説明

コンピュータ装置、交通信号制御機

【課題】交通信号制御機等のコンピュータ装置のパラメータ設定変更作業の利便性を維持しつつ、変更すべきでないパラメータを誤った値に設定してしまうミスを防止する。
【解決手段】保守作業装置7が交通信号制御機5に対して定数ファイルの取得を要求した場合、交通信号制御機5は、変更すべきでない不変パラメータの設定値を記述したテキスト文をコメント文として作成した上で、定数ファイルを保守作業装置7宛に送信する。当該定数ファイルを編集して必要なパラメータの値を変更し、保守作業装置7から交通信号制御機5に対して送信した場合、不変パラメータの設定値を記述したテキスト文がコメント文となっているために、万一、不変パラメータの設定値が交通信号制御機5に既に設定されている値とは異なっている場合であっても、その不変パラメータの値が変更される心配がなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラメータ値を記述したテキストファイルを用いてパラメータの設定を行うと共に、設定されたパラメータ値をテキストファイルで取り出すことが可能なコンピュータ装置等に関し、特に交通管制システムに用いられる交通信号制御機に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイルシステムを有するコンピュータ装置では、複数のパラメータの値を記憶したファイルをコンピュータ装置の記憶装置内の所定の場所に格納しておき、前記コンピュータ装置や前記コンピュータ装置に搭載されたアプリケーションソフトウェアが起動する時に、前記ファイルに記述されたパラメータの値を読み込み、読み込んだパラメータ値に従って動作する仕組みが用いられることがある(特許文献1参照)。
この際、前記ファイルをテキストファイル形式とすることで、汎用的なエディタソフトを用いて、容易にパラメータの値を閲覧や編集することが可能となるため、ユーザにとっての利便性が高くなるというメリットがある。
【0003】
一方、組込系のコンピュータ装置では、ファイルシステムを有していないケースが多く、一般的に、パラメータの値はテキスト形式以外の形式でROM(Read Only Memory)に記憶させる方法が用いられる。
このような組込系コンピュータ装置の中には、設定すべきパラメータの名称や識別コードとその値の組み合わせを記述したテキストファイル(以下、定数ファイル)を保守用のパーソナルコンピュータ等から送信するインタフェースを備え、前記送信される定数ファイルによってパラメータの設定を変更することが可能なものも存在する。
【0004】
さらに、前記組込系コンピュータ装置の中には、定数ファイルの送信により設定を変更することができる機能に加えて、前記組込系コンピュータ装置の現時点におけるパラメータの設定値を確認するために、それらを記述した定数ファイルを外部からの要求に応じて取り出す機能を有するものも存在する。
特に、通信装置や高度な制御装置などの場合には、膨大な数のパラメータを有するものがあり、運用に際して用いられるこれらのパラメータを運用担当者が繰り返し変更しながら最適な設定値を決めることが多く、運用に供される各装置の最終的な定数ファイルを保管して確認できるようにしておく必要があるため、これらの装置から定数ファイルを取り出す機能は極めて有用性が高い。
【0005】
また、近年の交通管制システムでは、通信手順としていわゆるOSI(Open Systems Interconnection)参照モデルのネットワーク層(第3層)にインターネットプロトコル(以下、IPという。)を用いたネットワークシステムが普及してきている(特許文献2参照)。
交通管制システムの通信方式にIPを採用したものとしては、UD伝送方式が規格化されており、交通管制システムにおけるシステムアプリケーションに関する各装置間の情報交換にはDATEX−ASNプロトコルを採用している。なお、UD形伝送方式におけるフォーマットや手順等の仕様の詳細については、社団法人新交通管理システム協会(以下、UTMS協会)から発行されている規格書に記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−157159号公報
【特許文献2】特許第3456170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような仕組みを持つ組込系コンピュータ装置を扱う保守作業員は、コンピュータ装置の運用条件を変更するためにパラメータを書き換える際、一旦、保守対象のコンピュータ装置から定数ファイルを取り出した上で、その定数ファイルのうち変更すべきパラメータの設定値のみを書き換える編集作業を行った後、編集後の定数ファイルを前記コンピュータ装置に送信する、という方法を用いることが多いが、大半のパラメータの設定値が同一である複数のコンピュータ装置の定数ファイルを同時に作成する場合には、前記方法で、あるコンピュータ装置用に作成した1つの定数ファイルを必要な数だけコピーして、設定値の相違するパラメータのみを書き換えるという作業を繰り返し行い、複数のコンピュータ装置用の定数ファイルをまとめて作成することがある。
