより、脱穀クラッチ14を入り状態に操作する。このとき、クラッチ連動機構39は、クラッチ操作アーム33によって連動リンク34aを引っ張り操作し、スプリング34bが引っ張り操作されてテンションアーム17bを引き寄せ操作することにより、刈取りクラッチ17を入り状態に切り換える。
【0035】
前記操作体位置検出手段43は、図10に示す如く前記回転支軸37aに連動された回転ポテンショメータによって構成してあり、回転支軸37aの回転位置をクラッチ操作体37の操作位置として検出し、この検出結果を制御手段42に出力する。
【0036】
前記制御手段42は、マイクロコンピュータを利用して構成してある。図5は、前記制御手段42によるクラッチ制御のフロー図である。この図に示すように、制御手段42は、脱穀クラッチ14と刈取りクラッチ17とが変速操作具24とクラッチ操作手段25との操作状態に対応した操作状態になるよう、操作位置検出手段41と操作体位置検出手段43とによる検出情報と、クラッチ操作手段25による指令とに基づいて電動モータ22を操作する。
【0037】
すなわち、ステップ1,2に示すように、制御手段42は、クラッチ操作手段25からの指令を基にクラッチ操作手段25が切り状態に操作されたか否かを判断し、クラッチ操作手段25が切り状態に操作されたと判断した場合、操作位置検出手段41による検出情報に優先して電動モータ22を操作してクラッチ操作体37を切り位置に操作し、変速操作具24の操作位置に優先して刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを切り状態に切り換え操作する。
【0038】
ステップ3,4,5に示すように、制御手段42は、クラッチ操作手段25が切り状態に操作されていないと判断した場合において、操作位置検出手段41による検出情報を基に、変速操作具24が中立位置Nに操作された判断した場合と、変速操作具24が後進域Rに操作されたと判断した場合とには、電動モータ22を操作してクラッチ操作体37を枕扱き位置に操作し、刈取りクラッチ17を切り状態に切り換え操作し、脱穀クラッチ14を入り状態に切り換え操作する。
【0039】
ステップ6,7,8に示すように、制御手段42は、クラッチ操作手段25が切り状態に操作されていないと判断した場合において、操作位置検出手段41による検出情報を基に、変速操作具24が第一作業域FLに操作されたと判断した場合と、変速操作具24が第二作業位置FMに操作された場合とには、電動モータ22を操作してクラッチ操作体37を入り位置に操作し、刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを入り状態に切り換え操作する。
【0040】
ステップ9,10に示すように、制御手段42は、クラッチ操作手段25が切り状態に操作されていないと判断した場合において、操作位置検出手段41による検出情報を基に、変速操作具24が移動域FHに操作されたと判断した場合、電動モータ22を操作してクラッチ操作体37を切り位置に操作し、刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを切り状態に切り換え操作する。
【0041】
制御手段42は、ステップ9,10によってクラッチ牽制手段45を構成する。
このクラッチ牽制手段45は、制御手段42に連係していることにより、走行変速装置13の変速状態を入力するように走行変速装置13に連係しており、走行変速装置13が前進状態での高速側(変速操作具24の移動域FHに対応する変速状態)に操作されると、作用状態に切り換わり、クラッチ操作手段25の切り換え操作による刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14との入り状態への切り換えを牽制する。
このクラッチ牽制手段45は、走行変速装置13が前進状態での低速側(変速操作具24の第一作業域FLと第二作業位置FMとに対応する変速状態)に操作されると、作用解除状態に切り換わり、クラッチ操作手段25の切り換え操作による刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14との入り状態への切り換えを許容する。
【0042】
図2に示すように、前記運転部は、前記サイドパネル23の前記変速操作具24の前側近くに設けたアクセルレバー60を備えている。
