説明

コンバイン

【課題】 回転リールによる穀稈掻き込みを掻き込み不足や脱粒が発生しにくい状態で行わせることができるコンバインを提供する。
【解決手段】 植立穀稈を刈取り装置に掻き込む駆動回転自在な回転リール27に回転リール回転軸芯方向に並んで位置するタイン45,46のうちの回転リール横端側に位置する端側タイン46の曲げ強度を、回転リール内側に位置する内側タイン45の曲げ強度よりも大に設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植立穀稈を刈取り装置に掻き込む駆動回転自在な回転リールが刈取り部に備えられたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記したコンバインとして、従来、たとえば特許文献1に記載されたものがあった。
特許文献1に記載されたコンバインでは、回転リールとしての掻込みリールを備えている。
この種のコンバインでは、回転リールに回転リール回転軸芯方向に並んだタインを備えさせ、このタインによる植立穀稈の係止によって植立穀稈の掻き込みを行うよう構成される。
この種のコンバインでは、従来、回転リール回転軸芯方向に並ぶ全てのタインが等しい曲げ強度を備えるよう構成されていた。
【0003】
【特許文献1】特開2005−211044号公報(段落〔0012〕−〔0014〕、図3,4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の回転リールに関する技術を採用したコンバインでは、脱粒や掻き込み不足が発生する場合があった。
つまり、回転リールの回転リール回転軸芯方向での横端側では、未刈り地の植立穀稈が絡み付いて刈取り対象穀稈と共に入り込んで来ることがある。回転リールの横端側に位置する端側タインの曲げ強度が小であると、端側タインが穀稈から受ける強い反力のために変形し、端側タインによる穀稈の掻き込み不良が発生することがある。このため、端側タインによる掻き込み不良を発生しにくくするには、端側タインによる掻き込みが強固に行われるよう、端側タインの曲げ強度を大にする必要がある。すると、回転リールの回転リール回転軸芯方向での内側に位置する内側タインが備える強い曲げ強度も大になる。内側タインは、未刈り地の植立穀稈の絡み付きがない刈り取り対象穀稈に作用して外側タインの如く強い反力を受けないにもかかわらず、反力による撓みがない強固な掻き込み作用を穀稈に与えることになる。この結果、回転リールの内側では、穀稈の種類によっては脱粒が発生しやすくなる。
【0005】
本発明の目的は、回転リールによる穀稈掻き込みを掻き込み不足や脱粒が発生しにくい状態で行わせることができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、植立穀稈を刈取り装置に掻き込む駆動回転自在な回転リールが刈取り部に備えられたコンバインにおいて、
前記回転リールに回転リール回転軸芯方向に並んで位置するタインのうちの回転リール横端側に位置する端側タインの曲げ強度を、回転リール内側に位置する内側タインの曲げ強度よりも大に設定してある。
【0007】
本第1発明の構成によると、回転リールの横端側で植立穀稈の掻き込みを行う端側タインは、内側タインよりも大の曲げ強度を備えていることにより、穀稈から受ける反力が強くても変形しにくくて強固に掻き込み作用する。
一方、回転リールの内側で植立穀稈の掻き込みを行う内側タインは、外側タインよりも小の曲げ強度を備えていることにより、穀稈から強い反力を受けると撓みやすくて穀稈にソフトに掻き込み作用する。
【0008】
従って、回転リールによる穀稈の刈取り装置への掻き込みを掻き込み不足や脱粒が発生しにくい良好な状態で行わせ、穀稈がスムーズに流動して能率よく作業できるとともに穀粒損失を防止できる。
【0009】
本第2発明では、前記内側タインを、内側タインの先端側が前記端側タインの先端側よりも回転リール外周側に位置するよう成形してある。
【0010】
