コンバイン
【課題】運転座席からの運転キャビンの前側下方、及びサイドパネルボックスを設けた側の運転キャビンの側部下方の視認性の良いコンバインを提供する。
【解決手段】運転キャビン5内の左右方向での一端側で運転座席50の横一側方に走行用の変速レバー72を配設したサイドパネルボックス7を配置し、運転座席50よりも運転キャビン5内における左右方向での他端側寄り箇所で、サイドパネルボックス7との間に間隔を隔てた位置にステアリングレバー61を取り付けた操作ボックス6を設け、サイドパネルボックス7を運転座席50の座面50aよりも下側に配設し、操作ボックス6を運転座席50の座面50aよりも上側に設け、運転キャビン5のフロントガラスを、運転キャビン5の屋根部53近くからサイドパネルボックス7の上面よりも下方にわたる範囲に設けてある。
【解決手段】運転キャビン5内の左右方向での一端側で運転座席50の横一側方に走行用の変速レバー72を配設したサイドパネルボックス7を配置し、運転座席50よりも運転キャビン5内における左右方向での他端側寄り箇所で、サイドパネルボックス7との間に間隔を隔てた位置にステアリングレバー61を取り付けた操作ボックス6を設け、サイドパネルボックス7を運転座席50の座面50aよりも下側に配設し、操作ボックス6を運転座席50の座面50aよりも上側に設け、運転キャビン5のフロントガラスを、運転キャビン5の屋根部53近くからサイドパネルボックス7の上面よりも下方にわたる範囲に設けてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転キャビン内で運転座席の横側部にサイドパネルボックスを備えるとともに、操縦操作具を配備してあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転キャビン内で運転座席の横側部にサイドパネルボックスを備えるとともに、操縦操作具を配備してあるコンバインとしては、下記の[1]及び[2]に記載のものが存在する。
[1]運転座席の横側部にサイドパネルボックスを備え、運転座席の前方位置にステアリングハンドルを備えたコンバイン(特許文献1参照)。
[2]運転座席の横側部にサイドパネルボックスを備えるとともに、運転座席の前方側にフロントパネルを備え、そのフロントパネル上で、前記サイドパネルボックスとは反対側にステアリングレバーを備えたコンバイン(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−75634号公報(段落「0010」,図2,図4)
【特許文献2】特許第3685738号公報(段落「0015」,「0016」,「0017」,図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に記載の構造を有したコンバインでは、運転座席の直前方にステアリングハンドル及びその支持台が備えられて、運転座席の前方側の視界が遮られている。このため、運転中に操縦者が運転キャビン前側下方の視界、例えば、刈取部の駆動状況や刈取り跡を確認する際には、その刈取部や刈り跡の一部がステアリングハンドル及びその支持台に遮られて死角となる。操縦者が前記死角となる部分を確認するためには、体を前後左右に動かして前方下方を覗き込む必要があって、運転座席からの運転キャビンの前側下方の視認性が低下する虞がある。
【0005】
上記[2]に記載の構造を有したコンバインでは、操縦操作具としてのステアリングレバーがサイドパネルボックスが設けられた側とは反対側で運転座席の前方位置ではなく右側方に設けられている。このため、運転座席の前方を遮る位置にステアリングレバーは存在していないが、運転座席の前方側に横幅の広いフロントパネルが存在していて、前方側を塞がられた閉塞感があるとともに、運転座席に搭座した姿勢で運転キャビンの前側下方を視認することができない不便さがある。
【0006】
本発明は、運転座席からの運転キャビンの前側下方、及びサイドパネルボックスを設けた側の運転キャビンの側部下方の視認性の良いコンバインを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために講じた本発明におけるコンバインの技術手段では、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
〔解決手段1〕
運転キャビン内に運転座席を配備し、前記運転キャビン内の左右方向での一端側で前記運転座席の横一側方に走行用の変速レバーを配設したサイドパネルボックスを配置し、
前記運転座席よりも前記運転キャビン内における左右方向での他端側寄り箇所で、前記サイドパネルボックスとの間に間隔を隔てた位置にステアリングレバーを取り付けた操作ボックスを設け、
前記サイドパネルボックスを運転座席の座面よりも下側に配設し、前記ステアリングレバーの操作ボックスを前記運転座席の座面よりも上側に設けてあるとともに、
前記運転キャビンのフロントガラスを、前記運転キャビンの屋根部近くから前記サイドパネルボックスの上面よりも下方にわたる範囲に設けてあることを特徴とする。
【0008】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した特徴構成によると、走行用の変速レバーを配設したサイドパネルボックスとステアリングレバーを取り付けた操作ボックスとが、運転座席が存在する箇所の両側において、運転キャビン内の一端側と他端側とに振り分けられて、互いに間隔を隔てて設けられていることにより、運転座席の前方側が開放されて圧迫感が少なく、運転座席を運転キャビン内の前方側へ寄せて配置しても良好な居住性の確保できる。
そして、このようにサイドパネルボックスと操作ボックスとが間に間隔を隔てて設けられていることと、運転キャビンのフロントガラスが屋根部近くから運転座席の座面よりも低いサイドパネルボックスの上面よりも下方にわたる範囲に設けてあることとにより、運転座席の前方側で操縦者の視界を遮るものを視界の外側寄りに移行させることができ、運転座席に搭座した状態での運転キャビンの前側下方に対する視認性を向上し得たものである。
【0009】
また、サイドパネルボックスを運転座席の座面よりも下側に配設し、ステアリングレバーの操作ボックスを運転座席の座面よりも上側に設けているので、ステアリング操作を運転座席に搭座した姿勢でも、少し腰を浮かせて前側を覗き込む姿勢でも操作し易い高さ位置で操作し得るととともに、運転座席の座面よりも低い位置にあるサイドパネルボックスの上面越しに、このサイドパネルボックスが存在する側の運転キャビンの側部下方をも目視し易くなる利点がある。
【0010】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記ステアリングレバーを取り付けた操作ボックスは、前記運転座席よりも前記運転キャビンの乗降用ドアが設けられた側の横側方寄り箇所に設けてあることである。
【0011】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段2で示した特徴構成によると、運転座席よりも運転キャビンの乗降用ドアが設けられた側の横側方寄り箇所に操作ボックスを位置させることにより、その操作ボックスが運転座席に搭座する操縦者の機体前方側の視界を遮る虞が少なくなる。これによって、運転座席の前方側で操縦者の視界を遮る可能性がより一層少なくなり、運転座席に搭座した状態での運転キャビンの前側下方に対する視認性をより一層向上し得たものである。
【0012】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記運転キャビンの乗降用ドアが設けられた前記運転座席の側の側部に乗降用取っ手を付設してあることである。
【0013】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3で示した構成によると、乗降用ドアを開けた状態で、乗降用ドアが設けられた側の運転座席の側部に存在する乗降用取っ手を把持して運転キャビンへ乗り込むことができるので、その乗り込み動作を楽に行い易くなる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る普通型コンバインの右側面図である。
【図2】本発明に係る普通型コンバインの左側面図である。
【図3】本発明に係る普通型コンバインの平面図である。
【図4】運転キャビンの右側面図である。
【図5】運転キャビンの正面図である。
【図6】運転キャビンの左側面図である。
【図7】運転キャビンの背面図である。
【図8】運転キャビンの横断平面図である。
【図9】運転キャビンの縦断正面図である。
【図10】図9におけるX−X線断面図である。
【図11】図9におけるXI−XI線断面図である。
【図12】運転キャビンの右前方のフロントピラー及び操作ボックス付近で、乗降用ドアを少し開いた状態を示す説明図である。
【図13】図12におけるXIII−XIII線断面図である。
【図14】別実施形態における運転キャビンの床面部分を示す概略断面図である。
【図15】別実施形態におけるサイドパネルボックス部分を示す概略平面図である。
【図16】別実施形態におけるサイドパネルボックス部分を示す概略平面図である。
【図17】別実施形態における内側把持部材付近を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用したコンバインの実施形態を図面の記載に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1乃至図3は本発明のコンバインの一例である普通型コンバインの全体を示している。
左右一対のクローラ式走行装置10を備えた機体フレーム11上に、脱穀装置2、穀粒タンク3、及び運転キャビン5を搭載した走行機体1の前部に、刈取搬送装置4を昇降操作自在に装備させて普通型コンバインが構成されている。前記機体フレーム11上では、図3に示すように、右前部に運転キャビン5が配設され、その後方側の右後部に穀粒タンク3が設けられ、その穀粒タンク3の左方側である左後部に脱穀装置2が配設されている。
【0016】
前記刈取搬送装置4は、前記脱穀装置2の前部から運転キャビン5の左横側方を通って前方へ延出された処理物搬送用のフィーダ40と、そのフィーダ40に対して被処理物を供給する刈取部41、及び刈取部41の上部で植立茎稈の穂先側を掻き寄せるリール装置42とを備えている。
前記刈取部41は、植立茎稈を刈り取るバリカン型の刈刃41aと、刈り取られることによって被処理物となった茎稈をフィーダ40の入り口部40a側へ向けて寄せ集めるための横送りオーガ41bとを備え、前記フィーダ40はチェーン式の掻き揚げコンベア40bを内装している。
したがって、倒伏状態の茎稈はリール装置42である程度掻き上げられ、刈刃41aで刈り取られた後、オーガ41bでフィーダ40の入り口部40aへ向けて搬送され、前記入り口40aに到達した茎稈(被処理物)が掻き揚げコンベア40bによってフィーダ40の底面に沿って掻き揚げ搬送され、脱穀装置2の前端部に投入される。
【0017】
前記刈取搬送装置4は、図2に示すように、機体フレーム11上の固定箇所に対して水平方向の横軸心x周りで上下揺動自在に枢支されていて、昇降用油圧シリンダ12を伸縮操作することで、刈取部41が地面に近接した刈取作業姿勢と、刈取部41が地面から所定高さまで上昇した非刈取作業姿勢とに姿勢変更自在に構成されている。
【0018】
前記脱穀装置2は、全稈投入型に形成されていて、前後方向に長い扱胴20を備えて脱穀処理し、被処理物中の塵埃を後方から排出するとともに、脱穀された穀粒を含む被処理物を穀粒タンク3へ送り込むように構成されている。
穀粒タンク3では、脱穀装置2側から送り込まれた穀粒を含む被処理物を一時的に貯留し、穀粒タンク3から穀粒排出用オーガ30を介して外部へ穀粒を含む被処理物が回収されるように構成されている。
【0019】
前記運転キャビン5の下部には、図6及び図7に示すようにエンジンルーム13が設けてあり、運転キャビン5内の運転座席50の後方下方に位置する状態でエンジン14、及びラジエータ15が左側から順に配設されている。