【0008】
また、保守対象のコンピュータ装置を故障等により予備のコンピュータ装置に交換することが必要となった場合に備えて、予めコンピュータ装置から定数ファイルを取り出して保管しておき、実際に故障等によって交換作業を行う際に、保管しておいた定数ファイルを前記予備コンピュータ装置に送信することで、交換前後における運用互換性を確保するといったことが行われることも多い。
【0009】
このように、コンピュータ装置のパラメータを設定する際に、異なるコンピュータの定数ファイルやその定数ファイルの一部を書き換えたものを用いた場合、本来変更すべきではないパラメータの値を誤って変更してしまう恐れがあり、保守作業員のミスを誘発するという問題がある。
というのも、定数ファイルに記述されるパラメータの中には、そのコンピュータ装置に唯一固有の設定値が割り当てられる類のものが存在するためである。例えば、そのコンピュータ装置の製造業者や製造場所等に関する情報や、全世界で唯一固有の値を工場出荷時に設定することが義務づけられているMAC(Media Access Control)アドレスの情報などである。これらの情報は、一旦変更してしまうと、元々設定されていた値が分からなくなり、どのような値が設定されていたかを別途記録していなかった場合には、復元不可能となってしまう。
このような問題は、保守作業員が誤って異なるコンピュータ装置用の定数ファイルを用いて作業してしまった場合にも発生しうる。
【0010】
このような不変パラメータについては、前記定数ファイルの記述対象外とする方法も考えられるが、不変パラメータの情報を知りたい場合に、その内容を容易に取得できなくなるという弊害が生じる。
また、コンピュータ装置に定数ファイルを送信して設定を変更する場合、コンピュータ装置側で定数ファイルに含まれるパラメータが不変パラメータであるか否かを判断し、不変パラメータについては変更を行わない、という方法を採用することもできるが、不変パラメータの種類が増加した場合には、その都度設定変更用ソフトウェアを修正する必要が生じるという問題がある。さらに、定数ファイルを受信した受信手段が、パラメータ毎にまず不変か可変かを判断する処理を行わなければならないため、処理の負荷が大きくなるという問題もある。また、不変パラメータを例外的に変更する必要性が生じた場合に、ソフトウェアに変更を許可しない機能を実装してしまうと、一切変更することができなくなるという問題もある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、外部装置から定数ファイルを送信することによってコンピュータ装置のパラメータを書き換える場合に、その利便性を維持しながら不変パラメータの変更を防止できるコンピュータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第一の発明にかかるコンピュータ装置は、パラメータの名称又は識別コードとその値とがパラメータの種類ごとに記述された構造を有するテキストファイルを外部装置とやりとりすることが可能とされており、前記構造を有するテキストファイルを前記外部装置から受信する受信部と、受信した前記テキストファイルに記述されたパラメータの値を記憶する記憶部と、前記外部装置からの要求に応じて、前記記憶部に記憶されたパラメータについて、前記構造を有するテキストファイルを作成して外部装置宛に送信する送信部とを有し、前記受信部は、受信したテキストファイルに含まれるコメント文とコメント文以外の文とを識別する識別手段と、前記コメント文を破棄するコメント文破棄手段と、前記コメント文以外の文からパラメータの名称又は識別コードとその値とを取得する設定値取得手段とを有し、前記送信部は、前記記憶部に記憶されたパラメータのうち、不変のパラメータの名称又は識別コードとその値とをコメント文として記述するとともに、可変のパラメータの名称又は識別コードとその値とをコメント文以外の文として記述した送信用テキストファイルを作成するテキストファイル作成手段を有する(請求項1)。
【0013】
