説明

コンバイン

【課題】穀粒ロスを低減し、また揺動選別部の選別幅を有効に活用して整粒を増加させる。
【解決手段】処理胴21の下方に設けられて該処理胴21の処理物を受け、この処理物を処理胴21による脱粒物の送り方向とは反対方向に搬送して揺動選別部9上に排出する搬送体23を有し、この搬送体23によって搬送した処理物を、揺動選別部9上に排出する搬送終端部が、扱胴18の終端部側板よりもコンバイン機体の前側に位置すると共に、搬送体23の回転方向は、処理物を下方から上方に向けて該揺動選別部9上に排出する向きとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインを送塵口処理胴方式の自脱型コンバインについて説明する。この方式の自脱型コンバインは、刈取部で刈取り集稈した穀稈を穀稈搬送機構で挟持して後方の脱穀部へ搬送する。脱穀部には、扱室に機体の前後方向に軸支された扱胴が内装され、扱胴の下方には受網が張架されている。また扱胴の送塵口に受口が連通して扱胴の脱粒物を再処理する処理胴が処理室に内装され、処理胴の下方には処理網が張架されている。
【0003】
そして、脱穀部では、刈取部から受け継いだ穀稈の株元をフィードチェーンで挟持搬送しつつ、穀稈の穂先側を扱室に内挿し、扱胴の回転により、その外周部の複数の扱歯で脱穀処理を行い、さらに扱胴後部の脱粒物を処理胴に送給して再処理する。
【0004】
処理胴では、脱穀部で処理する穀粒の内、通常10〜15%の穀粒を単粒化、濾過している。脱穀処理及び再処理した穀粒は受網又は処理網を通して下方の揺動選別部へ落下させる一方、脱穀後の排藁は後方の排藁処理部へ移動させて処理するようにしている。
【0005】
揺動選別部は、フィードパン、選別篩線、チャフシーブ及びグレンシーブ等を揺動機枠に取付けて構成した揺動選別盤、送塵ファン、唐箕等を備えるとともに、揺動選別・風選別した一番穀粒を受ける一番穀粒受樋、二番穀粒を受ける二番穀粒受樋が設けられ、二番穀粒は二番還元コンベアにより揺動選別盤の選別篩線上に還元して再度揺動選別・風選別処理を行い、一番穀粒は揚穀コンベアを介してグレンタンクへ搬送して貯溜するとともに排出オーガで機体外部に搬出できるようにし、藁屑等は、後部の三番口から機外に排出するようにしている。
【0006】
従来、処理胴は、扱胴後部の脱粒物を受け継いで再処理し、脱穀部で処理する穀粒の内、通常10〜15%の穀粒を単粒化し、処理網を通して下方の揺動選別部上へ排出している。しかしながら、コンバイン本機の高速化、高能率化等によって脱穀処理量が増えてくると、処理胴の処理物が荒れて処理網の濾過が悪くなり、機外への排出量が増えたり、揺動選別部上に濾過されても、チャフシーブ等で濾過されずに三番口からの機外への排出が増えて、通常の単粒化率の達成も難しくなる。特に、処理胴の直下に多くの穀粒が集中するため、揺動選別の不良を招くことがあった。
【特許文献1】特開平11−319591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、三番口等からの穀粒ロスを低減することができ、また揺動選別部の選別幅を有効に活用して整粒を増加させることができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、脱穀部と、該脱穀部で脱穀した穀粒を揺動選別・風選別する揺動選別部とを有し、該脱穀部には扱胴と、扱胴送塵口に受口が連通して該扱胴の脱粒物を再処理する処理胴とを備えたコンバインであって、該処理胴の下方にあって該処理胴から排出された処理物を受け、該処理物を該処理胴による脱粒物の送り方向とは反対方向に搬送して揺動選別部の揺動選別盤上に排出する螺旋状体の搬送体は、搬送した前記処理物を前記揺動選別部上に排出する搬送終端部が前記扱胴の終端部側板よりもコンバイン機体の前側に位置すると共に、前記搬送体の回転方向は、該処理物を下方から上方に向けて該揺動選別部上に排出する向きであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、搬送体は、その搬送終端部を扱胴の終端部側板よりも機体の前側に位置させ、回転方向は、該処理物を下方から上方に向けて該揺動選別部上に排出する向きとする。例えば、正面視で当該搬送体を扱胴の左側に設置したとき、正面から見て反時計回りとすることで、揺動選別部の選別幅を一層有効に活用することができるとともに、搬送した処理物を、揺動選別部のチャフシーブ等にたたきつけることなく揺動選別部上に排出することができて、より整粒を増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3は、本発明の第1の実施の形態を示す図である。まず、図1を用いて、コンバインとしての自脱型コンバインの全体構成から説明する。自脱型コンバインは、クローラ式走行装置1上に取付けられた機体フレーム2の前端部に、刈取部3が、油圧シリンダ4により刈取フレーム5を介して昇降自在に配設されている。刈取部3における穀稈搬送機構6の直後方にフィードチェーン7を備えた脱穀部8が配設され、この脱穀部8の直下方位置に揺動選別部9が配設されている。
