説明

コンベア装置

【課題】スプロケットを用いたチェーン駆動機構により通常の踏段チェーンを駆動する場合でも、深い噛み合い角度を維持しながら踏段チェーンを適切に駆動することができ、また、チェーン駆動機構を構成する循環チェーンの局部的な磨耗を抑制して、踏段上での乗り心地を良好なものとする。
【解決手段】循環チェーンを循環運動させて踏段チェーンに推力を与えるチェーン駆動機構を備える。循環チェーンは、ピッチ長さが踏段チェーンの踏段リンクのピッチ長さと同じもしくは倍数とされた複数のチェーンリンク13aを、ヒンジを介して連結した構成であり、各チェーンリンク13aには、直線運動時において、踏段チェーンの踏段ローラ4bを搭載する搭載面13cと、当該搭載面13c上の踏段ローラ4bの前後の踏段ローラ4b’、4b’’に接触する押付面13dとが設けられ、踏段ローラ4bが搭載面13c及び押付面13dのみで接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータや動く歩道等のコンベア装置に係り、特に、循環チェーンで脈動が生じず、踏段上での乗り心地が良好なコンベア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道等のコンベア装置は、無端状に連結された複数の踏段を循環移動させて、踏段上に搭乗した乗客を乗り口から降り口へと搬送する構造である。複数の踏段には踏段ローラが取付けられており、各踏段は、構造物に設置された踏段ガイドレール上を踏段ローラが転動することで、水平を保ちながら乗口と降口の間を循環移動するようになっている。通常、これら複数の踏段は踏段チェーンによって連結され、この踏段チェーンを駆動することによって全ての踏段が同期して隙間を生じることなく動くように構成されている。
【0003】
上述した踏段チェーンは駆動機構により駆動され、この駆動機構は、チェーン端部をスプロケットで駆動するタイプのものが一般的である。また一般に、このような駆動機構は、乗口付近または降口付近に設けられている。しかしながら、踏段の移動距離が長いコンベア装置においては、踏段チェーンにかかる負担が大きいため、チェーン端部の駆動機構だけでは十分な駆動力を伝達できない場合がある。そこで、踏段の移動距離が長いコンベア等においては、長いチェーンの途中(チェーンが方向を変えて折り返す端部以外の部分)で駆動力を与えることができるように、駆動機構を長いチェーンの途中に分散して配置することが提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
このようなコンベア装置のチェーンの途中で駆動力を与える駆動機構は、駆動源となるモータと、駆動力を十数倍に増幅する減速機と、直線状に伸びた踏段チェーンに駆動力を伝達するチェーン駆動力伝達機構とを備えるものが一般的である。ここで、チェーン駆動力伝達機構としてスプロケットを使用すると、当該スプロケットには直線状の踏段チェーンが巻き付かないので、噛合い率が落ちる。そこで、チェーン駆動力伝達機構としては、例えば図11(a)及び図11(b)に示すようなものが用いられる。
【0005】
すなわち、図11(a)及び図11(b)に示すように、駆動力伝達機構100において、踏段101を連結する踏段チェーンをリンク長の長い歯付きチェーン102として構成し、ピンローラ103を有する循環チェーン104を循環させて、これにより歯付きチェーン102を駆動するようになっている。
【0006】
しかしながら、このようなリンク長の長い歯付きチェーン102を踏段チェーンとして使用する場合、この歯付きチェーン102が方向を変えて折り返すコンベア装置端部において、通常の踏段チェーンに比べて速度ムラが生じる。このため、等速で回転する円形スプロケットを用いて踏段101を反転させることが難しい。このため、踏段チェーンとして歯付チェーン102を使用する場合には、擬似円弧形状のガイドレール等を用いてこの歯付きチェーン102を反転させる必要がある。したがって、踏段チェーンを駆動する駆動機構として、安価で標準的なスプロケットを用いた駆動機構を併用することが難しい。
【0007】
そこで、コンベア装置の途中で駆動力を与える駆動機構としては、通常用いられている踏段チェーンを駆動できる駆動機構120を備えたコンベア装置が提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0008】
