説明

コンバインの自動方向制御装置

【課題】オペレータが疎植圃場を刈り取っていることしっかり認識し、刈取走行方向が乱れようとすると直ちに手動操向によって走行方向を修正出来るようにする。
【解決手段】穀稈センサ1a,1bが未刈穀稈に接触して刈取部13の位置を検出し、その検出結果で走行方向を制御する制御装置2を設けたコンバインの自動刈取方向制御において、従来の植付間隔よりも広い疎植を判定する手段S22を設け、刈取開始後に疎植を判定すれば、オペレータに疎植された圃場での刈取中であることを知らせる手段S23を設けたことを特徴とするコンバインの自動方向制御装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圃場に植立する穀稈を刈り取って脱穀処理するコンバインの自動方向制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、オペレータの運転操作を楽にするために、刈取部に取付けられて刈取るべき未刈穀稈を接触により穀稈位置を検出する穀稈センサの検出信号により、機体進行方向に続く刈取条の未刈穀稈列に追従走行するべく機体の進行方向を制御するようにしている。(特開2007−215490号公報参照)
上記進行方向制御装置の穀稈センサは、刈取部に取付けられて未刈穀稈をその片側方の所定の検出範囲内で検出する接触式の検出レバーを備え、この検出レバーを刈取部の先端の分草杆の左右両側方に張り出すように構成したものである。その方向制御は、機体の前進とともに相互隣接の2つの植付け条の間を左右の穀稈センサが前進すると、その何れかが穀稈と接触した時に接触側の穀稈から遠ざかるように機体の進行方向を制御処理するものである。
【特許文献1】特開2007−215490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記進行方向制御装置は、隣接穀稈列の中央を穀稈に接触しないように方向制御することから次の株に接近しない限り方向修正がされないので、収量効率向上のために近年試行されている疎植圃場においては株間22cmの上記標準植え圃場より株間が長い(例えば、株間30cm)ことから、圃場状況の局部的な変動等によって追従ミスを生じて走行方向が乱れるおそれがあった。
【0004】
そこで、本発明では、オペレータが疎植圃場を刈り取っていることしっかり認識し、刈取走行方向が乱れようとすると直ちに手動操向によって走行方向を修正出来るようにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
即ち、未刈穀稈に接触して該未刈穀稈に対する刈取部(13)の位置を検出する穀稈センサ(1a,1b)と、該穀稈センサ(1a,1b)の検出結果に基づいて走行方向を自動的に制御する制御装置(2)を設け、刈取対象の穀稈列の植付間隔が所定の植付間隔よりも広い疎植状態であることを判定する手段(23)を設け、刈取開始後に疎植状態であることを判定した場合に、オペレータに疎植された圃場での刈取中であることを知らせる手段(21)を設けたことを特徴とするコンバインの自動方向制御装置とした。
【0006】
この構成で、コンバインに搭乗して運転作業中のオペレータがうっかりしていても疎植された圃場の刈取中であることを報知手段21で知り、自動方向制御が誤作動した場合には手動で直ちに走行方向を修正しながら収穫作業を続行する。
【発明の効果】
【0007】
この発明によると、標準植付圃場や疎植圃場をランダムに刈取作業を行っているオペレータが、いち早く疎植圃場の刈り取り作業中であることを知ることが出来て、方自動方向制御の誤作動に対して手動操向に切り換えて対応でき、作業能率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図に示すように、コンバインの自動方向制御は、刈取部13に取付けた左右の穀稈センサ1a,1bと、その検出信号によって機体の進行方向を調節するために変速伝動機の左右のサイドクラッチと左右のブレーキを作動させて入り切り制御する制御装置2とから構成される。
【0009】
コンバインは、図1に示すように、コンバインの既刈側である機体右側に操作席10やグレンタンク11を備え、同操作席10の前側で機体本体部12の前端位置に昇降可能に刈取部13を配置して構成され、この刈取部13の刈取幅の左右の外側位置に穀稈センサ1a,1bを配置する。また、14は脱穀部であり、前記刈取部13で刈り取った穀稈を脱穀選別するものであり、この脱穀選別された穀粒は刈取走行に伴って順次グレンタンク11に送られ、積み替えまでの間一時的に貯留される。
【0010】
左右穀稈センサ1a,1bは、未刈穀稈をその片側方の所定の検出範囲内で接触揺動する揺動レバーにより検出する接触レバー式の構成である。左側の穀稈センサ1aは、機体の未刈側から内方に張り出して刈取幅の左最外側の穀稈15の位置を検出し、また、右側の穀稈センサ1bは、機体の既刈側から内方に張り出して刈取幅の右最外側の穀稈16の位置を検出する。
【0011】
また、左右穀稈センサ1a,1bによる距離の検出は、揺動レバーの揺動角度と対応する電圧値を出力する角度センサを使用し、そのセンサ値が所定の電圧範囲内に入るように、検出対象株の穀稈までの接近度合いに応じて旋回出力することにより、検出センサ位置への寄り過ぎを防止し、高精度の追従を可能とする。
【0012】
自動方向制御の制御ブロック構成は、図2の構成図に示すように、方向制御コントローラによる制御装置2の入力側には、方向制御実行選択のスイッチ3、左右の穀稈センサ1a,1b、左右の方向センサ4a,4b、パワステ左右ポジションセンサ5、車速検出センサ6等の信号を入力するべく接続し、出力側には、コンバインの旋回のために旋回内側となる左右駆動輪の駆動動力を調節する変速伝動機のサイドクラッチ左出力信号7aとサイドクラッチ右出力信号7b、圃場の状態を示すパネル表示信号21、ブレーキ作動信号22等を出力する。
【0013】
