説明

コンバインの脱穀装置

【課題】四番穀粒の回収率を良好にした四番処理室を備えたコンバインの脱穀装置を提供すること。
【解決手段】コンバインの脱穀装置において、刈取った穀稈を扱胴69により脱穀処理する扱室66の搬送方向終端部に達した被処理物を引き継いで処理する排塵処理胴71を軸架した排塵処理室68を備え、扱室66の後端部に達した被処理物を排塵処理室68へ排出する排塵処理胴連通口Aの後方に位置する扱胴69の延長部表面に扱胴69の回転方向(矢印W方向)に対して鋭角θとなるように傾斜させた刺さり粒落とし部材100を取り付けたので、扱胴69の回転により、搬送穀稈を大きく開き刺さり粒落とし部材100が入り込むようになり、搬送穀稈の穂先部分の排出が良好に行え、排藁搬送部への穀稈の引継ぎが良く、搬送姿勢が良好となり、脱粒した穀粒の回収が良好に行える。また、扱室内の藁塵や穀粒の処理物の排出も良好となり、扱室内の負荷を軽減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに搭載される脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは穀稈の刈取装置と、脱穀装置と、脱穀後一時的に貯留するグレンタンクと、グレンタンクに貯留されている穀粒を排出するオーガなどから構成される。
脱穀装置の主脱穀部である扱室には刈取装置で刈り取った穀稈がフィードチェーンにより搬送、挿入され、穀稈は扱室に軸架された扱胴の表面に多数設けられた扱歯と扱網との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁くず)は扱網を通過して、選別室の揺動棚で受け止められ唐箕からの送風による送風選別や揺動棚の揺動選別などによって二番穀粒や藁屑などを分離して穀粒のみをグレンタンクに搬送する。
【0003】
二番穀粒は二番処理室に送られ二番処理胴により穀粒、枝梗粒などに分離され、再び揺動棚に落下して穀粒、二番穀粒、藁屑などに分離される。扱室で発生した藁くずなど短尺のものは排塵処理室に搬送され、排塵処理胴により処理される。脱穀装置の扱室の終端に到達した脱穀された残りの穀稈で長尺のままのものは、排藁搬送装置により搬送され、脱穀装置の後部の排藁処理室に投入された後、圃場に放出される。
【0004】
コンバイン等に搭載される脱穀装置による上記脱穀作業は、省力化、能率化され、脱穀装置の扱室の他に、二番処理室、排塵処理室などを設け、脱穀の高能率化や穀粒回収の高効率化が図られている。そして、穀粒の回収効率を向上させるために、これら二番穀粒や揺動棚の終端部からコンバインの外部に排出される三番穀粒、扱室内で脱穀済み排藁に穀粒が刺さり込んでできる刺さり粒(正常な穀粒が藁と連れ回ることで藁に刺さって発生する)などの四番穀粒等の回収ロス低減を図ることは重要である。
【0005】
前記扱室に隣接して二番処理室を配置し、該二番処理室の後方に排塵処理室を配置し、、扱室の後端部側の扱胴部分を利用した四番穀粒を処理する四番処理室が配置されている構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−35782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1記載の構成によれば、四番処理室の処理胴での四番穀粒の回収率があまり良くなかった。
本発明の課題は、四番穀粒の回収率を良好にした四番処理室を備えたコンバインの脱穀装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は次の解決手段により解決できる。
