説明

コンバイン

【課題】オペレータが手で握りながら揺動操作する操向操作具の上部に、オペレータが操向操作具を握った状態の親指で押圧操作可能な複数の押しボタン式スイッチを設けるにあたり、オペレータが誤操作を起こすことなく択一的に押しボタン式スイッチを押圧操作できるようにする。
【解決手段】操向操作具7の上部に親指で押圧操作可能な左右一対の押しボタン式スイッチ31a,31bを設けるにあたり、両押しボタン式スイッチ31a,31bを水平方向Hに対して右上がり傾斜で配置すると共に、両押しボタン式スイッチ31a,31bの略中間位置mにおいて、親指で押圧操作可能な対向する上下一対の押しボタン式スイッチ32a,32bを垂直方向Vに対して左傾斜で配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインの操向操作具の把持部に設ける押しボタン式スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら穀稈を刈取って穀粒の収穫作業を行なうコンバインの操縦部には、操向操作具と前処理部の昇降操作具とを兼ねるマルチステアリングレバーを備えている。そして、マルチステアリングレバーの把持部には、複数の押しボタン式スイッチ(モーメンタリスイッチ)が設けてあり、オペレータが操向操作具を握った手の指先で、前記複数の押しボタン式スイッチを択一的に押圧操作することによって、前処理部の昇降操作や機体の進行方向の微調整を任意に行なえるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−72975号公報(第4−5頁、図3−図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そして、特許文献1の複数の押しボタン式スイッチは、マルチステアリングレバーの把持部に左右一対且つ上下一対に設けられると共に、それぞれ対応する押しボタン式スイッチ同士を水平方向または垂直方向に配置してあり、これらの押しボタン式スイッチの殆どは、オペレータが操向操作具を握った状態の親指で押圧操作することができるようになっている。
【0004】
しかし、上述の如くオペレータが操向操作具を握った状態の親指で1つの押しボタン式スイッチを押圧操作した後に、逆方向の対応する押しボタン式スイッチを親指で押圧操作しようとすると、これらの対応する一対の押しボタン式スイッチは、水平または垂直に設けられているので、一旦親指を浮かせて左右または上下に移動しながら新たな位置にある押しボタン式スイッチを押さなければならず、親指の動きが窮屈となって誤操作を起こし易く操作性に課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、オペレータが手で握りながら揺動操作する操向操作具を備えたコンバインにおいて、前記操向操作具の上部に親指で押圧操作可能な左右一対の押しボタン式スイッチを設けるにあたり、両押しボタン式スイッチを水平方向に対して右上がり傾斜で配置したことを第1の特徴としている。
そして、前記左右一対の押しボタン式スイッチの略中間位置で対向する上下一対の押しボタン式スイッチを設けるにあたり、両押しボタン式スイッチを垂直方向に対して左傾斜で配置したことを第2の特徴としている。
また、前記上下一対の押しボタン式スイッチの配置間隔を左右一対の押しボタン式スイッチの配置間隔よりも短く構成したことを第3の特徴としている。
更に、前記左右一対の押しボタン式スイッチの外形形状を上下一対の押しボタン式スイッチの外形形状よりも大きく構成したことを第4の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、操向操作具の上部に親指で押圧操作可能な左右一対の押しボタン式スイッチを設けるにあたり、両押しボタン式スイッチを水平方向に対して右上がり傾斜で配置したことによって、オペレータが操向操作具を握った状態の親指で両押しボタン式スイッチのうち何れか1つの押しボタン式スイッチを押圧操作した後に、逆方向の対応する押しボタン式スイッチを親指で押圧操作する時は、親指の左右方向への移動軌跡に対して左右一対の押しボタン式スイッチの配置を略一致させることができるので、当該親指のスムーズな左右方向への移動と的確且つ迅速な押しボタン式スイッチの押圧操作が可能になる。
