説明

コンバイン

【課題】コンバインにおける、サンバイザーをより安定的に支持することができる支持構造を提供することを課題とする。
【解決手段】エンジンルーム10の上方に座席シート12が配置され、当該座席シート12の後方にグレンタンク8が配置され、座席シート12の上方にサンバイザー20が配置されるコンバインにおいて、サンバイザー20を支持する支柱21L・21Rが、座席シート12とグレンタンク8との間に立設され、支柱21L・21Rの下端がエンジンルーム10を成す構造体(本実施形態ではフレーム14)により支持され、支柱21L・21Rの上下中途部がグレンタンク8により支持される構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンバインに関し、より特定的には、座席シートの上方に配置されるサンバイザーであって、座席シートに着座したオペレーターを日差しから守るサンバイザー(日除け)の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オペレーターが着座する座席シートの上方にサンバイザーが配置されているコンバインが公知となっている。例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のコンバインにおいては、サンバイザーが支持アーム(支柱に相当)により支持されている。当該支持アームの下端は、グレンタンクの前上部により支持されている。
一方、特許文献2に記載のコンバインにおいては、サンバイザーが支柱により支持されている。当該支柱の下端は、座席シートの下方の構造体(例えばエンジンルームのフレーム等)により支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−297277号公報
【特許文献2】実開平4−28036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、これらの文献に記載のコンバインは、いずれも、支柱(支持アーム)をその下端の一点で支持する構成であった。そのため、一般的に前方に大きく張り出した形状を有するサンバイザーを支持するための支持構造としては、その強度が必ずしも充分とはいえなかった。
【0006】
本発明は、上記を考慮して、サンバイザーをより安定的に支持することができる支持構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
請求項1の発明は、エンジンルームの上方に座席シートが配置され、当該座席シートの後方にグレンタンクが配置され、前記座席シートの上方にサンバイザーが配置されるコンバインにおいて、前記サンバイザーを支持する支柱が、前記座席シートと前記グレンタンクとの間に立設され、前記支柱の下端が前記エンジンルームを成す構造体により支持され、前記支柱の上下中途部が前記グレンタンクにより支持されることを特徴としている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記支柱の上下中途部は、連結構造を介して前記グレンタンクに着脱可能に連結され、前記支柱の上下中途部を前記グレンタンクに連結した状態においては、前記連結構造により前記グレンタンクが側方に回動しないことを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2に記載のコンバインにおいて、前記連結構造は、左右一対の前記支柱の間に架け渡されるフレームと、基端部が前記グレンタンクに回動可能に支持されたアームと、当該アームの先端部に固定され、前記フレームに係合可能なステーと、前記フレームと前記ステーとの係合状態を保持する固定具と、を具備することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、支柱を、エンジンルームを成す構造体と、グレンタンクと、の両方により支持することができるので、サンバイザーの支柱を強固に支持することができる。よって、サンバイザーを支柱により安定的に支持することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、支柱とグレンタンクとを連結構造によって連結することにより、グレンタンクの側方への回動を確実に防止することができる。また、連結構造に、支柱をグレンタンクに支持する機能と、グレンタンクが側方へと回動しないようにする機能と、の両方の機能を付与することができる。