【0011】
一方、揺動選別部9の後方上部であって脱穀部8の後方位置に、排藁破砕用の排藁カッター36等を内装した排藁処理部10が配設されている。機体フレーム2の前部であって進行方向右側には、走行装置操向用のステアリングホイール等を装備した運転キャビン11が配設され、運転キャビン11の直後方位置に、脱穀・選別された穀粒を貯溜するグレンタンク12が配設されている。
【0012】
グレンタンク12には、その貯溜された穀粒を機体外部に搬出するための排出オーガ13が連設されている。また、運転キャビン11の下部後方位置に、各動力機構部の動力源となるエンジン等を収納した図示省略の原動機部が配設されている。
【0013】
刈取部3は、図示省略の穀稈引起装置の下側前方に進行方向に向かって突出させた分草体14、この分草体14の後方に配設された刈刃装置15等を備えている。そして圃場に植立した穀稈を分草体14を介して取込み、穀稈引起装置で引起こして穀稈の株元を刈刃装置15で刈り取る。その後、株元を斜め後方へ掻き込んで穀稈搬送機構6へ受け渡し、穀稈搬送機構6で挟持して後方へ搬送し、株元を脱穀部8のフィードチェーン7へ受け継ぐようにしている。
【0014】
脱穀部8は、扱室16及び処理室17を有し、扱室16には、機体の前後方向に軸支された扱胴18が内装され、扱胴18の下方には受網20が張架されている。ここで、図2、図3に示すように、処理室17には、扱胴18の送塵口18aに受口が連通して扱胴18の脱粒物を再処理する処理胴21が内装されている。処理胴21の下方には処理網22が張架されている。
【0015】
さらに、本発明において、処理室17には、処理胴21の下方に、処理胴21の処理物(濾過物)を受け、その処理物を処理胴21による脱粒物の送り方向とは反対方向に搬送して揺動選別部9の揺動選別盤26上に排出する搬送体23が内装されている。搬送体23の直下方には、受樋33が設けられている。
【0016】
搬送体23は、スクリューコンベア(螺旋状体)からなり、処理胴21の回転軸21aと搬送体23の回転軸23aとは、2個のスプロケット24a、24b及びチェーンからなるチェーン伝動機構24とスプロケット24bの回転軸に取付けられた第1のギヤ25a及び第2のギヤ25bの歯合からなるギヤ機構25とで連結されている。搬送体23は、このチェーン伝動機構24及びギヤ機構25により処理胴21の回転に応じて回転駆動されるようになっており、搬送体23の回転方向は、図2に示すように、正面視で搬送体23が扱胴18の左側に設置されているときは、正面から見て反時計回りとなっている。搬送体23を反時計回りとすることで、搬送した処理物を受樋33の排出部33aから揺動選別盤26のチャフシーブ等にたたきつけることなく、いわゆるアンダースローで排出することが可能となっている。このように、排出部33aからの排出態様は、基本的にはアンダースローが好適であるが、いわゆるオーバースローであってもよい。
【0017】
また受樋33の排出部33a、即ち搬送終端部は、扱胴18の終端部側板16a(図3の扱胴右端側板)よりも機体の前側に位置しており、揺動選別部9の選別幅を有効に活用して搬送した処理物を再選別し、穀粒ロスを低減するとともに整粒の増加を可能としている。そして、刈取部3の穀稈搬送機構6から受け継いだ穀稈の株元側をフィードチェーン7と図示省略の挟扼杆とで挟持して搬送しつつ、穀稈の穂先側を扱室16に内挿し、扱胴18外周部の複数の扱歯19で脱穀を行う。
【0018】
脱穀処理された穀粒は受網20を通過して下方の揺動選別部9へと移動する一方、排藁は後方の排藁処理部10へと移動する。また、処理胴21では、後端部から排出物が直接機外へ排出されるとともに、扱胴18の脱粒物が再処理され、その処理物(濾過物)が搬送体23で反対方向に搬送され、受樋33の排出部33aから揺動選別部9の選別始端側に排出される。
【0019】
揺動選別部9は、受網20下方に前端を臨ませて前後方向に揺動可能に支持された揺動選別盤26を備えている。揺動選別盤26は、受網20下方に上下2段に配設された図示省略の前フィードパン、後フィードパン、前フィードパン後端に上下揺動自在に取付けられた選別篩線、後フィードパンの後方に連設されたチャフシーブ及びチャフシーブ下方に配置されたグレンシーブ等が矩形枠状の揺動機枠に取付けて構成されている。
【0020】
前フィードパン下方には、前フィードパンと後フィードパンの間に選別風を送給する送塵ファン27が配置され、後フィードパン下方には、チャフシーブとグレンシーブ間及びグレンシーブ下方に選別風を送給する唐箕28が配置されている。
【0021】
グレンシーブ直下方には、左右方向に伸延して一番穀粒を受ける一番穀粒受樋29が配置され、一番穀粒受樋29内には、一番搬送コンベア29aが装備されている。グレンシーブ後部下方には、左右方向に伸延して二番穀粒を受ける二番穀粒受樋30が配置され、二番穀粒受樋30内には、二番搬送コンベア30aが装備されている。
