説明

コンパレータ回路

【課題】ローレベル出力電圧を0V、あるいは所望の電圧に精度よく設定でき、温度変化やプルアップ抵抗の抵抗値の変化によるローレベル出力電圧の変動が小さいコンパレータ回路を提供する。
【解決手段】オープンドレイン型またはオープンコレクタ型のコンパレータ2と、一端がコンパレータ2の出力端子5に電気的に接続され、他端が正電源V+2に電気的に接続されるプルアップ抵抗RLと、反転入力端子11がコンパレータ2の出力端子5に電気的に接続され、出力端子12がコンパレータ2の出力段トランジスタ8のソース端子またはエミッタ端子に電気的に接続された反転増幅器10と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンドレイン型またはオープンコレクタ型のコンパレータを用いたコンパレータ回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、オープンドレイン型のコンパレータを用いたコンパレータ回路が一般に知られている(例えば特許文献1参照)。オープンドレイン型のコンパレータを用いた従来のコンパレータ回路を図9に示す。
【0003】
図9に示すように、従来のコンパレータ回路91は、オープンドレイン型のコンパレータ2と、プルアップ抵抗(負荷)RLと、を備えて構成される。
【0004】
コンパレータ2の正電源端子3は、第1の正電源V+1に電気的に接続され、負電源端子4は、負電源V-に電気的に接続される。コンパレータ2の出力端子5は、プルアップ抵抗RLを介して第2の正電源V+2に電気的に接続される。コンパレータ2の非反転入力端子6と反転入力端子7には、比較対象となる信号が入力される。ここでは、非反転入力端子6に入力される信号の電圧をVa、反転入力端子7に入力される信号の電圧をVbとする。
【0005】
オープンドレイン型のコンパレータ2は、出力段トランジスタとして電界効果トランジスタ(Field-Effect Transistor、以下FETという)8を備えている。なお、図9では、説明を容易とするため、コンパレータ2の内部回路のうちFET8のみを分けて描いている。FET8のドレイン端子は、出力端子5に電気的に接続される。また、FET8のソース端子は、出力段トランジスタ用負電源端子9に電気的に接続されており、出力段トランジスタ用負電源端子9を介して接地されている。
【0006】
このコンパレータ回路91では、非反転入力端子6に入力される信号の電圧Vaが、反転入力端子7に入力される信号の電圧Vbよりも大きい場合、FET8のゲート端子にローレベルの信号が入力されてFET8がオフ状態となる。その結果、出力端子5から、第2の正電源V+2と等しい電圧がハイレベル出力電圧Vout(High)として出力される。
【0007】
他方、非反転入力端子6に入力される信号の電圧Vaが、反転入力端子7に入力される信号の電圧Vbよりも小さい場合、FET8のゲート端子にハイレベルの信号が入力されてFET8がオン状態となる。その結果、出力端子5がFET8、出力段トランジスタ用負電源端子9を介して接地され、出力端子5からは、略0Vの電圧がローレベル出力電圧Vout(Low)として出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平04−236515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、オープンドレイン型のコンパレータ2を用いた従来のコンパレータ回路91では、コンパレータ2の出力段のFET8のオン抵抗成分等の影響により、ローレベル出力電圧Vout(Low)が0Vまで下がりきらず、数100mV程度となってしまう問題がある。
【0010】
より具体的には、図10(a)に示すように、コンパレータ2としてリニアテクノロジー社のLTC1841を用い、V+1とV+2を共に+5V、V-を0V(接地)、Vaを+1.5V、Vbを+2.0Vとし、プルアップ抵抗RLを1kΩ、100kΩとした場合、ローレベル出力電圧Vout(Low)のシミュレーション結果は図10(b)のようになる。
【0011】