【0043】
図9,10に示すように、前記アクセルレバー60は、アクセルレバー60の基部を前記支持部材30に連結している支軸61の軸芯まわりに走行機体前後方向に揺動操作されることにより、アクセルレバー60の基部に設けたアーム部60aと、このアーム部60aにスプリング66を介して連結された操作ケーブル62とを介してアクセル装置63の操作アーム64を揺動操作し、前記エンジン10を増速側や減速側に速度調節する。アクセルレバー60の基部に設けた摩擦機構68が、皿バネ68aによってアクセルレバー60を摩擦部材68bに押圧することにより、アクセルレバー60に摩擦抵抗を付与している。これにより、アクセルレバー60は、任意の操作位置に保持され、アクセル装置63を任意の操作状態に保持してエンジン10を任意の回転速度に保持する。
【0044】
前記操作装置Aは、図10に示す如く前記回転支軸37aの端部に一体回転自在に設けた操作アーム69を有したアクセル操作手段Gを備えている。
【0045】
図9は、前記アクセル操作手段Gの側面図である。図10は、前記アクセル操作手段Gの正面視での構造を示している。これらの図に示すように、前記アクセル操作手段Gは、前記操作アーム69を備える他、前記支軸61に揺動自在に支持された中継リンク70と、この中継リンク70を待機位置に付勢するスプリング75とを備えて構成してある。
【0046】
図9,10,11に示すように、前記中継リンク70は、この中継リンク70の遊端部に支持ピン72を介して回転自在に設けたローラ73と、中継リンク70の基部に設けたスプリング受け突起70cとを備えている。ローラ73は、前記支持部材30の長孔74を挿通している。前記スプリング75は、中継リンク73の前記スプリング受け突起70cと、前記支持部材30に固定されたスプリング支持ピン76とを挟む配置になった一対の端部75a,75aを備えている。中継リンク70が支軸61の軸芯まわりに待機位置から一方に揺動操作された際、スプリング75の一方の端部75aがスプリング支持ピン76に受け止め支持されながら、他方の端部75aがスプリング受け突起70cによって押圧操作され、スプリング75が弾性変形してスプリング受け突起70cに弾性復元力を作用させる。中継リンク70が支軸61の軸芯まわりに待機位置から他方に揺動操作された際、スプリング75の他方の端部75aがスプリング支持ピン76に受け止め支持されながら、一方の端部75aがスプリング受け突起70cによって押圧操作され、スプリング75が弾性変形してスプリング受け突起75aに弾性復元力を作用させる。これにより、スプリング75は、中継リンク70が待機位置から一方と他方のいずれに揺動操作されても、中継リンク70を待機位置に復帰するよう揺動付勢する。
【0047】
図12(a)は、前記クラッチ操作体37が前記切り位置に操作されている場合での前記操作アーム69の操作位置と、アイドリング位置Lするアクセルレバー60とを示している。図12(b)は、前記クラッチ操作体69が前記切り位置から前記枕扱き位置に切り換え操作される途中での前記操作アーム69と、この操作アーム69のアクセルレバー60に対する作用とを示している。図12(c)は、前記クラッチ操作体69が前記枕扱き位置に切り換わった場合での前記操作アーム69と前記中継リンク70との揺動位置を示している。図12(d)は、前記クラッチ操作体69が前記枕扱き位置あるいは通常作業位置から切り位置に戻った場合での前記操作アーム69と前記中継リンク70との揺動位置を示している。
【0048】
これらの図に示すように、前記操作アーム69は、クラッチ操作体37が切り位置から枕扱き位置あるいは通常作業位置に切り換え操作されると、回転支軸37aの軸芯まわりにクラッチ操作体37と共に揺動操作される。このとき、アクセルレバー60がアイドリング位置Lに位置していると、操作アーム69の遊端部が、待機位置に位置する中継リンク70のローラ73に押圧作用して中継リンク70を揺動操作し,前記ローラ73を介してアクセルレバー60のアーム部60aを前記摩擦機構68に抗して揺動操作して、アクセルレバー60を作業位置Hに切り換える。アクセルレバー60が作業位置Hに切り換わった後、操作アーム69がクラッチ操作体37と共にさらに揺動操作されてローラ73から外れ、中継リンク70がスプリング75による復帰操作によって待機位置に復帰する。そして、中継リンク70が待機位置に位置してアクセルレバー60の操作障害にならず、アクセルレバーは、作業位置Hから減速側に人為操作できるようになる。
