説明

コンピュータ支援工学解析においてクロノ・レオロジー材料の経時変化効果のシミュレーションを可能にする方法およびシステム

【課題】コンピュータ支援工学(CAE)解析においてクロノ・レオロジー材料の材料経時変化効果のシミュレーションを可能にする。
【解決手段】一の面では、1セットの材料特性試験が関心のあるクロノ・レオロジー材料に対して行なわれる(602)。それぞれの試験では、各試料の予め定義した一定の歪みを維持することによって、一連のリラクセーション試験データを得る(604)。1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータは、一連のリラクセーション試験データを複数の材料特性試験のうちのそれぞれのペア間でシフトさせて一致させることによって、決定される。その後、クロノ・レオロジー材料構造方程式を構成しているCAE解析アプリケーションモジュールと連携して、1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータが、少なくとも部分的にクロノ・レオロジー材料を含んでいる工学構造体のCAE解析を行う(608)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、クロノ・レオロジー材料(例えばゴム、フォームなど)に関連し、特に、ユーザ(例えば技術者、科学者など)の支援のために用いられるコンピュータ支援工学解析(例えば有限要素解析法(FEA)、メッシュレス解析、有限差分解析など)におけるクロノ・レオロジー材料の材料経時変化効果のシミュレーションを可能にし、これにより、少なくとも部分的にクロノ・レオロジー材料を含んでいる工学構造体の改善および設計時における判断することを可能にすることに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム状材料(例えばエラストマー、フォーム(foam))は、種々の産業(例えば、自動車、航空宇宙、建築など)において工学構造体の多くの部分に、何年にもわたって、用いられている。ゴム状材料は、多くの場合、クロノ・レオロジー的な(chrono−rheological)(レオロジー的なエージング(経時変化)の)挙動を示す。クロノ・レオロジー的な特性変化の大きさは時間とともに変化し、多くの場合、無視することができないくらいに十分に大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現代のコンピュータ技術の進歩により、工学構造体(例えば車、飛行機など)は、一般に、コンピュータ支援工学解析を用いて設計されて改善される。ゴム状材料の経時変化効果を含む構造応答を把握するためには、材料特性の数値的な表現を決定し、そして、コンピュータ支援工学解析におけるアプリケーションモジュールあるいはソフトウェアに組み込むことが必要である。数値的な表現のうちの1つは、材料の歪み−応力あるいは力−変位関係と関連する材料構造方程式である。一般に、これは、興味のある材料の試料試験を行い、そして、その試験結果を特定の構造方程式に関連づけることによって行われる。しかしながら、従来技術アプローチにおいて用いられるゴム状材料に対する材料構造方程式は、一般に不適当である。あるものは、非圧縮弾性特性あるいはある特別なケース(例えばneo−Hookean, Mooney−Rivlin)の仮定に基づいている。また他のもの(例えばOgden方程式)は、非圧縮および圧縮可能材料特性を含むことができるが、経時変化効果を含めることができない。
【0004】
従来技術アプローチの短所は、自動車産業において広範囲に用いられるエラストマーのフォーム(圧縮可能な粘弾性材料)の挙動のシミュレートに対して問題を引き起こす。特に、自動車を設計するための工業規格のうちの1つは、衝突のイベントすなわち車のクラッシュにおける車両乗員の安全を確保することである。このような要求を満たすことを保証するために、自動車メーカーは、それぞれの車両モデルのプロトタイプの物理的な衝突試験を行なう必要がある。いくつかの例において、異なるシナリオのために、複数の試験が必要とされる。物理的な衝突試験の実施には高額なコストがかかるのみならず、それには、独特の困難や課題(例えば可測性、精度、信頼度、再現性など)がある。したがって、衝突イベントのコンピューターシミュレーション(つまりコンピュータ支援工学解析)は、物理的なプロトタイプ衝突試験と置き換わるあるいは少なくともその数を最小限にするために広範囲に用いられている。
【0005】
