説明

コンバイン

【課題】手扱ぎ作業時に、機体の操作を行うことが可能であるとともに、誤操作を防止することができるコンバインを提供する。
【解決手段】コンバインは、エンジンを搭載した走行機体と、刈取部と、脱穀装置と、リモートコントローラ90と、コントローラ装着部91と、機能切替スイッチ98と、を備える。リモートコントローラ90は、走行機体の前進操作及び後進操作が少なくとも可能である。コントローラ装着部91は、リモートコントローラ90を着脱可能に装着可能である。機能切替スイッチ98は、リモートコントローラ90がコントローラ装着部91に装着されたことを検出する。そして、リモートコントローラ90による操作は、当該リモートコントローラ90がコントローラ装着部91に装着されたことを機能切替スイッチ98が押されることで検出した場合にのみ有効となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。詳細には、オペレータが運転席から降りた状態で前記コンバインを操作するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、刈取装置と脱穀装置とを備え、圃場を走行しながら刈取りと脱穀を行うことが可能なコンバインが知られている。
【0003】
上記のようなコンバインにおいて、例えば圃場の四隅など、走行しながらの刈取脱穀を行うことができない場合がある。このような場合は、予め手刈りを行い、刈取りが終わった穀稈を手で持ってコンバインの脱穀装置の始端に供給することで、当該脱穀装置による脱穀を行う。このように手作業によって脱穀装置に穀稈を供給して脱穀を行うことは、手扱ぎと呼ばれている。
【0004】
ところで、一般的なコンバインにおいては、脱穀を行うと、機体の後部等に形成された排出口から排藁が排出される。前記手扱ぎ作業中はコンバインを停止させておくので、手扱ぎによる脱穀作業が進むにつれて機体後方に排藁が堆積し、排出口の詰まり等の原因となるおそれがある。このため、堆積した排藁を、作業者が圃場に均等に拡散させる作業が必要となる。そこで、ある程度手扱ぎ作業が進むと、コンバインを前進させなければならない。
【0005】
また、前記刈取装置は、上下に昇降可能に構成される。一般的に、刈取装置を下降状態にした方が、刈取装置から脱穀装置への穀稈受継ぎ部に穀稈を差し込み易いため、手扱ぎ作業時には刈取装置を下降状態にする。一方、コンバインを前進させる際には、刈取装置を上昇させる必要がある。
【0006】
従って、手扱ぎ作業時には、排藁が堆積するたびに、機体の前進操作と刈取装置の昇降操作とを繰り返すことになる。このような操作を毎回運転席に戻って行うようではオペレータにとって負担であるとともに、作業時間が掛かってしまうという問題があった。
【0007】
この点、オペレータが運転席から降りた状態で、無線のリモートコントローラによってコンバインを操作する構成が知られている。このようなコンバインは、例えば特許文献1から特許文献3に開示されている。また、コンバインの車体側面に配置された操作スイッチによって、当該コンバインを操作する構成も知られている。このようなコンバインは、例えば特許文献4に開示されている。
【0008】
以上のような構成のコンバインによれば、運転席に戻ることなく手扱ぎ作業位置において当該コンバインの操作を行うことができるため、作業時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭62−228204号公報
【特許文献2】特開平10−42683号公報
【特許文献3】特開2004−306732号公報
【特許文献4】特開平9−308356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、無線のリモートコントローラは信頼性が低く、高価であるという問題があった。また、前記のリモートコントローラは、両手又は片手で持って操作しなければならない。手扱ぎ作業は両手で穀稈を抱え上げる必要があるので、このようなリモートコントローラは作業の邪魔である。また、作業時にリモートコントローラを持っていたり身に付けたりしていると、誤操作の原因となり得る。
【0011】
これに対し、特許文献4のように車体の側面に配置された操作スイッチによってコンバインを操作する構成の場合は、コントローラを手で持つ必要が無いので作業の邪魔にならず、また誤操作のおそれも少ない。そこで、このような操作スイッチがコンバインの機体の手扱ぎ作業位置近傍に設けられていると、手扱ぎ作業をスムーズに行うことができる。一方、手扱ぎ作業時以外にも、運転席から降りた状態で機体の操作を行いたい場合があるが、特許文献4の構成では操作スイッチの位置が固定されているので、操作を行う際には当該操作スイッチの位置まで移動しなければならない。