【0049】
操作アーム69は、クラッチ操作体37が枕扱き位置あるいは通常作業位置から切り位置に切り換え操作される際、待機位置に位置する中継リンク70のローラ73に当接して中継リンク70を揺動操作する。このとき、中継リンク70のローラ73は、アクセルレバー60のアーム部60aから離れる方向に移動し、アクセルレバー60は、作業位置Hに保持される。
【0050】
これにより、前記アクセル操作手段Gは、前記クラッチ操作手段25が入り状態に切り換え操作され、変速操作具24が第一作業域FLあるいは第二作業位置FMに操作されて脱穀クラッチ14が入り状態に切り換え操作された際、あるいは脱穀クラッチ14と刈取りクラッチ17とが入り状態に切り換え操作された際、エンジン10が作業用回転速度として設定された設定高回転速度よりも低速になっておれば、エンジン10をアクセルレバー60の作業位置Hに対応した設定高回転速度に自ずと増速操作する。
【0051】
つまり、作業走行や移動走行を行うに当たり、クラッチ操作手段25と変速操作具24とを操作することにより、刈取り部4と脱穀装置5とが駆動あるいは停止し、走行機体が適切な走行速度で走行する。
【0052】
すなわち、刈取り作業を行う場合、クラッチ操作手段25を入り状態に切り換え操作する。そして、中割り、あるいは周囲刈り(三条刈り)で作業する場合、変速操作具24を第一作業域FLに操作する。すると、操作装置Aは、連動機構26によって走行変速装置13を変速操作具24の操作位置に対応した変速状態に変速操作する。これにより、走行機体は、三条刈りに適した走行速度として設定した作業走行速度であって、移動走行の走行速度、および二条刈りの走行速度よりも低速の走行速度で走行する。このとき、操作装置Aは、クラッチ操作手段25による切り換え指令と操作位置検出手段41及び操作体位置検出手段43による検出情報とを基にした制御手段42による電動モータ22の操作によってクラッチ操作体37を通常作業位置に切り換え操作し、刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを入り状態に切り換え操作する。これにより、刈取り部4と脱穀装置5とが駆動される。
【0053】
回り刈り(二条刈り)で作業する場合、変速操作具24を第二作業位置FMに操作する。すると、操作装置Aは、連動機構26によって走行変速装置13を変速操作具24の操作位置に対応した変速状態に変速操作する。これにより、走行機体は、二条刈りに適した走行速度として設定した作業走行速度であって、三条刈りの走行速度よりも高速で、かつ移動走行の走行速度よりも低速の走行速度で走行する。このとき、操作装置Aは、クラッチ操作手段25による切り換え指令と操作位置検出手段41及び操作体位置検出手段43による検出情報とを基にした制御手段42による電動モータ22の操作によってクラッチ操作体37を通常作業位置に切り換え操作し、刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを入り状態に切り換え操作する。これにより、刈取り部4と脱穀装置5とが駆動される。
【0054】
このように、刈り取りクラッチ17と脱穀クラッチ14との入り状態への切り換え操作が行われた際、エンジン10を作業用に設定した高回転速度よりも低速にしたままであると、操作装置Aは、アクセル操作手段Gによってアクセルレバー60を作業位置Hに切り換え操作する。これにより、エンジン10は、作業用に設定した高回転速度に自ずと増速する。これにより、刈り取り部4と脱穀装置5とは、駆動負荷にかかわらずエンジンストップを発生させないで駆動される。クラッチ操作手段25の入り状態への切り換え操作に基づく刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14との入り状態への切り換えは、エンジン10が駆動状態にある場合に行われる。
【0055】