本第2発明の構成によると、回転リールを極力地面近くで作用するよう下降させて内側タインが接地しても、内側タインの先端側が端側タインの先端側よりも回転リール外周側に位置することから、端側タインの接地を回避しやすい。内側タインは、端側タインに比して曲げ強度が小さくて接地による弾性変形を起こしやすく、変形や破損しにくい。
【0011】
従って、回転リールの下げ過ぎによる接地が生じても、内側タインや端側タインの接地による変形や破損が発生しにくよう耐久性に富んだコンバインを得ることができる。
【0012】
本第3発明では、前記端側タインのタイン支持部からの延出長さを、前記内側タインのタイン支持部からの延出長さよりも短く設定してある。
【0013】
本第3発明の構成によると、回転リールを極力地面近くで作用するよう下降させて内側タインが接地しても、端側タインのタイン支持部からの延出長さが内側タインのそれよりも短いことから、端側タインの接地を回避しやすい。内側タインは、端側タインに比して曲げ強度が小さくて接地による弾性変形を起こしやすく、変形や破損しにくい。
【0014】
従って、回転リールの下げ過ぎによる接地が生じても、内側タインや端側タインの接地による変形や破損が発生しにくよう耐久性に富んだコンバインを得ることができる。
【0015】
本第4発明では、前記回転リールの回転リール回転方向で隣り合って位置する一対のタイン支持部の一方のタイン支持部で支持される前記内側タインの複数を有した内側タイン群と、他方のタイン支持部で支持される前記内側タインの複数を有した内側タイン群とを、回転リール回転軸芯方向に位置ずれさせて配置してある。
【0016】
本第4発明の構成によると、各タイン支持部における内側タインの取り付け間隔を大にし、回転リールに備える内側タインの数量を少なくして内側タインの設置数から安価に得ることができながら、回転リールによる穀稈の掻き込みを精度よく行わせることができる。
【0017】
つまり、一方のタイン支持部における内側タインどうしの間と、他方のタイン支持部における内側タインとが回転リール周方向に並ぶ。これにより、各タイン支持部おける内側タインの間隔を大にして各タイン支持部に設ける内側タインの数を少なく済ませ、この結果、回転リールの下方に来たあるタイン支持部の内側タインどうしの間に位置してこのタイン支持部に位置する内側タインによる係止を受けない植立穀稈が存在する事態が発生しても、この植立穀稈は、次に来たタイン支持部に位置する内側タインによる係止を受けて刈取り装置に掻き込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るコンバインの全体の左側面図である。図2は、本発明の実施例に係るコンバインの全体の右側面図である。図3は、本発明の実施例に係るコンバインの全体の平面図である。これらの図に示すように、本発明の実施例に係るコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置1,1によって自走し、かつ運転座席2aが装備された運転部2を有した走行機体と、この走行機体の機体フレーム3の後部側に設けた脱穀機4と、この脱穀機4の横側に設けた袋詰めタンク11が装備された穀粒袋詰め部10と、前記脱穀機4の前部にフィーダ21が連結された刈取り部20とを備えて構成してある。
【0019】
このコンバインは、稲、麦などを収穫する。
すなわち、刈取り部20は、前記フィーダ21を備える他、このフィーダ21の前端部に連結された刈取りフレーム22と、この刈取りフレーム22の前端部の両横側に設けたデバイダ23と、前記刈取りフレーム22にこれのプラットホーム部22aの前端部に配置して駆動自在に設けたバリカン形の刈取り装置24と、前記刈取りフレーム22に前記刈取り装置24の後方近くで、かつ前記プラットホーム部22aの上面側に配置して駆動回転自在に設けたオーガ25と、前記刈取りフレーム22の基端側の上部から前方向きに延出している左右一対の支持アーム26,26に駆動回転自在に支持された回転リール27とを備えて構成してある。
【0020】