また、第二の発明にかかる交通信号制御機は、パラメータの名称又は識別コードとその値とがパラメータの種類ごとに記述された構造を有するテキストファイルを外部装置とやりとりすることが可能とされており、前記構造を有するテキストファイルを前記外部装置から受信する受信部と、受信した前記テキストファイルに記述されたパラメータの値を記憶する記憶部と、前記外部装置からの要求に応じて、前記記憶部に記憶されたパラメータについて、前記構造を有するテキストファイルを作成して外部装置宛に送信する送信部とを有し、前記受信部は、受信したテキストファイルに含まれるコメント文とコメント文以外の文とを識別する識別手段と、前記コメント文を破棄するコメント文破棄手段と、前記コメント文以外の文からパラメータの名称又は識別コードとその値とを取得する設定値取得手段とを有し、前記送信部は、前記記憶部に記憶されたパラメータのうち、不変のパラメータの名称又は識別コードとその値とをコメント文として記述するとともに、可変のパラメータの名称又は識別コードとその値とをコメント文以外の文として記述した送信用テキストファイルを作成するテキストファイル作成手段を有する(請求項4)。
【0014】
これらの発明にかかるコンピュータ装置及び交通信号制御機によれば、不変パラメータの値をテキストファイルのコメント文に含ませるようにしたため、当該テキストファイルを取得した後、異なるコンピュータ装置等に当該テキストファイルを送信した場合であっても、不変パラメータの値が書き換わることがなく、復元不可能になることを回避できる。また、前記テキストファイルの不変パラメータ値を誤って編集した後に送信した場合であっても、コメント文とされているから値が書き換わることは無い。また、コメント文か否かを識別して一律にコメント文を破棄する機能を受信部に持たせることで、不変パラメータの種類が増加した場合であっても、受信部のソフトウェアを変更する必要がなくなり、ソフトウェアの処理をシンプルなものとすることができる。また、テキストファイルを取得した作業者が、操作マニュアル等を参照しなくても、不変パラメータか可変パラメータかを即座に判断することができ、書き換えてはならないパラメータがどれかを的確に区別できるようになる。
【0015】
なお、前記テキストファイルをやりとりする場合には、ファイル転送プロトコル(FTP)を用いることが望ましい(請求項2)。
FTPを用いることで、コンピュータ装置の設置地点とは離隔した地点においてもテキストファイルの送受信を行うことが可能となる。また、汎用性の高いFTPを用いることで、どのような種類の外部装置であってもテキストファイルをやりとりすることができるようになる。
【0016】
なお、前記不変のパラメータとしては、例えば、前記コンピュータ装置の備える通信デバイスのMACアドレスの情報、前記コンピュータ装置の製造業者を示す情報、前記コンピュータ装置の製造時点を示す情報、前記コンピュータ装置の製造地点を示す情報、前記コンピュータ装置の製造条件を示す情報、前記コンピュータ装置の工場検査の結果を示す情報、または、前記コンピュータ装置の備える通信デバイスのうちリモート接続を許可する通信デバイスのIPアドレスなどが挙げられ、前記テキストファイルには、これらのうち2つ以上が含まれていても良い(請求項3)。
これらのパラメータのうちリモート接続を許可する通信デバイスのIPアドレス以外のパラメータは、いずれもコンピュータ装置等のハードウェアそのものの固有の情報であるから、原則として書き換えられることの無いものである。前記テキストファイルにおいてこれらを不変なパラメータとしてコメント文に含ませることで、誤って書き換えられることを防止できる。
また、リモート接続を許可する通信デバイスのIPアドレスは、特にリモートで定数ファイルの設定作業を実施している場合に、誤って変更したために変更後にリモート接続できなくなるという問題を未然に回避することができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明のコンピュータ装置、交通信号制御機によれば、外部装置から定数ファイルを送信することによってパラメータを書き換える場合に、不変パラメータを誤って変更することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る交通信号制御機5を含む交通システムの構成の概要を示す模式図である。また、図2は交通信号制御機5の機能ブロックを示すブロック図である。
【0019】
〔システムの全体構成〕
交通管制センターには、信号制御装置1、情報提供装置2、中央ルータ3、及び保守作業装置7が設置され、一方、路側には、端末ルータ4、交通信号制御機5、および光ビーコン6が設置されている。そして、中央ルータ3と端末ルータ4は通信回線によって接続されている。
なお、これらの装置は、本体を制御するCPU、メモリやハードディスク等の記憶装置、および通信用のシリアル通信デバイス等により構成されており、各装置そのものの機能は前記記憶装置に格納されたソフトウェアや各種ハードウェアによって実現されている。