請求項1記載の発明は、刈り取った穀稈を扱胴(69)により脱穀処理する扱室(66)と、扱室(66)の搬送方向終端部に達した被処理物を引き継いで処理する排塵処理胴(71)を軸架し、扱室(66)の後部側方に設けた排塵処理室(68)とを備えた脱穀装置(15)において、前記扱室(66)の後端部に達した被処理物を排塵処理室(68)へ排出する排塵処理胴連通口(A)を設け、該排塵処理胴連通口(A)の後方に位置する扱胴(69)の延長部表面には扱胴(69)の回転方向に対して鋭角(θ)となるように傾斜させた刺さり粒落とし部材(100)を取り付けた刺さり粒回収部(B)を設けたことを特徴とするコンバインの脱穀装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、刺さり粒落とし部材(100)を扱胴(69)の延長部表面に扱胴(69)の回転方向(図8の矢印W方向)に対して鋭角(θ)となるように傾斜させて配置したので、扱胴(69)の回転により、搬送穀稈を大きく開き、刺さり粒落とし部材(100)が入り込むようになり、搬送穀稈の穂先部分の排出が良好に行え、排藁搬送部への穀稈の引継ぎが良く、搬送姿勢が良好となり、また、脱穀穀粒の回収が良好に行える。また、扱室(66)内の藁塵や穀粒の処理物の排出も良好となり、扱室(66)内の負荷が軽減され、脱穀作業の能率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態の穀類の収穫作業を行うコンバインの右側面図である。
【図2】図1のコンバインの平面図である。
【図3】図1のコンバインの脱穀装置の側面断面図である。
【図4】図1のコンバインの脱穀装置の平面図である。
【図5】図3の図3のX1−X1線矢視図の一部省略図である。
【図6】図3のX2−X2線矢視図である。
【図7】図3のX3−X3線矢視図である。
【図8】図1のコンバインの脱穀装置の刺さり粒落とし部材を有する扱胴の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例を図面と共に説明する。
図1には本実施例の穀類の収穫作業を行うコンバインの右側面図を示し、図2にはコンバインの平面図を、図3にはコンバインの脱穀装置の一部切り欠き側面断面図を示す。なお、本実施の形態ではコンバインの前進方向に向かって前側と後側をそれぞれ前、後といい、左側と右側をそれぞれ左、右ということにする。
【0012】
図1ないし図2に示すコンバイン1の走行フレーム2の下部には、ゴムなどの可撓性材料を素材として無端帯状に成型した左右一対のクローラ4を持ち、乾田はもちろんのこと、湿田においてもクローラ4が若干沈下するだけで自由に走行できる構成の走行装置3を備え、走行フレーム2の前部には刈取装置6を搭載し、走行フレーム2の上部には図示しないエンジンならびに脱穀装置15、操縦席20およびグレンタンク30を搭載する。
【0013】
刈取装置6は、図示しない刈取昇降シリンダの伸縮作用により刈取装置6全体を昇降して、圃場に植生する穀稈を所定の高さで刈取りができる構成としている。刈取装置6の前端下部に分草具7を、その背後に傾斜状にした穀稈引起し装置8を、その後方底部には刈刃(図示せず)を配置している。刈刃と脱穀装置15のフィードチェン14の始端部との間に、図示しない前部搬送装置、扱深さ調節装置、供給搬送装置などの搬送装置9を順次穀稈の受継搬送と扱深さ調節とができるように配置している。
【0014】
コンバイン1の刈取装置6の作動は次のように行われる。まず、エンジンを始動して変速用、操向用などの操作レバーをコンバイン1が前進するように操作し、刈取・脱穀クラッチ(図示せず)を入り操作して機体の回転各部を伝動しながら、走行フレーム2を前進走行させると、刈取、脱穀作業が開始される。圃場に植立する穀稈は、刈取装置6の前端下部にある分草具7によって分草作用を受け、次いで穀稈引起し装置8の引起し作用によって倒伏状態にあれば直立状態に引起こされ、穀稈の株元が刈刃に達して刈取られ、前部搬送装置に掻込まれて後方に搬送され、扱深さ調節装置、供給搬送装置に受け継がれて順次連続状態で後部上方に搬送される。
【0015】
穀稈は供給搬送装置からフィードチェン14と該チェン14の上側に配置され、該チェン14に向けて弾性付勢されながら機体に支持された挟扼杆16との間の始端部側に受け継がれ、脱穀装置15に供給される。脱穀装置15は、上側に扱胴69を軸架した扱室66を前板97と後板98の間に配置し、扱室66の下側に選別室50を一体的に設け、供給された刈取穀稈を脱穀、選別する。