この駆動機構120は、図12に示すように、駆動スプロケット121と、従動スプロケット122、これらのスプロケット121,122の間に巻きかけられる循環チェーン123とを備え、駆動源126が駆動スプロケット121を回転駆動させることで、循環チェーン123に複数設けられたチェーンリンク124が、踏段チェーン125の踏段ローラRと噛み合い踏段チェーン125に推力を与え、踏段128を移動させる。
【0009】
チェーンリンク124は、図13に示すように、踏段チェーン125の踏段ローラRとの噛み合い軌跡に沿った連続した凹部形状および凸部形状をなし、具体的には、踏段ローラRとの噛み合いを緩やかにするため、凹部124aの左右両側に設けられた凸部124b、124bが大きな半径を有する円弧状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭47−19989号公報
【特許文献2】特開昭47−10873号公報
【特許文献3】特開2003−201084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の駆動機構120を用いたコンベア装置では、踏段ローラRとチェーンリンク124との噛み合い動作が円滑になり、乗客に不快感を与える振動及び騒音を低減することができるものの、チェーンリンク124の凸部124b,124bが大きな半径を有する円弧状に設定されているため、次のような問題がある。
【0012】
すなわち、チェーンリンク124から踏段ローラRが離れる際に、チェーンリンク124の移動方向後側の凸部124bに踏段ローラRが当接するため、踏段ローラRにはチェーンリンク124より大きな推力が付与されることとなる。
【0013】
このように大きな推力が作用するチェーンリンク124から踏段ローラRが離れる箇所では、踏段ローラRが直線移動するにも関わらず、チェーンリンク124がスプロケット121,122によって円弧移動をするため、上記のようにチェーンリンク124が踏段ローラRとの噛み合い軌跡に沿った連続した凹凸形状であると、踏段ローラRには踏段チェーン125の移動方向から大きく外れたチェーンリンク124の円弧移動方向へ大きな推力が付与されることとなり、踏段チェーン125の移動に寄与しない不要の力を受けて、踏段ローラRやチェーンリンク124が摩耗劣化し易くなる。
【0014】
また、上記の移動装置120では、踏段ローラRが離れた状態からチェーンリンク124の凹部124aに噛み合うまでは、チェーンリンク124の移動方向前側の凸部124bに踏段ローラRが当接するため、チェーンリンク124から踏段ローラRに推力がほとんど付与されない。つまり、踏段チェーン125の移動に寄与する推力は、踏段ローラRの移動方向に沿ったチェーンリンク124の直線移動時にチェーンリンク124より踏段ローラRへ付与される。
【0015】
しかしながら、チェーンリンク124の直線移動時には踏段ローラRが凹部124aだけで接触するため、チェーンリンク124は踏段ローラRとの深い噛み合いを維持することができず、踏段チェーン125の移動方向に沿った推力を踏段ローラRに付与しにくいという問題がある。
【0016】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、コンベア装置の途中で駆動力を与える駆動機構を有するコンベア装置において、十分な噛み合い角度を実現しながら、通常の踏段チェーンに駆動力を与えることができ、しかも、不要な力が踏段ローラに付与されること無く、踏段ローラやチェーンリンクの摩耗を抑えて踏段上での乗り心地が良好なコンベア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るコンベア装置は、踏段ガイドレールと、前記踏段ガイドレールに沿って移動する複数の踏段と、前記踏段ガイドレール上を転動する複数の踏段ローラと各踏段ローラ間に配置される複数の踏段リンクとからなり、前記複数の踏段ローラのうち所定数ごとに配置される踏段ローラが前記複数の踏段に各々係合されて前記複数の踏段を連結する踏段チェーンと、回転駆動装置と、当該回転駆動装置の駆動力を受けて旋回する駆動スプロケットと、当該駆動スプロケットと前記踏段チェーンとの間に配設され、前記駆動