そして、請求項2の発明によれば、前記左右一対の押しボタン式スイッチの略中間位置において、親指で押圧操作可能な対向する上下一対の押しボタン式スイッチを設けるにあたり、両押しボタン式スイッチを垂直方向に対して左傾斜で配置したことによって、オペレータが操向操作具を握った状態の親指で上下一対の押しボタン式スイッチのうち何れか1つの押しボタン式スイッチを押圧操作した後に、逆方向(対向する)の押しボタン式スイッチを親指で押圧操作する時は、当該親指の上下方向への移動を極力少なくして的確且つ迅速な両押しボタン式スイッチの押圧操作が可能になる。
また、請求項3の発明によれば、前記上下一対の押しボタン式スイッチの配置間隔を左右一対の押しボタン式スイッチの配置間隔よりも短く構成したことによって、オペレータが操向操作具を握った状態では、親指の移動が比較的窮屈となる上下一対の押しボタン式スイッチの押圧操作を、当該親指の短い距離の移動だけでスムーズに行えるようになる。したがって、左右一対の押しボタン式スイッチは、オペレータが操向操作具を握った状態で親指の左右方向への移動が容易に行えるので使用頻度の高い切換スイッチに採用し、一方上下一対の押しボタン式スイッチは、オペレータが操向操作具を握った状態で親指の移動が比較的窮屈なことから使用頻度の低い切換スイッチに採用するといった使い分けが行なえる。
更に、請求項4の発明によれば、前記左右一対の押しボタン式スイッチの外形形状を上下一対の押しボタン式スイッチの外形形状よりも大きく構成したことによって、特に左右一対の押しボタン式スイッチを使用頻度の高い切換スイッチとして採用する場合は、両押しボタン式スイッチの誤操作を防止することができ、的確且つ迅速な押しボタン式スイッチの押圧操作が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、コンバイン1の右側面図であって、コンバイン1は、収穫材料である稲や麦等の穀稈を圃場から刈取って後方に搬送する前処理部2と、この前処理部2から搬送される穀稈から穀粒を脱穀する図示しない脱穀部と、該脱穀部で脱穀された穀粒を選別処理する選別部(揺動選別装置)と、選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク3と、該穀粒タンク3内の穀粒を機外へ搬出する穀粒排出オーガ4と、脱穀部で脱穀した後の排稈を機体後部まで搬送する図示しない排藁搬送装置と、機体後部において排稈を所定の長さに切断して機外に排出するカッタを備えた後処理部5と、オペレータが着座する座席6や操向操作具であるマルチステアリングレバー7、及び主変速レバー8等の各種操作具を配設した操縦部9を備えている。
【0008】
そして、コンバイン1は、クローラ11を掛け回した左右一対のクローラ走行装置12に機体フレーム13を支持すると共に、この機体フレーム13の前部に前処理部2を昇降自在に連結している。尚、機体フレーム13上の左側前部に脱穀部を配設する一方、機体フレーム13上の右側前部に操縦部9を配設し、更にその後方に穀粒タンク3と排藁搬送装置を設けている。
【0009】
また、図2及び図3は、二点鎖線で示すオペレータ14が操縦部9に搭乗して座席6に着座すると共に、右手でマルチステアリングレバー7を、左手で主変速レバー8を把持した状態を示す要部側面図と要部平面図であって、操縦部9の床面を形成する搭乗ステップ16の前側に操縦塔17を立設し、この操縦塔17の上部を覆うメータパネルを兼ねた上面パネル18の右側からマルチステアリングレバー7を突出させている。一方、座席6左側のサイドパネル19には、主変速レバー8や副変速レバー21等のコンバイン1の操縦に必要な複数の操作レバーやスイッチ類を配置している。
【0010】
また、上述したマルチステアリングレバー7の手前側(座席6基準)には、オペレータが手首または前腕部を載せた状態で当該マルチステアリングレバー7を操作することができるアームレスト22を設けている。アームレスト22は、図4に示す如く操縦塔17を形成するフレーム部材23の上部に上面パネル18と一体的に固設してあり、略門型状に形成した樹脂製の基部24と、この門型状の基部24を構成する上側の梁部分24aの上面に貼着したパッド部材25とを備えている。
【0011】
ところで、マルチステアリングレバー7は、従来公知のように、コンバイン1の操向操作具と前処理部2の昇降操作具とを兼ねており、図5に示す中立状態から回動支点P周りに左右一側に揺動(傾倒)操作することによって、その傾倒方向のサイドクラッチを切りながらの緩旋回と、更なるマルチステアリングレバー7の傾倒操作によって、その傾倒方向のサイドブレーキを作動させての急旋回を可能にすると共に、マルチステアリングレバー7を中立状態から前後方向に傾倒操作することによって、前処理部2を昇降作動させることができるようになっている。
【0012】
そして、図6は、マルチステアリングレバー7の握り部7aをオペレータ14が握った状態を示す正面図であって、該マルチステアリングレバー7には、オペレータ14が二点鎖線で示す如く手で握ることができる握り部7aが設けてあり、この握り部7aの下部にマルチステアリングレバー7を手で握った状態でその手元部分を支える鍔部7bを設けると共に、握り部7aの上部一側には、握り部7aを手で握った状態で親指14aを載せることができる突起状の親指載置部7cを設けている。
【0013】
また、上述したマルチステアリングレバー7の握り部7aの上部には、この握り部7aを手で握りながら親指14aで押圧操作可能な左右一対の押しボタン式スイッチ31a,31bを設けると共に、両押しボタン式スイッチ31a,31bの略中間位置mにおいて、前記握り部7aを手で握りながら親指14aで押圧操作可能な対向する上下一対の押しボタン式スイッチ32a,32bを設けている。
【0014】
更に詳しく説明すると、上述した左右一対の押しボタン式スイッチ31a,31bは、機体の進行方向の微調整を任意に行なうことができるジャストディレクタスイッチであって、このジャストディレクタスイッチ(31a,31b)を図6及び図7に示す如く水平方向である線分Hに対して右上がり傾斜で配置することによって、例えば図7に示すように、オペレータ14がマルチステアリングレバー7の握り部7aを握って突起状の親指載置部7cに親指14aを載置した状態Aから、図中B位置の左側の押しボタン式スイッチ31aへの押圧操作、更には図中C位置の右側の押しボタン式スイッチ31bへの押圧操作、或いは図中C位置の右側の押しボタン式スイッチ31bから図中B位置の左側の押しボタン式スイッチ31aへの押圧操作、または左側の押しボタン式スイッチ31a(図中B位置)から親指載置部7cへ親指14aを載置するといった操作等を、二点鎖線で示すような親指14aの左右方向への移動軌跡に沿って無理なく行なうことができる。
【0015】
特に、オペレータ14がマルチステアリングレバー7の握り部7aを握った状態の親指14aで、左右一対の押しボタン式スイッチ31a,31bのうち何れか1つの押しボタン式スイッチを押圧操作した後に、逆方向の対応する押しボタン式スイッチを親指14aで押圧操作する時は、親指14aの左右方向への移動軌跡に対して左右一対の押しボタン式スイッチ1a,31bの配置を略一致させることができるので、当該親指14aのスムーズな左右方向への移動と的確且つ迅速な両押しボタン式スイッチ31a,31bの押圧操作が可能になる。
【0016】
また、上述した上下一対の押しボタン式スイッチ32a,32bのうち上側の押しボタン式スイッチ32aは、前処理部2を自動的に昇降制御する刈高さポジション制御の解除スイッチであり、一方下側の押しボタン式スイッチ32aは、機体旋回時に前処理部2を最上昇位置まで急上昇させることができる前処理部上昇スイッチであって、両押しボタン式スイッチ32a,32bを、左右一対の押しボタン式スイッチ31a,31bの略中間位置において、図6及び図7に示す如く垂直方向である線分Vに対して左傾斜で配置することによって、オペレータ14がマルチステアリングレバー7の握り部7aを握った状態の親指14aで上下一対の押しボタン式スイッチ32a,32bのうち何れか1つの押しボタン式スイッチを押圧操作した後に、逆方向(対向する)の押しボタン式スイッチを親指14aで押圧操作する時は、当該親指14aの上下方向への移動を極力少なくして的確且つ迅速な両押しボタン式スイッチの押圧操作が可能になる。
【0017】
尚、本実施例では、上述した線分Vは、正面視におけるマルチステアリングレバー7の握り部7aの縦軸心方向に相当すると共に、この線分Vに対して線分Hは正面視で直交している。