【0012】
本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、手扱ぎ作業時に、機体の操作を行うことが可能であるとともに、誤操作を防止することができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0013】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0014】
本発明の観点によれば、以下の構成のコンバインが提供される。即ち、このコンバインは、エンジンを搭載した走行機体と、刈取装置と、脱穀装置と、操作部と、装着部と、装着検出部と、を備える。前記操作部は、前記走行機体の前進操作及び後進操作が少なくとも可能である。前記装着部は、前記操作部を着脱可能に装着可能である。前記装着検出部は、前記操作部が前記装着部に装着されたことを検出する。そして、前記操作部による操作の少なくとも一部は、当該操作部が前記装着部に装着されたことを前記装着検出部が検出した場合にのみ有効となる。
【0015】
これにより、オペレータが運転席から降りて作業を行う場合、当該作業位置の近傍に装着部を設けておくことで、当該作業中にのみ操作部の操作を有効とすることができる。これにより、誤操作を低減することができる。また、運転席に戻らなくても前進操作及び後進操作ができるので、作業時間を短縮することができる。
【0016】
前記のコンバインにおいては、前記操作部は、前記刈取装置の昇降操作又は前記走行機体の前進操作が可能であることが好ましい。
【0017】
これにより、例えば手扱ぎ作業中に、手扱ぎ作業に適した高さまで刈取装置を昇降する操作又は走行機体の前進操作を運転席に戻ることなく行うことができるので、作業時間を短縮することができる。
【0018】
前記のコンバインにおいては、前記装着部は、手扱ぎ作業位置の作業者が操作可能な位置であって、前記脱穀装置のカバーに設けられていることが好ましい。
【0019】
これにより、手扱ぎ作業中にオペレータが操作部を身に付けておく必要が無くなるため、誤操作が発生しにくい。また、手扱ぎ作業中、オペレータが操作部を必要に応じて簡単に操作することができる。
【0020】
前記のコンバインは、以下のように構成されることが好ましい。即ち、このコンバインは、複数の前記装着部と、装着位置検出部と、を備える。前記装着位置検出部は、前記操作部が装着された装着部を択一的に検出する。そして、当該装着位置検出部の検出結果に基づいて、前記操作部による操作が制限される。
【0021】
即ち、コンバインの適宜の複数箇所に装着部を備えておけば、運転席から降りて行う作業中であっても、当該作業位置の最近傍の装着部に操作部を装着してコンバインの操作を行うことができるので、作業時間を更に短縮することができる。また、複数の操作部をコンバインに設ける構成と比べて、複数の装着部の何れかに対して1つの操作部を装着する構成とすることにより、コストを削減することができる。そして、装着位置検出部の検出結果に基づいて操作を制限することにより、操作部を装着した位置に応じて、当該操作部によって行うことが可能な操作と行うことができない操作とを異ならせることができる。即ち、状況に応じて不必要な操作を行うことができなくなるので、誤操作を柔軟に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した右側面図。
【図2】コンバインの平面図。
【図3】コンバインの左側面図。
【図4】コンバインの正面図。
【図5】リモートコントローラ及びコントローラ装着部の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係るコンバインの右側面図、図2はコンバインの平面図、図3はコンバインの左側面図、図4はコンバインの正面図である。なお、以下の説明では、単に「左側」「右側」等というときは、コンバインが前進する方向に向かって左側及び右側を意味するものとする。
【0024】
図1に示すように、本実施形態のコンバイン10は、稲、麦等の株元を刈り取るための刈取部12を機体(走行機体)の前部に備え、進行部としてのクローラ部11を機体下部に備えて構成されている。そして図2に示すように、コンバイン10の左側の上部には、刈り取った穀稈を脱穀するための脱穀装置14が備えられる。また、この脱穀装置14と並設するように、グレンタンク15がコンバイン10の上部右側に備えられている。
【0025】
グレンタンク15の前方には、コンバイン10を操作するための運転部17が配置されている。この運転部17には運転操作部52及び運転座席53等が設けられており、この運転操作部52を操作することによって刈取りや走行等、コンバイン10の各種の操作を行うように構成されている。
【0026】