【0020】
信号制御装置1は、中央ルータ3および端末ルータ4を介して交通信号制御機5と通信しており、例えば、交通信号制御機5の制御する信号灯器(図2)の制御に関する指示を与えたり、交通信号制御機5の動作履歴に関する情報を受け取ったりする機能を備えている。
また、情報提供装置2は、同様に、中央ルータ3および端末ルータ4を介して光ビーコン6と通信しており、例えば、光ビーコン6に対して車両提供用の交通情報等を送信したり、車両から発信された旅行時間等の情報を受け取ったりする機能を備えている。
【0021】
本交通システムでは、各装置間の通信はIPで行われており、信号制御装置1と交通信号制御機5との間の情報交換や、情報提供装置2と光ビーコン6との間の情報交換にはDATEX−ASNプロトコルが用いられている。
また、交通管制センターの中央ルータ3には、保守作業装置7を随時接続することができるようになっており、保守作業員は、その保守作業装置7からtelnetやFTPなどのプロトコルで交通信号制御機5や光ビーコン6に接続し、リモートでパラメータの確認・変更等の保守作業を実施することができるようになっている。
【0022】
なお、本実施形態では保守作業装置7を独立した装置としているが、信号制御装置1等が保守作業装置7の保守機能を保持する構成としても良い。
また、保守作業装置7は端末側で端末ルータ4等に接続して使用することもできるし、交通信号制御機5に直接接続して使用することもできる。すなわち、ネットワーク上で保守対象となる装置に対して通信到達可能なところであれば、どこに接続しても良い。
【0023】
ここで、前記IPやDATEX−ASNプロトコルによる通信を行うには、各装置にIPアドレス、通信用のポート番号やドメイン名などの各種パラメータを設定した上で、装置間に通信セッションを開設する必要があるため、各装置には多数の通信用のパラメータを設定しなければならない。
また、例えば、交通信号制御機5の場合には、信号制御を行うために用いられるパラメータの設定を行う必要もある。
【0024】
〔交通信号制御機5の構成〕
次に、図2及び図3を用いて、交通信号制御機5の基本的な動作を説明する。
図3は、交通信号制御機5に含まれる通信制御部8の詳細な機能構成を示すブロック構成図である。
【0025】
交通信号制御機5には、信号制御装置1等の中央装置や隣接する他の交通信号制御機(図示せず)等との間で情報をやりとりするための通信制御部8が格納されている。
通信制御部8は、信号制御装置1から信号灯器の各信号灯色の表示時間を決定するための根拠となる信号制御指令情報を受信手段802により受信したり、交通信号制御機5の信号制御実行動作履歴を示す情報を送信手段801により所定の周期毎に信号制御装置1宛に送信したりする機能を有する。
また、隣接する他の交通信号制御機との間で信号制御に関する情報や車両感知器(図示せず)において計測された交通量等の情報を交換する機能も有する。
これらの情報は、DATEX−ASNプロトコルの手順に従ってやりとりされる。
【0026】
信号制御プラン作成手段501は、前記信号制御指令情報や信号制御定数テーブル503に記憶されている信号制御パラメータ等に基づいて、所定周期毎(通常は1サイクル毎)の信号制御プランを作成し、信号制御プランテーブル502に記憶する機能を有する。
ここで、信号制御プランとは、信号灯器の各信号灯色の表示予定時間等を指す。
信号灯器制御手段511は、信号制御プランテーブル502に記憶された前記信号制御プランに基づいて、信号灯器の各信号灯色を点灯等する。
【0027】
〔通信制御部8の定数ファイル送受信動作〕
ここで、通信制御部8による定数ファイルの送受信動作について、詳細に説明する。
図4は保守作業装置7から定数ファイルを受信した場合の動作フローであり、図5は保守作業装置7から定数ファイルの送信を要求された場合の動作フローである。
また、図6は定数ファイルの一例を示す図である。
まず、図5に従って、交通信号制御機5から定数ファイルを取り出す動作について説明する。
【0028】
交通信号制御機5の通信制御部8ではFTPサーバ機能を実現するためのFTPデーモン841が動作しており、外部の装置からのFTP接続要求があるかどうかを常時監視している。
保守作業員が、パーソナルコンピュータである保守作業装置7において所定の操作を行い、ファイル転送プロトコル(FTP)によって交通信号制御機5に対して接続を要求すると、FTPデーモン841によって当該要求が受け付けられ、接続が確立する。
そして、保守作業員は、保守作業装置7においてgetコマンドの入力等を行うことにより、FTPのファイル転送要求を交通信号制御機5に対して送信する。