図10(b)に示すように、各パラメータを図10(a)のように設定した場合、ローレベル出力電圧Vout(Low)は約0.4V(約400mV)となる。さらに、図10(b)に示すように、温度を−40℃から60℃まで変化させたとき、ローレベル出力電圧Vout(Low)が数十mV変動しており、温度変化によりローレベル出力電圧Vout(Low)が大きく変動してしまうことが分かる。さらにまた、プルアップ抵抗RLを1kΩとした場合と100kΩとした場合とでは、ローレベル出力電圧Vout(Low)に数mVの差が生じており、プルアップ抵抗RLの抵抗値によってもローレベル出力電圧Vout(Low)が変動してしまうことが分かる。
【0012】
このように、従来のコンパレータ回路91では、ローレベル出力電圧Vout(Low)の0Vに対する電位差が数100mV程度と大きく、さらにこの電位差が、温度変化やプルアップ抵抗RLの抵抗値により変動してしまうという問題がある。
【0013】
このようなコンパレータ回路91を機械スイッチの代用として使用する場合、ローレベル出力電圧Vout(Low)の0Vに対する電位差が問題となるおそれがある。特に近年では、省電力化の要求により正電源電圧(V+1、V+2)が低電圧化してきており、ローレベルと識別するしきい値電圧が低くなってきているため、ローレベル出力電圧Vout(Low)が出力されているにも拘わらずローレベルと認識されず誤動作してしまう可能性が大きくなっている。
【0014】
また、温度変化やプルアップ抵抗RLの抵抗値によるローレベル出力電圧Vout(Low)の変動が大きいと、例えば、温度が高いときにはローレベルと識別されるが、温度が低いときにはローレベルと識別されない、といった問題も発生し得る。
【0015】
本発明は上記事情に鑑み為されたものであり、ローレベル出力電圧を0V、あるいは所望の電圧に精度よく設定でき、温度変化やプルアップ抵抗の抵抗値の変化によるローレベル出力電圧の変動が小さいコンパレータ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、オープンドレイン型またはオープンコレクタ型のコンパレータと、一端が前記コンパレータの出力端子に電気的に接続され、他端が正電源に電気的に接続されるプルアップ抵抗と、反転入力端子が前記コンパレータの出力端子に電気的に接続され、出力端子が前記コンパレータの出力段トランジスタのソース端子またはエミッタ端子に電気的に接続された反転増幅器と、を備えたコンパレータ回路である。
【0017】
前記出力段トランジスタのソース端子またはエミッタ端子は、前記コンパレータの負電源端子に電気的に接続されており、前記反転増幅器の出力端子を、前記負電源端子に電気的に接続するようにしてもよい。
【0018】
前記反転増幅器は、その反転利得が100以上であるとよい。
【0019】
前記反転増幅器の非反転入力端子は、接地されてもよい。
【0020】
前記反転増幅器は、その反転利得と非反転利得が等しく、前記反転増幅器の非反転入力端子には、ローレベル出力電圧となる基準電圧が印加されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ローレベル出力電圧を0V、あるいは所望の電圧に精度よく設定でき、温度変化やプルアップ抵抗の抵抗値の変化によるローレベル出力電圧の変動が小さいコンパレータ回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係るコンパレータ回路の構成図である。
【図2】図1のコンパレータ回路の一変形例を示す構成図である。
【図3】(a)〜(c)は、図1のコンパレータ回路に用いる反転増幅器の回路構成の一例を示す図である。
【図4】(a)は、図2のコンパレータ回路のローレベル出力電圧をシミュレーションする際の各パラメータの設定値を示す図であり、(b)はそのシミュレーション結果を示す図である。
【図5】(a)は、図2のコンパレータ回路のローレベル出力電圧をシミュレーションする際の各パラメータの設定値を示す図であり、(b)はそのシミュレーション結果を示す図である。
【図6】(a)は、本発明の一実施の形態に係るコンパレータ回路の構成図であり、(b)は、その一変形例を示す構成図である。
【図7】(a)は、図6(b)のコンパレータ回路のローレベル出力電圧をシミュレーションする際の各パラメータの設定値を示す図であり、(b)はそのシミュレーション結果を示す図である。
【図8】図1のコンパレータ回路の一変形例を示す構成図である。
【図9】従来のコンパレータ回路の構成図である。