【0014】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、アームを回動させて、ステーをフレームに係合させて、その係合状態を固定具を用いて保持することで、前記支柱の上下中途部を前記グレンタンクに連結することができる。このような簡単な操作によって、支柱とグレンタンクとを強固に連結することができ、また、当該連結状態を解除する操作も簡単である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の一形態に係るコンバインの全体的な構成を示す右側面図である。
【図2】サンバイザーの支持構造の構成を示す左側面図であり、刈取部、脱穀部、及び選別部等を取り払ったときの状態を示す図である。
【図3】(a)は支柱の下端をエンジンルームのフレームに取り付けるための取付構造の構成を示す後方斜視図である。(b)は当該取付構造の分解説明図である。
【図4】支柱の上下中途部をグレンタンクに連結するための連結構造の構成を示す後方斜視図である。
【図5】前記連結構造の構成を示す左側面図である。図中の二点鎖線は、支柱とグレンタンクとの連結を解除したときの、アームの回動状態を示している。
【図6】前記連結構造におけるステーとフレームとの係合部分の詳細な構成を示す左側面断面図である。
【図7】サンバイザーを支柱の上端部に取り付けるためのサンバイザー取付構造の構成を示す後方斜視図である。
【図8】サンバイザーの回動範囲を示す左側面部分断面図であり、図中の二点鎖線は、最も上方又は下方まで回動したときのサンバイザーの位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0017】
始めに、本発明の実施の一形態に係るコンバイン1の全体的な構成について、図1を参照して説明する。なお、以下では、図中の矢印Fで示す方向すなわちコンバイン1の前進方向を「前方」と定義し、矢印Uで示す方向すなわち鉛直上方を「上方」と定義し、矢印「L」で示す方向すなわち前進方向に対して左方を「左方」と定義して、説明を行う。
【0018】
本実施形態のコンバイン1は、稲や麦や蕎麦や小豆や大豆等の種々の収穫物を刈り取りながら脱穀する機能を備えた汎用型のコンバインである。コンバイン1は、骨格を成す機体フレーム2に対してエンジン3や変速装置等を搭載し、機体フレーム2の下部に走行部4を装備し、機体フレーム2の前部に刈取部5を搭載し、機体フレーム2の左半部に脱穀部6及び選別部を搭載し、機体フレーム2の右半部に穀粒貯溜部としてのグレンタンク8を搭載し、当該グレンタンク8の前方箇所に操縦部9を装備して構成されている。
【0019】
このように、本実施形態のコンバイン1は、操縦部9におけるオペレーターの操作に応じて、エンジン3の動力を各部の装置に供給して、走行部4にて機体を走行させながら、刈取部5にて圃場の収穫物を刈取り、脱穀部6にて刈取部5からの収穫物を脱穀し、選別部にて脱穀部6からの脱穀物を選別することができるように構成されている。
【0020】
エンジン3が搭載される箇所について、図2を参照してより具体的に説明すると、エンジン3は、機体フレーム2の右側前部上に設けられた直方体形状の空間であるエンジンルーム10内に搭載される。当該エンジンルーム10は、機体フレーム2の右側前部上に左右一対のフレーム11・11を立設し、当該フレーム11・11間の前方箇所にエンジン3を配置し、当該エンジン3の前方、後方、側方、及び上方を板状のエンジンルームカバーで覆うことにより構成されている。
【0021】
エンジンルーム10の上方には、操縦部9の構成部材である座席シート12が配置される。当該座席シート12は、コンバイン1の操縦を行うオペレーターが着座するためのものであり、エンジンルーム10の上面を成すエンジンルームカバー13の上に設けられる。座席シート12の周辺には種々の操作具が設けられる。座席シート12の後方にはグレンタンク8が配置される。座席シート12の上方には日除けのためのサンバイザー20が配置される。
【0022】
当該サンバイザー20は、平面視において、座席シート12を上方から覆うように配置される。サンバイザー20は、エンジンルーム10のフレーム11・11上に立設された左右一対の支柱21L・21Rの上端部に支持されて、コンバイン1の機体に取り付けられる。
【0023】
以下では、サンバイザー20及びその支柱21L・21Rの支持構造について、図2〜図8を参照して詳述する。
【0024】