【0018】
また、図6に示すように、上下一対の押しボタン式スイッチ32a,32bの配置間隔S2を左右一対の押しボタン式スイッチ31a,31bの配置間隔S1よりも短く(S2<S1)構成したことによって、オペレータ14がマルチステアリングレバー7の握り部7aを握った状態では、親指14aの移動が比較的窮屈となる上下一対の押しボタン式スイッチ32a,32bの押圧操作を、当該親指14aの短い距離の移動だけでスムーズに行えるようになる。したがって、左右一対の押しボタン式スイッチ31a,31bは、オペレータ14がマルチステアリングレバー7の握り部7aを握った状態で親指14aの左右方向への移動が容易に行えるので使用頻度の高い切換スイッチに採用し、一方上下一対の押しボタン式スイッチ32a,32bは、オペレータ14がマルチステアリングレバー7の握り部7aを握った状態で親指14aの移動が比較的窮屈なことから使用頻度の低い切換スイッチに採用するといった使い分けが行なえる。
【0019】
更に、図6及び図7に示すように、左右一対の押しボタン式スイッチ31a,31bの外形形状を、上下一対の押しボタン式スイッチ32a,32bの外形形状よりも大きく構成したことによって、上述の如く使用頻度の高い切換スイッチとして採用する左右一対の押しボタン式スイッチ31a,31bの誤操作を防止することができ、的確且つ迅速な両押しボタン式スイッチ31a,31bの押圧操作が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】コンバインの右側面図。
【図2】オペレータが操縦部に搭乗した状態を示す側面図。
【図3】オペレータが操縦部に搭乗した状態を示す平面図。
【図4】操縦部の斜視図。
【図5】中立状態にある操向操作具の要部正面図。
【図6】押しボタン式スイッチの配置を示す操向操作具の正面図。
【図7】押しボタン式スイッチの押圧操作方法を示す操向操作具の正面図。
【符号の説明】
【0021】
7 操向操作具
31a 押しボタン式スイッチ(左側)
31b 押しボタン式スイッチ(右側)
32a 押しボタン式スイッチ(上側)
32b 押しボタン式スイッチ(下側)
S1 配置間隔(左右一対の押しボタン式スイッチ)
S2 配置間隔(上下一対の押しボタン式スイッチ)
H 水平方向
m 略中間位置
V 垂直方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータが手で握りながら揺動操作する操向操作具(7)を備えたコンバインにおいて、前記操向操作具(7)の上部に親指で押圧操作可能な左右一対の押しボタン式スイッチ(31a,31b)を設けるにあたり、両押しボタン式スイッチ(31a,31b)を水平方向(H)に対して右上がり傾斜で配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記左右一対の押しボタン式スイッチ(31a,31b)の略中間位置(m)において、親指で押圧操作可能な対向する上下一対の押しボタン式スイッチ(32a,32b)を設けるにあたり、両押しボタン式スイッチ(32a,32b)を垂直方向(V)に対して左傾斜で配置したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記上下一対の押しボタン式スイッチ(32a,32b)の配置間隔(S2)を左右一対の押しボタン式スイッチ(31a,31b)の配置間隔(S1)よりも短く構成した請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記左右一対の押しボタン式スイッチ(31a,31b)の外形形状を上下一対の押しボタン式スイッチ(32a,32b)の外形形状よりも大きく構成した請求項2または請求項3に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−29160(P2010−29160A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197450(P2008−197450)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】