図1及び図3に示すように、クローラ部11はコンバイン10の左右両側に配置されており、このクローラ部11が駆動することでコンバイン10を走行させるように構成されている。
【0027】
刈取部12は、前処理部25と、刈刃部13と、掻込装置47と、搬送部41と、を備えている。
【0028】
前処理部25はコンバイン10の機体の前方下部に配置され、分草板45と、引起し装置46とによって構成されている。引起し装置46はタイン49を備えており、倒伏した作物を拾い上げたり、穂先を一定の幅に収束させたりする引起し作業を行う。分草板45は、刈り取るべき幅を規定するためのものであり、また、倒伏した状態の稲等を当該分草板45がすくい上げることによって、引起し装置46による前記引起し作業を容易にする。
【0029】
刈刃部13は刈刃と受刃とを備えており、両者が左右に駆動されることによって作物の株元を切り取る。また、掻込装置47は刈刃部13の上方に配置されており、この掻込装置47は、刈刃部13によって切断された穀稈を掻き込み、搬送部41に受け渡す。この搬送部41は、搬送チェーン及び縦搬送チェーン等を備えており、穀稈受継ぎ部70において、後述の脱穀装置14のフィードチェーン16に作物の株元を受け渡すように構成されている。
【0030】
また、刈取部12は、図略の油圧シリンダにより、図1中に二点鎖線で示すように上下に昇降させることができる。これにより、刈刃部13の高さを圃場の傾斜等に応じた適切な高さとすることが可能となり、状況に応じて適切に刈取りを行うことができる。また、刈取りを行わずにコンバイン10の移動を行う場合には、刈取部12を上昇させた状態で走行することで、分草板45などが圃場に接触しないようにすることができる。
【0031】
脱穀装置14はフィードチェーン16を備え、このフィードチェーン16によって穀稈を挟持しながら搬送して脱穀するように構成されている。脱穀装置14は穀稈脱穀用の扱胴30を備える。この扱胴30は脱穀装置14内の前部上方に設置されている。この扱胴30は略円筒状に形成されるとともに、その外周には複数の扱歯が植設されている。また、扱胴30の中心軸は、前記フィードチェーン16の搬送方向に略沿わせるように配置されている。また、扱胴30の下方位置には粗選別を行うための図略のクリンプ網が備えられる。このクリンプ網は、扱胴30の下部を覆うように円弧面状に構成されている。
【0032】
この構成で、穀稈はフィードチェーン16に挟持された状態で脱穀装置14に搬送され、扱胴30の回転による衝撃作用、前記扱歯によるしごき作用、そしてクリンプ網によるもみほぐし作用等によって脱粒される。
【0033】
また、脱穀装置14は、前記クリンプ網の下方に図略の選別装置を備えている。この選別装置は唐箕ファンを備えており、この唐箕ファンによる送風で、クリンプ網から落下してくる藁屑等の中から穀粒を選別するものである。ここで選別された精粒は、前記グレンタンク15に貯留される。一方、穀粒から選別された藁屑は、前記唐箕ファンによる送風によって、選別装置から機外に排出される。なお、グレンタンク15内に貯留された穀粒は、排出オーガ51を介して機外に排出することができる。
【0034】
一方、脱穀処理が終わった排藁は、フィードチェーン16で搬送された後、脱穀装置14の下流側に配置される図略の排藁搬送装置に引き継がれる。排藁搬送装置により搬送された排藁は、当該排藁搬送装置の下流側端部に配置された排藁カッタ装置48に投入される。この排藁カッタ装置48は、複数の回転刃を備えている。そして、排藁カッタ装置48に投入された排藁は、回転する回転刃によって適宜の長さに切断された後、機外へ排出される。
【0035】
運転座席53の下方には、クローラ部11、刈取部12及び脱穀装置14等を駆動するための図略のエンジンが設けられている。当該エンジンとクローラ部11との間には図略の無段変速装置が設けられ、エンジンの回転数を一定に保ったままクローラ部11の速度を無段階に変速させることができるように構成されている。これにより、刈取部12及び脱穀装置14は刈取脱穀に最適な回転数で駆動させつつ、クローラ部11を操作してコンバイン10を圃場内で自在に移動させることができる。また、エンジンと、刈取部12及び脱穀装置14と、の間には、それぞれクラッチが設けられている。これにより、刈取部12及び脱穀装置14をそれぞれ個別に駆動又は停止させることができる。
【0036】
以上で説明したように、本実施形態のコンバイン10は、刈取りと脱穀を同時に行うことができるように構成されているが、脱穀のみを行うこともできる。これにより、予め刈り取った穀稈を手作業で脱穀装置に供給することによる脱穀、即ち手扱ぎが可能となっている。
【0037】