前記刈取り部20は、前記フィーダ21が油圧シリンダ28によって機体横向きの昇降軸芯Pまわりに脱穀機4に対して上下に揺動操作されることにより、刈取りフレーム22の前記プラットホーム部22aが地面近くに下降した下降作業状態と、刈取りフレーム22が地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降する。刈取り部20を下降作業状態にして走行機体を走行させると、刈取り部20は、植立穀稈の刈取り処理と、刈取り穀稈の脱穀機4への供給とを行う。
【0021】
すなわち、左右一対のデバイダ23,23によって植立穀稈を刈取り対象と非刈取り対象とに分草し、刈取り対象の植立穀稈を、回転リール27によって刈取り装置24に掻き込みながらこの刈取り装置24によって刈り取る。刈取り穀稈をオーガ25の両端側に位置する螺旋プレート25aによってプラットホーム部22aに沿わせてフィーダ21の前方に横送りする。フィーダ21の前方に至った刈取り穀稈を、オーガ25の中間に一体回転自在に設けてある搬送アーム25bの掻き送りによってオーガ25の後側に位置するフィーダ21の入り口に送り込む。フィーダ21に入り込んだ刈取り穀稈を、フィーダ21の内部に位置するコンベヤ29によってフィーダ21の内部を後方に搬送する。フィーダ21の後端部に至った刈取り穀稈の株元から穂先までの全体を前記コンベヤ29の掻き送り作用によって脱穀機4の扱室(図示せず)に投入する。
【0022】
図13に示すように、前記オーガ25の前記各螺旋プレート25aの先端部25cを、螺旋プレート25aに溶接された鋼線材によって構成してある。
すなわち、螺旋プレート25aの先端部25cに摩滅が発生した場合、摩滅した鋼線材に替えて新たな鋼線材を取り付けることにより、先端部25cだけの交換で修復できる。
【0023】
脱穀機4は、扱室に投入された刈取り穀稈を回転する扱胴(図示せず)によって脱穀処理する。
【0024】
図2に示すように、前記穀粒袋詰め部10は、前記袋詰めタンク11を備える他、この袋詰めタンク11の下部に位置する吐出筒12に装着された穀粒袋の上端側を袋支持杆13によって支持し、この穀粒袋の下端側を袋受けデッキ14によって支持する袋支持部を備えている。
【0025】
袋詰めタンク11は、脱穀機4の選別部(図示せず)からの脱穀粒を揚穀装置15(図2参照)によって供給されて貯留し、貯留した脱穀粒を前記吐出筒12から穀粒袋に排出する。
【0026】
図2,3に示すように、穀粒袋詰め部10は、前後一対の作業補助具16,16を備えている。各作業補助具16は、図2と図3に実線で示す如く袋支持部から走行機体横外側に突出した下降使用姿勢と、図2に二点鎖線で示す如く袋詰めタンク11の上方に位置した上昇格納姿勢とに揺動切り換えできるよう支持されている。各作業補助具16は、下降使用姿勢に切り換えることにより、袋受けデッキ14の上面からの高さHが1.0〜1.1mとなった配置高さに位置し、穀粒袋詰め部10に袋詰め作業のために搭乗した作業者が腰当て部材として使用できる。
【0027】
図14,15,16に示すように、前記運転座席2aは、運転座席2aの下面側に設けた左右一対の取り付け部材30,30と、前記左右一対の取り付け部材30,30の前端部に設けた連結軸31と、この連結軸31の両端部31aを支持片部32aによって回転自在に支持する支持部材32とを介して座席支持台33に支持されている。座席支持台33は、前記エンジン5を覆うエンジンボンネットになっている。各取り付け部材30は、取り付け部材30の後端部に取り付けたクッションゴム34と、連結軸取り付け部材30aに取り付けたクッションゴム34とを介して座席支持台33の上面に載って支持される。
【0028】
前記座席支持台33は、この座席支持台33の上面側に設けた座席固定体35が装備された座席固定機構36を備えている。この座席固定機構36は、前記座席固定体35を備える他、この座席固定体35に脱着自在なロックピン37とを備えている。座席固定機構36は、前記ロックピン37が前記座席固定体35の左右一対の縦片35a,35aに装着されることにより、ロックピン37が前記取り付け部材30の後端部に上方からストップ作用して取り付け部材30の前記連結軸31の端部31aの軸芯まわりでの上昇揺動を防止し、これによって運転座席2aを下降使用姿勢に固定するよう座席ロック状態になる。
