説明

コンバインの脱穀装置

【課題】脱穀装置に配置される、二番コンベア及びスクリューローターの回転速度を制御して、穀稈等が滞ることなく潤滑に搬送される、コンバインの脱穀装置を提案するものである。
【解決手段】エンジン12からの動力を脱穀装置18のスクリューローター30と、選別装置19の搬送コンベアに動力を伝えるコンバインにおいて、脱穀入力軸61とスクリューローター軸30Aとの間に、有段の高低変速装置と複数の副変速装置を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用コンバインの脱穀装置に配置されるスクリューローターの回転速度を変速する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインにおいては、コンバインの脱穀装置の下方に配置された選別装置により選別された後の二番物は二番コンベアにより脱穀部または選別装置前部に還元される。この二番コンベアは、エンジンの出力軸からベルト電動機構等を介して脱穀入力軸に動力を伝え、該脱穀入力軸からローター駆動軸、スクリューローター軸を介して動力が伝達され回転駆動される構成としていた。よって、スクリューローターの回転駆動の速度(回転速度)を変更すると同時に二番コンベアの回転速度も変化していた(同調変速)。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−67442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の構成では、スクリューローターと二番コンベアの回転速度が同時に変速されるために、特に、スクリューローターの回転速度を低く設定していたときは二番コンベアの回転速度も低くなり二番コンベアで穀稈等の詰まり等が生じていた。
【0004】
以上の不具合を解決すべく、本発明は、脱穀装置に配置される二番コンベア及びスクリューローターの回転速度を制御して穀稈等が滞ることなく潤滑に搬送されるコンバインの脱穀装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、エンジンからの動力を脱穀装置のスクリューローターと選別装置の搬送コンベアに動力を伝えるコンバインにおいて、脱穀入力軸とスクリューローター軸との間に有段の高低変速装置と複数の副変速装置を設けたものである。
【0007】
請求項2においては、前記脱穀入力軸より二番コンベアの二番コンベア軸に動力を伝達する構成としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、スクリューローターの回転速度を有段で変速するが可能となり、高低変速に加え複数段階の副変速部を設けて有段変速機構を構成したことにより、より変速の段階数が増え変速の幅が広くなり、作物の種類や脱穀量に対して最適なスクリューローターの回転速度を得ることができる
【0010】
請求項2においては、二番コンベアとスクリューローターとの回転速度を個別に設定することができ、収穫する作物の種類あるいは量に応じてスクリューローターの回転速度を最適な回転速度で駆動して脱穀作業を行うことができる。また、二番コンベアの回転を一定に保ったままスクリューローターの回転を変速させて、穀稈等が滞留したり詰まったりすることなく排出できる速度に設定することによって、詰まり等の不具合を発生することなく、且つ効率の良い脱穀装置が構築できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明に係るコンバインの全体的な構成を示す側面図、図2は同じく平面図、図3は脱穀装置を示す側面図、図4は本発明に係るスクリューローターの有段変速機構の説明図、図5は本発明の係る脱穀装置内における二番コンベアとスクリューローターの駆動伝動機構図、図6は従来の脱穀装置内における二番コンベアとスクリューローターの駆動伝動機構図である。
【0012】
まず、本発明に係る、脱穀装置に機体前後方向を軸とするスクリューローターを具備する汎用コンバインの全体構成について図1及び図2を用いて説明する。
本発明に係る汎用コンバインは、クローラ式走行装置1上に機体フレーム13を配置し、該機体フレーム13前部上にキャビン17を配設している。機体フレーム13の後部右上にはエンジン12を載置し、その前方にグレンタンク14を配置し、このグレンタンク14より穀粒を排出するための排出オーガ15を機体後部から前方にかけて備えている。
【0013】
また、前記機体フレーム13の前方には刈取装置8が、左側上方には脱穀装置18がそれぞれ配設され、この刈取装置8と脱穀装置18の間には搬送装置9が配設されている。この搬送装置9は、フィーダハウス10内にコンベア11を設け、該フィーダハウス10によって刈取装置8の後端と脱穀装置18の前部入口を連通し、刈取装置8で刈り取った穀稈を脱穀装置18へ搬送するようにしている。