【図10】(a)は、図9の従来のコンパレータ回路のローレベル出力電圧をシミュレーションする際の各パラメータの設定値を示す図であり、(b)はそのシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0024】
図1は、本実施の形態に係るコンパレータ回路の構成図である。
【0025】
図1に示すように、コンパレータ回路1は、オープンドレイン型のコンパレータ2と、プルアップ抵抗(負荷)RLと、を備えている。
【0026】
コンパレータ2の正電源端子3は、第1の正電源V+1に電気的に接続され、負電源端子4は、負電源V-に電気的に接続される。コンパレータ2の非反転入力端子6と反転入力端子7には、比較対象となる信号が入力される。ここでは、非反転入力端子6に入力される信号の電圧をVa、反転入力端子7に入力される信号の電圧をVbとする。
【0027】
プルアップ抵抗RLは、一端がコンパレータ2の出力端子5に電気的に接続され、他端が第2の正電源V+2に電気的に接続される。これにより、コンパレータ2の出力端子5は、プルアップ抵抗RLを介して第2の正電源V+2に電気的に接続される。なお、ここでは第1の正電源V+1と第2の正電源V+2を別の電源として扱っているが、第1の正電源V+1と第2の正電源V+2は共通としても構わない。
【0028】
コンパレータ2は、出力段トランジスタとしてFET8を備えている。なお、図1では、説明を容易とするため、コンパレータ2の内部回路のうちFET8のみを分けて描いている。FET8のドレイン端子は、出力端子5に電気的に接続され、FET8のソース端子は、出力段トランジスタ用負電源端子9に電気的に接続されている。
【0029】
さて、本実施の形態に係るコンパレータ回路1では、反転入力端子11がコンパレータ2の出力端子5に電気的に接続され、出力端子12がコンパレータ2のFET8のソース端子に電気的に接続された反転増幅器(反転増幅回路)10をさらに備えている。換言すれば、本実施の形態に係るコンパレータ回路1は、コンパレータ2の出力端子5にその反転入力端子11を接続した反転増幅器10の出力端子12を、コンパレータ2のFET8のソース端子へ接続して構成される。
【0030】
本実施の形態では、反転増幅器10の出力端子12は、出力段トランジスタ用負電源端子9に電気的に接続されており、出力段トランジスタ用負電源端子9を介して、FET8のソース端子と電気的に接続される。なお、図2に示すように、コンパレータ2として、FET8のソース端子がコンパレータ2の内部で負電源端子4に電気的に接続されており、負電源端子4が共通となっているものを用いる場合(つまり、コンパレータ2として、FET8とそれ以外の回路の負電源端子がコンパレータ2内で既に接続されているものを用いる場合)には、反転増幅器10の出力端子12を、共通の負電源端子4に接続すればよい。
【0031】
図示していないが、本実施の形態においては、反転増幅器10の非反転入力端子は、接地(0Vへ接続)される。これにより、出力端子5から出力されるローレベル出力電圧Vout(Low)は略0Vに設定されることになる。なお、ローレベル出力電圧Vout(Low)を0V以外の任意の電圧に設定する場合、非反転入力端子に電圧(後述する基準電圧V0)を印加することになるが、この場合については後述する。
【0032】
反転増幅器10の反転利得Aは、できるだけ大きい値に設定されることが望ましく、100以上、好ましくは1000以上とすることが望ましい。これは、反転利得Aを大きくするほど、ローレベル出力電圧Vout(Low)を0V(あるいは後述する基準電圧V0)に近づけることができるためである。
【0033】
ここで、反転増幅器10の具体的な回路構成について図3を用いて説明しておく。なお、以下に説明する反転増幅器10の回路構成は、あくまで一例であり、反転増幅器10の回路構成はこれに限定されるものではない。
【0034】
図3(a)に示す反転増幅器10aは、1つのオペアンプ31と2つの抵抗R1,R2を用いて構成される。オペアンプ31の反転入力端子32は、抵抗R2を介して、反転増幅器10aの反転入力端子11に電気的に接続され、オペアンプ31の非反転入力端子33は、反転増幅器10aの非反転入力端子13に電気的に接続され、オペアンプ31の出力端子34は、反転増幅器10aの出力端子12に電気的に接続され、さらに、オペアンプ31の反転入力端子32と出力端子34とが、抵抗R1を介して電気的に接続される。この反転増幅器10aにおける反転利得Aは、反転入力端子11に電気的に接続されたプルアップ抵抗RLを考慮すると、下式(1)