物理的な衝突試験においては、安全要求を研究するために、人間の乗員(つまり運転手あるいは運転手と同乗者)を表す1つ以上の衝突ダミーが車両に置かれる。衝突ダミーは、一般に、フォーム材料を用いて、多くのパーツ(例えば頭部、胴部、四肢部など)から構成される。衝突ダミーは物理的な衝突試験において一般に破損し、その後他の試験において再使用されるために修理されるので、衝突ダミーの異なるパーツは異なる経時変化を受けたフォーム材料を有している場合がある。より正確にそのような状況(つまり1つの衝突ダミーにおいて複数の経時変化を受けたフォーム材料)をシミュレートするためには、コンピュータ支援工学アプリケーションソフトは、経時変化効果を含んだ材料構造方程式によって構造応答を計算可能であることが必要とされる。したがって、有限要素解析法においてクロノ・レオロジー材料の材料経時変化効果シミュレーションを可能にする方法およびシステムの改良が望まれよう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コンピュータ支援工学解析においてクロノ・レオロジー材料の材料経時変化効果のシミュレーションを可能にする方法およびシステムを開示する。一の面では、1セットの材料特性試験が、関心のあるクロノ・レオロジー材料に対する材料特性を得るために行なわれる。その1セットの材料特性試験は、異なる経年数(経時)、例えば数日、数週間、数か月などにおいて、複数の材料試料に対するほぼ同様な試験を繰り返すことを含む。それぞれの試験を、単軸方向、両軸方向、あるいは曲げ試験プロシージャを通じて行なうことができる。一連の緩和(リラクセーション)試験データが、試験される試料に対して得られる。単軸方向試験プロシージャにおいては、引っ張り(テンション)あるいは圧縮リラクセーション試験のいずれかを行なうことができ、種々の時間における軸方向応力が測定される。二軸方向試験においては、丸い(つまり、円形、長円あるいは楕円形の)隔壁(メンブレン(membrane))の膨張を用いることができる。隔壁の変形を一定に維持でき、そして、膨張圧(つまりリラクセーション試験データ)が測定される。それぞれの材料特性試験の一連のリラクセーション試験データは、対数対対数スケールのリラクセーション試験データ・チャートすなわちグラフ上に配置されるすなわちプロットされる。概して、グラフは多くの一連のリラクセーション試験データを含んでいる。それぞれの一連のリラクセーション試験データは、関心のある特定の経年数のクロノ・レオロジー材料を表わす。
【0007】
本発明の他の面においては、新しい材料構造方程式が、材料経時変化効果を含むクロノ・レオロジー材料を表わすよう生成される。新しい材料構造方程式は、従来技術アプローチ(例えばneo−Hookean、Mooney−Rivlin、Ogdenなど)において用いられる既存の構造方程式を包含する一般化され統合された式となるよう構成される。1ペアの時間依存材料経時変化効果パラメータが、新しい材料構造方程式に含まれる。第1パラメータは、材料経時変化効果パラメータアルファ(α)として示す材料のリラクセーション試験データと関係する。また、第2パラメータは、材料経時変化効果パラメータベータ(β)として示す時間と関係する。これらの2つのパラメータを、材料特性試験において得られた対数対対数スケールにおけるリラクセーション試験データを垂直方向および水平方向にシフトさせて一致させることによって決定することができる。チャートにおけるそれぞれの一連のリラクセーション試験データは、特定の経時変化を受けた試料に対して得られた結果を表わす。データのそれぞれのペアをシフトさせて一致させることによって、特定のセットの材料経時変化効果パラメータが与えられる。
【0008】
時間進行シミュレーションにおけるクロノ・レオロジー材料特性の影響すなわち挙動を、このような材料構造方程式が構成されているコンピュータ支援工学解析(CAE)アプリケーションモジュールを用いて、含めることができる。概して、1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータが、得られ、そして、CAEアプリケーションモジュールがインストールされているコンピュータに入力される。
【0009】
本発明の他の目的、特徴および利点は、添付の図面を参照した以下の実施形態の詳細な説明を考察することで明らかになるであろう。
【0010】
本発明のこれらおよび他の特徴、面および利点は、以下の説明、添付したクレームおよび以下の添付図面との関連から一層よく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】図1Aは、単軸方向引っ張り条件下でのエラストマースティック試料を示す図である。
【図1B】図1Bは、二軸方向引っ張り条件下での1枚のエラストマー隔壁試料を示す図である。
【図2A】図2Aは、本発明の一の実施形態にかかる一連の例示的なシミュレートされたリラクセーション試験データを示し、