エンジンルーム13の右外側には、図4に示すように防塵カバー16を配設してあり、右外側から外気を吸引するラジエータ15が、吸気時に外部の塵埃等を吸入するのを防止するように構成してあり、ラジエータ15を通過した吸入外気はエンジン14を冷却したのち、エンジンルーム13の左側方(図7中の左側)へ排気されるように構成してある。
【0020】
〔運転キャビン〕
図4乃至図11に示すように、運転キャビン5は、機体フレーム11に固設された支持材11aによって支持された床板51の上面側に床面5Aを備えており、前記床板51の上側に四本の支柱52が立設され、その支柱52によって屋根部53が支持されている。
上記四本の支柱52のうち、機体前方側の左右一対の支柱52a,52b(フロントピラーに相当する)は、床板51の最下部の床面5Aから立設されているが、左右の後方側の支柱52c,52dは、床板51のうち、運転座席50の支持台及びボンネット隔壁を兼ねる床板上部51aから立設されている(図9乃至図11参照)。
【0021】
前記四本の支柱52のうち、機体前方側の左右一対の支柱52a,52b(フロントピラーに相当する)の間には、曲面ガラスで構成されたフロントガラス54が設けてある。
このフロントガラス54は前記床面5Aから屋根部53までの全範囲にわたって設けてあり、図10及び図11に示すように、前記床面5Aの前縁よりも前方側へ膨出させてあるとともに、フロントガラス54が、側面視で水平面に対する下方側部分の傾斜角度θ1よりも上方側部分での傾斜角度θ2が大きくなるように、下端側ほど後側に位置するように前側に凸状に湾曲した傾斜面に形成してある。
また、前記フロントガラス54は、平面視でも、図8に示すように、左右方向での中央部箇所が左右方向での両端部箇所よりも前方側へ膨出する突曲形状に形成してある。したがって、フロントガラス54は、単なる水平方向もしくは上下方向の何れかの軸線周りでの曲率を有した単曲面ではなく、上下方向と左右方向との互いに交差する複数の軸線周りでの曲率を有した複曲面によって構成されている。
【0022】
上記フロントガラス54の側面視での曲面形状は、図10及び図11に示すフロントガラス54の上端よりも少し下方側の位置が最も機体前方側に位置する最大前方突出位置Pとなるように、一定曲率の曲面で形成されたフロントガラス54の取付姿勢を定めたものであるが、このフロントガラス54の側面視での曲率は、一定曲率のものに限らず、例えば、下方側部分の曲率が上方側部分の曲率よりも大きいもの、あるいは、逆に下方側部分の曲率が上方側部分の曲率よりも小さいもの等を採用することも可能である。
上記のように、フロントガラス54の最大前方突出位置Pを、フロントガラス54の上端よりも少し下方側の位置としているのは、運転キャビン5の前方下方を覗き込むとき、操縦者の頭部を最大限フロントガラス54に近づける際に、この最大前方突出位置Pがフロントガラス54の上端と一致している場合よりも、少しでも前方に近づけられるからである。
【0023】
上記フロントガラス54の平面視での曲面形状は、左右方向の全体にわたって一定の曲率で形成されたものではなく、両端部箇所近くの曲率が中央部箇所近くの曲率よりも大きくなっており、中央部箇所では直線に近い緩やかな湾曲面となっている。
ただし、これはあくまでも一例であり、前記フロントガラス54の平面視での曲面形状を、左右方向の全体にわたって一定の曲率で形成したものを採用することも可能である。
【0024】
前記フロントガラス54の左右両端側に位置するところの、前記機体前方側の左右一対の支柱52a,52bは、前記フロントガラス54の横側端縁の形状に沿って、側面視でのフロントガラス54の前記傾斜面の傾斜と同様な傾斜を有した湾曲形状に形成されている。
つまり、この支柱52a,52bは、側面視で水平面に対する下方側部分の傾斜角度θ1よりも上方側部分での傾斜角度θ2が大きくなるように形成されたフロントガラス54の湾曲形状と同様に、下端側ほど後側に位置するように前側に凸状に湾曲した傾斜を有しており、前記運転キャビン5の床面5Aへの取付箇所よりも上部側が前方側に位置するように設けてある。
【0025】
前記フロントガラス54の左右両端側に位置するところの、前記機体前方側の左右一対の支柱52a,52bは、前記フロントガラス54の横側端縁の形状に沿って、側面視でのフロントガラス54の前記傾斜面の傾斜と同様な傾斜を有した形状に形成されている。
【0026】
運転キャビン5の横側面箇所のうち、右側面箇所では、右前方側の支柱52aと右後方側の支柱52cとの間が、操縦者が乗り降りするための乗降口として形成されており、この乗降口を開閉するための乗降用ドア55が右後方側の支柱52c側に設けたヒンジ55aを介して開閉操作自在に装着してある。
この乗降用ドア55の機体前方側の端縁は、前記フロントガラス54の傾斜面の傾斜と同様な傾斜を有した右前方側の支柱52aの湾曲形状に沿った端縁形状に形成してあり、この端縁部分では、下端側よりも上端側が大きく前方側へ張り出している。
【0027】
この乗降用ドア55は、図4に示すように、外周枠55bを上下方向での中間位置で横切るように掛け渡された横桟部材55cを境にして、下方側が一枚物の透明ガラス55dによって構成され、上方側は前後一対の透明ガラス製の引き違い戸でスライド操作により開閉可能に構成されたドア窓55eとなっている。
上記横桟部材55cの上下方向の高さ位置は、運転キャビン5内の運転座席50の座面50aよりも高く、後述する操作ボックス6の上面よりも低い高さ位置に設定してある。
そして、この横桟部材55cのドア内面側には、図8及び図9に示すように、運転キャビン5の室内側から乗降用ドア55を開閉操作する際に把持する内側把持部材55fを備えてある。尚、図4及び図5図中の符号55gは、外方側から開閉操作する際に用いる取っ手であり、運転キャビン5の機体前方側の支柱52aに沿った傾斜姿勢で取り付けてある。
【0028】
運転キャビン5の横側面箇所のうち、左側面箇所では、図6に示すように、左横側壁56の一部に、左前方側の支柱52bと左後方側の支柱52dとの間で、かつ横側面箇所の上下方向の中間位置から上方側に、前後一対の透明ガラス製の引き違い戸でスライド操作により開閉可能に構成された横窓56aが設けてある。
この引き違い戸で構成された開閉可能な横窓56aは、下端側が前記乗降用ドア55の横桟部材55cの上下方向高さと同様に、運転キャビン5内の運転座席50の座面50aよりも高く、後述する操作ボックス6の上面よりも低い高さ位置に設定してあり、上端側は屋根部53の下縁に達する上下方向高さ位置に設定してある。
【0029】
運転キャビン5の側面部分のうち、前記乗降用ドア55が設けられた右側面箇所の前記乗降用ドア55よりも後方側の部分から、後側面箇所に至る箇所には、図4及び図8に示すように、右後方側の支柱52cよりも後方側の右側面箇所の前記乗降用ドア55よりも後方側の部分から、後側面箇所に至る箇所にわたって、運転キャビン5の右後方の角部相当箇所を見通し可能な透明ガラスを嵌め込んで、開閉不能な固定窓57を構成してある。この固定窓57及び固定窓57が取り付けられた運転キャビン5の右後方角部の外壁は、図8に示すように湾曲した形状に形成されている。
また、運転キャビン5の後面側箇所では、図7、図8、及び図11に示すように、後壁58の一部に、前記固定窓57が形成された箇所よりも左側で、かつ、運転座席50のシートバック50bの上端よりも上方側から屋根部53の下縁にわたって、左右一対の透明ガラス製の引き違い戸でスライド操作により開閉可能に構成された後窓58aが形成されている。
【0030】
前記四本の支柱52によって支持される屋根部53は、図4乃至図6に示されるように、その前面側部分がフロントガラス54の上端部よりも前方側に突出した状態で設けてあり、この前面側部分で左右の端部と、その端部に近い位置とに、刈取部41及び刈取部41の前方を照らす前照灯53aが四基取り付けられている。
【0031】
前記運転キャビン5の床面5Aは、平面視におけるフロントガラス54の下端縁の形状が、図8に示すように、左右方向での中央部箇所が左右方向での両端部箇所よりも前方側へ膨出する突曲形状であることから、その前縁形状が、フロントガラス54の下端縁の形状に沿って、左右方向での中央部箇所が左右方向での両端部箇所よりも前方側へ膨出する突曲形状に形成されている。
そして、その床面5Aの前縁近くには、図8乃至図11に示すように、床面5Aの少し上方に位置するように足置き部51bを設けてある。この足置き部51bは、床面5Aに対して左右両端側のステー51cを介して、機体前方側が高く後方側が低い傾斜姿勢で取り付けてあり、運転座席50の直前方に位置して、運転座席50の座面50aの左右方向幅と同程度、もしくは少し短い程度の左右方向幅を有している。
また、前記足置き部51bは、機体前方側の左右一対の支柱52a,52b(フロントピラーに相当する)の下端位置よりも、当該足置き部51bの少なくとも前辺部分が前方側に位置するように、床面5Aの前縁の中央部箇所が左右方向での両端部箇所よりも前方側へ膨出する突曲形状の前記前縁の中央部箇所で、その前縁に近接させて位置させることにより、できるだけ前方側に配設してある。
これによって、運転座席50も相対的に前方側へ寄せて配設することが可能となり、運転キャビン5の前方下方を覗き込む際に有利である。
【0032】
図4乃至図6、及び図8に示すように、前記運転キャビン5の乗降用ドア55を設けた側の横側面箇所の前側で、前記右前方側の支柱52aに対してキャビンガード59を連設してある。このキャビンガード59は、側面視でフロントピラーである右前方側の支柱52aの湾曲形状に沿って湾曲した形状の金属製パイプ材によって形成されていて、前記右前方側の支柱52aの下端部近くと上端部近くとにボルト連結されている。
そして、キャビンガード59は、前記右前方側の支柱52aに対して、横外方側に所定間隔を隔てて位置する第1棒状ガード部59aと、さらにその第1棒状ガード部59aの前方側へ所定間隔を隔てて位置する第2棒状ガード部59bとを有して構成されている。
このキャビンガード59は、その第1棒状ガード部59a、及び第2棒状ガード部59bが、前記乗降用ドア55を開放して操縦者が乗り降りする際に、手摺りとして把持しながら乗り降りすることが可能であるように十分な強度を有して、掴みやすい位置に設けてある。
【0033】
上記のように構成されたキャビンガード59に対して、図4及び図5に示すように、ウインカー80が、左右方向で前記右前方側の支柱52aと第1棒状ガード部59aとの間に位置し、前後方向で第1棒状ガード部59aと第2棒状ガード部59bとの間に位置し、かつ、上下方向で乗降ドア55の取っ手55gよりも下方に位置する状態で第1棒状ガード部59aに装着してある。
また、上記のキャビンガード59に対しては、図4及び図5に示すように、バックミラー81が、前記第2棒状ガード部59bの横外側で、かつ、上下方向では運転座席50のシートバック50bの上端と同程度、もしくはそれよりも高い位置に位置するように取り付けてある。
さらに前記キャビンガード59の第1棒状ガード部59aの上端部箇所には、アンテナ82が上方に向けて延出した状態で取り付けてある。
図5に示すように、フロントガラス54の上部外面には、ワイパー83が配設されている。
【0034】
〔操縦部の構造〕
図8に示すように、操縦部である運転キャビン5の内部では、運転座席50が左右方向でのほぼ中央に配設してあるとともに、前記運転座席50の右前方側にステアリング操作等を行うための操作ボックス6が設けられ、左側に変速操作等を行うためのサイドパネルボックス7が設けられている。
【0035】
運転座席50は、座面50aとシートバック50bとを備えている。また、この運転座席50の右横側部には、図4、図8、及び図10に示すように、乗降用ドア55を開放して運転キャビン5内に乗り込む際に、操縦者が掴んで身体を引き上げながら機上へ上がる際の補助として用いることができるように乗降用取っ手50cを設けてある。