【0016】
脱穀装置15に供給された穀稈は、後で詳細に説明するが、主脱穀部である扱室66に挿入され、扱室66に軸架され回転する扱胴69の多数の扱歯69aと、フィードチェン14による移送と、扱網74との相互作用により脱穀され、被処理物(穀粒や藁くず)は脱穀装置15内の選別室50の揺動棚51で受け止められ、上下前後方向に揺動する揺動棚51上を移動しながら、唐箕79からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒はシーブ53、54および選別網63を通過し、一番螺旋65から、搬送螺旋を内蔵している一番揚穀筒73(図6、図7)を経てグレンタンク30へ搬送され、グレンタンク30に一時貯留される。一番揚穀筒73の長手方向の軸芯上にグレンタンク30の籾排出口を設けている。
【0017】
脱穀装置15の扱室66の終端に到達した脱穀された残りの穀稈で長尺のままのものは、並列配置される排藁株元チェーン80a(図4)および排藁穂先チェーン80b(図4)に挟持されて搬送され、脱穀装置15の後部の排藁処理室82に投入されて圃場に放出される。排藁処理室82内には排藁カッター81a、81bが設けられており、排藁カッター81a、81bにより切断された穀稈は、排藁カッター81a、81bの下方であって、排藁処理室82の前壁部に基部が支持され、後方下り傾斜に設けられた板状の切断藁ガイド96(図3)により案内されて圃場に放出される。
【0018】
グレンタンク30内の底部に穀粒移送用のグレンタンク螺旋(図示せず)を設け、グレンタンク螺旋を駆動する螺旋駆動軸に縦オーガ18および横オーガ19からなる排出オーガを連接し、グレンタンク30内に貯留した穀粒を排出オーガ排出口からコンバイン1の外部に排出する。グレンタンク螺旋(図示せず)、縦オーガ螺旋(図示せず)および横オーガ螺旋(図示せず)は、エンジンの動力の伝動を受けて回転駆動され、それぞれの螺旋羽根のスクリュウコンベヤ作用により貯留穀粒を搬送する。
【0019】
図4には図1のコンバインの脱穀装置15の平面図を示し、図5には図3のX1−X1線矢視図の一部省略図、図6は図3のX2−X2線矢視図、図7は図3のX3−X3線矢視図を示す。
刈取装置6で刈り取った穀稈は刈取装置6に装着された穀稈搬送、調節装置で扱深さが調節され、脱穀装置15の主脱穀部である扱室66内に挿入される。扱室66に軸架された扱胴69は、その表面に多数の扱歯69aが設けられており、図示しない駆動機構により、エンジンからの動力により、図4の矢印W方向に回転する。扱室66に挿入された穀粒の付いた穀稈は、移動するフィードチェン14により図4の矢印A方向に移送されながら、矢印W方向に回転する扱胴69の扱歯69aと扱網74との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁くず)は扱網74を通過して、揺動棚51で受け止められる。
【0020】
揺動棚51は、扱室66の扱網74の下方に配置した移送棚52とその後方に配置した上方の第1チャフシーブ53、第2チャフシーブ54とその下方の選別網63と最後端部に配置したストローラック62などから構成されている。
【0021】
第1チャフシーブ53と第2チャフシーブ54は、揺動しながら各シーブ間から被処理物を漏下させ、唐箕79からの送風により風力選別する点で共通しているが、被処理物の搬送方向前方側の第1チャフシーブ53の方が後方側にある第2チャフシーブ54に比べて各シーブの大きさが小さく、各シーブ間の距離が多少狭い構成である。被処理物の搬送方向前方側では、被処理物中における単粒の含有率が高く、藁屑の漏下を抑えながら単粒だけを漏下させ、藁屑をより後方へ移送するために、このような構成としている。
【0022】
また、第1チャフシーブ53の上方に、揺動棚51上の被処理物を拡散させる拡散ガイド88を、被処理物の搬送方向に向かって拡散ガイド88の前端が前記移送棚52の上方に位置するように設けている。
