説明

コンバイン

【課題】機器配置の合理化により、ホッパーの袋詰め作業に支障を招くことなく、必要な燃料タンク容量を確保して機体の重量バランスを効果的に改善することができるホッパー型のコンバインを提供する。
【解決手段】コンバインは、クローラ2によって走行可能に支持された機体の片側部に配置して刈取穀稈を脱穀する扱胴を内設した脱穀部5と、この脱穀部5から受けた脱穀穀粒をその他側位置で袋詰めするホッパー7と、このホッパー7の後端部に配置されて原動機用燃料を収容する燃料タンク9とを備え、上記脱穀部5の内側端位置には風選用の揺動棚を内設した選別室11の側壁11aを設けるとともに、この側壁11aのホッパー7側に揺動棚のフライホイールを覆う安全カバー12を取付け、この安全カバー12に近接する範囲に上記燃料タンク9を配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀部とホッパーとを機体の左右に隣接配置したコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クローラによって走行可能に支持された機体に脱穀部とホッパーとを左右に隣接配置したコンバインは、特許文献1に示されるように、ホッパーの後方位置に燃料タンクを配置することにより、機体の前後および左右の重量配分のアンバランスを改善して安定走行を可能とする。
【特許文献1】特開2005−341853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、コンバインの刈取走行においては、ホッパーで袋詰めした籾袋を支持台上で機体後部に移動して圃場に降ろす作業を要し、その際に、機体後部に位置する燃料タンクが邪魔になることから、燃料タンクを小さく構成せざるを得ず、機体バランス改善の点でも不十分となっている。
【0004】
解決しようとする問題点は、機器配置の合理化により、ホッパーによる袋詰め作業に支障を招くことなく、必要な燃料タンク容量を確保して機体の重量バランスを効果的に改善することができるホッパー型のコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、クローラによって走行可能に支持された機体の片側部に配置して刈取穀稈を脱穀する扱胴を内設した脱穀部と、この脱穀部から受けた脱穀穀粒をその他側位置で袋詰めするホッパーと、このホッパーの後端部に配置して原動機用燃料を収容する燃料タンクとを備え、上記脱穀部の内側端位置には風選用の揺動棚を内設した選別室の側壁を設けるとともに、この側壁のホッパー側に揺動棚のフライホイールを覆う安全カバーを取付け、この安全カバーに近接する範囲に上記燃料タンクを配置したことを特徴とする。
【0006】
上記燃料タンクは、脱穀部の選別室側壁から突出した揺動棚のフライホイールの安全カバーに近接して構成することにより、脱穀部の側方の空間を燃料タンクの占有範囲として有効利用することが可能となる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記脱穀部の内側端位置からホッパーの側に突出して選別室の穀粒を二番処理室に送る二番揚穀筒を設けるとともに、この二番揚穀筒を避けてその後方位置に前記燃料タンクを配置したことを特徴とする。
上記燃料タンクは、脱穀部の側方に突出する揚穀筒の後方空間を燃料タンクの占有範囲として有効利用することが可能となる。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2の構成において、前記脱穀部の内側端位置からホッパーの側に突出して脱穀処理による脱穀屑を後部排出する排塵処理室を形成するとともに、この排塵処理室を避けてその下方位置に前記燃料タンクを配置したことを特徴とする。
上記燃料タンクは、脱穀部の側方に突出する排塵処理室の下方空間を燃料タンクの占有範囲として有効利用することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明は、燃料タンクの占有範囲について脱穀部の安全カバーとの位置関係を規定することによって脱穀部の側方空間を有効利用することができ、その結果、燃料タンクの大型化が可能となることことから、機体の重量バランスの改善とともに長時間の連続運転により収穫作業を効率よく行うことが可能となる。
【0010】
請求項2の発明は、燃料タンクの占有範囲について揚穀筒との位置関係を規定することにより、揚穀筒の後方の範囲を有効利用して燃料タンクの大型化が可能となる。