支柱21L・21Rは、図3及び図4に示すように、断面視長方形状の長いパイプ状の部材である。左右一対の支柱21L・21Rのうち、左側の支柱21Lは、エンジンルーム10の後部左側のフレーム11の上方に配置される。左右一対の支柱のうち、右側の支柱21Rは、エンジンルーム10の後部右側のフレーム11の上方に配置される。支柱21L・21Rは、上下方向に延出するように設けられる。
【0025】
支柱21L・21Rの下端は、取付構造30を介して、エンジンルーム10のフレーム14に支持される。詳細には、エンジンルーム10の左右一対のフレーム11・11上にフレーム14が左右方向に延出するように水平に固定され、当該フレーム14上に、取付構造30により、支柱21L・21Rの下端が取り付けられる。
支柱21L・21Rの上端部には、サンバイザー取付構造50が設けられ、当該サンバイザー取付構造50を介して、支柱21L・21Rの上端部にサンバイザー20が回動角度調整可能に取り付けられる。
支柱21L・21Rの上下中途部は、連結構造40を介して、グレンタンク8に連結される。
【0026】
以下では、支柱21L・21Rの下端をエンジンルーム10を成す構造体(本実施形態ではフレーム14)に取り付けるための取付構造30について、図3を参照して詳細に説明する。取付構造30は、L字型ステー31、被締結部材32・32、締結部材33・33、及び平ワッシャー34・34により構成される。なお、取付構造30は、左右一対の支柱21L・21Rのそれぞれに設けられているが、その構成は左右ともに同じであるので、以下では左側の支柱21Lに設けられる取付構造30についてのみ説明する。
【0027】
図3(a)に示すL字型ステー31は、互いに垂直な二つの面(第一の面31a及び第二の面31b)を有するように、後面視でL字状に形成された部材であり、下面となる第一の面31aがフレーム14の上面14aに面接触した状態となるように、当該フレーム14の上面14aに溶接により固定される。この状態において、L字型ステー31の側面となる第二の面31bは、左右方向に対して垂直な面を成している。L字型ステー31の第二の面31bには、前後方向に長い二つの長孔31c・31cが形成されている。
【0028】
図3(b)に示す被締結部材32・32は、円筒形状の部材であり、その軸心部には、後述する締結部材33に対応する雌ネジが形成されたネジ孔32aが設けられている。被締結部材32は、その軸線を左右方向に向けた状態で、支柱21Lの下端部の前面及び後面に、溶接により固定される。
【0029】
本実施形態の締結部材33・33は、例えば、頭部及び軸部33aを有する公知のボルト等により構成される。締結部材33の軸部33aの外周面には、被締結部材32のネジ孔32aに対応する雄ネジが形成されている。
【0030】
このような構成の取付構造においては、図3(b)に示すように、L字型ステー31の第二の面31bに支柱21Lの下端部の右側面を面接触させて、L字型ステー31の長孔31c・31cと、被締結部材32・32のネジ孔32a・32aと、を側面視において重ね合わせた状態で、L字型ステー31の第二の面31bの右側方から長孔31c・31c及びネジ孔32a・32aに締結部材33・33の軸部33a・33aを挿入して被締結部材32・32に締付けることにより、支柱21Lの下端がフレーム14に連結される。この際、締結部材33・33の頭部と、L字型ステー31の第二の面31bと、の間には平ワッシャー34・34が挟まれる。なお、長孔31cを前後方向に長い形状としていることにより、L字型ステー31の長孔31cと、被締結部材32のネジ孔32aと、を側面視において重ね合わせるときの位置調整を容易としている。締結部材33・33を被締結部材32・32から着脱することにより、支柱21Lの下端をエンジンルーム10のフレーム14に対して容易に着脱可能である。
【0031】
このように、支柱21Lの下端は、取付構造30を介してフレーム14に取り付けられており、こうすることで支柱21Lの下端がエンジンルーム10のフレーム14により支持されているのである。本実施形態の如き構成の取付構造30においては、上述した操作により、支柱21Lの下端のフレーム14に対する着脱操作を容易に行うことができるのである。
【0032】
ただし、支柱の下端のエンジンルームを成す構造体に対する取付構造は、上記の取付構造に限定されるものではなく、これに代えて、例えば、支柱21L・21Rをフレーム14にボルト・ナットを用いて直接固定してもよい。
【0033】