【0029】
通信制御部8が前記ファイル転送要求を受けたら(ステップS201)、定数ファイル作成手段821は、中身が空の初期化された定数ファイルを作成してオープンする(ステップS202)。そして、パラメータテーブル831に記憶しているパラメータを1つずつ読み出す処理を実行する(ステップS203)。
ここで、読み出されたパラメータの属性が不変パラメータである場合、まず、コメント文であることを示す文字列を前記定数ファイルに書き込む(ステップS204)。
ここで、コメント文であることを示す文字列とは、例えば「/*」のように複数の記号や文字を組み合わせた文字列であっても良いし、「!」や「#」のように1つの記号等であっても良い。
そして、前記コメント文であることを示す文字列を書き込んだ後に、後続のフィールドに前記パラメータの名称(前記パラメータであることを示す識別コードでも良い。)を書き込み、さらにその後に前記パラメータの値を記入する(ステップS205)。
例えば、前記パラメータが通信制御部8の有する通信用イーサネット(登録商標)デバイスのMACアドレスであれば、本パラメータは不変パラメータであるから、「/* MAC_ADDRESS 01.02.03.04.05.06」などのように、コメント文を示す文字列「/*」に続けて、パラメータ名称とその値を順次書き込み、最後に改行文字を書き込んで当該パラメータに関する処理を終了する(ステップS206)。
【0030】
このように、ステップS203〜S206で示した一連の動作を、パラメータテーブル831に記憶しているパラメータの数だけ繰り返し実行する。
すなわち、一連の動作により、パラメータ数と同じ行数のテキスト文が記載された定数ファイルが作成される。
そして、完成した前記定数ファイルを、送信手段801がFTPの手順に従って保守作業装置7宛に送信する(ステップS207)。
なお、定数ファイルには、パラメータを記載した行以外の文が含まれていても良く、例えば、ファイルの先頭や最後に、装置の名称やファイル作成日時に関する情報などを記載しておいても良い。この場合、これらの文はコメント文として書き込まれる。
【0031】
パラメータテーブル831に記憶されるパラメータとしては、交通信号制御機5が有する1又は複数の通信デバイスのそれぞれに割り当てられるIPアドレスとサブネットマスク、アプリケーションデータを送受信する相手毎に設定するDATEX−ASNプロトコル用のトランスポート層のポート番号、ドメイン名、ユーザ名、及びパスワード等の各種パラメータ、通信制御部8がIPルーティング機能を有する場合には、ルーティングに関するルーティングテーブル情報やリンクコストの情報などがある。
ここで言及したパラメータは、交通信号制御機5の設置地点やネットワーク構成等が変更されれば、随時その設定値を変更する必要が生じるパラメータであるため可変パラメータである。
ただし、信号制御装置1等の中央装置と通信するために用いられる通信デバイスのIPアドレスとサブネットマスクについては、一旦誤った値に書き換えてしまうと交通管制センターからリモートで接続することができなくなるため、不変パラメータとして定義するようにしても良い。もしリモートで作業している最中に誤って書き換えてしまうと、交通信号制御機5の設置された地点まで出向して作業しなければならなくなる、というリスクを負うため、前記中央装置と通信するために用いられる通信デバイスのIPアドレスとサブネットマスクについては、不変パラメータとしておいても良い。
【0032】
一方、パラメータテーブル831に記憶されるパラメータのうち不変のパラメータとしては、交通信号制御機5の製造業者を示す情報、交通信号制御機5の製造時点を示す情報、交通信号制御機5の製造地点を示す情報、交通信号制御機5の製造条件を示す情報、及び、交通信号制御機5の工場検査の結果を示す情報等が挙げられる。
これらの情報は、製造時や工場出荷時において一意に定められるものであるから、保守作業員等によって後で書き換えることは許されないパラメータである。
ただし、製造時や工場出荷時等に本来設定されるべき値とは異なる値を設定してしまった場合には、例外的に保守作業員が指示に従って書き変えることもありうる。
【0033】
次に、図4に従って、交通信号制御機5に対して定数ファイルを送信し、交通信号制御機5にパラメータを設定する動作について説明する。
【0034】
定数ファイルの送信に先立って、保守作業員は、図5の手順で取得した定数ファイルをパーソナルコンピュータである保守作業装置7の汎用的なテキストファイルエディタ等で開き、その内容を確認する。そして、前記定数ファイルのうち、変更したいパラメータを選定して、当該パラメータの設定値を編集して保存する。