A=R1/(RL+R2) ・・・(1)
となる。なお、本実施の形態では、非反転入力端子13は接地されている。
【0035】
図3(b)に示す反転増幅器10bは、2つのオペアンプ31(31a,31b)と2つの抵抗R1,R2を用いて構成される。一方のオペアンプ31aの非反転入力端子33は、反転増幅器10bの反転入力端子11に電気的に接続され、一方のオペアンプ31aの反転入力端子32と出力端子34とは、抵抗R2を介して他方のオペアンプ31bの反転入力端子32に電気的に接続される。他方のオペアンプ31bの非反転入力端子33は反転増幅器10bの非反転入力端子13に、他方のオペアンプ31bの出力端子34は、反転増幅器10bの出力端子12に電気的に接続され、さらに、他方のオペアンプ31bの反転入力端子32と出力端子34とが、抵抗R1を介して電気的に接続される。この反転増幅器10bにおける反転利得Aは、下式(2)
A=R1/R2 ・・・(2)
となる。
【0036】
図3(c)に示す反転増幅器10cは、図3(b)の反転増幅器10bにおいて、一方のオペアンプ31aの反転入力端子32を、抵抗R4を介して接地すると共に、抵抗R3を介して一方のオペアンプ31aの出力端子34と電気的に接続するように構成したものである。この反転増幅器10cにおける反転利得Aは、下式(3)
A=(R1/R2)・(R3+R4)/R4 ・・・(3)
となる。
【0037】
反転増幅器10として反転増幅器10a〜10cのいずれを用いるかは、用いるオペアンプ31の特性等に応じて、適宜選択することができる。ただし、図3(a)の反転増幅器10aについては、反転入力端子11と出力端子12とが抵抗R1,R2を介して電気的に接続される回路構成となっているので、ハイレベル出力時にプルアップ抵抗RLを通して反転増幅器10aにも電流が流れてしまい、ハイレベル出力電圧Vout(High)が第2の正電源V+2よりも低く(つまり、反転増幅器10を設けない場合と比較してVout(High)が低く)なってしまう。よって、ハイレベル出力電圧Vout(High)の低下が問題となる場合には、ハイインピーダンスである図3(b)や図3(c)の反転増幅器10b,10cを用いるとよい。
【0038】
次に、コンパレータ回路1でローレベル出力電圧Vout(Low)を略0Vにできる理由について説明する。
【0039】
コンパレータ2のFET8のソース端子の電圧をV(−)、コンパレータ2がローレベル出力しているとき(Va<Vbであるとき)のドレイン端子(出力端子5)とソース端子の電位差(つまり、反転増幅器10を挿入しない場合における、FET8のオン抵抗成分等に起因するローレベル出力時の0Vに対する電位差)をΔとすると、出力端子5から出力されるローレベル出力電圧Vout(Low)は、下式(4)
out(Low)=V(−)+Δ ・・・(4)
で表される。
【0040】
反転増幅器10の反転入力端子11には、式(4)のVout(Low)が入力されることになるので、反転増幅器10の反転利得の絶対値をA(A>0)とすると、反転増幅器10の出力端子12から出力される出力電圧Vdは、下式(5)
Vd=−AVout(Low)=−A(V(−)+Δ) ・・・(5)
となる。
【0041】
反転増幅器10の出力端子12はFET8のソース端子と電気的に接続されているため、ソース端子の電圧V(−)と反転増幅器10の出力電圧Vdとは等しくなる。よって、ソース端子の電圧V(−)は、下式(6)
V(−)=Vd=−A(V(−)+Δ) ・・・(6)
のように表すことができる。式(6)をV(−)について整理すると、下式(7)
V(−)=−A・Δ/(A+1) ・・・(7)
となり、式(7)を上述の式(4)に代入すると、下式(8)
out(Low)=Δ/(A+1) ・・・(8)
となる。
【0042】
式(8)より、A>>1(例えばA=100)とすることにより、Vout(Low)≒0にできること、すなわち、ローレベル出力電圧Vout(Low)を略0Vにできることが分かる。
【0043】