この乗降用取っ手50cは、図8及び図10に示すように、運転キャビン5内の床板上部51bにおける運転座席50の搭載箇所とその背部側に立設されている箇所とにわたって設けられた側面視で逆L字型の取付部材51dに対して取り付けられた側面視でコの字状の部材によって構成してある。
【0036】
〔操作ボックス〕
運転キャビン5の右横側端部に設けられる操作ボックス6は、図8及び図12に示されるように、ボックス本体60の上面側にステアリングレバー61、コンビネーションスイッチ62、及びキースイッチ63が装備されている。そしてこの操作ボックス6のボックス本体60が、運転座席50の右前方側で、運転キャビン5の乗降用ドア55が設けられた側である右前方側の支柱52aに対して、取付部材6aを介して片持ち状に固定支持されている。
この操作ボックス6は、そのボックス本体60が支柱52aに支持された状態で、平面視でボックス本体60の前側に、運転キャビン5の左右方向での端部側ほど前方寄りで運転キャビン5の左右方向での中央側ほど後方寄りとなるように傾斜した前面60aを備え、後側にも、平面視で運転キャビン5の左右方向での端部側ほど前方寄りで運転キャビン5の左右方向での中央側ほど後方寄りとなるように傾斜した傾斜後面60bを備えている。
これによって、運転座席50に搭座した操縦者がボックス本体60を見たときのボックス本体60の水平方向幅が短く見えるようになる。つまり、平面視で操縦者の存在位置となる運転座席50の座面50aの中央を視点としたボックス本体60への投影線の方向に沿うように前記前面60a及び傾斜後面60bが傾斜しているので、このような傾斜した面を備えていない単なる矩形のものでボックス本体60を形成した場合に比べて、水平方向での幅が短く見えるようになる。
また、前記ボックス本体60の上面側に設けられるステアリングレバー61とコンビネーションスイッチ62とは、前記ステアリングレバー61が運転座席50に近く、後方側寄りに位置し、前記コンビネーションスイッチ62が前記ステアリングレバー61よりも遠く前方側寄りに設けられている。
前記操作ボックス6の取付位置は、図5,9,11に示すように、運転座席50の座面50aよりも高い位置で、かつ、前記乗降用ドア55の室内側に取り付けられた内側把持部材55fよりも少し高い位置にボックス本体60の上面が位置するように設けてある。
また、この操作ボックス6の平面視での位置は、図8に示されているように、操作ボックス6に設けてある操向操作用のステアリングレバー61が、運転座席50の前方よりも少し右外側に外れて位置している。
【0037】
そして、前記操作ボックス6は、図4及び図11に示されるように、側面視で運転キャビン5の右前方側の支柱52aの下端よりも機体前方側に位置するように配設されている。したがって、運転キャビン5への乗降時には、前記運転キャビン5の右前方側の支柱52aの下端よりも機体後方側に存在する運転キャビン5内の床面5Aの上方に存在する領域に対して乗り降りするものであるところの操縦者が、前記領域から外れた前方側に設けてある操作ボックス6に接触する可能は少なくて済む。
【0038】
前記操作ボックス6は、側面視で運転キャビン5の右前方側の支柱52aの下端よりも機体前方側に位置するものであるが、図8及び図11に示されるように、フロントガラス54に対しては、そのフロントガラス54との間に間隔を隔てて設けてある。これは、操作ボックス6の上側に設けられるステアリングレバー61が前後左右に揺動操作された場合に、その前方側への揺動範囲を十分に確保して支障なく揺動操作を行えるようにするためのものである。
【0039】
操向操作用のステアリングレバー61は、前後左右の十字方向に揺動操作が可能であるようにボックス本体60に支持させてある。そして、ステアリングレバー61の操作位置は、ボックス本体60に内装されている図示しない位置検出体によって検出されるものであり、ステアリングレバー61の操作位置をリンク機構などの機械的連係機構で操向機構などに連係させるような構造のものではなく、ボックス本体60内の各機器は導電線や信号線からなるハーネス66を介して連係対象の装置と連係されている。
【0040】
上記のステアリングレバー61を右方向に揺動操作すると、ボックス本体60に内装されている図示しない位置検出体の検出結果に基づいて、クローラ式走行装置10が右方向に旋回するように操向操作され、ステアリングレバー61を左方向に揺動操作すると、ボックス本体60に内装されている図示しない位置検出体の検出結果に基づいて、クローラ式走行装置10が左方向に旋回するように操向操作される。
また、ステアリングレバー61を前方に揺動操作すると、ボックス本体60に内装されている図示しない位置検出体の検出結果に基づいて、フィーダ40及び刈取部41が、ステアリングレバー61の操作位置に対応した速度で下降する。同様に、ステアリングレバー61を後方に揺動操作すると、フィーダ40及び刈取部41が、ステアリングレバー61の操作位置に対応した速度で上昇する。中立位置からの揺動操作量が多い程、下降速度または上昇速度が速くなる。ステアリングレバー61の揺動操作を止めて中立位置に保持すると、フィーダ40及び刈取部41はその位置で停止する。
【0041】
前記操作ボックス6に装備されているコンビネーションスイッチ62は、図8及び図12に示すように、中央の押しボタン62aを押すことで警報用のフォーンを鳴らし、押しボタン62aの周部に備えたレバー62bを回動操作することで前照灯53aの入り切り操作を行うように構成されている。
さらに前記操作ボックス6には、キーを差し込んでエンジン14を始動及び停止可能なスタータスイッチを操作するためのキースイッチ63も装備されている。
【0042】
図12及び図13に示すように、前記操作ボックス6に導入される導電線、及び信号線などのハーネス66は、運転キャビン5の右前方側の支柱52aに沿って、その支柱52aとは別個に運転キャビン内部に配設されたハーネスカバー64に内装されている。
したがって、ハーネス66の配線や点検等の必要が生じた場合には、前記支柱52aを分解するような作業を要さず、ハーネスカバー64を着脱あるいは分解することで簡単に内部のハーネス66に対する作業を行うことができる。
【0043】
図11乃至図13に示すように、運転キャビン5の右前方側の支柱52aには、前記ボックス本体60の下方側に位置させて、乗降用ドア55のキャビン室内側に装備されたロック装置55hが係脱するためのドアキャッチャ65を設けてある。このドアキャッチャ65は、側面視で運転キャビン5の右前方側の支柱52aの下端よりも機体前方側で、かつ、前記ボックス本体60の後端よりも機体前方側に位置するように設けられている。
したがって、運転キャビン5への乗降時には、前記運転キャビン5の右前方側の支柱52aの下端よりも機体後方側に存在する運転キャビン5内の床面5Aの上方に存在する領域に対して乗り降りするものであるところの操縦者が、前記領域から外れた前方側に設けてある操作ボックス6のボックス本体60の後端よりもさらに機体前方側に位置するドアキャッチャ65に接触する可能は少なくて済む。
【0044】
〔サイドパネルボックス〕
運転キャビン5内での運転座席50の左横側部には、図8乃至図10に示すようにサイドパネルボックス7が設けられている。
このサイドパネルボックス7は、図9及び図10に示すように、その上面が前記運転座席50の座面50aよりも低く形成されているとともに、走行用の主変速レバー72(変速レバーに相当する)等が配設されたボックス主部70と、前記ボックス主部70の前端側に位置して電装品が配設された電装品配置部71とを備えている。
さらに前記ボックス主部70では、前記運転座席50から遠い側で走行用の主変速レバー72や副変速レバー73などの各種レバー類が配設された外側部分70Aと、運転座席50に近い側で各種のスイッチ操作具74が配設されている内側部分70Bとを備えている。前記主変速レバー72及び副変速レバー73などの各種レバー類の握り部は前記座面50aよりも高い位置にあるように取り付けられている。
【0045】
前記電装品配置部71では、通常の刈取脱穀作業中に目視する頻度の高い計器類を備えた計器表示部71aが樹脂製のケースに収容された状態で設けてあり、メータパネルとして機能するものであり、前記ボックス主部70の機体前方側の端部に一体的に取り付けてある。
前記計器表示部71aでは、例えば、中央部に実際の作業車速を表示する作業速度計やエンジン回転数からの負荷を表示する負荷表示メータなどが設けられ、その両側には、例えばエンジン回転計や燃料計が設けられている。
この電装品配置部71は、各種計器部分を液晶などの画像表示手段で表示するようにしたものであってもよい。
【0046】
図6及び図10に示されるように、前記電装品配置部71は、上下方向厚みが前記ボックス主部70と比べると薄いものであり、上面はボックス主部70と同一平面上にあるようにボックス主部70の前端上部から斜め右方前方側へ片持ち状に連設されている。
したがって、電装品配置部71の下面と運転キャビン5の床面5Aとの間には上下方向での間隔が生じ、また、ボックス主部70の前端縁70aと前方のフロントガラス54の内面との間にも前後方向での間隔が生じている。つまり、前記電装品配置部71の下側に相当する箇所には、運転座席50側からサイドパネルボックス7が存在する側の運転キャビン5の側部下方を目視可能な開放空間S1が形成されている。
前記ボックス主部70の前端縁70aは、図6及び図10に示されるように、フロントガラス54の内面の傾斜に沿って、下方側ほど機体後方側に位置するように傾斜する形状に形成されている。
【0047】
前記ボックス主部70の前端部から延出される電装品配置部71は、図8及び図10に示されるように、前記フロントガラス54の両端側に位置する機体前方側の左右一対の支柱52a,52bの下端、及び運転キャビン5の床面5Aの前縁よりも機体前方側へ延出されていて、かつ平面視でフロントガラス54の背面に沿うように屈曲形成され、延出端側が運転座席50の前方側(斜め右方前方側)へ向かうように屈曲した形状となっている。
前記電装品配置部71は、平面視で運転座席50に近い後方側が直線的な側縁を有し、フロントガラス54に近い前方側がフロントガラス54の内面形状に近い湾曲した側縁を備えている。
これによって、前記電装品配置部71を、例えば、その計器表示部71aで各種計器部分が機体前後方向に並べて配設してある構造のものに比べ、前記計器表示部71aでの各種計器部分がフロントガラス54の背面に沿う方向で並ぶ状態となる。このため、前述のように各種計器部分が機体前後方向に並ぶ構造のものに比べ、運転座席50から各計器部分が配置されている箇所までの距離の差を少なくし得て、機体前方側に位置するものほど運転座席50からの距離が遠くなって見難いというような不具合を招くことなく、目視し易くなる利点がある。
それでいて、前記電装品配置部71はボックス主部70側から片持ち状で延出され、電装品配置部71の下側には前記開放空間S1が存在し、電装品配置部71の下側に前方視界を遮るものが存在していないので、運転座席50側から電装品配置部71の下側を通して運転キャビン5の前方側の側部下方を目視し易いものである。
【0048】
前記ボックス主部70では、運転座席50から遠い側の外側部分70Aに、機械的連係機構(図示せず)を介して各種関連装置(図外)に連係される走行用の主変速レバー72や副変速レバー73などの各種レバー類を配設してあり、その外側部分70Aよりも運転座席50に近い側の内側部分70Bに、機械的連係機構を用いずに電気的に各種関連機器と接続される各種のスイッチ操作具74が配設されている。
そして、図8、9、及び図10に示すように、前記外側部分70Aは運転キャビン5の床板51から立設された箱状に形成されているものであるが、前記内側部分70Bは、外側部分70Aの上部から運転座席50側に張り出すように膨出形成してあり、その内側部分70Bの下方側には、前記運転座席50から離れる方向に凹入するに凹入空間S2を設けてある。
【0049】