スプロケットの回転運動に従って循環運動して前記踏段チェーンに推力を与える循環チェーンとを有するチェーン駆動機構とを備え、前記チェーン駆動機構の循環チェーンは、ピッチ長さが前記踏段リンクのピッチ長さと同じもしくは倍数とされた複数のチェーンリンクと、当該チェーンリンクの繋ぎ目となるヒンジとを有し、前記循環チェーンの各チェーンリンクには、直線運動時において、前記踏段ローラを搭載する搭載面と、当該搭載面上の踏段ローラの前後の踏段ローラに接触する押付面とが設けられ、前記踏段ローラが前記搭載面及び前記押付面のみで接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るコンベア装置では、上記構成により、チェーン駆動機構の循環チェーンによって深い噛み合い角度を維持しながら踏段チェーンを適切に駆動することができ、また、チェーン駆動機構を構成する循環チェーンや踏段チェーンが備える踏段ローラの局部的な磨耗を抑制して、踏段上での乗り心地を良好なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンベア装置を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るコンベア装置のチェーン駆動機構を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るコンベア装置のチェーン駆動機構が備える循環チェーンを示す図であって、(a)が循環チェーンの一部を分解して示す平面図、(b)循環チェーンの一部を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るコンベア装置のチェーン駆動機構のチェーンリンクの側面図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るコンベア装置のチェーン駆動機構の駆動スプロケット(従動スプロケット)の側面図である。
【図7】図6の要部拡大図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るコンベア装置のチェーン駆動機構を示す平面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るコンベア装置のチェーン駆動機構を示す正面断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るコンベア装置のチェーン駆動機構の循環チェーン近傍を示す正面断面図である。
【図11】従来例に係るコンベア装置を示す図である。
【図12】他の従来例に係るコンベア装置の要部を拡大して示す図である。
【図13】図12のコンベア装置におけるチェーンリンクを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のコンベア装置1は、構造物2に取り付けられた踏段ガイドレール3と、踏段ガイドレール3に沿って移動する複数の踏段5と、複数の踏段5を連結する踏段チェーン4と、踏段チェーン4を駆動するチェーン駆動機構10とを備えている。
【0022】
このうち踏段チェーン4は、図2(a)に示すように、複数の踏段リンク4aと複数の踏段ローラ4bとを有している。踏段ローラ4bは踏段ガイドレール3上を転動するローラである。踏段リンク4aは、隣り合う踏段ローラ4b間にそれぞれ配置されている。踏段チェーン4は、複数の踏段ローラ4bのうち所定数ごとに配置される踏段ローラが複数の踏段5に各々係合されることで、これら複数の踏段5を連結している。
【0023】
また、図2(a)に示すように、チェーン駆動機構10は、回転駆動装置11と、この回転駆動装置11に連結され、回転駆動装置11の駆動力を受けて旋回する駆動スプロケット12と、この駆動スプロケット12と対をなし、駆動スプロケット12とともに旋回する従動スプロケット15と、駆動スプロケット12から従動スプロケット15に亘り架け渡されて循環運動する循環チェーン13を有している。循環チェーン13は、駆動スプロケット12および従動スプロケット15と踏段チェーン4との間に配設され、駆動スプロケット12および従動スプロケット15の回転運動に従って循環運動して、踏段チェーン4に推力を与える。
【0024】