【図2B】図2Bは、図2Aの一連のシミュレートされたリラクセーション試験データに対するマスター曲線を示す。
【図3】図3は、本発明の実施形態にかかる、単軸方向試験において得られた1セットの例示的なリラクセーション試験データを示す図である。
【図4A】図4Aは、本発明の実施形態にかかる、二軸方向試験プロシージャを用いて1セットの材料特性試験から得られた例示的なリラクセーション試験データを示すグラフである。
【図4B】図4Bは、1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータを決定するために、図4Aのリラクセーション試験データをシフトさせ一致させた後の結果を示す。
【図5A】図5Aは、本発明の一の実施形態にかかる、第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータを含んでいるクロノ・レオロジー材料構造方程式を集合的に示す。
【図5B】図5Bは、本発明の一の実施形態にかかる、第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータを含んでいるクロノ・レオロジー材料構造方程式を集合的に示す。
【図6】図6は、本発明の実施形態にかかる、有限要素解析法において材料経時変化効果のシミュレーションを可能にする例示的なプロセスを示すフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の実施形態が構築された演算デバイスの主要なコンポーネントを示す機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態を、図1A乃至図7を参照してここに説明する。しかしながら、これらの図を参照してここで与える詳細な説明は例示の目的であって発明がこれらの限定的な実施形態を越えて広がっていることは、当業者には容易に理解されよう。
【0013】
まず図6を参照して、本発明の実施形態にかかる、有限要素解析法における材料経時変化効果のシミュレーションを可能にする例示的なプロセス600のフローチャートを示す。プロセス600を、材料特性試験研究室と連携して、コンピュータにおいて実行できる。プロセス600は、図1A乃至図5Bとともに好ましくは理解される。
【0014】
始めに、ステップ602において、1セットの材料特性試験が関心のあるクロノ・レオロジー材料に対して異なる経年数において行なわれる。材料特性試験を、単軸方向引張り/圧縮(図1A)あるいは二軸方向引っ張り(図1B)を印加することによって行なうことができる。図1Aに示すように、試料110は、単軸方向引張り条件を形成する1ペアの力P 112の下にある。一方、試料140は、二軸方向引張り条件下にあり、図1Bにおける2つの方向に引張り力F 142がかかっている。二軸方向引張りは、当業者にはよく知られているプロシージャである二軸方向引張試験装置において十分に丸い形状の隔壁試料を膨張させることによって得ることができる。異なる経年数(例えば数日、数週間、数か月など)におけるクロノ・レオロジー材料特性がほぼ同一の試験を異なる経時変化を受けた試料に繰り返すことによって得られるよう、材料特性試験は構成される。1つの方法は、一群の試料のそれぞれが異なる経年数となるように、材料特性試験を長期にわたって行なうことである。
【0015】
それぞれの材料特性試験はステップ604において、各試料の予め定義した一定の歪みあるいは変位(例えば伸張あるいは伸び)を維持することによって、一連のリラクセーション試験データを得るよう構成される。例えば、試料110を単軸方向引張試験において予め定義した歪みに保持することは、初期にある大きさの1ペアの力P 112を必要とする。時間の進行とともに、試料110の材料特性が変化し、したがって、同じ歪みを維持する力の大きさを変える必要がある。同様に、二軸方向試験においては、初期圧力は、2つの方向において試料の中心において所定の歪みに達するよう、隔壁試料140を膨張させる。その後、圧力は、二軸方向試験期間にわたって同じ歪みを維持するよう調整される。リラクセーション試験データは記録される。
【0016】
一の実施形態において、単軸方向試験プロシージャから得られるいくつかの例示的なリラクセーション試験データ310a〜eを、図3に示す力対時間チャートにプロットする。リラクセーション試験データ310a〜eのそれぞれは、異なる経年数(つまり0日、18日、31日、60日、109日)における試料からの結果を表わす。他の実施形態において、二軸方向試験プロシージャからのいくつかの例示的なリラクセーション試験データ410a〜eを、図4Aのグラフ400にプロットする。グラフ400は、プロットした5つの材料特性試験の結果410a〜eを有する対数対対数スケールにおける圧力−時間チャートである。それぞれの結果410a〜eは、一連のリラクセーション試験データを表わす。1セットの材料特性試験は、異なる経年数の試料の影響を含めるために長期にわたって行なわれる。グラフ400に示すように、5つの試験の結果410a〜eが、異なる経年数(つまり1日、1週間、1か月、3か月、6か月)において得られる。