例えば、信号制御装置1との間での通信が正常に開始されないような場合、保守作業員は、信号制御装置1との通信に関するパラメータの値を順番に確認する。例えば、これらのパラメータのうち交通信号制御機5のユーザ名の値が誤っている場合には、当該値を正しい値に変更する。そして、変更したい値を全て編集したら定数ファイルの内容を確定させて保存し、テキストファイルエディタの操作を終了する。
【0035】
そして、保守作業員は所定の操作を行い、ファイル転送プロトコル(FTP)によって交通信号制御機5に対して接続を要求する。前記要求は、通信制御部8のFTPデーモン841によって受け付けられ、保守作業装置7と交通信号制御機5の接続が確立する。
そして、保守作業員は、保守作業装置7においてputコマンドの入力等を行うことにより、FTPによって交通信号制御機5に対する前記定数ファイルの転送を開始する。
【0036】
通信制御部8が前記定数ファイルを受信したら(ステップS101)、コメント文識別・破棄手段811は、前記定数ファイルの先頭から1行ずつテキスト文を取り出し(ステップS102)、当該テキスト文にコメント文を示す文字列が含まれているかどうか判定する(ステップS103)。
もし、コメント文を示す文字列(例えば「/*」や「!」など)が含まれている場合には、その1行のテキスト文のうち、当該文字列に後続する部分をコメント文であると見なして破棄する(ステップS104)。
この場合、コメントを示す文字列は、前記1行のテキスト文の先頭にある場合だけではなく、途中に含まれている場合があっても良い。例えば、「SUBNETMASK 255.255.255.0 /* サブネットマスクは24ビット」などのようなテキスト文であれば、文字列「/*」以降の部分のみが破棄され、それ以前の部分は有効なものとして取り扱われる。
【0037】
そして、コメント文以外の有効な部分と判定されたテキスト文からは、パラメータ名称又は識別コードとその設定値を順次取り出し(ステップS105)、取り出した当該パラメータの設定値をパラメータテーブル831に記憶させる(ステップS106)。
このように、ステップS102〜S106で示した一連の動作を、定数ファイルの総行数分だけ繰り返し実行する。すなわち、この一連の動作により、定数ファイルに記載された全てのテキスト文から、必要なパラメータの設定値を全て取り出すことができる。
【0038】
なお、ここでは、コメントを示す文字列以降の部分をコメント文とする方法を記載したが、所定の文字列の組み合わせ(例えば、「/*」と「*/」など)を決めておいて、当該組み合わせによって囲まれた部分をコメント文とみなす方法でも良い。
例えば、「SUBNETMASK 255.255.255.0 /* サブネットマスクは24ビット */」などのようにコメント文を記載する方法を用いても良い。
【0039】
〔保守作業員による定数ファイル送受信操作の態様〕
保守作業員が、定数ファイルの送受信操作によって保守作業を行う場合の態様としては、いくつかのパタンが想定される。
【0040】
第一のケースは、実施形態で記載した通り、遠隔地からリモートでパラメータ値を変更する場合である。
このケースでは、当該遠隔地との間で通信を確立した状態で作業を継続しなければいけないため、うっかりIPアドレス等の設定を変更してしまうと、わざわざ交通信号制御機5の設置地点まで出向して作業をしなければいけなくなるというリスクを負う。
そこで、本発明を適用して前記IPアドレスを不変パラメータとして扱い、交通信号制御機5から取り出す定数ファイルにおいて該IPアドレスに関するテキスト文をコメント文とすることで、保守作業員が誤ってIPアドレスを変更してしまうことを防止できるようになる。
なお、仮に前記IPアドレスを同一のネットワークセグメントのIPアドレスに変更するだけであれば、変更後であってもリモートで接続することは可能である。
本発明であれば、リモートで作業している場合に例外的にIPアドレスを変更する必要が生じたら、コメント文とされている前記IPアドレスに関するテキスト文に加えられている「/*」等の文字列を消去するだけで、容易に設定変更をすることが可能となるため、大変利便性が高い。
仮に、このように、一旦、前記IPアドレスに関するテキスト文をコメント文以外の文としても、保守作業完了後に再び交通信号制御機5から定数ファイルを取り出せば、前記テキスト文はコメント文として取り出されるから、当該定数ファイルを誤って他の交通信号制御機に送信した場合であっても、IPアドレスが書き換えられる恐れはなくなる。
【0041】
第二のケースは、保守作業員が一部のパラメータが同一の値として設定される複数の交通信号制御機の定数ファイルを一度にまとめて作成した後、各交通信号制御機に送信して設定する場合である。