さらに、循環チェーン13は、複数のチェーンリンク13aと、隣り合うチェーンリンク13aの繋ぎ目となるヒンジ13bとを有し、かつチェーンリンク13aのピッチ長さが、踏段リンク4aのピッチ長さと同一となっている。なお、チェーンリンク13aのピッチ長さが、踏段リンク4aのピッチ長さの倍数(例えば、2倍)となっていても良い。
【0025】
複数のチェーンリンク13aは、図3に示すように、隣り合うチェーンリンク13a,13a’の端部同士をヒンジ13bの位置で重ね合わせ、ヒンジ13bを中心に回転可能に連結して、全体として各チェーンリンク13a,13a’が千鳥状に連結され循環チェーン13を構成する。また、循環チェーン13は、隣り合うチェーンリンク13a,13a’のうちの一方のチェーンリンク13aと重なるように並行して配置される補助リンク13fを備える。この補助リンク13fは、長方形の端部を丸めた単純な短冊形状に形成されており、両端がヒンジ13bの位置でチェーンリンク13a、13a’の端部と同軸に連結され、ヒンジ13bにおいて片持ちによる曲げモーメントが発生しない構成として耐久性向上が図られている。
【0026】
また、循環チェーン13は、チェーンリンク13aのリンク数が、踏段チェーン4の踏段5に係合される踏段ローラ4bの配置周期である所定数、すなわち踏段チェーン4の複数の踏段ローラ4bのうちでn個ごとに配置されているローラが踏段5に係合されているとした場合のnの倍数とは異なる数とされている。具体的には、図2(a)に示す例では、踏段ローラ4bの3個ごとに配置されているローラが踏段5に係合されており、循環チェーン13のチェーンリンク13aのリンク数は、3の倍数の21よりも1つ多い22とされている。
【0027】
循環チェーン13の各ヒンジ13bには、図2(a)に示すように、各ヒンジ13bと同軸で回転自在にチェーンローラ13eが取り付けられている。また、循環チェーン13の循環経路には、チェーンローラ13eを転動させて循環チェーン13の循環運動を案内する循環用レール14が設けられている。この循環用レール14は、一対の円弧部14a、14aと一対の直線部14b、14bを有する経路を有し、各円弧部14aと各直線部14bとの間を滑らかに繋ぎ循環チェーン13の振動を防止する繋ぎ部としての傾斜面14cが介在されている(図2(b)参照)。
【0028】
そして、循環チェーン13が循環用レール14に案内されることで、チェーンリンク13aは、円弧部14aにおいて円弧運動を行い、直線部14bにおいて直線運動を行い、傾斜面14cにおいて傾斜面14cの形状に応じた曲線運動を行う。
【0029】
チェーンリンク13aは、上記した循環用レール14の直線部14b,14bを走行する直線運動時において、踏段ローラ4bを搭載する搭載面13cと、搭載面13c上の踏段ローラ4bの前後の踏段ローラ4b’、4b’’に接触する前後(図2における左右)の押付面13d、13dとを有している。
【0030】
そして、チェーンリンク13aは、踏段ローラ4b’、4b’’が搭載面13c及び押付面13d、13dのみで接触し、循環用レール14の円弧部14a及び傾斜面14cを走行する円弧運動時及び曲線運動時において、踏段ローラ4b’、4b’’に接触しないようにチェーンリンク13aの形状が設定されている。
【0031】
詳細には、チェーンリンク13aの搭載面13cは踏段ローラ4bの周面の形状に倣った凹曲面とされており、チェーンリンク13aが直線運動を行っている間、踏段ローラ4bが搭載面13cに搭載される。
【0032】
また、チェーンリンク13aの搭載面13cとは逆側の外周部(循環移動する際に内側に位置する外周部)は、駆動スプロケット12や従動スプロケット15に噛み合う凸曲形状とされている。つまり、このチェーンリンク13aは、全体としてU字形状の外観を呈し、踏段ローラ4bを搭載面13c上に搭載した状態で、当該踏段ローラ4bを迂回する(搭載面13c上の踏段ローラ4bの周面に沿って逃げる)形状とされている。
【0033】
そして、U字型の先端部の双方に設けられた押付面13d、13dで、チェーンリンク13aが直線運動を行っている間、搭載面13c上の踏段ローラ4bの前後の踏段ローラ4b’、4b’’を押圧する構成とされている。したがって、踏段チェーン4の各踏段ローラ4bは、チェーンリンク13aの直線運動中継続して、循環チェーン13の1つのチェーンリンク13aの搭載面13c上に搭載された状態で、当該チェーンリンク13aの前後のチェーンリンク13aに設けられた押付面13dによって挟み込まれて、搭載面13c上に保持され、これにより、搭載面13c及び押付面13d,13dが、深い噛み合い角度を維持しながらチェーンリンク13aの移動方向へ踏段ローラ4bを押圧し、踏段チェーン4に推力を与える。
