コンバイン
【課題】畦際等の走行停止態の刈取作業中の不意な走行。
【解決手段】走行用静油圧式無段変速装置12により走行速度を無段階に変速可能な走行装置3の前方に、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により作業回転数を無段階に変速可能な刈取部4を設け、走行装置3の上方には脱穀装置2を設け、前記刈取部4は、操縦部6に設けた前記走行用無段変速装置12の主変速レバー13の傾倒操作により変速された走行速度に同調して刈取搬送用無段変速装置21が変速駆動する構成とし、前記操縦部6には、走行用無段変速装置12による走行装置3の走行を停止させた状態で、刈取部4を駆動させる刈取駆動入切手段53を設けたコンバイン。
【解決手段】走行用静油圧式無段変速装置12により走行速度を無段階に変速可能な走行装置3の前方に、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により作業回転数を無段階に変速可能な刈取部4を設け、走行装置3の上方には脱穀装置2を設け、前記刈取部4は、操縦部6に設けた前記走行用無段変速装置12の主変速レバー13の傾倒操作により変速された走行速度に同調して刈取搬送用無段変速装置21が変速駆動する構成とし、前記操縦部6には、走行用無段変速装置12による走行装置3の走行を停止させた状態で、刈取部4を駆動させる刈取駆動入切手段53を設けたコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行用静油圧式無段変速装置により走行速度を無段階に変速可能な走行装置の前方に、刈取搬送用静油圧式無段変速装置により作業回転数を無段階に変速可能な刈取部を設け、走行装置の上方には脱穀装置を設け、前記刈取部は走行速度に同調して刈取搬送用静油圧式無段変速装置が変速駆動する構成とし、刈取クラッチと前記刈取搬送用静油圧式無段変速装置への伝達を入切する作業クラッチを設け、刈取クラッチがOFFで作業クラッチがON状態のとき、穀稈供給搬送装置を駆動するように制御する構成は、公知である(特許文献1参照)。
従来、走行用静油圧式無段変速装置により走行速度を無段階に変速可能な走行装置の前方に、刈取搬送用静油圧式無段変速装置により作業回転数を無段階に変速可能な刈取部を設け、走行装置の上方には脱穀装置を設け、前記刈取部は走行速度に同調して刈取搬送用静油圧式無段変速装置が変速駆動する構成とし、穀稈刈取時であって走行停止状態のとき、刈取部の穀稈を強制的に掻き込む構成は、公知である(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−52230
【特許文献2】特開2003−164214
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公知例のうち前者は、走行速度に刈取部の回転数を同調させる構成を前提とし、刈取クラッチがOFFで作業クラッチがON状態であれば、走行停止状態で穀稈供給搬送装置を駆動して手刈り穀稈を供給することができるが、単に、手刈り穀稈を供給するにとどまり刈取部を駆動できないので、畦際で走行停止状態にして刈取部による畦際穀稈の刈取ができないという課題がある。
前記公知例のうち後者は、穀稈刈取時であって走行停止状態のとき、刈取部の穀稈を強制的に掻き込めるので、畦際の穀稈の刈取も可能になるが、誤って主変速レバーを操作してしまうと、機体が前進して畦に突っ込むという課題がある。
本願は、走行速度に刈取部の回転数を同調させる構成でありながら、走行停止状態における畦際の穀稈の刈り取り作業を容易に行えると共に、誤操作による機体の突っ込み等の不具合の発生を防止するように、工夫したものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、走行用静油圧式無段変速装置12により走行速度を無段階に変速可能な走行装置3の前方に、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により作業回転数を無段階に変速可能な刈取部4を設け、走行装置3の上方には脱穀装置2を設け、前記刈取部4は、操縦部6に設けた前記走行用静油圧式無段変速装置12の主変速レバー13の傾倒操作により変速された走行速度に同調して刈取搬送用静油圧式無段変速装置21が変速駆動する構成とし、前記操縦部6には、走行用静油圧式無段変速装置12による走行装置3の走行を停止させた状態で、刈取部4を駆動させる刈取駆動入切手段53を設けたことを特徴とするコンバインとしたものであり、機体を走行させると、刈取部4は走行装置3の走行速度に同調して変速されて、走行速度に応じて最適な作業回転数が伝達されるため、機体の走行を停止させると、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21は走行停止に同調して刈取部4の駆動を停止させる。この状態でも、脱穀装置2および穀稈供給搬送装置10を駆動させた状態で、刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動させると、刈取部4が駆動して穀稈を刈取って脱穀装置2へ供給でき、例えば、畦際の刈取りが行える。
本発明では、前記刈取駆動入切手段53は、刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動している間は前記主変速レバー13の操作を無効にして機体を走行停止状態に保持するように構成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動している間は主変速レバー13の操作を無効にするので、走行停止状態おいて刈取部4を駆動しているときは、機体の走行停止状態が保持される。
そのため、刈取駆動入切手段53による刈取部4の駆動状態のときに誤って主変速レバー13を操作しても、機体の前進による畦への突っ込み等のトラブルの発生を防止する。
本発明では、前記刈取駆動入切手段53による機体の走行停止状態の保持は、刈取駆動入切手段53が入り操作されている状態で主変速レバー13を前進または後進操作し、次に、一旦、主変速レバー13を中立位置に戻してから、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行うと、前記刈取駆動入切手段53による走行停止状態の保持を解除するように構成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、
主変速レバー13を中立位置に一旦戻してから、刈取駆動入切手段53による刈取部4の駆動を停止させ、次に、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行うと、刈取駆動入切手段53による主変速レバー13の操作無効状態が解除され、機体は走行可能となって、刈取部4は走行速度に同調して駆動回転する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明では、通常、刈取部4を走行速度に同調させて変速させるが、脱穀装置2および穀稈供給搬送装置10を駆動させた状態であれば、走行停止状態であっても刈取駆動入切手段53により刈取部4を簡単に駆動させることができ、走行停止状態における刈取部4の駆動操作を簡単にでき、操作性および作業性を向上させることができる。
請求項2の発明では、刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動している間は主変速レバー13の操作を無効にするので、走行停止状態での刈取部4を駆動させているときの機体の走行停止状態を確実に保持できる。
請求項3の発明では、主変速レバー13の中立復帰操作とその後の走行操作により刈取駆動入切手段53による主変速レバー13の操作無効状態を解除させるので、操作性および作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施例を図面により説明すると、1は機体フレ−ム、2は機体フレ−ム1の上方位置に設けた脱穀装置、3は機体フレ−ム1の下方位置に設けた走行装置、4は機体フレ−ム1の前方に設けた刈取部、5は前記脱穀装置2の側部に設けた該脱穀装置2より取出された穀物を一時貯留するグレンタンク、6は操縦部、7はグレンタンク5内の穀物を揚穀する揚穀排出装置である。
前記刈取部4の一例を示すと、分草体8、引起装置(図示省略)、刈刃9および搬送装置を有して構成する。
10は搬送装置により搬送され穀稈を脱穀装置2の脱穀室(図示省略)に穀稈を供給する穀稈供給搬送装置、11は穀稈供給搬送装置10の始端側に設けたシンクロ用前側供給搬送装置、11Aはシンクロ用前側供給搬送装置11の駆動歯車である。
前記穀稈供給搬送装置10は、前記刈取部4で刈り取られた穀稈を脱穀装置2の脱穀室(図示省略)の穀稈供給口(図示省略)から供給し、脱穀されて脱穀室の穀稈排出口(図示省略)より排出するまで搬送するものであるが、刈取部4で刈り取った穀稈を穀稈供給搬送装置10まで搬送する構成は任意である。
【0007】
前記穀稈供給搬送装置10は、挾扼杆(図示省略)と搬送供給チエン(フィードチェン、図示省略)により構成する。挾扼杆は脱穀装置2の上部カバーに上下自在に取付けられ、搬送供給チエンに弾着して穀稈を挟持搬送する。搬送供給チエンは無端チエンにより構成し、任意構成の案内レール(図示省略)により案内されて移動するように構成する。
しかして、走行装置3は走行用静油圧式無段変速装置12により走行速度変更可能に構成し、刈取部4へ伝達する回転も走行装置3の走行速度に同調して変速するようにする。
走行用静油圧式無段変速装置12は、主変速レバー13の傾倒操作量に応じて増減速し、例えば、図2のように、走行速度に対して所定割合で伝動回転を増速する標準作業ラインAと、該標準作業ラインAよりも短時間で増速するようにした倒伏作業ラインBにより変速するように構成する。
前記走行用静油圧式無段変速装置12は、油圧ポンプ14のポンプ斜板15の傾斜を変更して油圧モータ16への送油量を無段階に変更して回転を伝達し(図3)、油圧モータ16にも傾斜角度を二段階に切替可能なモータ斜板17を設け、機体の走行速度の上限を通常走行と高速走行への切替可能に構成する。
19はモータ斜板17の角度を切替える切替手段(ソレノイド)である。
【0008】
この場合、前記走行用静油圧式無段変速装置12の油圧モータ16を高速走行に切替えた状態であっても、前記主変速レバー13を最高速に操作しても、前記刈取部4が刈取作業可能な走行速度となるように、前記走行用静油圧式無段変速装置12の油圧ポンプ14から油圧モータ16への送油量を制限する車速制限制御を行うように構成する。
即ち、走行用静油圧式無段変速装置12の油圧モータ16が高速状態で主変速レバー13を最高速に操作して油圧ポンプ14の回転を最大にすると、油圧モータ16の回転を最大にしたときの最高走行速度ラインCになり、この最速走行速度に同調させて刈取部4を増速駆動させて刈取作業しても、走行速度の上がりすぎによる刈刃9の刈跡の悪化、藁量の増加による刈取部4の詰まり・破損を招くことがあるが、本願では、所定条件(刈取作業中等)では、走行用静油圧式無段変速装置12の油圧ポンプ14のポンプ斜板15の傾斜を制限して主変速レバー13を最も高速に操作したときでも、刈取部4による刈取作業が可能な走行速度である制限速度ラインDとなるように車速制限制御を行う(図2)。
【0009】
そのため、主変速レバー13を最も高速に操作したときの、走行速度の上がりすぎによる刈刃9の刈跡の悪化、藁量の増加による刈取部4の詰まり・破損を防止する。また、負荷の軽い麦刈取作業で稲より車速アップした作業が可能となる。
21は刈取搬送専用の刈取搬送用静油圧式無段変速装置であり、刈取搬送専用の刈取搬送用静油圧式無段変速装置21による走行速度への同調は脱穀装置2と穀稈供給搬送装置10とをエンジン22からの一定駆動回転で駆動して脱穀作業を安定させつつ、穀稈供給搬送装置10への引継を円滑・確実にする。
また、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11への伝達回転は、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により変速するので、通常は刈取搬送用静油圧式無段変速装置21が刈取部4を走行速度に同調させて変速するが、所定条件のときは、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21単独で刈取部4および/またはシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動するように構成する。
そのため、機体停止状態から所定走行速度の間でも、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11を十分な回転数で駆動させることができ、機体走行開始直後から安定して刈取部4および脱穀装置2を駆動させられ、刈取作業および脱穀作業を安定・確実に行える。
【0010】
また、走行用静油圧式無段変速装置12から走行装置3への回転を停止させたとき、単独の刈取搬送用静油圧式無段変速装置21でシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動すると、機体走行停止状態でシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動し、シンクロ用前側供給搬送装置11および穀稈供給搬送装置10へ手刈り穀稈を供給でき、刈取作業および脱穀作業の作業性および操作性を向上させられる。
この場合、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21から刈取部4への回転伝達経路中に、刈取部4への回転伝達を入切させる刈取クラッチ23を設け、該刈取クラッチ23を「切り」にした状態でシンクロ用前側供給搬送装置11のみを駆動するモード設ける(図4)。
したがって、シンクロ用前側供給搬送装置11に手刈り穀稈を載置するだけで、シンクロ用前側供給搬送装置11から穀稈供給搬送装置10に引き継がれて、シンクロ用前側供給搬送装置11と穀稈供給搬送装置10の両方で穀稈が搬送されるので、搬送姿勢が安定し、脱穀作業における扱ぎ残し等を防止できる。
【0011】