変速操作具24は、ブレーキペダルが踏み込み操作されると、ロック機構(図示せず)によって中立位置Nに固定されて操作できなくなる。操作装置Aは、刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを入り状態に切り換え操作する際、およびエンジン10を作業用の高回転速度に増速操作する際、刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14との入り操作と、エンジン10の増速操作とに先立ち、制御手段42による操作によって警報装置80(図4参照)を作動させて予告音を発生させる。操作装置Aは、刈取り作業が行われている際(刈取り部4に刈取り穀稈の導入を検出するよう設けた株元センサが検出状態にある際)、変速操作具24が移動位置FHに操作されると、警報装置80を作動させて警告音を発生させる。
【0056】
エンジン10が作業用の高回転速度に増速操作された後、アクセルレバー60が作業位置Hから減速側に操作されてエンジン回転数が低下し過ぎると、前記制御手段42は、エンジン10の回転数センサ(図示せず)による検出情報を基に、前記サイドパネル23の前部に位置する操作盤81に設けた減速ランプ82(図14参照)を点灯させる。エンジン回転数がさらに低下すると、制御手段42は、前記操作盤81に前記減速ランプ82の近くに配置して設けた停車ランプ83(図14参照)を点灯させる。前記減速ランプ82と前記停車ランプ83とは、刈取り作業が行われている場合、エンジン10の負荷増大があると点灯されるランプを利用している。
【0057】
一方、移動走行を行う場合、クラッチ操作手段25を切り状態に切り換え操作する。すると、操作装置Aは、クラッチ操作手段25による切り指令と、操作体位置検出手段43による検出情報とを基にした制御手段42による電動モータ22の操作によってクラッチ操作体37を切り位置に切り換え操作し、刈り取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを切り状態に切り換え操作する。これにより、刈り取り部4と脱穀装置5とが停止する。そして、変速操作具24を移動位置FHに操作すると、操作装置Aは、連動機構26によって走行変速装置13を変速操作具24の操作位置に対応した変速状態に変速操作する。これにより、走行機体は、移動に適した走行速度として設定した走行速度であって、二条刈りおよび三条刈りの走行速度よりも高速の走行速度で走行する。
このとき、クラッチ操作手段25が入り状態に切り換え操作されても、操作装置Aは、走行変速装置13が刈り取り作業のための変速状態よりも高速側の変速状態に操作されていることによってクラッチ牽制手段45を作用状態に切り換えており、このクラッチ牽制手段45の作用によって刈り取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを入り状態に切り換え操作しない。この場合、お知らせ音(ホーンの吹鳴)が鳴る。これにより、刈り取り部4と脱穀装置5とは、クラッチ操作手段25の入り状態への切り換え操作にかかわらず、停止状態に維持される。
【0058】
図1に示すように、前記刈取り部4は、前記供給搬送装置4eの搬送下手側に設けた扱き深さ調節搬送部4gを備えている。この扱き深さ調節搬送部4gは、搬送終端側に位置する支点まわりで揺動操作されることにより、搬送始端側を搬送刈取り穀稈の稈身方向に移動させ、扱き深さ調節搬送部4gよりも搬送方向上手側に位置する搬送部から受け継ぐ刈取り穀稈の株元側の挟持箇所を穂先側や株元側に変更し、これによって脱穀フィードチェーン5aによる刈取り穀稈の挟持箇所を穂先側や株元側に変更させて脱穀装置5での扱き深さを変更する。
【0059】
図4に示すように、前記制御手段42は、前記扱き深さ調節搬送部4gと、稈長検出機構84とに連係されているとともに扱き深さ制御手段85を構成している。
【0060】
稈長検出機構84は、前記供給搬送装置4eによって搬送される刈取り穀稈の稈身長さを検出し、この検出結果を扱き深さ制御手段85に出力する。
【0061】
扱き深さ制御手段85は、脱穀装置5での扱き深さが刈取り穀稈の稈身長さの変化にかかわらず設定深さになるよう、前記稈長検出機構84による検出結果を基に前記扱き深さ調節搬送部4gを揺動操作する。
【0062】
前記制御手段42は、前記クラッチ操作手段25が切り状態に切り換え操作されると、クラッチ操作手段25からの情報を基に、前記扱き深さ制御手段85を切り状態に切り換え操作し、前記クラッチ操作手段25が入り状態に切り換え操作され、かつ変速操作具24が第一作業域FLあるいは第二作業位置FMに操作されると、クラッチ操作手段25と操作位置検出手段41とからの情報を基に、前記扱き深さ制御手段85を入り状態に切り換え操作する。