【0011】
請求項3の発明は、燃料タンクの占有範囲について排塵処理室との位置関係を規定することにより、排塵処理室の下方の範囲を有効利用して燃料タンクの大型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明に係るコンバインは、機体の側面図および平面図をそれぞれ図1、図2に示すように、左右のクローラ2,2によって走行可能に支持した機体に操縦部3および原動機3aを備えるとともに、機体の前部で圃場から穀稈を刈取る刈取部4と、この刈取部4から受けた刈取り穀稈を脱穀する脱穀部5と、その排藁を切断して後部排出するカッター部6と、脱穀部5の側方で脱穀穀粒を袋詰めする穀粒排出口7a…を備えたホッパー7と、その下方で袋詰めされた穀粒収納体(籾袋)を受けるキャリアデッキ(支持台)8等を備えて構成される。
【0013】
キャリアデッキ8の外側部には、ホッパー7による袋詰めの作業スペースとしてのサイドキャリア8aおよびその上方で作業者を保護するバックガード8bを開閉可能に備え、また、キャリアデッキ8の後端部に原動機燃料を収容する燃料タンク9を備える。
【0014】
機体後部について詳細に説明すると、その要部拡大側面図および背面図をそれぞれ図3、図4に示すように、キャリアデッキ8の後端部には、カッター部6の排出口6aを後方に張り出すようにカッターダクト6dを傾斜して構成し、このカッターダクト6dの傾斜下方に入り込むように燃料タンク9の下半部を後方に膨出して形成する。
【0015】
脱穀部5の内側端位置には脱穀穀粒を風選する揺動棚を内設した選別室11の側壁11aを形成するとともに、この側壁11aのホッパー7側に揺動棚のフライホイールの安全カバー12を取付け、この安全カバー12に近接して燃料タンク9を配置する。
【0016】
また、脱穀部5の内側端位置からホッパー7側に突出して選別室11の穀粒を二番処理室に上送する二番揚穀筒13を設けるとともに、脱穀部5の内側端位置からホッパー7側に突出して扱胴による脱穀屑を後部排出する排塵処理室14を形成し、二番揚穀筒13を避けてその基部13aの後方位置で、かつ、排塵処理室14を避けてその下方に及ぶ範囲に燃料タンク9を配置する。
【0017】
上述の如く、脱穀部5,カッター部6まわりの配置を合理化することによって脱穀部5の側方の空間を有効利用し、また、揚穀筒13や排塵処理室14との干渉を避けて脱穀部5の側方空間を広く有効利用して燃料タンク9の大型化が可能となることことから、機体の重量バランスの改善とともに長時間の連続運転により収穫作業を効率よく行うことが可能となる。
【0018】
(ホッパー)
次に、ホッパー7について説明する。
ホッパー7の穀粒排出口7a…は、サイドキャリヤ8aの側に臨む燃料タンク9の外側面を覆ったプレート9bよりも外側方位置に偏倚させて構成する。このような穀粒排出口7a…の構成により、刈取作業時の籾袋の交換を容易化でき、また、満杯となった籾袋をキャリヤデッキ8の後部に容易に移動することができる。また、前記穀粒排出口7a…には、それぞれ、この穀粒排出口7a…を開閉できる手動操作式のシャッターを備えている。
【0019】
(カッター部)
カッター部については、要部側面図および拡大平面図をそれぞれ図5、図6に示すように、カッター部6を回動可能に支持する支持フレーム21を後配置としてその前方位置に前フレーム22を枠組みし、この前フレーム22の外側に沿うように燃料タンク9の給油口9aを配置する。このように前フレーム22を構成することにより、上記カッター支持フレーム21によってカッター部6の保持を安定化させるとともに、給油作業を容易化することができる。
【0020】
(機体フレーム)
次に、機体フレームについては、その平面図、側面図、背面図をそれぞれ図7〜図9に示すように、機体台枠の中心部材としての左右のメインビーム31,31の間に両者をつないで中継ビーム32,32を前後2カ所に設け、各中継ビーム32,32から左右に張り出すフット部材33…を介して左右のトラックローラフレーム34,34を支持する。
【0021】
上記構成の中継ビーム32,32は、その位置の選択範囲が広いので最適位置に設定でき、したがって、構成の簡素化とともに強度の確保が容易となる。フット部材33…についても簡素で強固に構成することができる。また、中継ビーム32は、その中央部を左右端より低くして空間部を形成し、この空間部に機体後部に向けてテールパイプPを配置する。この場合において、中継ビーム32の上方配置のテールパイプPは、泥押しなどによる関係部品の破損を防止することができる。
【0022】
次に、オイルタンクTの搭載部については、平面図(a)、側面図(b)を図10に示すように、オイルタンクTの下方にその底面を保護しうるガード部材41を設ける。このガード部材41は、オイルタンクTを搭載する機体台枠の前後2つのクロスメンバ42,43の間に掛け渡し、オイルタンクTの下面をガードすることにより、湿田作業時にクローラ上部の泥などによってオイルタンクTやその取付ブラケットBが変形を受ける事態を回避することができる。
【0023】
特に、車体水平機能が無いコンバインの場合には、走行フレームとクローラの隙間が一定であることから、湿田作業時に泥などが走行フレームと近くなって泥押しによる影響を受けることがあるが、上記ガード部材41によりそのような問題を解消することができる。
【0024】
次に、トラックローラフレーム34については、その要部拡大断面図を図11に示すように、車幅方向のボス51を設けてトラックローラRのローラ軸Aを支持し、そのボス51の端部には、シールカバーCを保護するカバー保護プレート52を設ける。このカバー保護プレート52の外形寸法はオイルシールSの外形とほぼ同じ大きさとする。
【0025】
上記構成のカバー保護プレート52により、薄板構成のシールカバーCが泥の侵入等によって受ける変形を防止でき、また、グリスアップ時にオイルシールSが抜け出てきてカバーCを変形させる事態を回避できるので、耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】機体後部の要部拡大側面図である。
【図4】コンバインの背面図である。
【図5】カッター支持部の要部側面図である。
【図6】図5のカッター支持部の拡大平面図である。
【図7】機体フレームの平面図である。
【図8】図7の機体フレームの側面図である。
【図9】図7の機体フレームの背面図である。
【図10】オイルタンク保護構造の平面図(a)、側面図(b)である。
【図11】トラックローラフレームの要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0027】
2 クローラ
3a 原動機
3 操縦部
4 刈取部
5 脱穀部
6 カッター部
6d カッターダクト
6a 排出口
7 ホッパー
7a 穀粒排出口
8 キャリアデッキ
9 燃料タンク
11 選別室
11a 側壁
12 安全カバー
13 二番揚穀筒
13a 基部
14 排塵処理室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クローラ(2)によって走行可能に支持された機体の片側部に配置して刈取穀稈を脱穀する扱胴を内設した脱穀部(5)と、この脱穀部(5)から受けた脱穀穀粒をその他側位置で袋詰めするホッパー(7)と、このホッパー(7)の後端部に配置して原動機用燃料を収容する燃料タンク(9)とを備え、上記脱穀部(5)の内側端位置には風選用の揺動棚を内設した選別室(11)の側壁(11a)を設けるとともに、この側壁(11a)のホッパー(7)側に揺動棚のフライホイールを覆う安全カバー(12)を取付け、この安全カバー(12)に近接する範囲に上記燃料タンク(9)を配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記脱穀部(5)の内側端位置からホッパー(7)の側に突出して選別室の穀粒を二番処理室に送る二番揚穀筒を設けるとともに、この二番揚穀筒を避けてその後方位置に前記燃料タンク(9)を配置したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記扱胴によって脱穀した被処理物を引き継いで再処理する排塵処理室(14)を前記脱穀部(5)の内側端位置からホッパー(7)の側に突出して設けるとともに、この排塵処理室(14)を避けてその下方位置に前記燃料タンク(9)を配置したことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−17820(P2009−17820A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182527(P2007−182527)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】