なお、コンパレータ2がハイレベル出力しているとき(Va>Vbであるとき)には、FET8がオフ状態となるため、反転増幅器10を設けない従来のコンパレータ回路と同様に、第2の正電源V+2と等しい電圧がハイレベル出力電圧Vout(High)として出力されることになる(なお、上述のように、図3(a)の反転増幅器10aを用いた場合には、ハイレベル出力電圧Vout(High)は第2の正電源V+2よりも低くなる)。
【0044】
ところで、コンパレータ2がハイレベル出力しているときには、反転増幅器10の出力電圧Vdが最も低くなり、FET8のソース端子の電圧V(−)が最も低くなる。よって、図1のように負電源端子4と出力段トランジスタ用負電源端子9が別に設けられているコンパレータ2を用いる場合(FET8とそれ以外の回路部分の負電源が分かれている場合)には、コンパレータ2の誤動作を避けるため、負電源端子4へ印加する負電源V-は、ハイレベル出力時におけるFET8のソース端子の電圧V(−)以下の電圧にしておくことが望ましい。これは、コンパレータ2の他の回路の負電源V-よりもFET8のソース端子の電圧V(−)の方が低いと、FET8の動作が不安定になり誤動作が発生するおそれがあるためである。
【0045】
次に、本実施の形態に係るコンパレータ回路1のローレベル出力電圧Vout(Low)のシミュレーション結果について説明する。
【0046】
負電源端子4を共通とした図2のコンパレータ回路1において、反転増幅器10として図3(b)の反転増幅器10bを用いた場合のローレベル出力電圧Vout(Low)のシミュレーションを行った。
【0047】
シミュレーションを行う際の各パラメータは図4(a)のように設定した。すなわち、コンパレータ2としてリニアテクノロジー社のLTC1841を用い、V+1とV+2を共に+5V、Vaを+1.5V、Vbを+2.0Vとした。さらに、反転増幅器10bのオペアンプ31a,31bとしてリニアテクノロジー社のLT1022を用い、抵抗R1を100kΩ、R2を1kΩとした。このときの反転増幅器10bの反転利得Aは、上述の式(2)より100となる。なお、オペアンプ31a,31bとして用いるLT1022には、電源として±5Vを供給した。プルアップ抵抗RLを1kΩ、100kΩとした場合のローレベル出力電圧Vout(Low)のシミュレーション結果を図4(b)に示す。
【0048】
図4(b)に示すように、反転利得A=100の反転増幅器10を挿入することにより、ローレベル出力電圧Vout(Low)は約4mVとなっており、反転増幅器10を挿入しない従来のコンパレータ回路(図10参照)と比較して、ローレベル出力電圧Vout(Low)が約1/100になり、0Vに近くなっていることが分かる。また、温度を−40℃から60℃まで変化させたときのローレベル出力電圧Vout(Low)の変動は1mV以下と小さく、さらには、プルアップ抵抗RLを1kΩとした場合と100kΩとした場合のローレベル出力電圧Vout(Low)の差は、0.1mV未満と小さくなっている。
【0049】
さらに、図5(a)に示すように、抵抗R1を1MΩに変更し、反転増幅器10bの反転利得Aを1000として同様のシミュレーションを行った。シミュレーション結果を図5(b)に示す。
【0050】
図5(b)に示すように、反転利得A=1000の反転増幅器10を挿入することにより、ローレベル出力電圧Vout(Low)は約0.4mVとなっており、反転増幅器10を挿入しない従来のコンパレータ回路と比較して、ローレベル出力電圧Vout(Low)が約1/1000になり、0Vにさらに近くなっていることが分かる。また、温度を−40℃から60℃まで変化させたときのローレベル出力電圧Vout(Low)の変動は0.1mV以下とさらに小さくなり、プルアップ抵抗RLを1kΩとした場合と100kΩとした場合のローレベル出力電圧Vout(Low)の差についても、0.01mV未満とさらに小さくなっている。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態に係るコンパレータ回路1では、反転入力端子11がコンパレータ2の出力端子5に電気的に接続され、出力端子12がコンパレータ2の出力段トランジスタであるFET8のソース端子に電気的に接続された反転増幅器10を備えている。
【0052】