【0063】
これにより、操作装置Aは、クラッチ操作手段25による刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14との切り状態への切り換えが行われると、これに連係させて制御手段42によって扱き深さ制御手段85を入りから切りに切り換え、クラッチ操作手段25による刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14との入り状態への切り換えが行われると、これに連係させて制御手段42によって扱き深さ制御手段85を切りから入りに切り換え、扱き深さ制御のオンとオフの切り換え手間を不要にする。
【0064】
図14に示すように、前記操作盤81は、オイルランプ90と、水温ランプ91と、カッタランプ92と、もみランプ93と、オートクラッチランプ94と、オートクラッチスイッチ95と、こぎ深さランプ96と、こぎ深さ自動スイッチ97と、一対のこぎ深さ手動スイッチ98,99とを備えている。
【0065】
オイルランプ90は、エンジン用燃料の減少を点灯によって報知する。水温ランプ91は、エンジン冷却水の温度上昇を点灯によって報知する。カッタランプ92は、排ワラカッタ装置9のワラ詰まりを点灯によって報知する。もみランプ93は、穀粒タンク6の満杯を点灯によって報知する。オートクラッチスイッチ95は、刈取り部4を上昇非作業状態で自動的に停止させるクラッチ制御を入りと切りとに切り換える。オートクラッチランプ94は、刈取り部4の前記クラッチ制御の入りを点灯によって表示する。こぎ深さランプ96は、前記扱き深さ制御手段85の入りを点灯によって表示する。一対のこぎ深さ手動スイッチ98,99の一方のこぎ深さ手動スイッチ99は、扱き深さを深扱き側に設定し、他方のこぎ深さ手動スイッチ98は、扱き深さを浅扱き側に設定する。
【0066】
前記制御手段42は、メンテナンス機能(診断機能)を備えている。このメンテナンス機能は、次の取扱、点検要領によって作動する。
すなわち、前記一対のこぎ深さ手動スイッチ98,99を押し操作しながらメインキー(図示せず)をオフからオンに切り換え、こぎ深さランプ96が点灯すると、一対のこぎ深さ手動スイッチ98,99をオフに切り換える。すると、オートクラッチランプ94あるいはこぎ深さランプ96が点滅(機種によって点滅するランプが異なる)した後に水温ランプ91が点灯し、メンテナンスモードが起動する。
【0067】
こぎ深さ手動スイッチ98,99を操作して、「入力チェック」あるいは「機種設定」あるいは「微調整」を選択する。
すなわち、こぎ深さ手動スイッチ98,99を操作する都度、「入力チェック」と「機種設定」と「微調整」とが順次に入れ替わって設定される。「入力チェック」が設定されると、水温ランプ91が点灯し、「機種設定」が設定されると、カッタランプ92が点灯し、「微調整」が設定されると、もみランプ93が点灯する。
【0068】
「入力チェック」を選択した場合、扱き深さ制御などの各センサが、オフ〜オンに、オン〜オフに切り換わり、お知らせ音(ホーンの吹鳴)が鳴る。
【0069】
「機種設定」を選択した場合、現在、記憶中の機種に対応したオートクラッチランプ94あるいはこぎ深さランプ96が点滅する。
オートクラッチスイッチ95をオン操作し、オートクラッチランプ94が点滅すると、メインキーをオフに操作する。すると、オートクラッチスイッチ95の操作に対応した機種が記憶される。
こぎ深さ自動スイッチ97をオン操作し、こぎ深さランプ96が点滅すると、メインキーをオフに操作する。すると、こぎ深さ自動スイッチ97の操作に対応した機種が記憶される。
【0070】
「微調整」を選択した場合、変速操作具24を中立位置Nに操作し、クラッチ操作手段25をお知らせ音(ホーンの吹鳴)が鳴るまで長押し操作する。すると、微調整が開始され、電動モータ22が刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを入り状態に切り換えるまで作動し、この後、電動モータ22が刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを切り状態に切り換えるまで作動する。この微調整中はクラッチ操作手段25のランプが点滅する。クラッチ操作手段25のランプの点滅が終了すると、メインキーをオフに切り換え操作する。すると、変速操作具24の中立位置Nと、刈取りクラッチ17及び脱穀クラッチ14の切り状態と入り状態とに対応した微調整値が記憶される。この微調整は、エンジン10の停止状態で行われる。