そして移送棚52には複数個のラック状の選別板52aを備えており、移送棚52は第1チャフシーブ53の前方に配置されている。移送棚52は扱胴69の下方に配置して二番処理物を受け止め得る構成になっている。
扱網74(図3)の前方の領域で漏下する脱穀初期に脱粒した穀粒は単粒であり夾雑物も含んでいないので第1チャフシーブ53や第2チャフシーブ54上で粗選別する必要が無く、直接選別網63で後述する唐箕79からの送風により風選することができ、これらチャフシーブ53、54の負荷を軽くし、能率的な脱穀が可能となる。
【0023】
また、揺動棚51は図示しない揺動棚駆動機構の作動により上下前後方向に揺動するので、被処理物は矢印D方向(図3)に移動しながら、揺動棚51上に漏下した比重の重い穀粒は選別網63を矢印E方向に通過し、一番棚板64で集積され、一番螺旋65から一番揚穀筒73を経てグレンタンク30へ搬送される。グレンタンク30に貯留された穀粒は、オーガ18、19を経由してコンバイン1の外部へ搬送される。
【0024】
揺動棚51の上の被処理物のうち軽量のものは、揺動棚51の揺動作用と唐箕79のファン79aによる送風に吹き飛ばされて揺動棚51から第1チャフシーブ53、第2チャフシーブ54に向けて矢印D方向に移動し、ストローラック62の上で大きさの小さい二番穀粒は矢印G方向に漏下して二番棚板85に集められ、二番螺旋86で二番揚穀筒(図示せず)へ搬送される。
【0025】
二番穀粒(二番物ということがある)は、正常な穀粒、枝梗粒、藁くずおよび藁くずの中に正常な穀粒が刺さっている刺さり粒などの混合物であり、二番揚穀筒の中を二番揚穀筒螺旋(図示せず)により揚送されて、二番処理室入口から二番処理室67の上方へ放出される。二番処理室67の下部に軸架する二番処理胴70はエンジンからの動力を伝動して駆動機構により、図4の矢印J方向に回転する。二番穀粒は二番処理胴70に植設してある多数の処理歯70aに衝突しながら矢印I方向(図3、図4)に進行する間に二番穀粒の分離と枝梗粒の枝梗の除去を行い、被処理物の一部は二番処理胴70の下方に設けられた受網75(図6)を通り抜けて選別室50に漏下し、被処理物の大部分は移送棚52から第1チャフシーブ53、第2チャフシーブ54方向に送られ、穀粒は第1チャフシーブ53、第2チャフシーブ54と選別網63を通り、一番螺旋65に集められる。
このように二番物を移送棚52上に回収して第1チャフシーブ53、第2チャフシーブ54による再処理をすることにより、穀粒と藁くずとの分離が良好になる。
【0026】
扱室66を図4の矢印A方向に進行し、扱室66の終端に到達した被処理物の中の脱穀された穀稈で長尺のままのものは、図4に示す矢印A1方向に搬送され、排藁処理室82に投入される。
【0027】
また、扱室66の扱胴69による被処理物搬送方向終端部側に到達した被処理物の中で、藁くずなど短尺のものは、扱室66の扱胴69による被処理物の搬送方向終端部と排塵処理室68の排塵処理胴71による被処理物の搬送方向始端部とを連通する連通口Aにある排塵処理室入口68aから矢印A2(図4)方向に投入されて、扱室66からの取り込みを良好にする螺旋71bの作用により排塵処理室68に入り、排塵処理室68では回転する排塵処理胴71の処理歯71aにより矢印K方向(図3)に搬送されながら処理される。なお、排塵処理胴71の上手側に螺旋71bが設けられ、排塵処理胴71の下手側に処理歯71aが設けられている。排塵処理胴71の扱室66側には格子状の排塵処理胴枠72(図7)が排塵処理胴71の下側及び扱室66側の外周に沿って設けられ、排塵処理室68の濾過体を構成している。
【0028】
前記排塵処理胴枠72の後端72a(図3)は、排塵処理室68の後端68b(図3)よりも所定距離だけ前方に配置され、この排塵処理胴枠72の後端72aと排塵処理室68の後端68bとの間に、排塵処理室68の後端部に達した被処理物を脱穀装置15の外部へ排出する第1排塵口102を、揺動棚51上に向かう斜め下方向および後方に向けて開口して設けている。
【0029】