【0029】
つまり、運転座席2aは、前記ロックピン37を座席固定体35から取り外して座席固定機構36による運転座席2aの固定を解除することにより、座席支持台33に対して上昇揺動して座席支持台33の上方を開放したメンテナンス用の上昇開放姿勢に切り換えることができる。
【0030】
次に、前記回転リール27について説明する。
図5は、前記回転リール27の側面図である。図6は、前記回転リール27の平面図である。図7は、前記回転リール27の一端側での正面図である。図8は、前記回転リール27の他端側での正面図である。これらの図に示すように、前記回転リール27は、前記一対の支持アーム26,26の先端部に回転自在に支持された駆動軸40と、この駆動軸40の左右端部に一体回転自在に設けた走行機体側面視で五角形のリール枠41と、左右一対のリール枠41,41にわたって回転リール27に周方向に並ぶと共にリール枠41の五つの頂部に一本ずつ位置する配置で設けた円形のパイプ材で成るタイン支持部42とを備えて構成してある。
【0031】
前記各リール枠41は、五本のアーム41aを有した板金製のリール枠本体41bと、各アーム41aの先端部に設けた樹脂製のブロック体43と、前記五つのブロック体43にわたって巻回され、前記ブロック体43との共締めボルトで前記アーム41aに連結された環状の帯板材44とを備えて構成してある。前記各ブロック体43は、前記タイン支持部42を回転自在に取り付ける取り付け部を構成している。環状の帯板44は、各アーム41aの部位で分割された分割帯板材によって構成してある。
【0032】
回転リール27は、前記各タイン支持部42に前記駆動軸40が有する回転リール回転軸芯X(以下、リール回転軸芯Xと略称する。)の方向に並べて設けたタイン45,46と、回転リール27の一方の横外側に設けた走行機体側面視で五角形の補助回転体61を有したタイン保持機構60とを備えている。
【0033】
回転リール27は、前記一対の支持アーム26,26の一方と刈取りフレーム22とに連結した油圧シリンダ50によって一対の支持アーム26,26が連結軸51の軸芯Yまわりに刈取りフレーム22に対して上下に揺動操作されることにより、下降作業状態と上昇非作業状態とに昇降する。
【0034】
図9は、回転リール27の低位置側の下降作業状態での側面図である。この図に示すように、左右一対の支持アーム26,26が下降操作されて回転リール27の下端側が地面Gの近くに位置すると、回転リール27が低位置側の下降作業状態になる。すると、駆動軸40の回転によって回転リール27がリール回転軸芯Xまわりに回転し、各タイン支持部42のタイン45,46をリール回転軸芯Xまわりに回転方向Aに回転させる。各タイン45,46は、前記タイン保持機構60の作用によってタイン支持部42から下方向きに延出した姿勢を保持しながら回転し、各タイン45,36の先端45a,46aは、デバイダ23の先端23aよりも後方をデバイダ23の先端23aの地上高さH1よりも低い地上高さで移動し、かつ刈取り装置24の前方を刈取り装置24の先端の地上高さH2よりも低い地上高さで移動する回転軌跡Tを描く。
【0035】
これにより、回転リール27は、植立穀稈の倒伏が深くても、デバイダ23による作用を受けなかった植立穀稈が発生しても、各タイン45,46を植立穀稈に精度よく係止させて植立穀稈を刈取り装置24に掻き込み供給する。
【0036】
図10は、回転リール27の高位置側の下降作業状態での側面図である。この図に示すように、左右一対の支持アーム26,26が下降操作されて回転リール27の下端側が地面Gからやや離れて位置すると、回転リール27が高位置側の下降作業状態になる。すると、駆動軸40の回転によって回転リール27がリール回転軸芯Xまわりに回転し、各タイン支持部42のタイン45,46をリール回転軸芯Xまわりに回転方向Aに回転させる。各タイン45,46は、前記タイン保持機構60の作用によってタイン支持部42から下方向きに延出した姿勢を保持しながら回転し、各タイン45,36の先端45a,46aは、デバイダ23の先端23aよりも後方をデバイダ23の先端23aの地上高さH1よりも高い地上高さで移動する回転軌跡T1を描く。