【0017】
図6を参照して、ステップ606においては、プロセス600は、得られた試験結果をシフトさせ一致させることによって、1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータを決定する。例えば、グラフ400においては、5つの試験結果410a〜eのうちのそれぞれのペアを、圧力方向および時間方向の両方にシフトさせることによって、一致させる。圧力方向を矢印412によって示す。時間方向を矢印414によって示す。シフトさせ一致させた後の5つのシフトされた試験結果440a〜eを、図4Bに示すグラフ430にプロットする。
【0018】
さらに、どのように本発明が機能するかを例証するために、数値的な実施例を図2A乃至図2Bに示す。シミュレートされたリラクセーション試験データ210a〜dが、異なる経年数(つまりta=0、ta(1)、ta(2)およびta(3))において圧縮負荷下にある単軸方向試料に対して演算される。名目上の応力を、材料特性試験における緩和時間に対してプロットする。材料の伸張比は、試料における20%の圧縮歪みに対応する0.8である。材料は圧縮可能である。また、圧縮性は数値的に表わされる(n=10)。長期的な材料定数M、Cjおよびbjは以下のように設定される:
M=2,C1=30,C2=3,b1=2そしてb2=−2である。リラクセーション関数はProny級数(Prony series)によって表わされる:

この関係は、また、定数Cjを通じて粘弾性特性を弾性特性とリンクしている。材料定数Cjmは応力の単位であり、γmは減衰定数である。粘弾性材料定数は以下のとおりである:
k Rm γm
1 0.50 0.01
2 0.50 0.10
3 0.50 1.00
4 0.50 10.00
シミュレートされたリラクセーション試験データ210a〜dを、図2Aにプロットする。シミュレートされたリラクセーション試験データ210a〜dの垂直方向および水平方向シフトを用いて、マスター曲線220が得られ、それを図2Bに示す。種々の経時変化時間における1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータα(ta),β(ta)は以下のとおりである:
α(ta) β(ta
a=0 1.00 1.00
a(1) 1.25 0.50
a(2) 1.50 0.10
a(3) 2.00 0.05
これらの経時変化時間の間のα(ta),β(ta)に対する値を、2つの隣接した値の間の外挿から得ることができる。
【0019】
そして、プロセス600のステップ608においては、有限要素解析法アプリケーションモジュールを、材料特性試験において得られる1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータを用いるクロノ・レオロジー材料構造方程式を含むように生成する(例えば、プログラムし、コンパイルする)。そして、クロノ・レオロジー材料構造方程式を含んでいる(つまりプログラムしている)有限要素解析法アプリケーションモジュールを、少なくとも部分的にクロノ・レオロジー材料を含んでいる構造体における材料経時変化効果のシミュレートのために用いることができる。
【0020】
一の実施形態にかかる、例示的なクロノ・レオロジー材料構造方程式を図5A乃至図5Bに示す。式502は、伸張比λiの項で、粘弾性の非常に大きく圧縮可能な材料の主コーシー応力(principal Caucy stress)ti(t)を定義する。材料の歪みは、(λi−1)として定義される。添字「i」は、空間における3つの方向のそれぞれを表わす。材料定数Cj,bj,nは、長期試験データ(つまりt=∞)から決定される。また、リラクセーション関数gj(t)は、経時変化を受けていない試料のリラクセーション試験データから決定される。
【0021】
リラクセーション関数gj(t)を、一連の指数関数として得ることができ、式504に示す形を有すると仮定することができる。Rmは無次元の材料定数である。また、γmは減衰定数である。リラクセーション関数gj(t)が他のリラクセーション関数Gj(t)によって置き換えられる場合、式502は式506となる。Cjが、因数分解できる共通項であるからである。
【0022】