【0034】
上記したチェーンリンク13aの押付面13d、13dは、チェーンリンク13aの板厚に応じた面積よりも大きな面積で踏段ローラ4bを効果的に押圧できるように、チェーンリンク13aの板厚方向に厚みを増した構成とされる。そして、本実施の形態では、このような押付面13d、13dを、チェーンリンク13aを構成する板材とは別部材13gを用いて形成している。すなわち、図3に示すように、チェーンリンク13aを構成する板材の端部に、当該板材をその板厚方向の両側から挟み込むように別部材13gを配置し、これら板材と別部材13gとを断面形状が角形の角形ピン13hを用いたカシメ締結により接合一体化することで、チェーンリンク13aの端部に押付面13d、13dを形成している。
【0035】
なお、押付面13d、13dを形成する手法としては、ピン13hを用いたカシメ締結により別部材13gを接合する手法のほか、例えば、溶接によりチェーンリンク13a,13aに別部材13gを接合一体化してもよい。
【0036】
チェーンリンク13aが円弧運動及び曲線運動を行っている間のチェーンリンク13aを基準としたときの踏段ローラ4bの軌跡の一部分を図4及び図5に示す。チェーンリンク13aが直線運動から曲線運動及び円弧運動に切り替わると、直線運動時に搭載面13cに搭載された踏段ローラ4bは軌跡laを通って移動し、押付面13d,13dによって押圧された踏段ローラ(搭載面13c上の踏段ローラ4bの前方の踏段ローラ)4b’は軌跡lbを通って移動する。そこで、チェーンリンク13aは、踏段ローラ4bの軌跡laに対して逃げ部13iが設けられるとともに、踏段ローラ4b’の軌跡lbに対して逃げ部13jが設けられ、曲線運動及び円弧運動時に踏段ローラ4b、4b’に接触しないようにその形状が設定されている。
【0037】
また、循環用レール14の一方の円弧部14aには、図2(a)に示すように、駆動スプロケット12と対をなす従動スプロケット15が設けられている。
【0038】
駆動スプロケット12および従動スプロケット15は、それぞれチェーンリンク13aと略同じ厚さの複数枚(本実施の形態では2枚)の板歯12a、15aを重ねて構成されており、各板歯12a、15aにチェーンリンク13aの外周部が係合する歯溝が形成されている。そして、隣り合うチェーンリンク13aの一方と、隣り合うチェーンリンク13aの他方とが、それぞれ対応する板歯12a、15aの歯溝に順次交互に係合するように構成されている。
【0039】
また、上記の駆動スプロケット12および従動スプロケット15には、板歯12a(15a)同士で歯溝の形状が交差する交点となる位置に、図6及び図7に示すように、それぞれの板歯12a(15a)の厚み方向に連続して貫通するように形成された共用孔34が設けられており、この共用孔34内に、つまり全ての板歯12a(15a)に緩衝材35が埋設されている。緩衝材35は、板歯12a(15a)の厚み方向に延びる中空部35aを備えた筒状をなしており、共用孔34に埋設される緩衝材35が埋設された状態で、緩衝材35と共用孔34との間に隙間34aが設けられている。
【0040】
この緩衝材35は、循環チェーン13のチェーンリンク13aが歯溝に係合する際に、
押し潰されて噛み込みを滑らかにするためのものである。このような構成によって中空部35a及び隙間34aを押し潰され弾性変形した緩衝材35の撓み代として機能させることができ、簡単な構成により緩衝材35の弾力性を適切なものに調整することができる。なお、本実施形態では、緩衝材35に中空部35aを設けるとともに、緩衝材35と共用孔34との間に隙間34aを設けたが、中空部35a及び隙間34aのいずれか一方のみを設けてもよい。
【0041】
また、従動スプロケット15は手摺りベルトを駆動する手摺りベルト駆動装置16に連結されている。つまり、従動スプロケット15と手摺りベルト駆動装置16との間には、従動スプロケット15の軸15bからの駆動力を伝達する連結機構16aが設けられており、この連結機構16aを介して従動スプロケット15から手摺りベルト駆動装置16に駆動力を伝達し、手摺りベルト駆動装置16により複数のローラで挟み付けて図示しない手摺りベルトを駆動している。