上記外側部分70Aに設けられる主変速レバー72や副変速レバー73などの各種レバー類は、図5及び図9に示すように、その握り部近くが、運転キャビン5の左側面箇所の左横側壁56、もしくは横窓56aから離れて運転座席50が存在する側へ近づくように傾斜させてある。
つまり、前記外側部分70Aの上面のレバーガイドから上向きに突出した主変速レバー72のレバー基部が前方右方に屈曲し、前記外側部分70Aの上面のレバーガイドから上向きに突出した副変速レバー73などのレバー基部が運転座席50側に屈曲している。
【0050】
前記内側部分70Bは、図8に示すように、その機体前方側の前端部76が、前記外側部分70Aと、これに接続される電装品配置部71との接続箇所75よりも機体後方側に位置するように形成されている。また、前記内側部分70Bの前端部76は、運転座席50側ほど後方に位置する傾斜している。
これによって、前記内側部分70Bの前端部76と前記電装品配置部71の内向きの側縁との間で、電装品配置部71とボックス主部70との接続箇所75を含んでその前後に位置するキャビン室内側の側縁部分に、平面視で運転座席50から離れる方向に凹入する形状の凹入部S3が形成されている。
このように、電装品配置部71とボックス主部70との接続箇所75を含む位置のキャビン室内側の側縁部分に凹入部S3が形成されたことで、電装品配置部71やボックス主部70よりも高い位置である運転座席50に塔座している操縦者の視点から、運転キャビン5の前方側の側部下方をさらに目視し易くすることができる。
【0051】
また、前記凹入部S3が形成された箇所と平面視で重合する運転キャビン5の床面5A上には、図8乃至図10に示すように、駐車ブレーキペダル84が配設されている。
これによって、運転座席50に搭座する操縦者が駐車ブレーキペダル84を踏み込む際に、運転座席50の座面50aよりも低い位置にあるサイドパネルボックス7の存在によって邪魔されることなく、前記凹入部S3に脚部を入り込ませた状態で駐車ブレーキペダル84を踏み込み操作することができる。
【0052】
上記のように構成された普通型コンバインでは、フロントガラス54が単なる扁平ガラスではなく、水平面に対して下方側部分よりも上方側部分での傾斜角度が大きい傾斜面を有した湾曲形状に形成されているので、運転キャビン5の室内側から前方下方の覗き込みを良好に行うことができ、かつ、運転キャビン5内で運転座席50の左側に配設されるサイドパネルボックス7の前部に位置する電装品配置部71と運転キャビン5の床面5Aとの間に開放空間S1を形成して、図8に示すように運転座席5から左右方向の視野β1を、前記開放空間S1が形成されない場合の視野β2に比べて広く確保することができる。
これによって、図3に示すように、刈取搬送装置4の刈取部41における右端(既刈り側)で、運転キャビン5と刈取部41との間から刈取装置4の通過後における地面の刈り残しの有無を見るための一つのチェックポイントCP1、及び、刈取部41からフィーダ40への受け継ぎ箇所での受け継ぎ状態が良好であるか否かを確認するための他のチェックポイントCP2での目視を行い易くなったものである。
【0053】
〔別実施形態の1〕
フロントガラス54は、実施の形態で示したように、上下方向と左右方向との互いに交差する複数の軸線周りでの曲率を有した複曲面によって構成されたものに限らず、例えば水平方向の軸線周りでの曲率を有した単曲面で構成されたものであってもよい。
この場合、運転キャビン5の床面5Aの前端縁は直線形状になるが、機体前方側の左右一対の支柱52a,52b(フロントピラーに相当する)は、フロントパネル54の左右方向の両端縁形状に沿って、側面視で水平面に対する下方側部分の傾斜角度θ1よりも上方側部分での傾斜角度θ2が大きくなるように湾曲した形状となるように形成すればよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0054】
〔別実施形態の2〕
フロントガラス54は、実施の形態で示したように、上下方向と左右方向との互いに交差する複数の軸線周りでの曲率を有した複曲面によって構成されたもの、あるいは単曲面で形成されたものに限らず、例えば、側面視で水平面に対する下方側部分の傾斜角度θ1よりも上方側部分での傾斜角度θ2が大きい屈折形状となるように、複数の扁平ガラスを組み合わせて形成してもよい。
この場合も、運転キャビン5の床面5Aの前端縁は直線形状になるが、機体前方側の左右一対の支柱52a,52b(フロントピラーに相当する)は、フロントパネル54の左右方向の両端縁形状に沿って、側面視で水平面に対する下方側部分の傾斜角度θ1よりも上方側部分での傾斜角度θ2が大きくなるように屈折した形状となるように形成すればよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0055】
〔別実施形態の3〕
上記実施形態では、フロントガラス54を屋根部53から床面5Aに達する範囲に設けたものであるが、これに限られるものではなく、例えば、フロントガラス54の下端が運転座席50の座面50aよりも下側で前記床面5Aよりも高い位置にまで達する範囲としてもよい。
この場合、フロントガラス54の下端が床面5Aに達する範囲にまで設けたものに比べれば運転キャビン5の前方下方側の視野は狭くなるが、フロントガラス54が単なる扁平ガラスではなく、側面視で水平面に対する下方側部分の傾斜角度θ1よりも上方側部分での傾斜角度θ2が大きくなるような傾斜を有したものであることによって、運転座席50を運転キャビン5内でかなり前方側へ配設できるものであるから、フロントガラス54が着座した操縦者の腰部付近にまでしか達していないような構造のものと比べて、運転キャビン5の前方下方側の視野をかなり大きく確保して、運転キャビン5の直前の下方に近い側まで操縦者は視線を落とすことができる。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0056】
〔別実施形態の4〕
運転キャビン5内に配設される足置き部51bとしては、実施の形態で示したように、床面5Aの上に別途足置き用の部材を取り付けた構造のものに限らず、図14に示すように、運転キャビン5の床面5Aの前端部に、前上がりに傾斜した部分を設けることによって足置き部51bを形成してもよい。その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0057】
〔別実施形態の5〕
操縦部を構成するサイドパネルボックス7の電装品配置部71は、実施の形態で示したように、平面視でフロントガラス54の背面に沿うように屈曲形成され、延出端側が運転座席50の前方側(斜め右方前方側)へ向かうように屈曲した形状のものに限らず、例えば、図15に示すように、サイドパネルボックス7の電装品配置部71はボックス主部70の前方側に直線的に延出された構造のものであってもよい。
この場合、電装品配置部71とボックス主部70との接続箇所75を含む位置のキャビン室内側の側縁部分には、平面視で運転座席50から離れる方向に凹入する形状の凹入部S3は形成されなくなるが、運転座席50に近い側で各種のスイッチ操作具74が配設されている内側部分70Bの前端部76が電装品配置部71とボックス主部70との接続箇所75よりも機体後方側に位置していることで運転キャビン5の前方側における側部下方を覗き込み易くなる。
また、前記駐車ブレーキペダル84を、運転座席50に近い側で各種のスイッチ操作具74が配設されている内側部分70Bの前端部76よりも前方側に配設することで、座面50aよりも低い位置にあるサイドパネルボックス7の存在によって邪魔されることなく駐車ブレーキペダル84を踏み込み操作することができる。
尚、図示しないが、電装品配置部71が左右方向に向けられた計器表示部71aを備えて前記ボックス主部70の前端部から運転座席50の前方側へ延出されて、ボックス主部70と電装品配置部71との平面視での形状がL字状に屈曲した形状となるように形成されたものであってもよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0058】
〔別実施形態の6〕
操縦部を構成するサイドパネルボックス7は、実施の形態で示したように、電装品配置部71とボックス主部70との接続箇所75を含む位置のキャビン室内側の側縁部分に、平面視で運転座席50から離れる方向に凹入する形状の凹入部S3を形成したものに限らず、例えば、図16示すように、前記接続箇所75から前方側に離れた位置で、サイドパネルボックス7の電装品配置部71側に、平面視で運転座席50から離れる方向に凹入する形状の凹入部S3を形成してもよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0059】
〔別実施形態の7〕
操作ボックス6は、実施の形態で示したように、機体前方側の右前方側の支柱52a(フロントピラーに相当する)に支持させた構造のものに限らす、例えば、運転キャビン5の床面5Aから前記右前方側の支柱52aの近くに支持脚を立設して、その支持脚に操作ボックス6を支持させるようにしてもよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0060】
〔別実施形態の8〕
運転キャビン5の乗降用ドア55は、実施の形態で示したように、機体後方側のヒンジ55aを揺動支点として開閉作動するものい限らず、例えば前記ヒンジ55aを右前方側の支柱52aに設けて、機体前方側の揺動支点周りで開閉作動するように構成されたものであってもよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0061】
〔別実施形態の9〕
実施の形態では、乗降用ドア55に設けたドア窓55eや、運転キャビン5の左側面箇所に設けた横窓56aや、運転キャビン5の後側面箇所にに設けた後窓58aを、それぞれ一対の透明ガラス製の引き違い戸でスライド操作により開閉可能な構成としたが、このような構造に限らず、例えば、水平方向で揺動開閉自在、あるいは上下方向で揺動自在な構造によって構成してもよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0062】
〔別実施形態の10〕
乗降用ドア55のドア内面側に設けた内側把持部材55fとしては、実施の形態で示したような直線状のものに限らず、図17に示すように、運転座席50の近く位置で運転座席50側に近づくように屈曲した部分を備え、その運転座席50側に近づくように屈曲した部分にクッション材50d(肘掛け部に相当する)を装備させて肘掛けとして利用し易く構成してもよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るコンバインの構成は、実施の形態で示したような普通型コンバインに限らず自脱型コンバインにも適用可能であり、また、稲、麦等の穀物を収穫するコンバインに限らず、大豆などの豆類や菜種などを収穫するコンバインに適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
5 運転キャビン
6 操作ボックス
7 サイドパネルボックス
40 搬送用フィーダ
41 刈取部
50 運転座席
50a 座面
50c 乗降用取っ手
53 屋根部
54 フロントガラス
55 乗降用ドア
61 ステアリングレバー
72 変速レバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転キャビン内で運転座席の横側部にサイドパネルボックスを備えるとともに、操縦操作具を配備してあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転キャビン内で運転座席の横側部にサイドパネルボックスを備えるとともに、操縦操作具を配備してあるコンバインとしては、下記の[1]及び[2]に記載のものが存在する。
[1]運転座席の横側部にサイドパネルボックスを備え、運転座席の前方位置にステアリングハンドルを備えたコンバイン(特許文献1参照)。