手扱ぎ作業を行う時には、オペレータは、コンバイン10を圃場の適宜の位置まで移動させた後、クローラ部11及び刈取部12を停止させ、脱穀装置14のみを駆動させるとともに、刈取部12を下降状態にする。そして、オペレータは運転座席53から降り、予め刈り取られた穀稈を圃場から拾い上げ、穀稈受継ぎ部70に穀稈を差し込むことにより手扱ぎ作業を行う。なお、脱穀装置14が作動しているときは、脱穀装置14の下流に配置された前記選別装置や排藁カッタ装置48等も作動しているので、選別された穀粒がグレンタンク15内に貯留されるとともに、機体の後方から排藁が排出される。
【0038】
なお、手扱ぎ作業時には、上記のように刈取部12を下降状態とすることにより、刈取部12からフィードチェーン16に穀稈を搬送するための搬送部41も下降状態となっている。これにより、搬送部41からフィードチェーン16に対して穀稈を受け渡す穀稈受継ぎ部70において、当該穀稈受継ぎ部70に穀稈を差し込むときに前記搬送部41が邪魔にならないようにすることができる。
【0039】
ところで、手扱ぎの際には車体を停止させているので、排藁が車体後方に堆積する。そこで、ある程度手扱ぎ作業が進むと、刈取部12を上昇させて車体を少し前進させ、その後に車体を停止させ、刈取部12を下降させて手扱ぎ作業を再開する。これにより、一箇所に排藁が過大に堆積することを防止することができる。そして、本実施形態のコンバイン10は、運転席に戻らなくても上記のような操作を行うことができるようにするため、図5に示すようなリモートコントローラ90及びコントローラ装着部91を備えている。
【0040】
リモートコントローラ(操作部)90は、例えば、電池を内蔵した電波式のコントローラとして構成されている。このリモートコントローラ90は、刈取部12の昇降操作及びクローラ部11の前後進操作が可能に構成されている。
【0041】
具体的には、リモートコントローラ90は、刈取部上昇ボタン92、刈取部下降ボタン93、微速前進ボタン94、車体停止ボタン95、及び微速後進ボタン96を備えている。そしてこれらのボタンを操作することにより、刈取部12の上昇、刈取部12の下降、クローラ部11の微速前進、クローラ部11の停止、及びクローラ部11の微速後進を指示する操作信号を発信するように構成されている。ただし、上記リモートコントローラ90によって行うことができる操作の種類は一例であって、上記の操作に代えて、或いは上記の操作に加えて、コンバイン10に関する他の操作が可能であっても良い。
【0042】
また、前記コントローラ装着部(装着部)91は、ホルダ97と、機能切替スイッチ98とを備えている。
【0043】
ホルダ97はコンバイン10の車体の適宜の位置に配置され、リモートコントローラ90を着脱可能に保持することができるように構成されている。これにより、リモートコントローラ90を使用する際に車体に対して固定できるので、リモートコントローラ90を手で持っておく必要がなくなり、手扱ぎ作業時に両手を使うことができる。また、作業中にリモートコントローラ90を手に持ったり身に付けたりしておく必要が無くなるので、誤操作を低減することができる。
【0044】
機能切替スイッチ(装着検出部)98は、例えばリミットスイッチとして構成される。この機能切替スイッチ98は、ホルダ97の近傍に配置され、当該ホルダ97にリモートコントローラ90を装着した際に、リモートコントローラ90の背面によって押されてONになるように構成されている。この構成で、機能切替スイッチ98によって、コントローラ装着部91にリモートコントローラ90が装着されたことを検出することができる。
【0045】
そして、本実施形態のコンバイン10は、脱穀装置14のカバーの機体正面側に、前記コントローラ装着部91aを備えている。即ち、オペレータは、手扱ぎ作業を行う際には、刈取部12と脱穀装置14との間の穀稈受継ぎ部70の近傍(手扱ぎ作業位置)で作業を行う。そこで、この穀稈受継ぎ部70の近傍である脱穀装置14の正面カバーにコントローラ装着部91aを備えておけば、このコントローラ装着部91aにリモートコントローラ90を装着することにより、手扱ぎ作業位置から移動することなくコンバイン10の操作を行うことができるのである。
【0046】
一方、本実施形態のコンバイン10は、運転座席53近傍の適宜の位置に、コントローラ保管部99を備える。コントローラ保管部99は、リモートコントローラ90を着脱可能に保持することができるように構成されている。オペレータは、リモートコントローラ90を使用しない時には、当該リモートコントローラ90を前記コントローラ保管部99に装着しておくことで、リモートコントローラ90の紛失等を防止することができる。
【0047】