【0071】
メンテナンスモードにおいて、オートクラッチスイッチ95とこぎ深さ自動スイッチ97とを長押し操作すると、緊急作動モードになる。この緊急作動モードは、こぎ深さ自動スイッチ97を押しながらこぎ深さ手動スイッチ98または99を押し操作することにより、刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを強制的に入り状態に切り換え操作する。すなわち、緊急作動モードは、クラッチ操作手段25が故障し、クラッチ操作手段25による刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14との入り状態への切り換えが不能になっても作業を行えるよう、刈取り部4と脱穀装置5との駆動を可能にする。
【0072】
〔別実施例〕
本発明は、上記した実施例に替え、走行変速装置13の変速状態を刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを入り状態に切り換えるための条件とせず、刈取りクラッチ17と脱穀クラッチ14とを単に切り換え操作する構成を採用した操作装置の場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】伝動装置の概略図
【図4】操作装置のブロック図
【図5】クラッチ制御のフロー図
【図6】クラッチ連動機構の刈取りクラッチと脱穀クラッチとの切り操作状態での側面図
【図7】クラッチ連動機構の脱穀クラッチを入り状態に、刈取りクラッチを切り状態に操作した状態での側面図
【図8】クラッチ連動機構の刈取りクラッチと脱穀クラッチとの入り操作状態での側面図
【図9】アクセル操作手段の側面図
【図10】クラッチ連動機構とアクセル操作手段の正面図
【図11】アクセル操作手段の中継リンクとスプリングの斜視図
【図12】アクセル操作手段の作用を示す説明図
【図13】変速操作具の操作位置の平面図
【図14】操作盤の平面図
【図15】(a)は、刈取り部の二条刈り状態での平面図、(b)は、刈り取り部の三条刈り状態での平面図
【符号の説明】
【0074】
13 走行変速装置
14 脱穀クラッチ
17 刈取りクラッチ
24 変速操作具
25 クラッチ操作手段
45 クラッチ牽制手段
85 扱き深さ制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取りクラッチと脱穀クラッチとを切り換え操作する人為操作自在なクラッチ操作手段と、走行変速装置を変速操作する人為操作自在な変速操作具とを備えたコンバインの操作装置であって、
前記クラッチ操作手段による前記刈取りクラッチと前記脱穀クラッチとの入り状態への切り換えを牽制する作用状態と、前記クラッチ操作手段による前記刈取りクラッチと前記脱穀クラッチとの入り状態への切り換えを許容する作用解除状態とに切り換え自在なクラッチ牽制手段を備え、
前記走行変速装置が低速側に操作されると、前記クラッチ牽制手段が前記作用解除状態になり、前記走行変速装置が高速側に操作されると、前記クラッチ牽制手段が前記作用状態になるよう前記走行変速装置と前記クラッチ牽制手段とを連係させてあるコンバインの操作装置。
【請求項2】
前記刈取りクラッチと前記脱穀クラッチとを入り状態に切り換え操作された際、エンジンが設定高回転速度よりも低速であれば、前記設定高回転速度に増速操作されるよう構成してある請求項1記載のコンバインの操作装置。
【請求項3】
脱穀深さを設定深さに維持する扱深さ制御手段を備え、
前記クラッチ操作手段による刈取りクラッチと脱穀クラッチとの入り状態への切り換えに連係して前記扱き深さ制御手段が切りから入りに切り換わるよう構成してある請求項1又は2記載のコンバインの操作装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−95285(P2009−95285A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270440(P2007−270440)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】