[2]運転座席の横側部にサイドパネルボックスを備えるとともに、運転座席の前方側にフロントパネルを備え、そのフロントパネル上で、前記サイドパネルボックスとは反対側にステアリングレバーを備えたコンバイン(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−75634号公報(段落「0010」,図2,図4)
【特許文献2】特許第3685738号公報(段落「0015」,「0016」,「0017」,図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に記載の構造を有したコンバインでは、運転座席の直前方にステアリングハンドル及びその支持台が備えられて、運転座席の前方側の視界が遮られている。このため、運転中に操縦者が運転キャビン前側下方の視界、例えば、刈取部の駆動状況や刈取り跡を確認する際には、その刈取部や刈り跡の一部がステアリングハンドル及びその支持台に遮られて死角となる。操縦者が前記死角となる部分を確認するためには、体を前後左右に動かして前方下方を覗き込む必要があって、運転座席からの運転キャビンの前側下方の視認性が低下する虞がある。
【0005】
上記[2]に記載の構造を有したコンバインでは、操縦操作具としてのステアリングレバーがサイドパネルボックスが設けられた側とは反対側で運転座席の前方位置ではなく右側方に設けられている。このため、運転座席の前方を遮る位置にステアリングレバーは存在していないが、運転座席の前方側に横幅の広いフロントパネルが存在していて、前方側を塞がられた閉塞感があるとともに、運転座席に搭座した姿勢で運転キャビンの前側下方を視認することができない不便さがある。
【0006】
本発明は、運転座席からの運転キャビンの前側下方、及びサイドパネルボックスを設けた側の運転キャビンの側部下方の視認性の良いコンバインを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために講じた本発明におけるコンバインの技術手段では、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
〔解決手段1〕
運転キャビン内に運転座席を配備し、前記運転キャビン内の左右方向での一端側で前記運転座席の横一側方に走行用の変速レバーを配設したサイドパネルボックスを配置し、
前記運転座席よりも前記運転キャビン内における左右方向での他端側寄り箇所で、前記サイドパネルボックスとの間に間隔を隔てた位置にステアリングレバーを取り付けた操作ボックスを設け、
前記サイドパネルボックスを運転座席の座面よりも下側に配設し、前記ステアリングレバーの操作ボックスを前記運転座席の座面よりも上側に設けてあるとともに、
前記運転キャビンのフロントガラスを、前記運転キャビンの屋根部近くから前記サイドパネルボックスの上面よりも下方にわたる範囲に設けてあることを特徴とする。
【0008】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1で示した特徴構成によると、走行用の変速レバーを配設したサイドパネルボックスとステアリングレバーを取り付けた操作ボックスとが、運転座席が存在する箇所の両側において、運転キャビン内の一端側と他端側とに振り分けられて、互いに間隔を隔てて設けられていることにより、運転座席の前方側が開放されて圧迫感が少なく、運転座席を運転キャビン内の前方側へ寄せて配置しても良好な居住性の確保できる。
そして、このようにサイドパネルボックスと操作ボックスとが間に間隔を隔てて設けられていることと、運転キャビンのフロントガラスが屋根部近くから運転座席の座面よりも低いサイドパネルボックスの上面よりも下方にわたる範囲に設けてあることとにより、運転座席の前方側で操縦者の視界を遮るものを視界の外側寄りに移行させることができ、運転座席に搭座した状態での運転キャビンの前側下方に対する視認性を向上し得たものである。
【0009】
また、サイドパネルボックスを運転座席の座面よりも下側に配設し、ステアリングレバーの操作ボックスを運転座席の座面よりも上側に設けているので、ステアリング操作を運転座席に搭座した姿勢でも、少し腰を浮かせて前側を覗き込む姿勢でも操作し易い高さ位置で操作し得るととともに、運転座席の座面よりも低い位置にあるサイドパネルボックスの上面越しに、このサイドパネルボックスが存在する側の運転キャビンの側部下方をも目視し易くなる利点がある。
【0010】
〔解決手段2〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記ステアリングレバーを取り付けた操作ボックスは、前記運転座席よりも前記運転キャビンの乗降用ドアが設けられた側の横側方寄り箇所に設けてあることである。
【0011】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段2で示した特徴構成によると、運転座席よりも運転キャビンの乗降用ドアが設けられた側の横側方寄り箇所に操作ボックスを位置させることにより、その操作ボックスが運転座席に搭座する操縦者の機体前方側の視界を遮る虞が少なくなる。これによって、運転座席の前方側で操縦者の視界を遮る可能性がより一層少なくなり、運転座席に搭座した状態での運転キャビンの前側下方に対する視認性をより一層向上し得たものである。
【0012】
〔解決手段3〕
上記課題を解決するために講じた本発明の他の技術手段は、前記運転キャビンの乗降用ドアが設けられた前記運転座席の側の側部に乗降用取っ手を付設してあることである。
【0013】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記の解決手段3で示した構成によると、乗降用ドアを開けた状態で、乗降用ドアが設けられた側の運転座席の側部に存在する乗降用取っ手を把持して運転キャビンへ乗り込むことができるので、その乗り込み動作を楽に行い易くなる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る普通型コンバインの右側面図である。
【図2】本発明に係る普通型コンバインの左側面図である。
【図3】本発明に係る普通型コンバインの平面図である。
【図4】運転キャビンの右側面図である。
【図5】運転キャビンの正面図である。
【図6】運転キャビンの左側面図である。
【図7】運転キャビンの背面図である。
【図8】運転キャビンの横断平面図である。
【図9】運転キャビンの縦断正面図である。
【図10】図9におけるX−X線断面図である。
【図11】図9におけるXI−XI線断面図である。
【図12】運転キャビンの右前方のフロントピラー及び操作ボックス付近で、乗降用ドアを少し開いた状態を示す説明図である。
【図13】図12におけるXIII−XIII線断面図である。
【図14】別実施形態における運転キャビンの床面部分を示す概略断面図である。
【図15】別実施形態におけるサイドパネルボックス部分を示す概略平面図である。
【図16】別実施形態におけるサイドパネルボックス部分を示す概略平面図である。
【図17】別実施形態における内側把持部材付近を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用したコンバインの実施形態を図面の記載に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1乃至図3は本発明のコンバインの一例である普通型コンバインの全体を示している。
左右一対のクローラ式走行装置10を備えた機体フレーム11上に、脱穀装置2、穀粒タンク3、及び運転キャビン5を搭載した走行機体1の前部に、刈取搬送装置4を昇降操作自在に装備させて普通型コンバインが構成されている。前記機体フレーム11上では、図3に示すように、右前部に運転キャビン5が配設され、その後方側の右後部に穀粒タンク3が設けられ、その穀粒タンク3の左方側である左後部に脱穀装置2が配設されている。
【0016】
前記刈取搬送装置4は、前記脱穀装置2の前部から運転キャビン5の左横側方を通って前方へ延出された処理物搬送用のフィーダ40と、そのフィーダ40に対して被処理物を供給する刈取部41、及び刈取部41の上部で植立茎稈の穂先側を掻き寄せるリール装置42とを備えている。
前記刈取部41は、植立茎稈を刈り取るバリカン型の刈刃41aと、刈り取られることによって被処理物となった茎稈をフィーダ40の入り口部40a側へ向けて寄せ集めるための横送りオーガ41bとを備え、前記フィーダ40はチェーン式の掻き揚げコンベア40bを内装している。
したがって、倒伏状態の茎稈はリール装置42である程度掻き上げられ、刈刃41aで刈り取られた後、オーガ41bでフィーダ40の入り口部40aへ向けて搬送され、前記入り口40aに到達した茎稈(被処理物)が掻き揚げコンベア40bによってフィーダ40の底面に沿って掻き揚げ搬送され、脱穀装置2の前端部に投入される。
【0017】
前記刈取搬送装置4は、図2に示すように、機体フレーム11上の固定箇所に対して水平方向の横軸心x周りで上下揺動自在に枢支されていて、昇降用油圧シリンダ12を伸縮操作することで、刈取部41が地面に近接した刈取作業姿勢と、刈取部41が地面から所定高さまで上昇した非刈取作業姿勢とに姿勢変更自在に構成されている。
【0018】
前記脱穀装置2は、全稈投入型に形成されていて、前後方向に長い扱胴20を備えて脱穀処理し、被処理物中の塵埃を後方から排出するとともに、脱穀された穀粒を含む被処理物を穀粒タンク3へ送り込むように構成されている。
穀粒タンク3では、脱穀装置2側から送り込まれた穀粒を含む被処理物を一時的に貯留し、穀粒タンク3から穀粒排出用オーガ30を介して外部へ穀粒を含む被処理物が回収されるように構成されている。
【0019】
前記運転キャビン5の下部には、図6及び図7に示すようにエンジンルーム13が設けてあり、運転キャビン5内の運転座席50の後方下方に位置する状態でエンジン14、及びラジエータ15が左側から順に配設されている。
エンジンルーム13の右外側には、図4に示すように防塵カバー16を配設してあり、右外側から外気を吸引するラジエータ15が、吸気時に外部の塵埃等を吸入するのを防止するように構成してあり、ラジエータ15を通過した吸入外気はエンジン14を冷却したのち、エンジンルーム13の左側方(図7中の左側)へ排気されるように構成してある。
【0020】
〔運転キャビン〕
図4乃至図11に示すように、運転キャビン5は、機体フレーム11に固設された支持材11aによって支持された床板51の上面側に床面5Aを備えており、前記床板51の上側に四本の支柱52が立設され、その支柱52によって屋根部53が支持されている。
上記四本の支柱52のうち、機体前方側の左右一対の支柱52a,52b(フロントピラーに相当する)は、床板51の最下部の床面5Aから立設されているが、左右の後方側の支柱52c,52dは、床板51のうち、運転座席50の支持台及びボンネット隔壁を兼ねる床板上部51aから立設されている(図9乃至図11参照)。
【0021】
前記四本の支柱52のうち、機体前方側の左右一対の支柱52a,52b(フロントピラーに相当する)の間には、曲面ガラスで構成されたフロントガラス54が設けてある。
このフロントガラス54は前記床面5Aから屋根部53までの全範囲にわたって設けてあり、図10及び図11に示すように、前記床面5Aの前縁よりも前方側へ膨出させてあるとともに、フロントガラス54が、側面視で水平面に対する下方側部分の傾斜角度θ1よりも上方側部分での傾斜角度θ2が大きくなるように、下端側ほど後側に位置するように前側に凸状に湾曲した傾斜面に形成してある。
また、前記フロントガラス54は、平面視でも、図8に示すように、左右方向での中央部箇所が左右方向での両端部箇所よりも前方側へ膨出する突曲形状に形成してある。したがって、フロントガラス54は、単なる水平方向もしくは上下方向の何れかの軸線周りでの曲率を有した単曲面ではなく、上下方向と左右方向との互いに交差する複数の軸線周りでの曲率を有した複曲面によって構成されている。
【0022】