【0042】
なお、図8に示すように、従動スプロケット15の軸15bから駆動力を得て、手摺りベルト駆動装置16の大径ローラ16bにより直接に手摺りベルトを駆動するようになっていても良い。
【0043】
また、図8および図9に示すように、回転駆動装置11は、駆動モータ11aと、駆動モータ11aの回転トルクを左右の駆動スプロケット12それぞれに伝達するベルトからなる伝達機構11bと、各駆動スプロケット12の中心位置に設けられ、伝達機構11bが伝達した回転トルクを増幅する減速機11cとからなっている。また、ブレーキ11dは、駆動モータ11aではなく、減速機11cの入力軸11eに取り付けられている。
【0044】
さらに、図10に示すように、チェーンローラ13eは、チェーンリンク13aをその厚み方向の両側(図10における左右)から挟み込むように対をなして配置されており、チェーンローラ13eが転動する循環用レール14は、チェーンリンク13aの配置に対応してチェーンリンク13aの厚み方向の両側(図10における左右)に配置されている。また、図10に示すように、チェーンローラ13eは、当該チェーンローラ13eの進行方向(図10の紙面に垂直な方向)に沿って見たときに、一方のチェーンローラ13e’は、踏段チェーン4の投影面上に重なるように配置され、他方のチェーンローラ13e’’は、踏段チェーン4の投影面と重ならないように、踏段チェーン4の投影面から外れた位置に配置されている。
【0045】
以上のように、本実施形態のコンベア装置によれば、チェーンリンク13aは、踏段ローラ4bの前後の踏段ローラ4b’、4b’’に接触する押付面13d、13dを有しているので、通常の踏段チェーン4を駆動する場合でも、深い噛み合いを維持しながら駆動力を与えることができる。これにより、踏段ローラ4bが浮き上がることはなく、浮き上がりを防止するための機構を設ける必要がない。また、安全のため浮き上がり防止の機構を設ける場合でも、軽微なものでよい。
【0046】
また、循環チェーン13のヒンジ13bが、踏段チェーン4の各踏段ローラ4b間に配置されており、より深い噛み合い角度を維持しながら踏段チェーン4に駆動力を与えているので、上述した浮き上がり防止効果はさらに高められる。
【0047】
さらにまた、チェーン駆動機構10において、循環用レール14は、一対の円弧部14a、14aと一対の直線部14b、14bを有する経路を形成し、各円弧部14aと各直線部14bとの間に循環チェーンの振動を防止する繋ぎ部としての傾斜面14cが介在されているので、循環チェーン13での脈動をなくすことができ、これにより、駆動される踏段チェーン4での脈動がなくなって、踏段5上での乗り心地を良くすることができる。
【0048】
しかも、本実施形態において、チェーンリンク13aは、踏段ローラ4bの軌跡la、lbに対して逃げ部13i,13jが設けられ、循環用レール14の円弧部14a及び傾斜面14cを走行する円弧運動時及び曲線運動時に、踏段ローラ4bに接触しないように設けられている。そのため、踏段チェーン4の移動方向から外れたチェーンリンク13aの曲線移動方向及び円弧移動方向の推力が踏段チェーン4に付与されることが無く、踏段ローラ4bやチェーンリンク13aが摩耗劣化しにくく、部品耐久性を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態のコンベア装置では、駆動スプロケット12および従動スプロケット15の重ねた板歯12a(15a)に同軸となる共用孔34が設けられ、この共用孔34内に緩衝材35が埋設されているので、構成を簡素且つ安価なものとしながら、循環チェーン13のチェーンリンク13aが駆動スプロケット12および従動スプロケット15の歯溝に係合する際の噛み込みを滑らかにすることができる。しかも、緩衝材35に設けられた中空部35aや、緩衝材35と共用孔34との間に設けられた隙間34aが、押し潰され弾性変形した緩衝材35の撓み代として機能するため、簡単な構成により緩衝材35の弾力性を適切なものに調整することができる。
【0050】