このケースでは、通常、前記複数の交通信号制御機のうちから選んだ一の交通信号制御機から定数ファイルを1つ取り出し、その定数ファイルを保守作業装置7上で複数のファイルにコピーし、一部の同一値に設定するパラメータ以外のパラメータを順次変更する編集作業を行うことがよくある。
この際、前記選んだ一の交通信号制御機5は、10年前にある業者によって製造されたものであるが、他の交通信号制御機は、別の業者によって今年製造されたものである場合には、誤って製造業者に関する情報や製造時点に関する情報を書き換えてしまうおそれがある。
例えば、前記選んだ一の交通信号制御機から取り出した定数ファイルのうち、設定の異なるIPアドレスやDATEX−ASNプロトコル用の通信パラメータは編集したが、製造業者に関する情報等が異なっていることに気がつかずに他の交通信号制御機に送信してしまうような場合である。
もし仮に、今年製造されたこの別の交通信号制御機の製造業者の名称等を管理簿等に記載していなかった場合には、当該装置がどの業者によっていつ製造されたものであるかを特定することができなくなる、という重大な問題を引き起こす。
しかし、本発明によれば、定数ファイルのうち製造業者の名称等の不変パラメータについては、前記選んだ一の交通信号制御機5から取得した時点でコメント文として記述されているから、このような保守作業員のミスによる問題を未然に回避できるようになる。
【0042】
第三のケースは、保守作業員が故障した交通信号制御機5を予備の交通信号制御機に置き換える際に、予め故障前に交通信号制御機5から取り出していた定数ファイルを予備の交通信号制御機に送信して設定する場合である。
このケースでも、第二のケースと同じように、本発明によれば、定数ファイルのうち製造業者の名称等の不変パラメータについては、前記故障前に交通信号制御機5から取り出した時点でコメント文として記述されているから、このような作業によって誤って書き換えられる心配がなくなる。
そして、設定が完了した後に、前記予備の交通信号制御機から定数ファイルを取得しておけば、予備の交通信号制御機の保有する全てのパラメータの値を正しく保管することが可能になる。
【0043】
これら3つのケースでは、本発明の他にも、(1)定数ファイルを受信してパラメータ値を置き換える処理の中に、不変パラメータの書き換えを防止する処理を実装しておく、(2)交通信号制御機から取得できる定数ファイルに不変パラメータを含めないようにする、といった方法が考えられる。
しかし、(1)の方法では、不変パラメータの種類が増加した場合に、その都度パラメータ値を書き変える処理を改造しなければならないという問題あると共に、例外的に不変パラメータの値を変更したい場合に変更できないという問題も発生する。例えば、前記製造時点の情報が誤って前年の日付となっていたような場合である。
本発明であれば、コメント文として記載されている文の先頭に書かれた「/*」等の文字列を消去する編集を行ってから定数ファイルを送信することで、容易に例外的な作業にも対応でき、大変有用である。
(2)の方法では、定数ファイルの取得によって、該当する交通信号制御機の製造業者や製造時点等を確認することができなくなるという問題がある。特に、全ての交通信号制御機の定数ファイルを一括で保存しておいて、それらの定数ファイルを一度に読み込んで交通信号制御機の製造業者や製造時点等のリストを作成する場合がよくあるが、この方法では、そのようなリスト作成は実現できなくなってしまう。
その点、本発明であれば、定数ファイルにコメント文として記載された製造業者や製造時点等の情報を取得しながらリストを作成することが可能である。
【0044】
この発明では、不変パラメータの種類が増加した場合であっても、定数ファイルの受信処理の内容を原則として変更する必要がない。不変パラメータの種類の増加に関係なく、コメント文を示す文字列を破棄するという共通的な処理が予め実装されていれば、いくら不変パラメータの種類が増えても処理の内容を変更する必要はない。
【0045】
本発明は、交通信号制御機に適用できるだけでなく、例えば端末ルータ4や光ビーコン6等、あらゆるコンピュータ装置に適用できることは言うまでもない。
【0046】
なお、本発明における交通信号制御機5や信号制御装置1等は、1の筐体によって実現されていても良いし、複数の筐体の組み合わせによって実現されても良い。また、これらは、それぞれ1つのコンピュータによって実現されていても良いし、複数のコンピュータを組み合わせて実現されていても良い。
【0047】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る交通システムの構成の概要を示す模式図である。
【図2】交通信号制御機5の機能ブロックの一例を示すブロック図である。