以下では、支柱21L・21Rの上下中途部をグレンタンク8に連結するための連結構造40、言い換えれば、支柱21L・21Rの上下中途部をグレンタンク8により支持するための支持構造について、図4〜図6を参照して詳細に説明する。連結構造40は、フレーム41、被締結部材42、左右一対のステー43・43、枢支軸44、左右一対のアーム45L・45R、ステー46、及び固定具47等により構成される。
【0034】
図4に示すフレーム41は角パイプ状の部材であり、左右一対の支柱21L・21Rの上下中途部間に水平に架け渡される。すなわち、フレーム41は、左右一対の支柱21L・21Rの間において、グレンタンク8の上面と略同じ高さで左右方向に延出するように配置される。
【0035】
図5及び図6に示す被締結部材42は、円筒形状の部材であり、その軸心部には、後述する固定具47に対応する雌ネジが形成されたネジ孔42aが設けられている。被締結部材42は、その軸線を前後方向に向けた状態で、フレーム41の左端部の下面に、溶接により固定される。
【0036】
図4及び図5に示す左右一対のステー43・43は、L字型のステーであり、グレンタンク8の上面に左右に対向するように配置される。
図4及び図5に示す枢支軸44は、左右方向に長い丸棒状の部材であり、前記ステー43・43の間に水平に架け渡される。
【0037】
図4及び図5に示す左右一対のアーム45L・45Rは、長い丸パイプ状の部材であり、その基端部が枢支軸44に軸支される。詳述すると、左右一対のアーム45L・45Rの基端部(後端部)にはそれぞれ、円筒形状の枢支部材45aが溶接により固定され、当該枢支部材45aは枢支軸44の左右両端部に嵌装される。このような構成により、左右一対のアーム45L・45Rの基端部はグレンタンク8に回動可能に支持されているのである。なお、本実施形態の左右一対のアーム45L・45Rは相互に平行に設けられ、その間には強度アップのための補強アーム48が架け渡されている。
【0038】
図4〜図6に示すステー46は、主面46aと、当該主面46aに対して垂直な二つの側面46b・46bと、を有するように、側面視でコ字状に形成された部材であり、左右方向に長い形状を有する。ステー46の主面46aの左端部は、左のアーム45Lの先端部(前端部)に溶接により固定され、ステー46の主面46aの右端部は、右のアーム45Rの先端部(前端部)に溶接により固定される。こうして、ステー46は左右水平に延出するように設けられている。左右一対のアーム45L・45Rを枢支軸44を支点として回動させて前方に延出させたとき、ステー46は主面46aを上方に向けた状態でフレーム41にかぶさり(図5及び図6参照)、ステー46がフレーム41に係合した状態となる。ステー46の側面46bの左端部には、板材49が溶接により固定されている(図6参照)。板材49には、貫装孔49aが形成されている。ステー46をフレーム41に係合させたとき、板材49の貫装孔49aと、被締結部材42のネジ孔42aと、が正面視で重なり合う。
【0039】
本実施形態の固定具47は、例えば、頭部47aと軸部47bを有する公知のノブネジ等により構成される。固定具47の軸部47bの外周面には、被締結部材42のネジ孔42aに対応する雄ネジが形成されている。
【0040】
このような構成の連結構造40においては、アーム45L・45Rを枢支軸44を支点として回動させて前方に延出させて、ステー46をフレーム41に係合させて、板材49の貫装孔49aと、被締結部材42のネジ孔42aと、を正面視において重ね合わせた状態で、ステー46の側面46bの前方から貫装孔49a及びネジ孔42aに固定具47の軸部47bを挿入して被締結部材42に締付けることにより、ステー46とフレーム41とが係合した状態に保持される。すなわち、支柱21L・21Rとグレンタンク8とが連結された状態(連結状態)となる。この際、固定具47の頭部47aと、板材49の前面と、の間には平ワッシャー15が挟まれる。このように、支柱21L・21Rの上下中途部は、連結構造40を介してグレンタンク8に連結されており、こうすることで支柱21L・21Rの上下中途部がグレンタンク8の前上部により支持されているのである。
【0041】