【0014】
前記フィーダハウス10の前部にはプラットホーム2を設けており、該プラットホーム2には進行方向と直角に横送りオーガ3が左右方向に配置され、該横送りオーガ3の前下部に刈刃4が横設されている。
【0015】
前記プラットホーム2の左右両側の前端に分草板7・7を設け、該プラットホーム2後部の左右両端にはリール5を横架した支持アーム6の後部が枢支され、該支持アーム6の左右一側にはリール回転駆動用のベルトやプーリー等からなる動力伝達機構が設けられている。前記リール5は、支持アーム6とプラットホーム2との間に介装されたアクチュエータとしての油圧シリンダ16によって昇降される。
【0016】
前記脱穀装置18において、扱室25には前後方向に扱胴となるスクリューローター30が配置されており、該スクリューローター30はスクリュー32・32・・・を周面に付設し穀稈の脱穀を行うようにしており、また、該スクリューローター30の下周囲に受網26を配置し、その下方に選別装置19を配置し、選別を行うようにしている。また、扱室25内であってスクリューローター30の上方に送塵弁40・40・・・が機体前後方向に並設されている。
【0017】
前記選別装置19は、チャフシーブやグレンパンやグレンシーブ等を有する揺動本体20や、該揺動本体20の下方において前側から順に配される、選別風を発生させる唐箕21、選別された一番物を左右方向に搬送する一番コンベア22、二番物を搬送する二番コンベア23等からなり、前記受網26から漏下する穀粒の選別を行うようにしている。
【0018】
また、前記スクリューローター30の後部下方には、チョッパー式のスプレッダ−24を配設し、スクリューローター30により扱室25後部へ移送される排稈を細かく切断した後に、機体外部へ排出されるようにしている。
【0019】
以上の構成により、分草板7・7によって分草し、リール5の回転によって穀稈を掻き込み、刈刃4によって穀稈の株元側を刈取り、刈り取られた穀稈を横送りオーガ3の回転によって機体左右中央側へ横送りし、中央のフィーダハウス10前端からコンベア11によって後方へ搬送して脱穀装置18へ供給する。
この供給された穀稈を脱穀装置18内のスクリューローター30によって脱穀し、受網26により漏下した籾などは、選別装置19によって選別され、そのうちの一番物は前記グレンタンク14内に貯溜され、また、二番物は脱穀装置18の前部中途位置に投入され再選別にかけられる。また、脱穀された残りの排稈は、スプレッダ−24により細かく切断された後、機体外部へ排出される。
【0020】
次に、前記脱穀装置18について説明する。
図3に示すように、スクリューローター30は扱室25内に機体前後方向を回転軸として支承されており、該スクリューローター30の胴部は、フィーダハウス10から扱室25への取込口27に配される円錐台状の供給部30aと、該供給部30aの後部と連続的に形成される円筒状の脱穀部30bと、該脱穀部30bの後端部に形成される排稈部30cとから構成されている。
前記供給部30aの円錐台部外周には高さが徐々に低くなり側面視ではスクリューローター30全体として後部のスクリュー32とともに略同じ高さとなるようにインペラ31が螺旋配置され、脱穀部30bの円筒部外周には所定高さの螺旋状のプレートで構成したスクリュー32が連続的に配置されている。そして、取込口27に送り込まれた穀稈は、供給部30aのインペラ31から脱穀部30bのスクリュー32へ受け継がれ、前記受網26との間で脱穀されながら搬送される。また、排稈部30cには、半径方向に軸心と平行に突出する板状の送り羽根33・33・・・が形成され、脱穀後の排稈を該送り羽根33・33・・・で送って排出口29より排出するようにしている。
【0021】
この穀稈の搬送は、スクリュー32の半径方向外側に突設させるようにして取り付けた扱歯34・34・・・により穀稈を引っ掛けることで行われるものである。なお、インペラ31においてもこの扱歯34・34・・・を着脱自在に構成しており(図3では取り外した状態を示す)、このインペラ31は、フィーダハウス10からの穀稈を取り込む供給部となるため、インペラ31に扱歯34・34・・・を取り付けることで穀稈を確実に引っ掛けて後方に搬送し、取込口27での穀稈の詰まりを防止させることができるようになっている。
また、この扱歯34・34・・・はインペラ31及びスクリュー32に着脱可能としているため、摩耗した際には交換可能である。
【0022】
また、前記脱穀装置18における扱室25は、開閉可能なロータカバー28により被装され閉じられている。該ロータカバー28はスクリューローター30の側面から上方を覆うものであり、ロータカバー28の内側面であってスクリューローター30上方には複数の送塵弁40・40・・・が前後平行に適宜間隔を開けて左右方向に、角度変更可能に配設されている。該送塵弁40・40・・・の長手方向は、スクリューローター30外周面のスクリュー32の回転軌道方向に向けて配置されている。
この送塵弁40・40・・・は、ロータカバー28上部に上下方向の支軸41(図5)を支点として回転自在に枢支されており、該送塵弁40・40・・・の前後方向の角度調整によって、穀稈がスクリューローター30内を移動する時間、即ち滞留時間を、穀稈の品種や穀稈の状態に合わせて調整することができ、様々な品種に合わせた汎用性のある脱穀装置18が構成されている。
【0023】
続いて、本発明に係るスクリューローター30の有段変速機構50について図4に基づいて説明する。
スクリューローター30の軸心位置にスクリューローター軸30Aが配置され、該スクリューローター軸30Aは変速ケース49内の複数の変速歯車により変速されて動力が伝達される。前記スクリューローター30への駆動は、変速ケース49内における有段変速機構50を介して伝動軸51から伝達されるものであり、該伝動軸51へはエンジン12の出力軸から図示しないベルト伝動機構を介して脱穀入力軸61上に固設したプーリー52に伝えられ、該脱穀入力軸61よりギヤケース62内のベベルギヤを介して伝動軸51に動力が伝達される。該伝動軸51は変速ケース49にベアリングを介して回転自在に支持され、該伝動軸51より二段階の高低変速と、低速段における三段階の副変速を可能とし、スクリューローター軸30Aに動力を伝え、変速ケース49内に前記有段変速機構50を収納する構成としている。この変速操作はキャビン17に備えるレバーの操作によって有段変速機構50を操作する。
【0024】
変速ケース49には伝動軸51及びスクリューローター軸30Aと平行に第一変速軸53、第二変速軸70、第三変速軸71がベアリングを介して回転自在に支持されている。前記伝動軸51上には入力歯車54が固設され、前記第一変速軸53上の前後両側には高速第一歯車55と低速入力歯車56がそれぞれベアリングを介して回転自在に支持されている。また、高速第一歯車55と低速入力歯車56の間の第一変速軸53上には摺動体81がスプライン嵌合され、該摺動体81上に高速用歯車57aと低速用歯車57bと変速用歯車57cが固設されている。
該変速用歯車57cは前記入力歯車54と常時噛合され、該変速用歯車57cに嵌合したシフターをキャビン17に備える高低変速レバーの操作によって摺動体81とともに前方へ摺動させると、高速用歯車57aが高速第一歯車55に形成した内歯55aと噛合して、後述する高速用伝動歯車列に動力を伝達する。
また、高低変速レバーの操作で、摺動体81を後方へ摺動させると低速用歯車57bが低速入力歯車56に形成した内歯56aと噛合して、副変速歯車列に動力を伝達する。このようにして高低変速を可能としている。
前記第二変速軸70の前部上には、高速第二歯車74がベアリングを介して回転自在に外嵌されて前記高速第一歯車55と噛合している。該高速第二歯車74の後部には順に副変速1速歯車73、副変速2速歯車72、副変速3速歯車59、副変速入力歯車58が固設され、副変速入力歯車58は低速入力歯車56と常時噛合している。
前記第三変速軸71の前部上には高速第三歯車75がベアリングを介して回転自在に外嵌されて前記高速第二歯車74と噛合している。該高速第三歯車75の後部には副変速従動1速歯車76がベアリングを介して回転自在に外嵌され、その後部に副変速歯車77がスプライン嵌合されて、前記副変速従動1速歯車76と副変速2速歯車72と副変速3速歯車59に噛合可能とされている。つまり、副変速歯車77を前方へ摺動させて、歯部77aと副変速従動1速歯車76の歯部76aを噛合させると、副変速1速が得られる。そして、副変速歯車77を後方へ摺動させて歯部77aを副変速2速歯車72と噛合させると、副変速2速が得られ、副変速歯車77を後方へ摺動させて歯部77bを副変速3速歯車59に噛合させると、副変速3速が得られる。
更に、前記副変速歯車77の後方の第三変速軸71上には副変速出力歯車78が固設されている。
また、スクリューローター軸30Aの後端部には高速出力歯車80と低速出力歯車79が固設され、高速出力歯車80は前記高速第三歯車75と噛合され、低速出力歯車79は副変速出力歯車78と噛合されている。
【0025】
以上のように構成することで、高速段と低速段における副変速1速と副変速2速と副変速3速の4段の変速段が得られるのである。こうして二段階の主変速部に加え三段階の副変速部を設けて有段変速機構50を構成でき、より変速の段階数が増え変速の幅が広くなり、作物の種類や脱穀量に対して最適なスクリューローター30の回転速度を得ることができる。
【0026】
次に、本発明の係る脱穀装置18内における二番コンベア23とスクリューローター30の駆動伝動機構について、図5又は図6に基づいて説明する。
図6に示すように、従来のコンバインにおいては、脱穀入力軸60から脱穀入力軸61、伝動軸51等を介してスクリューローター軸30Aの一端に動力が伝達され、該スクリューローター軸30Aの他端から二番コンベア軸23aを回転駆動していたので、スクリューローター30の回転速度を変更すると同時に二番コンベアの回転速度も変化していた(同調変速)。このようにスクリューローター30と二番コンベア23の回転速度を同時に変速させていたために、特に、スクリューローター30の回転速度を低く設定していたときは二番コンベア23の回転速度も低くなり二番コンベア23で穀稈等の詰まり等が生じていた。
【0027】
そこで、本発明に係る二番コンベア23とスクリューローター30の駆動伝動機構は、図5に示すように、同じ脱穀入力軸60から二番コンベア軸23aとスクリューローター軸30Aへ並列的に動力を伝達する構成としている。即ち、脱穀入力軸61上にプーリー52・63を固設し、脱穀入力軸61からは前述の如く変速装置を介してスクリューローター軸30Aに動力を伝え、同時にプーリー63からベルトを介してプーリー64に伝え、更にベベルギヤ等を介して二番コンベア軸23aに動力を伝える構成としている。なお、変速装置は図5においては、伝動軸51とベベルギヤとの間に二段の変速機構を配置している。その結果、二番コンベア23の回転速度を一定に保ちながらスクリューローター30の回転速度を変速させることができるのである。
【0028】
以上のように構成することで、二番コンベア23とスクリューローター30との回転速度を個別に設定することができ、収穫する作物の種類あるいは量に応じてスクリューローター30の回転速度を最適な回転速度で駆動して脱穀作業を行うことができる。
二番コンベア23の回転を一定に保ったままスクリューローター30の回転を変速させて、穀稈等が滞留したり詰まったりすることなく排出できる速度に設定することによって、詰まり等の不具合を発生することなく、且つ効率の良い脱穀装置18が構築できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係るコンバインの全体的な構成を示す側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】脱穀装置を示す側面図。
【図4】本発明に係るスクリューローターの有段変速機構の説明図。
【図5】本発明の係る脱穀装置内における二番コンベアとスクリューローターの駆動伝動機構図。
【図6】従来の脱穀装置内における二番コンベアとスクリューローターの駆動伝動機構図。
【符号の説明】
【0030】
23 二番コンベア
23a 二番コンベア軸
30 スクリューローター
30A スクリューローター軸
49 変速ケース
50 有段変速機構
51 伝動軸
53 第一変速軸
54 入力歯車
55 高速第一歯車
56 低速入力歯車
57a 高速用歯車
57b 低速用歯車
57c 変速用歯車
58 副変速入力歯車
59 副変速3速歯車
61 脱穀入力軸
70 第二変速軸
71 第三変速軸
72 副変速2速歯車
73 副変速1速歯車
74 高速第二歯車
75 高速第三歯車
76 副変速従動1速歯車
77 副変速歯車
78 副変速出力歯車
79 低速出力歯車
80 高速出力歯車
81 揺動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの動力を脱穀装置のスクリューローターと選別装置の搬送コンベアに動力を伝えるコンバインにおいて、脱穀入力軸とスクリューローター軸との間に有段の高低変速装置と複数の副変速装置を設けたことを特徴とするコンバインの脱穀装置。
【請求項2】
前記脱穀入力軸より二番コンベアの二番コンベア軸に動力を伝達する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のコンバインの脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−254708(P2006−254708A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72407(P2005−72407)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】