クロノ・レオロジー材料における材料経時変化効果に対して、式508は、第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータα(ta),β(ta)と経時変化時間としてのtaを含めるよう展開されている。式512,514,516は、式508と、材料特性試験から2つのパラメータを得たときの垂直方向のシフトlog(α(ta))および水平方向シフトlog(β(ta))と、の相関を示すために導き出される。
【0023】
粘弾性材料に対する構造方程式を、多くの場合、第1種Volterra型積分方程式によって記述することができる。一般に、ここに示した方法を、線形、疑線形、Hillフォーム(Hill−foam)粘弾性構造方程式に、そして第1種Volterra型積分方程式に拡張することができる。
【0024】
一の側面において、本発明は、ここで説明した機能性を実行可能な1つ以上のコンピュータシステムに対してなされたものである。コンピュータシステム700の一例を図7に示す。コンピュータシステム700は、プロセッサ704などの1つ以上のプロセッサを有する。プロセッサ704はコンピュータシステム内部通信バス702に接続されている。種々のソフトウェアの実施形態を、この例示的なコンピュータシステムで説明する。この説明を読むと、いかにして、他のコンピュータシステムおよび/またはコンピューターアーキテクチャーを用いて、本発明を実行するかが、関連する技術分野に習熟しているものには明らかになるであろう。
【0025】
コンピュータシステム700は、また、メインメモリ708、好ましくはランダムアクセスメモリ(RAM)を有しており、また二次メモリ710を有していてもよい。二次メモリ710は、例えば、1つ以上のハードディスクドライブ712、および/またはフレキシブルディスクドライブ、磁気テープドライブ、光ディスクドライブなどに代表される1つ以上のリムーバブルストレージドライブ714を有することができる。リムーバブルストレージドライブ714は、よく知られている方法でリムーバブルストレージユニット718から情報を読み取り、および/またはリムーバブルストレージユニット718に情報を書き込む。リムーバブルストレージユニット718は、リムーバブルストレージドライブ714によって読み取り・書き込みされるフレキシブルディスク、磁気テープ、光ディスクなどを表わす。以下にわかるように、リムーバブルストレージユニット718は、コンピューターソフトウェアおよび/またはデータを内部に記憶しているコンピュータが使用可能な記憶媒体を有している。
【0026】
別の実施形態において、二次メモリ710は、コンピュータプログラムあるいは他の命令をコンピュータシステム700にロードすることを可能にする他の同様な手段を有することもできる。このような手段は、例えば、リムーバブルストレージユニット722およびインターフェース720を有することができる。そのようなものの例は、プログラムカートリッジおよびカートリッジインターフェース(ビデオゲーム機に見られるようなものなど)、リムーバブルメモリチップ(消去可能プログラマブルROM(EPROM)、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュメモリーあるいはPROMなど)およびそれらに対応するソケットと、ソフトウェアおよびデータをリムーバブルストレージユニット722からコンピュータシステム700に転送させることを可能にする他のリムーバブルストレージユニット722およびインターフェース720と、が含まれうる。一般に、コンピュータシステム700は、プロセススケジューリング、メモリ管理、ネットワーク管理およびI/Oサービスなどのタスクを行なうオペレーティングシステム(OS)ソフトウェアによって制御され連係される。
【0027】
通信インターフェース724も、また、バス702に接続することができる。通信インターフェース724は、ソフトウェアおよびデータがコンピュータシステム700と外部装置との間で転送することを可能にする。通信インターフェース724の例には、モデム、ネットワークインターフェース(イーサネット(登録商標)・カードなど)、コミュニケーションポート、PCMCIA(Personal Computer Memory Card International Association)、スロットおよびカードなど、が含まれうる。通信インターフェース724を介して転送されたソフトウェアおよびデータは、通信インターフェース724によって受信可能な電子、電磁気、光学、あるいは他の信号とできる信号728の態様である。コンピュータ700は、特定の通信手続(つまりプロトコル)に基づくデータを送受信する。一般的なプロトコルの1つは、インターネットにおいて一般的に用いられているTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)である。