説明

コンバイン

【課題】操作レバーを握った手の指で、刈取装置の高さ調節と車高調節と車体の姿勢調節と車体の操向とを、操作性良く、しかも誤操作少なく行なうことができるものとして、コンバインによる刈取作業の能率を高める。
【解決手段】操作レバー(59)の握り部(70)の前側の面に、刈取装置昇降操作用の上昇用スイッチ(SW1)と下降用スイッチ(SW2)を上下に並べて設け、この上昇用スイッチ(SW1)と下降用スイッチ(SW2)の間の位置に各スイッチの押し操作面よりも突出した誤操作防止用の突出部(71)を設ける。また、握り部(70)の左側の面に設けた車高上昇用スイッチ(SW3)と車高下降用スイッチ(SW4)の間の位置にも同様の突出部(73)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンバインには、車体上に設けた操縦部に、前後方向の操作で刈取装置を昇降させ、左右方向の操作で車体を旋回させる操作レバーを設けている。
この操作レバーの握り部には、各種の操作スイッチが設けられている。このような従来技術として、特許文献1に開示されているように、建設機械の操縦部に設けた操作レバーの握り部に、前後進切換用のスイッチと、走行変速用の増速スイッチと、減速スイッチを設け、握り部の側面に警笛用のスイッチを設けたものがある。これらのスイッチは、操作レバーの握り部を握った手の指で操作できる範囲に配置されている。
【特許文献1】特開2000−71801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の特許文献1に開示された従来技術は、操作レバーの握り部に、機能の異なる多数のスイッチを単に集中的に配置するだけのものである。従って、操縦者が各スイッチの機能を記憶しておかなければ、容易に操縦することができない。そして、この握り部を握った手の指でスイッチを操作する場合に、このスイッチの区別がつきにくく、操作するスイッチを取り違えて誤操作を生じる問題がある。
【0004】
また、この特許文献1に開示された技術をコンバインの操作装置に利用して、例えばコンバインの操作レバーの握り部に、刈取装置を昇降させる刈取装置昇降用スイッチと、走行方向を左右方向に操向する操向用スイッチを集中的に配置することが考えられる。
【0005】
しかし、このように構成した場合、例えば、刈取走行中に、コンバインが穀稈列から外れて操向用スイッチを操作する必要が生じた際に、操縦者が誤って刈取装置昇降用スイッチを操作すると、操縦者の意に反して刈取装置が下降し、この刈取装置が地面に突っ込んでしまう。即ち、上述の従来技術では、コンバインの操作性が悪く、刈取作業の能率が低下する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、走行装置(2)を備えた車体(1)に脱穀装置(3)と穀粒貯留装置(4)を左右に並べて設け、該脱穀装置(3)の前方に刈取装置(5)を昇降自在に設け、前記穀粒貯留装置(4)の前側に操縦部(6)を設け、該操縦部(6)に、前後方向の操作で刈取装置(5)を昇降させ、左右方向の操作で車体(1)を旋回させる操作レバー(59)を設け、該操作レバー(59)の握り部(70)の前側の面に、刈取装置(5)を上昇させる刈取装置上昇用スイッチ(SW1)と刈取装置(5)を下降させる刈取装置下降用スイッチ(SW2)を上下方向に並べて設け、該刈取装置上昇用スイッチ(SW1)と刈取装置下降用スイッチ(SW2)の間の位置に、該刈取装置上昇用スイッチ(SW1)の操作面および刈取装置下降用スイッチ(SW2)の操作面よりも突出した第一誤操作防止用突出部(71)を設け、前記操作レバー(59)の握り部(70)の左側の面に、車体(1)の車高を上げる車高上昇用スイッチ(SW3)と車体(1)の車高を下げる車高下降用スイッチ(SW4)を上下方向に並べて設け、該車高上昇用スイッチ(SW3)と車高下降用スイッチ(SW4)の間の位置に、該車高上昇用スイッチ(SW3)の操作面および車高下降用スイッチ(SW4)の操作面よりも突出した第二誤操作防止用突出部(73)を設け、前記操作レバー(59)の握り部(70)の上側の面に、車体(1)を左下がり姿勢に傾斜させる左傾斜用スイッチ(SW5)と車体(1)を右下がり姿勢に傾斜させる右傾斜用スイッチ(SW6)を左右に並べて設け、該左傾斜用スイッチ(SW5)および右傾斜用スイッチ(SW6)よりも後側に、車体(1)の走行方向を左方向に操向する左操向用スイッチ(SW7)と車体(1)の走行方向を右方向に操向する右操向用スイッチ(SW8)を左右に並べて設けたことを特徴とするコンバインとする。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記左傾斜用スイッチ(SW5)および右傾斜用スイッチ(SW6)と、左操向用スイッチ(SW7)および右操向用スイッチ(SW8)の間の位置に、該左右の傾斜用スイッチ(SW5,SW6)の操作面および左右の操向用スイッチ(SW7,SW8)の操作面よりも低い第三突出部(74)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によると、コンバインによる刈取作業に際して、操縦者が片手で操作レバー59の握り部70を握った状態で、この手の指(主に人差し指と中指)で、握り部70の前側の面に設けた刈取装置上昇用スイッチSW1と刈取装置下降用スイッチSW2を操作して、刈取装置5を刈取作業に適した高さに調節することができる。また、このように刈取装置上昇用スイッチSW1と刈取装置下降用スイッチSW2を操作する際に、第一誤操作防止用突出部71に指が当たることによって、この二つのスイッチを取り違えて操作することが少なくなる。
【0009】
そして、軟弱な圃場などで走行装置2が沈下するような場合には、この握り部70を握った手の指(主に親指)で、握り部70の左側の面に設けた車高上昇用スイッチSW3と車高下降用スイッチSW4を操作して、車高を上昇させて軟弱な圃場での刈取作業に適した車高に調節することができる。また、このように車高上昇用スイッチSW3と車高下降用スイッチSW4を操作する際に、第二誤操作防止用突出部73に指が当たることによって、この二つのスイッチを取り違えて操作することが少なくなる。
【0010】
更に、軟弱な圃場で車体1が左右傾斜するような場合には、この握り部70を握った手の指(主に親指)で、握り部70の上側の面に設けた左傾斜用スイッチSW5と右傾斜用スイッチSW6を操作して、車体1の姿勢を刈取作業に適した姿勢に調節することができる。また、刈取走行中に刈取装置5が穀稈列から外れそうになった場合には、左傾斜用スイッチSW5および右傾斜用スイッチSW6よりも後側に設けた左操向用スイッチSW7と右操向用スイッチSW8を操作して、車体1を穀稈列に沿わせて走行させることができる。
【0011】
以上により、操作レバー59を握った手の指で、刈取装置5の高さ調節と車高調節と車体1の姿勢調節と車体1の操向とを、操作性良く、しかも誤操作少なく行なうことができ、コンバインによる刈取作業の能率を高めることができる。
【0012】
また、請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、左傾斜用スイッチSW5と右傾斜用スイッチSW6と左操向用スイッチSW7と右操向用スイッチSW8を操作する際に、第三突出部74に指が触れることによって、この傾斜用のスイッチと操向用のスイッチを取り違えて操作することが少なくなる。これによって、車体1の姿勢調節と車体1の操向とを誤操作少なく行なうことができ、コンバインによる刈取作業の能率を更に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に示すこの発明の実施の形態について説明する。
まず、図1、図2、図3に基づいて、本発明の操作レバーを備えたコンバインの全体構成について説明する。図1はコンバインの正面図、図2はコンバインの側面図、図3はコンバインの平面図である。
【0014】
コンバインは、車体1の下側に走行装置2を設け、車体1の上側には、脱穀装置3と穀粒貯留装置4を左右に並べて設け、脱穀装置3の前方に刈取装置5を昇降自在に設け、穀粒貯留装置4の前側に操縦部6を設けた構成とする。
【0015】
図4、図5に前記走行装置2の構成を示す。
車体1を構成する機台フレーム7の下部に、前側ローリングアーム8および後側ローリングアーム9の中間部を、軸10および軸11で夫々上下方向に回動自在に取り付ける。この前側ローリングアーム8および後側ローリングアーム9の後側の自由端部を、多数の転輪12を有した転輪フレーム13の上部に、軸14および軸15で夫々回動自在に取り付ける。これによって、機台フレーム7と転輪フレーム13との上下間隔を変更自在な平行リンクが形成される。更に、前記前側ローリングアーム8の上側の自由端部と、後側ローリングアーム9の上側の自由端部を連動ロッド16で連結し、この連動ロッド16の後端部に、ローリングシリンダ17のピストン先端を連結する。このローリングシリンダ17のシリンダ側は、機台フレーム7側に軸18で取り付ける。また、機台フレーム7の前部にはミッションケース19を取り付け、このミッションケース19から駆動される駆動スプロケット20と、前記多数の転輪12とにわたってクローラ21を巻き掛ける。以上の構成を左右対称に設けることにより、走行装置2を構成するものである。
【0016】
これによって、左右両側のローリングシリンダ17,17が伸長すると、前側ローリングアーム8および後側ローリングアーム9が、図4において時計方向に回動し、機台フレーム7と左右両側の転輪フレーム13,13の上下間隔が拡大される。即ち、クローラ21,21の接地面に対して機台フレーム7が上昇することとなり、コンバインの車高が上昇する。
【0017】
また、左右一側のローリングシリンダ17が伸長し、左右他側のローリングシリンダ17が短縮すると、機台フレーム7とこの左右一側の転輪フレーム13の上下間隔が拡大し、一方、機台フレーム7と左右他側の転輪フレーム13の上下間隔が縮小して、車体1が左右方向に傾斜する。
【0018】
また、図6に前記ミッションケース19の構成を示す。
機台フレーム7上に搭載したエンジン22から駆動される走行用の静油圧式無段変速装置23を、ミッションケース19の上部に取り付ける。そして、この静油圧式無段変速装置23の出力軸をミッションケース19の入力軸24に連動させ、この入力軸24を副変速ギヤ機構25を介してセンターギヤ26に連動させる。このセンターギヤ26の左右両側には、このセンターギヤ26に対して係合および離脱自在な左右のサイドクラッチギヤ27,27を設ける。この左右のサイドクラッチギヤ27,27は、左右の車軸28,28に取り付けた車軸ギヤ29,29に噛み合う左右の減速ギヤ30,30に噛み合わせる。また、この左右の減速ギヤ30,30を差動ギヤ機構31の左右の差動出力ギヤ32,32に噛み合わせる。この差動ギヤ機構31は、差動ギヤケース33内の内部に軸受した複数の遊星ギヤ34と、この遊星ギヤ34に噛み合う左右の差動ギヤ35,35によって構成する。この左右の差動ギヤ35,35は、前記左右の差動出力ギヤ32,32と夫々一体で回転する構成とする。そして、前記センターギヤ26に併設した小径ギヤ36を、制御軸37に軸受した入力ギヤ38に噛み合わせ、前記センターギヤ26を、制御軸37に軸受した入力ギヤ39に噛み合わせる。更に、制御軸37に一体の出力ギヤ94を、前記差動ギヤケース33の外周部に形成した入力ギヤ40に噛み合わせる。前記制御軸37上には、入力ギヤ39を制御軸37と一体化することによって、この入力ギヤ39の回転を出力ギヤ94に伝える多盤式の直進用クラッチ42を設ける。また、この制御軸37上には、入力ギヤ38を制御軸37と一体化することによって、この入力ギヤ38の回転を出力ギヤ94に伝える多盤式の旋回用クラッチ43を設ける。この構成により、左右のサイドクラッチギヤ27,27がセンターギヤ26に係合し、且つ、直進用クラッチ42が接続されて旋回用クラッチ43が遮断されている状態では、差動ギヤケース33が高速で駆動されて左右の差動出力ギヤ32,32が等速で駆動される。この状態では、左右の車軸28,28が等速で駆動されて、車体1は直進走行する。一方、左右一側のサイドクラッチギヤ27のみをセンターギヤ26から離脱し、且つ、直進用クラッチ42が遮断されて旋回用クラッチ43が接続され始めると、差動ギヤケース33が旋回用クラッチ43の接続度合いに応じて減速して駆動され、左右一側の差動出力ギヤ32の回転が減速し、車体1が旋回する。この旋回用クラッチ43の接続力が高まるほど旋回半径が小さくなり、やがて左右の車軸28,28が互いに逆転するスピンターン状態に至る。
【0019】
前記脱穀装置3は、扱胴および刈取装置5から刈取穀稈を引き継いで搬送するフィードチェンを設けた上部の扱室44と、揺動選別棚および唐箕を設けた下部の選別室45から構成する。
【0020】
前記穀粒貯留装置4は箱型に形成し、その背面上部に、一番揚穀装置46の上端部を連通する。また、穀粒貯留装置4の底部に移送螺旋を配置し、穀粒貯留装置4の後側には、この移送螺旋から穀粒を引き継いで揚上移送する揚穀装置47を設ける。この揚穀装置47は、電動モータによって縦軸回動自在な構成とする。更に、揚穀装置47の上端部に排出装置48の基部を上下回動自在に接続し、この排出装置48を昇降回動させる昇降シリンダ49を設ける。
【0021】
前記刈取装置5は、前端部に設けた複数の分草体50と、この分草体50の後側に設けた引起装置51と、この引起装置51の後側低部に設けた刈刃装置52と、この刈刃装置52の上側から後方に向けて設けた掻込搬送装置とから構成する。そして、これらを支持する支持フレーム53の後端部を、機台フレーム7の前部上側に設けた刈取支持台54上に、上下回動自在に支持する。機台フレーム7側と支持フレーム53との間に刈取装置昇降用シリンダ55を取り付け、該刈取装置昇降用シリンダ55の伸縮作動によって、刈取装置5が機台フレーム7に対して昇降する構成とする。63は、刈取装置5からフィードチェンへ向けて搬送される刈取穀稈の搬送経路の上側を覆う防塵カバーである。
【0022】
前記操縦部6は、エンジン22を被覆するエンジンカバー56の上面に座席57を設け、該座席57の前方に設けた前側操作パネル58の右側に操作レバー59を縦方向姿勢にして設け、この操作レバー59の後側に、操縦者の右手首を載せる支持台60を設け、この支持台60の左側にメータパネル61を設け、このメータパネル61の左側に設けた傾斜面62に、自動制御系の各種の操作スイッチを設ける。また、前記座席57の左側方向に側部操作パネル64を設け、この側部操作パネル64上に、エンジン22の回転速度を調節するスロットルレバー65と、前記静油圧式無段変速装置23の出力回転を前後方向に無段変速操作する主変速レバー66と、前記ミッションケース19内の副変ギヤ機構25を変速操作する副変速レバー67と、ミッションケース19の入力軸24から刈取装置5へ駆動力を伝えるクラッチを入り切り操作する刈取クラッチレバー68と、エンジン22から脱穀装置3へ駆動力を伝えるクラッチを入り切り操作する脱穀クラッチレバー69を設ける。
【0023】
前記操作レバー59の基部には、この操作レバー59を前後方向および左右方向へ所定角度だけ倒した場合にONするスイッチを設ける。そして、後述する電気回路および油圧回路によって、操作レバー59を中立位置から前側へ倒すことによって、この前側へ倒した状態を維持している間、刈取装置昇降用シリンダ55の短縮作動を継続して刈取装置5を連続的に下降させ、操作レバー59を後側へ倒すことによって、この後側へ倒した状態を維持している間、刈取装置昇降用シリンダ55の伸長作動を継続して刈取装置5を連続的に上昇させるように連繋する。また、この操作レバー59を中立位置から左右一側へ倒すことによって、この側のサイドクラッチギヤ27をセンターギヤ26から離脱させ、直進用クラッチ42を遮断し、旋回用クラッチ43の接続圧力の昇圧を開始するように連繋する。この操作レバー59を倒した状態を維持している間、旋回用クラッチ43の接続圧力は維持され、操作レバー59の倒し角度が大きくなるほど、この旋回用クラッチ43の接続圧力は増加する。
【0024】
次に、図7〜図10に基づいて、操作レバー59の握り部70の構成について説明する。
図7に示すように、操作レバー59の握り部70の前側の面には、上側に、刈取装置昇降用シリンダ55を伸長させて刈取装置5を上昇させる刈取装置上昇用スイッチSW1を設け、下側に、刈取装置昇降用シリンダ55を短縮させて刈取装置5を下降させる刈取装置下降用スイッチSW2を設ける。この刈取装置上昇用スイッチSW1と刈取装置下降用スイッチSW2は、操縦者が握り部70を握った右手の人差し指と中指で押し操作しやすいものとしている。また、これら刈取装置上昇用スイッチSW1と刈取装置下降用スイッチSW2は、押し操作面を一回押すごとに刈取装置昇降用シリンダ55を数百ミリ秒の微小な設定時間だけ伸縮作動させた後にこの伸縮差動を停止させる構成とする。即ち、押し操作面を押し続けても刈取装置5は微小な所定高さだけしか昇降せず、刈取装置5を大きく昇降させるためには、複数回の押し操作を必要とする。従って、刈取装置上昇用スイッチSW1と刈取装置下降用スイッチSW2によって、刈取装置5の高さを微調整することができる。
【0025】
そして、この刈取装置上昇用スイッチSW1と刈取装置下降用スイッチSW2の間には、第一誤操作防止用突出部71を、刈取装置上昇用スイッチSW1の押し操作面および刈取装置下降用スイッチSW2の押し操作面よりも2ミリメートル程度だけ突出させて設ける。これによって、この刈取装置上昇用スイッチSW1と刈取装置下降用スイッチSW2を取り違えて操作することが防止される。
【0026】
また、刈取装置上昇用スイッチSW1の押し操作面および刈取装置下降用スイッチSW2の押し操作面を、操作レバー59の前側の面から数ミリメートルだけ沈ませるようにして設け、この刈取装置上昇用スイッチSW1と刈取装置下降用スイッチSW2の間に、第一誤操作防止用突出部71を、例えば2ミリメートル程度突出させて設けてもよい。即ち、握り部70の前側の面に、スイッチの押し操作面を突出するように設けると、操縦者が立った姿勢で操作レバー59を掴んで操作した場合に、この押し操作面を誤って押してしまうことがある。また、スイッチの周辺に突出した誤操作防止用の壁を設けると、この操作レバー59を握った際に違和感が生じて操作がしにくくなる不具合がある。しかし、刈取装置上昇用スイッチSW1の押し操作面および刈取装置下降用スイッチSW2の押し操作面を握り部70の前側の面よりも数ミリメートルだけ沈ませ、この両方のスイッチの間に第一誤操作防止用突出部71を突出させて設けることにより、握り部70の前側の面を比較的滑らかな構成にすることができ、上記不具合を解消することができる。
【0027】
また、図8に示すように、操作レバー59の握り部70の左側の面に、操縦者が右手で握り部70を握った際に、この右手の親指の付け根が収まる大きさの凹部72を設け、この握り部70の左側の面の下部に、車高上昇用スイッチSW3と車高下降用スイッチSW4を上下に並べて設ける。この車高上昇用スイッチSW3と車高下降用スイッチSW4は、押し操作面を押すことによって、左右両側のローリングシリンダ17,17を同量だけ伸縮作動させ、車体1の車高を昇降させるものである。このローリングシリンダ17,17の伸縮作動は、車高上昇用スイッチSW3および車高下降用スイッチSW4を押し操作している間継続する。
【0028】
そして、この車高上昇用スイッチSW3と車高下降用スイッチSW4の間に、2ミリメートル程度突出した第二誤操作防止用突出部73を設ける。これによって、握り部70を握って左右方向に倒す場合に、右手の親指を凹部72に馴染ませて操作レバー59を適確に操作でき、また、車高上昇用スイッチSW3と車高下降用スイッチSW4の誤操作を防止することができる。
【0029】
また、図9に示すように、操作レバー59の握り部70の上側の面には、その前側部分に左右一対の左傾斜用スイッチSW5と右傾斜用スイッチSW6を設け、この後側に、左操向用スイッチSW7と右操向用スイッチSW8を設ける。
【0030】
前記左傾斜用スイッチSW5を押し操作することにより、この押し操作の間にわたって左側のローリングシリンダ17が短縮作動し、右側のローリングシリンダ17が伸長作動して、車体1の姿勢が左下がりの傾斜姿勢に変更される。また、右傾斜用スイッチSW6を押し操作すると、この押し操作の間にわたって右側のローリングシリンダ17が短縮作動し、左側のローリングシリンダ17が伸長作動して、車体1の姿勢が右下がりの傾斜姿勢に変更される。
【0031】
また、左操向用スイッチSW7を押し操作すると、後述するプッシュシリンダの伸長作動によって、左側のサイドクラッチギヤ27がセンターギヤ26から離脱し、直進用クラッチ42が遮断される。このプッシュシリンダの伸長作動は数百ミリ秒程度の微小な所定時間で終了し、再び短縮する。これによって、左操向用スイッチSW7を押し続けても、車体1の操向は所定量で終了する。従って、車体1の走行方向を大きく変更するには、左操向用スイッチSW7の複数回の押し操作を必要とする。右操向用スイッチSW8についても同様である。これによって、刈取走行中に穀稈列から外れそうな場合に、この左操向用スイッチSW7および右操向用スイッチSW8を押し操作して、車体1の走行方向を微調整して、コンバインを穀稈列に沿わせて走行させることができる。
【0032】
なお、左傾斜用スイッチSW5と右傾斜用スイッチSW6の押し操作面の間隔を狭く、左操向用スイッチSW7と右操向用スイッチSW8の間隔を広く構成してもよい。このように構成すると、各スイッチの間隔が相違するので、スイッチの誤操作を防止することができる。
【0033】
また、前記左傾斜用スイッチSW5および右傾斜用スイッチSW6と、左操向用スイッチSW7と右操向用スイッチSW8の間の位置に、これら左右の傾斜用スイッチSW5,SW6の押し操作面および左右の操向用スイッチSW7,SW8の押し操作面よりも低い第三突出部74を設ける。これによって、左右の傾斜スイッチSW5,SW6と、左右の操向用スイッチSW7,SW8の誤操作を防止することができる。
【0034】
図11に示すように、前記スイッチSW1〜SW8はアナログ入力ポート75を経由して、コントローラ76の中央演算装置77に入力され、また、操作レバー59の左右方向の倒し操作によりONする左操向スイッチSWa、右操向スイッチSWb、刈取上昇スイッチSWc、刈取下降スイッチSWdはデジタル入力ポート78を経由して中央演算装置77に入力される。また、中央演算装置77から出力ポート79を経由して左操向ソレノイドSL1、右操向ソレノイドSL2、刈取上昇ソレノイドSL3、刈取下降ソレノイドSL4、左車高上昇ソレノイドSL5、左車高下降ソレノイドSL6、右車高上昇ソレノイドSL7、右車高下降ソレノイドSL8に制御指令が出力される構成である。
【0035】
なお、刈取装置上昇用スイッチSW1と、刈取装置下降用スイッチSW2と、車高上昇用スイッチSW3と、車高下降用スイッチSW4を、操作レバー59が中立位置にある場合にのみ、これらスイッチSW1〜SW4の押し操作を有効とするように構成している。即ち、操作レバー59の操作が、各スイッチSW1,SW2,SW3,SW4の操作よりも優先される構成である。
【0036】
また、車高上昇用スイッチSW3と、車高下降用スイッチSW4の操作を、操作レバー59の倒し操作によって操向を行なっている場合に、無効とするように構成する。
また、刈取装置上昇用スイッチSW1と刈取装置下降用スイッチSW2の操作を、操作レバー59を後側へ操作して刈取装置5を上昇させている場合に無効とするように構成する。
【0037】
図12に油圧回路を示す。
80は作動油タンク、81はオイルポンプ、82はオイルフィルター、83は分流弁、84は操作レバー59の左右方向の倒し角度に応じて直進用クラッチ42を遮断して旋回用クラッチ43を接続する作動用シリンダ87への送油圧を制御する比例減圧弁、85は左右のサイドクラッチギヤ27,27をセンターギヤ26から離脱させる左右のプッシュシリンダ、86はこの左右のプッシュシリンダ85,85への送油方向および送油量を調節する切換弁、88は刈取装置昇降用シリンダ55への送油方向を切り換える方向切換弁、90は昇降シリンダ49への送油方向および送油量を調節する方向切換弁、91は左右のローリングシリンダ17,17への送油方向および送油量を調節する方向切換弁、92は静油圧式無段変速装置23内の閉回路に作動油を補給するチャージポンプ、93作動油冷却器である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】コンバインの正面図である。
【図2】コンバインの側面図である。
【図3】コンバインの平面図である。
【図4】走行装置の説明用側面図である。
【図5】ローリングアーム部の説明図である。
【図6】ミッションケース内の伝動機構の説明図である。
【図7】(a)は操作レバーの握り部の背面図、(b)は操作レバーの握り部の正面図である。
【図8】(a)は操作レバーの握り部の左側面図、(b)は操作レバーの握り部の右側面図である。
【図9】(a)は操作レバーの握り部の平面図、(b)は操作レバーの握り部の底面図である。
【図10】操作レバーの握り部の斜視図である。
【図11】電気回路図である。
【図12】油圧回路図である。
【符号の説明】
【0039】
1 車体
2 走行装置
3 脱穀装置
4 穀粒貯留装置
5 刈取装置
6 操縦部
59 操作レバー
70 握り部
71 第一誤操作防止用突出部
73 第二誤操作防止用突出部
74 第三突出部
SW1 刈取装置上昇用スイッチ
SW2 刈取装置下降用スイッチ
SW3 車高上昇用スイッチ
SW4 車高下降用スイッチ
SW5 左傾斜用スイッチ
SW6 右傾斜用スイッチ
SW7 左操向用スイッチ
SW8 右操向用スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(2)を備えた車体(1)に脱穀装置(3)と穀粒貯留装置(4)を左右に並べて設け、
該脱穀装置(3)の前方に刈取装置(5)を昇降自在に設け、
前記穀粒貯留装置(4)の前側に操縦部(6)を設け、
該操縦部(6)に、前後方向の操作で刈取装置(5)を昇降させ、左右方向の操作で車体(1)を旋回させる操作レバー(59)を設け、
該操作レバー(59)の握り部(70)の前側の面に、刈取装置(5)を上昇させる刈取装置上昇用スイッチ(SW1)と刈取装置(5)を下降させる刈取装置下降用スイッチ(SW2)を上下方向に並べて設け、
該刈取装置上昇用スイッチ(SW1)と刈取装置下降用スイッチ(SW2)の間の位置に、該刈取装置上昇用スイッチ(SW1)の操作面および刈取装置下降用スイッチ(SW2)の操作面よりも突出した第一誤操作防止用突出部(71)を設け、
前記操作レバー(59)の握り部(70)の左側の面に、車体(1)の車高を上げる車高上昇用スイッチ(SW3)と車体(1)の車高を下げる車高下降用スイッチ(SW4)を上下方向に並べて設け、
該車高上昇用スイッチ(SW3)と車高下降用スイッチ(SW4)の間の位置に、該車高上昇用スイッチ(SW3)の操作面および車高下降用スイッチ(SW4)の操作面よりも突出した第二誤操作防止用突出部(73)を設け、
前記操作レバー(59)の握り部(70)の上側の面に、車体(1)を左下がり姿勢に傾斜させる左傾斜用スイッチ(SW5)と車体(1)を右下がり姿勢に傾斜させる右傾斜用スイッチ(SW6)を左右に並べて設け、該左傾斜用スイッチ(SW5)および右傾斜用スイッチ(SW6)よりも後側に、車体(1)の走行方向を左方向に操向する左操向用スイッチ(SW7)と車体(1)の走行方向を右方向に操向する右操向用スイッチ(SW8)を左右に並べて設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記左傾斜用スイッチ(SW5)および右傾斜用スイッチ(SW6)と、左操向用スイッチ(SW7)および右操向用スイッチ(SW8)の間の位置に、該左右の傾斜用スイッチ(SW5,SW6)の操作面および左右の操向用スイッチ(SW7,SW8)の操作面よりも低い第三突出部(74)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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