ただし、支柱の上下中途部のグレンタンクに対する連結構造は、上記の連結構造に限定されるものではなく、これに代えて、例えば、アーム45L・45R及び補強アーム48に相当するものを、板材を折り曲げて構成しても、あるいは角材を溶接して構成してもよい。また、本実施形態の固定具47は公知のノブネジにより構成されるものとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、ステー46の側面46b及びフレーム41の前面のそれぞれにピンを貫装するための貫装孔を形成し、当該貫装孔同士を重ね合わせてピンを貫装してフレーム41とステー46とを固定する構成としてもよい。あるいは、公知のワンタッチ式の係止具によりフレームとステーとを固定してもよい。さらに、例えば、アーム45L・45Rに相当するものをフレーム41に対して上下回動可能に設け、すなわち、グレンタンク8側に代えて支柱21L・21R側に設け、グレンタンク8の上面に前記アーム45L・45Rに相当するものの先端部を固定するための固定手段を設ける構成とすることも可能である。
【0042】
このような構成の連結構造40を具備したコンバイン1においては、刈取作業中においては支柱21L・21Rとグレンタンク8とを連結構造によって連結することにより、支柱21L・21Rとグレンタンク8とが互いに補強し合うようにし、剛性を高め、当該グレンタンク8のガタつきを防止することができる。また、このように支柱21L・21Rとグレンタンク8とを連結構造によって連結することにより、刈取作業中(メンテナンス時及び清掃時以外のとき)においては、グレンタンク8の側方への回動を確実に防止する一方で、メンテナンス時や清掃時においては、支柱21L・21Rとグレンタンク8との連結状態を解除するとともに所定の係止ピン等を取り外すことにより、グレンタンク8を側方へと回動できるようにする、という使用態様が可能である。
【0043】
すなわち、従来、コンバインに具備されるグレンタンクは、メンテナンス時や清掃時等のために、機体後部に設けられた上下方向の回動軸を支点として側方に回動できるように構成されている。そして、従来、刈取作業中においては、グレンタンクが側方に回動することを防止するために、係止ピン等の係止構造を用いてグレンタンクを機体に対してロックしていた。
【0044】
この点、本実施形態のコンバイン1も、機体右後端部下部の回動軸(本実施形態では、縦オーガ17を垂直に配置したときの軸線)を支点として側方に回動できる構成となっているが、グレンタンク8は、連結構造40によって機体に対してロックされている(側方に回動しない状態とされている)ので、従来からあった係止ピン等の係止構造を廃止して製造コストの低減を図ることができるのである。
【0045】
また、本実施形態のコンバイン1においては、グレンタンク8の前上部に連結構造40が設けられているので、グレンタンク8のガタつきを効果的に防止することができる。
すなわち、グレンタンク8の前上部は、機体右後端部下部の回動軸(本実施形態では、縦オーガ17を垂直に配置したときの軸線)からは遠く離れているため、従来、機体の振動等によって大きくガタつくおそれがあった。斯かる箇所に連結構造40を設け、グレンタンク8の前上部をサンバイザー20と連結することで、グレンタンク8のガタつきを効果的に抑えることができるのである。
【0046】
なお、固定具47を操作することにより当該固定具47を被締結部材42から取り外すとともに、アーム45L・45Rを枢支軸44を支点として上方に回動することにより(図5に示す二点鎖線参照)、ステー46とフレーム41との係合状態を解除することができる。このように、簡単な操作により、支柱21L・21Rとグレンタンク8との連結状態を解除することができるので、メンテナンス時にグレンタンク8を側方に回動したい場合においても、容易にロック状態を解除することができる。
【0047】
以下では、サンバイザー20を支柱21L・21Rの上端部に取り付けるためのサンバイザー取付構造50について、図7及び図8を参照して詳細に説明する。サンバイザー取付構造50は、左L字型ステー51、右L字型ステー52、枢支軸53、左右一対の取付フレーム54・54、枢支部材55L・55R、カムプレート56、及び固定具57等により構成される。
【0048】
図7に示す左L字型ステー51は、正面視逆L字型のステーであり、左側の支柱21Lの上端にボルト・ナット等の締結部材を用いて固定される。
図7に示す右L字型ステー52は、後面視逆L字型のステーであり、右側の支柱21Rの上端にボルト・ナット等の締結部材を用いて固定される。右L字型ステー52の側面には、固定具57の軸部を貫装するための貫装孔が形成されている。
図7に示す枢支軸53は、左右方向に長い丸棒状の部材であり、左L字型ステー51と右L字型ステー52との間に水平に架け渡される。
【0049】
