説明

コンバインの脱穀装置

【課題】扱室の上方を覆う上部枠体を下部枠体23に対してアクチュエータを介して開閉するコンバインの脱穀装置において、上部枠体を開いて扱室内のメンテナンス等を行った後に上部枠体を閉じる際、誤って扱室内に工具や交換部品等を放置したままで上部枠体を閉じてしまうことを起さないようにする。
【解決手段】上部枠体17が下部枠体23に対して開いた状態にある時、両枠体17,23の間にある異物を検出する異物検出手段52F,52Rを設け、該異物検出手段52F,52Rにより異物を検出した時は、上部枠体17の閉作動を中止させる制御を実行するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱室の上方を覆う上部枠体を、アクチュエータを介して開閉するコンバインの脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインにおいては、扱室の上方を覆う上部枠体を、その一側部に沿う回動支点軸を支点として開閉自在に構成すると共に、当該上部枠体を電動モータの動力により開閉させることによって、コンバインが大型の機種であっても上部枠体を容易に開閉できるようにした脱穀装置が知られている。(例えば、特許文献1参照)
【特許文献1】特開2005−102593号公報(第4−5頁、図5−図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そして、従来の脱穀装置における上部枠体の開閉操作を行う開閉操作スイッチは、脱穀装置の外側面に配置されており、上下一対の上昇スイッチと下降スイッチとからなる。
【0004】
ところが、上述した上昇スイッチをON操作して上部枠体を開いた状態で扱室内のメンテナンス等を行った後、下降スイッチをON操作して上部枠体を閉じる際、扱室内や脱穀フィードチェン上に工具や交換部品等を放置したままで上部枠体を閉作動させてしまうことがあり、その場合は扱室を確実に閉じることができず、また扱室や交換部品等を損傷する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、扱室の上方を覆う上部枠体を下部枠体に対して開閉するアクチュエータと、該アクチュエータを作動させる操作手段と、該操作手段の操作に基づいてアクチュエータに上部枠体の開閉指令を出力する制御部を備えたコンバインの脱穀装置において、上部枠体が下部枠体に対して開いた状態にある時、両枠体の間にある異物を検出する異物検出手段を設け、該異物検出手段により異物を検出した時は、上部枠体の閉作動を中止させる制御を実行するように構成したことを第1の特徴としている。
そして、上部枠体を閉じた時は、前記制御を中止することを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、上部枠体を下部枠体に対して開いた状態で扱室内のメンテナンス等を行った後、十分な点検を行わずに誤って扱室内や脱穀フィードチェン上に工具や交換部品等を放置したままで上部枠体を閉じる操作を行った場合でも、上部枠体と下部枠体の間にある異物を異物検出手段により検出して、上部枠体の閉作動を中止させる制御を実行することができるので、この時扱室内や脱穀フィードチェン上の異物を取り去ることによって扱室等の損傷が起こることを回避できると共に、上部枠体を確実に閉作動させることができる。
そして、上部枠体を閉じた時は、前記制御を中止するので、通常の脱穀作業を行う際に扱室内で脱穀される穀稈を異物として検出するといった不具合は起こらない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、コンバイン1の側面図であって、コンバイン1は、穀稈を刈取る前処理部2と、刈り取った穀稈から穀粒を脱穀し、この脱穀された穀粒を選別する脱穀装置3と、選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク4と、穀粒タンク4内の穀粒を機外へ搬出する穀粒排出オーガ5と、脱穀済みの排稈を機体後部まで搬送する排藁搬送部6と、機体後部において排稈を排出処理する後処理部7と、座席8などが設けられる操縦部9と、左右一対のクローラ走行装置10を備えている。
【0008】