オペレータは、手扱ぎ作業等を行うために運転席から降りるときには、コントローラ保管部99からリモートコントローラ90を取り外し、このリモートコントローラ90を持ち歩く。そして作業を行うときにリモートコントローラ90をコントローラ装着部91に装着して、当該リモートコントローラ90により所望の操作を行う。ところで、コントローラ装着部91にリモートコントローラ90を装着していないとき(即ち、リモートコントローラ90を持ち歩いているとき)は、当該リモートコントローラ90の誤操作が発生し易い。また、手扱ぎ作業等を行っていない場合には、リモートコントローラ90によってコンバイン10を操作する必要性は低い。この点を考慮して、本実施形態のコンバイン10では、作業を行っていないときの誤操作を防止するため、コントローラ装着部91に装着されていない状態でリモートコントローラ90が操作されても、当該操作が無効となるように構成されている。
【0048】
具体的には、コンバイン10は、機能切替スイッチ98がONの状態のときのみ、リモートコントローラ90から受信した操作信号に従った動作をするように構成されている。言い換えれば、機能切替スイッチ98がOFFになっているとき(即ち、コントローラ装着部91にリモートコントローラ90が装着されていないとき)には、コンバイン10は、リモートコントローラ90から操作信号を受信しても、無視するように構成されている。これにより、リモートコントローラ90がコントローラ装着部91に装着されているときのみ、当該リモートコントローラ90による操作が行えるようになっている。
【0049】
以上、手扱ぎ作業を行う際のコンバイン10の操作について説明したが、手扱ぎ作業時以外にも、運転席から降りた状態でコンバイン10の操作を行いたい場合がある。例えば、オーガ操作時、アユミ板走行時、後進での車庫入れ時などである。ここで、オーガ操作時には、排出オーガ51の先端に操作部があると便利である。また、アユミ板走行時には、オペレータは運転座席53のステップ18近傍でコンバイン10を操作できると便利である。更に、後進での車庫入れ時では、車体後方に操作部があると後方を確認しながら操作できるので便利である。
【0050】
そこで、本実施形態では、オーガ操作時にコンバイン10の操作を行えるように、排出オーガ51の先端にコントローラ装着部91bを備えている。また、アユミ板走行時にコンバイン10の操作を行えるように、運転座席53へのステップ18の近傍にコントローラ装着部91cを備えている。更に、後進での車庫入れ時にコンバイン10の操作を行えるように、コンバイン10の車体後方左側にコントローラ装着部91dを備えている。以上のように適宜の位置に複数のコントローラ装着部91を設けたことにより、各作業に適した位置の近傍でコンバイン10の操作を行うことができる。また、1つのリモートコントローラ90だけで、複数の作業位置での操作に対応できるので、機体の複数の位置にそれぞれ操作スイッチ等を設ける構成と比べてコストを削減することができる。
【0051】
ところで、作業内容によって、必要となる操作の種類が異なる。例えば、手扱ぎ作業時には、排藁が後ろに排出されて堆積するので、後進操作は行わない。また例えば、後進での車庫入れ時には、前進操作は必要ない。しかし、本実施形態においては、前述のように手扱ぎ作業以外にも各種の作業を行うことができるようにするため、リモートコントローラ90は手扱ぎ作業に必要な操作以外の操作も行うことができるように構成されている。そのため、リモートコントローラ90によって、作業時に必要のない操作を行ってしまう可能性がある。
【0052】
そこで本実施形態では、リモートコントローラ90の装着位置を検出し、検出した装着位置に応じてリモートコントローラ90による操作の一部を無効としている。具体的には、複数のコントローラ装着部91の何れかにリモートコントローラ90が装着されると、当該リモートコントローラ90によって、複数の機能切替スイッチ98のうち1つが択一的に押される。これにより、リモートコントローラ90が複数のコントローラ装着部91のうち何れに取り付けられたかが検出される。このように、機能切替スイッチ98は装着位置検出部としても機能している。
【0053】
そして、例えば、脱穀装置14の正面カバーに配置されたコントローラ装着部91aにリモートコントローラ90が装着されたことを検出した場合には、手扱ぎ作業を行っていると考えられるので、微速後進ボタン96が操作されても、これを無視して機体を後進させないようにする。このように、コントローラ装着部91aにリモートコントローラ90が装着されたとき(手扱ぎ作業時)には、車体の微速前進、停止、及び刈取部12の昇降操作のみを行えるようになっている。
【0054】
また例えば、車体後方に配置されたコントローラ装着部91dにリモートコントローラ90が装着されたことを検出した場合には、後進による車庫入れ操作を行っていると考えられるので、微速前進ボタン94が操作されても、これを無視して機体を前進させないようにする。また、車庫入れ時には基本的に刈取部12の昇降操作を行うことは無いので、刈取部上昇ボタン92及び刈取部下降ボタン93が操作されても、これを無視して刈取部12が昇降しないようにする。このように、コントローラ装着部91dにリモートコントローラ90が装着されたとき(後進による車庫入れ時)には、車体の微速後進、停止のみを行えるようになっている。