【0022】
一番穀粒受樋29の一端部には上下方向に伸延する揚穀コンベア31の下端部が連設される一方、揚穀コンベア31の上端部はグレンタンク12に連設されて、一番穀粒受樋29内の一番穀粒が一番搬送コンベア29a→揚穀コンベア31→グレンタンク12へ搬送されるようになっている。
【0023】
二番穀粒受樋30の一端部には前後方向に伸延する二番還元コンベア32の後端部が連設されている。二番還元コンベア32により二番穀粒受樋30内の二番穀粒が揺動選別盤26の選別篩線上に還元されて再度揺動選別・風選別されるようになっている。
【0024】
そして、脱穀部8で脱穀処理及び再処理された穀粒を揺動選別盤26で受け、揺動選別盤26で揺動選別・風選別し、整粒を一番穀粒受樋29を介してグレンタンク12に取り出し、藁屑は揺動選別盤26の後端から機外に排出する。
【0025】
排藁処理部10には、フィードチェーン7の直後方に、排藁チェーン34が配設され、排藁チェーン34下方に吸排塵ファン35が配設され、排藁チェーン34の後部下方に略円筒状の排藁カッター36が配設されている。
【0026】
そして、脱穀部8で脱穀処理した後の排藁を排藁チェーン34で受け継いで排藁カッター36へ移送し、排藁カッター36によって破砕した後に、機体外部へ排出するとともに、揺動選別部9で選別された藁屑等を吸排塵ファン35の排風により三番口から機体外部へ排出する。グレンタンク12は、揺動選別部9によって選別された整粒を貯留するとともに、排出オーガ13によって機体の外部に搬出できるようにしている。
【0027】
図4には、本発明の第2の実施の形態を示す。本実施の形態は、処理胴部を、第1の処理胴37と、その下方に配置された第2の処理胴39との2段式処理胴としたものである。
【0028】
共にスクリュー式に構成された第1、第2の処理胴37、39は回転数が異なっており、第1の処理胴37の下方には、サン方式の網目の粗い第1の処理網38が張架され、第2の処理胴39の下方には、網目の細かい第2の処理網40が張架されている。
【0029】
第1の処理胴37は、受口が扱胴18の送塵口に連通して扱胴の脱粒物を機体の後方に送りながら再処理し、第1の処理網38を通過した濾過物を第2の処理胴39上に排出する。第2の処理胴39は第1の処理胴37からの濾過物を機体の前方に送りながら再処理し、その処理物を第2の処理網40を通して揺動選別部9の揺動選別盤26上に還元する。
【0030】
この第1の処理胴37と第2の処理胴39の2段処理で、枝梗付着粒が減少し、また扱胴の脱粒物の再処理距離が確保されて整粒の増加を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるコンバインの全体構成を示す側面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の正面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の側面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態の側面図。
【符号の説明】
【0032】
8 脱穀部
9 揺動選別部
16a 終端部側板
18 扱胴
18a 送塵口
21 処理胴
23 搬送体
33 受樋
33a 搬送終端部となる排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀部と、該脱穀部で脱穀した穀粒を揺動選別・風選別する揺動選別部とを有し、該脱穀部には扱胴と、扱胴送塵口に受口が連通して該扱胴の脱粒物を再処理する処理胴とを備えたコンバインであって、該処理胴の下方にあって該処理胴から排出された処理物を受け、該処理物を該処理胴による脱粒物の送り方向とは反対方向に搬送して揺動選別部の揺動選別盤上に排出する螺旋状体の搬送体は、搬送した前記処理物を前記揺動選別部上に排出する搬送終端部が前記扱胴の終端部側板よりもコンバイン機体の前側に位置すると共に、前記搬送体の回転方向は、該処理物を下方から上方に向けて該揺動選別部上に排出する向きであることを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−111056(P2007−111056A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347470(P2006−347470)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【分割の表示】特願2002−167115(P2002−167115)の分割
【原出願日】平成14年6月7日(2002.6.7)
【出願人】(000006851)ヤンマー農機株式会社 (132)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】