一般的に、通信インターフェース724は、データファイルをデータネットワーク上で伝達される小さいパケットへ分割し、あるいは受信したパケットを元のデータファイルへと組み立てる(再構築する)、いわゆるパケットのアセンブル・リアセンブル管理を行う。さらに、通信用インターフェース724は、正しい宛先に届くようそれぞれのパケットのアドレス部分に対処し、あるいはコンピュータ700が宛先となっているパケットを他に向かわせることなく確実に受信する。この書類において、「コンピュータプログラム媒体」、「コンピュータ利用可能媒体」および「コンピュータ可読媒体」という用語は、リムーバブルストレージドライブ714および/またはハードディスクドライブ712に組み込まれたハードディスクなどの媒体を通常意味して用いられる。これらのコンピュータプログラム製品は、ソフトウェアをコンピュータシステム700に提供する手段である。本発明は、このようなコンピュータプログラム製品に対してなされたものである。
【0028】
コンピュータシステム700は、また、コンピュータシステム700にモニタ、キーボード、マウス、プリンタ、スキャナ、プロッターなどとアクセスさせる入出力(I/O)インターフェース730を有していてもよい。
【0029】
コンピュータプログラム(コンピュータ制御ロジックともいう)は、メインメモリ708および/または二次メモリ710にアプリケーションモジュール706として記憶される。コンピュータプログラムを、また、通信インターフェース724を介して受け取ることもできる。このようなコンピュータプログラムが実行された時、コンピュータプログラムによって、コンピュータシステム700がここに説明した本発明の特徴を実現することが可能になる。詳細には、コンピュータプログラムが実行された時、コンピュータプログラムによって、プロセッサ704がここに説明した本発明の特徴を実現することが可能になる。したがって、このようなコンピュータプログラムは、コンピュータシステム700のコントローラを表している。
【0030】
ソフトウェアを用いて発明を実行されるある実施形態において、当該ソフトウェアは、コンピュータプログラム製品に記憶され、あるいは、リムーバブルストレージドライブ714、ハードディスクドライブ712あるいは通信インターフェース724を用いて、コンピュータシステム700へとロードされる。アプリケーションモジュール706は、プロセッサ704によって実行された時、アプリケーションモジュール706によって、プロセッサ704がここに説明した本発明の機能を実現する。
【0031】
所望のタスクを実現するために、I/Oインターフェース730を介したユーザ入力(例えば、材料特性試験において得られたリラクセーション試験データから決定された1セットの第1および第2材料経時変化効果パラメータ)によって、1つ以上のプロセッサ704によって実行することができる1つ以上のアプリケーションモジュール706(例えば、クロノ・レオロジー材料構造方程式をプログラムしているつまり構成している有限要素解析法アプリケーションモジュール)を、メインメモリ708に、ロードすることもできる。動作においては、少なくとも1つのプロセッサ704がアプリケーションモジュール706のうち1つが実行されると、結果が演算され二次メモリ710(つまりハードディスクドライブ712)に記憶される。有限要素解析法の結果および/またはステータス(例えば、FEAモデルの衝突ダミー内の材料経時変化効果を含む自動車衝突シミュレーション)は、テキストあるいはグラフィック表現でI/Oインターフェース730を介してコンピュータに接続されたモニタへと、ユーザに報告される。
【0032】
本発明を具体的な実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態は単に例示的なものであって、本発明を限定するものではない。具体的に開示した例示的な実施形態に対する種々の変形あるいは変更が当業者よって提案されよう。例えば、クロノ・レオロジー材料をエラストマーとして説明したが、他の材料例えばゴム、フォームなどが含まれていてもよい。さらに、材料特性試験を、試料の単軸方向引張試験として説明し示したが、圧縮試験を代わりに用いることができる。最後に、発明者らは、アメリカ合衆国、カリフォルニア州マーティネスのKaiser Permanente Medical GroupのLydia T.Lee博士およびJames P.Berry博士がクロノ・レオロジー材料の項を提案されたことに謝意を述べたい。つまり、本発明の範囲は、ここに開示した具体的な例示的実施形態に限定されるのではなく、当業者が容易に思いつくあらゆる変形は、本願の精神および認識範囲内および添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