図7及び図8に示す左右一対の取付フレーム54・54は、長い丸パイプ状の部材を側面視で「く」字状に折り曲げて形成された、前後方向に長い部材である。左右一対の取付フレーム54・54の基端部は、枢支軸53に軸支される。詳述すると、左右一対の取付フレーム54・54の後端部にはそれぞれ、円筒形状の枢支部材55L・55Rが溶接により固定され、当該枢支部材55L・55Rは枢支軸53の左右両端部に嵌装される。左右一対の取付フレーム54・54は左右方向に一定の間隔を置いて並設され、当該取付フレーム54・54には複数のステー58・59(図8参照)が溶接により固定され、当該ステー58・59を介して取付フレーム54・54の上にサンバイザー20が固定される。このような構成により、左右一対の取付フレーム54・54の基端部が支柱21L・21Rの上端部に枢支軸53を支点として回動可能に支持されており、したがって、サンバイザー20は支柱21L・21Rに対して上下に回動可能である。
【0050】
図7に示すカムプレート56は、円弧形状の溝56aが形成された平板状の板材である。カムプレート56は、右の枢支部材55Rの右端部に溶接により固定され、当該枢支部材55Rと一体的に枢支軸53に嵌装される。カムプレート56に形成された溝56aは、側面視において、枢支軸53を中心として描いた円の円周に沿った形状を有する。溝56aの幅は、固定具57の軸部の直径よりも若干大きく、かつ、固定具の頭部の直径よりも小さい寸法に形成される。側面視において、カムプレート56の溝56aは右L字型ステー52の前記貫装孔と重なり合う。当該貫装孔の右側面には、ナットが溶接により固定されている。当該ナットのネジ孔は、側面視において右L字型ステー52の前記貫装孔と重なり合うように構成されている。
【0051】
本実施形態の固定具57は、例えば、頭部と軸部を有する公知のノブネジ等により構成される。
【0052】
このような構成のサンバイザー取付構造50においては、右L字型ステー52の前記貫装孔と、カムプレート56の溝56aと、を側面視において重ね合わせた状態で、カムプレート56の左側方から溝56a及び前記貫装孔に固定具57の軸部が挿入され、当該固定具57の軸部が前記ナットに螺装される。この際、固定具57の頭部と、カムプレート56の左側面と、の間には、平ワッシャーが挟まれる。固定具57の軸部が前記ナットに締付けられることにより、カムプレート56と、右L字型ステー52の側面と、が相互に密着した状態となり、これらの間で発生する摩擦力により、カムプレート56が回動不能となる。こうすることで、ひいては、サンバイザー20の支柱21L・21Rに対する回動角度が所望の位置にて固定される。なお、固定具57を緩めて、サンバイザー20の回動角度を所望の角度に調整した後で、再び固定具57の軸部を前記ナットに堅く締付けることにより、サンバイザー20の回動角度を所望の角度に適宜に調整することができる。このように、本実施形態のサンバイザー20は、支柱21L・21Rに対する回動角度を適宜の角度に調整可能なのである。
【0053】
なお、本実施形態のサンバイザー20の回動位置は、カムプレート56が最も前方に回動したときの位置(図8に参照符号Aにて示す二点鎖線参照)から、カムプレート56が最も後方に回動したときの位置(図8に参照符号Bにて示す二点鎖線参照)までの範囲内において、概ね60度程度の範囲で調整可能である。このような構成により、例えば、コンバイン1を出荷・輸送する際には、サンバイザー20の回動位置を図8に参照符号Bにて示す位置に変更して当該サンバイザー20を収納することにより、機体の前後方向の寸法をコンパクトにすることができる。
【0054】
以上の如く、本実施形態に係るコンバイン1は、エンジンルーム10の上方に座席シート12が配置され、当該座席シート12の後方にグレンタンク8が配置され、座席シート12の上方にサンバイザー20が配置されるコンバインにおいて、サンバイザー20を支持する支柱21L・21Rが、座席シート12とグレンタンク8との間に立設され、支柱21L・21Rの下端がエンジンルーム10を成す構造体(本実施形態ではフレーム14)により支持され、支柱21L・21Rの上下中途部がグレンタンク8により支持されるものである。
【0055】
したがって、支柱21L・21Rを、支柱21L・21Rを、エンジンルーム10を成す構造体(本実施形態ではフレーム14)と、グレンタンク8と、の両方により支持することができるので、サンバイザー20の支柱21L・21Rを強固に支持することができる。よって、サンバイザー20を支柱21L・21Rにより安定的に支持することができる。
【0056】