上記フロントガラス54の側面視での曲面形状は、図10及び図11に示すフロントガラス54の上端よりも少し下方側の位置が最も機体前方側に位置する最大前方突出位置Pとなるように、一定曲率の曲面で形成されたフロントガラス54の取付姿勢を定めたものであるが、このフロントガラス54の側面視での曲率は、一定曲率のものに限らず、例えば、下方側部分の曲率が上方側部分の曲率よりも大きいもの、あるいは、逆に下方側部分の曲率が上方側部分の曲率よりも小さいもの等を採用することも可能である。
上記のように、フロントガラス54の最大前方突出位置Pを、フロントガラス54の上端よりも少し下方側の位置としているのは、運転キャビン5の前方下方を覗き込むとき、操縦者の頭部を最大限フロントガラス54に近づける際に、この最大前方突出位置Pがフロントガラス54の上端と一致している場合よりも、少しでも前方に近づけられるからである。
【0023】
上記フロントガラス54の平面視での曲面形状は、左右方向の全体にわたって一定の曲率で形成されたものではなく、両端部箇所近くの曲率が中央部箇所近くの曲率よりも大きくなっており、中央部箇所では直線に近い緩やかな湾曲面となっている。
ただし、これはあくまでも一例であり、前記フロントガラス54の平面視での曲面形状を、左右方向の全体にわたって一定の曲率で形成したものを採用することも可能である。
【0024】
前記フロントガラス54の左右両端側に位置するところの、前記機体前方側の左右一対の支柱52a,52bは、前記フロントガラス54の横側端縁の形状に沿って、側面視でのフロントガラス54の前記傾斜面の傾斜と同様な傾斜を有した湾曲形状に形成されている。
つまり、この支柱52a,52bは、側面視で水平面に対する下方側部分の傾斜角度θ1よりも上方側部分での傾斜角度θ2が大きくなるように形成されたフロントガラス54の湾曲形状と同様に、下端側ほど後側に位置するように前側に凸状に湾曲した傾斜を有しており、前記運転キャビン5の床面5Aへの取付箇所よりも上部側が前方側に位置するように設けてある。
【0025】
前記フロントガラス54の左右両端側に位置するところの、前記機体前方側の左右一対の支柱52a,52bは、前記フロントガラス54の横側端縁の形状に沿って、側面視でのフロントガラス54の前記傾斜面の傾斜と同様な傾斜を有した形状に形成されている。
【0026】
運転キャビン5の横側面箇所のうち、右側面箇所では、右前方側の支柱52aと右後方側の支柱52cとの間が、操縦者が乗り降りするための乗降口として形成されており、この乗降口を開閉するための乗降用ドア55が右後方側の支柱52c側に設けたヒンジ55aを介して開閉操作自在に装着してある。
この乗降用ドア55の機体前方側の端縁は、前記フロントガラス54の傾斜面の傾斜と同様な傾斜を有した右前方側の支柱52aの湾曲形状に沿った端縁形状に形成してあり、この端縁部分では、下端側よりも上端側が大きく前方側へ張り出している。
【0027】
この乗降用ドア55は、図4に示すように、外周枠55bを上下方向での中間位置で横切るように掛け渡された横桟部材55cを境にして、下方側が一枚物の透明ガラス55dによって構成され、上方側は前後一対の透明ガラス製の引き違い戸でスライド操作により開閉可能に構成されたドア窓55eとなっている。
上記横桟部材55cの上下方向の高さ位置は、運転キャビン5内の運転座席50の座面50aよりも高く、後述する操作ボックス6の上面よりも低い高さ位置に設定してある。
そして、この横桟部材55cのドア内面側には、図8及び図9に示すように、運転キャビン5の室内側から乗降用ドア55を開閉操作する際に把持する内側把持部材55fを備えてある。尚、図4及び図5図中の符号55gは、外方側から開閉操作する際に用いる取っ手であり、運転キャビン5の機体前方側の支柱52aに沿った傾斜姿勢で取り付けてある。
【0028】
運転キャビン5の横側面箇所のうち、左側面箇所では、図6に示すように、左横側壁56の一部に、左前方側の支柱52bと左後方側の支柱52dとの間で、かつ横側面箇所の上下方向の中間位置から上方側に、前後一対の透明ガラス製の引き違い戸でスライド操作により開閉可能に構成された横窓56aが設けてある。
この引き違い戸で構成された開閉可能な横窓56aは、下端側が前記乗降用ドア55の横桟部材55cの上下方向高さと同様に、運転キャビン5内の運転座席50の座面50aよりも高く、後述する操作ボックス6の上面よりも低い高さ位置に設定してあり、上端側は屋根部53の下縁に達する上下方向高さ位置に設定してある。
【0029】
運転キャビン5の側面部分のうち、前記乗降用ドア55が設けられた右側面箇所の前記乗降用ドア55よりも後方側の部分から、後側面箇所に至る箇所には、図4及び図8に示すように、右後方側の支柱52cよりも後方側の右側面箇所の前記乗降用ドア55よりも後方側の部分から、後側面箇所に至る箇所にわたって、運転キャビン5の右後方の角部相当箇所を見通し可能な透明ガラスを嵌め込んで、開閉不能な固定窓57を構成してある。この固定窓57及び固定窓57が取り付けられた運転キャビン5の右後方角部の外壁は、図8に示すように湾曲した形状に形成されている。
また、運転キャビン5の後面側箇所では、図7、図8、及び図11に示すように、後壁58の一部に、前記固定窓57が形成された箇所よりも左側で、かつ、運転座席50のシートバック50bの上端よりも上方側から屋根部53の下縁にわたって、左右一対の透明ガラス製の引き違い戸でスライド操作により開閉可能に構成された後窓58aが形成されている。
【0030】
前記四本の支柱52によって支持される屋根部53は、図4乃至図6に示されるように、その前面側部分がフロントガラス54の上端部よりも前方側に突出した状態で設けてあり、この前面側部分で左右の端部と、その端部に近い位置とに、刈取部41及び刈取部41の前方を照らす前照灯53aが四基取り付けられている。
【0031】
前記運転キャビン5の床面5Aは、平面視におけるフロントガラス54の下端縁の形状が、図8に示すように、左右方向での中央部箇所が左右方向での両端部箇所よりも前方側へ膨出する突曲形状であることから、その前縁形状が、フロントガラス54の下端縁の形状に沿って、左右方向での中央部箇所が左右方向での両端部箇所よりも前方側へ膨出する突曲形状に形成されている。
そして、その床面5Aの前縁近くには、図8乃至図11に示すように、床面5Aの少し上方に位置するように足置き部51bを設けてある。この足置き部51bは、床面5Aに対して左右両端側のステー51cを介して、機体前方側が高く後方側が低い傾斜姿勢で取り付けてあり、運転座席50の直前方に位置して、運転座席50の座面50aの左右方向幅と同程度、もしくは少し短い程度の左右方向幅を有している。
また、前記足置き部51bは、機体前方側の左右一対の支柱52a,52b(フロントピラーに相当する)の下端位置よりも、当該足置き部51bの少なくとも前辺部分が前方側に位置するように、床面5Aの前縁の中央部箇所が左右方向での両端部箇所よりも前方側へ膨出する突曲形状の前記前縁の中央部箇所で、その前縁に近接させて位置させることにより、できるだけ前方側に配設してある。
これによって、運転座席50も相対的に前方側へ寄せて配設することが可能となり、運転キャビン5の前方下方を覗き込む際に有利である。
【0032】
図4乃至図6、及び図8に示すように、前記運転キャビン5の乗降用ドア55を設けた側の横側面箇所の前側で、前記右前方側の支柱52aに対してキャビンガード59を連設してある。このキャビンガード59は、側面視でフロントピラーである右前方側の支柱52aの湾曲形状に沿って湾曲した形状の金属製パイプ材によって形成されていて、前記右前方側の支柱52aの下端部近くと上端部近くとにボルト連結されている。
そして、キャビンガード59は、前記右前方側の支柱52aに対して、横外方側に所定間隔を隔てて位置する第1棒状ガード部59aと、さらにその第1棒状ガード部59aの前方側へ所定間隔を隔てて位置する第2棒状ガード部59bとを有して構成されている。
このキャビンガード59は、その第1棒状ガード部59a、及び第2棒状ガード部59bが、前記乗降用ドア55を開放して操縦者が乗り降りする際に、手摺りとして把持しながら乗り降りすることが可能であるように十分な強度を有して、掴みやすい位置に設けてある。
【0033】
上記のように構成されたキャビンガード59に対して、図4及び図5に示すように、ウインカー80が、左右方向で前記右前方側の支柱52aと第1棒状ガード部59aとの間に位置し、前後方向で第1棒状ガード部59aと第2棒状ガード部59bとの間に位置し、かつ、上下方向で乗降ドア55の取っ手55gよりも下方に位置する状態で第1棒状ガード部59aに装着してある。
また、上記のキャビンガード59に対しては、図4及び図5に示すように、バックミラー81が、前記第2棒状ガード部59bの横外側で、かつ、上下方向では運転座席50のシートバック50bの上端と同程度、もしくはそれよりも高い位置に位置するように取り付けてある。
さらに前記キャビンガード59の第1棒状ガード部59aの上端部箇所には、アンテナ82が上方に向けて延出した状態で取り付けてある。
図5に示すように、フロントガラス54の上部外面には、ワイパー83が配設されている。
【0034】
〔操縦部の構造〕
図8に示すように、操縦部である運転キャビン5の内部では、運転座席50が左右方向でのほぼ中央に配設してあるとともに、前記運転座席50の右前方側にステアリング操作等を行うための操作ボックス6が設けられ、左側に変速操作等を行うためのサイドパネルボックス7が設けられている。
【0035】
運転座席50は、座面50aとシートバック50bとを備えている。また、この運転座席50の右横側部には、図4、図8、及び図10に示すように、乗降用ドア55を開放して運転キャビン5内に乗り込む際に、操縦者が掴んで身体を引き上げながら機上へ上がる際の補助として用いることができるように乗降用取っ手50cを設けてある。
この乗降用取っ手50cは、図8及び図10に示すように、運転キャビン5内の床板上部51bにおける運転座席50の搭載箇所とその背部側に立設されている箇所とにわたって設けられた側面視で逆L字型の取付部材51dに対して取り付けられた側面視でコの字状の部材によって構成してある。
【0036】
〔操作ボックス〕
運転キャビン5の右横側端部に設けられる操作ボックス6は、図8及び図12に示されるように、ボックス本体60の上面側にステアリングレバー61、コンビネーションスイッチ62、及びキースイッチ63が装備されている。そしてこの操作ボックス6のボックス本体60が、運転座席50の右前方側で、運転キャビン5の乗降用ドア55が設けられた側である右前方側の支柱52aに対して、取付部材6aを介して片持ち状に固定支持されている。
この操作ボックス6は、そのボックス本体60が支柱52aに支持された状態で、平面視でボックス本体60の前側に、運転キャビン5の左右方向での端部側ほど前方寄りで運転キャビン5の左右方向での中央側ほど後方寄りとなるように傾斜した前面60aを備え、後側にも、平面視で運転キャビン5の左右方向での端部側ほど前方寄りで運転キャビン5の左右方向での中央側ほど後方寄りとなるように傾斜した傾斜後面60bを備えている。
これによって、運転座席50に搭座した操縦者がボックス本体60を見たときのボックス本体60の水平方向幅が短く見えるようになる。つまり、平面視で操縦者の存在位置となる運転座席50の座面50aの中央を視点としたボックス本体60への投影線の方向に沿うように前記前面60a及び傾斜後面60bが傾斜しているので、このような傾斜した面を備えていない単なる矩形のものでボックス本体60を形成した場合に比べて、水平方向での幅が短く見えるようになる。
また、前記ボックス本体60の上面側に設けられるステアリングレバー61とコンビネーションスイッチ62とは、前記ステアリングレバー61が運転座席50に近く、後方側寄りに位置し、前記コンビネーションスイッチ62が前記ステアリングレバー61よりも遠く前方側寄りに設けられている。
前記操作ボックス6の取付位置は、図5,9,11に示すように、運転座席50の座面50aよりも高い位置で、かつ、前記乗降用ドア55の室内側に取り付けられた内側把持部材55fよりも少し高い位置にボックス本体60の上面が位置するように設けてある。