【0037】
これにより、回転リール27は、高位置側の下降作業状態では、走行機体の前後傾斜にかかわらず各タイン45,46の接地を回避しながら、植立穀稈を刈取り装置24に掻き込み供給する。
【0038】
図11に示すように、前記リール回転軸芯Xは、回転リール27の下降作業状態においてリール回転軸芯Xと刈取り装置24とを通る直線Sが刈取り装置24の刈り刃上面に対する垂直線となる配置になっており、各タイン45,46のタイン支持部42からの延出角度を変更されても、穀稈の刈取り装置24からの浮き上がりを良好に防止しながらの刈取り装置24への穀稈供給を行う。
【0039】
すなわち、図11に実線で示すタイン45,46は、標準延出角度でタイン支持部42に支持されたタインを示す。図11に点線で示すタイン45,46は、標準延出角度での姿勢よりも後退側に傾斜した姿勢で支持されたタインを示す。図11に二点鎖線で示すタイン45,46は、標準延出角度での姿勢よりも前進側に傾斜した姿勢で支持されたタインを示す。これらに示すように、タイン45,46のタイン支持部42からの延出角度が変更されても、タイン45,46は、タイン先端と刈取り装置24との間隔が大幅に変化しない状態で刈取り装置24の上方を移動する。
【0040】
前記各タイン支持部42に支持される前記複数のタイン45,46のうちの左右の回転リール横端側に位置するタイン46を端側タイン46とし、回転リール内側に位置するタイン45を内側タイン45とする。各タイン支持部42の前記各端側タイン46と前記各内側タイン45とは、タイン支持部42から延出させた中実の鉄製丸棒材によって構成してある。図6,7に示すように、各タイン支持部42の前記内側タイン46の二本ずつは、両端部に前記内側タイン45を備え、中間部にタイン支持部42に対する連結部47を備えるよう折り曲げ成形した一本の丸棒材によって構成してある。
【0041】
各タイン支持部42の各端側タイン46が備える曲げ強度が、各内側タイン45が備える曲げ強度よりも大になるよう、端側タイン46に内側タイン45よりも大きな外径を備えてある。
【0042】
つまり、回転リール27の横端側では、未刈り地の植立穀稈が絡み付き、外側タイン46に与える反力が大きい植立穀稈の掻き込みを行う場合がある。このため、端側タイン46は、穀稈から強い反力を受けても曲がらないで植立穀稈に係止し、穀稈の刈取り装置24への掻き込みを強固に行う。
一方、回転リール27の内側では、未刈り地の植立穀稈の絡み付きがなく、内側タイン45に与える反力が小さい植立穀稈の掻き込みを行えば済む。このため、内側タイン45は、植立穀稈からの反力によって比較的容易に撓んで植立穀稈に係止し、穀稈の刈取り装置24への掻き込みをソフトに行う。
【0043】
図5に示すように、各タイン支持部42の各内側タイン45を、内側タイン45の先端側が外側タイン46の先端側よりも回転リール外周側に位置した湾曲状態に成形してある。
つまり、回転リール27が外側タイン46で接地すると、外側タイン46は、内側タイン45よりも大の曲げ強度を備えていることから、変形や破損しやすい。しかし、回転リール27に接地事態が発生しても、内側タイン45が接地して外側タイン46が接地せず、内側タイン45が小さい曲げ強度のために容易に弾性変形し、外側タイン46が非接地のために塑性変形や破損せず、内側タイン45と外側タイン46とに塑性変形や破損が発生しにくい。
【0044】