反転増幅器10を備えることにより、FET8のオン抵抗成分等の影響を抑制してローレベル出力電圧Vout(Low)を低くすることが可能となり、ローレベル出力電圧Vout(Low)を略0Vに精度よく設定することができ、温度変化やプルアップ抵抗RLの抵抗値の変化によるローレベル出力電圧Vout(Low)の変動が小さいコンパレータ回路1を実現できる。その結果、コンパレータ回路1を機器に搭載した際に、ローレベルと識別するしきい値電圧を低く設定しても誤動作することがなくなり、正電源電圧(V+1、V+2)を低電圧化して省電力化を図ることが可能になる。
【0053】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
【0054】
図6(a)に示すコンパレータ回路61は、図1のコンパレータ回路1において、反転増幅器10の反転利得Aと非反転利得Bを略等しくし、反転増幅器10の非反転入力端子13に、ローレベル出力電圧Vout(Low)となる基準電圧V0を印加するようにしたものである。なお、図6(a)では、一例として、反転増幅器10として図3(b)の反転増幅器10bを用いる場合を示しているが、反転増幅器10の回路構成はこれに限定されるものではない。
【0055】
コンパレータ回路61では、反転増幅器10bの出力端子12から出力される出力電圧Vd、すなわちFET8のソース端子の電圧V(−)は、下式(9)
V(−)=Vd=−A・Vout(Low)+B・V0 ・・・(9)
となる。ただし、反転増幅器10bの反転利得Aと非反転利得Bは、下式(10),(11)
A=R1/R2 ・・・(10)
B=(R1+R2)/R2 ・・・(11)
である。式(10),(11)より、反転利得Aと非反転利得Bを略等しくするためには、R1>>R2とすればよいことが分かる。
【0056】
式(9)を上述の式(4)に代入し、式を整理すると、ローレベル出力電圧Vout(Low)は、下式(12)
out(Low)=V(−)+Δ
=−A・Vout(Low)+B・V0+Δ
=(B・V0+Δ)/(A+1) ・・・(12)
となる。ここで、A>>1、B>>1、B・V0>>Δとすると、下式(13)
out(Low)≒V0・(B/A) ・・・(13)
となる。
【0057】
反転利得Aと非反転利得Bを略等しくする(R1>>R2とする)と、B/A=(R1+R2)/R1≒1となり、Vout(Low)≒V0となる。すなわち、ローレベル出力電圧Vout(Low)が基準電圧V0と略等しくなる。
【0058】
なお、図6(a)のコンパレータ回路61では、反転増幅器10として、基準電圧V0を直接オペアンプ31bの非反転入力端子33に印加するように構成した反転増幅器10bを用いたが、図6(b)に示すように、反転増幅器10として、基準電圧V0を抵抗R3,R4により抵抗分割し、その抵抗分割した電圧をオペアンプ31bの非反転入力端子33に印加するように構成した反転増幅器10dを用いるようにしてもよい。図6(b)のコンパレータ回路61では、反転増幅器10dの非反転利得Bは、下式(14)
B={(R1+R2)・R4}/{R2・(R3+R4)} ・・・(14)
となるが、R1:R2=R4:R3とすることにより、B=R1/R2=Aとなり、反転利得Aと非反転利得Bを等しくすることができる。よって、図6(b)のコンパレータ回路61によれば、ローレベル出力電圧Vout(Low)をより精度よく基準電圧V0に設定することが可能となる。
【0059】
図6(b)のコンパレータ回路61を用い、ローレベル出力電圧Vout(Low)のシミュレーションを行った。
【0060】
シミュレーションを行う際の各パラメータは、図7(a)に示すように、抵抗R1とR3を1kΩ、抵抗R2とR4を100kΩ、基準電圧V0を+1.5Vとした他は、図4(a)と同様の条件とした。プルアップ抵抗RLを1kΩ、100kΩとした場合のローレベル出力電圧Vout(Low)のシミュレーション結果を図7(b)に示す。
【0061】
図7(b)に示すように、反転増幅器10の非反転入力端子13へ基準電圧V0として1.5Vを印加した場合、ローレベル出力電圧Vout(Low)は約1.5Vと基準電圧V0と略等しくなっている(反転増幅器10の利得A,Bをより大きくすれば、ローレベル出力電圧Vout(Low)をより基準電圧V0に近づけることが可能である)。また、温度を−40℃から60℃まで変化させたときのローレベル出力電圧Vout(Low)の変動は1mV以下と小さく、プルアップ抵抗RLを1kΩとした場合と100kΩとした場合のローレベル出力電圧Vout(Low)の差についても、0.1mV未満と小さい。