また、この操作ボックス6の平面視での位置は、図8に示されているように、操作ボックス6に設けてある操向操作用のステアリングレバー61が、運転座席50の前方よりも少し右外側に外れて位置している。
【0037】
そして、前記操作ボックス6は、図4及び図11に示されるように、側面視で運転キャビン5の右前方側の支柱52aの下端よりも機体前方側に位置するように配設されている。したがって、運転キャビン5への乗降時には、前記運転キャビン5の右前方側の支柱52aの下端よりも機体後方側に存在する運転キャビン5内の床面5Aの上方に存在する領域に対して乗り降りするものであるところの操縦者が、前記領域から外れた前方側に設けてある操作ボックス6に接触する可能は少なくて済む。
【0038】
前記操作ボックス6は、側面視で運転キャビン5の右前方側の支柱52aの下端よりも機体前方側に位置するものであるが、図8及び図11に示されるように、フロントガラス54に対しては、そのフロントガラス54との間に間隔を隔てて設けてある。これは、操作ボックス6の上側に設けられるステアリングレバー61が前後左右に揺動操作された場合に、その前方側への揺動範囲を十分に確保して支障なく揺動操作を行えるようにするためのものである。
【0039】
操向操作用のステアリングレバー61は、前後左右の十字方向に揺動操作が可能であるようにボックス本体60に支持させてある。そして、ステアリングレバー61の操作位置は、ボックス本体60に内装されている図示しない位置検出体によって検出されるものであり、ステアリングレバー61の操作位置をリンク機構などの機械的連係機構で操向機構などに連係させるような構造のものではなく、ボックス本体60内の各機器は導電線や信号線からなるハーネス66を介して連係対象の装置と連係されている。
【0040】
上記のステアリングレバー61を右方向に揺動操作すると、ボックス本体60に内装されている図示しない位置検出体の検出結果に基づいて、クローラ式走行装置10が右方向に旋回するように操向操作され、ステアリングレバー61を左方向に揺動操作すると、ボックス本体60に内装されている図示しない位置検出体の検出結果に基づいて、クローラ式走行装置10が左方向に旋回するように操向操作される。
また、ステアリングレバー61を前方に揺動操作すると、ボックス本体60に内装されている図示しない位置検出体の検出結果に基づいて、フィーダ40及び刈取部41が、ステアリングレバー61の操作位置に対応した速度で下降する。同様に、ステアリングレバー61を後方に揺動操作すると、フィーダ40及び刈取部41が、ステアリングレバー61の操作位置に対応した速度で上昇する。中立位置からの揺動操作量が多い程、下降速度または上昇速度が速くなる。ステアリングレバー61の揺動操作を止めて中立位置に保持すると、フィーダ40及び刈取部41はその位置で停止する。
【0041】
前記操作ボックス6に装備されているコンビネーションスイッチ62は、図8及び図12に示すように、中央の押しボタン62aを押すことで警報用のフォーンを鳴らし、押しボタン62aの周部に備えたレバー62bを回動操作することで前照灯53aの入り切り操作を行うように構成されている。
さらに前記操作ボックス6には、キーを差し込んでエンジン14を始動及び停止可能なスタータスイッチを操作するためのキースイッチ63も装備されている。
【0042】
図12及び図13に示すように、前記操作ボックス6に導入される導電線、及び信号線などのハーネス66は、運転キャビン5の右前方側の支柱52aに沿って、その支柱52aとは別個に運転キャビン内部に配設されたハーネスカバー64に内装されている。
したがって、ハーネス66の配線や点検等の必要が生じた場合には、前記支柱52aを分解するような作業を要さず、ハーネスカバー64を着脱あるいは分解することで簡単に内部のハーネス66に対する作業を行うことができる。
【0043】
図11乃至図13に示すように、運転キャビン5の右前方側の支柱52aには、前記ボックス本体60の下方側に位置させて、乗降用ドア55のキャビン室内側に装備されたロック装置55hが係脱するためのドアキャッチャ65を設けてある。このドアキャッチャ65は、側面視で運転キャビン5の右前方側の支柱52aの下端よりも機体前方側で、かつ、前記ボックス本体60の後端よりも機体前方側に位置するように設けられている。
したがって、運転キャビン5への乗降時には、前記運転キャビン5の右前方側の支柱52aの下端よりも機体後方側に存在する運転キャビン5内の床面5Aの上方に存在する領域に対して乗り降りするものであるところの操縦者が、前記領域から外れた前方側に設けてある操作ボックス6のボックス本体60の後端よりもさらに機体前方側に位置するドアキャッチャ65に接触する可能は少なくて済む。
【0044】
〔サイドパネルボックス〕
運転キャビン5内での運転座席50の左横側部には、図8乃至図10に示すようにサイドパネルボックス7が設けられている。
このサイドパネルボックス7は、図9及び図10に示すように、その上面が前記運転座席50の座面50aよりも低く形成されているとともに、走行用の主変速レバー72(変速レバーに相当する)等が配設されたボックス主部70と、前記ボックス主部70の前端側に位置して電装品が配設された電装品配置部71とを備えている。
さらに前記ボックス主部70では、前記運転座席50から遠い側で走行用の主変速レバー72や副変速レバー73などの各種レバー類が配設された外側部分70Aと、運転座席50に近い側で各種のスイッチ操作具74が配設されている内側部分70Bとを備えている。前記主変速レバー72及び副変速レバー73などの各種レバー類の握り部は前記座面50aよりも高い位置にあるように取り付けられている。
【0045】
前記電装品配置部71では、通常の刈取脱穀作業中に目視する頻度の高い計器類を備えた計器表示部71aが樹脂製のケースに収容された状態で設けてあり、メータパネルとして機能するものであり、前記ボックス主部70の機体前方側の端部に一体的に取り付けてある。
前記計器表示部71aでは、例えば、中央部に実際の作業車速を表示する作業速度計やエンジン回転数からの負荷を表示する負荷表示メータなどが設けられ、その両側には、例えばエンジン回転計や燃料計が設けられている。
この電装品配置部71は、各種計器部分を液晶などの画像表示手段で表示するようにしたものであってもよい。
【0046】
図6及び図10に示されるように、前記電装品配置部71は、上下方向厚みが前記ボックス主部70と比べると薄いものであり、上面はボックス主部70と同一平面上にあるようにボックス主部70の前端上部から斜め右方前方側へ片持ち状に連設されている。
したがって、電装品配置部71の下面と運転キャビン5の床面5Aとの間には上下方向での間隔が生じ、また、ボックス主部70の前端縁70aと前方のフロントガラス54の内面との間にも前後方向での間隔が生じている。つまり、前記電装品配置部71の下側に相当する箇所には、運転座席50側からサイドパネルボックス7が存在する側の運転キャビン5の側部下方を目視可能な開放空間S1が形成されている。
前記ボックス主部70の前端縁70aは、図6及び図10に示されるように、フロントガラス54の内面の傾斜に沿って、下方側ほど機体後方側に位置するように傾斜する形状に形成されている。
【0047】
前記ボックス主部70の前端部から延出される電装品配置部71は、図8及び図10に示されるように、前記フロントガラス54の両端側に位置する機体前方側の左右一対の支柱52a,52bの下端、及び運転キャビン5の床面5Aの前縁よりも機体前方側へ延出されていて、かつ平面視でフロントガラス54の背面に沿うように屈曲形成され、延出端側が運転座席50の前方側(斜め右方前方側)へ向かうように屈曲した形状となっている。
前記電装品配置部71は、平面視で運転座席50に近い後方側が直線的な側縁を有し、フロントガラス54に近い前方側がフロントガラス54の内面形状に近い湾曲した側縁を備えている。
これによって、前記電装品配置部71を、例えば、その計器表示部71aで各種計器部分が機体前後方向に並べて配設してある構造のものに比べ、前記計器表示部71aでの各種計器部分がフロントガラス54の背面に沿う方向で並ぶ状態となる。このため、前述のように各種計器部分が機体前後方向に並ぶ構造のものに比べ、運転座席50から各計器部分が配置されている箇所までの距離の差を少なくし得て、機体前方側に位置するものほど運転座席50からの距離が遠くなって見難いというような不具合を招くことなく、目視し易くなる利点がある。
それでいて、前記電装品配置部71はボックス主部70側から片持ち状で延出され、電装品配置部71の下側には前記開放空間S1が存在し、電装品配置部71の下側に前方視界を遮るものが存在していないので、運転座席50側から電装品配置部71の下側を通して運転キャビン5の前方側の側部下方を目視し易いものである。
【0048】
前記ボックス主部70では、運転座席50から遠い側の外側部分70Aに、機械的連係機構(図示せず)を介して各種関連装置(図外)に連係される走行用の主変速レバー72や副変速レバー73などの各種レバー類を配設してあり、その外側部分70Aよりも運転座席50に近い側の内側部分70Bに、機械的連係機構を用いずに電気的に各種関連機器と接続される各種のスイッチ操作具74が配設されている。
そして、図8、9、及び図10に示すように、前記外側部分70Aは運転キャビン5の床板51から立設された箱状に形成されているものであるが、前記内側部分70Bは、外側部分70Aの上部から運転座席50側に張り出すように膨出形成してあり、その内側部分70Bの下方側には、前記運転座席50から離れる方向に凹入するに凹入空間S2を設けてある。
【0049】
上記外側部分70Aに設けられる主変速レバー72や副変速レバー73などの各種レバー類は、図5及び図9に示すように、その握り部近くが、運転キャビン5の左側面箇所の左横側壁56、もしくは横窓56aから離れて運転座席50が存在する側へ近づくように傾斜させてある。
つまり、前記外側部分70Aの上面のレバーガイドから上向きに突出した主変速レバー72のレバー基部が前方右方に屈曲し、前記外側部分70Aの上面のレバーガイドから上向きに突出した副変速レバー73などのレバー基部が運転座席50側に屈曲している。
【0050】
前記内側部分70Bは、図8に示すように、その機体前方側の前端部76が、前記外側部分70Aと、これに接続される電装品配置部71との接続箇所75よりも機体後方側に位置するように形成されている。また、前記内側部分70Bの前端部76は、運転座席50側ほど後方に位置する傾斜している。
これによって、前記内側部分70Bの前端部76と前記電装品配置部71の内向きの側縁との間で、電装品配置部71とボックス主部70との接続箇所75を含んでその前後に位置するキャビン室内側の側縁部分に、平面視で運転座席50から離れる方向に凹入する形状の凹入部S3が形成されている。
このように、電装品配置部71とボックス主部70との接続箇所75を含む位置のキャビン室内側の側縁部分に凹入部S3が形成されたことで、電装品配置部71やボックス主部70よりも高い位置である運転座席50に塔座している操縦者の視点から、運転キャビン5の前方側の側部下方をさらに目視し易くすることができる。
【0051】
また、前記凹入部S3が形成された箇所と平面視で重合する運転キャビン5の床面5A上には、図8乃至図10に示すように、駐車ブレーキペダル84が配設されている。
これによって、運転座席50に搭座する操縦者が駐車ブレーキペダル84を踏み込む際に、運転座席50の座面50aよりも低い位置にあるサイドパネルボックス7の存在によって邪魔されることなく、前記凹入部S3に脚部を入り込ませた状態で駐車ブレーキペダル84を踏み込み操作することができる。
【0052】