そして、脱穀装置3は、複数の扱歯11aを外周に植設した扱胴11と、該扱胴11を内装する扱室12と、該扱室12に沿って穀稈を搬送する脱穀フィードチェン13と、該脱穀フィードチェン13の上側に沿って配置される挟扼レール14と、脱穀された穀粒を選別する選別室15と、選別された穀粒を穀粒タンク4へ揚上搬送する揚穀筒16(図2参照)等を備えて機体の左側に搭載されている。
【0009】
また、図2及び図3に示すように、扱室12の上方は上部枠体17によって覆われている。この上部枠体17は、扱室12の機体中央側の前後方向に沿う支点軸18に開閉自在に支持してあって、扱室12内の清掃や点検等を行う際に開き操作されるようになっている。更に詳しくは、支点軸18は、後述する扱胴11の回転軸27と平行に扱室12の上部側面側に回転自在に支承されると共に、当該支点軸18に固設した複数の回動アーム19を介して上部枠体17を上下回動自在に支持している。
【0010】
そして、上述した支点軸18には、作動アーム21が固設してあり、この作動アーム21に連結して正逆転駆動するアクチュエータ(本実施例では、電動シリンダを採用)22の伸縮作動によって、上部枠体17を開閉できるように構成すると共に、上部枠体17と、脱穀装置3を構成する下部枠体23との間には、上部枠体17を開放方向に付勢するガススプリング24を介装している。
【0011】
尚、本実施形態の上部枠体17は、扱胴11及び挟扼レール14を支持すると共に、排藁搬送チェーン25及び排藁カバー26と連結してあり、当該上部枠体17の開き操作によって、扱胴11、挟扼レール14、排藁搬送チェーン25及び排藁カバー26とを一体に上昇回動せることができるようになっているが、本発明は、このような構成のものに限定されるものではない。
【0012】
また、扱胴11の回転軸27は、上部枠体17に一体形成してなる前後の側板28に軸支してあり、この前後の側板28の外側には、上部枠体17の開放作動をロックするための開放ロック機構29を設けている。この開放ロック機構29は、前後の側板28に突設した支軸31を介して揺動自在なロックプレート32と、該ロックプレート32に形成した係合溝(切欠き)32aが係止可能な下部枠体23に設けたロックピン33と、上部枠体17に支軸34を介して揺動自在に支持したロック解除レバー35等を備えており、該ロック解除レバー35は、レバーガイド36によってロック姿勢とロック解除姿勢とに揺動案内されるようになっている。尚、図中符号37は、ロック解除レバー35がロック解除姿勢に保持されたことを検出するロック解除検出スイッチである。
【0013】
更に詳しくは、ロック解除レバー35は、ロッド38、揺動プレート39、及びロッド41を介してロックプレート32と連結しており、当該ロック解除レバー35をロック姿勢(図2参照)から持ち上げてロック解除姿勢に揺動操作することによって、前記ロックピン33に係止するロックプレート32の係止状態(ロック状態)を解除できるようになっている。
【0014】
即ち、上部枠体17が全閉状態の時は、ロックプレート32の係合溝(切欠き)32aをロックピン33に係合することによって上部枠体17の開放がロックされる。この状態で、ロック解除レバー35を上方へ揺動操作すると、それに連動してロックプレート32の係合溝32aがロックピン33から外れ上部枠体17の開き操作が許容されるようになっている。
【0015】
また、アクチュエータ22を介して上部枠体17の開閉操作を行う開閉操作スイッチ42,43スイッチは、脱穀装置3の外側面部、即ちフィードチェン13を覆うサイドカバー44の中央に上下に隣接して設けてある。尚、両操作スイッチ42,43スイッチは、モーメンタリスイッチを採用すると共に、常時は透明なカバー体45によって覆われており、このカバー体45を持ち上げて開放した状態でスイッチ操作を行うことができる。
【0016】
そして、図5に示すように、コンバイン1は、マイクロコンピュータ(CPU、ROM、RAM等を含む)を用いて構成した制御部51を備えている。そして、制御部51の入力側には、上部枠体17の開閉操作を行う開操作スイッチ42と閉操作スイッチ43、詳細は後述する上部枠体17の閉動作中における該上部枠体17下方の異物を検出する異物検出手段52F,52R、アクチュエータ(電動シリンダ)22に付設した該アクチュエータの作動ストローク上限検出スイッチ53A、作動ストローク下限検出スイッチ53B、及びロック解除検出スイッチ37を接続している。
【0017】
更に詳しくは、図1に示すように、挟扼レール14を支持する支持フレーム55の上方には、この支持フレーム55と平行で、且つ前後方向中間部Pを支点として上下揺動可能な異物検知バー56が設けてあり、この上下揺動する異物検知バー56の前後両端部近傍の上面側と当接する位置に、上述した上部枠体17の閉動作中における該上部枠体17下方の異物を検出する異物検出手段52F,52Rとしての前側と後側の異物検出スイッチ配設している。
【0018】
更に、異物検知バー56は、上部枠体17に対して上下動可能に支持されると共に、その中央部を挟扼レール14側に方向付勢する圧縮スプリング57と左右両端を吊持する引張スプリング58,58を備えており、これらスプリングの付勢力は、圧縮スプリング57>引張スプリング58,58となるように設定してある。
【0019】
ところで、脱穀フィードチェン13と、該脱穀フィードチェン13の上側に沿って配置される挟扼レール14との間に、工具や交換部品等を放置したままで上部枠体17を閉じる操作を行った場合、複数の連結節14a〜14dからなる挟扼レール14のうち、例えば図示する前側の連結節14aと脱穀フィードチェン13との間に工具や交換部品が挟まれたとすると、この連結節14aを上下動可能に案内するガイドピン61aが上動して、該ガイドピン61aの上端が異物検知バー56に当接するので、該異物検知バー56は、支点Pを中心として前端側が上方に揺動し、それによって異物検知バー56の前端側の上面が前側の異物検出スイッチ52Fに当接して、該異物検出スイッチ52FがON作動するように構成している。
【0020】
即ち、上述した構成によれば、異物検知バー56は、その前後方向中間部Pを支点として上下揺動するので、上下揺動支点である異物検知バー56の前後方向中間部Pより前側で脱穀フィードチェン13と挟扼レール14との間に異物が挟まれた場合は、前側の異物検出スイッチ52FがON作動する一方、上下揺動支点である異物検知バー56の前後方向中間部Pより後側で脱穀フィードチェン13と挟扼レール14との間に異物が挟まれた場合は、後側の異物検出スイッチ52RがON作動するようになっている。
【0021】
一方、制御部51の出力側には、脱穀フィードチェン13と挟扼レール14との間に異物が挟まれたことを知らせる警報ブザー62、上部枠体17を開閉するアクチュエータ22を接続している。
【0022】
次に、上述した制御部51による上部枠体17の閉制御を図6に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0023】
先ず、ステップS1では、上部枠体17の閉操作を行う閉操作スイッチ43がONになっているか否かを判断し、ONになっていればステップS2に進み、ONになっていなければ元に戻る。
【0024】
ステップS2では、上部枠体17を開閉するアクチュエータである電動シリンダ22の作動ストローク下限検出スイッチ53BがONになっているか否か、即ち上部枠体17が完全に閉じた状態になっているか否を判断し、ONになっていればステップS3に進み、ONになっていなければステップS4に進む。
【0025】
ステップS3では、電動シリンダ22の作動を停止させる一方、ステップS4では、電動シリンダ22を縮作動、即ち上部枠体17を閉動作させながらステップS5に進む。
【0026】
そして、ステップS5では、前側または後側の異物検出スイッチ52F,52RがONになったか否か、即ち脱穀フィードチェン13と挟扼レール14との間に異物が挟まれたか否かを判断し、両異物検出スイッチ52F,52Rが共にONでなければ電動シリンダ22の縮作動を継続し、両異物検出スイッチ52F,52Rのうち何れかのスイッチがONになればステップS6に進む。
【0027】
ステップS6では、脱穀フィードチェン13と挟扼レール14との間に異物が挟まれたことを知らせる警報ブザー62に出力すると共に、電動シリンダ22の縮作動を停止させてステップS7に進む。
【0028】
そして、ステップS7では、電動シリンダ22を一定時間伸作動、即ち脱穀フィードチェン13と挟扼レール14との間に挟まれた異物を開放した状態に上部枠体17を開動作させる制御を実行するように構成している。