また、本実施形態のコンバイン1における支柱21L・21Rの上下中途部は、連結構造40を介してグレンタンク8に着脱可能に連結され、支柱21L・21Rの上下中途部をグレンタンク8に連結した状態においては、連結構造40によりグレンタンク8が側方に回動しないものである。
【0057】
したがって、支柱21L・21Rとグレンタンク8とを連結構造40によって連結することにより、グレンタンク8の側方への回動を確実に防止することができる。また、連結構造40に、支柱21L・21Rをグレンタンク8に支持する支持部材としての機能と、グレンタンク8が側方へと回動しないようにするためのロック部材としての機能と、の両方の機能を付与することができる。
【0058】
さらに、本実施形態のコンバイン1における前記連結構造40は、左右一対の支柱21L・21Rの間に架け渡されるフレーム41と、基端部がグレンタンク8に回動可能に支持されたアーム45L・45Rと、当該アーム45L・45Rの先端部に固定され、フレーム41に係合可能なステー46と、フレーム41とステー46との係合状態を保持する固定具47と、を具備するものである。
【0059】
したがって、アーム45L・45Rを回動させて、ステー46をフレーム41に係合させて、その係合状態を固定具47を用いて保持することで、支柱21L・21Rの上下中途部をグレンタンク8に連結することができる。このような簡単な操作によって、支柱21L・21Rとグレンタンク8とを強固に連結することができ、また、当該連結状態を解除する操作も簡単である。
【0060】
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、上記の実施形態に代えて以下の構成とすることも可能である。
【0061】
上記の実施形態においては、コンバインは汎用型のコンバインであるものとした。しかしながら、この構成に代えて、本発明を適用するコンバインを自脱型のコンバインとしてもよい。すなわち、本発明は、エンジンルームの上方に座席シートが配置され、当該座席シートの後方にグレンタンクが配置され、前記座席シートの上方にサンバイザーが配置される形態のコンバインに、広く適用可能である。
【0062】
上記の実施形態においては、グレンタンク8は、連結構造40によって機体に対してロックされるものとした。しかしながら、この構成に代えて、従来からあった係止ピン等による係止構造と、連結構造と、の両方によってグレンタンクを機体に対してロックする構成としてもよい。このような構成とした場合、刈取作業中のグレンタンクは、当該グレンタンクの回動軸による軸支箇所、従来からある係止ピン等による係止箇所、及び、支柱への連結箇所(連結構造)、を含む複数箇所によって支持されるので、機体に対して強固に固定される、という利点がある。
【符号の説明】
【0063】
1 コンバイン
8 グレンタンク
10 エンジンルーム
12 座席シート
14 フレーム(エンジンルームを成す構造体)
20 サンバイザー
21L (左側の)支柱
21R (右側の)支柱
40 連結構造
41 フレーム
45L (左の)アーム
45R (右の)アーム
46 ステー
47 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームの上方に座席シートが配置され、当該座席シートの後方にグレンタンクが配置され、前記座席シートの上方にサンバイザーが配置されるコンバインにおいて、
前記サンバイザーを支持する支柱が、前記座席シートと前記グレンタンクとの間に立設され、
前記支柱の下端が前記エンジンルームを成す構造体により支持され、
前記支柱の上下中途部が前記グレンタンクにより支持されることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
請求項1に記載のコンバインにおいて、
前記支柱の上下中途部は、連結構造を介して前記グレンタンクに着脱可能に連結され、
前記支柱の上下中途部を前記グレンタンクに連結した状態においては、前記連結構造により前記グレンタンクが側方に回動しないことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
請求項2に記載のコンバインにおいて、
前記連結構造は、
左右一対の前記支柱の間に架け渡されるフレームと、
基端部が前記グレンタンクに回動可能に支持されたアームと、
当該アームの先端部に固定され、前記フレームに係合可能なステーと、
前記フレームと前記ステーとの係合状態を保持する固定具と、を具備することを特徴とするコンバイン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate