コンバイン
【課題】夜間運転におけるコンバインの作業性をさらに向上させること。
【解決手段】機体2の前部に刈取部7と運転部5とを備え、機体の後部に脱穀装置3とグレンタンク17とを左右方向に並べて配置し、旋回自在な穀粒排出装置18をグレンタンク17の後部に備え、グレンタンク17の後方と、脱穀装置3を配置する側とは反対側のグレンタンク17の横方とを照射する照明装置30を備える。
【解決手段】機体2の前部に刈取部7と運転部5とを備え、機体の後部に脱穀装置3とグレンタンク17とを左右方向に並べて配置し、旋回自在な穀粒排出装置18をグレンタンク17の後部に備え、グレンタンク17の後方と、脱穀装置3を配置する側とは反対側のグレンタンク17の横方とを照射する照明装置30を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置を備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
タイやインド等のアジアの熱帯地域では、稼働効率を高めるために昼間だけでなく夜間もコンバイン等の農業機械を運転することがある。
このような地域で使用されるコンバインには、運転部の前側を覆うパネルに照明装置が設けられており、涼しい薄暮や夜間において、機体前方の刈取部の作業域とその周辺を照明装置で照らしながら刈取作業を実施する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−74976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転部の前側を覆うパネルに設けられた照明装置から照射された光は、機体の後方及び横方までは届き難い。そのため、例えば、機体の横方に旋回させた穀粒排出装置(アンローダ)によってグレンタンク内の貯留穀粒を機体の横方に排出する作業や、あるいは脱穀装置により脱穀された穀粒を穀粒回収ホッパーによって袋詰めにして機体の後方又は横方の圃場に仮置きする作業、そして仮置きされた前記穀粒袋を回収する作業等を、夜間において実施し難いという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、夜間に機体の後方及び横方で行われる作業を実施し易くして、コンバインの夜間運転における作業効率をさらに向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
本発明に係る第1特徴構成は、
機体の前部に刈取部と運転部とを備え、
機体の後部に脱穀装置とグレンタンクとを左右方向に並べて配置し、
旋回自在な穀粒排出装置を前記グレンタンクの後部に備え、
前記グレンタンクの後方と、前記脱穀装置を配置する側とは反対側の前記グレンタンクの横方とを照射する照明装置を備える点にある。
【0007】
〔作用及び効果〕
通常、穀粒排出装置を備えるコンバインでは、穀物の刈取作業を終了した後、脱穀装置を配置する側とは反対側のグレンタンクの横方(機外)に、例えば穀粒を運搬するためのトラックを配置して、穀粒排出装置をトラックの荷台の位置まで旋回させてトラックの荷台又は荷台に置かれた袋にグレンタンク内の穀粒を排出する。
当該作業を夜間に実施する際、本構成のコンバインによれば、グレンタンクの後方と、脱穀装置を配置する側とは反対側のグレンタンクの横方とが照明装置によって照らされて明るくなるので、作業者は穀粒排出装置やトラックの荷台の位置を視認し易くなる。これにより作業者は夜間における穀粒の排出作業を実施し易くなり、コンバインの夜間運転における作業効率が向上する。
さらに本構成のコンバインによれば、グレンタンクの後方も照射されるので、機体の後進を実施し易い。
【0008】
〔構成〕
本発明に係る第2特徴構成は、
前記運転部が、前記グレンタンクの上面よりも上方に突出するキャビン又はキャノピーを備え、前記照明装置を、前記キャビンの天井部の後部又は前記キャノピーの後部に設ける点にある。
【0009】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、照明装置をグレンタンクよりも高い位置に設けることができて、グレンタンクにより光が遮られることが少ないので、光をより広範に照射することができる。
【0010】
〔構成〕
本発明に係る第3特徴構成は、
前記キャノピーを、その後方部分を左右方向の支点として上下方向に角度調整可能に支持する点にある。
【0011】
〔作用及び効果〕
運転部にキャノピーを備えた場合、運転者が起立姿勢や着座姿勢に姿勢変更する際、あるいはコンバインをトラックに載せて運搬する際等に対応できるように、キャノピーの後方部分を上下方向に角度調節可能に構成することがある。
本構成によれば、既存の構成であるキャノピーの角度調節構造を有効に利用することによって、キャノピーを上下方向に角度調整することにより、照明装置の照射範囲を上下方向に調整することができる。
【0012】
〔構成〕
本発明に係る第4特徴構成は、
前記照明装置が左右方向に並べて配置される2つの作業灯を備え、前記脱穀装置側に設けられる一方の作業灯が前記グレンタンクの後方を照射し、前記脱穀装置とは反対側に設けられる他方の作業灯が前記グレンタンクの横方を照射する点にある。
【0013】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、脱穀装置側に設けられる作業灯が、機体の左右中央に近い位置に設けられるため、機体の後方を左右均等に照射し易く、脱穀装置とは反対側に設けられる作業灯が、機体の横外側に近い位置に設けられるため、グレンタンクの横方を照射し易い。
【0014】
〔構成〕
本発明に係る第5特徴構成は、
機体の前部に刈取部と運転部とを備え、
機体の後部に、脱穀装置と袋詰め作業部とを左右方向に並べて配置し、
前記袋詰め作業部は、穀粒を貯留する穀粒回収ホッパーと作業者が穀粒の袋詰め作業を行うデッキとを備え、
前記袋詰め作業部の後方と、前記脱穀装置を配置する側とは反対側の前記袋詰め作業部の横方とを照射する照明装置を備える点にある。
【0015】
〔作用及び効果〕
通常、袋詰め作業部を備えるコンバインでは、運転部の作業者が穀物の刈取作業を実施しながら、デッキに搭乗した別の作業者(袋詰め作業者)が、脱穀装置により脱穀された穀粒を穀粒回収ホッパーから穀粒袋に袋詰めして機体の後方又は横方の圃場に仮置きし、さらに別の作業者(回収作業者)が仮置きされたこれらの穀粒袋を順次回収するという作業が行われる。
これらの作業を夜間に実施する際、本構成のコンバインによれば、袋詰め作業部の後方と、脱穀装置を配置する側とは反対側の前記袋詰め作業部の横方とが照明装置によって照らされて明るくなる。これにより、袋詰め作業者は穀粒袋を仮置きする圃場の状態を視認することができて穀粒を収容した穀粒袋を機体の後方又は横方の圃場に置き易くなると共に、回収作業者も、仮置きされた穀粒袋を視認できて穀粒袋を回収し易くなるので、コンバインの夜間運転における作業効率が向上する。
さらに本構成のコンバインによれば、袋詰め作業部の後方も照射されるので、機体の後進を実施し易い。
【0016】
〔構成〕
本発明に係る第6特徴構成は、
前記運転部が、前記袋詰め作業部の上面よりも上方に突出するキャビン又はキャノピーを備え、前記照明装置を、前記キャビンの天井部の後部又は前記キャノピーの後部に設ける点にある。
【0017】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、袋詰め作業部よりも高い位置に設けることができて、袋詰め作業部により光が遮られることが少ないので、光をより広範に照射することができる。
【0018】
〔構成〕
本発明に係る第7特徴構成は、
前記キャノピーを、その後方部分を左右方向の支点として上下方向に角度調整可能に支持する点にある。
【0019】
〔作用及び効果〕
運転部にキャノピーを備えた場合、運転者が起立姿勢や着座姿勢に姿勢変更する際、あるいはコンバインをトラックに載せて運搬する際等に対応できるように、キャノピーの後方部分を上下方向に角度調節可能に構成することがある。
本構成によれば、既存の構成であるキャノピーの角度調節構造を有効に利用することによって、キャノピーを上下方向に角度調整することにより、照明装置の照射範囲を上下方向に調整することができる。
【0020】
〔構成〕
本発明に係る第8特徴構成は、
前記照明装置が左右方向に並べて配置される2つの作業灯を備え、前記脱穀装置側に設けられる一方の作業灯が前記袋詰め作業部の後方を照射し、前記脱穀装置とは反対側に設けられる他方の作業灯が前記袋詰め作業部の横方を照射する点にある。
【0021】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、脱穀装置側に設けられる作業灯が、機体の左右中央に近い位置に設けられるため、機体の後方を左右均等に照射し易く、脱穀装置とは反対側に設けられる作業灯が、機体の横外側に近い位置に設けられるため、前記袋詰め作業部の横方を照射し易い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る普通型のコンバインの全体右側面図である。
【図2】第1実施形態に係るコンバインの全体平面と照明装置の照射範囲を示す平面図である。
【図3】第2実施形態に係るコンバインの全体右側面図である。
【図4】第2実施形態に係るコンバインの全体平面と照明装置の照射範囲を示す平面図である。
【図5】別実施形態に係るコンバインの右側面図である。
【図6】図5の別実施形態に係るコンバインの要部を拡大した縦断面図である。
【図7】図5の別実施形態に係るコンバインの要部を拡大した平面図である。
【図8】図5の別実施形態に係るコンバインの右側面図である。
【図9】図5の別実施形態に係るコンバインの背面図である。
【図10】別実施形態に係るコンバインの全体平面図である。
【図11】別実施形態に係るコンバインの全体平面図である。
【図12】別実施形態に係るコンバインの右側面図である。
【図13】別実施形態に係るコンバインの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の第1実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。
(コンバインの構成)
図1及び図2に基づいて、本発明に係る照明装置を備えた普通型コンバインの全体構成について説明する。
【0024】
図1及び図2に示すように、左右一対のクローラ走行装置1を備えた機体2の上部に、普通型(全稈投入型)の脱穀装置3、脱穀装置3から供給される穀粒を貯留するグレンタンク17、及び運転部5等が配備されている。機体2の前部の右横側に運転部5が配設されており、機体2の後部で運転部5の後側にグレンタンク17が配設されている。機体2の後部でグレンタンク17の左側に脱穀装置3がグレンタンク17と左右に並べて配備されている。
【0025】
グレンタンク17の後部には、このグレンタンク17から機外に穀粒を排出する穀粒排出装置としてのアンローダ18が装備されている。
【0026】
アンローダ18は、グレンタンク17の底に配設された底スクリュー31の後端に連通接続されスクリュー式の縦搬送機構18aと、この縦搬送機構18aの上端に連通接続されて昇降自在なスクリュー式の横搬送機構18bとから構成されている。このアンローダ18が全体的に、旋回モータ(図示せず)の作動によって縦搬送機構18aのスクリュー軸心である縦軸心Pを中心にして旋回可能となっており、縦搬送機構18aに対して横搬送機構18bが昇降可能に構成されている。
【0027】
図2の実線部分に示すように、不使用時におけるアンローダ18は、グレンタンク17の後部(機体2の後部右側部)から機体2の前部左側部に向かって、平面視で対角状に配設されるように受け台35に固定されている(格納位置B1)。図2の矢印に示すように、アンローダ18は、格納位置B1から機体2の後方を旋回して、グレンタンク17の略真横の方向である右限界位置B2まで旋回可能である。アンローダ18は格納位置B1から機体2の前方には旋回せず、また右限界位置B2から機体2の前方にも旋回しない(格納位置B1と右限界位置B2とに亘る旋回範囲B12においてのみ、アンローダ18は旋回可能となっている)。
【0028】
脱穀装置3の前部には、刈取り穀稈搬送用のフィーダ6が連結されており、このフィーダ6の前端に略機体横幅に相当する刈幅を有する刈取部7が連結されている。
【0029】
刈取部7は、右及び左のデバイダ33a,33bと、左右一対の分草フレーム11に亘って設けられたバリカン型の刈取装置12と、左右一対の分草フレーム11に亘って架設されたオーガ13と、植立した穀稈を後方に掻き込んで引き上げる掻き込みリール16とを備えて構成されており、刈取装置12によって刈り取った穀稈をオーガ13によって左右中央部に横送りしてフィーダ6に供給できるように構成されている。
【0030】
フィーダ6には、巻回張設された左右のチェーン14aに亘って搬送バー14bを横架連結した掻き揚げコンベア14が内装されており、フィーダ6から供給された穀稈をフィーダ6の底面に沿って搬送して、脱穀装置3に供給できるように構成されている。脱穀装置3により脱穀された穀粒は、脱穀装置3とグレンタンク17とに亘って設けられた穀粒搬送機構(図示せず)を介して、グレンタンク17に供給されるように構成されている。
【0031】
グレンタンク17の中に貯留された穀粒は、底スクリュー31によって縦搬送機構18aに搬出され、続いて縦搬送機構18aから横搬送機構18bに揚送された後、横搬送機構18bによって横搬送されて吐出口18cから排出される。
【0032】
運転部5は、グレンタンク17の上面よりも上方に突出するキャノピー28を備え、キャノピー28は運転席36の後部に立設する支柱29によって支持されている。キャノピー28の前部には、2つの前作業灯32a,32b(照明装置)が左右方向に並べて配置され、キャノピー28の後部には、後作業灯30(照明装置)が配置される。
【0033】
(照射装置の照射範囲)
次に、前作業灯32a,32b及び後作業灯30の照射範囲について説明する。
図1及び図2に示すように、左の前作業灯32aは照射範囲A1を照射するのであり、掻き込みリール16自身、掻き込みリール16の前方、右及び左のデバイダ33a,33b自身、右及び左のデバイダ33a,33bの前方を照射する。右の前作業灯32bは照射範囲A2を照射するのであり、掻き込みリール16の右側前方、右のデバイダ33b自身、右のデバイダ33bの前方及び横方を照射する。
後作業灯30は照明範囲A3を照射するのであり、グレンタンク17の後方と、脱穀装置3を配置する側とは反対側のグレンタンク17の横方(機体2の右後方側の右限界位置B2の付近)とを照射するように構成されている。本実施形態に係るコンバインは、静油圧式無段変速装置(HST)を利用して走行するものであり、変速レバーが中立位置(N)又は後進位置(R)に位置するときに、後作業灯30が照射するように構成される。
【0034】
尚、図1に示すように、キャノピー28は、グレンタンク17の上面よりも上方に位置する。本構成によれば、後作業灯30をグレンタンク17よりも高い位置に設けることができて、グレンタンク17により光が遮られることが少ないので、光をより広範に照射することができる。
【0035】
通常、アンローダ18を備えるコンバインでは、穀物の刈取作業を終了した後、脱穀装置3を配置する側とは反対側のグレンタンク17の横方(機体の右後方側)に、例えば穀粒を運搬するためのトラック(図示せず)を配置して、アンローダ18をトラックの荷台(図示せず)の位置まで旋回させてトラックの荷台又は荷台に置かれた袋にグレンタンク17内の穀粒を排出する。
【0036】
当該作業を夜間に実施する際、本構成のコンバインによれば、グレンタンク17の後方と、脱穀装置3を配置する側とは反対側のグレンタンク17の横方とが後作業灯30によって照らされて明るくなるので、作業者はアンローダ18やトラックの荷台の位置を視認し易くなる。これにより作業者は夜間における穀粒の排出作業を実施し易くなり、コンバインの夜間運転における作業効率が向上する。
さらに本構成のコンバインによれば、グレンタンク17の後方も照射されるので、機体の後進を実施し易い。
【0037】
〔第2実施形態〕
以下に、本発明の第2実施形態を図3及び図4に基づいて説明する。
(コンバインの構成)
図3及び図4に基づいて、本発明に係る照明装置を備えた普通型コンバインの全体構成について説明する。
【0038】
図3及び図4に示すように、左右一対のクローラ走行装置1を備えた機体2の上部に、普通型(全稈投入型)の脱穀装置3、袋詰め作業部19、及び運転部5等が配備されている。機体2の前部の右横側に運転部5が配設されており、機体2の後部で運転部5の後側に袋詰め作業部19が配設されている。機体2の後部で袋詰め作業部19の左側に脱穀装置3が袋詰め作業部19と左右に並べて配備されている。
【0039】
脱穀装置3の前部には、刈取り穀稈搬送用のフィーダ6が連結されており、このフィーダ6の前端に略機体横幅に相当する刈幅を有する刈取部7が連結されている。
【0040】
刈取部7は、右及び左のデバイダ33a,33bと、左右一対の分草フレーム11に亘って設けられたバリカン型の刈取装置12と、左右一対の分草フレーム11に亘って架設されたオーガ13と、植立した穀稈を後方に掻き込んで引き上げる掻き込みリール16とを備えて構成されており、刈取装置12により刈り取った穀稈をオーガ13によって左右中央部に横送りしてフィーダ6に供給できるように構成されている。
【0041】
フィーダ6には、巻回張設された左右のチェーン14aに亘って搬送バー14bを横架連結した掻き揚げコンベア14が内装されており、フィーダ6から供給された穀稈をフィーダ6の底面に沿って搬送して、脱穀装置3に供給できるように構成されている。脱穀装置3により脱穀された穀粒は、脱穀装置3と袋詰め作業部19とに亘って設けられた穀粒搬送機構(図示せず)を介して、袋詰め作業部19の穀粒回収ホッパー20に供給されるように構成されている。
【0042】
袋詰め作業部19は、穀粒を貯留する穀粒回収ホッパー20と作業者が穀粒の袋詰め作業を行うデッキ25とを備えて構成される。
図3に示すように、穀粒回収ホッパー20は、その上部が平面視で前後に長い長方形状の角筒状に形成され、その下部の前部及び後部が四角錐状で下すぼまり状に形成されており、この下すぼまり状に形成された部分の下部に前後の穀粒取出口21が形成されている。穀粒取出口21の下部には、スライド式のシャッター装置(図示せず)が装備されており、これにより、穀粒取出口21の下方に穀粒袋37を装着してシャッター装置を操作することで、穀粒回収ホッパー20からの穀粒を袋詰めすることができる。
【0043】
機体フレーム8のデッキ面の前部及び後部に、角パイプ状の前部及び後部支持フレーム22,23が締め付け固定されており、この前部及び後部支持フレーム22,23により穀粒回収ホッパー20の前部及び後部が支持されている。前部及び後部支持フレーム22,23に亘って丸パイプ状の手摺24が連結されており、この手摺24が補強フレームとして機能する。
【0044】
機体フレーム8の右側端部には、機体フレーム8から右外方側に張り出した作業姿勢と、上方に揺動し起立格納した非作業姿勢とに姿勢変更自在なデッキ25が揺動自在に支持されている。デッキ25は、作業姿勢でのその床面が機体フレーム8の床面と略平行で機体フレーム8の床面と略面一になるように構成されており、非作業姿勢での床面が機体フレーム8の床面と略直角になるように構成されている。
【0045】
前部及び後部支持フレーム22,23の機体横外側の端部上部には、前後の補助具26が装備されている。前後の補助具26は、それぞれ別々に前部及び後部支持フレーム22,23に揺動自在に支持されており、前後の補助具26のそれぞれが機体横外側に張り出した使用姿勢と、機体内側に起立格納した格納姿勢とに姿勢変更可能に構成されている。これにより、作業者がデッキ25の上で穀粒の袋詰め作業を行う場合には、補助具25を使用姿勢に姿勢変更し、この補助具25により体勢を安定させながら穀粒の袋詰め作業を行うことができる。
【0046】
運転部5は、袋詰め作業部19の上面よりも上方に突出するキャノピー28を備え、キャノピー28は運転席36の後部に立設する支柱29によって支持されている。キャノピー28の前部には、2つの前作業灯32a,32b(照明装置)が左右方向に並べて配置され、キャノピー28の後部には、後作業灯30(照明装置)が配置される。
【0047】
(照射装置の照射範囲)
次に、照明装置の照射範囲について説明する。
図3及び図4に示すように、左の前作業灯32aは照射範囲A1を照射するのであり、掻き込みリール16自身、掻き込みリール16の前方、右及び左のデバイダ33a,33b自身、右及び左のデバイダ33a,33bの前方を照射する。右の前作業灯32bは照射範囲A2を照射するのであり、掻き込みリール16の右側前方、右のデバイダ33b自身、右のデバイダ33bの前方及び横方を照射する。
後作業灯30は照射範囲A3を照射するのであり、袋詰め作業部19の後方と、脱穀装置3を配置する側とは反対側の袋詰め作業部19の横方(機体2の右後方側)とを照射するように構成されている。前作業灯32a,32b及び後作業灯30は、運転部5等に設けた図示しない操作スイッチをオンオフ操作することによって、照射状態又は非照射状態に自在に切換えることができるように構成されている。
【0048】
尚、図3に示すように、キャノピー28は、袋詰め作業部19の上面よりも上方に位置する。本構成によれば、後作業灯30を袋詰め作業部19よりも高い位置に設けることができて、袋詰め作業部19により光が遮られることが少ないので、光をより広範に照射することができる。
【0049】
通常、袋詰め作業部19を備えるコンバインでは、運転部5の作業者が穀物の刈取作業を実施しながら、デッキ25に搭乗した別の作業者(袋詰め作業者)が、脱穀装置3により脱穀された穀粒を穀粒回収ホッパー20から穀粒袋に袋詰めして機体の後方又は横方の圃場に仮置きし、さらに別の作業者(回収作業者)が仮置きされたこれらの穀粒袋を順次回収するという作業が行われる。
【0050】
これらの作業を夜間に実施する際、本構成のコンバインによれば、袋詰め作業部19の後方と、脱穀装置3を配置する側とは反対側の袋詰め作業部19の横方(機体の右後方側)とが後作業灯30によって照らされて明るくなる。これにより、袋詰め作業者は穀粒袋を仮置きする圃場の状態を視認することができて穀粒を収容した穀粒袋を機体の後方又は横方の圃場に置き易くなると共に、回収作業者も、仮置きされた穀粒袋を視認できて穀粒袋を回収し易くなるので、コンバインの夜間運転における作業効率が向上する。
さらに本構成のコンバインによれば、袋詰め作業部19の後方も照射されるので、機体2の後進を実施し易い。
【0051】
〔別実施形態〕
(1)図5〜図9に示すように、前述の第1又は第2実施形態におけるキャノピー28が、その後方部分の支軸P1を左右方向の支点として上下方向に角度調整可能に支持されるように構成しても良い。
【0052】
詳細には図6及び図7に示すように、本構成におけるキャノピー28は、ルーフ部材70と、ルーフフレーム71と、ルーフパネル72と、傾斜角度調節機構80とを備えて構成されている。
【0053】
ルーフフレーム71は、丸パイプ材により平面視で後向きに開口したコ字状に形成されており、その後部が丸パイプ製の支持フレーム71aにより連結されている。ルーフフレーム71には、複数の上下向きの貫通穴が形成されており、この複数の貫通穴に、後述するルーフパネル72が締め付け固定されている。
【0054】
ルーフフレーム71の左側前部には、前部ハンドル73が装備されており、ルーフフレーム71の右側後部における前部ハンドル73と平面視で対角の位置には、後部ハンドル74が装備されている。前部及び後部ハンドル73,74は、丸棒で構成されており、ルーフフレーム71に固着されている。これにより、傾斜角度調節機構80によりルーフ部材70の傾斜角度を変更する場合に、前部及び後部ハンドル73,74を介してルーフ部材70を操作することで、ルーフ部材70を安定して握って持つことができると共に、樹脂で成形されたルーフパネル72の破損を防止できる。
【0055】
支柱29に連結された連結フレーム41の左右の支持フレーム41aの先端部に、左右向きの貫通穴が形成されており、左右の支持フレーム41aの先端部における内面側には、後述する傾斜角度調節機構80を構成する縦平板状の左右の案内部材81が固着されている。
【0056】
ルーフフレーム71における支持フレーム71aには、支持フレーム71aから下方に延出された支持ブラケット75が固着されている。支持ブラケット75は、支持フレーム71aの左右両側部に固着された縦平板状の左右の板状部材76と、この左右の板状部材76の下部に形成された貫通穴に内嵌されて固着された左右に長い丸パイプ状の連結パイプ77とを備えて構成されている。
【0057】
支持ブラケット75の連結パイプ77は、左右の支持フレーム41aの内面側に固着された左右の案内部材81の間に挿入された状態で、丸パイプ製の支軸78により左右の支持フレーム41aに左右向きの軸心P1周りに回動自在に支持されている。これにより、ルーフ部材70が支柱29上部の左右向きの軸心P1周りに回動自在に支持されている。
【0058】
次に、支柱29の上部とルーフ部材70の後部とに亘って設けられている傾斜角度調節機構80について説明する。傾斜角度調節機構80は、左右の支持フレーム41aの先端部に固着された左右の案内部材81と、傾斜角度調節具83と、弾性バネ89とを備えて構成されている。
【0059】
左右の案内部材81には、複数の係合溝81aが左右向きの軸心P1周りの所定の角度毎に形成されており、これにより、ルーフ部材70の傾斜角度を所定の角度毎に変更調節できるように構成されている。また、左右の案内部材81には、左右向きの軸心P1を中心とした円周上に位置する案内溝81bが形成されている。
【0060】
支持ブラケット75における左右の板状部材76の前部上部には、支軸82が左右向きの軸心P2周りで回動自在に支持されており、この支軸82に、傾斜角度調節具83が回動自在に支持されている。これにより、傾斜角度調節具83が板状部材76に左右向きの軸心P2周りで前後揺動可能に支持されている。
【0061】
傾斜角度調節具83は、丸棒により構成されたロッド84と、ロッド84の左側端部に固着された左側アーム部材85と、ロッド84の右側端部に固着された右側アーム部材86とを備えて構成されている。右側アーム部材86は、左側アーム部材85より下方に長く延出されており、この右側アーム部材86の下端部に、樹脂製の握り部83aが外嵌装着されている。
【0062】
傾斜角度調節具83の右側アーム部材86の上下中央部の前側には、平板状の前部支持板87が固着され、支持ブラケット75における連結パイプ77の右側部には、前方に突出した平板状の後部支持板88が固着されており、前部支持板87と後部支持板88とに亘って弾性バネ89が装着されている。弾性バネ89は引っ張りバネで構成されており、この弾性バネ89により傾斜角度調節具83が後方に付勢されている。
【0063】
傾斜角度調節具83を弾性バネ89の付勢力に抗して左右向きの軸心P2周りで前方に揺動させて、ロッド84の係合溝81aへの係合を解除し、ルーフ部材70を左右向きの軸心P1周りで上下に揺動させることで、ルーフ部材70の傾斜角度を段階的に変更調節できる。この場合、ロッド84が係合溝81aに係合した状態では、ロッド84が係合溝81aの奥端(後端)にまで達しないで係合溝81aの前後中央部に隙間なく接当するように構成されている。
【0064】
従って、傾斜角度調節具83を前方に揺動操作しロッド84を左右の案内部材81に形成された案内溝81bに接当させながら、ルーフ部材70の傾斜角度を変更調節することで、左右向きの軸心P1周りで作用するルーフ部材70の重量を傾斜角度調節具83の前方への押し操作により容易に支持でき、ルーフ部材70の傾斜角度の変更が容易になる。
【0065】
また、ルーフ部材70の角度を調節した位置で、弾性バネ89の付勢力により補助されながら傾斜角度調節具83を後方に揺動操作して、ロッド84を係合溝81aに係合させることで、ルーフ部材70の傾斜角度が変更された位置を保持できる。この場合、弾性バネ89の付勢力は、ロッド84が係合溝81aに係合した状態でも作用するように設定されているので、ルーフ部材70の傾斜角度が変更された位置を確実に保持でき、例えば走行時の振動等によりロッド84の係合溝81aへの係合が解除されることを防止できる。
【0066】
上記構成によれば、運転部5にキャノピー28を備えた場合、運転者が起立姿勢や着座姿勢に姿勢変更する際、あるいはコンバインをトラックに載せて運搬する際等に対応できるように、キャノピー28の後方部分を上下方向に角度調節することができる。
従って本構成によれば、キャノピー28の角度調節構造を有効に利用することによって、キャノピー28を上下方向に角度調整することにより、前作業灯32a,32b、及び後作業灯30の照射範囲A3を上下方向に調整することができる。
【0067】
特に図8に示すように、キャノピー28を上下方向に角度調整することで、後作業灯30で機体の近くを照らしたり(照射範囲A3-1)、あるいはより後方を照らす(照射範囲A3-2)などして照射範囲を容易に調節することができるようになる。尚、図9に示すように、後作業灯30の照射範囲A3が左右一対のクローラ走行装置1の端部からほぼ同等のはみ出し幅Sを有するように構成しても良い。かかる構成によって、機体後方が見易くなりコンバインの後進動作等を実施し易くなる。
【0068】
(2)図10に示すように、前述の第2実施形態における照明装置が左右方向に並べて配置される2つの後作業灯30a,30bを備え、脱穀装置3側に設けられる後作業灯30aが袋詰め作業部19の後方を照射し(後作業灯30aの照射範囲A3aは、左右一対のクローラ走行装置1の端部からほぼ同等のはみ出し幅Sを有する)、脱穀装置3とは反対側に設けられる後作業灯30bが袋詰め作業部19の横方を照射するように構成しても良い(照射範囲A3b)。また図示しないが、前述の第1実施形態においても同様に、照明装置が左右方向に並べて配置される2つの後作業灯30a,30bを備え、脱穀装置3側に設けられる後作業灯30aがグレンタンク17の後方を照射し(後作業灯30aの照射範囲A3aは、左右一対のクローラ走行装置1の端部からほぼ同等のはみ出し幅Sを有する)、脱穀装置3とは反対側に設けられる後作業灯30bがグレンタンク17の横方を照射するように構成しても良い(照射範囲A3b)。
【0069】
この場合、図10に示す2つの後作業灯30a,30bのそれぞれの照射範囲A3a,A3bの一部が互いに重なる構成に限らず、図11に示すように、2つの後作業灯30a,30bのそれぞれの照射範囲A3a,A3bが互いに重ならないように照射する構成としても良い。
【0070】
本構成によれば、脱穀装置3側に設けられる後作業灯30aが、機体2の左右中央に近い位置に設けられるため、機体2の後方を左右均等に照射し易く、脱穀装置3とは反対側に設けられる後作業灯30bが、機体2の横外側に近い位置に設けられるため、グレンタンク17の横方又は袋詰め作業部19の横方を照射し易い。
【0071】
尚、本構成における後作業灯30の設置数、設置位置、照射範囲等については、上記の構成に限定されるものではなく、グレンタンク17の後方と横方、あるいは袋詰め作業部19の後方と横方を照らすことができる構成であれば、必要に応じて、さらにより多くの作業灯を設置したり、あるいはそれらの作業灯の設置位置や照射範囲を変更するなどして適宜調整することができる。
【0072】
(3)図12及び図13に示すように、前述の第1及び第2実施形態における運転部5が、グレンタンク17又は袋詰め作業部19の上面よりも上方に突出するキャビン34を備え、照明装置としての後作業灯30を、当該キャビン34の天井部の後部に設ける構成としても良い。
【0073】
(4)照明装置の設置位置については、キャノピー28やキャビンに限定されるものではなく、グレンタンク17の後方と横方、あるいは袋詰め作業部19の後方と横方を照らすことができる構成であれば、他にも例えば、脱穀装置3、グレンタンク17、アンローダ18又は袋詰め作業部19等の適切な位置に設ける構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明したように、本発明は、普通型コンバインだけでなく、自脱型コンバインにも適用できる。
【符号の説明】
【0075】
2 機体
3 脱穀装置
5 運転部
7 刈取部
17 グレンタンク
18 アンローダ
19 袋詰め作業部
20 穀粒回収ホッパー
25 デッキ
28 キャノピー
30 後作業灯(照明装置)
34 キャビン
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置を備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
タイやインド等のアジアの熱帯地域では、稼働効率を高めるために昼間だけでなく夜間もコンバイン等の農業機械を運転することがある。
このような地域で使用されるコンバインには、運転部の前側を覆うパネルに照明装置が設けられており、涼しい薄暮や夜間において、機体前方の刈取部の作業域とその周辺を照明装置で照らしながら刈取作業を実施する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−74976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転部の前側を覆うパネルに設けられた照明装置から照射された光は、機体の後方及び横方までは届き難い。そのため、例えば、機体の横方に旋回させた穀粒排出装置(アンローダ)によってグレンタンク内の貯留穀粒を機体の横方に排出する作業や、あるいは脱穀装置により脱穀された穀粒を穀粒回収ホッパーによって袋詰めにして機体の後方又は横方の圃場に仮置きする作業、そして仮置きされた前記穀粒袋を回収する作業等を、夜間において実施し難いという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、夜間に機体の後方及び横方で行われる作業を実施し易くして、コンバインの夜間運転における作業効率をさらに向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
本発明に係る第1特徴構成は、
機体の前部に刈取部と運転部とを備え、
機体の後部に脱穀装置とグレンタンクとを左右方向に並べて配置し、
旋回自在な穀粒排出装置を前記グレンタンクの後部に備え、
前記グレンタンクの後方と、前記脱穀装置を配置する側とは反対側の前記グレンタンクの横方とを照射する照明装置を備える点にある。
【0007】
〔作用及び効果〕
通常、穀粒排出装置を備えるコンバインでは、穀物の刈取作業を終了した後、脱穀装置を配置する側とは反対側のグレンタンクの横方(機外)に、例えば穀粒を運搬するためのトラックを配置して、穀粒排出装置をトラックの荷台の位置まで旋回させてトラックの荷台又は荷台に置かれた袋にグレンタンク内の穀粒を排出する。
当該作業を夜間に実施する際、本構成のコンバインによれば、グレンタンクの後方と、脱穀装置を配置する側とは反対側のグレンタンクの横方とが照明装置によって照らされて明るくなるので、作業者は穀粒排出装置やトラックの荷台の位置を視認し易くなる。これにより作業者は夜間における穀粒の排出作業を実施し易くなり、コンバインの夜間運転における作業効率が向上する。
さらに本構成のコンバインによれば、グレンタンクの後方も照射されるので、機体の後進を実施し易い。
【0008】
〔構成〕
本発明に係る第2特徴構成は、
前記運転部が、前記グレンタンクの上面よりも上方に突出するキャビン又はキャノピーを備え、前記照明装置を、前記キャビンの天井部の後部又は前記キャノピーの後部に設ける点にある。
【0009】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、照明装置をグレンタンクよりも高い位置に設けることができて、グレンタンクにより光が遮られることが少ないので、光をより広範に照射することができる。
【0010】
〔構成〕
本発明に係る第3特徴構成は、
前記キャノピーを、その後方部分を左右方向の支点として上下方向に角度調整可能に支持する点にある。
【0011】
〔作用及び効果〕
運転部にキャノピーを備えた場合、運転者が起立姿勢や着座姿勢に姿勢変更する際、あるいはコンバインをトラックに載せて運搬する際等に対応できるように、キャノピーの後方部分を上下方向に角度調節可能に構成することがある。
本構成によれば、既存の構成であるキャノピーの角度調節構造を有効に利用することによって、キャノピーを上下方向に角度調整することにより、照明装置の照射範囲を上下方向に調整することができる。
【0012】
〔構成〕
本発明に係る第4特徴構成は、
前記照明装置が左右方向に並べて配置される2つの作業灯を備え、前記脱穀装置側に設けられる一方の作業灯が前記グレンタンクの後方を照射し、前記脱穀装置とは反対側に設けられる他方の作業灯が前記グレンタンクの横方を照射する点にある。
【0013】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、脱穀装置側に設けられる作業灯が、機体の左右中央に近い位置に設けられるため、機体の後方を左右均等に照射し易く、脱穀装置とは反対側に設けられる作業灯が、機体の横外側に近い位置に設けられるため、グレンタンクの横方を照射し易い。
【0014】
〔構成〕
本発明に係る第5特徴構成は、
機体の前部に刈取部と運転部とを備え、
機体の後部に、脱穀装置と袋詰め作業部とを左右方向に並べて配置し、
前記袋詰め作業部は、穀粒を貯留する穀粒回収ホッパーと作業者が穀粒の袋詰め作業を行うデッキとを備え、
前記袋詰め作業部の後方と、前記脱穀装置を配置する側とは反対側の前記袋詰め作業部の横方とを照射する照明装置を備える点にある。
【0015】
〔作用及び効果〕
通常、袋詰め作業部を備えるコンバインでは、運転部の作業者が穀物の刈取作業を実施しながら、デッキに搭乗した別の作業者(袋詰め作業者)が、脱穀装置により脱穀された穀粒を穀粒回収ホッパーから穀粒袋に袋詰めして機体の後方又は横方の圃場に仮置きし、さらに別の作業者(回収作業者)が仮置きされたこれらの穀粒袋を順次回収するという作業が行われる。
これらの作業を夜間に実施する際、本構成のコンバインによれば、袋詰め作業部の後方と、脱穀装置を配置する側とは反対側の前記袋詰め作業部の横方とが照明装置によって照らされて明るくなる。これにより、袋詰め作業者は穀粒袋を仮置きする圃場の状態を視認することができて穀粒を収容した穀粒袋を機体の後方又は横方の圃場に置き易くなると共に、回収作業者も、仮置きされた穀粒袋を視認できて穀粒袋を回収し易くなるので、コンバインの夜間運転における作業効率が向上する。
さらに本構成のコンバインによれば、袋詰め作業部の後方も照射されるので、機体の後進を実施し易い。
【0016】
〔構成〕
本発明に係る第6特徴構成は、
前記運転部が、前記袋詰め作業部の上面よりも上方に突出するキャビン又はキャノピーを備え、前記照明装置を、前記キャビンの天井部の後部又は前記キャノピーの後部に設ける点にある。
【0017】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、袋詰め作業部よりも高い位置に設けることができて、袋詰め作業部により光が遮られることが少ないので、光をより広範に照射することができる。
【0018】
〔構成〕
本発明に係る第7特徴構成は、
前記キャノピーを、その後方部分を左右方向の支点として上下方向に角度調整可能に支持する点にある。
【0019】
〔作用及び効果〕
運転部にキャノピーを備えた場合、運転者が起立姿勢や着座姿勢に姿勢変更する際、あるいはコンバインをトラックに載せて運搬する際等に対応できるように、キャノピーの後方部分を上下方向に角度調節可能に構成することがある。
本構成によれば、既存の構成であるキャノピーの角度調節構造を有効に利用することによって、キャノピーを上下方向に角度調整することにより、照明装置の照射範囲を上下方向に調整することができる。
【0020】
〔構成〕
本発明に係る第8特徴構成は、
前記照明装置が左右方向に並べて配置される2つの作業灯を備え、前記脱穀装置側に設けられる一方の作業灯が前記袋詰め作業部の後方を照射し、前記脱穀装置とは反対側に設けられる他方の作業灯が前記袋詰め作業部の横方を照射する点にある。
【0021】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、脱穀装置側に設けられる作業灯が、機体の左右中央に近い位置に設けられるため、機体の後方を左右均等に照射し易く、脱穀装置とは反対側に設けられる作業灯が、機体の横外側に近い位置に設けられるため、前記袋詰め作業部の横方を照射し易い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る普通型のコンバインの全体右側面図である。
【図2】第1実施形態に係るコンバインの全体平面と照明装置の照射範囲を示す平面図である。
【図3】第2実施形態に係るコンバインの全体右側面図である。
【図4】第2実施形態に係るコンバインの全体平面と照明装置の照射範囲を示す平面図である。
【図5】別実施形態に係るコンバインの右側面図である。
【図6】図5の別実施形態に係るコンバインの要部を拡大した縦断面図である。
【図7】図5の別実施形態に係るコンバインの要部を拡大した平面図である。
【図8】図5の別実施形態に係るコンバインの右側面図である。
【図9】図5の別実施形態に係るコンバインの背面図である。
【図10】別実施形態に係るコンバインの全体平面図である。
【図11】別実施形態に係るコンバインの全体平面図である。
【図12】別実施形態に係るコンバインの右側面図である。
【図13】別実施形態に係るコンバインの右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の第1実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。
(コンバインの構成)
図1及び図2に基づいて、本発明に係る照明装置を備えた普通型コンバインの全体構成について説明する。
【0024】
図1及び図2に示すように、左右一対のクローラ走行装置1を備えた機体2の上部に、普通型(全稈投入型)の脱穀装置3、脱穀装置3から供給される穀粒を貯留するグレンタンク17、及び運転部5等が配備されている。機体2の前部の右横側に運転部5が配設されており、機体2の後部で運転部5の後側にグレンタンク17が配設されている。機体2の後部でグレンタンク17の左側に脱穀装置3がグレンタンク17と左右に並べて配備されている。
【0025】
グレンタンク17の後部には、このグレンタンク17から機外に穀粒を排出する穀粒排出装置としてのアンローダ18が装備されている。
【0026】
アンローダ18は、グレンタンク17の底に配設された底スクリュー31の後端に連通接続されスクリュー式の縦搬送機構18aと、この縦搬送機構18aの上端に連通接続されて昇降自在なスクリュー式の横搬送機構18bとから構成されている。このアンローダ18が全体的に、旋回モータ(図示せず)の作動によって縦搬送機構18aのスクリュー軸心である縦軸心Pを中心にして旋回可能となっており、縦搬送機構18aに対して横搬送機構18bが昇降可能に構成されている。
【0027】
図2の実線部分に示すように、不使用時におけるアンローダ18は、グレンタンク17の後部(機体2の後部右側部)から機体2の前部左側部に向かって、平面視で対角状に配設されるように受け台35に固定されている(格納位置B1)。図2の矢印に示すように、アンローダ18は、格納位置B1から機体2の後方を旋回して、グレンタンク17の略真横の方向である右限界位置B2まで旋回可能である。アンローダ18は格納位置B1から機体2の前方には旋回せず、また右限界位置B2から機体2の前方にも旋回しない(格納位置B1と右限界位置B2とに亘る旋回範囲B12においてのみ、アンローダ18は旋回可能となっている)。
【0028】
脱穀装置3の前部には、刈取り穀稈搬送用のフィーダ6が連結されており、このフィーダ6の前端に略機体横幅に相当する刈幅を有する刈取部7が連結されている。
【0029】
刈取部7は、右及び左のデバイダ33a,33bと、左右一対の分草フレーム11に亘って設けられたバリカン型の刈取装置12と、左右一対の分草フレーム11に亘って架設されたオーガ13と、植立した穀稈を後方に掻き込んで引き上げる掻き込みリール16とを備えて構成されており、刈取装置12によって刈り取った穀稈をオーガ13によって左右中央部に横送りしてフィーダ6に供給できるように構成されている。
【0030】
フィーダ6には、巻回張設された左右のチェーン14aに亘って搬送バー14bを横架連結した掻き揚げコンベア14が内装されており、フィーダ6から供給された穀稈をフィーダ6の底面に沿って搬送して、脱穀装置3に供給できるように構成されている。脱穀装置3により脱穀された穀粒は、脱穀装置3とグレンタンク17とに亘って設けられた穀粒搬送機構(図示せず)を介して、グレンタンク17に供給されるように構成されている。
【0031】
グレンタンク17の中に貯留された穀粒は、底スクリュー31によって縦搬送機構18aに搬出され、続いて縦搬送機構18aから横搬送機構18bに揚送された後、横搬送機構18bによって横搬送されて吐出口18cから排出される。
【0032】
運転部5は、グレンタンク17の上面よりも上方に突出するキャノピー28を備え、キャノピー28は運転席36の後部に立設する支柱29によって支持されている。キャノピー28の前部には、2つの前作業灯32a,32b(照明装置)が左右方向に並べて配置され、キャノピー28の後部には、後作業灯30(照明装置)が配置される。
【0033】
(照射装置の照射範囲)
次に、前作業灯32a,32b及び後作業灯30の照射範囲について説明する。
図1及び図2に示すように、左の前作業灯32aは照射範囲A1を照射するのであり、掻き込みリール16自身、掻き込みリール16の前方、右及び左のデバイダ33a,33b自身、右及び左のデバイダ33a,33bの前方を照射する。右の前作業灯32bは照射範囲A2を照射するのであり、掻き込みリール16の右側前方、右のデバイダ33b自身、右のデバイダ33bの前方及び横方を照射する。
後作業灯30は照明範囲A3を照射するのであり、グレンタンク17の後方と、脱穀装置3を配置する側とは反対側のグレンタンク17の横方(機体2の右後方側の右限界位置B2の付近)とを照射するように構成されている。本実施形態に係るコンバインは、静油圧式無段変速装置(HST)を利用して走行するものであり、変速レバーが中立位置(N)又は後進位置(R)に位置するときに、後作業灯30が照射するように構成される。
【0034】
尚、図1に示すように、キャノピー28は、グレンタンク17の上面よりも上方に位置する。本構成によれば、後作業灯30をグレンタンク17よりも高い位置に設けることができて、グレンタンク17により光が遮られることが少ないので、光をより広範に照射することができる。
【0035】
通常、アンローダ18を備えるコンバインでは、穀物の刈取作業を終了した後、脱穀装置3を配置する側とは反対側のグレンタンク17の横方(機体の右後方側)に、例えば穀粒を運搬するためのトラック(図示せず)を配置して、アンローダ18をトラックの荷台(図示せず)の位置まで旋回させてトラックの荷台又は荷台に置かれた袋にグレンタンク17内の穀粒を排出する。
【0036】
当該作業を夜間に実施する際、本構成のコンバインによれば、グレンタンク17の後方と、脱穀装置3を配置する側とは反対側のグレンタンク17の横方とが後作業灯30によって照らされて明るくなるので、作業者はアンローダ18やトラックの荷台の位置を視認し易くなる。これにより作業者は夜間における穀粒の排出作業を実施し易くなり、コンバインの夜間運転における作業効率が向上する。
さらに本構成のコンバインによれば、グレンタンク17の後方も照射されるので、機体の後進を実施し易い。
【0037】
〔第2実施形態〕
以下に、本発明の第2実施形態を図3及び図4に基づいて説明する。
(コンバインの構成)
図3及び図4に基づいて、本発明に係る照明装置を備えた普通型コンバインの全体構成について説明する。
【0038】
図3及び図4に示すように、左右一対のクローラ走行装置1を備えた機体2の上部に、普通型(全稈投入型)の脱穀装置3、袋詰め作業部19、及び運転部5等が配備されている。機体2の前部の右横側に運転部5が配設されており、機体2の後部で運転部5の後側に袋詰め作業部19が配設されている。機体2の後部で袋詰め作業部19の左側に脱穀装置3が袋詰め作業部19と左右に並べて配備されている。
【0039】
脱穀装置3の前部には、刈取り穀稈搬送用のフィーダ6が連結されており、このフィーダ6の前端に略機体横幅に相当する刈幅を有する刈取部7が連結されている。
【0040】
刈取部7は、右及び左のデバイダ33a,33bと、左右一対の分草フレーム11に亘って設けられたバリカン型の刈取装置12と、左右一対の分草フレーム11に亘って架設されたオーガ13と、植立した穀稈を後方に掻き込んで引き上げる掻き込みリール16とを備えて構成されており、刈取装置12により刈り取った穀稈をオーガ13によって左右中央部に横送りしてフィーダ6に供給できるように構成されている。
【0041】
フィーダ6には、巻回張設された左右のチェーン14aに亘って搬送バー14bを横架連結した掻き揚げコンベア14が内装されており、フィーダ6から供給された穀稈をフィーダ6の底面に沿って搬送して、脱穀装置3に供給できるように構成されている。脱穀装置3により脱穀された穀粒は、脱穀装置3と袋詰め作業部19とに亘って設けられた穀粒搬送機構(図示せず)を介して、袋詰め作業部19の穀粒回収ホッパー20に供給されるように構成されている。
【0042】
袋詰め作業部19は、穀粒を貯留する穀粒回収ホッパー20と作業者が穀粒の袋詰め作業を行うデッキ25とを備えて構成される。
図3に示すように、穀粒回収ホッパー20は、その上部が平面視で前後に長い長方形状の角筒状に形成され、その下部の前部及び後部が四角錐状で下すぼまり状に形成されており、この下すぼまり状に形成された部分の下部に前後の穀粒取出口21が形成されている。穀粒取出口21の下部には、スライド式のシャッター装置(図示せず)が装備されており、これにより、穀粒取出口21の下方に穀粒袋37を装着してシャッター装置を操作することで、穀粒回収ホッパー20からの穀粒を袋詰めすることができる。
【0043】
機体フレーム8のデッキ面の前部及び後部に、角パイプ状の前部及び後部支持フレーム22,23が締め付け固定されており、この前部及び後部支持フレーム22,23により穀粒回収ホッパー20の前部及び後部が支持されている。前部及び後部支持フレーム22,23に亘って丸パイプ状の手摺24が連結されており、この手摺24が補強フレームとして機能する。
【0044】
機体フレーム8の右側端部には、機体フレーム8から右外方側に張り出した作業姿勢と、上方に揺動し起立格納した非作業姿勢とに姿勢変更自在なデッキ25が揺動自在に支持されている。デッキ25は、作業姿勢でのその床面が機体フレーム8の床面と略平行で機体フレーム8の床面と略面一になるように構成されており、非作業姿勢での床面が機体フレーム8の床面と略直角になるように構成されている。
【0045】
前部及び後部支持フレーム22,23の機体横外側の端部上部には、前後の補助具26が装備されている。前後の補助具26は、それぞれ別々に前部及び後部支持フレーム22,23に揺動自在に支持されており、前後の補助具26のそれぞれが機体横外側に張り出した使用姿勢と、機体内側に起立格納した格納姿勢とに姿勢変更可能に構成されている。これにより、作業者がデッキ25の上で穀粒の袋詰め作業を行う場合には、補助具25を使用姿勢に姿勢変更し、この補助具25により体勢を安定させながら穀粒の袋詰め作業を行うことができる。
【0046】
運転部5は、袋詰め作業部19の上面よりも上方に突出するキャノピー28を備え、キャノピー28は運転席36の後部に立設する支柱29によって支持されている。キャノピー28の前部には、2つの前作業灯32a,32b(照明装置)が左右方向に並べて配置され、キャノピー28の後部には、後作業灯30(照明装置)が配置される。
【0047】
(照射装置の照射範囲)
次に、照明装置の照射範囲について説明する。
図3及び図4に示すように、左の前作業灯32aは照射範囲A1を照射するのであり、掻き込みリール16自身、掻き込みリール16の前方、右及び左のデバイダ33a,33b自身、右及び左のデバイダ33a,33bの前方を照射する。右の前作業灯32bは照射範囲A2を照射するのであり、掻き込みリール16の右側前方、右のデバイダ33b自身、右のデバイダ33bの前方及び横方を照射する。
後作業灯30は照射範囲A3を照射するのであり、袋詰め作業部19の後方と、脱穀装置3を配置する側とは反対側の袋詰め作業部19の横方(機体2の右後方側)とを照射するように構成されている。前作業灯32a,32b及び後作業灯30は、運転部5等に設けた図示しない操作スイッチをオンオフ操作することによって、照射状態又は非照射状態に自在に切換えることができるように構成されている。
【0048】
尚、図3に示すように、キャノピー28は、袋詰め作業部19の上面よりも上方に位置する。本構成によれば、後作業灯30を袋詰め作業部19よりも高い位置に設けることができて、袋詰め作業部19により光が遮られることが少ないので、光をより広範に照射することができる。
【0049】
通常、袋詰め作業部19を備えるコンバインでは、運転部5の作業者が穀物の刈取作業を実施しながら、デッキ25に搭乗した別の作業者(袋詰め作業者)が、脱穀装置3により脱穀された穀粒を穀粒回収ホッパー20から穀粒袋に袋詰めして機体の後方又は横方の圃場に仮置きし、さらに別の作業者(回収作業者)が仮置きされたこれらの穀粒袋を順次回収するという作業が行われる。
【0050】
これらの作業を夜間に実施する際、本構成のコンバインによれば、袋詰め作業部19の後方と、脱穀装置3を配置する側とは反対側の袋詰め作業部19の横方(機体の右後方側)とが後作業灯30によって照らされて明るくなる。これにより、袋詰め作業者は穀粒袋を仮置きする圃場の状態を視認することができて穀粒を収容した穀粒袋を機体の後方又は横方の圃場に置き易くなると共に、回収作業者も、仮置きされた穀粒袋を視認できて穀粒袋を回収し易くなるので、コンバインの夜間運転における作業効率が向上する。
さらに本構成のコンバインによれば、袋詰め作業部19の後方も照射されるので、機体2の後進を実施し易い。
【0051】
〔別実施形態〕
(1)図5〜図9に示すように、前述の第1又は第2実施形態におけるキャノピー28が、その後方部分の支軸P1を左右方向の支点として上下方向に角度調整可能に支持されるように構成しても良い。
【0052】
詳細には図6及び図7に示すように、本構成におけるキャノピー28は、ルーフ部材70と、ルーフフレーム71と、ルーフパネル72と、傾斜角度調節機構80とを備えて構成されている。
【0053】
ルーフフレーム71は、丸パイプ材により平面視で後向きに開口したコ字状に形成されており、その後部が丸パイプ製の支持フレーム71aにより連結されている。ルーフフレーム71には、複数の上下向きの貫通穴が形成されており、この複数の貫通穴に、後述するルーフパネル72が締め付け固定されている。
【0054】
ルーフフレーム71の左側前部には、前部ハンドル73が装備されており、ルーフフレーム71の右側後部における前部ハンドル73と平面視で対角の位置には、後部ハンドル74が装備されている。前部及び後部ハンドル73,74は、丸棒で構成されており、ルーフフレーム71に固着されている。これにより、傾斜角度調節機構80によりルーフ部材70の傾斜角度を変更する場合に、前部及び後部ハンドル73,74を介してルーフ部材70を操作することで、ルーフ部材70を安定して握って持つことができると共に、樹脂で成形されたルーフパネル72の破損を防止できる。
【0055】
支柱29に連結された連結フレーム41の左右の支持フレーム41aの先端部に、左右向きの貫通穴が形成されており、左右の支持フレーム41aの先端部における内面側には、後述する傾斜角度調節機構80を構成する縦平板状の左右の案内部材81が固着されている。
【0056】
ルーフフレーム71における支持フレーム71aには、支持フレーム71aから下方に延出された支持ブラケット75が固着されている。支持ブラケット75は、支持フレーム71aの左右両側部に固着された縦平板状の左右の板状部材76と、この左右の板状部材76の下部に形成された貫通穴に内嵌されて固着された左右に長い丸パイプ状の連結パイプ77とを備えて構成されている。
【0057】
支持ブラケット75の連結パイプ77は、左右の支持フレーム41aの内面側に固着された左右の案内部材81の間に挿入された状態で、丸パイプ製の支軸78により左右の支持フレーム41aに左右向きの軸心P1周りに回動自在に支持されている。これにより、ルーフ部材70が支柱29上部の左右向きの軸心P1周りに回動自在に支持されている。
【0058】
次に、支柱29の上部とルーフ部材70の後部とに亘って設けられている傾斜角度調節機構80について説明する。傾斜角度調節機構80は、左右の支持フレーム41aの先端部に固着された左右の案内部材81と、傾斜角度調節具83と、弾性バネ89とを備えて構成されている。
【0059】
左右の案内部材81には、複数の係合溝81aが左右向きの軸心P1周りの所定の角度毎に形成されており、これにより、ルーフ部材70の傾斜角度を所定の角度毎に変更調節できるように構成されている。また、左右の案内部材81には、左右向きの軸心P1を中心とした円周上に位置する案内溝81bが形成されている。
【0060】
支持ブラケット75における左右の板状部材76の前部上部には、支軸82が左右向きの軸心P2周りで回動自在に支持されており、この支軸82に、傾斜角度調節具83が回動自在に支持されている。これにより、傾斜角度調節具83が板状部材76に左右向きの軸心P2周りで前後揺動可能に支持されている。
【0061】
傾斜角度調節具83は、丸棒により構成されたロッド84と、ロッド84の左側端部に固着された左側アーム部材85と、ロッド84の右側端部に固着された右側アーム部材86とを備えて構成されている。右側アーム部材86は、左側アーム部材85より下方に長く延出されており、この右側アーム部材86の下端部に、樹脂製の握り部83aが外嵌装着されている。
【0062】
傾斜角度調節具83の右側アーム部材86の上下中央部の前側には、平板状の前部支持板87が固着され、支持ブラケット75における連結パイプ77の右側部には、前方に突出した平板状の後部支持板88が固着されており、前部支持板87と後部支持板88とに亘って弾性バネ89が装着されている。弾性バネ89は引っ張りバネで構成されており、この弾性バネ89により傾斜角度調節具83が後方に付勢されている。
【0063】
傾斜角度調節具83を弾性バネ89の付勢力に抗して左右向きの軸心P2周りで前方に揺動させて、ロッド84の係合溝81aへの係合を解除し、ルーフ部材70を左右向きの軸心P1周りで上下に揺動させることで、ルーフ部材70の傾斜角度を段階的に変更調節できる。この場合、ロッド84が係合溝81aに係合した状態では、ロッド84が係合溝81aの奥端(後端)にまで達しないで係合溝81aの前後中央部に隙間なく接当するように構成されている。
【0064】
従って、傾斜角度調節具83を前方に揺動操作しロッド84を左右の案内部材81に形成された案内溝81bに接当させながら、ルーフ部材70の傾斜角度を変更調節することで、左右向きの軸心P1周りで作用するルーフ部材70の重量を傾斜角度調節具83の前方への押し操作により容易に支持でき、ルーフ部材70の傾斜角度の変更が容易になる。
【0065】
また、ルーフ部材70の角度を調節した位置で、弾性バネ89の付勢力により補助されながら傾斜角度調節具83を後方に揺動操作して、ロッド84を係合溝81aに係合させることで、ルーフ部材70の傾斜角度が変更された位置を保持できる。この場合、弾性バネ89の付勢力は、ロッド84が係合溝81aに係合した状態でも作用するように設定されているので、ルーフ部材70の傾斜角度が変更された位置を確実に保持でき、例えば走行時の振動等によりロッド84の係合溝81aへの係合が解除されることを防止できる。
【0066】
上記構成によれば、運転部5にキャノピー28を備えた場合、運転者が起立姿勢や着座姿勢に姿勢変更する際、あるいはコンバインをトラックに載せて運搬する際等に対応できるように、キャノピー28の後方部分を上下方向に角度調節することができる。
従って本構成によれば、キャノピー28の角度調節構造を有効に利用することによって、キャノピー28を上下方向に角度調整することにより、前作業灯32a,32b、及び後作業灯30の照射範囲A3を上下方向に調整することができる。
【0067】
特に図8に示すように、キャノピー28を上下方向に角度調整することで、後作業灯30で機体の近くを照らしたり(照射範囲A3-1)、あるいはより後方を照らす(照射範囲A3-2)などして照射範囲を容易に調節することができるようになる。尚、図9に示すように、後作業灯30の照射範囲A3が左右一対のクローラ走行装置1の端部からほぼ同等のはみ出し幅Sを有するように構成しても良い。かかる構成によって、機体後方が見易くなりコンバインの後進動作等を実施し易くなる。
【0068】
(2)図10に示すように、前述の第2実施形態における照明装置が左右方向に並べて配置される2つの後作業灯30a,30bを備え、脱穀装置3側に設けられる後作業灯30aが袋詰め作業部19の後方を照射し(後作業灯30aの照射範囲A3aは、左右一対のクローラ走行装置1の端部からほぼ同等のはみ出し幅Sを有する)、脱穀装置3とは反対側に設けられる後作業灯30bが袋詰め作業部19の横方を照射するように構成しても良い(照射範囲A3b)。また図示しないが、前述の第1実施形態においても同様に、照明装置が左右方向に並べて配置される2つの後作業灯30a,30bを備え、脱穀装置3側に設けられる後作業灯30aがグレンタンク17の後方を照射し(後作業灯30aの照射範囲A3aは、左右一対のクローラ走行装置1の端部からほぼ同等のはみ出し幅Sを有する)、脱穀装置3とは反対側に設けられる後作業灯30bがグレンタンク17の横方を照射するように構成しても良い(照射範囲A3b)。
【0069】
この場合、図10に示す2つの後作業灯30a,30bのそれぞれの照射範囲A3a,A3bの一部が互いに重なる構成に限らず、図11に示すように、2つの後作業灯30a,30bのそれぞれの照射範囲A3a,A3bが互いに重ならないように照射する構成としても良い。
【0070】
本構成によれば、脱穀装置3側に設けられる後作業灯30aが、機体2の左右中央に近い位置に設けられるため、機体2の後方を左右均等に照射し易く、脱穀装置3とは反対側に設けられる後作業灯30bが、機体2の横外側に近い位置に設けられるため、グレンタンク17の横方又は袋詰め作業部19の横方を照射し易い。
【0071】
尚、本構成における後作業灯30の設置数、設置位置、照射範囲等については、上記の構成に限定されるものではなく、グレンタンク17の後方と横方、あるいは袋詰め作業部19の後方と横方を照らすことができる構成であれば、必要に応じて、さらにより多くの作業灯を設置したり、あるいはそれらの作業灯の設置位置や照射範囲を変更するなどして適宜調整することができる。
【0072】
(3)図12及び図13に示すように、前述の第1及び第2実施形態における運転部5が、グレンタンク17又は袋詰め作業部19の上面よりも上方に突出するキャビン34を備え、照明装置としての後作業灯30を、当該キャビン34の天井部の後部に設ける構成としても良い。
【0073】
(4)照明装置の設置位置については、キャノピー28やキャビンに限定されるものではなく、グレンタンク17の後方と横方、あるいは袋詰め作業部19の後方と横方を照らすことができる構成であれば、他にも例えば、脱穀装置3、グレンタンク17、アンローダ18又は袋詰め作業部19等の適切な位置に設ける構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明したように、本発明は、普通型コンバインだけでなく、自脱型コンバインにも適用できる。
【符号の説明】
【0075】
2 機体
3 脱穀装置
5 運転部
7 刈取部
17 グレンタンク
18 アンローダ
19 袋詰め作業部
20 穀粒回収ホッパー
25 デッキ
28 キャノピー
30 後作業灯(照明装置)
34 キャビン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部に刈取部と運転部とを備え、
機体の後部に脱穀装置とグレンタンクとを左右方向に並べて配置し、
旋回自在な穀粒排出装置を前記グレンタンクの後部に備え、
前記グレンタンクの後方と、前記脱穀装置を配置する側とは反対側の前記グレンタンクの横方とを照射する照明装置を備えるコンバイン。
【請求項2】
前記運転部が、前記グレンタンクの上面よりも上方に突出するキャビン又はキャノピーを備え、前記照明装置を、前記キャビンの天井部の後部又は前記キャノピーの後部に設ける請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記キャノピーを、その後方部分を左右方向の支点として上下方向に角度調整可能に支持する請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記照明装置が左右方向に並べて配置される2つの作業灯を備え、前記脱穀装置側に設けられる一方の作業灯が前記グレンタンクの後方を照射し、前記脱穀装置とは反対側に設けられる他方の作業灯が前記グレンタンクの横方を照射する請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項5】
機体の前部に刈取部と運転部とを備え、
機体の後部に、脱穀装置と袋詰め作業部とを左右方向に並べて配置し、
前記袋詰め作業部は、穀粒を貯留する穀粒回収ホッパーと作業者が穀粒の袋詰め作業を行うデッキとを備え、
前記袋詰め作業部の後方と、前記脱穀装置を配置する側とは反対側の前記袋詰め作業部の横方とを照射する照明装置を備えるコンバイン。
【請求項6】
前記運転部が、前記袋詰め作業部の上面よりも上方に突出するキャビン又はキャノピーを備え、前記照明装置を、前記キャビンの天井部の後部又は前記キャノピーの後部に設ける請求項5に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記キャノピーを、その後方部分を左右方向の支点として上下方向に角度調整可能に支持する請求項6に記載のコンバイン。
【請求項8】
前記照明装置が左右方向に並べて配置される2つの作業灯を備え、前記脱穀装置側に設けられる一方の作業灯が前記袋詰め作業部の後方を照射し、前記脱穀装置とは反対側に設けられる他方の作業灯が前記袋詰め作業部の横方を照射する請求項5〜7のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項1】
機体の前部に刈取部と運転部とを備え、
機体の後部に脱穀装置とグレンタンクとを左右方向に並べて配置し、
旋回自在な穀粒排出装置を前記グレンタンクの後部に備え、
前記グレンタンクの後方と、前記脱穀装置を配置する側とは反対側の前記グレンタンクの横方とを照射する照明装置を備えるコンバイン。
【請求項2】
前記運転部が、前記グレンタンクの上面よりも上方に突出するキャビン又はキャノピーを備え、前記照明装置を、前記キャビンの天井部の後部又は前記キャノピーの後部に設ける請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記キャノピーを、その後方部分を左右方向の支点として上下方向に角度調整可能に支持する請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記照明装置が左右方向に並べて配置される2つの作業灯を備え、前記脱穀装置側に設けられる一方の作業灯が前記グレンタンクの後方を照射し、前記脱穀装置とは反対側に設けられる他方の作業灯が前記グレンタンクの横方を照射する請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項5】
機体の前部に刈取部と運転部とを備え、
機体の後部に、脱穀装置と袋詰め作業部とを左右方向に並べて配置し、
前記袋詰め作業部は、穀粒を貯留する穀粒回収ホッパーと作業者が穀粒の袋詰め作業を行うデッキとを備え、
前記袋詰め作業部の後方と、前記脱穀装置を配置する側とは反対側の前記袋詰め作業部の横方とを照射する照明装置を備えるコンバイン。
【請求項6】
前記運転部が、前記袋詰め作業部の上面よりも上方に突出するキャビン又はキャノピーを備え、前記照明装置を、前記キャビンの天井部の後部又は前記キャノピーの後部に設ける請求項5に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記キャノピーを、その後方部分を左右方向の支点として上下方向に角度調整可能に支持する請求項6に記載のコンバイン。
【請求項8】
前記照明装置が左右方向に並べて配置される2つの作業灯を備え、前記脱穀装置側に設けられる一方の作業灯が前記袋詰め作業部の後方を照射し、前記脱穀装置とは反対側に設けられる他方の作業灯が前記袋詰め作業部の横方を照射する請求項5〜7のいずれか一項に記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−24518(P2011−24518A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175511(P2009−175511)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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