排塵処理室68に入った少量の穀粒を含む藁くずを主体とする被処理物の中の漏下物(穀粒)は受け網76(図3)から揺動棚51上に漏下し、揺動棚51に設けられたストローラック62に誘導されて二番棚板85から二番揚穀筒を経由して二番処理室67に送られる。なお、同軸上にある二番処理胴70と排塵処理胴71の駆動は図示しないがエンジンから駆動力をプーリを介して行われる。
【0030】
図3に示すように、脱穀装置15の後部に被処理物を吸引するための吸引ファン91を設け、排塵処理室68を含む脱穀装置15内で発生する排塵のうち、比重の軽い藁くず、枝梗および塵埃を含む空気を吸引ファン91の回転による送風で吸引し、第3排塵口92から矢印L方向へ吹き出して、コンバイン1の外部へ放出する。
【0031】
一方、吸引ファン91の回転による送風で吸引されない被処理物は揺動棚51の終端部であるストローラック62の後端に設けられ、脱穀装置15の後壁15aに形成された第2排塵口103からコンバイン1の外部に排出される。
【0032】
揺動棚51上を後方へ移送されてきた藁屑でチャフシーブ53,54やストローラック62の目合いから濾過しないものは、揺動棚51の揺動やストローラック62の移送作用によって第2排塵口103から脱穀装置15の外部に排出されるが、この藁屑中には穀粒がわずかに含まれることがあり、このように藁屑とともにコンバイン1の外部に排出される穀粒を三番穀粒と言い、三番穀粒が脱穀装置15の外部に排出されることを三番ロス(三番損失)、三番穀粒の回収ロスなどと言う。
【0033】
また、排塵処理室68から揺動棚51の終端部に矢印M(図3)のように落ちた排塵(排塵物)のうち二番穀粒、三番穀粒など小径で比重の重いものは、揺動棚51の終端部のストローラック62あるいは第2チャフシーブ54を矢印G方向へ通過して二番棚板85に漏下し、再び二番処理室67において処理される。
【0034】
本実施例では扱室66から排塵処理室68への連通口Aの後方に延長した扱胴部分(四番処理胴)を刺さり粒回収部(四番処理室)Bとし、刺さり粒落とし部材100を扱胴69の延長部に回転方向(図4,図8の矢印W方向)に対して鋭角θとなるように斜めに傾斜して設けて、刺さり粒回収機能を持たせた。図8に刺さり粒落とし部材100を有する扱胴69の展開図を示す。また、図5に示すように刺さり粒落とし部材100は先端につれて細くした中空のワイヤーツースとしている。
【0035】
このように刺さり粒落とし部材100を扱胴69の延長部表面に扱胴69の回転方向(矢印W方向)に対して鋭角θとなるように傾斜させて配置した。また、図8から明らかなように、刺さり粒落とし部材100は扱胴69の延長部表面に扱胴69の回転方向(矢印W方向)に間欠的に螺旋状に、かつ排塵処理胴連通口Aにある扱歯69aよりも粗に設けているので、扱胴69の回転により、搬送穀稈を大きく開き、刺さり粒落とし部材100が入り込むようになり、搬送穀稈の穂先部分の排出が良好に行え、排藁搬送部への穀稈の引継ぎが良く、搬送姿勢が良好となり、また、脱粒した穀粒の回収が良好に行える。また、扱室66内の藁塵や穀粒の処理物の排出も良好となり、扱室66内の負荷低減が良好となる。
【0036】
なお、刺さり粒落とし部材100は先端側ほど細くなっている中空のワイヤーツースとしているので、刺さり粒落とし部材100が搬送稈に入り込みやすくなり、傾斜して配置することと合わせて、搬送稈の穂先部分を傷つけることなく搬送稈を割るように作用し、良好に刺さり粒を取り除き、藁塵の発生は抑制でき、刺さり粒除去性能が安定する。
【0037】
図5に示すように、脱穀装置15の後板98の下方を開放した構成において、刺さり粒回収部Bに対向する位置にある後板98の穂先側下部に長藁や雑草の引っ掛かりを防止する矩形状のスクレーパ体99を取り付けた。
【0038】
単胴型脱穀装置15の扱室66の終端では受網を設けておらず、扱胴69の下半分は開放しており、後板98の下部は端部が露出しているので、扱室66内で引き抜かれた長藁や雑草などが後板98の下部端部に引っかかりやすい欠点があった。これら長藁や雑草などの引っ掛かりは穀稈搬送の障害となっていた。そこで後板98の下部に厚みのあるスクレーパ体99を設けることで、前記長藁や雑草などが後板98の下部端部に引っかかるのを防止することができる。