制御部1の内部構成は、各種のデジタル信号入力処理部8とアナログ信号入力処理部9とパルス信号入力処理部17を備えてデジタル情報、アナログ情報、および、車速パルス情報の信号処理をし、これらの情報により進行方向を決定する方向制御手段18、その方向制御出力に基づいて左右の旋回駆動指令を出力する左右の旋回出力処理部19a,19bとブレーキ出力処理部24と圃場判定処理部23、車速パルスを車速情報に変換する車速パルスカウント手段20等から構成する。
【0014】
制御装置2による自動方向制御については、方向制御選択スイッチ3がオンの場合に、方向制御手段18が左右いずれかの穀稈センサ1a,1bの検出信号により、機体進行方向に続く未刈穀稈列に追従走行するべく左右の旋回方向を決定し、これと対応して左右の旋回出力処理部19a,19bとブレーキ出力処理部24が自動方向制御処理を行い、穀稈センサ1a,1bが株に接触する時間と走行速度から算出する株間隔で判定する疎植圃場の判定結果をパネル表示信号21として出力する。
【0015】
詳細には、図3のフローチャートに示すように、ステップS1で方向制御実行選択のスイッチ3により方向制御が入力され、ステップS2とステップS3で左右の穀稈センサ1a,1bのうちのいずれか接触基準側として選択された側により、例えば、左側の穀稈センサ1aが基準の場合は、その側の刈取幅内の最外側穀稈15までの内側方向距離の判別処理(ステップS10とステップS12)および逆側センサ1bの検出信号による判別処理(ステップS11)を合わせて距離が所定値になるまでの間、所定値より近接している場合は接触基準側の方に機体を旋回するべく旋回出力のセット(ステップS13)をし、距離が検出範囲内で所定値より離れている場合は接触基準側の逆方に機体を旋回するべく旋回出力のセット(ステップS14)をする。
【0016】
上記旋回出力(ステップS13とステップS14)は、検出された内側方向距離が所定値となるまで継続することにより、それぞれの刈取方向の株間距離によることなく、上記左側穀稈センサ1aの側の刈取幅内の最外側穀稈列15に対する刈取位置を維持して機体を追従走行することができるので、標準植え圃場に限らず、間隔を空けて少ない苗量で施肥量を同一とすることにより標準植え圃場と同程度の収量、品質が得られる疎植圃場についても対応することができる。
【0017】
逆側の右側穀稈センサ1bを接触基準側として選択した場合についても、左右を入れ替えた上記同様の判別処理(ステップS4とステップS6)および旋回出力(ステップS7とステップS8)により、前記同様に、右側穀稈センサ1bの側の刈取幅内の最外側穀稈列16に対する刈取位置を維持して機体を追従走行することができるので、前記同様に標準植え圃場に限らず、疎植圃場についても対応することができる。
【0018】
圃場の株植付け状態が疎植の場合は、圃場の凹凸や硬軟によって自動方向制御の精度が悪くなりオペレータが手動によって走行方向を修正することが必要になる場合がある。このために、図4のフローチャートに示す疎植表示を行っている。
【0019】
すなわち、刈り取り作業を開始し(S20)、前記の自動方向制御を行い(S21)、所定距離を走行後に、疎植圃場かどうかの判断を行う(S22)。この判断は、条方向の株間隔が22mm以上であれば疎植圃場と判断する。そして、疎植圃場であれば、液晶モニタの表示部に文字やイラストで表示したり自動方向制御で点灯しているランプを点滅したりしてオペレータに知らせる。オペレータはこの表示がなされると操向レバーを操作する準備をして自動方向制御の誤作動に備えるのである。その後、自動方向制御を続行するのである(S24)。なお、操向レバーを操作すると、直ちに自動方向制御がキャンセルされて手動制御が生かされる手動操作優先制御となっている。
【0020】
尚、前記は、疎植圃場の表示を自動方向制御の判断機能を利用して表示させたが、オペレータが圃場を直接見て判断し、疎植圃場を表示するための表示ボタンを押して表示させるようにしても良い。
【0021】
また、前記の液晶モニタの表示部は、モニタの表示切換ボタンを押すたびに、エンジンの負荷状態やグレンタンク11への穀粒の溜まり具合や走行速度を表示する作業監視画面から自動方向制御の状態を表示する自動方向制御画面及び機体各部のメンテナンス管理情報を表示するメンテナンス画面に切換るようにしても良い。
【0022】
さらに、液晶モニタの表示部に示す疎植圃場の表示は、通常の作業監視画面と所定時間ごとに表示を切り換えるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】自動方向制御説明の平面図である。
【図2】自動制御ブロック図である。
【図3】自動制御のフローチャート図である。
【図4】疎植表示制御のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0024】
1a 左側穀稈センサ
1b 右側穀稈センサ
2 制御装置
13 刈取部
21 報知手段
23 疎植判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未刈穀稈に接触して該未刈穀稈に対する刈取部(13)の位置を検出する穀稈センサ(1a,1b)と、該穀稈センサ(1a,1b)の検出結果に基づいて走行方向を自動的に制御する制御装置(2)を設け、刈取対象の穀稈列の植付間隔が所定の植付間隔よりも広い疎植状態であることを判定する手段(23)を設け、刈取開始後に疎植状態であることを判定した場合に、オペレータに疎植された圃場での刈取中であることを知らせる手段(21)を設けたことを特徴とするコンバインの自動方向制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−75126(P2010−75126A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249351(P2008−249351)
【出願日】平成20年9月27日(2008.9.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】