110 試料
112 力
140 試料
142 引張り力
700 コンピュータシステム
702 バス
704 プロセッサ
706 アプリケーションモジュール
708 メインメモリ
710 二次メモリ
712 ハードディスクドライブ
714 リムーバブルストレージドライブ
718 リムーバブルストレージユニット
720 インターフェース
722 リムーバブルストレージユニット
724 通信インターフェース
730 I/Oインターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ支援工学(CAE)解析において材料経時変化効果のシミュレーションを可能にする方法であって、
クロノ・レオロジー材料に対する複数の材料特性試験を行なうステップであって、該それぞれの試験は異なる経年数においてクロノ・レオロジー材料の一連のリラクセーション試験データを得るように構成されており、該一連のリラクセーション試験データのそれぞれは所定の変位あるいは歪みでクロノ・レオロジー材料の試料を維持することによって測定されているステップと、
1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータを、複数の材料特性試験のうちのそれぞれのペアの前記一連のリラクセーション試験データを関連づけることによって、決定するステップと、
材料経時変化効果を前記1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータを含んでいるクロノ・レオロジー材料構造方程式によって数値的に表わすことができるようCAE解析アプリケーションモジュールを構成するステップであって、該CAE解析アプリケーションモジュールは少なくとも部分的にクロノ・レオロジー材料を含んでいる工学構造体のCAE解析を行なうために用いられるとともに、該CAE解析はユーザが工学構造体の設計を改善する際の決定を支援するために用いられるステップと、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記それぞれの材料特性試験は、試料の軸方向応力としてのリラクセーション試験データを有する単軸方向の試験プロシージャを備える方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記それぞれの材料特性試験は、試料の膨張圧としてのリラクセーション試験データを有する二軸方向の試験プロシージャを備える方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、クロノ・レオロジー材料はエラストマーを備える方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、前記複数の材料特性試験のうちの前記それぞれのペアの前記一連のリラクセーション試験データを関連づけることは、さらに、
垂直軸と水平軸を有する二次元チャート上に第1および第2曲線として前記複数の材料特性試験のうちの前記それぞれのペアの前記一連のリラクセーション試験データをプロットすることであって、対数対対数スケールにおいて前記垂直軸はリラクセーション試験データを表わすとともに前記水平軸は時間を表していることと、
前記チャートにおいて垂直方向および水平方向にシフトすることによって第1および第2曲線を互いに一致させることと、
を備えている方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記第1時間依存材料経時変化効果パラメータが、前記それぞれのペアを一致させる垂直方向のシフト量である方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、前記第2時間依存材料経時変化効果パラメータが、前記それぞれのペアを一致させる水平方向のシフト量である方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、クロノ・レオロジー材料構造方程式は、クロノ・レオロジー材料の歪み−応力関係を定義する方法。
【請求項9】
コンピュータ上で実行されるコンピュータ支援工学(CAE)解析アプリケーションモジュールを用いて、少なくとも部分的にクロノ・レオロジー材料を含んでいる工学構造体における材料経時変化効果をシミュレートするためのシステムであって、そのシステムが、
ユーザ入力から1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータを受け取ることであって、前記1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータがCAE解析アプリケーションモジュールにおいて構成されるクロノ・レオロジー材料構造方程式に関連していることと、