図5に示すように、前記五つのタイン支持部42をそれぞれ、第一タイン支持部42A、第二タイン支持部42B、第三タイン支持部42C、第四タイン支持部42D、第五タイン支持部42Eとする。回転リール回転方向で隣り合う第一タイン支持部42Aと第五タイン支持部42Eとで成る一対のタイン支持部42,42を除く他の一対のタイン支持部、すなわち第一タイン支持部42Aと第二タイン支持部42Bとで成る一対のタイン支持部42,42と、第二タイン支持部42Bと第三タイン支持部42Cとで成る一対のタイン支持部42,42と、第三タイン支持部42Cと第四タイン支持部42Dとで成る一対のタイン支持部42,42と、第四タイン支持部42Dと第五タイン支持部42Eとで成る一対のタイン支持部42,42とにおいて、図6に示す如く一方のタイン支持部42で支持される前記内側タイン45の複数を有した内側タイン群と、他方のタイン支持部42で支持される前記内側タイン45の複数を有した内側タイン群とは、各タイン支持部42の内側タイン群における内側タイン45のリール回転軸芯方向での取り付け間隔D1(以下、内側タイン取り付け間隔D1と称する。)の約1/2に相当する距離D2をリール回転軸芯方向に位置ずれした配置になっている。
【0045】
つまり、第一タイン支持部42Aと第二タイン支持部42Bとで成る一対のタイン支持部42,42と、第二タイン支持部42Bと第三タイン支持部42Cとで成る一対のタイン支持部42,42と、第三タイン支持部42Cと第四タイン支持部42Dとで成る一対のタイン支持部42,42と、第四タイン支持部42Dと第五タイン支持部42Eとで成る一対のタイン支持部42,42とにおいて、一方のタイン支持部42における内側タイン45どうしの間と、他方のタイン支持部42における内側タイン45とが回転リール周方向に並ぶ。これにより、回転リール27は、回転リール27の下方に来たタイン支持部42の内側タイン45どうしの間に位置してその内側タイン45による係止を受けない植立穀稈が存在することがあっても、次に来たタイン支持部42の内側タイン45をその植立穀稈に係止させる状態で植立穀稈の刈取り装置24への掻き込みを行う。
【0046】
図7,8に示すように、前記回転リール27は、前記各タイン支持部42に装着されたタインカバー53を備えている。図12に示すように、前記各タインカバー53は、内側タイン45の前記連結部47をワラ屑などが絡み付かないように覆っている。各タインカバー53は、スリット54を全長にわたって備えた樹脂製の筒体によって構成してあり、スリット54が開いた状態に弾性変形させ、開いたスリット54を介してタイン支持部42に脱着する。
【0047】
図5は、前記タイン保持機構60の側面視での構造を示している。図7は、前記タイン保持機構60の正面視での構造を示している。これらの図に示すように、タイン保持機構60は、前記補助回転体61を備える他、前記支持アーム26のボス部26aに支持された回転リール側面視で円形の支持体62と、前記補助回転体61と前記リール枠41とにわたって前記各タイン支持部42に対応させて設けたリンク63とを備えて構成してある。
【0048】
前記支持体62は、取付け孔62aで前記ボス部26aに外嵌し、このボス部26aに連結された支持板64にセットボルト65によって固定されている。この支持体62は、前記補助回転体61の円形の取付け孔61aに係入するよう構成して支持体62の周部に分散配置した三つの支持ローラ66を備えており、補助回転体61は、前記三つのローラ66を介して前記支持体62に枢支されており、前記支持体62の中心部に前記リール回転軸芯Xと偏倚して位置する軸芯Zまわりに回転する。前記各リンク63のリール枠側の端部は、対応する前記タイン支持部42の回転支軸42aに一体回転自在に連結されている。前記各リンク63の補助回転体側の端部は、補助回転体61の頂部に回転自在に連結されている。
【0049】
これにより、タイン保持機構60は、回転リール27の回転に伴い、補助回転体61を回転リール27からリンク63を介して伝達される駆動力によってリール回転軸芯Xとは異なる軸芯Zまわりに回転させ、各タイン支持部42の回転支軸42aをリンク63によって回転操作して各タイン支持部42をリール枠41に対して回転操作し、各タイン支持部42の端側タイン46と内側タイン46とを、回転リール27の回転にかかわらずタイン支持部42から下方向きに延出した姿勢を保持するよう操作する。