また、チェーンリンク13aの押付面13d、13dが、チェーンリンク13aの板厚方向に厚みを増した構成とされることで、大きな面積で踏段ローラ4bを効果的に押圧することができ、踏段ローラ4bへ加わる面圧が減る。また、このような押付面13d、13dを、チェーンリンク13aを構成する板材の端部に別部材13gを接合して形成しているので、必要な強度を維持しながら簡単に押付面13d,13dを形成できる。特に、断面形状が角形の角形ピン13hを用いたカシメ締結によりチェーンリンク13aを構成する板材に別部材13gを接合一体化することで、1箇所のカシメ締結によって別部材13gがピン13hの軸回りに回転することなく接合され、必要な強度を維持しながら簡単に押付面13d、13dを形成できる。
【符号の説明】
【0051】
1…コンベア装置
4…踏段チェーン
4a…踏段リンク
4b…踏段ローラ
5…踏段
10…チェーン駆動機構
12…駆動スプロケット
12a…板歯
13…循環チェーン
13a…チェーンリンク…
13b…ヒンジ
13c…搭載面
13d…押付面
13e…チェーンローラ
13f…補助リンク
13g…別部材
13h…角形ピン
13i…逃げ部
13j…逃げ部
14…循環用レール
14a…円弧部
14b…直線部
14c…傾斜面
15…従動スプロケット
16…ベルト駆動装置
34…共用孔
34a…隙間
35…緩衝材
35a…中空部
la…踏段ローラの軌跡
lb…踏段ローラの軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏段ガイドレールと、
前記踏段ガイドレールに沿って移動する複数の踏段と、
前記踏段ガイドレール上を転動する複数の踏段ローラと各踏段ローラ間に配置される複数の踏段リンクとからなり、前記複数の踏段ローラのうち所定数ごとに配置される踏段ローラが前記複数の踏段に各々係合されて前記複数の踏段を連結する踏段チェーンと、
回転駆動装置と、当該回転駆動装置の駆動力を受けて旋回する駆動スプロケットと、当該駆動スプロケットと前記踏段チェーンとの間に配設され、前記駆動スプロケットの回転運動に従って循環運動して前記踏段チェーンに推力を与える循環チェーンとを有するチェーン駆動機構とを備え、
前記チェーン駆動機構の循環チェーンは、ピッチ長さが前記踏段リンクのピッチ長さと同じもしくは倍数とされた複数のチェーンリンクと、当該チェーンリンクの繋ぎ目となるヒンジとを有し、
前記循環チェーンの各チェーンリンクには、直線運動時において、前記踏段ローラを搭載する搭載面と、当該搭載面上の踏段ローラの前後の踏段ローラに接触する押付面とが設けられ、
前記踏段ローラが前記搭載面及び前記押付面のみで接触することを特徴とするコンベア装置。
【請求項2】
前記押付面は、前記チェーンリンクを構成する板状部材の端部に別部材を接合することで形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコンベア装置。
【請求項3】
前記駆動スプロケットは、複数の板歯を重ね合わせて、各板歯に前記循環チェーンのチェーンリンクの外周部が係合する歯溝が形成された構成とされ、前記駆動スプロケットを構成する複数の板歯同士で歯溝の形状の交点となる位置に厚み方向に貫通する共用孔が設けられ、当該共用孔内に緩衝材が埋設されており、前記緩衝材の内部に中空部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンベア装置。
【請求項4】
前記駆動スプロケットは、複数の板歯を重ね合わせて、各板歯に前記循環チェーンのチェーンリンクの外周部が係合する歯溝が形成された構成とされ、前記駆動スプロケットを構成する複数の板歯同士で歯溝の形状の交点となる位置に厚み方向に貫通する共用孔が設けられ、当該共用孔内に緩衝材が埋設されており、前記共用孔と前記緩衝材との間に前記緩衝材の変形を許容する隙間が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンベア装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−51730(P2011−51730A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202556(P2009−202556)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】