【0055】
また、ステップ18の近傍に配置されたコントローラ装着部91cにリモートコントローラ90が装着されたことを検出した場合には、アユミ板走行を行っていると考えられるので、車体の微速前進、停止のみを行えるように構成されている。
【0056】
以上の構成で、リモートコントローラ90の装着位置によって、必要のない操作を無効とすることができるので、誤操作を防止できる。このように、機能切替スイッチ98は、リモートコントローラ90の機能を切り替える機能も有している。
【0057】
以上で説明したように、本実施形態のコンバイン10は、エンジンを搭載した走行機体と、刈取部12と、脱穀装置14と、リモートコントローラ90と、コントローラ装着部91と、機能切替スイッチ98と、を備える。リモートコントローラ90は、走行機体の前進操作及び後進操作が少なくとも可能である。コントローラ装着部91は、リモートコントローラ90を着脱可能に装着可能である。機能切替スイッチ98は、リモートコントローラがコントローラ装着部91に装着されたことを検出する。そして、リモートコントローラ90による操作は、機能切替スイッチ98が押されることでリモートコントローラ90がコントローラ装着部91に装着されたことを検出した場合にのみ有効となる。
【0058】
これにより、オペレータが運転座席53から降りて作業を行う場合、当該作業位置の近傍にコントローラ装着部91を設けておくことで、当該作業中にのみリモートコントローラ90による操作を有効とすることができる。これにより、誤操作を低減することができる。また、運転座席53に戻らなくても前進操作及び後進操作ができるので、作業時間を短縮することができる。
【0059】
また、本実施形態のコンバイン10においては、リモートコントローラ90は、刈取部12の昇降操作及び走行機体の前進操作が可能である。
【0060】
これにより、例えば手扱ぎ作業中に、手扱ぎ作業に適した高さまで刈取部12を昇降する操作及び走行機体を前進する操作を運転座席53に戻ることなく行うことができるので、作業時間を短縮することができる。
【0061】
また、本実施形態のコンバイン10においては、コントローラ装着部91は、手扱ぎ作業位置の作業者が操作可能な位置である刈取部12と脱穀装置14の間の穀稈受継ぎ部70の近傍であって、前記脱穀装置14のカバーに設けられている。
【0062】
これにより、手扱ぎ作業中にオペレータがリモートコントローラ90を身に付けておく必要が無くなるため、誤操作が発生しにくい。また、手扱ぎ作業中、オペレータがリモートコントローラ90を必要に応じて簡単に操作することができる。
【0063】
また、本実施形態のコンバイン10は、以下のように構成されている。即ち、このコンバイン10は、コントローラ装着部91を複数備えている。また、複数のコントローラ装着部91のうち何れのコントローラ装着部91に対してリモートコントローラ90が装着されたかを検出する機能切替スイッチ98を備える。リモートコントローラ90が装着されたコントローラ装着部91は、機能切替スイッチ98によって択一的に検出される。そして、当該機能切替スイッチ98の検出結果に基づいて、リモートコントローラ90による操作が制限される。
【0064】
即ち、コンバイン10の適宜の複数箇所にコントローラ装着部91を備えておけば、運転座席53から降りて行う作業中であっても、当該作業位置の最近傍のコントローラ装着部91にリモートコントローラ90を装着してコンバイン10の操作を行うことができるので、作業時間を更に短縮することができる。また、複数の操作部をコンバインに設ける構成と比べて、複数のコントローラ装着部91の何れかに対して1つのリモートコントローラ90を装着する構成とすることにより、コストを削減することができる。そして、機能切替スイッチ98の検出結果に基づいて操作を制限することにより、リモートコントローラ90を装着した位置に応じて、当該リモートコントローラ90によって行うことが可能な操作と行うことができない操作とを異ならせることができる。即ち、状況に応じて不必要な操作を行うことができなくなるので、誤操作を柔軟に防止することができる。
【0065】
以上に本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0066】