クロノ・レオロジー材料構造方程式に応じて材料経時変化効果を有する工学構造体のCAE解析を行なうことと、
によって工学構造体のCAE解析を行なうように構成されるコンピュータを備えているシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータが、
クロノ・レオロジー材料に対する複数の材料特性試験を行なうことであって、該それぞれの試験は異なる経年数においてクロノ・レオロジー材料の一連のリラクセーション試験データを得るように構成されており、該一連のリラクセーション試験データのそれぞれは所定の変位あるいは歪みでクロノ・レオロジー材料の試料を維持することによって測定されていることと、
前記複数の材料特性試験のうちのそれぞれのペアの前記一連のリラクセーション試験データを関連づけることと、
によって決定されるシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、前記複数の材料特性試験のうちのそれぞれのペアの前記一連のリラクセーション試験データを関連づけることは、さらに、
垂直軸と水平軸を有する二次元チャート上に第1および第2曲線として前記複数の材料特性試験のうちの前記それぞれのペアの前記一連のリラクセーション試験データをプロットすることであって、対数対対数スケールにおいて前記垂直軸はリラクセーション試験データを表わすとともに前記水平軸は時間を表していることと、
前記チャートにおいて垂直方向および水平方向にシフトすることによって第1および第2曲線を互いに一致させることと、
を備えているシステム。
【請求項12】
少なくとも部分的にクロノ・レオロジー材料を含んでいる工学構造体における材料経時変化効果をシミュレートするためのコンピュータプログラム製品であって、
該コンピュータプログラミング製品はコンピュータ可読記憶媒体に記憶されており、
ユーザ入力から1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータを受け取るコンピュータ命令であって、前記1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータがコンピュータ支援工学(CAE)解析アプリケーションモジュールにおいて構成されるクロノ・レオロジー材料構造方程式に関連しているコンピュータ命令と、
クロノ・レオロジー材料構造方程式に応じて材料経時変化効果を有する工学構造体のCAE解析を行なうコンピュータ命令と、
を備えるコンピュータプログラム製品。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラム製品であって、前記1セットの第1および第2時間依存材料経時変化効果パラメータが、
クロノ・レオロジー材料に対する複数の材料特性試験を行なうことであって、該それぞれの試験は異なる経年数においてクロノ・レオロジー材料の一連のリラクセーション試験データを得るように構成されており、該一連のリラクセーション試験データのそれぞれは所定の変位あるいは歪みでクロノ・レオロジー材料の試料を維持することによって測定されていることと、
前記複数の材料特性試験のうちのそれぞれのペアの前記一連のリラクセーション試験データを関連づけることと、
によって決定されるコンピュータプログラム製品。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラム製品であって、前記複数の材料特性試験のうちのそれぞれのペアの前記一連のリラクセーション試験データを関連づけることは、さらに、
垂直軸と水平軸を有する二次元チャート上に第1および第2曲線として前記複数の材料特性試験のうちの前記それぞれのペアの前記一連のリラクセーション試験データをプロットすることであって、対数対対数スケールにおいて前記垂直軸はリラクセーション試験データを表わすとともに前記水平軸は時間を表していることと、
前記チャートにおいて垂直方向および水平方向にシフトすることによって第1および第2曲線を互いに一致させることと、
を備えているコンピュータプログラム製品。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−250824(P2010−250824A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91980(P2010−91980)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(509059893)リバーモア ソフトウェア テクノロジー コーポレーション (29)
【Fターム(参考)】