即ち、刈取部4からシンクロ用前側供給搬送装置11までは同じ搬送速度状態とし、刈取部4で植立状態の搬送穀稈をシンクロ用前側供給搬送装置11で穀稈供給搬送装置10の搬送姿勢に合わせた横向きとし、穀稈供給搬送装置10にはシンクロ用前側供給搬送装置13から同じ搬送姿勢で搬送させて引継を良好にさせること、また、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11は走行装置3の走行速度に同調して変速するが、穀稈供給搬送装置10の搬送速度は一定として脱穀装置2の扱胴(図示省略)の回転との関係を変化させないようにして、脱穀作業を安定させることから、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11の伝動経路と穀稈供給搬送装置10への伝動経路は別々に構成しており、そのため、手刈り穀稈を穀稈供給搬送装置10へ供給するには、刈取部4の駆動とは別に、シンクロ用前側供給搬送装置11を駆動させる必要があり、本願では刈取クラッチ23を「切り」にすることで、刈取部4の駆動を停止させてシンクロ用前側供給搬送装置11のみを駆動するモードを設けている。
【0012】
しかして、エンジン22から走行用静油圧式無段変速装置12および刈取搬送用静油圧式無段変速装置21への回転伝達機構の構成は任意であるが、一例を示すと、25Aは走行用出力プーリー、25Bは刈取脱穀用出力プーリー,26は走行用静油圧式無段変速装置12の入力プーリー、28は刈取脱穀用出力プーリー25Bの回転が伝達される中間プーリー,28Aはベルト、29は中間軸、30は中間歯車、31は中間伝動軸、32は一対の脱穀用傘歯車、33は脱穀伝動軸、33Aは脱穀用中間プーリー、33Bはベルト、34は扱胴、35は処理胴、36は刈取用中間歯車、37は刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の刈取HST入力軸、38は刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の刈取HST出力軸、39は刈取用中間出力軸、40は搬送シンクロ用出力軸、41は穀稈供給搬送中間出力軸、41Aは供給搬送用プーリー、42は唐箕、43は穀稈供給搬送装置10の駆動歯車、44は刈取脱穀クラッチ、45は刈取用中間出力軸39に設けた刈取中間出力プーリー,46は刈取中間入力プーリー、47は刈取中間出力プーリー45と刈取中間入力プーリー46に掛け回したベルトである。
【0013】
50は刈取用中間歯車36および刈取用中間出力軸39等を設けたギヤケースであり、ギヤケース50の操縦部6側に刈取搬送用静油圧式無段変速装置21を設ける。そのため、機体重量バランスやギヤケース50の取付バランスを良好にする。
ギヤケース50の穀稈供給搬送装置10側の刈取用中間出力軸39と搬送シンクロ用出力軸40と穀稈供給搬送中間出力軸41には、刈取中間出力プーリー45に掛け回したベルト47等の張力が作用するが、この張力の作用する反対側のギヤケース50に刈取搬送用静油圧式無段変速装置21を設けているので、バランスが良好になる。
なお、図5の実施例では、ギヤケース50の外側に刈取搬送用静油圧式無段変速装置21を設けている。
また、本願の走行用静油圧式無段変速装置12は、油圧モータ16により二段階に走行速度を切替可能にすることで副変速機能を奏するように構成しているため、ミッションケース18内の機械的な副変速機構を省略可能にしている。
【0014】
しかして、操縦部6には、走行装置3の走行を停止させた状態で、刈取部4を駆動させる刈取駆動入切手段53を設ける。
刈取部4へ回転伝達する刈取搬送用静油圧式無段変速装置21は、エンジン22から脱穀伝動軸33への伝動よりも下手側に配置し、刈取駆動入切手段53による刈取部4の駆動は脱穀装置2の駆動(穀稈供給搬送装置10およびシンクロ用前側供給搬送装置11の駆動)していることを前提とし、詰まり発生を防止する。
即ち、機体を走行させると、刈取部4は走行装置3の走行速度に同調して変速されて、走行速度に応じて最適な作業回転数が伝達されるため、機体の走行を停止させると、通常、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21は走行停止に同調して刈取部4の駆動を停止させることを前提としているが、脱穀装置2および穀稈供給搬送装置10を駆動させた状態で、刈取駆動入切手段53により走行停止状態で刈取部4を駆動させると、例えば、畦際の穀稈を刈取って脱穀装置2へ供給できる。
【0015】
刈取駆動入切手段53がONになると、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21から出力がされて、刈取部4を掻込作業に適した回転速度で駆動する。
刈取駆動入切手段53は、刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動している間は主変速レバー13を操作しても機体を走行停止状態に保持するように構成する。
そのため、刈取駆動入切手段53による刈取部4の駆動状態のときに誤って主変速レバー13を操作しても、機体の突っ込み等のトラブルの発生を防止する。
即ち、刈取駆動入切手段53は、刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動している間は主変速レバー13の操作を無効にして機体の走行停止状態を保持する。
刈取部4へ回転伝達する刈取搬送用静油圧式無段変速装置21は、エンジン22から脱穀伝動軸33への伝動よりも下手側に配置し、刈取駆動入切手段53による刈取部4の駆動は脱穀装置2の駆動(穀稈供給搬送装置10およびシンクロ用前側供給搬送装置11の駆動)していることを前提とし、詰まり発生を防止する。
【0016】
前記刈取駆動入切手段53による機体の走行停止状態の保持の解除は、主変速レバー13を中立位置に一旦戻し、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行うと、刈取駆動入切手段53による主変速レバー13の操作無効状態が解除するように構成する。
したがって、主変速レバー13の複数操作により刈取駆動入切手段53の操作無効状態を解除するので、操作性および作業性を向上させる。
この場合、主変速レバー13の複数操作による刈取駆動入切手段53の操作無効状態の解除は、刈取駆動入切手段53の操作中あるいは操作終了後の何れでもよい。
例えば、刈取駆動入切手段53の操作中の状態で主変速レバー13を前進または後進操作し、次に、一旦、主変速レバー13を中立位置に戻してから、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行うと、前記刈取駆動入切手段53による走行停止状態の保持を解除するように構成する。
【0017】
あるいは、畦際の刈取作業の終了後に、刈取駆動入切手段53による刈取部4の駆動を停止させ、この状態で、主変速レバー13を前進または後進操作し、次に、一旦、主変速レバー13を中立位置に戻してから、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行ったとき、刈取駆動入切手段53による走行停止状態の保持を解除するように構成してもよい。
しかして、前記刈取駆動入切手段53は、操縦部6のフロア54に設けたペダル(掻込ペダル)55により構成する。
ペダル55は踏み込んでいる間刈取部4を駆動し、ペダル55の踏み込みを解除すると、刈取部4は停止する。
そのため、操作が簡単で、操作性および作業性を向上させる。
また、ペダル55による走行停止状態の解除は、主変速レバー13を中立位置に戻して行うように構成する。誤ってペダル55から足を離しても、機体の走行停止状態を保持し、機体の突っ込み等のトラブルの発生を防止する。
【0018】
即ち、ペダル55を踏み込んでる状態で主変速レバー13を前進または後進操作しても、機体の走行停止状態を保持するが、ペダル55を踏み込んでる状態で主変速レバー13を前進または後進操作し、次に、一旦、主変速レバー13を中立位置に戻してから、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行うと、ペダル55による走行停止状態の保持を解除し、走行可能となる。
そのため、操作が簡単で、操作性および作業性を向上させる。
なお、ペダル55による刈取部4の「入切」させる構成は、任意であり、上述の実施例ではペダル55の踏み込みを感知する掻込スイッチ56を設けて、掻込スイッチ56により前記刈取クラッチ23を入切させるようにしているが、ペダル55と前記刈取クラッチ23とをワイヤーあるいはリンク等の連結手段により機械的に連結してもよい。
【0019】
また、ペダル55の踏み込みによる掻込スイッチ56のONによってコントローラ57から刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の刈取用HST変速モータへの出力を制御し、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の出力を掻込作業に適した回転速度とするように構成すると、上記刈取クラッチ23の省略も可能となる。
58は車速センサ、59は刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の出力回転を検出する出力回転センサである。
しかして、走行用静油圧式無段変速装置12と刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により、図2、図10のような、走行速度に対して所定割合で刈取部4への伝動回転を増速する標準作業ラインAと、該標準作業ラインAよりも短時間で増速するようにした倒伏作業ラインBにより変速するように構成し、この標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとの間の回転数の上昇勾配の変更を操縦部6に設けた刈取変速レバー60により行う(図9)。
【0020】
この場合、標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとの間の回転数の上昇勾配は、刈取変速レバー60により無段階に変更するように構成する。
即ち、刈取変速レバー60は、図10の標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとの間の斜線部分の範囲内の任意の刈取部4の作業回転数を選択するように操作できる。
そのため、刈取部4の回転数の上昇勾配を、刈取変速レバー60の操作位置により容易に判断でき、操作性および作業性を向上させる。
また、刈取部4の作業回転数を走行速度に対して無段階に変更できるので、走行速度や穀稈の倒伏状況に応じて最適な刈取部4の作業回転数を選択でき、刈取作業の作業効率を向上させる。
前記走行用静油圧式無段変速装置12と刈取搬送用静油圧式無段変速装置21は、主変速レバー13の傾倒角度に応じて、同期させて作動させ、同期および作動させるための構成は任意であるが、主変速レバーと走行用静油圧式無段変速装置12および刈取搬送用静油圧式無段変速装置21をリンク等の機械的に連結構成に比し、主変速レバーの傾倒角度を電気的に検出し、この信号により走行用静油圧式無段変速装置12と刈取搬送用静油圧式無段変速装置21を電気的に制御するようにすると、一層、制御精度を向上させて好適である。
【0021】
しかして、図11,図12の実施例では、主変速レバー13の所定位置に、図2の標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとに選択的に切り替える刈取変速スイッチ62を設ける。刈取変速スイッチ62は所謂シーソー式のスイッチにより構成し、標準作業ラインAと倒伏作業ラインBの何れかを選択するように構成する。
したがって、走行速度を変更する主変速レバー13に刈取変速スイッチ62を設けているので、主変速レバー13による変速操作に応じて刈取変速スイッチ62により刈取部4の作業速度を選択すればよく、操作性および作業性を向上させる。
また、刈取変速スイッチ62はシーソー式のスイッチにより構成しているので、視覚あるいは触覚により標準作業ラインAと倒伏作業ラインBの何れかの選択状態を認識することができる。
そのため、操縦部6に設けた表示用モニタに刈取部4の作業速度の表示を省略することが可能となり、表示用モニタに他の情報を多く表示可能となって、操作性および作業性を向上させて、合理的な構成とすることができる。
【0022】
しかして、刈取部4を刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により駆動するに際して、刈取部4に穀稈が詰まったとき等の不具合発生時に、刈取部4を低速回転で間欠駆動する間欠駆動モードスイッチ(詰まり除去モードスイッチ)65を設ける(図14)。
刈取部4に穀稈が詰まったとき等の不具合の発生時には、間欠駆動モードスイッチ65により刈取部4を低速回転で間欠駆動できるので(図15)、単に連続駆動して余計に詰まりがひどくなるのを防止して、詰まり確認作業および除去作業を容易にする。
間欠駆動モードスイッチ65はコンバインの機体の左側となる脱穀装置2の上部カバー66あるいは刈取部4の左側部分の所定位置に設ける(図1)。したがって、刈取部4の穀稈の流れを確認しながら間欠駆動モードスイッチ65(刈取クラッチ)を入切して詰まり確認作業および除去作業を行え、一人作業も可能になる。
また、間欠駆動モードスイッチ65の近傍にはエンジン緊急停止スイッチ67を設ける。そのため、トラブル発生時エンジン緊急停止スイッチ67によりエンジンを直ぐに停止でき、トラブルの増大を避けることができる。なお、エンジン緊急停止スイッチ67の近傍に間欠駆動モードスイッチ65を設けてもよい。
【0023】
前記間欠駆動モードスイッチ65により刈取部4を駆動するときは、機体は走行停止状態で行う。
しかして、刈取部4の所定位置に穀稈の有無を感知する穀稈センサ69を設け、穀稈センサ69が刈取部4に穀稈の有ることを感知している状態で、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21からの回転による刈取部4が駆動されていないときには、刈取部4が駆動回転されるまで、機体の前進を停止または減速する自動車速制御を行うように構成する(図16)。
走行用静油圧式無段変速装置12と刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の作動タイミングのずれにより、刈取部4が駆動しないまま機体が走行するのを防止する。
また、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21あるいは制御部の不具合で、刈取部4が回転不能状態になったときも、刈取部4で刈り取らずに圃場の穀稈を踏み倒しながらの走行等のトラブルを防止する。