上記実施形態では車体側に設けられた機能切替スイッチ(リミットスイッチ)98によりリモートコントローラ90の装着を検出する構成としたが、リモートコントローラ側に装着検出部としてのリミットスイッチを設けても良い。この場合は、リモートコントローラ90がコントローラ装着部91への装着を検出しないときには、当該リモートコントローラ90から操作信号が発信されないようにすればよい。
【0067】
また、リモートコントローラ90側で装着位置を検出するように構成しても良い。例えば、リモートコントローラ90の背面に複数のリミットスイッチを設け、コントローラ装着部91側には、リモートコントローラ90を装着したときに前記複数のリミットスイッチを押すことができるような複数の突起を設ける。そして、前記突起の数が複数のコントローラ装着部91の間で互いに異なるようにすれば、リモートコントローラ90を装着した時に押されるリミットスイッチの数を検出することで、どのコントローラ装着部91に装着されたかをリモートコントローラ90側で検出することができる。この場合、例えば、手扱ぎ作業位置の近傍に配置されたコントローラ装着部91aにリモートコントローラ90が装着されたことを検出した場合には、微速後進ボタン96が操作されても操作信号を発信しないようにすれば良い。このように構成すれば、車体側には突起を設けるだけで良いので、車体にリミットスイッチを設ける場合のような配線が不要となる。
【0068】
また、リモートコントローラ90の装着及び装着位置を検出する方法は、リミットスイッチに限らず、例えば非接触式のセンサでも良い。
【0069】
また、リモートコントローラ90は、電池を内蔵しない構成でも良い。例えば、コントローラ装着部91に電力供給部(コンセント)を設け、コントローラ装着部91にリモートコントローラ90を装着したときに、リモートコントローラ90に対して電力が供給されるように構成することができる。この場合、リモートコントローラ90はコントローラ装着部91に装着されなければ動作しない(電力が供給されない)ので、前記電力供給部が装着検出部を兼ねているということができる。
【0070】
リモートコントローラ90は、コントローラ装着部91に装着されない場合には全ての操作が無効とされる必要はなく、コントローラ装着部91に装着されていない状態で特定の操作が可能であるように構成されていても良い。
【0071】
また、操作部は必ずしも無線のリモートコントローラでなくても良い。例えば、操作部と装着部にそれぞれ端子を設ける。そして、装着部に操作部を装着したときに前記端子同士が接続され、この端子を介して車体側と操作部側とで操作信号のやり取りが行えるように構成することもできる。この場合、操作部は装着部に装着しなければ動作しない(操作信号をやり取りすることができない)ので、前記端子が装着検出部を兼ねているということができる。
【符号の説明】
【0072】
10 コンバイン
12 刈取部(刈取装置)
14 脱穀装置
53 運転座席
70 穀稈受継ぎ部
90 リモートコントローラ(操作部)
91 コントローラ装着部(装着部)
98 リミットスイッチ(装着検出部、装着位置検出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載した走行機体と、
刈取装置と、
脱穀装置と、
前記走行機体の前進操作及び後進操作が少なくとも可能な操作部と、
前記操作部を着脱可能に装着可能な装着部と、
前記操作部が前記装着部に装着されたことを検出する装着検出部と、
を備え、
前記操作部による操作の少なくとも一部は、当該操作部が前記装着部に装着されたことを前記装着検出部が検出した場合にのみ有効となることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
請求項1に記載のコンバインであって、
前記操作部は、前記刈取装置の昇降操作又は前記走行機体の前進操作が可能であることを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコンバインであって、
前記装着部は、手扱ぎ作業位置の作業者が操作可能な位置であって、前記脱穀装置のカバーに設けられていることを特徴とするコンバイン。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のコンバインであって、
複数の前記装着部と、
前記操作部が装着された装着部を択一的に検出する装着位置検出部と、
を備え、
当該装着位置検出部の検出結果に基づいて、前記操作部による操作が制限されることを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−172319(P2010−172319A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21526(P2009−21526)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】