【0062】
このように、コンパレータ回路61によれば、反転増幅器10の非反転入力端子13に基準電圧V0を印加すると、ローレベル出力電圧Vout(Low)が基準電圧V0と等しくなり、ローレベル出力電圧Vout(Low)を、所望の電圧に精度よく設定することが可能になる。コンパレータ回路61によれば、例えば、コンパレータ回路61を用いてパルス波形を生成する場合に、パルス波形のローレベルの電圧を基準電圧V0により設定することが可能になる。
【0063】
ところで、上述のように、ローレベル出力電圧Vout(Low)を非反転入力端子13に印加する基準電圧V0と略等しくするためには、反転増幅器10の反転利得Aと非反転利得Bを略等しくする必要があるが、本発明はこれに限定されるものではない。つまり、反転利得Aと非反転利得Bが異なる場合であっても、本発明は適用可能である。この場合、非反転入力端子13に印加する基準電圧V0を適宜調整することより、ローレベル出力電圧Vout(Low)を、所望の電圧に設定することが可能である。
【0064】
より具体的には、上述の式(13)を参照すれば分かるように、反転利得Aと非反転利得Bが等しくない場合、ローレベル出力電圧Vout(Low)は、基準電圧V0の係数倍(ここではB/A倍)と略等しくなる。よって、反転増幅器10の反転利得Aと非反転利得Bが異なる場合は、この係数を考慮して、ローレベル出力電圧Vout(Low)が所望の電圧となるように、非反転入力端子13に印加する基準電圧V0を調整すればよい。上述の例では、所望の電圧をVxとすると、V0=Vx・(A/B)とすれば、Vout(Low)≒Vxに設定できることになる。
【0065】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0066】
例えば、上記実施の形態では、コンパレータ2としてオープンドレイン型のコンパレータを用いる場合を説明したが、コンパレータ2として、オープンコレクタ型のコンパレータを用いる場合においても、本発明は適用可能である。この場合、図8に示すコンパレータ回路81のように、反転増幅器10の出力端子12を、出力段トランジスタ82のエミッタ端子に電気的に接続するように構成すればよい。
【符号の説明】
【0067】
1 コンパレータ回路
2 コンパレータ
3 正電源端子
4 負電源端子
5 出力端子(コンパレータ)
6 非反転入力端子(コンパレータ)
7 反転入力端子(コンパレータ)
8 FET(出力段トランジスタ)
9 出力段トランジスタ用負電源端子
10 反転増幅器
11 反転入力端子(反転増幅器)
12 出力端子(反転増幅器)
+1 第1の正電源
+2 第2の正電源(正電源)
- 負電源
RL プルアップ抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンドレイン型またはオープンコレクタ型のコンパレータと、
一端が前記コンパレータの出力端子に電気的に接続され、他端が正電源に電気的に接続されるプルアップ抵抗と、
反転入力端子が前記コンパレータの出力端子に電気的に接続され、出力端子が前記コンパレータの出力段トランジスタのソース端子またはエミッタ端子に電気的に接続された反転増幅器と、
を備えたことを特徴とするコンパレータ回路。
【請求項2】
前記出力段トランジスタのソース端子またはエミッタ端子は、前記コンパレータの負電源端子に電気的に接続されており、
前記反転増幅器の出力端子を、前記負電源端子に電気的に接続するようにした
請求項1記載のコンパレータ回路。
【請求項3】
前記反転増幅器は、その反転利得が100以上である
請求項1または2記載のコンパレータ回路。
【請求項4】
前記反転増幅器の非反転入力端子は、接地される
請求項1〜3いずれかに記載のコンパレータ回路。
【請求項5】
前記反転増幅器は、その反転利得と非反転利得が等しく、
前記反転増幅器の非反転入力端子には、ローレベル出力電圧となる基準電圧が印加される
請求項1〜3いずれかに記載のコンパレータ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図10】
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