上記のように構成された普通型コンバインでは、フロントガラス54が単なる扁平ガラスではなく、水平面に対して下方側部分よりも上方側部分での傾斜角度が大きい傾斜面を有した湾曲形状に形成されているので、運転キャビン5の室内側から前方下方の覗き込みを良好に行うことができ、かつ、運転キャビン5内で運転座席50の左側に配設されるサイドパネルボックス7の前部に位置する電装品配置部71と運転キャビン5の床面5Aとの間に開放空間S1を形成して、図8に示すように運転座席5から左右方向の視野β1を、前記開放空間S1が形成されない場合の視野β2に比べて広く確保することができる。
これによって、図3に示すように、刈取搬送装置4の刈取部41における右端(既刈り側)で、運転キャビン5と刈取部41との間から刈取装置4の通過後における地面の刈り残しの有無を見るための一つのチェックポイントCP1、及び、刈取部41からフィーダ40への受け継ぎ箇所での受け継ぎ状態が良好であるか否かを確認するための他のチェックポイントCP2での目視を行い易くなったものである。
【0053】
〔別実施形態の1〕
フロントガラス54は、実施の形態で示したように、上下方向と左右方向との互いに交差する複数の軸線周りでの曲率を有した複曲面によって構成されたものに限らず、例えば水平方向の軸線周りでの曲率を有した単曲面で構成されたものであってもよい。
この場合、運転キャビン5の床面5Aの前端縁は直線形状になるが、機体前方側の左右一対の支柱52a,52b(フロントピラーに相当する)は、フロントパネル54の左右方向の両端縁形状に沿って、側面視で水平面に対する下方側部分の傾斜角度θ1よりも上方側部分での傾斜角度θ2が大きくなるように湾曲した形状となるように形成すればよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0054】
〔別実施形態の2〕
フロントガラス54は、実施の形態で示したように、上下方向と左右方向との互いに交差する複数の軸線周りでの曲率を有した複曲面によって構成されたもの、あるいは単曲面で形成されたものに限らず、例えば、側面視で水平面に対する下方側部分の傾斜角度θ1よりも上方側部分での傾斜角度θ2が大きい屈折形状となるように、複数の扁平ガラスを組み合わせて形成してもよい。
この場合も、運転キャビン5の床面5Aの前端縁は直線形状になるが、機体前方側の左右一対の支柱52a,52b(フロントピラーに相当する)は、フロントパネル54の左右方向の両端縁形状に沿って、側面視で水平面に対する下方側部分の傾斜角度θ1よりも上方側部分での傾斜角度θ2が大きくなるように屈折した形状となるように形成すればよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0055】
〔別実施形態の3〕
上記実施形態では、フロントガラス54を屋根部53から床面5Aに達する範囲に設けたものであるが、これに限られるものではなく、例えば、フロントガラス54の下端が運転座席50の座面50aよりも下側で前記床面5Aよりも高い位置にまで達する範囲としてもよい。
この場合、フロントガラス54の下端が床面5Aに達する範囲にまで設けたものに比べれば運転キャビン5の前方下方側の視野は狭くなるが、フロントガラス54が単なる扁平ガラスではなく、側面視で水平面に対する下方側部分の傾斜角度θ1よりも上方側部分での傾斜角度θ2が大きくなるような傾斜を有したものであることによって、運転座席50を運転キャビン5内でかなり前方側へ配設できるものであるから、フロントガラス54が着座した操縦者の腰部付近にまでしか達していないような構造のものと比べて、運転キャビン5の前方下方側の視野をかなり大きく確保して、運転キャビン5の直前の下方に近い側まで操縦者は視線を落とすことができる。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0056】
〔別実施形態の4〕
運転キャビン5内に配設される足置き部51bとしては、実施の形態で示したように、床面5Aの上に別途足置き用の部材を取り付けた構造のものに限らず、図14に示すように、運転キャビン5の床面5Aの前端部に、前上がりに傾斜した部分を設けることによって足置き部51bを形成してもよい。その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0057】
〔別実施形態の5〕
操縦部を構成するサイドパネルボックス7の電装品配置部71は、実施の形態で示したように、平面視でフロントガラス54の背面に沿うように屈曲形成され、延出端側が運転座席50の前方側(斜め右方前方側)へ向かうように屈曲した形状のものに限らず、例えば、図15に示すように、サイドパネルボックス7の電装品配置部71はボックス主部70の前方側に直線的に延出された構造のものであってもよい。
この場合、電装品配置部71とボックス主部70との接続箇所75を含む位置のキャビン室内側の側縁部分には、平面視で運転座席50から離れる方向に凹入する形状の凹入部S3は形成されなくなるが、運転座席50に近い側で各種のスイッチ操作具74が配設されている内側部分70Bの前端部76が電装品配置部71とボックス主部70との接続箇所75よりも機体後方側に位置していることで運転キャビン5の前方側における側部下方を覗き込み易くなる。
また、前記駐車ブレーキペダル84を、運転座席50に近い側で各種のスイッチ操作具74が配設されている内側部分70Bの前端部76よりも前方側に配設することで、座面50aよりも低い位置にあるサイドパネルボックス7の存在によって邪魔されることなく駐車ブレーキペダル84を踏み込み操作することができる。
尚、図示しないが、電装品配置部71が左右方向に向けられた計器表示部71aを備えて前記ボックス主部70の前端部から運転座席50の前方側へ延出されて、ボックス主部70と電装品配置部71との平面視での形状がL字状に屈曲した形状となるように形成されたものであってもよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0058】
〔別実施形態の6〕
操縦部を構成するサイドパネルボックス7は、実施の形態で示したように、電装品配置部71とボックス主部70との接続箇所75を含む位置のキャビン室内側の側縁部分に、平面視で運転座席50から離れる方向に凹入する形状の凹入部S3を形成したものに限らず、例えば、図16示すように、前記接続箇所75から前方側に離れた位置で、サイドパネルボックス7の電装品配置部71側に、平面視で運転座席50から離れる方向に凹入する形状の凹入部S3を形成してもよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0059】
〔別実施形態の7〕
操作ボックス6は、実施の形態で示したように、機体前方側の右前方側の支柱52a(フロントピラーに相当する)に支持させた構造のものに限らす、例えば、運転キャビン5の床面5Aから前記右前方側の支柱52aの近くに支持脚を立設して、その支持脚に操作ボックス6を支持させるようにしてもよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0060】
〔別実施形態の8〕
運転キャビン5の乗降用ドア55は、実施の形態で示したように、機体後方側のヒンジ55aを揺動支点として開閉作動するものい限らず、例えば前記ヒンジ55aを右前方側の支柱52aに設けて、機体前方側の揺動支点周りで開閉作動するように構成されたものであってもよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0061】
〔別実施形態の9〕
実施の形態では、乗降用ドア55に設けたドア窓55eや、運転キャビン5の左側面箇所に設けた横窓56aや、運転キャビン5の後側面箇所にに設けた後窓58aを、それぞれ一対の透明ガラス製の引き違い戸でスライド操作により開閉可能な構成としたが、このような構造に限らず、例えば、水平方向で揺動開閉自在、あるいは上下方向で揺動自在な構造によって構成してもよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0062】
〔別実施形態の10〕
乗降用ドア55のドア内面側に設けた内側把持部材55fとしては、実施の形態で示したような直線状のものに限らず、図17に示すように、運転座席50の近く位置で運転座席50側に近づくように屈曲した部分を備え、その運転座席50側に近づくように屈曲した部分にクッション材50d(肘掛け部に相当する)を装備させて肘掛けとして利用し易く構成してもよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るコンバインの構成は、実施の形態で示したような普通型コンバインに限らず自脱型コンバインにも適用可能であり、また、稲、麦等の穀物を収穫するコンバインに限らず、大豆などの豆類や菜種などを収穫するコンバインに適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
5 運転キャビン
6 操作ボックス
7 サイドパネルボックス
40 搬送用フィーダ
41 刈取部
50 運転座席
50a 座面
50c 乗降用取っ手
53 屋根部
54 フロントガラス
55 乗降用ドア
61 ステアリングレバー
72 変速レバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転キャビン内に運転座席を配備し、前記運転キャビン内の左右方向での一端側で前記運転座席の横一側方に走行用の変速レバーを配設したサイドパネルボックスを配置し、
前記運転座席よりも前記運転キャビン内における左右方向での他端側寄り箇所で、前記サイドパネルボックスとの間に間隔を隔てた位置にステアリングレバーを取り付けた操作ボックスを設け、
前記サイドパネルボックスを運転座席の座面よりも下側に配設し、前記ステアリングレバーの操作ボックスを前記運転座席の座面よりも上側に設けてあるとともに、
前記運転キャビンのフロントガラスを、前記運転キャビンの屋根部近くから前記サイドパネルボックスの上面よりも下方にわたる範囲に設けてあるコンバイン。
【請求項2】
前記ステアリングレバーを取り付けた操作ボックスは、前記運転座席よりも前記運転キャビンの乗降用ドアが設けられた側の横側方寄り箇所に設けてある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記運転キャビンの乗降用ドアが設けられた側の前記運転座席の側部に乗降用取っ手を付設してある請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項1】
運転キャビン内に運転座席を配備し、前記運転キャビン内の左右方向での一端側で前記運転座席の横一側方に走行用の変速レバーを配設したサイドパネルボックスを配置し、
前記運転座席よりも前記運転キャビン内における左右方向での他端側寄り箇所で、前記サイドパネルボックスとの間に間隔を隔てた位置にステアリングレバーを取り付けた操作ボックスを設け、
前記サイドパネルボックスを運転座席の座面よりも下側に配設し、前記ステアリングレバーの操作ボックスを前記運転座席の座面よりも上側に設けてあるとともに、
前記運転キャビンのフロントガラスを、前記運転キャビンの屋根部近くから前記サイドパネルボックスの上面よりも下方にわたる範囲に設けてあるコンバイン。
【請求項2】
前記ステアリングレバーを取り付けた操作ボックスは、前記運転座席よりも前記運転キャビンの乗降用ドアが設けられた側の横側方寄り箇所に設けてある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記運転キャビンの乗降用ドアが設けられた側の前記運転座席の側部に乗降用取っ手を付設してある請求項1又は2記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−100603(P2012−100603A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253188(P2010−253188)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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