【0029】
つまり、上述した上部枠体17の閉制御によれば、上部枠体17を下部枠体23に対して開いた状態で扱室12内のメンテナンス等を行った後、十分な点検を行わずに誤って扱室12内に工具や交換部品等を放置したままで上部枠体17を閉じる操作を行った場合でも、上部枠体17と下部枠体23の間にある異物を異物検出手段(異物検出スイッチ)52F,52Rにより検出して、上部枠体17の閉作動を中止させ、更に上部枠体17の閉作動を中止させた後に上部枠体17を一定時間開動作させる制御を実行することができるので、この時扱室12内や脱穀フィードチェン13上の異物を取り去ることによって扱室12等の損傷が起こることを回避できると共に、上部枠体17を確実に閉作動させることができる。そして、上部枠体17を閉じた時は、この上部枠体17を開閉するアクチュエータ(電動シリンダ)22の作動ストローク下限検出スイッチ53BがONになっており、前記制御を中止するので、通常の脱穀作業を行う際に扱室12内で脱穀される穀稈を異物として検出するといった不具合は起こらない。
【0030】
尚、上述の如く上部枠体17を下部枠体23に対して開いた状態から閉じる際、上部枠体17と下部枠体23の間にある異物を検出する異物検出手段として様々な実施形態が考えられる。例えば、上部枠体17の回動アーム19の支点軸18にポテンショメータを付設し、上部枠体17の閉動作中に該上部枠体17と下部枠体23との間に異物を挟んだ時、ポテンショメータにより上部枠体17の閉動作中おける角速度の異常な変化を求めて異物検出手段を構成してもよい。同様に、上部枠体17の閉動作中に該上部枠体17と下部枠体23との間に異物を挟んだ時、上部枠体17を開閉するアクチュエータ22の過負荷を検出して異物検出手段を構成することも可能である。
【0031】
ところで、図7に例示したものは、コンバイン1の機体に備える燃料タンクの給油口65の近傍に、市販の燃料携行缶66を傾斜姿勢で載置できるような台座67を設け、この台座67上にベルト68を用いて燃料携行缶66を縛着すると共に、燃料携行缶66の口金66aと燃料タンクの給油口65に漏れなく連通して燃料携行缶66の底部に達する給油パイプ69を設け、更に図示しないサイホンポンプ等を用いて自動的に燃料携行缶66内の燃料を燃料タンクに補給できるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】コンバインの一部破断側面図。
【図2】上部枠体を閉じた状態の脱穀装置の正面図。
【図3】上部枠体を開いた状態の脱穀装置の正面図。
【図4】閉コンバインの後部側の側面図。
【図5】制御部のブロック図。
【図6】上部枠体閉制御を示すフローチャート。
【図7】燃料携行缶の載置方法を示す正面図。
【符号の説明】
【0033】
1 コンバイン
3 脱穀装置
12 扱室
17 上部枠体
22 アクチュエータ
23 下部枠体
42 操作手段(開操作スイッチ)
43 操作手段(閉操作スイッチ)
51 制御部
52F 異物検出手段(後側の異物検出スイッチ)
52R 異物検出手段(前側の異物検出スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室(12)の上方を覆う上部枠体(17)を下部枠体(23)に対して開閉するアクチュエータ(22)と、該アクチュエータ(22)を作動させる操作手段(42,43)と、該操作手段(42,43)の操作に基づいてアクチュエータ(22)に上部枠体(17)の開閉指令を出力する制御部(51)を備えたコンバイン(1)の脱穀装置(3)において、上部枠体(17)が下部枠体(23)に対して開いた状態にある時、両枠体(17,23)の間にある異物を検出する異物検出手段(52F,52R)を設け、該異物検出手段(52F,52R)により異物を検出した時は、上部枠体(17)の閉作動を中止させる制御を実行するように構成したことを特徴とするコンバインの脱穀装置。
【請求項2】
上部枠体(17)を閉じた時は、前記制御を中止する請求項1に記載のコンバインの脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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