図5に示すように、スクレーパ体99を取り付ける部位は下方まで延長した後板98の前記延長した部分98aに設けている。
こうして、刺さり粒落とし部材100により扱胴69の回転に沿って持ち廻る長藁を浮かせてスクレーパ体99によりかき取ることができ、四番穀粒の回収効果が向上した。
【0039】
扱室66を排塵処理胴連通口Aより後方に延長した刺さり粒回収部Bに位置する挟扼杆16の部分(図5に示す)を、例えば図6,図7に示す挟扼杆16のフィードチェンと弾性接触している断面「コ」字状の内側(排塵処理胴側)を切上げて、切欠部16aとした構成(図4の切欠部16aも参照)にしている。
【0040】
このように、挟扼杆16の内側を大きく切上げたことで、排藁株元チェン80aを挟扼杆16の終端まで接近して設けることができ、扱胴67の脱粒作用が穀稈株元にまで及ぶので、搬送穀稈の引継ぎ性能が従来より向上し、また、扱室66から搬送されてくる穀稈の引き出しがスムーズになり、その搬送姿勢の乱れがなくなる。また、扱室66の終端では大半の穀稈の脱粒が終わっており、穀稈は扱室66内に引き抜かれ難い。
そのため、搬送されてくる穀稈からの四番物の除去(回収)が効率よく行え、四番物のロスが低減する。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の脱穀装置はコンバインなどの収穫した穀粒の処理装置に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 コンバイン 2 走行フレーム
3 走行装置 4 クローラ
6 刈取装置 7 分草具
8 穀稈引き起こし装置 9 搬送装置
14 フィードチェン 15 脱穀装置
15a 後壁 16 挟扼杆
16a 切欠部 18 縦オーガ
19 横オーガ 20 操縦席
30 グレンタンク 50 選別室
51 揺動棚 52 移送棚
52a 選別板 53 第1チャフシーブ
54 第2チャフシーブ 62 ストローラック
63 選別網 64 一番棚板
65 一番螺旋 66 扱室
67 二番処理室 68 排塵処理室
68a 排塵処理室入口 68b 排塵処理室の後端
69 扱胴 69a 扱歯
70 二番処理胴 70a 処理歯
71 排塵処理胴 71a 処理歯
71b 螺旋 72 排塵処理胴枠
72a 排塵処理胴枠の後端
73 一番揚穀筒 74 扱網
75、76 受網 79 唐箕
79a 唐箕ファン 80a 排藁株元チェーン
80b 排藁穂先チェーン
81a、81b 排藁カッター
82 排藁処理室 85 二番棚板
86 二番螺旋 88 拡散ガイド
91 吸引ファン 92 第3排塵口
96 切断藁ガイド 97 前板
98 後板 99 スクレーパ体
100 刺さり粒落とし部材
102 第1排塵口 103 第2排塵口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈り取った穀稈を扱胴(69)により脱穀処理する扱室(66)と、扱室(66)の搬送方向終端部に達した被処理物を引き継いで処理する排塵処理胴(71)を軸架し、扱室(66)の後部側方に設けた排塵処理室(68)とを備えた脱穀装置(15)において、
前記扱室(66)の後端部に達した被処理物を排塵処理室(68)へ排出する排塵処理胴連通口(A)を設け、該排塵処理胴連通口(A)の後方に位置する扱胴(69)の延長部表面には扱胴(69)の回転方向に対して鋭角(θ)となるように傾斜させた刺さり粒落とし部材(100)を取り付けた刺さり粒回収部(B)を設けたことを特徴とするコンバインの脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−166824(P2010−166824A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10007(P2009−10007)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】