即ち、図2のように、走行用静油圧式無段変速装置12による車速が「0」のとき刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の出力は「0」であり、車速の上昇に同調して刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の出力回転も上昇させるように自動制御しているが、刈取クラッチ23が入りで穀稈センサ69が刈取部4に穀稈の有ることを感知している状態では、刈取作業を開始する状態であるから、刈取部4が駆動するまで、機体の前進を停止または減速する自動車速制御を行って、刈取部4が駆動しないまま機体が走行する不具合発生を防止する(図17)。
【0024】
そのため、前記穀稈センサ69は刈取部4の分草体8の後方の引起装置(図示省略)の直ぐ後方に設けると、穀稈の感知を迅速にできて、刈取部4が駆動しないまま機体が走行する不具合発生を有効に防止できて、好適である。
しかして、刈取部4の所定位置に搬送穀稈の詰まりを検出する詰まり検出手段70を設ける。検出手段70はポテンショメータ等により詰まり量を検出しうる構成とし、検出手段70により詰まりを検出し、詰まり量が少ないときは走行速度を減速させて対応し、詰まり量が所定以上に多くなったときは走行を停止し、詰まりの検出がなくなると(詰まり量が所定以下)、走行速度を元に戻すように自動制御するように構成する(図18)。
刈取部4の穀稈の搬送乱れが一時的に増えた場合、走行速度を減速させて穀稈搬送量を減らすこととで(図19)、詰まりまでの進展を回避し、詰まり発生を未然に防止する。
【0025】
また、詰まり量が所定以上に多くなったときは、エンジンが高負荷によって停止する前に、走行を停止させて対処できるので、エンジンへの高負荷を回避して、エンジンの耐久性を向上させられる。
しかして、正面から見て、脱穀装置2の前方左側付近に設けた前記ギヤケース50と、脱穀装置2に回転を伝達するベルト33Bとの間に前記刈取搬送用静油圧式無段変速装置21を設け(図4,図20)、前記刈取部4は刈取フレーム71の刈取下側フレーム72を前記機体フレーム1側に対して回動自在に構成し、刈取部4を回動中心S中心に外方回動させてオープンさせて、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の周辺を開放するように構成する(図21)。
したがって、刈取部4を外方オープンさせるので、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の周辺を開放でき、メンテナンス作業を容易にできる。
刈取部4をオープンさせる構成は任意であり、実施例では、刈取部4の刈取フレーム71の刈取下側フレーム72を支持する刈取支持フレーム73の上部伝動ケース74をリンク機構75により外方回動するようにしている。
【0026】
この場合、前記刈取中間入力プーリー46は入力軸76の左側部に取付け、入力軸76は前記刈取支持フレーム73の上部の上部伝動ケース74に軸装し、ベルト47はリンク機構75のサイドオープン支点側に設ける(図20)。
そのため、ベルト47は機体左側から外せるので、ベルト47の着脱が容易となる(図21では理解を容易にするため、ベルト47に斜線を付しているが、これによって構成は限定されない)。
また、ベルト47に当接させる刈取クラッチ23を省略し、ベルト47にはテンションローラ80を常時当接させて常時張りとし、テンションローラ80のテンションアーム81に一体に設けた解除レバーの操作でベルト47を外せるように構成する(図23)。
したがって、ベルト47は常時張りなので、テンション調節が容易であり、スリップ等のトラブル発生も抑制する。
なお、この実施例では、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の回転停止と回転増速とにより刈取部4への駆動の入切をするように構成しており、図示は省略するが、解除レバーの操作はテンションローラ80を弛めてベルト47の着脱作業のとき行う。
【0027】
前記リンク機構75のアーム85は、その端部の上下両端に突出部86を形成してシャフト部87を一体形成する(図24)。
そのため、アーム85を取付けるシャフトを廃止でき、コストダウン効果を向上させる。
前記上下の突出部86の間のシャフト部87は、中空部88に形成する。したがって、軽量化が図れる。
また、アーム85の支持ピッチを長くなるので、支持部荷重が減少し、アーム85の倒れを抑制する。
前記リンク機構75のアーム85の基部のシャフト部87を機体フレーム1側に設けたブラケット89に回転自在に取付け、アーム85の先端側を上部伝動ケース74側に取付ける。
【0028】
(実施例の作用)
機体を走行させると、刈取部4が圃場の穀稈を刈り取って搬送し、刈取部4により搬送された穀稈はシンクロ用前側供給搬送装置11に引き継がれ、シンクロ用前側供給搬送装置11は穀稈を穀稈供給搬送装置10に受け渡し、穀稈供給搬送装置10は穀稈を一定速度で搬送して脱穀装置2の脱穀室に供給して脱穀する。
主変速レバー13を傾倒させると、走行装置3は走行用静油圧式無段変速装置12によりエンジン22の一定回転を無段階に変速して伝達し、走行装置3の走行速度に同調して刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11へ伝達する回転も変速するようにしているので、刈取部4は走行速度に応じて最適な作業回転数が伝達される。
しかして、走行装置3の走行速度を変速する走行用静油圧式無段変速装置12は、主変速レバー13の傾倒操作量に応じて増減速するが、更に、走行用静油圧式無段変速装置12の油圧モータ16のモータ斜板17も傾斜角度を二段階に切替可能(切替操作手段の構成は任意)に構成し、通常走行と高速走行との切替え可能に構成しているから、通常走行速度(標準側)で刈取作業(標準作業および倒伏作業)を行い、高速走行速度(高速側)で走行して移動時間を短縮する。
【0029】
この場合、走行用静油圧式無段変速装置12の油圧モータ16を高速走行に切替えた状態で、主変速レバー13を最高速位置にまで操作したときでも、刈取部4が刈取作業可能な走行速度となるように、走行用静油圧式無段変速装置12の油圧ポンプ14から油圧モータ16への送油量を制限するように構成しているから、走行用静油圧式無段変速装置12の油圧モータ16を高速側に切替えた状態で、主変速レバー13を最速位置に操作しても、自動的に、刈取部4が刈取作業可能な走行速度に自動制御される。
そのため、主変速レバー13を最も高速に操作したときの、走行速度の上がりすぎによる刈刃9の刈跡の悪化、藁量の増加増加による刈取部4の詰まり・破損を防止する。負荷の軽い麦刈取作業で稲より車速アップした作業が可能となる。
【0030】
即ち、走行用静油圧式無段変速装置12の油圧モータ16を高速走行に切替えた状態で、主変速レバー13を最高速位置にまで操作したときに、仮に、刈取部4へ伝達させる回転を最高の走行速度に同調させたまま伝達して刈取作業を行っても、走行速度の上がりすぎによる刈刃9の刈跡の悪化、藁量の増加による刈取部4の詰まり・破損を招くこが、本願では自動的に、刈取部4が刈取作業可能な適正な走行速度に自動制御されて、刈跡の悪化や刈取部4の詰まり・破損を防止する。
しかして、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11は、通常、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21が刈取部4を走行速度に同調させて変速するが、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21単独で刈取部4および/またはシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動できるので、機体走行停止状態でシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動し、シンクロ用前側供給搬送装置11および穀稈供給搬送装置10へ手刈り穀稈を供給でき、刈取作業および脱穀作業の作業性および操作性を向上させられる。
【0031】
この場合、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21から刈取部4への回転伝達経路中に、刈取部4への回転伝達を入切させる刈取クラッチ23を設け、該刈取クラッチ23を「切り」にした状態でシンクロ用前側供給搬送装置11のみを駆動するモード設ける。
したがって、シンクロ用前側供給搬送装置11に手刈り穀稈を載置するだけで、シンクロ用前側供給搬送装置11から穀稈供給搬送装置10に引き継がれて、シンクロ用前側供給搬送装置11と穀稈供給搬送装置10の両方で穀稈が搬送されるので、搬送姿勢が安定し、脱穀作業における扱ぎ残し等を防止できる。
しかして、機体走行中の刈取部4は走行装置3の走行速度に同調して変速されて、走行速度に応じて最適な作業回転数が伝達されるため、機体の走行を停止させると、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21は走行装置3の走行停止に同調して刈取部4の駆動を停止させる。
【0032】
このとき、脱穀装置2および穀稈供給搬送装置10を駆動させた状態で、刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動させると、刈取部4が駆動して穀稈を刈取って脱穀装置2へ供給でき、例えば、畦際の刈取りが行える。
したがって、刈取駆動入切手段53の操作だけで、走行停止状態で刈取部4の駆動を入りにできる。
刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動している間は、主変速レバー13の操作を無効にするので、走行停止状態おいて刈取部4を駆動しているときは、機体の走行停止状態が保持される。
そのため、刈取駆動入切手段53による刈取部4の駆動状態のときに誤って主変速レバー13を操作しても、機体の突っ込み等のトラブルの発生を防止する。
主変速レバー13を中立位置に一旦戻してから、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行うと、刈取駆動入切手段53による主変速レバー13の操作無効状態が解除され、機体は走行可能となって、刈取部4は走行速度に同調して駆動回転する。
【0033】
前記刈取駆動入切手段53は、操縦部6のフロア54に設けたペダル(掻込ペダル)55により構成し、ペダル55を踏み込んでいる間刈取部4を駆動するので、操作が簡単で、操作性および作業性を向上させる。
ペダル55を踏み込むと、掻込スイッチ56がONになって、コントローラ57から刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の出力がされて、刈取部4を掻込作業に適した回転速度で駆動する。
ペダル55から足を外し、ペダル55がバネ等の復帰手段で戻ると、刈取部4の駆動は停止する。
また、ペダル55の踏み込むによる刈取部4の駆動状態では、誤って主変速レバー13を操作しても、機体の突っ込み等のトラブルの発生を防止する。
この場合のペダル55による走行停止状態(主変速レバー13操作規制状態)の解除は、主変速レバー13を中立位置に一旦戻して行うように構成しているから、単に、誤ってペダル55から足を離しても、機体の走行停止状態は保持され、機体の突っ込み等のトラブルの発生を防止する。
したがって、再び、ペダル55を踏み込むと、刈取作業を続行できる。
【0034】
また、一旦、ペダル55を踏み込んだ刈取部4の駆動状態のときに、誤って、主変速レバー13を前進または後進操作しても、機体の走行停止状態を保持するので、畦際刈りが終了したら、ペダル55から足を離し、次に、主変速レバー13を前進または後進操作した後に、一旦、主変速レバー13を中立位置に戻してから、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行うことで、ペダル55による走行停止状態の保持が解除されて、走行可能となる。
即ち、誤ってペダル55から足を離しても、機体の走行停止状態を保持するようにしているので、単に、ペダル55から足を離すだけでなく、主変速レバー13の中立復帰操作後の前進または後進の二重操作により、ペダル55による走行停止状態の保持を解除する。
したがって、刈取駆動入切のみならず、刈取駆動中の主変速レバー13の誤操作も防止すると共に、ペダル55による主変速レバー13の操作無効状態の解除も確実安全でしかも自然な操作手順で行うことができる。
【0035】
しかして、走行用静油圧式無段変速装置12と刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により、図10のような、走行速度に対して所定割合で刈取部4への伝動回転を増速する標準作業ラインAと、該標準作業ラインAよりも短時間で増速するようにした倒伏作業ラインBにより変速するように構成し、この標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとの間の回転数の上昇勾配の変更を操縦部6に設けた刈取変速レバー刈取変速レバー60により行うように構成しているので、刈取部4の作業回転数の変更操作の操作性を向上させる。
この場合、標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとの間の回転数の上昇勾配は、刈取変速レバー60により無段階に変更するように構成し、図10の標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとの間の斜線部分の範囲内の任意の刈取部4の作業回転数を選択するように操作できるので、刈取部4の回転数の上昇勾配を、刈取変速レバー60の操作位置により容易に判断できて、操作性を向上させるだけでなく、走行速度や穀稈の倒伏状況に応じて最適の刈取部4の作業回転数となるように走行速度に対して無段階に変更できるので、刈取作業の作業効率を向上させる。
【0036】
しかして、図12の実施例では、主変速レバー13の所定位置に、図2の標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとに選択的に切り替える刈取変速スイッチ刈取変速スイッチ62を、シーソー式のスイッチにより構成しているので、刈取変速スイッチ62により標準作業ラインAと倒伏作業ラインBの何れかの選択を、走行速度を変更する主変速レバー13に刈取変速スイッチ62より行えるので、主変速レバー13による変速操作に応じて刈取変速スイッチ62により刈取部4の作業速度を選択すればよく、操作性および作業性を向上させる。
また、刈取変速スイッチ62はシーソー式のスイッチにより構成しているので、視覚あるいは触覚により標準作業ラインAと倒伏作業ラインBの何れかの選択状態を認識することができる。
そのため、操縦部6に設けた表示用モニタに刈取部4の作業速度の表示を省略することが可能となり、表示用モニタに他の情報を多く表示可能となって、操作性および作業性を向上させて、合理的な構成とすることができる。
【0037】
しかして、刈取部4を刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により駆動するに際して、刈取部4に穀稈が詰まったとき等の不具合発生時に、刈取部4を低速回転で間欠駆動する間欠駆動モードスイッチ65を設けているので、刈取部4に穀稈が詰まったとき等の不具合の発生時には、間欠駆動モードスイッチ65により刈取部4を低速回転で間欠駆動させることで、単に連続駆動して余計に詰まりがひどくなるのを防止して、詰まり確認作業および除去作業を容易にする。
間欠駆動モードスイッチ65はコンバインの機体の左側となる脱穀装置2の上部カバーエンジン緊急停止スイッチ67あるいは刈取部4の左側部分の所定位置に設けているので、刈取部4の穀稈の流れを確認しながら間欠駆動モードスイッチ65(刈取クラッチ)を入切して詰まり確認作業および除去作業を行え、一人作業も可能になる。
また、間欠駆動モードスイッチ65の近傍にはエンジン緊急停止スイッチエンジン緊急停止スイッチ67を設けているので、トラブル発生時エンジン緊急停止スイッチ67によりエンジンを直ぐに停止でき、トラブルの増大を避けることができる。
【0038】
しかして、刈取部4の所定位置に穀稈の有無を感知する穀稈センサ69を設け、穀稈センサ69が刈取部4に穀稈の有ることを感知している状態で、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21からの回転による刈取部4が駆動されていないときには、刈取部4が駆動回転されるまで、機体の前進を停止または減速する自動車速制御を行うように構成しているので、刈取部4が駆動しないまま機体を走行させて圃場の穀稈を踏み倒すのを防止する。
また、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21あるいは制御部の不具合で、刈取部4が回転不能状態になって、穀稈センサ69が刈取部4に穀稈の有ることを感知している状態で、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21からの回転による刈取部4が駆動されていないときは、機体の前進走行を停止させるので、刈取部4で刈り取らずに圃場の穀稈を踏み倒しながらの走行等のトラブルを防止する。
【0039】
しかして、刈取部4の所定位置に搬送穀稈の詰まりを検出する詰まり検出手段検出手段70を設け、検出手段70はポテンショメータ等により詰まり量を検出しうる構成とし、検出手段70により詰まりを検出し、詰まり量が少ないときは走行速度を減速させて対応し、詰まり量が所定以上に多くなったときは走行を停止し、詰まりの検出がなくなると(詰まり量が所定以下)、走行速度を元に戻すように自動制御するように構成しているので、刈取部4の穀稈の搬送乱れが一時的に増えた場合、走行速度を減速させて穀稈搬送量を減らすこととで、詰まりまでの進展を回避し、詰まり発生を未然に防止する。
また、詰まり量が所定以上に多くなったときは、エンジンが高負荷によって停止する前に、走行を停止させて対処できるので、エンジンへの高負荷を回避して、エンジンの耐久性を向上させられる。
【0040】
しかして、本願では、走行用静油圧式無段変速装置12とは別個に刈取部4の専用の刈取搬送用静油圧式無段変速装置21を設け、走行用静油圧式無段変速装置12と刈取搬送用静油圧式無段変速装置21とにより、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11へ伝達する回転を走行装置3の走行速度に同調して変速するように構成しているので、この刈取部4の専用の刈取搬送用静油圧式無段変速装置21による特有の作用について以下詳述する。
なお、前記した走行用静油圧式無段変速装置12の油圧ポンプ14の車速制限制御は、刈取部4の回転数を同調させる基準となる走行速度の制御であり、この制限された最高走行速度に同調するように刈取部4の回転を自動制御するので、刈取部4の回転を同調させるための構成は任意であり、走行装置3と刈取部4の同調制御は走行用静油圧式無段変速装置12単独でも行えるが本願では走行用静油圧式無段変速装置12とは別個の刈取部4の専用の刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により行っている。
【0041】
走行装置3の走行速度は主変速レバー13の操作により走行速度を変速し、この走行速度に対して、例えば、図2の走行速度に対して所定割合で伝動回転を増速する標準作業ラインAと、該標準作業ラインAより上昇率の高い加速をするようにした倒伏作業ラインBとを選択的に採用して、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動させる。
そして、シンクロ用前側供給搬送装置11は植立状態で刈取部4から搬送される穀稈の姿勢を横倒し状態に変えて引き継ぐので、シンクロ用前側供給搬送装置11と穀稈供給搬送装置10との間で搬送速度に若干の差があっても、搬送姿勢が横向きなので、円滑に引き継げる。
即ち、実施例の刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11は、刈取搬送専用の刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により走行速度に同調させて変速しているので、脱穀装置2と穀稈供給搬送装置10をエンジン22からの一定駆動回転で駆動して脱穀効率を向上させつつ、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11の回転を走行速度に同調させて刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により変速して、穀稈供給搬送装置10への引継を円滑・確実にする。
【0042】
また、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11への伝動回転は、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により変速するので、通常は走行速度に同調させて変速するが、所定条件のときは、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21単独で刈取部4および/またはシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動させることができるので、作業態様を広げ、汎用性を向上させられる。
即ち、機体停止状態から所定走行速度の間でも、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11を十分な回転数で駆動させることができるので、機体走行開始直後から安定して刈取部4および脱穀装置2を駆動させられ、刈取作業および脱穀作業を安定・確実に行える。
また、走行用静油圧式無段変速装置12から走行装置3への回転を停止させたとき、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21単独でシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動すると、機体走行停止状態でシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動させることができるので、シンクロ用前側供給搬送装置11および穀稈供給搬送装置10へ手刈り穀稈を供給する供給作業を容易にでき、刈取作業および脱穀作業の作業性および操作性を向上させられる。
【0043】
しかして、エンジン22の回転が中間プーリー28に伝達され、中間プーリー28は中間軸29と中間歯車30を介してケースの中間伝動軸31に回転を伝達し、中間伝動軸31で扱胴34側と穀稈供給搬送中間出力軸41および刈取搬送用静油圧式無段変速装置21とに伝動を分岐する。
脱穀用傘歯車32に伝達された回転は扱胴34に伝達して駆動する。
中間伝動軸31の回転は穀稈供給搬送中間出力軸41に伝達されて、穀稈供給搬送中間出力軸41の回転は穀稈供給搬送装置10の終端側から入力させて、穀稈供給搬送装置10を駆動する。
したがって、穀稈供給搬送中間出力軸41は走行用静油圧式無段変速装置12および刈取搬送用静油圧式無段変速装置21とは無関係にエンジン22からの一定に設定された回転を、穀稈供給搬送装置10に伝達し、穀稈供給搬送装置10と扱胴34とは常時同じ関係で回転する。
穀稈供給搬送中間出力軸41の下手側には刈取用中間歯車36により回転が伝達される刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の刈取HST入力軸37を設けているので、穀稈供給搬送中間出力軸41の回転が刈取搬送用静油圧式無段変速装置21のポンプに入力されて、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21のモータから変速された回転が刈取HST出力軸38により出力され、刈取HST出力軸38は刈取用中間出力軸39および搬送シンクロ用出力軸40により刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動回転させる。
【0044】
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しており、ブロック図等を含めたこれらの実施例は相互に夫々種々組合せ可能であり、特に、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11を走行速度に同調させる構成であっても、走行用静油圧式無段変速装置12単独により走行速度に同調させる構成に組み合わせることや、各種スイッチ等の組み合わせも含めて、実施例の相互の組合せは可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】刈取部の回転数と車速との関係図。
【図3】無段変速装置の油圧回路図。
【図4】伝動機構の概略図。
【図5】伝動機構の他の実施例の概略図。
【図6】操縦部のペダル部分の側面図。
【図7】同平面図。
【図8】ブロック図。
【図9】刈取変速レバーを設けた実施例の側面図。
【図10】刈取部の回転数と車速との関係図。
【図11】刈取変速スイッチを設けた実施例の背面図。
【図12】同側面図。
【図13】同ブロック図。
【図14】間欠駆動モード(詰まり除去モード)スイッチを設けた実施例のブロック図。
【図15】刈取部の間欠駆動回転数と時間との関係図。
【図16】穀稈センサを設けた実施例のブロック図。
【図17】穀稈センサのフロー図。
【図18】穀稈詰まりの検出手段を設けた実施例のブロック図。
【図19】穀稈詰まりの検出値と車速との関係図。
【図20】刈取搬送用無段変速装置付近の一部展開状態正面図。
【図21】刈取搬送用無段変速装置付近の一部展開状態平面図。
【図22】刈取搬送用無段変速装置付近の側面図。
【図23】刈取クラッチの切り状態の側面図。
【図24】刈取オープン用リンク機構の正面図。
【符号の説明】
【0046】
1…機体フレ−ム、2…脱穀装置、3…走行装置、4…刈取部、5…グレンタンク、10…穀稈供給搬送装置、11…シンクロ用前側供給搬送装置、12…走行用静油圧式無段変速装置、13…主変速レバー、14…油圧ポンプ、15…ポンプ斜板、16…油圧モータ、17…モータ斜板、18…ミッションケース、21…刈取搬送用静油圧式無段変速装置、22…エンジン、23…刈取クラッチ、26…入力プーリー、27…ミッションケース、28…中間プーリー、29…中間軸、30…中間歯車、31…中間伝動軸、32…脱穀用傘歯車、33…脱穀伝動軸、34…扱胴、35…処理胴、36…刈取用中間歯車、37…刈取HST入力軸、38…刈取HST出力軸、39…刈取用中間出力軸、40…搬送シンクロ用出力軸、41…穀稈供給搬送中間出力軸、42…唐箕、43…駆動歯車、44…刈取脱穀クラッチ、45…刈取中間出力プーリー、46…刈取中間入力プーリー、47…ベルト、50…ギヤケース、53…刈取駆動入切手段、54…フロア、55…ペダル、60…刈取変速レバー、62…刈取変速スイッチ、65…間欠駆動モードスイッチ、67…エンジン緊急停止スイッチ、69…穀稈センサ、70…検出手段、71…刈取フレーム、72…刈取下側フレーム、73…刈取支持フレーム、75…リンク機構、76…入力軸、74…上部伝動ケース、80…テンションローラ、81…テンションアーム、85…アーム、86…突出部、87…シャフト部、88…中空部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行用静油圧式無段変速装置により走行速度を無段階に変速可能な走行装置の前方に、刈取搬送用静油圧式無段変速装置により作業回転数を無段階に変速可能な刈取部を設け、走行装置の上方には脱穀装置を設け、前記刈取部は走行速度に同調して刈取搬送用静油圧式無段変速装置が変速駆動する構成とし、刈取クラッチと前記刈取搬送用静油圧式無段変速装置への伝達を入切する作業クラッチを設け、刈取クラッチがOFFで作業クラッチがON状態のとき、穀稈供給搬送装置を駆動するように制御する構成は、公知である(特許文献1参照)。
従来、走行用静油圧式無段変速装置により走行速度を無段階に変速可能な走行装置の前方に、刈取搬送用静油圧式無段変速装置により作業回転数を無段階に変速可能な刈取部を設け、走行装置の上方には脱穀装置を設け、前記刈取部は走行速度に同調して刈取搬送用静油圧式無段変速装置が変速駆動する構成とし、穀稈刈取時であって走行停止状態のとき、刈取部の穀稈を強制的に掻き込む構成は、公知である(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−52230
【特許文献2】特開2003−164214
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公知例のうち前者は、走行速度に刈取部の回転数を同調させる構成を前提とし、刈取クラッチがOFFで作業クラッチがON状態であれば、走行停止状態で穀稈供給搬送装置を駆動して手刈り穀稈を供給することができるが、単に、手刈り穀稈を供給するにとどまり刈取部を駆動できないので、畦際で走行停止状態にして刈取部による畦際穀稈の刈取ができないという課題がある。
前記公知例のうち後者は、穀稈刈取時であって走行停止状態のとき、刈取部の穀稈を強制的に掻き込めるので、畦際の穀稈の刈取も可能になるが、誤って主変速レバーを操作してしまうと、機体が前進して畦に突っ込むという課題がある。
本願は、走行速度に刈取部の回転数を同調させる構成でありながら、走行停止状態における畦際の穀稈の刈り取り作業を容易に行えると共に、誤操作による機体の突っ込み等の不具合の発生を防止するように、工夫したものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、走行用静油圧式無段変速装置12により走行速度を無段階に変速可能な走行装置3の前方に、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により作業回転数を無段階に変速可能な刈取部4を設け、走行装置3の上方には脱穀装置2を設け、前記刈取部4は、操縦部6に設けた前記走行用静油圧式無段変速装置12の主変速レバー13の傾倒操作により変速された走行速度に同調して刈取搬送用静油圧式無段変速装置21が変速駆動する構成とし、前記操縦部6には、走行用静油圧式無段変速装置12による走行装置3の走行を停止させた状態で、刈取部4を駆動させる刈取駆動入切手段53を設けたことを特徴とするコンバインとしたものであり、機体を走行させると、刈取部4は走行装置3の走行速度に同調して変速されて、走行速度に応じて最適な作業回転数が伝達されるため、機体の走行を停止させると、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21は走行停止に同調して刈取部4の駆動を停止させる。この状態でも、脱穀装置2および穀稈供給搬送装置10を駆動させた状態で、刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動させると、刈取部4が駆動して穀稈を刈取って脱穀装置2へ供給でき、例えば、畦際の刈取りが行える。
本発明では、前記刈取駆動入切手段53は、刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動している間は前記主変速レバー13の操作を無効にして機体を走行停止状態に保持するように構成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動している間は主変速レバー13の操作を無効にするので、走行停止状態おいて刈取部4を駆動しているときは、機体の走行停止状態が保持される。
そのため、刈取駆動入切手段53による刈取部4の駆動状態のときに誤って主変速レバー13を操作しても、機体の前進による畦への突っ込み等のトラブルの発生を防止する。
本発明では、前記刈取駆動入切手段53による機体の走行停止状態の保持は、刈取駆動入切手段53が入り操作されている状態で主変速レバー13を前進または後進操作し、次に、一旦、主変速レバー13を中立位置に戻してから、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行うと、前記刈取駆動入切手段53による走行停止状態の保持を解除するように構成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、
主変速レバー13を中立位置に一旦戻してから、刈取駆動入切手段53による刈取部4の駆動を停止させ、次に、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行うと、刈取駆動入切手段53による主変速レバー13の操作無効状態が解除され、機体は走行可能となって、刈取部4は走行速度に同調して駆動回転する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明では、通常、刈取部4を走行速度に同調させて変速させるが、脱穀装置2および穀稈供給搬送装置10を駆動させた状態であれば、走行停止状態であっても刈取駆動入切手段53により刈取部4を簡単に駆動させることができ、走行停止状態における刈取部4の駆動操作を簡単にでき、操作性および作業性を向上させることができる。
請求項2の発明では、刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動している間は主変速レバー13の操作を無効にするので、走行停止状態での刈取部4を駆動させているときの機体の走行停止状態を確実に保持できる。
請求項3の発明では、主変速レバー13の中立復帰操作とその後の走行操作により刈取駆動入切手段53による主変速レバー13の操作無効状態を解除させるので、操作性および作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施例を図面により説明すると、1は機体フレ−ム、2は機体フレ−ム1の上方位置に設けた脱穀装置、3は機体フレ−ム1の下方位置に設けた走行装置、4は機体フレ−ム1の前方に設けた刈取部、5は前記脱穀装置2の側部に設けた該脱穀装置2より取出された穀物を一時貯留するグレンタンク、6は操縦部、7はグレンタンク5内の穀物を揚穀する揚穀排出装置である。
前記刈取部4の一例を示すと、分草体8、引起装置(図示省略)、刈刃9および搬送装置を有して構成する。
10は搬送装置により搬送され穀稈を脱穀装置2の脱穀室(図示省略)に穀稈を供給する穀稈供給搬送装置、11は穀稈供給搬送装置10の始端側に設けたシンクロ用前側供給搬送装置、11Aはシンクロ用前側供給搬送装置11の駆動歯車である。
前記穀稈供給搬送装置10は、前記刈取部4で刈り取られた穀稈を脱穀装置2の脱穀室(図示省略)の穀稈供給口(図示省略)から供給し、脱穀されて脱穀室の穀稈排出口(図示省略)より排出するまで搬送するものであるが、刈取部4で刈り取った穀稈を穀稈供給搬送装置10まで搬送する構成は任意である。
【0007】
前記穀稈供給搬送装置10は、挾扼杆(図示省略)と搬送供給チエン(フィードチェン、図示省略)により構成する。挾扼杆は脱穀装置2の上部カバーに上下自在に取付けられ、搬送供給チエンに弾着して穀稈を挟持搬送する。搬送供給チエンは無端チエンにより構成し、任意構成の案内レール(図示省略)により案内されて移動するように構成する。
しかして、走行装置3は走行用静油圧式無段変速装置12により走行速度変更可能に構成し、刈取部4へ伝達する回転も走行装置3の走行速度に同調して変速するようにする。
走行用静油圧式無段変速装置12は、主変速レバー13の傾倒操作量に応じて増減速し、例えば、図2のように、走行速度に対して所定割合で伝動回転を増速する標準作業ラインAと、該標準作業ラインAよりも短時間で増速するようにした倒伏作業ラインBにより変速するように構成する。
前記走行用静油圧式無段変速装置12は、油圧ポンプ14のポンプ斜板15の傾斜を変更して油圧モータ16への送油量を無段階に変更して回転を伝達し(図3)、油圧モータ16にも傾斜角度を二段階に切替可能なモータ斜板17を設け、機体の走行速度の上限を通常走行と高速走行への切替可能に構成する。
19はモータ斜板17の角度を切替える切替手段(ソレノイド)である。
【0008】
この場合、前記走行用静油圧式無段変速装置12の油圧モータ16を高速走行に切替えた状態であっても、前記主変速レバー13を最高速に操作しても、前記刈取部4が刈取作業可能な走行速度となるように、前記走行用静油圧式無段変速装置12の油圧ポンプ14から油圧モータ16への送油量を制限する車速制限制御を行うように構成する。
即ち、走行用静油圧式無段変速装置12の油圧モータ16が高速状態で主変速レバー13を最高速に操作して油圧ポンプ14の回転を最大にすると、油圧モータ16の回転を最大にしたときの最高走行速度ラインCになり、この最速走行速度に同調させて刈取部4を増速駆動させて刈取作業しても、走行速度の上がりすぎによる刈刃9の刈跡の悪化、藁量の増加による刈取部4の詰まり・破損を招くことがあるが、本願では、所定条件(刈取作業中等)では、走行用静油圧式無段変速装置12の油圧ポンプ14のポンプ斜板15の傾斜を制限して主変速レバー13を最も高速に操作したときでも、刈取部4による刈取作業が可能な走行速度である制限速度ラインDとなるように車速制限制御を行う(図2)。
【0009】
そのため、主変速レバー13を最も高速に操作したときの、走行速度の上がりすぎによる刈刃9の刈跡の悪化、藁量の増加による刈取部4の詰まり・破損を防止する。また、負荷の軽い麦刈取作業で稲より車速アップした作業が可能となる。
21は刈取搬送専用の刈取搬送用静油圧式無段変速装置であり、刈取搬送専用の刈取搬送用静油圧式無段変速装置21による走行速度への同調は脱穀装置2と穀稈供給搬送装置10とをエンジン22からの一定駆動回転で駆動して脱穀作業を安定させつつ、穀稈供給搬送装置10への引継を円滑・確実にする。
また、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11への伝達回転は、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により変速するので、通常は刈取搬送用静油圧式無段変速装置21が刈取部4を走行速度に同調させて変速するが、所定条件のときは、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21単独で刈取部4および/またはシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動するように構成する。
そのため、機体停止状態から所定走行速度の間でも、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11を十分な回転数で駆動させることができ、機体走行開始直後から安定して刈取部4および脱穀装置2を駆動させられ、刈取作業および脱穀作業を安定・確実に行える。
【0010】
また、走行用静油圧式無段変速装置12から走行装置3への回転を停止させたとき、単独の刈取搬送用静油圧式無段変速装置21でシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動すると、機体走行停止状態でシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動し、シンクロ用前側供給搬送装置11および穀稈供給搬送装置10へ手刈り穀稈を供給でき、刈取作業および脱穀作業の作業性および操作性を向上させられる。
この場合、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21から刈取部4への回転伝達経路中に、刈取部4への回転伝達を入切させる刈取クラッチ23を設け、該刈取クラッチ23を「切り」にした状態でシンクロ用前側供給搬送装置11のみを駆動するモード設ける(図4)。
したがって、シンクロ用前側供給搬送装置11に手刈り穀稈を載置するだけで、シンクロ用前側供給搬送装置11から穀稈供給搬送装置10に引き継がれて、シンクロ用前側供給搬送装置11と穀稈供給搬送装置10の両方で穀稈が搬送されるので、搬送姿勢が安定し、脱穀作業における扱ぎ残し等を防止できる。
【0011】
即ち、刈取部4からシンクロ用前側供給搬送装置11までは同じ搬送速度状態とし、刈取部4で植立状態の搬送穀稈をシンクロ用前側供給搬送装置11で穀稈供給搬送装置10の搬送姿勢に合わせた横向きとし、穀稈供給搬送装置10にはシンクロ用前側供給搬送装置13から同じ搬送姿勢で搬送させて引継を良好にさせること、また、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11は走行装置3の走行速度に同調して変速するが、穀稈供給搬送装置10の搬送速度は一定として脱穀装置2の扱胴(図示省略)の回転との関係を変化させないようにして、脱穀作業を安定させることから、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11の伝動経路と穀稈供給搬送装置10への伝動経路は別々に構成しており、そのため、手刈り穀稈を穀稈供給搬送装置10へ供給するには、刈取部4の駆動とは別に、シンクロ用前側供給搬送装置11を駆動させる必要があり、本願では刈取クラッチ23を「切り」にすることで、刈取部4の駆動を停止させてシンクロ用前側供給搬送装置11のみを駆動するモードを設けている。
【0012】
しかして、エンジン22から走行用静油圧式無段変速装置12および刈取搬送用静油圧式無段変速装置21への回転伝達機構の構成は任意であるが、一例を示すと、25Aは走行用出力プーリー、25Bは刈取脱穀用出力プーリー,26は走行用静油圧式無段変速装置12の入力プーリー、28は刈取脱穀用出力プーリー25Bの回転が伝達される中間プーリー,28Aはベルト、29は中間軸、30は中間歯車、31は中間伝動軸、32は一対の脱穀用傘歯車、33は脱穀伝動軸、33Aは脱穀用中間プーリー、33Bはベルト、34は扱胴、35は処理胴、36は刈取用中間歯車、37は刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の刈取HST入力軸、38は刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の刈取HST出力軸、39は刈取用中間出力軸、40は搬送シンクロ用出力軸、41は穀稈供給搬送中間出力軸、41Aは供給搬送用プーリー、42は唐箕、43は穀稈供給搬送装置10の駆動歯車、44は刈取脱穀クラッチ、45は刈取用中間出力軸39に設けた刈取中間出力プーリー,46は刈取中間入力プーリー、47は刈取中間出力プーリー45と刈取中間入力プーリー46に掛け回したベルトである。
【0013】
50は刈取用中間歯車36および刈取用中間出力軸39等を設けたギヤケースであり、ギヤケース50の操縦部6側に刈取搬送用静油圧式無段変速装置21を設ける。そのため、機体重量バランスやギヤケース50の取付バランスを良好にする。
ギヤケース50の穀稈供給搬送装置10側の刈取用中間出力軸39と搬送シンクロ用出力軸40と穀稈供給搬送中間出力軸41には、刈取中間出力プーリー45に掛け回したベルト47等の張力が作用するが、この張力の作用する反対側のギヤケース50に刈取搬送用静油圧式無段変速装置21を設けているので、バランスが良好になる。
なお、図5の実施例では、ギヤケース50の外側に刈取搬送用静油圧式無段変速装置21を設けている。
また、本願の走行用静油圧式無段変速装置12は、油圧モータ16により二段階に走行速度を切替可能にすることで副変速機能を奏するように構成しているため、ミッションケース18内の機械的な副変速機構を省略可能にしている。
【0014】
しかして、操縦部6には、走行装置3の走行を停止させた状態で、刈取部4を駆動させる刈取駆動入切手段53を設ける。
刈取部4へ回転伝達する刈取搬送用静油圧式無段変速装置21は、エンジン22から脱穀伝動軸33への伝動よりも下手側に配置し、刈取駆動入切手段53による刈取部4の駆動は脱穀装置2の駆動(穀稈供給搬送装置10およびシンクロ用前側供給搬送装置11の駆動)していることを前提とし、詰まり発生を防止する。
即ち、機体を走行させると、刈取部4は走行装置3の走行速度に同調して変速されて、走行速度に応じて最適な作業回転数が伝達されるため、機体の走行を停止させると、通常、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21は走行停止に同調して刈取部4の駆動を停止させることを前提としているが、脱穀装置2および穀稈供給搬送装置10を駆動させた状態で、刈取駆動入切手段53により走行停止状態で刈取部4を駆動させると、例えば、畦際の穀稈を刈取って脱穀装置2へ供給できる。
【0015】
刈取駆動入切手段53がONになると、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21から出力がされて、刈取部4を掻込作業に適した回転速度で駆動する。
刈取駆動入切手段53は、刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動している間は主変速レバー13を操作しても機体を走行停止状態に保持するように構成する。
そのため、刈取駆動入切手段53による刈取部4の駆動状態のときに誤って主変速レバー13を操作しても、機体の突っ込み等のトラブルの発生を防止する。
即ち、刈取駆動入切手段53は、刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動している間は主変速レバー13の操作を無効にして機体の走行停止状態を保持する。
刈取部4へ回転伝達する刈取搬送用静油圧式無段変速装置21は、エンジン22から脱穀伝動軸33への伝動よりも下手側に配置し、刈取駆動入切手段53による刈取部4の駆動は脱穀装置2の駆動(穀稈供給搬送装置10およびシンクロ用前側供給搬送装置11の駆動)していることを前提とし、詰まり発生を防止する。
【0016】
前記刈取駆動入切手段53による機体の走行停止状態の保持の解除は、主変速レバー13を中立位置に一旦戻し、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行うと、刈取駆動入切手段53による主変速レバー13の操作無効状態が解除するように構成する。
したがって、主変速レバー13の複数操作により刈取駆動入切手段53の操作無効状態を解除するので、操作性および作業性を向上させる。
この場合、主変速レバー13の複数操作による刈取駆動入切手段53の操作無効状態の解除は、刈取駆動入切手段53の操作中あるいは操作終了後の何れでもよい。
例えば、刈取駆動入切手段53の操作中の状態で主変速レバー13を前進または後進操作し、次に、一旦、主変速レバー13を中立位置に戻してから、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行うと、前記刈取駆動入切手段53による走行停止状態の保持を解除するように構成する。
【0017】
あるいは、畦際の刈取作業の終了後に、刈取駆動入切手段53による刈取部4の駆動を停止させ、この状態で、主変速レバー13を前進または後進操作し、次に、一旦、主変速レバー13を中立位置に戻してから、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行ったとき、刈取駆動入切手段53による走行停止状態の保持を解除するように構成してもよい。
しかして、前記刈取駆動入切手段53は、操縦部6のフロア54に設けたペダル(掻込ペダル)55により構成する。
ペダル55は踏み込んでいる間刈取部4を駆動し、ペダル55の踏み込みを解除すると、刈取部4は停止する。
そのため、操作が簡単で、操作性および作業性を向上させる。
また、ペダル55による走行停止状態の解除は、主変速レバー13を中立位置に戻して行うように構成する。誤ってペダル55から足を離しても、機体の走行停止状態を保持し、機体の突っ込み等のトラブルの発生を防止する。
【0018】
即ち、ペダル55を踏み込んでる状態で主変速レバー13を前進または後進操作しても、機体の走行停止状態を保持するが、ペダル55を踏み込んでる状態で主変速レバー13を前進または後進操作し、次に、一旦、主変速レバー13を中立位置に戻してから、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行うと、ペダル55による走行停止状態の保持を解除し、走行可能となる。
そのため、操作が簡単で、操作性および作業性を向上させる。
なお、ペダル55による刈取部4の「入切」させる構成は、任意であり、上述の実施例ではペダル55の踏み込みを感知する掻込スイッチ56を設けて、掻込スイッチ56により前記刈取クラッチ23を入切させるようにしているが、ペダル55と前記刈取クラッチ23とをワイヤーあるいはリンク等の連結手段により機械的に連結してもよい。
【0019】
また、ペダル55の踏み込みによる掻込スイッチ56のONによってコントローラ57から刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の刈取用HST変速モータへの出力を制御し、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の出力を掻込作業に適した回転速度とするように構成すると、上記刈取クラッチ23の省略も可能となる。
58は車速センサ、59は刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の出力回転を検出する出力回転センサである。
しかして、走行用静油圧式無段変速装置12と刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により、図2、図10のような、走行速度に対して所定割合で刈取部4への伝動回転を増速する標準作業ラインAと、該標準作業ラインAよりも短時間で増速するようにした倒伏作業ラインBにより変速するように構成し、この標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとの間の回転数の上昇勾配の変更を操縦部6に設けた刈取変速レバー60により行う(図9)。
【0020】
この場合、標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとの間の回転数の上昇勾配は、刈取変速レバー60により無段階に変更するように構成する。
即ち、刈取変速レバー60は、図10の標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとの間の斜線部分の範囲内の任意の刈取部4の作業回転数を選択するように操作できる。
そのため、刈取部4の回転数の上昇勾配を、刈取変速レバー60の操作位置により容易に判断でき、操作性および作業性を向上させる。
また、刈取部4の作業回転数を走行速度に対して無段階に変更できるので、走行速度や穀稈の倒伏状況に応じて最適な刈取部4の作業回転数を選択でき、刈取作業の作業効率を向上させる。
前記走行用静油圧式無段変速装置12と刈取搬送用静油圧式無段変速装置21は、主変速レバー13の傾倒角度に応じて、同期させて作動させ、同期および作動させるための構成は任意であるが、主変速レバーと走行用静油圧式無段変速装置12および刈取搬送用静油圧式無段変速装置21をリンク等の機械的に連結構成に比し、主変速レバーの傾倒角度を電気的に検出し、この信号により走行用静油圧式無段変速装置12と刈取搬送用静油圧式無段変速装置21を電気的に制御するようにすると、一層、制御精度を向上させて好適である。
【0021】
しかして、図11,図12の実施例では、主変速レバー13の所定位置に、図2の標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとに選択的に切り替える刈取変速スイッチ62を設ける。刈取変速スイッチ62は所謂シーソー式のスイッチにより構成し、標準作業ラインAと倒伏作業ラインBの何れかを選択するように構成する。
したがって、走行速度を変更する主変速レバー13に刈取変速スイッチ62を設けているので、主変速レバー13による変速操作に応じて刈取変速スイッチ62により刈取部4の作業速度を選択すればよく、操作性および作業性を向上させる。
また、刈取変速スイッチ62はシーソー式のスイッチにより構成しているので、視覚あるいは触覚により標準作業ラインAと倒伏作業ラインBの何れかの選択状態を認識することができる。
そのため、操縦部6に設けた表示用モニタに刈取部4の作業速度の表示を省略することが可能となり、表示用モニタに他の情報を多く表示可能となって、操作性および作業性を向上させて、合理的な構成とすることができる。
【0022】
しかして、刈取部4を刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により駆動するに際して、刈取部4に穀稈が詰まったとき等の不具合発生時に、刈取部4を低速回転で間欠駆動する間欠駆動モードスイッチ(詰まり除去モードスイッチ)65を設ける(図14)。
刈取部4に穀稈が詰まったとき等の不具合の発生時には、間欠駆動モードスイッチ65により刈取部4を低速回転で間欠駆動できるので(図15)、単に連続駆動して余計に詰まりがひどくなるのを防止して、詰まり確認作業および除去作業を容易にする。
間欠駆動モードスイッチ65はコンバインの機体の左側となる脱穀装置2の上部カバー66あるいは刈取部4の左側部分の所定位置に設ける(図1)。したがって、刈取部4の穀稈の流れを確認しながら間欠駆動モードスイッチ65(刈取クラッチ)を入切して詰まり確認作業および除去作業を行え、一人作業も可能になる。
また、間欠駆動モードスイッチ65の近傍にはエンジン緊急停止スイッチ67を設ける。そのため、トラブル発生時エンジン緊急停止スイッチ67によりエンジンを直ぐに停止でき、トラブルの増大を避けることができる。なお、エンジン緊急停止スイッチ67の近傍に間欠駆動モードスイッチ65を設けてもよい。
【0023】
前記間欠駆動モードスイッチ65により刈取部4を駆動するときは、機体は走行停止状態で行う。
しかして、刈取部4の所定位置に穀稈の有無を感知する穀稈センサ69を設け、穀稈センサ69が刈取部4に穀稈の有ることを感知している状態で、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21からの回転による刈取部4が駆動されていないときには、刈取部4が駆動回転されるまで、機体の前進を停止または減速する自動車速制御を行うように構成する(図16)。
走行用静油圧式無段変速装置12と刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の作動タイミングのずれにより、刈取部4が駆動しないまま機体が走行するのを防止する。
また、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21あるいは制御部の不具合で、刈取部4が回転不能状態になったときも、刈取部4で刈り取らずに圃場の穀稈を踏み倒しながらの走行等のトラブルを防止する。
即ち、図2のように、走行用静油圧式無段変速装置12による車速が「0」のとき刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の出力は「0」であり、車速の上昇に同調して刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の出力回転も上昇させるように自動制御しているが、刈取クラッチ23が入りで穀稈センサ69が刈取部4に穀稈の有ることを感知している状態では、刈取作業を開始する状態であるから、刈取部4が駆動するまで、機体の前進を停止または減速する自動車速制御を行って、刈取部4が駆動しないまま機体が走行する不具合発生を防止する(図17)。
【0024】
そのため、前記穀稈センサ69は刈取部4の分草体8の後方の引起装置(図示省略)の直ぐ後方に設けると、穀稈の感知を迅速にできて、刈取部4が駆動しないまま機体が走行する不具合発生を有効に防止できて、好適である。
しかして、刈取部4の所定位置に搬送穀稈の詰まりを検出する詰まり検出手段70を設ける。検出手段70はポテンショメータ等により詰まり量を検出しうる構成とし、検出手段70により詰まりを検出し、詰まり量が少ないときは走行速度を減速させて対応し、詰まり量が所定以上に多くなったときは走行を停止し、詰まりの検出がなくなると(詰まり量が所定以下)、走行速度を元に戻すように自動制御するように構成する(図18)。
刈取部4の穀稈の搬送乱れが一時的に増えた場合、走行速度を減速させて穀稈搬送量を減らすこととで(図19)、詰まりまでの進展を回避し、詰まり発生を未然に防止する。
【0025】
また、詰まり量が所定以上に多くなったときは、エンジンが高負荷によって停止する前に、走行を停止させて対処できるので、エンジンへの高負荷を回避して、エンジンの耐久性を向上させられる。
しかして、正面から見て、脱穀装置2の前方左側付近に設けた前記ギヤケース50と、脱穀装置2に回転を伝達するベルト33Bとの間に前記刈取搬送用静油圧式無段変速装置21を設け(図4,図20)、前記刈取部4は刈取フレーム71の刈取下側フレーム72を前記機体フレーム1側に対して回動自在に構成し、刈取部4を回動中心S中心に外方回動させてオープンさせて、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の周辺を開放するように構成する(図21)。
したがって、刈取部4を外方オープンさせるので、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の周辺を開放でき、メンテナンス作業を容易にできる。
刈取部4をオープンさせる構成は任意であり、実施例では、刈取部4の刈取フレーム71の刈取下側フレーム72を支持する刈取支持フレーム73の上部伝動ケース74をリンク機構75により外方回動するようにしている。
【0026】
この場合、前記刈取中間入力プーリー46は入力軸76の左側部に取付け、入力軸76は前記刈取支持フレーム73の上部の上部伝動ケース74に軸装し、ベルト47はリンク機構75のサイドオープン支点側に設ける(図20)。
そのため、ベルト47は機体左側から外せるので、ベルト47の着脱が容易となる(図21では理解を容易にするため、ベルト47に斜線を付しているが、これによって構成は限定されない)。
また、ベルト47に当接させる刈取クラッチ23を省略し、ベルト47にはテンションローラ80を常時当接させて常時張りとし、テンションローラ80のテンションアーム81に一体に設けた解除レバーの操作でベルト47を外せるように構成する(図23)。
したがって、ベルト47は常時張りなので、テンション調節が容易であり、スリップ等のトラブル発生も抑制する。
なお、この実施例では、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の回転停止と回転増速とにより刈取部4への駆動の入切をするように構成しており、図示は省略するが、解除レバーの操作はテンションローラ80を弛めてベルト47の着脱作業のとき行う。
【0027】
前記リンク機構75のアーム85は、その端部の上下両端に突出部86を形成してシャフト部87を一体形成する(図24)。
そのため、アーム85を取付けるシャフトを廃止でき、コストダウン効果を向上させる。
前記上下の突出部86の間のシャフト部87は、中空部88に形成する。したがって、軽量化が図れる。
また、アーム85の支持ピッチを長くなるので、支持部荷重が減少し、アーム85の倒れを抑制する。
前記リンク機構75のアーム85の基部のシャフト部87を機体フレーム1側に設けたブラケット89に回転自在に取付け、アーム85の先端側を上部伝動ケース74側に取付ける。
【0028】
(実施例の作用)
機体を走行させると、刈取部4が圃場の穀稈を刈り取って搬送し、刈取部4により搬送された穀稈はシンクロ用前側供給搬送装置11に引き継がれ、シンクロ用前側供給搬送装置11は穀稈を穀稈供給搬送装置10に受け渡し、穀稈供給搬送装置10は穀稈を一定速度で搬送して脱穀装置2の脱穀室に供給して脱穀する。
主変速レバー13を傾倒させると、走行装置3は走行用静油圧式無段変速装置12によりエンジン22の一定回転を無段階に変速して伝達し、走行装置3の走行速度に同調して刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11へ伝達する回転も変速するようにしているので、刈取部4は走行速度に応じて最適な作業回転数が伝達される。
しかして、走行装置3の走行速度を変速する走行用静油圧式無段変速装置12は、主変速レバー13の傾倒操作量に応じて増減速するが、更に、走行用静油圧式無段変速装置12の油圧モータ16のモータ斜板17も傾斜角度を二段階に切替可能(切替操作手段の構成は任意)に構成し、通常走行と高速走行との切替え可能に構成しているから、通常走行速度(標準側)で刈取作業(標準作業および倒伏作業)を行い、高速走行速度(高速側)で走行して移動時間を短縮する。
【0029】
この場合、走行用静油圧式無段変速装置12の油圧モータ16を高速走行に切替えた状態で、主変速レバー13を最高速位置にまで操作したときでも、刈取部4が刈取作業可能な走行速度となるように、走行用静油圧式無段変速装置12の油圧ポンプ14から油圧モータ16への送油量を制限するように構成しているから、走行用静油圧式無段変速装置12の油圧モータ16を高速側に切替えた状態で、主変速レバー13を最速位置に操作しても、自動的に、刈取部4が刈取作業可能な走行速度に自動制御される。
そのため、主変速レバー13を最も高速に操作したときの、走行速度の上がりすぎによる刈刃9の刈跡の悪化、藁量の増加増加による刈取部4の詰まり・破損を防止する。負荷の軽い麦刈取作業で稲より車速アップした作業が可能となる。
【0030】
即ち、走行用静油圧式無段変速装置12の油圧モータ16を高速走行に切替えた状態で、主変速レバー13を最高速位置にまで操作したときに、仮に、刈取部4へ伝達させる回転を最高の走行速度に同調させたまま伝達して刈取作業を行っても、走行速度の上がりすぎによる刈刃9の刈跡の悪化、藁量の増加による刈取部4の詰まり・破損を招くこが、本願では自動的に、刈取部4が刈取作業可能な適正な走行速度に自動制御されて、刈跡の悪化や刈取部4の詰まり・破損を防止する。
しかして、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11は、通常、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21が刈取部4を走行速度に同調させて変速するが、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21単独で刈取部4および/またはシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動できるので、機体走行停止状態でシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動し、シンクロ用前側供給搬送装置11および穀稈供給搬送装置10へ手刈り穀稈を供給でき、刈取作業および脱穀作業の作業性および操作性を向上させられる。
【0031】
この場合、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21から刈取部4への回転伝達経路中に、刈取部4への回転伝達を入切させる刈取クラッチ23を設け、該刈取クラッチ23を「切り」にした状態でシンクロ用前側供給搬送装置11のみを駆動するモード設ける。
したがって、シンクロ用前側供給搬送装置11に手刈り穀稈を載置するだけで、シンクロ用前側供給搬送装置11から穀稈供給搬送装置10に引き継がれて、シンクロ用前側供給搬送装置11と穀稈供給搬送装置10の両方で穀稈が搬送されるので、搬送姿勢が安定し、脱穀作業における扱ぎ残し等を防止できる。
しかして、機体走行中の刈取部4は走行装置3の走行速度に同調して変速されて、走行速度に応じて最適な作業回転数が伝達されるため、機体の走行を停止させると、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21は走行装置3の走行停止に同調して刈取部4の駆動を停止させる。
【0032】
このとき、脱穀装置2および穀稈供給搬送装置10を駆動させた状態で、刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動させると、刈取部4が駆動して穀稈を刈取って脱穀装置2へ供給でき、例えば、畦際の刈取りが行える。
したがって、刈取駆動入切手段53の操作だけで、走行停止状態で刈取部4の駆動を入りにできる。
刈取駆動入切手段53により刈取部4を駆動している間は、主変速レバー13の操作を無効にするので、走行停止状態おいて刈取部4を駆動しているときは、機体の走行停止状態が保持される。
そのため、刈取駆動入切手段53による刈取部4の駆動状態のときに誤って主変速レバー13を操作しても、機体の突っ込み等のトラブルの発生を防止する。
主変速レバー13を中立位置に一旦戻してから、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行うと、刈取駆動入切手段53による主変速レバー13の操作無効状態が解除され、機体は走行可能となって、刈取部4は走行速度に同調して駆動回転する。
【0033】
前記刈取駆動入切手段53は、操縦部6のフロア54に設けたペダル(掻込ペダル)55により構成し、ペダル55を踏み込んでいる間刈取部4を駆動するので、操作が簡単で、操作性および作業性を向上させる。
ペダル55を踏み込むと、掻込スイッチ56がONになって、コントローラ57から刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の出力がされて、刈取部4を掻込作業に適した回転速度で駆動する。
ペダル55から足を外し、ペダル55がバネ等の復帰手段で戻ると、刈取部4の駆動は停止する。
また、ペダル55の踏み込むによる刈取部4の駆動状態では、誤って主変速レバー13を操作しても、機体の突っ込み等のトラブルの発生を防止する。
この場合のペダル55による走行停止状態(主変速レバー13操作規制状態)の解除は、主変速レバー13を中立位置に一旦戻して行うように構成しているから、単に、誤ってペダル55から足を離しても、機体の走行停止状態は保持され、機体の突っ込み等のトラブルの発生を防止する。
したがって、再び、ペダル55を踏み込むと、刈取作業を続行できる。
【0034】
また、一旦、ペダル55を踏み込んだ刈取部4の駆動状態のときに、誤って、主変速レバー13を前進または後進操作しても、機体の走行停止状態を保持するので、畦際刈りが終了したら、ペダル55から足を離し、次に、主変速レバー13を前進または後進操作した後に、一旦、主変速レバー13を中立位置に戻してから、再び、主変速レバー13を前進または後進操作を行うことで、ペダル55による走行停止状態の保持が解除されて、走行可能となる。
即ち、誤ってペダル55から足を離しても、機体の走行停止状態を保持するようにしているので、単に、ペダル55から足を離すだけでなく、主変速レバー13の中立復帰操作後の前進または後進の二重操作により、ペダル55による走行停止状態の保持を解除する。
したがって、刈取駆動入切のみならず、刈取駆動中の主変速レバー13の誤操作も防止すると共に、ペダル55による主変速レバー13の操作無効状態の解除も確実安全でしかも自然な操作手順で行うことができる。
【0035】
しかして、走行用静油圧式無段変速装置12と刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により、図10のような、走行速度に対して所定割合で刈取部4への伝動回転を増速する標準作業ラインAと、該標準作業ラインAよりも短時間で増速するようにした倒伏作業ラインBにより変速するように構成し、この標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとの間の回転数の上昇勾配の変更を操縦部6に設けた刈取変速レバー刈取変速レバー60により行うように構成しているので、刈取部4の作業回転数の変更操作の操作性を向上させる。
この場合、標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとの間の回転数の上昇勾配は、刈取変速レバー60により無段階に変更するように構成し、図10の標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとの間の斜線部分の範囲内の任意の刈取部4の作業回転数を選択するように操作できるので、刈取部4の回転数の上昇勾配を、刈取変速レバー60の操作位置により容易に判断できて、操作性を向上させるだけでなく、走行速度や穀稈の倒伏状況に応じて最適の刈取部4の作業回転数となるように走行速度に対して無段階に変更できるので、刈取作業の作業効率を向上させる。
【0036】
しかして、図12の実施例では、主変速レバー13の所定位置に、図2の標準作業ラインAと倒伏作業ラインBとに選択的に切り替える刈取変速スイッチ刈取変速スイッチ62を、シーソー式のスイッチにより構成しているので、刈取変速スイッチ62により標準作業ラインAと倒伏作業ラインBの何れかの選択を、走行速度を変更する主変速レバー13に刈取変速スイッチ62より行えるので、主変速レバー13による変速操作に応じて刈取変速スイッチ62により刈取部4の作業速度を選択すればよく、操作性および作業性を向上させる。
また、刈取変速スイッチ62はシーソー式のスイッチにより構成しているので、視覚あるいは触覚により標準作業ラインAと倒伏作業ラインBの何れかの選択状態を認識することができる。
そのため、操縦部6に設けた表示用モニタに刈取部4の作業速度の表示を省略することが可能となり、表示用モニタに他の情報を多く表示可能となって、操作性および作業性を向上させて、合理的な構成とすることができる。
【0037】
しかして、刈取部4を刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により駆動するに際して、刈取部4に穀稈が詰まったとき等の不具合発生時に、刈取部4を低速回転で間欠駆動する間欠駆動モードスイッチ65を設けているので、刈取部4に穀稈が詰まったとき等の不具合の発生時には、間欠駆動モードスイッチ65により刈取部4を低速回転で間欠駆動させることで、単に連続駆動して余計に詰まりがひどくなるのを防止して、詰まり確認作業および除去作業を容易にする。
間欠駆動モードスイッチ65はコンバインの機体の左側となる脱穀装置2の上部カバーエンジン緊急停止スイッチ67あるいは刈取部4の左側部分の所定位置に設けているので、刈取部4の穀稈の流れを確認しながら間欠駆動モードスイッチ65(刈取クラッチ)を入切して詰まり確認作業および除去作業を行え、一人作業も可能になる。
また、間欠駆動モードスイッチ65の近傍にはエンジン緊急停止スイッチエンジン緊急停止スイッチ67を設けているので、トラブル発生時エンジン緊急停止スイッチ67によりエンジンを直ぐに停止でき、トラブルの増大を避けることができる。
【0038】
しかして、刈取部4の所定位置に穀稈の有無を感知する穀稈センサ69を設け、穀稈センサ69が刈取部4に穀稈の有ることを感知している状態で、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21からの回転による刈取部4が駆動されていないときには、刈取部4が駆動回転されるまで、機体の前進を停止または減速する自動車速制御を行うように構成しているので、刈取部4が駆動しないまま機体を走行させて圃場の穀稈を踏み倒すのを防止する。
また、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21あるいは制御部の不具合で、刈取部4が回転不能状態になって、穀稈センサ69が刈取部4に穀稈の有ることを感知している状態で、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21からの回転による刈取部4が駆動されていないときは、機体の前進走行を停止させるので、刈取部4で刈り取らずに圃場の穀稈を踏み倒しながらの走行等のトラブルを防止する。
【0039】
しかして、刈取部4の所定位置に搬送穀稈の詰まりを検出する詰まり検出手段検出手段70を設け、検出手段70はポテンショメータ等により詰まり量を検出しうる構成とし、検出手段70により詰まりを検出し、詰まり量が少ないときは走行速度を減速させて対応し、詰まり量が所定以上に多くなったときは走行を停止し、詰まりの検出がなくなると(詰まり量が所定以下)、走行速度を元に戻すように自動制御するように構成しているので、刈取部4の穀稈の搬送乱れが一時的に増えた場合、走行速度を減速させて穀稈搬送量を減らすこととで、詰まりまでの進展を回避し、詰まり発生を未然に防止する。
また、詰まり量が所定以上に多くなったときは、エンジンが高負荷によって停止する前に、走行を停止させて対処できるので、エンジンへの高負荷を回避して、エンジンの耐久性を向上させられる。
【0040】
しかして、本願では、走行用静油圧式無段変速装置12とは別個に刈取部4の専用の刈取搬送用静油圧式無段変速装置21を設け、走行用静油圧式無段変速装置12と刈取搬送用静油圧式無段変速装置21とにより、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11へ伝達する回転を走行装置3の走行速度に同調して変速するように構成しているので、この刈取部4の専用の刈取搬送用静油圧式無段変速装置21による特有の作用について以下詳述する。
なお、前記した走行用静油圧式無段変速装置12の油圧ポンプ14の車速制限制御は、刈取部4の回転数を同調させる基準となる走行速度の制御であり、この制限された最高走行速度に同調するように刈取部4の回転を自動制御するので、刈取部4の回転を同調させるための構成は任意であり、走行装置3と刈取部4の同調制御は走行用静油圧式無段変速装置12単独でも行えるが本願では走行用静油圧式無段変速装置12とは別個の刈取部4の専用の刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により行っている。
【0041】
走行装置3の走行速度は主変速レバー13の操作により走行速度を変速し、この走行速度に対して、例えば、図2の走行速度に対して所定割合で伝動回転を増速する標準作業ラインAと、該標準作業ラインAより上昇率の高い加速をするようにした倒伏作業ラインBとを選択的に採用して、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動させる。
そして、シンクロ用前側供給搬送装置11は植立状態で刈取部4から搬送される穀稈の姿勢を横倒し状態に変えて引き継ぐので、シンクロ用前側供給搬送装置11と穀稈供給搬送装置10との間で搬送速度に若干の差があっても、搬送姿勢が横向きなので、円滑に引き継げる。
即ち、実施例の刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11は、刈取搬送専用の刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により走行速度に同調させて変速しているので、脱穀装置2と穀稈供給搬送装置10をエンジン22からの一定駆動回転で駆動して脱穀効率を向上させつつ、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11の回転を走行速度に同調させて刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により変速して、穀稈供給搬送装置10への引継を円滑・確実にする。
【0042】
また、刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11への伝動回転は、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により変速するので、通常は走行速度に同調させて変速するが、所定条件のときは、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21単独で刈取部4および/またはシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動させることができるので、作業態様を広げ、汎用性を向上させられる。
即ち、機体停止状態から所定走行速度の間でも、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11を十分な回転数で駆動させることができるので、機体走行開始直後から安定して刈取部4および脱穀装置2を駆動させられ、刈取作業および脱穀作業を安定・確実に行える。
また、走行用静油圧式無段変速装置12から走行装置3への回転を停止させたとき、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21単独でシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動すると、機体走行停止状態でシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動させることができるので、シンクロ用前側供給搬送装置11および穀稈供給搬送装置10へ手刈り穀稈を供給する供給作業を容易にでき、刈取作業および脱穀作業の作業性および操作性を向上させられる。
【0043】
しかして、エンジン22の回転が中間プーリー28に伝達され、中間プーリー28は中間軸29と中間歯車30を介してケースの中間伝動軸31に回転を伝達し、中間伝動軸31で扱胴34側と穀稈供給搬送中間出力軸41および刈取搬送用静油圧式無段変速装置21とに伝動を分岐する。
脱穀用傘歯車32に伝達された回転は扱胴34に伝達して駆動する。
中間伝動軸31の回転は穀稈供給搬送中間出力軸41に伝達されて、穀稈供給搬送中間出力軸41の回転は穀稈供給搬送装置10の終端側から入力させて、穀稈供給搬送装置10を駆動する。
したがって、穀稈供給搬送中間出力軸41は走行用静油圧式無段変速装置12および刈取搬送用静油圧式無段変速装置21とは無関係にエンジン22からの一定に設定された回転を、穀稈供給搬送装置10に伝達し、穀稈供給搬送装置10と扱胴34とは常時同じ関係で回転する。
穀稈供給搬送中間出力軸41の下手側には刈取用中間歯車36により回転が伝達される刈取搬送用静油圧式無段変速装置21の刈取HST入力軸37を設けているので、穀稈供給搬送中間出力軸41の回転が刈取搬送用静油圧式無段変速装置21のポンプに入力されて、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21のモータから変速された回転が刈取HST出力軸38により出力され、刈取HST出力軸38は刈取用中間出力軸39および搬送シンクロ用出力軸40により刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11を駆動回転させる。
【0044】
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しており、ブロック図等を含めたこれらの実施例は相互に夫々種々組合せ可能であり、特に、刈取搬送用静油圧式無段変速装置21により刈取部4およびシンクロ用前側供給搬送装置11を走行速度に同調させる構成であっても、走行用静油圧式無段変速装置12単独により走行速度に同調させる構成に組み合わせることや、各種スイッチ等の組み合わせも含めて、実施例の相互の組合せは可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】刈取部の回転数と車速との関係図。
【図3】無段変速装置の油圧回路図。
【図4】伝動機構の概略図。
【図5】伝動機構の他の実施例の概略図。
【図6】操縦部のペダル部分の側面図。
【図7】同平面図。
【図8】ブロック図。
【図9】刈取変速レバーを設けた実施例の側面図。
【図10】刈取部の回転数と車速との関係図。
【図11】刈取変速スイッチを設けた実施例の背面図。
【図12】同側面図。
【図13】同ブロック図。
【図14】間欠駆動モード(詰まり除去モード)スイッチを設けた実施例のブロック図。
【図15】刈取部の間欠駆動回転数と時間との関係図。
【図16】穀稈センサを設けた実施例のブロック図。
【図17】穀稈センサのフロー図。
【図18】穀稈詰まりの検出手段を設けた実施例のブロック図。
【図19】穀稈詰まりの検出値と車速との関係図。
【図20】刈取搬送用無段変速装置付近の一部展開状態正面図。
【図21】刈取搬送用無段変速装置付近の一部展開状態平面図。
【図22】刈取搬送用無段変速装置付近の側面図。
【図23】刈取クラッチの切り状態の側面図。
【図24】刈取オープン用リンク機構の正面図。
【符号の説明】
【0046】
1…機体フレ−ム、2…脱穀装置、3…走行装置、4…刈取部、5…グレンタンク、10…穀稈供給搬送装置、11…シンクロ用前側供給搬送装置、12…走行用静油圧式無段変速装置、13…主変速レバー、14…油圧ポンプ、15…ポンプ斜板、16…油圧モータ、17…モータ斜板、18…ミッションケース、21…刈取搬送用静油圧式無段変速装置、22…エンジン、23…刈取クラッチ、26…入力プーリー、27…ミッションケース、28…中間プーリー、29…中間軸、30…中間歯車、31…中間伝動軸、32…脱穀用傘歯車、33…脱穀伝動軸、34…扱胴、35…処理胴、36…刈取用中間歯車、37…刈取HST入力軸、38…刈取HST出力軸、39…刈取用中間出力軸、40…搬送シンクロ用出力軸、41…穀稈供給搬送中間出力軸、42…唐箕、43…駆動歯車、44…刈取脱穀クラッチ、45…刈取中間出力プーリー、46…刈取中間入力プーリー、47…ベルト、50…ギヤケース、53…刈取駆動入切手段、54…フロア、55…ペダル、60…刈取変速レバー、62…刈取変速スイッチ、65…間欠駆動モードスイッチ、67…エンジン緊急停止スイッチ、69…穀稈センサ、70…検出手段、71…刈取フレーム、72…刈取下側フレーム、73…刈取支持フレーム、75…リンク機構、76…入力軸、74…上部伝動ケース、80…テンションローラ、81…テンションアーム、85…アーム、86…突出部、87…シャフト部、88…中空部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用静油圧式無段変速装置(12)により走行速度を無段階に変速可能な走行装置(3)の前方に、刈取搬送用静油圧式無段変速装置(21)により作業回転数を無段階に変速可能な刈取部(4)を設け、走行装置(3)の上方には脱穀装置(2)を設け、前記刈取部(4)は、操縦部(6)に設けた前記走行用静油圧式無段変速装置(12)の主変速レバー(13)の傾倒操作により変速された走行速度に同調して刈取搬送用静油圧式無段変速装置(21)が変速駆動する構成とし、前記操縦部(6)には、走行用静油圧式無段変速装置(12)による走行装置(3)の走行を停止させた状態で、刈取部(4)を駆動させる刈取駆動入切手段(53)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
請求項1において、前記刈取駆動入切手段(53)は、刈取駆動入切手段(53)により刈取部(4)を駆動している間は前記主変速レバー(13)の操作を無効にして機体を走行停止状態に保持するように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
請求項2において、前記刈取駆動入切手段(53)による機体の走行停止状態の保持は、刈取駆動入切手段(53)が入り操作されている状態で主変速レバー(13)を前進または後進操作し、次に、一旦、主変速レバー(13)を中立位置に戻してから、再び、主変速レバー(13)を前進または後進操作を行うと、前記刈取駆動入切手段(53)による走行停止状態の保持を解除するように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項1】
走行用静油圧式無段変速装置(12)により走行速度を無段階に変速可能な走行装置(3)の前方に、刈取搬送用静油圧式無段変速装置(21)により作業回転数を無段階に変速可能な刈取部(4)を設け、走行装置(3)の上方には脱穀装置(2)を設け、前記刈取部(4)は、操縦部(6)に設けた前記走行用静油圧式無段変速装置(12)の主変速レバー(13)の傾倒操作により変速された走行速度に同調して刈取搬送用静油圧式無段変速装置(21)が変速駆動する構成とし、前記操縦部(6)には、走行用静油圧式無段変速装置(12)による走行装置(3)の走行を停止させた状態で、刈取部(4)を駆動させる刈取駆動入切手段(53)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
請求項1において、前記刈取駆動入切手段(53)は、刈取駆動入切手段(53)により刈取部(4)を駆動している間は前記主変速レバー(13)の操作を無効にして機体を走行停止状態に保持するように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
請求項2において、前記刈取駆動入切手段(53)による機体の走行停止状態の保持は、刈取駆動入切手段(53)が入り操作されている状態で主変速レバー(13)を前進または後進操作し、次に、一旦、主変速レバー(13)を中立位置に戻してから、再び、主変速レバー(13)を前進または後進操作を行うと、前記刈取駆動入切手段(53)による走行停止状態の保持を解除するように構成したことを特徴とするコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
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【図7】
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【図11】
【図12】
【図13】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2010−4808(P2010−4808A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168515(P2008−168515)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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