【図3】交通信号制御機5に含まれる通信制御部8の詳細な機能構成の一例を示すブロック構成図である。
【図4】保守作業装置7から定数ファイルを受信した場合の通信制御部8の動作フローの一例を示す図である。
【図5】保守作業装置7から定数ファイルの送信を要求された場合の通信制御部8の動作フローの一例を示す図である。
【図6】定数ファイルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 信号制御装置
2 情報提供装置
3 中央ルータ
4 端末ルータ
5 交通信号制御機
6 光ビーコン
7 保守作業装置
8 通信制御部
501 信号制御プラン作成手段
502 信号制御プランテーブル
503 信号制御定数テーブル
511 信号灯器制御手段
801 送信手段
802 受信手段
811 コメント文識別・破棄手段
821 定数ファイル作成手段
831 パラメータテーブル
841 FTPデーモン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラメータの名称又は識別コードとその値とがパラメータの種類ごとに記述された構造を有するテキストファイルを外部装置とやりとりすることが可能なコンピュータ装置であって、
前記構造を有するテキストファイルを前記外部装置から受信する受信部と、
受信した前記テキストファイルに記述されたパラメータの値を記憶する記憶部と、
前記外部装置からの要求に応じて、前記記憶部に記憶されたパラメータについて、前記構造を有するテキストファイルを作成して外部装置宛に送信する送信部とを有し、
前記受信部は、
受信したテキストファイルに含まれるコメント文とコメント文以外の文とを識別する識別手段と、
前記コメント文を破棄するコメント文破棄手段と、
前記コメント文以外の文からパラメータの名称又は識別コードとその値とを取得する設定値取得手段とを有し、
前記送信部は、
前記記憶部に記憶されたパラメータのうち、不変のパラメータの名称又は識別コードとその値とをコメント文として記述するとともに、可変のパラメータの名称又は識別コードとその値とをコメント文以外の文として記述した送信用テキストファイルを作成するテキストファイル作成手段を有すること
を特徴とするコンピュータ装置。
【請求項2】
前記外部装置との間でファイル転送プロトコル(FTP)を用いて前記テキストファイルを送受信すること
を特徴とする請求項1に記載のコンピュータ装置。
【請求項3】
前記不変のパラメータには、
前記コンピュータ装置の備える通信デバイスのMACアドレスの情報、前記コンピュータ装置の製造業者を示す情報、前記コンピュータ装置の製造時点を示す情報、前記コンピュータ装置の製造地点を示す情報、前記コンピュータ装置の製造条件を示す情報、前記コンピュータ装置の工場検査の結果を示す情報、及び、前記コンピュータ装置の備える通信デバイスのうちリモート接続を許可する通信デバイスのIPアドレスのうち少なくとも1つが含まれること
を特徴とする請求項1又は2に記載のコンピュータ装置。
【請求項4】
パラメータの名称又は識別コードとその値とがパラメータの種類ごとに記述された構造を有するテキストファイルを外部装置とやりとりすることが可能な交通信号制御機であって、
前記構造を有するテキストファイルを前記外部装置から受信する受信部と、
受信した前記テキストファイルに記述されたパラメータの値を記憶する記憶部と、
前記外部装置からの要求に応じて、前記記憶部に記憶されたパラメータについて、前記構造を有するテキストファイルを作成して外部装置宛に送信する送信部とを有し、
前記受信部は、
受信したテキストファイルに含まれるコメント文とコメント文以外の文とを識別する識別手段と、
前記コメント文を破棄するコメント文破棄手段と、
前記コメント文以外の文からパラメータの名称又は識別コードとその値とを取得する設定値取得手段とを有し、
前記送信部は、
前記記憶部に記憶されたパラメータのうち、不変のパラメータの名称又は識別コードとその値とをコメント文として記述するとともに、可変のパラメータの名称又は識別コードとその値とをコメント文以外の文として記述した送信用テキストファイルを作成するテキストファイル作成手段を有すること
を特徴とする交通信号制御機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−269192(P2008−269192A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109945(P2007−109945)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】