【0050】
図17は、第二実施構造を備えた回転リール27のタイン配設部での側面図である。
第二実施構造を備えた回転リール27は、端側タイン46のタイン支持部42からの延出長さL1を内側タイン45のタイン支持部42からの延出長さL2よりも短く設定した状態で端側タイン46と内側タイン45とを備えている。
【0051】
つまり、回転リール27が外側タイン46で接地すると、外側タイン46は、内側タイン45よりも大の曲げ強度を備えていることから、変形や破損しやすい。しかし、回転リール27に接地事態が発生しても、内側タイン45の先端側が接地して外側タイン46が接地せず、内側タイン45が小さい曲げ強度のために容易に弾性変形し、外側タイン46が非接地のために塑性変形や破損せず、内側タイン45と外側タイン46とに塑性変形や破損が発生しにくい。
【0052】
〔別実施例〕
上記実施例の内側タイン45に替え、内側タイン45を角張った折り曲げ状態に成形することにより、内側タイン45の先端側を外側タイン46の先端側よりも回転リール外周側に位置させる構成を採用して実施してもよい。この場合も、本発明の目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】コンバインの全体の左側面図
【図2】コンバインの全体の右側面図
【図3】コンバインの全体の平面図
【図4】刈取り部の回転リール配設部での側面図
【図5】回転リールの側面図
【図6】回転リールの平面図
【図7】回転リールの横一端側での正面図
【図8】回転リールの横他端側での正面図
【図9】回転リールの低位置側の下降作業状態での側面図
【図10】回転リールの高位置側の下降作業状態での側面図
【図11】回転リールの低位置側の下降作業状態での側面図
【図12】タイン支持部の側面図
【図13】オーガの一部の平面図
【図14】座席支持構造の側面図
【図15】座席支持構造の平面図
【図16】座席支持構造の正面図
【図17】第二実施構造を備えた回転リールのタイン支持部での側面図
【符号の説明】
【0054】
20 刈取り部
24 刈取り装置
27 回転リール
42 タイン支持部
45 内側タイン
46 外側タイン
L1 端側タインの延出長さ
L2 内側タインの延出長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植立穀稈を刈取り装置に掻き込む駆動回転自在な回転リールが刈取り部に備えられたコンバインであって、
前記回転リールに回転リール回転軸芯方向に並んで位置するタインのうちの回転リール横端側に位置する端側タインの曲げ強度を、回転リール内側に位置する内側タインの曲げ強度よりも大に設定してあるコンバイン。
【請求項2】
前記内側タインを、内側タインの先端側が前記端側タインの先端側よりも回転リール外周側に位置するよう成形してある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記端側タインのタイン支持部からの延出長さを、前記内側タインのタイン支持部からの延出長さよりも短く設定してある請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記回転リールの回転リール回転方向で隣り合って位置する一対のタイン支持部の一方のタイン支持部で支持される前記内側タインの複数を有した内側タイン群と、他方のタイン支持部で支持される前記内側タインの複数を有した内側タイン群とを、回転リール回転軸芯方向に位置ずれさせて配置してある請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−39026(P2009−39026A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206733(P2007−206733)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】